第7回 とくしまマラソン

〜 最後まで気持ち良く完走 〜



2014年4月20日、第7回とくしまマラソンが開催された。
この徳島マラソンは、レースの半年近く前から戦いが始まる。

(ピッグ)「そんな前からトレーニングやってるんですかっ!」
(幹事長)「申し込みの戦いやがな!って、去年と同じボケと突っ込みで、すんません」


徳島マラソンは今回で7回目だけど、6年前の最初の年から申し込みは混乱が付きまとっていた
その背景には、昨今の異常なまでのマラソンブームがある。徳島マラソンの定員は年々、増強されてきたんだけど、それを上回るマラソンブームにより申込者が激増して、申し込み競争が激化しているのだ。
徳島マラソンは坂がほとんど無いフラットなフルマラソンなので、人気が出るのは当然だ。今や日本中、至る所でマラソン大会が行われているが、フルマラソンでフラットなコースってのは少ない。日本は山が多いから平坦なコースを片道21kmも確保できる場所は少ない、って事ではなく、交通規制の問題だ。21kmの平坦な道なんて、いくらでもあり、ハーフマラソンで行われている丸亀マラソンだって、折り返し点を坂出から高松まで延長すればフルマラソンが行える。問題は交通規制なのだ。
平坦な広い道路ってのは、たいていは幹線道路なので、そこを何時間も交通規制するってのは簡単ではない。東京都知事や大阪府知事みたいに絶大な権力を誇る政治家なら、鶴の一声で都心のど真ん中でマラソンを開催できるけど、普通は簡単にはいかない。そのため、香川県内では、交通量の少ない小豆島で行われる瀬戸内海タートルマラソンが唯一のフルマラソンだ。小豆島に限らず、交通量の少ない山間部や島嶼部なら大がかりな交通規制をしなくても42kmのコースを確保するのは比較的簡単だから、多くのマラソン大会が、そういうコースで実施される。ただ、当然ながら、そういう場所では、どうしても坂が多いコースとなってしまう。なので、坂がほとんど無い徳島マラソンは、我々にとって、大変貴重なレースなのだ。
なぜ山間部でも島嶼部でもない徳島でフルマラソンの開催が可能なのかと言うと、吉野川という真っ直ぐな大河川があるからだ。この川の堤防の上をコースにすれば、大して交通規制をしなくてもフラットで真っ直ぐなコースを確保できるのだ。このように、徳島マラソンはコースとして魅力的なため、昨今のマラソンブームのせいで参加希望者が激増しているのだ。
て言うか、そもそも徳島マラソンが6年前にできたのは、マラソンブームの流れに乗ったからである。東京マラソンが7年前にできて、その翌年に徳島マラソンができた。急激に高まっていたマラソンブームに決定的な火を付けたのが東京マラソンであり、それに便乗したのが徳島マラソンと言えよう。便乗はしたものの、慣れていなかったため、最初から混乱が続いてきた。これは徳島マラソンに限ったことではなく、東京マラソンも最初の頃は不手際のオンパレードで不満や批判が殺到していた。僕が出場した去年の第7回大会なんかは、感心するほど手際が良く、素晴らしい大会だったけど。

て事で、徳島マラソンの申し込みは、第1回の時から混乱を極めていた。

まず第1回大会定員は当初は3000人に設定され、それをオーバーした場合は抽選になると発表された。今になって思えば、3000人は少なすぎるって感じだけど、以前は田舎のマラソン大会なら3000人ってのが標準的なところであり、多少オーバーしても申し込み打ち切りとか抽選なんてあり得なかった。ところが、蓋を開けてみたら申込者数が5814人もいたもんだから、急遽、定員を5000人に拡大したうえで抽選を行うという不可解な事態となった。そこまで定員を増やすんだったら全員受け付けたらいいのにと思う。それでも、5814人中5000人が当選するんだから、ペンギンズのメンバーはみんな当選するだろうと安心していたら、なんと落選者が続出し、当選率は50%だった。

続く第2回大会定員は4000人となった。3000人から増えたと言えば増えたが、5000人に比べれば減っており、この中途半端な増やし方が不可解だ。そして、今回は抽選ではなく先着順となった。それでも、そんなに慌てる事はないだろうと思っていたら、予想を上回るペースで申込者が殺到し、危機感の乏しいペンギンズのメンバーは、申し込めなかった人が続出した。

次の第3回大会先着順で、定員は6000人にまで増えた。3000人→5000人→4000人→6000人という推移が数学的にどのような式で表される数列になるのか興味深いところだが、ここまで増えれば、定員オーバーって事もないかなあ、なんて思っていたら、たった2日間で受付は打ち切られてしまった。ただし、今はランネットで定員に達した瞬間に申し込み受け付け終了となるが、当時は、郵便振込みも許容されていたため、申し込み受付終了ってのが日付単位であり、実際には2日目までに申し込んだ6617人が参加できた。それなのに、相変わらず危機感の足りないペンギンズは、申し込めなかったメンバーが続出した。

このように混乱が続いてきたが、第4回大会は、さらに輪をかけるような混乱ぶりだった。まず、定員が7000人に拡大され、抽選にすると発表された。毎年、ちょこちょこと少しずつ定員を増やしていく手法には疑問が残るが、定員が7000人もあれば抽選に弱いペンギンズメンバーでも全員が当選するんじゃないかと思っていた。ところが、受付直前になって突然、5000人分は先着順にし、残り2000人分は抽選にするという、とっても奇妙な方式に変更された。この2段階方式の意味は今でも不可解だ。それでも先着枠だけで5000人分もあるから、受付開始の夜中の12時じゃなくて、朝、会社に行く前に申し込んだら十分だろうと思っていたら、なんと朝5時には先着枠が埋まっていたらしく、抽選に回されてしまった。当然ながら、ペンギンズのメンバーは大半が同じ運命となった。抽選枠は2000人分しかなかったから競争率は高かったが、くじ運の悪い私としては非常に珍しく、奇跡的に当選した。ただし、この年は3月に東北大地震が起き、大会は11月に延期されてしまった。そのため追加募集が行われ、多くのメンバーが救われた。ふう。

続く第5回大会は、定員が一気に10000人にまで拡大され、そのうち9000人分がインターネットでの先着順で、残りの1000人分が振替用紙での抽選になった。相変わらず意味不明だが、インターネットが使えない人のためなのかもしれない。それでも、いくら人気急上昇と言っても先着枠が9000人分もあれば、そんなに焦る必要は無いだろうと思ったけど、前年の反省を踏まえ、夜中の24時になったらすぐに申し込むことにした。ところが、夜中の12時の直前にアクセスしようとしたら、既に大混雑になってて、えらく苦労しながら1時間くらいかけてようやく申し込むことができた。支部長は途中で諦めて寝てしまったのだが、奇跡的に、抽選枠で復活当選を果たした。

