第1回 笑って走れば福来たる駅伝
2023年4月1日(土)、第1回笑って走れば福来たる駅伝 in 香川なんていうレースが開催された。
去年の暮に支部長が持ってきた案件だ。
(支部長)「笑って走れば福来たる駅伝なんてのが開催されるらしいんよ」
(幹事長)「なんじゃ、そりゃ」
(支部長)「福士加代子が開催するらしい」
(幹事長)「福士加代子とな。遠慮しとくわ」
何を隠そう、何も隠しはしない、我々一同は福士加代子に対しては高橋尚子様に対するような好意は抱いていない。
(ピッグ)「一同って言っても、幹事長と支部長だけですよね」
(幹事長)「長老二人が乗り気でないんやから、それで十分じゃ」
(支部長)「いや、違うんよ。出場してくれって頼まれたんよ」
なんでも支部長が陸上部の関係者から依頼されたそうだ。もちろん私も知っている人だ。
初めて開催するので、どれくらい参加者がいるか分からないので、成功させるために我々にも是非出場してくれとの事だった。
説明資料では、最大150チームの参加を目指す、となっている。何百チームも出る満濃公園リレーマラソンに比べたら少し控えめだが、初めての開催なので知名度も低く、簡単には集まらないのかもしれない。
そういう事情なら、その人のために参加せんといかん。て訳で、我々も参加する事になった。
普通のマラソン大会じゃなくて駅伝にしたのは、福士加代子が駅伝が好きだかららしい。
「一人で走っているより、みんなと走っているのが好き。仲間のためにタスキをつなぐのが好き」との事だ。
(幹事長)「私らの考えとは異なるな」
(支部長)「根本的に異なるな」
私たちは駅伝と言えば満濃公園リレーマラソンくらいしか出ていないが、そもそも駅伝に対する姿勢が全く異なる。
福士加代子が戦ってきた駅伝競走は、他のチームとの戦いだ。チームとして勝つために全員が一生懸命に走るものだ。チームメイトは味方であり、一丸となって勝利を目指す仲間だ。
しかし、私たちにとって駅伝は、あくまでもチーム内のメンバーとの熱き戦いだ。駅伝なので同時には走らないが、各人のタイムを計測し、タイムを競い合うのだ。
他のチームの事なんて眼中にない。そもそも私たちは上位を狙えるような力は無いから、全体の順位なんてどうでもいい。
他のメンバーが遅い方が相対的に自分が優位に立てるので、大歓迎だ。そんな状況なので、一丸となって勝利を目指すなんて発想は無い。決して、仲間のためにタスキをつないでいる訳ではない。
(ライオン4世)「えっ!?そうなんですか?てっきりチームとして上位を目指しているのかと思ってました」
(幹事長)「君は私との戦いに専念すれば良いのだよ」
普通のマラソン大会に出ている時も同じだ。全体の中での順位なんて気にしない。大会のレベルによって順位は大きく異なるし、そもそも私たちは上位を狙えるような力は無いから、全体の順位なんて意味は無い。
それより、チームメイトとの戦いがリアルで、かつ熾烈だ。
長いペンギンズの歴史の中で、かつてはF川や中山選手(元ダイエー、前ジュビロ)と熱き戦いを繰り広げていた。中山選手とは塩江温泉アドベンチャーマラソンで熾烈な最下位争いを繰り広げた事もある。
また、ここんとこは永遠のライバルである支部長やピッグとの戦いに明け暮れている。
(ライオン4世)「そうだったんですか。てっきり、みんな仲良しなのかと思ってました」
(幹事長)「先輩女子部員を見習いたまえ」
ライオン4世の先輩女子部員のゾウさんは、今年の坂出天狗マラソンのゴール直前で支部長を抜き去ったし、同じく先輩女子部員ののらちゃんは今年の善通寺五岳山空海トレイルのゴール直前でD木谷さんを抜き去った。
このような内輪の熾烈な争いこそが我々の力の源泉だ。
(ライオン4世)「なんだか人間性が歪んでますね」
ところで、大会名が笑って走れば福来たる駅伝なんて妙な名前になっている。