第6回大会になると、ようやく落ち着いてきて、前年と同じく、9000人分がインターネットでの先着順、1000人分が振替用紙での抽選になった。もう慣れてきたので、落ち着いて夜中の12時にパソコンからアクセスしたのだが、パソコンの調子が悪かったのか、サーバーが悪かったのか不明だが、ものすごく時間がかかり、結局、エントリーが終了したのは2時近かった。2時間もかかったわけだ。石材店も1時間半くらいかかったが、支部長は順調に進み20分くらいで終わったそうだから、何が悪かったのか分からない。ただし、支部長もゾウさんなんかの分を「お仲間エントリー」で一緒に申し込もうとして苦労し、結局は2時頃までかかった。

そして、今回の第7回定員10000人、うちインターネットでの先着順9000人、振替用紙での抽選1000人だった。3年連続で同じだから、もう定員は増やさないのかもしれない。もっと増やしてくれれば、こんなに必死になってエントリーしなくても済むのに。会場やコースを考えると、まだまだ増やせそうな気もするけど、う〜ん、どうだろう。
定員は3年連続で同じだけど、今回、申込受付開始時間が夜中の12時から夜の10時に早まった。毎年、睡魔と戦いながら12時まで起きていた事を考えると、これは朗報だ。

(支部長)「良かった良かった。これで寝過ごす心配が無くなったわい」

そもそも夜中の12時に受付がスタートするってこと自体が異常だ。昔のように、定員いっぱいになるまで何日もかかっていた頃は、区切りがいいから夜中の12時スタートでも構わない。でも、現在のように数時間でいっぱいになる状況では、夜中の12時スタートは厳しいのだ。

(幹事長)「しかし、それだけ競争は激しくなるぞ」

朗報だと思っているのは我々だけでなく、みんな同じだ。てことは、申し込み競争に参加する人数は絶対に増える。なので、1秒を争う申し込み競争はますます激しくなると思われる。
て事で、もう絶対に失敗は許されないので、今回は、受付開始の10時の10分くらい前から受付サイトに入っておき、あとは10時になったらエントリーボタンを押すだけ、って状態で待機する。10時になる前に試しにエントリーボタンを押してみようかとも思ったけど、トラブルが発生して、またまた遅れると困るので、それは我慢して、正確に合わせておいた時計が10時になった瞬間にエントリーボタンを押した。しかし、それでも既に混雑が始まっていて、しばらく待たされた。ただ、待たされたのは15分くらいで、20分くらいで全ての手続きが完了した。支部長も手間取りつつも、國宗選手、ゾウさん、ヤイさんの分も含め、4人分のエントリーが40分で終了したとのことなので、もしかしてサーバーが増強されたのかもしれない。これくらいの時間で終わるのなら、それほどイラつくこともない。
ただ、システムが早くなったせいもあって、1時間半後の11時30分頃には定員に達して申し込み受け付け終了となってしまった。うかつにも飲み会で申し込みをすっかり忘れていたピッグは、翌朝、申し込もうとして駄目だったため、抽選に回ることになった。



てなわけで、熾烈な戦いから半年近く経った2014年4月20日、第7回とくしまマラソンが開催された。

せっかく支部長が申し込んでいた國宗選手が業務多忙でドタキャンになったしまい、結局、今年の参加メンバーは私と支部長、ゾウ坂出、ピッグ、そしてヤイさんの5人となった。他にも準メンバーのW部選手内藤さん片岡氏も出ましたが、別行動となりました。

さて、これも毎年、苦労するところだが、徳島マラソンは受付時間がとても早い。スタート時間が9時だから仕方ないんだけど、当日の受付は朝の8時までに済ませなければならない。車で行くと、帰りは疲れ果てた足が攣りそうになって運転が危険になるので、可能ならJRで行きたいところだが、高松発の始発列車で行っても間に合わないのだ。高松と徳島なんて東京なら通勤圏内だというのに、8時に間に合う便が無いなんて、いくらなんでもあんまりだ。
なので、今年は私の車で一緒に出かけることにした。6時には高速道路に乗りたいところだけど、坂出から来るゾウさんがJRで来ようとすると、これまた間に合わない。そのため、まずゾウさんが坂出から自分の車で高松まで来て、途中で支部長とピッグを拾って我が家へ来て、うちのミニバンに乗り換えて高速道路に乗り、途中の津田PAでヤイさんを拾って5人で行く、という作戦となった。

去年と似たようなスケジュールだが、去年はゾウさんが家を出るのが遅れてしまい、結局、高速道路に乗ったのは6時半頃になり、会場に着くのがギリギリになり、大変だった。

(支部長)「ギリギリというより、受付時間も手荷物預け時間も完全に遅刻したけどな」
(幹事長)「ま、多少の遅れは多めに見てくれるし」


今年もゾウさん遅刻するかなあ、なんて家でのんびりしてたら、なんと今年は時間ピッタリにゾウさんの車が到着した。慌てて出発して予定通り6時には高速道路に入り、津田PAでヤイさんも無事に拾い、順調に進んだ。

(幹事長)「お久しぶりですねえ、ヤイさん。まさか練習できてますか?」
(ヤイ)「いや、全くできてません」
(支部長)「でも、ヤイさんは基礎体力が並外れてるから、練習無しでも何の問題も無いでしょ?」
(幹事長)「そうやなあ。初めて出た時も、全然練習無しだったのに、私と一緒にゴールしましたよねえ」
(ヤイ)「あれは幹事長が異常に遅かっただけでしょ」


確かに3年前の第4回大会は、絶好のコンディションだったのに惨敗してしまい、最後はヤイさんと一緒に足を引きずりながらゴールしたのだった。

(ピッグ)「幹事長は練習できてますか?」

今回は、ことさら強調するほどの練習不足ではない。

(ピッグ)「回りくどい言い方ですねえ」
(幹事長)「決して練習十分とは言えんからなあ」


丸亀マラソン以降、平日は週に2回ほど仕事が終わって帰宅してから5km程度を走り、週末には20km程度を走っているから、毎月100km以上は走っている

(ピッグ)「世間一般からすれば決して多くはないですけど、幹事長にしては真面目ですか」
(幹事長)「そやろ?」


例年、2〜3月の週末はスノーボードに出かけたりしてランニングの練習不足に陥りがちだが、今年は事情があってスノーボードに行けなかったから、代わりにランニングはコンスタントに練習できた。もちろん、決して偉そうに言える程の練習量ではないが、それでも「今年も練習不足だ!」と胸を張って言い訳できるような状態でもない。大会の1週間前には親族の法要でバタバタして練習どころではなかったが、それまでは一応、練習できている。

ただ、不安の種は、直前に風邪を引いたことだ。ちょっと前に娘が風邪で寝込んでしまい、当然のように、それがうつったのだ。まだ引き始めで、そんなにひどくはないが、喉が痛くて呼吸がちょっと苦しい。

(幹事長)「ピッグはどうなん?」
(ピッグ)「まあ、私もボチボチですかねえ」


ただ、ピッグは近年、練習量がボチボチでも私よりワンランク上に行ってしまった。ハーフマラソンなら、2月の丸亀マラソンでも、私とほとんど同じようなタイムだったけど、同じ2月の海部川マラソンでは4時間7分というサブフォー目前の快記録を出している。