(幹事長)「何なん、これ?」
(支部長)「大会コンセプトらしいよ」
大会のコンセプトは「走って笑って元気にする!」であり、「福士加代子が兼ね備えている笑顔と走りで、参加者や会場に来たみんなを元気にします」との事だ。
(幹事長)「なんで福士加代子が香川で駅伝を開催するん?」
(支部長)「香川が第三の故郷なんやって」
第一の故郷は、もちろん生まれ故郷の青森であり、第二の故郷は実業団で所属していたワコールがある京都だ。
それらに比べて、香川は大した意味は無いが、香川ではほとんど負け無しで相性が良いらしい。
彼女が初めて日本記録(ジュニア3000m)を出したのは香川だし、ハーフマラソンでアジア記録を出したのも2006年の丸亀マラソンだったからだ。
(幹事長)「第三の故郷と言うには、ちょっと弱いな」
(支部長)「無理があるな。こじつけやね」
でも、なんとなく楽しそうな大会ではある。
〜 またまた動物チームで参戦 〜
今回の駅伝の会場は屋島陸上競技場だ。この競技場のトラックや外周を利用した1周1.8kmのコースを走るらしい。
1チームにエントリーできるランナーの数は2名〜8名だ。
(幹事長)「一人何周走るんかいな?」
(支部長)「全部で8周やから、8人出たら一人1周や」
(幹事長)「え?そんなに少ないの?」
満濃公園リレーマラソンは1周2kmのコースを全部で21周走るから、8人で出ても一人2〜3周は走らなければならない。参加メンバーが少ないと、もっと走らなければならない。
おまけに、我々はジャンケンシステムを採用しているので、過去には5周も走らされた事もある。
だが今回は全部で8周しか走らないので、定員いっぱいの8人が出たら、一人1周走るだけになる。
(幹事長)「1周しか走らないんやったら、真剣にガチで走るか!」
(支部長)「着ぐるみでガチで走れるかな?」
(幹事長)「え?また着ぐるみで走るん?」
一人僅か1周なので、ガチで真剣に走ろうかと思ったのに、今回も満濃公園リレーマラソンと同じように着ぐるみで走ると言う。大会関係者から、動物チームでの出場を求められているようなのだ。
満濃公園リレーマラソンでのペンギンズの活躍ぶりがあまりにも有名なので、ペンギンズ=動物チームと思っている人が多く、我々は常にどんなレースでも動物の格好で走っていると勘違いされがちだ。
今回、動物チームでの出場を求めてきた大会関係者も、そうだろう。
(幹事長)「実際に動物で出てるのは満濃公園リレーマラソンだけなのにな」
(ピッグ)「真面目なレースに動物で出られるほどの実力は無いですからね」
最近は、たいていのマラソン大会で仮装ランナーがいる。11月の神戸マラソンではマイケルジャクソンが走っていて感動した。
ただ、仮装で出て惨敗しているようではシャレにならない。仮装なのにガンガン走って普通のランナーを蹴散らしてこそ格好良いのだ。
なので、仮装ランナーはたいていは実力者であり、神戸マラソンのマイケルジャクソンも、時々ムーンウォークしながら走っていたが、よっぽど実力が無ければ不可能な技だ。
なので、我々レベルではマジなレースを仮装して走るのは憚られる。満濃公園リレーマラソンは、そもそもの開催趣旨からしてもグダグダな大会なので、我々レベルが仮装してヨタヨタ走っても許される。
(幹事長)「今回の駅伝もグダグダっぽいから着ぐるみは許されるやろな」
(支部長)「大会名からして大歓迎やろ」
満濃公園リレーマラソンは1月なので暑くはないが、4月のレースで着ぐるみは暑そうだ。それに、そもそも着ぐるみでは真剣に走ったところで、それほど速くは走れない。
なので、真剣に走るのは早々に断念した。
て事で、今回の大会にはカッパ大王様、トラ、ピッグ、ティガー、ライオン4世、新クマ、元祖馬に加え、新人の新ペンギンの8匹が出場する事となった。