(幹事長)「そんなに練習しているとは思えないのに、なんでそんなに絶好調を維持しているん?」
(ピッグ)「フルマラソンに関しては、ちょっと開眼しましたかねえ」



休日の朝の高速道路は空いていて、その後も順調に進み、7時には徳島に着いた。順調すぎる。

徳島マラソンの受付会場には駐車場が無く、だいぶ離れた所にある臨時駐車場からシャトルバスで会場に移動するのだが、臨時駐車場は2ヵ所ある。沖洲マリンターミナル吉野川河川敷だ。スタート会場には沖洲マリンターミナルが近い。なので一昨年も去年も沖洲マリンターミナルの臨時駐車場に車を停めた。ところが、交通規制のせいかバスのドライバーが慣れてなかったせいか、沖洲マリンターミナルからスタート会場の県庁横までものすごく時間がかかり、受付時間に遅刻してしまった。さらに、レースが終わった後は、ゴール会場の陸上競技場から沖洲マリンターミナルまで1時間もかかり、ウンザリしてしまった。徳島市内の道路は日中はすごい渋滞になるのだ。この反省から、今年は、スタート会場までは多少遠いものの、帰りがゴール地点から近い吉野川河川敷の臨時駐車場を利用することにした。

臨時駐車場に着くと、既に沢山の車が停まっていたが、シャトルバスもいっぱい待機してて、どんどん運んでくれるので、全然待たずにバスに乗れた。スタート会場までの距離は少し遠いけど、順調に進み、受付終了の30分も前にスタート会場に着いてしまった

(幹事長)「こんなに早く着いたら、なんかもったいないことしたような気がするなあ。
       もっと家でゆっくりしてたら良かったかなあ」
(ゾウ)「全然、早くないですよ。これくらい最低限の余裕時間ですよ」


空模様はパッとしない。て言うか、天気予報では雨なのだ。雨と言っても、激しく降るような雨ではなく、小雨程度のようだけど、徳島マラソンのコースである吉野川の堤防は、例年、風が強いので、雨が降ったら体感温度が下がる。

(支部長)「ま、暑いよりはマシやけどな」
(幹事長)「支部長は暑がりやから雨の方がマシかもしれんけど、寒がりの私は雨は困る!」


5月末のオリーブマラソンなら天気が良いと暑いので雨が降った方が楽だ。またハーフマラソンなら一生懸命走るから体が熱くなるので、雨でも平気だ。でもフルマラソンになると、最初からゆっくりしたペースだし、終盤になると確実に歩くので、体が冷える。多少暑いくらいのコンディションがちょうど良いのだ。

(ピッグ)「雨はお昼過ぎからのようですよ」
(幹事長)「速い人は雨が降り出す前に帰って来られるのかあ」


でも、僕らは遅いから確実に雨に打たれるだろうなあ。
なので、何を着るかで、またまた悩む

(ゾウ)「ほんっとに幹事長ったら、いつもいつも寒さの事ばっかり心配してますねえ」
(幹事長)「ほんとに寒がりなんよ」


ランニングタイツは僕は普通は冬しか履かないんだけど、今日は雨に備えて寒さ対策でランニングタイツを履くことにした。ランニングキャップも普通は炎天下しか被らないんだけど、雨に備えて被ることにした。
ウェアは、まずは大阪マラソンのTシャツを着なければならない。去年の大阪マラソンに出た時にもらったTシャツなんだけど、あまりに格好良いので、あれ以来、全てのレースで着ている。なので、長袖シャツを着る場合は、その上に重ね着することになる。つまり、半袖の大阪マラソンTシャツ1枚か、長袖との重ね着の選択となる。長袖シャツ1枚だけっていう選択は無いのだ。でも、今日は寒さ対策で、長袖の上に半袖Tシャツを着るのがちょうどいい。

(ゾウ)「ちょっと、ちょっと。寒さ対策が度を超してますよ。真冬じゃないんですよ」
(ピッグ)「厳冬期の丸亀マラソンより重装備じゃないですか」


見ると、ピッグは半袖1枚だ。

(幹事長)「ピッグは、どんなに暑い時でも、どんなに寒い時でも、半袖Tシャツと短パンだけやなあ。寒くないん?」
(ピッグ)「これで慣れちゃいましたね」


ゾウさんもいつものランニングタイツを履いていない。寒くないんかなあ。ヤイさんだけは僕と同じように長袖と半袖の重ね着にランニングタイツも履いている。更衣室の中は暖かいから、万全のような気がしてしまうけど、たぶん、これでも外に出ると寒いんだろうなあ。
本当は、長袖と半袖の重ね着の上に、ウィンドブレーカーも着たいところなんだけど、去年の記事を読み返したら、去年も同じ事を言ったら、國宗選手に止められて、実際に走り出すと結構、暑くなり、「ウィンドブレーカーなんか着なくて良かった」って書いてあったから、やめることにした。

(支部長)「このホームページがメモ代わりになってるなあ」
(ピッグ)「ウィンドブレーカーは、あり得ませんよ」
(ゾウ)「そんな格好して走ってる人なんていませんよ」


それでも、やっぱり寒そうだからポケットにビニール袋は入れておく

ここら辺で朝食を食べる。朝食ったって菓子パン3個だ。レース当日の朝食は、ゴール予想タイムの6時間前に食べるのが理想であり、僕らは遅ければ5時間は走るから、朝食はできるだけスタート直前に食べた方が良い。コースの後半になると給水だけでなく給食も出てくるが、お腹が空いてから食べたのでは、実は手遅れだ。なので、レース前に食べておいた方がいい。去年はスタート地点でもゼリーを食べたので、今年もゼリーを持ってきたが、パンを3個食べたら、なんとなく満たされてしまい、これ以上食べてお腹を壊したら元も子もないので、今年はゼリーは持っていかないことにした。以前はレース前に大量に食べていたため、よくお腹を壊していたから、最近は恐れているのだ。

ポケットにはビニール袋のほか、ウォークマンとティッシュとハンドタオルを押し込む。6年前の第1回大会のとき、お腹を壊してトイレに駆け込んだ時の反省から、ティッシュは必携だ。

着替えが終わると、みんなで記念写真だ。

季節感が不明な精鋭メンバー
(左からヤイさん、幹事長、ゾウ坂出、ピッグ、支部長)

手荷物も余裕を持って時間内に預けることができた。て言うか、スタートまで、まだ1時間もある。しかも、外に出ると、やっぱり寒い

(幹事長)「こら寒いで」
(支部長)「そうやなあ、確かに寒いなあ」


あまりに寒いので、さっそくビニール袋を被る。こんな薄いゴミ袋でも、風を遮る効果は抜群で、寒さが一気に軽減される。
空を見ると、今にも雨が降りそうな気配。ただ、恐れていた風は、今のところ、あんまり強くない。一昨年は台風みたいな暴風雨が吹き荒れる天候だったが、それは例外としても、通常でも徳島マラソンは風との戦いになる。雨が降って風があると体感温度は低くなり、終盤は辛く厳しい行程になる。このまま風が弱ければ嬉しいな。