ところが、ここで問題が発生した。クマが行方不明なのだ。クマはコロナ騒ぎでマラソン大会が中断する前まではクマが着ていた。その頃、新クマは馬を着て馬2号になっていた。馬はもともと元祖馬の所有物だったが、元祖馬が足を故障して走れなくなっていたため、長らく新クマが借りて馬2号となっていたのだ。ところが今年の満濃公園リレーマラソンから元祖馬が復活したので、馬は元祖馬の元に戻った。そのため馬2号はクマを着て新クマになることにしていた。そのクマが行方不明なのだ。
(ピッグ)「知らない人が読んだら意味不明ですね」
クマは関係者が捜索したものの、発見できなかったので、新クマはカッパが保管していたトリを着てトリになることになった。
また新人の新ペンギンはペンギン君が所有するペンギン1号を借りて新ペンギンとして参加する事になった。
なぜペンギン2号ではなくて新ペンギンという名前にしたのかと言うと、ペンギン君はペンギン1号だけでなくペンギン2号も所有しており、それとの区別をつけるためだ。
もしペンギン2号という名前にしたら、ペンギン1号を着たペンギン2号という事になってしまい、何が何やら訳が分からなくなるからだ。
(ピッグ)「もう既に訳が分かりませんけど」
ところが、その後、元祖馬の足の状態が再び悪化し、どうも走れそうにないって事態になった。
そのため、名古屋ウィメンズマラソンで足を痛めて徳島マラソンを欠場したゾウさんにお願いし、ゆっくりで良いから走ってもらう事になった。
ところが、病院で診てもらった結果、ゾウさんの足の状態は思った以上に悪く、しばらくは休養せざるを得なくなった。
それに加えて、徳島マラソンで途中リタイアしたトラの足も思った以上に悪く、病院で診てもらったら股関節も膝もかなり状態が悪いとの事だった。
て事で、2匹が走れないという緊急事態となったが、最終的には元祖馬が「無理せず走れるだけ走ってみる」との事で参加する事になり、またトラも同じように「無理せず走れるだけ走ってみる」との事で参加する事になり、当初予定通りの8匹で出場する事になった。
〜 屋島競技場へ出発 〜
1週間前から天気予報では大会の前後は晴れだが当日だけ雨なんていう嫌がらせの予報だった。
しかし、私は気にしてなかった。いくら周辺の地域に雨が降っていても、日本のアタカマ砂漠と言われる香川だけは雨は降らないだろうと思っていた。
そしたら案の定、雨どころか朝から快晴となった。
今年は満濃公園リレーマラソンと言い丸亀マラソンと言い坂出天狗マラソンと言い善通寺五岳山空海トレイルと言い徳島マラソンと言い、私が出たマラソン大会はことごとく良い天気に恵まれている。
(カッパ)「しつこいようだが、どう考えても私の人徳のおかげとしか言いようがない」
(トラ)「しつこいようだが、人徳がある人は自分では言わんぞ」
(カッパ)「だって誰も言ってくれないんだも〜ん」
高松組はピッグの車に乗って出発した。
会場は屋島陸上競技場だが、臨時駐車場は屋島病院跡地だ。
予定通り8時頃に臨時駐車場に着いた直後に、丸亀から元祖馬がティガーを乗せて到着し、また別便だった新ペンギンも到着し、全員集合となった。
屋島陸上競技場に着くと、既に多くのチームが集まって賑わっていた。
受付すると参加賞のペラペラのトートバッグをくれた。初めて参加する大会では、できれば記念Tシャツが欲しいところだが、参加費が1チーム15000円で一人当たり2000円弱なので文句は言えない。
記念Tシャツは売店で売っていたが、2500円もするので諦めた。
受付でもらったパンフレットを見ると、なんと184チームもエントリーしている。当初の希望は150チームだったから、かなり集まったようだ。
受付を済ませたら、2階のスタンドに上がり、場所どりする。天気は良いけど気温が低く、暖を求めて日当たりの良い場所に陣取った。
場所が決まったら、その場で着替えて、動物チームの出来上がりだ。
(ピッグ)「トリは持ってきましたか?」
(カッパ)「あっ、忘れた!」
トリが着る予定だったトリは私が保管している。つい先日、保管している実家へわざわざ取りに行ってたんだけど、今日、持ってくるのを忘れてしまった。
(カッパ)「わわわわーっ、どないしょーっ!」
(ティガー)「骨付き鳥奉行があるよ」
ティガーは丸亀マラソンの時に、丸亀市観光協会の人に頼まれて、宣伝のために骨付き鳥奉行の被り物を被って走ろうとしたから、厳しく指導して止めさせた。丸亀マラソンは1秒でも速く真剣に走らなければならないからだ。
その時は諦めたティガーだが、なぜか骨付き鳥奉行の被り物に未練があるらしく、今日こそは被って走ろうと思って持ってきてたのだ。今日の駅伝はグダグダ大会なので、私が禁止する事は無いと考えたのだ。
確かに、今日は何を被ってもいいけど、ティガーが頭に骨付き鳥奉行を被っていたら、何が何やら分からなくなるぞ。何を考えとんだ?
でも、私がトリを持ってくるのを忘れた今となっては、とても貴重な骨付き鳥奉行だ。て事で、トリは急遽、骨付き鳥奉行となった。
笑って走れば福来たる駅伝と言うタイトルの大会なので、似たような仮装チームがたくさん出場するものと思っていたら、見渡す限り、ほとんどいない。それどころか、寒いのにランニングシャツのガチなチームも多い。
(カッパ)「みんな何を考えとるんや?そんな真面目な駅伝か?」
(トラ)「意外やなあ。私らが勘違いしてるんかな?」
一生懸命探していたら、ようやく三蔵法師や孫悟空のチームがいた。それからスパイダーマンもいたが、そのチームはスパイダーマンが一人いるだけで他のメンバーは普通の格好をしていた。
着替えが終わると走る順番を決めなければならない。本当は、満濃公園リレーマラソンと同じように、次のランナーはその都度ジャンケンで決めていきたいが、事前に事務局に走る順番を提出する必要があるとの事だ。
満濃公園リレーマラソンではジャンケンの勝敗によって何周走るかも決まるので、ジャンケンに負けると何回でも走らされるうえに、その都度のジャンケンなので、いつ順番が回ってくるか分からない緊張感というか恐怖感が支配するスリリングなシステムだ。そのため、みんな必死になってジャンケンする。
でも今日は1人1周ってのが決まっていて、単に順番を決めるだけなので、お気楽なジャンケンだ。
ただ、満濃公園リレーマラソンと同様に、ジャンケンに勝ったものが実質的に負けと言う分かりにくいシステムだ。
これはかつてトリ2号から出された「ジャンケンに勝ったら走らなくてもいいから喜ぶなんて、アスリートとして情けない。ジャンケンに勝ったら走ることができるので喜ぶっていうのが、ランナーとして本来あるべき前向きな姿勢だ」という提案により、ジャンケンは負けた者が走るんじゃなくて、勝った者が走るという規則に基づくものだ。
なので、今日のジャンケンは勝った者から順番に走っていく。
て事で、厳粛にジャンケンを執り行う。8人でジャンケンすると、なかなか決まらない。20回くらいやって、ようやく勝ちグループと負けグループに分かれ、さらに勝ちグループで何回かジャンケンして最終的に元祖馬がトップランナーになった。
続いて第2走者を決めるジャンケンだ。
(ライオン4世)「え?今のジャンケンの続きで1番から8番まで決めるんじゃないんですか」
(カッパ)「甘いな。最初からやり直しや」
第2走者を決めるジャンケンは、さっきのジャンケンは忘れて、最初から7人でジャンケンを始める。なので、今度もなかなか決まらない。
(ライオン4世)「時間がかかるのに何のために最初からやるんですか?」
(カッパ)「この方が緊張感があって楽しいやろ?」
また時間はかかったが、なんとかピッグが2番目を走る事になった。