(ヤイ)「今日の目標は?」
(ピッグ)「今回こそ、できればサブフォーを狙いたいですね」


ピッグは2月に4時間7分を出しているから、サブフォーの可能性は大きいけど、どう考えても私は無理だ。

(幹事長)「僕はサブフォーなんて妄想は潔く捨てて、現実的に4時間半を目指します」
(支部長)「わたしゃ5時間でいいな」
(ゾウ)「私も5時間を切りたいですね」


5時間を切るには平均で7分/kmのペースでいい。4時間半でも6分20秒/kmのペースでいい。ところがサブフォーとなると5分40秒/kmのペースになる。前半はいいとしても、終盤までそんなペースを維持できるとは思えない。

(支部長)「終盤は絶対に歩きが入るしな」
(幹事長)「そこやがな。僕は今回、最初から徹底して遅いペースで走り、その代わり最後まで歩かずに行きたいぞ」


最後まで歩かずに走るというのは、我々のような軟弱ランナーにとって簡単ではない。なぜなら、終盤には足が痛くなるからだ。疲れとか、足が棒の様になる、っていう状態なら、精神力で乗り切れないこともない。どんなにペースダウンしても、足を引きずりながらでも、ゆっくり走り続けることはできる。しかし、足が痛くなると我慢できない。立ち止まって屈伸したりして、なんとか痛みを取るしかない。
ところが、去年の大阪マラソンでは、非常に珍しく最後まで足が痛くならなかった。勝因は、はっきりしている。最初から、めっちゃ遅いペースで走ったからだ

(支部長)「当たり前と言えば当たり前やけどな」

当たり前のような気もするけど、ゆっくりでも42kmも走れば足が痛くなっても不思議ではない。でも、大阪マラソンでは最後まで足が痛くならず、とても気持ちよくゴールできた。それまでフルマラソンに出ると、終盤は必ず足が痛くなって辛くなり、「なんでアホみたいに、こんなレースに出たんやろ。もうフルマラソンなんて出るの止めよう」って思うのが常なんだけど、大阪マラソンに出て考えが変わった。早く次のフルマラソンに出たくなったのだ。
ただ、大阪マラソンは、最初からものすごく遅かった。風邪を引いていたこともあるし、競争率5倍を突破して参加できた貴重な大都市マラソンなので、速く走るより、のんびり見物しながら走る観光マラソンに徹したからだ。なので、最後まで足が痛くならなかったにもかかわらず、タイムはとても遅かった。今回は、最初からペースを抑えて走るとは言え、そこまで遅く走る訳にはいかない。適度に遅く走るのだ。

(ピッグ)「その適度ってのが難しいですよねえ」
(幹事長)「ごもっとも」


4時間半を目標にすると、6分20秒/kmでいいが、それだとギリギリなので、途中で立ち止まってソーメンを食べることもできなくなる。途中でトイレに行くかもしれないし、何があるか分からない。て言うか、そもそもスタート直後は混雑するから、去年の記録を見ると、最初の5kmまでは7分/kmもかかっている。なので、それを過ぎたら6分/kmちょっとで走るべきだろう。それくらいのペースを維持できれば、途中で何回か立ち止まって給食を食べても4時間半は楽勝だ。



スタート地点は申告タイムの順番になっている。これは速いランナーと遅いランナーが一緒くたにごちゃ混ぜになっているとスタート時の混雑がひどくなり、混乱するからだ。速いランナーにしてみれば、遅いランナーが混じっていると邪魔になって走りにくいし、遅いランナーだって周りが速いランナーばかりだと走りにくい。分けた方が速いランナーも遅いランナーも走りやすい。どうせタイムはチップでネットタイムを計測してくれるから、無理して前の方からスタートする必要は無い。て事で、申告タイム順に割り振られたゼッケン番号に従って順序よく並ぶことになっている。どのマラソン大会でも実施していることだ。
なのに、なぜか例年、これを守らないで好き勝手に並ぶランナーが多くて、結局、かなりの混雑となった。自分のタイムを無視して、仲間同士で一緒に固まって並ぶからかもしれない。

(支部長)「かもしれない、って、自分やって、そうやったやんか」
(幹事長)「すんません」


これではいけないってことで、今年は申告タイム順にゼッケンの色を変えることにより、順序を守らないランナーが分かるようになった。
ところが、今回、私は高い目標を掲げて速めのタイムを申告したのに、支部長とかは最初から緩〜いタイムで申告したため、ゼッケン番号が大きく異なり、違う色のゼッケンとなった。実は、去年も同じ状況だったが、私は当日の調子が悪かったから、みんなと一緒に後ろの方に並んだのだ。今年はそれが許されそうにない気配なので、仕方なく、彼らと別れて一人寂しく前の方に並んだ。う〜ん、ちょっと寂しい。来年は緩いタイムで申告しよう。
前の方と言っても、メンバーの中では前の方と言うだけであり、全体から見ると、真ん中くらいの場所だ。スタートのアーチは、はるか前の方に見える。相変わらず風は弱く、密集して待っていると、全然寒くない。薄いビニール袋だけど、風が通らないので効果絶大だ。ただ、なんと早くも雨がパラついてきた。注意してないと気づかない程の小さな雨粒だけど、こんなに早く降り始めるとは思わなかった。嫌な予感。ただ、パラついたのは一瞬で、すぐに雨は止んだ。小雨なら風さえ無ければ我慢できる。風邪は特に悪化はしてなくて、喉は痛いけど、走るのに支障は無さそうだ。

スタート時間が近づいてきたため、あちこちに設置されたスピーカーからゲストの千葉ちゃんの声がガンガン聞こえてくる。去年はゲストが高橋尚子さまで、やはりハイテンションの声がガンガン鳴り響いていたが、千葉ちゃんのハイテンションは、それをさらに上回り、思わず耳を塞ぎたくなるような大音響だ。それにしてもQさまと言い千葉ちゃんと言い、仕事とは言え、よくもまあ、あれだけハイテンションを続けられるものだ。さすがはプロですね。

千葉ちゃんは完全なゲストだけど、ゲストランナーとして川内優輝選手が来ている。徳島マラソンは結構、メジャーになりつつあるのに、今まで、これと言ったゲストランナーがいなかった。そのため、我が城武選手が出場した年は2回とも優勝したりしていたんだけど、遂に今年は第一線のプロランナーが来た訳だ。(ちなみに城武選手はアメリカに異動になってしまい、今年は出場していない)
ただ、この大会は、我々はトップ選手を見ることができない。丸亀マラソンのような折り返しコースの場合は、途中ですれ違えるから、これまでも野口みずき選手や福士加世子選手など、多くのトップ選手の走りを間近で見ることができたが、この徳島マラソンはすれ違う場所がないし、スタート前は、はるか前方にいて分からないし、ゴール後は、我々がゴールする頃には、とっくの昔にいなくなっているだろうから、最初から最後までトップ選手を見ることはできない。