続いて第3走者を決めるジャンケンではカッパに決まり、その後はティガー、ライオン4世、新ペンギン、骨付き鳥奉行、そしてアンカーはトラという順番になった。
(カッパ)「重要なアンカーがトラに決まって感無量じゃな」
(トラ)「足の具合が悪くなっても格好悪いから歩けなんがな」
グラウンドを見ていると、特設ステージが設けられており、そこでみんな記念撮影をしている。
我々も記念撮影しようと思ってステージに上がると、大会関係者が福士加代子を呼んできてくれて、一緒に記念撮影させてもらった。
ステージで記念撮影
(左から骨付き鳥奉行、カッパ大魔王、元祖馬、ティガー、福士加代子、ライオン4世、新ペンギン、トラ、ピッグ)
9時まではコースを試走できるので、試走する事にした。
小出監督が言ってたように、我々のような一般ピープルには通常のマラソン大会では体力を無駄に消耗するウォーミングアップは百害あって一利無しだ。どうせ序盤は大混雑でまともに走れないので、その時がウォーミングアップだ。
なので、我々は普段は試走とかウォーミングアップは一切やらない。
でも、この大会は初めてだし、コースがトンでもなくややこしいので、1回は試走しておかなければならない。
(ライオン4世)「前のランナーに着いていったら分かりますよね」
(カッパ)「ふふふ。前のランナーに置いていかれたらどうする?」
今日はダラダラ走るつもりなので、前にランナーがいなくなる可能性もある。なので、自分でコースを把握しておかなければならない。
(ピッグ)「スタッフが誘導してくれますよね」
(カッパ)「ふふふ。それはどうかな?」
善通寺五岳山空海トレイルでは肝心な分岐点にスタッフがいなくて道に迷うランナーが続出した。油断してはいけない。
て事で、みんなで軽〜くダラダラと走り出す。
コースは、まずトラックを通常のゴールラインから左回りに3/4周走ったらトラックの西口から外に出て、すぐに右に折れて、右回りに競技場の外周を半分ちょっと走って反対側(東側)まで行き、そこで左(東)に折れて少し走り、そこで折り返してスロープを西に向いて上り、2階まで上がったら、再び折り返して、今度は競技場の2階部分の外周を左回りに1周走り、スロープのところに戻ってきたら、今度はスロープを東に向いて下り、下り終わったら折り返して競技場の1階部分の外周を右回りに走り、トラックの入り口まで来たらトラックの中に入り、ホームストレートを走ってゴールラインまで来たらゴールだ。
(カッパ)「もう何が何やら」
(ライオン4世)「ユーチューブでコース紹介をやってますよ」
(カッパ)「そんなもん見て勉強してるんか!」
ライオン4世は意外に真面目で、ちゃんとコースの下調べをしてきているが、年寄りの私らはスマホの小さな画面なんて見る気がしないので、そななものは見ていない。とにかく、試走しないことには皆目見当がつかない。
て事で、ゆっくり走りだすが、例によってトラがハイスピードで走り出す。
(カッパ)「足が痛いんと違うん!?」
(トラ)「これ以上ゆっくり走れない」
(カッパ)「そんな走り方ばっかりしてるから足を故障するんやってば!」
なんとかトラの背中を追いかけながら走っていくと、ようやくコースの様子が分かってきた。
トラックの中は何の問題も無いけど、トラックから外に出るととても複雑なコースで、競技場の外周を走る時は要注意だ。基本的に狭くて、柱の間を走るような箇所もあり、気を付けないと建物にぶつかってしまう。
今は試走だから良いけど、これがレースになると184チームものランナーが走る訳だから、狭い通路をひしめき合って走る事になり、かなり危険だ。
我々はのんびりゆっくり走るつもりだけど、他のチームはガチなチームが多そうだから、蹴散らされそうだ。
ただ、走りにくいとは言え、似たような距離の満濃公園リレーマラソンのコースに比べたら、大変さは少しマシかもしれない。満濃公園リレーマラソンのコースは大きな坂があり、本当に大変だが、ここのコースは上り坂は2階に上がるスロープだけなので、それほど大変ではない。
試走が終わってスタンドに戻ると、2004年、2005年、2006年と3年間、満濃公園リレーマラソンで大活躍していたチャーミーモンキーがやってきた。
(カッパ)「うわあ、久しぶり!元気そうやなあ!」
(チャーミーモンキー)「ウキウキッ!」
なんと、彼女は家族や友人とチームを組んで出場するとの事だ。それにしても、ペンギンズで走っていた頃から20年近く経っているというのに、全然変わらず若々しい。
(カッパ)「久しぶりに来年の満濃公園リレーマラソンに出てよ」
(チャーミーモンキー)「ウッキィ?」
9:30からはグラウンドで開会式が行われ、それが終わると第一走者の集合が始まった。集合は10:10までだ。
スタートは10:30なので、そんなに慌てる必要は無いと思ったけど、ここで意外な問題が発生した。
スタンドからグラウンドに降りていくには仮設の階段を通っていくんだけど、この階段が危険なほど狭い。スタンドに上がる時はまだしも、グラウンドに降りる時は怖いくらいだ。人一人がかろうじて通れるくらいの狭さであり、すれ違う事は不可能だ。
それでも、なんとか第一走者の元祖馬が制限時間までに降りていき、続いて第二走者のピッグも早々に降りていって待機した。
〜 スタート 〜
スタートの時間が近づいてくると、第一走者たちがスタートラインに整列する。整列すると言っても、184人もいるから、かなりゴチャゴチャだ。前の方には、いかにも速そうなランナーたちが並んでいる。
我がチームの第一走者の元祖馬も、かつては高速ランナーだったので、こういう時には前方に並んでいた。しかし、今日は足の故障により、最後まで走れるかどうかも分からない状態なので、後ろの方に控えめに並んでいる。
いよいよスタートの時間となり、号砲と共にランナーが一斉に飛び出す。前方の集団は、やはりめちゃんこ速い。
(カッパ)「こななフザけた駅伝なのに、なんであそこまでムキになって走るんだ?」
(トラ)「フザけた駅伝ではないのかも」
元祖馬は周囲に惑わされずに足の様子を伺いながら慎重に走っていく。それほど遅いとも思えないんだけど、大半のチームは第一走者に速いランナーを走らせているため、全体の中ではかなり後ろの方を走っている。
第一走者たちは、トラックを3/4周したらトラックの西口から外に出て視界から消えていった。
しばらくすると、トラックの外周を回ってスロープを上ってきたランナーたちが、我々が陣取っている場所のすぐ横を走っていく。
しばらく待っていたら、元祖馬もやってきた。足の調子は良くなさそうだが、それでもなんとか走っていく。
トラックの2階部分の外周を一周したら、再び視界から消え、しばらくすると1階の外周を半周してトラックに戻ってくる。
スタートラインでは次のピッグが待っており、スムーズにタスキを受け渡した。
ピッグの次はカッパ大魔王様だ。だいたいみんな1周するのに10分前後かかるようなので、呑気に構えていた。
やがてピッグも2階の外周を走り終え、1階の外周に降りたようなので、そろそろグラウンドに降りなければならない。
ところが、スタンドからグラウンドに降りていく狭い仮設階段が大混雑して詰まっている。下から上がってくる人たちの列が途切れないため、上から下に降りようとする人が通れないのだ。
上がる人と降りる人が代わりばんこに何人かずつ交代で通るように交通整理をしてくれたら問題ないんだけど、交通整理が無いため、次から次へと永遠に下の人が上がってきて、いつまで経っても上の人はグラウンドに降りていく事ができない。
これじゃあリレーできないやんかって焦ってトラックの入口を見ると、なんとピッグが早くもトラックに入ってきた。あかんがな!