いよいよスタート時間となったが、しばらくは全く進まない。しばらく経つと、ようやくダラダラと動き始める。去年よりは少し前の方からスタートしたんだけど、それでもスタート地点を超えるまで5分はかかった。さすがにスタート地点を越えると、ゆっくりだけど小走りができるようになる。ウォーミングアップ代わりの小走りだ。その後もしばらくはノロノロ状態だが、少しずつ走るスピードが上がっていく。どんなレースでもそうだけど、相変わらず周囲の迷惑を顧みず、仲間内でおしゃべりしながらブロックして走る連中がいる。特におばちゃん軍団という訳でもなく、若い奴らでも迷惑な連中がいる。まあしかし、最初は焦っても仕方ない。ここで焦ってランナーの間を右へ左へかいくぐって走るのは、エネルギーの無駄遣いになるだけだ。この程度のタイムロスは織り込み済みだ。

最初の1km地点のタイムを見ると、やはり7分もかかっている。去年と同じくらい遅いが、ウォーミングアップ代わりと割り切らなくてはいけない。ただ、去年は5km地点まで7分ペースが続いたが、今年は去年より前の方からスタートしたおかげで、去年ほどの混雑ではなく、1km地点を過ぎると、だいぶペースも上がってきた。しばらく行くと、しらさぎ大橋の上りになる。ほとんど坂が無い徳島マラソンのコースでは最大の坂だ。て言っても、所詮は標高10mくらい上るだけだし、まだ序盤なので、何の負担も無い。
にもかかわらず、なんと早くもダラダラ歩いている連中がいる。若い男4人組だ。ゼッケンの色を見ると、かなり前方からスタートした連中だ。相当早いタイムで申告しているはずだ。それなのに、まだ2kmも走ってないのに、もう歩いているなんてひどすぎる。歩くにしても、一番端っこを邪魔にならないように歩くのなら許されるが、4人が堂々とおしゃべりしながら歩いているから、邪魔になって仕方ない。
しらさぎ大橋に上がったら、すぐに2km地点となる。ペースはだいぶ上がり、目標通り6分ちょっとのペースだ。
しらさぎ大橋は微かな上り坂になっているが、そんなことより、毎年、風に苦しめられる。橋の上に限らず、徳島マラソンのコースは基本的に堤防の上の道なので、遮るものが無くて風が強く、しかも前半は、ほぼ向かい風となってランナーを苦しめる。スタート直後は街中なので建物で風が遮られるが、このしらさぎ大橋に上がってからは風との戦いになるのだ。ところが、今年はさほど風が強くない。これは良い兆候だ。
風が思ったより弱いため、ちょっと暑くなり、さっそくビニール袋を脱ぐ。やはりウィンドブレーカーなんか着なくて良かった。もちろん、いつ雨が降り出すか分からないから、ビニール袋は捨てずにポケットに入れておく。

しらさぎ大橋を渡り終える頃に3km地点がある。ペースは同じく6分ちょっと。良いペースだ。
橋を渡ると、吉野川の北岸の堤防を西向きに走り始める。ここまで来ても風は弱く、向かい風ではあるけれど、大したことはない。
次の4km地点でもタイムはほぼ同じで、6分ちょっとの良いペースを維持できている。ここには最初の第1給水所がある。まだ走り始めたばかりで喉は渇いてないけど、喉が渇いてからでは遅いので、ちゃんと水を飲む。急いで飲むとお腹を壊す恐れがあるので、冷たい水を少しずつ口に含んで時間をかけて飲み干す。

しばらく行くと、早くも吉野川大橋のたもとの5km地点第1関門に着く。ここで時計を見てびっくり。タイムが一気の落ちて、6分半もかかっている。給水所では、できるだけ素早く水を取ったから、そんなにタイムロスは無かったはず。一体、どうしたんだろう。こんな所で早くもペースダウンするなんて、ちょっと酷すぎる。かなり焦って体勢を立て直し、気合いを入れて走る。

気合いを入れて走ったせいか、次の6km地点で見た1kmのタイムは一気にペースアップして5分半を切っている。いかん。これは逆に早すぎる。こんなペースで走っていたら、絶対に終盤にボロボロになる。しかし、それにしても、自分の感覚では、ずうっと同じペースで走っているつもりなのに、1kmで1分も違うなんて驚きだ。普段なら、せいぜい数秒程度の差でペースは維持できるはずなのに。

とにかく、こんなペースで走っていては潰れるので、だいぶ抑えて走った。そのせいか、吉野川橋をくぐった所にある7km地点では6分弱のペースとなった。まだ少し早いので、さらにペースを抑える。
今日は序盤から抑えて走る作戦なので、最初からウォークマンを付けている。レースによっては、後半から聴き始めたりするけど、今日は最初から抑えて走るので、対処から退屈するだろうと思ったのだ。ただ、今のところ、ゆっくり走っていても退屈はしてないので、スイッチは入れていない。

次の8km地点では6分ちょっとのペースに戻り、またまた良い感じのペースだ。これを続けていければ問題ない。が、次の9km地点では、再び6分弱となった。これは悩む。作戦よりも少しだけ早い。決して力んではいないのに、想定タイムより早い場合、どうするべきか悩む。過去の経験から言えば、これはやはり本番でアドレナリンが噴出しているせいでオーバーペースになっているに違いないんだけど、体感的には、すごく自然に走れている。これを無理に抑えるべきかどうか。さきほどの5分半ペースは文句なく速すぎるけど、6分弱でも抑えるべきかどうか。
悩んでいると、第2給水所が現れたので、再び素早く水を取る。どんなに喉が渇いてなくても、今日はことごとく少しずつ水を補給していく予定だ。

非常に素早く、ほとんどタイムロス無しに水を取ったと思ったのに、次の10km地点で時計を見てびっくり。なんとタイムが一気に落ちて6分40秒を超えている。あり得ない!あり得なさすぎる。レース終盤じゃあるまいし、こんなところで6分40秒はないだろ!もう焦りまくりで気合いを入れて、走る。
なのに、次の四国三郎橋を越えたところの11km地点でもタイムは6分半近くかかっている。これは、もう駄目なのか。今日は、早くも、もう駄目なのか。体調は悪いと感じないの、このタイムの急速な悪化は、もう駄目ってことなのか!?

かなり絶望的になって走ったのだが、次の12km地点で時計を見て、驚愕!一気に1分以上も速くなっている。いくら気合いを入れたからと言って、いくらなんでも、それは無いだろう!?一体、こりゃ、どうなってるんだ。
ここで気が付いた。距離表示がおかしい。絶対に距離表示がおかしい。まだ序盤で、そんなにペースがぶれるはずがないのに、平気で1分も上下するなんて、絶対に距離表示がおかしい。後で調べて去年のタイムと比べてみたら、1km区間ごとのタイムの上げ下げが去年と今年で全く同じ変動だった。つまり、少なくとも去年も今年も全く同じ間違った距離表示になっているということだ。たしか、この徳島マラソンは日本陸連の公認コースのはず。それなのに、こんな事ってあるんだろうか。まあ、あるんだろうなあ。信じられないけど。
距離表示に惑わされながらも、ここまでのトータルで計算すると、平均で1km6分ちょっとだ。結局、良い感じのペースを維持できている。良かった良かった。この調子だ。

しばらく行くと、名田橋のたもとの第2関門第3給水所がある。ここには初めて水以外に氷砂糖がある。3個ほどもらって口に入れる。レース中の氷砂糖は、とても美味しい。味が純粋で素直で喉に優しく、水が無くてもベタつかないし食べやすい。その直後の13km地点で確認すると、タイムは6分弱だ。ほんの少し速いけど、距離表示がアテにならないことが分かったので、あんまり細かい事は気にしない。
風は向かい風だけど、相変わらずそんなに強くなく、暑くなるのを防ぐには、ちょうどいいくらいの強さか。

この辺になると距離表示が安定してきたのか、自分のペースが安定しているのか分からないが、ほとんどぶれることなくペースを維持できた14km地点、15km地点ともに6分前後のペースを維持できている。14kmは全体の1/3であり、この時点でも足にダメージが全然感じられないので、調子は悪くないと言える。

15km地点を過ぎてしばらくすると、吉野川の対岸からスピーカーのアナウンスが微かに聞こえてくる。吉野川の川幅は1kmくらいありそうだけど、遮るものが無いから聞こえてくるのだろう。それによると、トップのランナーが対岸を反対方向に走っているようだ。よく見ると、なんとなく先導車らしき車列が見えるような気がする。
それにしても、速い。速すぎる。そりゃ彼らは僕らの倍くらいのスピードで走るから、こんなところですれ違ってもおかしくないが、それにしても、あまりの別世界ぶりに愕然とする。

その後も、16km地点、17km地点、18km地点、19地点と、プラスマイナス数秒差で、ほぼ6分のペースを完璧に維持し続ける。こんなに正確無比なロボットのようにペースを維持できているのだから、やはり最初は距離表示がおかしかったのだろう。
19km地点の直前の六条大橋のたもとにある第3関門には第4給水所があり、ここでも真面目に水を取る。

次に20km地点で時計を見ると、あれれ、少しペースが落ちている。少しと言えば少しだけど、ちょっと気になる落ち方だ。まだそんなに足は疲れていないと思うんだけど。距離表示に信頼性が乏しいので、まずはそのまま走り続ける。
しかし、次の21km地点でも、やや遅いままだ。う〜ん、遂に足に疲れが出始めたんだろうか。まあ、しかし、21kmまで来れば、もう半分。これは精神的に大きい。半分てことは、まだまだハーフマラソンと同じ21kmが残っているのだが、そう思うと絶望的な気分になるのだが、「わーい、半分終わったあ」って思うと、随分、気が楽になる。今のところ、まだまだ足は重くなっていない。この調子なら、少なくとも、あと10kmは走れるだろう。

21km地点には第5給水所がある。第4給水所があったばかりなので、さすがに今回はパスする。あんまり水を飲み過ぎてお腹を壊すのが怖い。少し前から、なんとなくお腹の調子がいまいちなのだ。気のせいかも知れないけど、できるだけお腹に無理な刺激は控えなければならない。

次の22km地点でもタイムは同じだ。やはり少しだけペースが落ちているのだろう。それでも、まだ許容範囲だ。このペースを最後まで維持できれば、フルマラソン自己ベストは出せるだろう。そう思うと、まだまだやる気は沸いてくる。
と思ったんだけど、次の23km地点で、またまた驚き。すごくペースが落ちている。ここまで一気に落ちることは考えにくいので、またまた距離表示に問題があるのかもしれないが、序盤と違って、そろそろ足も重くなりつつあるし、ペースダウンしても不思議ではないので、ちょっと怖い。
次の24km地点では、少しはマシになったが、それでもだいぶ遅いペースだ。ここが踏ん張りどころか。

ここで、ようやく折り返し西条大橋となる。西条大橋は南向きなので、ここで初めて追い風となる。なので、かなり気分的に楽で、毎年、気持ちよく走れる。
ところが、気持ち良く走っていたのに、突然、後ろからピッグが追い抜いていく。快調な走りだ。

(幹事長)「おや、軽快じゃん」
(ピッグ)「結構、調子良いですね」


一瞬、着いていこうかと思ったけど、明らかに今の僕とはペースが違うので、無理するのは止めた。まだ18kmも残っているし。
それにしても、ここへ来てペースはダウンし始めたとは言え、まだまだそんなに大きくペースは落ちていないはずなのに、明らかに着いていけないペースで抜かれるって、どういう事だろう。まさかピッグはペースアップしているのか?
西条橋を渡り終えると、第4関門第6給水所があり、25km地点となる。何か特産品のゆるキャラがいて、ハイタッチして通り過ぎると、すぐ後ろにネクタイしたおじさんもいて、行きがかりでハイタッチしてから「誰なんだ?」って思って振り返ってみると、徳島県知事だった。徳島マラソンは徳島県知事の肝いりで出来た大会だから力が入っている。

給水所で素早く水を取ってタイムを確認すると、西条大橋で気持ちよく走ったからか、タイムは再び6分ちょっとまで回復している。なかなか良い感じだ。25kmまで来たら、あとはもう逃げ切りだ。実はまだ17kmも残っているんだけど、なんとなくレース終盤に入ったような気分になる。
調子が悪くて無理している時は、ここで目的を半分以上達成したような気分になり、精神力は緩んでいき、これ以上頑張ろうと言う気が急激に無くなっていくが、今日は逆に、ますますやる気が沸いてきた。
ただ、次の26km地点でのタイムは再び少し悪くなっていた。もちろん、まだまだ余裕の範囲であり、このままのペースでいけば、自己ベストの更新は可能だ。

そして、いよいよ27km地点だ。何がいよいよかと言えば、ここにある第7給水所には、徳島マラソンで一番の楽しみであるそば米汁と半田そうめんの接待があるのだ。調子が悪い時は、ここで本格的に休憩し、そば米汁と半田そうめんをしっかり食べて、くつろぎ、元気回復して再び走り始める。ただ、元気回復して走り始めたつもりでも、数kmも走らないうちに、再び力尽きることになる。なぜかと言えば、27kmも走った地点で、しゃがみ込んでそば米汁と半田そうめんなんか食べてくつろいだりしたら、足がすっかり終了モードになってしまい、再びレースに参加するなんて不可能な状態になるのだ。もう絶対に回復することはない。いくら頑張ろうと思っても、足が言う事を聞かないのだ。
なので、いくら徳島マラソンで一番の楽しみと言えども、ここで本格的に休憩するかどうかは、難しい判断なのだ。今年で7回目となる徳島マラソンだが、今まで、ここで休憩せずにそば米汁と半田そうめんを食べなかったのは、4年前の第3回大会の時だけだ。あの時は、この27km地点までずうっと6分を切る快調なペースを続け、これは絶対に自己ベストを更新できると思い、給食も全てパスしてガンガン走ったのだ。ただ、ちょうど27km地点を過ぎてから、急激にペースダウンしていき、最後は足が痛くて走れなくなり、足を引きずりながらゴールするはめとなり、タイムはいまいちだった。
で、今回はどうしようかと一瞬だけ悩んだが、今年もここまで基本的にはなんとかペースを維持できていて、このままでいけば自己ベストの更新も可能だ。てことで、そば米汁と半田そうめんをパスして、給水もそこそこに走り続ける。前半はトイレも不安だったが、この調子なら、最後までトイレにも行かずに済むかも知れない。

ところが、給食を完全にパスしてまで走っていると言うのに、その後のペースは暗雲が立ちこめてきた。まだまだ自己ベスト更新は可能なペースだけど、28km地点、29km地点と、ジワジワとペースダウンを続けているのだ。ペースの回復は無理としても、どこかでペースダウンが止まればいいが。
ただ、28kmを過ぎると、もう残りは1/3だ。2/3も終わったってことだ。距離で言えば、まだ14kmも残っているが、2/3が終わったと思うと、だいぶ気が楽になる

30km地点の手前の六条大橋のたもとにある第5関門第8給水所では、バナナやパンなど、給食も充実しているんだけど、水は少しだけ飲んだが、食べ物は取らなかった。ペースがジワジワ落ちているので、タイムが気になって給食を取る気になれない。なんとかペースを維持したい。30km地点では、かろうじて少しだけペースアップできた。よしよし、この調子だ。

ところが、次の31km地点、32km地点と、またまたジワジワとタイムは悪くなっていく。幸い、まだまだ足は痛くないんだけど、確実に足は重くなっている。一生懸命足を出しているつもりなのに、あんまり前に出ていない。なんとなく追い越していくランナーが多くなったような気がする。みんながペースアップしたとは考えにくいので、僕がペースダウンしているのは間違いない。

天気は、なんとなく良くなってきて、雨の心配はすっかり無くなったような気配。ずうっと曇ったままなので、気温は高くなっていないから肌寒いけど、そんなに辛いほど寒くはない。第9給水所でも少しだけ水を飲む。
徳島マラソンは沿道の応援が見応えがある。前半にも個人的なバンド演奏などがあって楽しいが、後半は本格的なパフォーマンスがたくさんある。なかでも名物の阿波踊りは充実してて、こういうのを見ると確かに元気が沸いてくる。
次の33km地点では、少しだけタイムが持ち直したが、それも束の間、34km地点では遂に7分をオーバーしてしまった。これは非常にまずい。なぜなら、もう自己ベストの更新が不可能な領域に達してしまったからだ。ここから持ち直せばいいが、フルマラソンで終盤に来てのペースアップは不可能だろう。
さすがに気合いを入れて、次の35km地点では少しだけ盛り返したが、それが最後の悪あがきだった。

名田橋のたもとにある第6関門第10給水所では、もう水もパスする。ここまで来て脱水になることは無いだろうし、体も冷えてきて水は欲しくないし、そもそも水を取りに行く元気さえ失ってきた。

次の36km地点でのタイムは、なんとか持ちこたえたが、そこで力の限界となり、その後は急激にペースダウンした。37km地点では、まだマシだったが、四国三郎橋のたもとの38km地点以降は、なんと8分を大幅に超えてしまい、自己ベスト更新なんて、どっかに吹っ飛んでしまった。あまりのペースダウンぶりに、本当にこんな遅いペースで走っているのか時計を疑ったが、自分の足を見ると、確かに、ほとんど前に出ていない。まるで歩いているような足取りだ。

それでも、今日は、まだ足が痛くならない。疲労の極地となって足が痺れて動かないが、少なくとも痛くはない。痛くないから、なんとか走り続けられる。ほんの小さな緩やかな坂でも、終盤になると、周囲のランナーは大半が歩いているが、なんとか歩かずに走り続けられる。ペースは歩いてもほとんど同じなので、無理して歩く意味は乏しいが、「最後まで歩かずに完走したよ!」と言えるために、無理して走る。ま、走るって言っても、はたから見ていると歩いているとしかみえないだろうけど。それでも、足が痛くないから気を紛らす必要が無いので、結局、最後までウォークマンは聴かなかった。
ただ、ここまでペースダウンしてくると、もはやランニングと言うよりウォーキングに近い運動量になり、身体から熱が発生しなくなり、身体が冷えてくる。恐れていた事態だ。フルマラソンの終盤は身体が冷えて寒くなるのだ。今日みたいに気温が低い日は、寒さが堪える。なんとか頑張ってエネルギーを発散させようと思うんだけど、足が動かないから、もう無理だ。

四国三郎橋のたもとの辺りで、ようやく吉野川の本流の堤防を降りて、ちょこちょこと道を曲がり、鮎喰川という支流の堤防に移る。もう残り4kmと思うと、一気にスパートしたくなる。いくらなんでも、もう4kmだ。ところが、もう足が限界にきているので、スパートどころか、歩かずに走るのが精一杯だ。ただ、しつこいようだけど、足が痛くないので、歩きたいとはあんまり思わない。周囲には歩いているランナーも多いが、それを横目に歩くようなペースではあるが走り続ける。

第7関門の直後の39km地点も、その次の40km地点も、ペースはほぼ同じで、絶望的なタイムだ。ただ、歩かずに走り続けているので、ペースダウンも限界にきたようで、それ以上の悪化はない。フルマラソン自己ベストは、とうの昔に絶望になったが、もしかしたら、この徳島マラソンでの大会自己ベストは可能かもしれない。徳島マラソンでの過去のベストタイムを覚えてないので、よく分からないのだけど、あんまり良いタイムを出した記憶が無いから、もしかして大会自己ベストは可能かもしれない。なんとなくはっきりした目標じゃないから気合いが入らないが、今のところ、これが唯一のモチベーション維持の材料だ。

残り2kmになると、さすがに精神力でスパートできるかと思ったけど、甘かった。全然スパートできない。そういうもんかなあ。足が全然動かない。41km地点のタイムも、ほぼ同じペースだ。

で、本当に最後の最後で、大通りに出てゴールの陸上競技場が見えてきたら、さすがに一気に気合いがみなぎり、ペースが上がった。こういうのは、完全に精神力のたまものであり、なんとか自分でコントロールして、もっと前からペースアップできたらいいのにとは思うけど、なかなかうまくはいかないよなあ。
それでも、最後は、その辺のランナーをごぼう抜きにして陸上競技場に入り、一気にゴールした。ま、一気にゴールしたって言っても、既にとっても遅くなってるんだけど。



結果は、結局、平凡なタイムだ。大会自己ベストが更新できているのかどうかは、家に帰って調べないと分からない。でも、少なくとも去年よりは30分以上速かった。去年のタイムが、いかに悪かったかが分かるというものだが、それにしても、最後まで足が痛くならなかったのが大きな収穫だ。去年の大阪マラソンで、最初から徹底して抑えたペースで走れば、最後まで足が痛くならずに済む、という作戦が、再び立証された訳であり、2回連続で成功したとなると、これはもう確実な戦法と言えよう。最初から徹底して抑えたペースで走るから、そんなに良いタイムは出るはずがないが、最後まで足が痛くならずに済むと、少なくとも辛くはない。途中で、フルマラソンに出た事を後悔したりすることはない。また出たいと思うようになれる。大きな収穫だ。
もちろん、今日は、例年のような強い風が無く、また気温も低めで、絶好のマラソン日和だったので、そのおかげかもしれないが。

最後まで歩かなかった上に、最後の最後でスパートしたから、ゴールした後は珍しく足が痺れたような感覚。昔はマラソンでゴールしたら足が痛くて動けなくなったものだが、最近、惨敗したレースの後ってのは、頑張れてないから余力があり、ゴールしても平気で歩けてしまい、それが情けなく感じられる。でも今日は、久しぶりにゴール後の足の痺れが心地よい
記録証をもらい、おばちゃん達の万歳三唱サービスを受けて、芝生にへたり込むと、しばらく足が動かなくなる。久しぶりの快感だ。

取りあえず、預けておいた荷物を受け取り、既にゴールしているはずのピッグに電話してみるが、出ない。屋外で、しかもざわついているから、呼び出し音も聞こえないのかもしれない。
久しぶりに足に疲労が溜まり、いったんしゃがみ込むと足を動かしづらくなり、着替えに苦労する。ところが、ダラダラ着替えていたら雨が降り出した。もう降らないのかと思ったら、だいぶ遅れて降り始めた。慌てて傘を差して立ち上がったけど、そんなに大降りにはならないうちに止んだ。

立ち上がったついでに、冷えた身体を温めるために、タダ券をくれたうどんを食べに行く。コシのある讃岐うどんと違って、徳島のうどんは、これ以上柔らかくしたら、ちぎれてしまって箸で持てない、くらいの柔らかさだが、冷えた身体に暖かいうどんが非常に嬉しい。タダだし。

うどんを食べて、ようやく落ち着いて、さらにダラダラしていると支部長から電話がかかってきた。
今、ゾウさんと一緒に着替えているとのことで、ピッグはゴールの横で待っているそうだ。て事で、再びゴール横へ行くと、ピッグが待っていた

(幹事長)「どうやったん?」
(ピッグ)「4時間15分でしたね」


僕より20分も速い。狙っていたサブフォーは駄目だったが、それでも相変わらず調子良いなあ。

(幹事長)「あのままペースダウンしなかったん?」
(ピッグ)「あんまり落ちなかったですね」


確かに、24km地点で抜かれて、あのままのペースで走れば、それくらいでゴールできるだろう。僕も、あの辺りのペースを維持できれば、かなり良いタイムだったはずだし。
ピッグも既にうどんは食べたらしく、その後、ゴール横でみんなを待っているのだ。

しばらくしたら支部長とゾウさんがやってきた

(幹事長)「どうやったん?」
(支部長)「くくくっ、ゾウさんに負けてしまった・・・」
(幹事長)「えっ、ほんとに!?」
(支部長)「置いてかれてしまったのよ」
(ゾウ)「だって歩いているから」


終盤になって支部長が歩いているところをゾウさんが抜いたとのことだ。
(幹事長)「今日は一歩も歩かなかったもんねーっ!」
(ゾウ)「私も一歩も歩きませんでしたよ!」
(ピッグ)「僕も歩きませんでしたね」
(支部長)「もう歩きまくりやったな」


支部長は途中、スマホで写真を撮りまくっていた。これは足が動かなくなって歩いたというより、最初から真剣に完走する気が無かったとしか言いようがない。

それにしてもヤイさんがゴールしない。いくら練習してないと言っても、あれだけ基礎体力がある人だから、そんなに遅くなるはずはないんだけど、いつまで経ってもゴールしない。どしたんやろか、って思っていたら、ようやく6時間近くなってからゴールした。

(幹事長)「一体どしたんですか?」
(ヤイ)「足の関節が痛くて」


なんでも、走る前から故障気味だったそうだ。さすがのヤイさんも故障には勝てなかったというか、無理するのは危険だものね。
それでも、なんとかゴールできたので良かった良かった。
ところで、川内優輝選手だが、第1回大会の僕と同じように、お腹を壊して途中でトイレに駆け込んだりしながら、なんと2位に9分近い差を着けて圧勝したそうだ。トイレで20分以上苦しんだ僕と違って川内選手は3分で出てきたそうだから、手際の良さが際だつが、それにしても、それだけタイムロスしても圧勝するなんて、やっぱり次元が違うなあ。



他のメンバーもうどんを食べ終わり、シャトルバスに乗って臨時駐車場へ行く。思った通り、沖洲マリンターミナルと違って吉野川河川敷へは、すぐに着いた。
そして、去年と同じあいあい温泉に行く。認知症の進んだ我々だが、あーだこーだ言いながら、なんとかたどり着くことができた。去年と同じく、駐車場はいっぱいで、温泉の中も結構、混雑していた。マラソン帰りの人も少しはいるようだが、よく流行っている温泉だ。露天風呂で足を揉みほぐすと、気持ち良い。

(幹事長)「それにしても、今年は最後まで足が痛くならなかったのが嬉しいなあ」
(支部長)「いや、私も、そんなに痛くないな」
(幹事長)「それは歩きすぎやって」


後から調べてみると、今回のタイムは平凡なものではあったが、一応、この徳島マラソンではギリギリで大会自己ベストだった。

(幹事長)「やったーっ!」
(ピッグ)「あれで大会自己ベストって、やっぱり過去は惨敗続きだったんですねえ」


終盤、目標を見失ってモチベーションが下がりかけたが、まさかとは思いつつ、もしかして大会自己ベストは達成できるかも、っていう微かな希望だけで最後まで完走したのが良かった。やっぱり最後まで取りあえず頑張る事が大事だな。
て言うか、歩かなければ、これくらいのタイムではゴールできるってことですね。



さて、次のレースだが、去年は1ヵ月後の小豆島オリーブマラソンの前に、超マイナーな徳島航空基地マラソン大会に出た。自衛隊の徳島航空基地で開催されるレースだ。でも今年は、それが6月開催になったので、次はオリーブマラソンだ。毎年、徳島マラソンでフルマラソンを走った1ヵ月後なので、ロクに練習しなくてもOKだろうと甘い考えで臨み、打ち砕かれるのだ。

(ピッグ)「今年は真面目に練習を継続しますか」
(幹事長)「でも暖かくなってきたから、これからは自転車のシーズンなんよね」
(支部長)「そうそう。自転車は楽しいで。ピッグやゾウさんも買おうよ」
(ピッグ)「えと、また考えときます」
(ゾウ)「私は嫌ですからね!」


どうもゾウさんは自転車に対して良くないイメージを抱いているなあ。
でも、これからはランニングと自転車とバランス良く楽しまなければ。


〜おしまい〜




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