て事で、待っている人たちを強引にかき分け、下から上ってくる人たちも横に押しのけ、強引に狭い階段を下りて行った。それで、なんとかギリギリで間に合ってタスキを受け取れた。
この狭すぎる階段の問題点については、今後、絶対に改善して欲しいぞ。
なんとかタスキを受け取ると、まずはトラックを走る。184チームも出ているので、ランナーの数は多いが、同じようなタイミングでタスキを受け渡したチームのランナーは、だいたい同じようなペースで走っているので、それほど混乱は無く、集団として動いていく。
と思ったら、時々、猛スピードで追い抜いていくランナーがいる。速いチームは、なんと、もう4人目のランナーにリレーしているのだ。
同じレースに出ていると言っても、とても速いチームと、我々のようなダラダラしたチームと、二極化されてレースは進んでいく。
トラックを左回りに3/4周走ったら、トラックの西口から外に出て、右に折れて競技場の外周を右回りに走る。
競技場の北側の壁に沿って走るんだけど、通路は狭くて圧迫感があり、他のランナーにぶつかりそうな気がして緊張する。それに、日は当たらないし、観客も居ないので、地味な区間だ。
ふと前を見ると、会社の後輩のS山君らしき人が走っている。彼がランニングをするなんて思ってもみなかったので確かめたくて追いつこうとするんだけど、意外に速い。無理して追いついて後から疲れると困るので諦める。
競技場の東側まで走ると、狭い通路から解放されて日なたに出るが、コースはクネクネして走りにくい。
競技場の敷地の東端まで進むと、そこで折り返してスロープを上っていく。緩やかな坂なので、大したことは無いが、なんとなく足は重くなる。でも、スロープを上がると、チームのメンバーが待っているので、歩く訳にはいかない。
スロープを上り切り、右に折り返して少し進むと、みんなが走路の側から声援を送ってくれる。手を振って写真を撮ってもらい、そのまま2階の外周を走る。この区間は見晴らしが良く、なかなか気持ちの良いコースだ。
時々、とても速いランナーが追い越していくが、逆に時々は遅いランナーを追い越していく。着ぐるみを着て普通のランナーを追い越すのは、とても気持ちが良い。
満濃公園リレーマラソンでも、以前は着ぐるみを着て普通のランナーを片っ端から追い越していき、快感に浸っていた。着ぐるみに追い越された普通のランナーは、ガックリと心が折れて沈んでいく。
でも、最近は、とても遅くなったので、満濃公園リレーマラソンでも普通のランナーに追い越されるばかりだ。今日は久しぶりに普通のランナーを追い越せるので、とても気持ち良い。
すると、ようやく後輩のS山君らしきランナーに追いついたので声を掛けてみたら、やはりS山君だった。ここまで意外に速かったが、そろそろ力尽きかけてきたようで、とてもしんどそうだった。
一方で、我々のような遅いランナーがダラダラ走っている横を、猛スピードですり抜けていくランナーもいる。狭くて走りにくい通路を障害物をよけながら飛ばしていくので、とっても走りにくそうだ。
2階の外周を走り終えると、今度は緩やかなスロープを1階に下る。下り終わったら右に折れて1階の外周を右回りに走る。川沿いの直線コースだ。
もう残り少ないので、ここは頑張って走ってみるが、大してスピードは上がらない。
敷地の西端まで来たら、右に曲がってトラックの中に戻ってくる。最後はホームストレートの直線区間だ。みんなが見ている区間なので、なんとか頑張って走るが、やはり大してスピードは上がらない。
スタートラインではティガーが待っているので、駆け込んでタスキを渡した。
走り終えると、バナナと水の支給がある。少しお腹が空いてきたのでバナナを食べて、そのまま1階の外周部へ出て、ティガーが走ってくるのを待ち、声援を送る。
そのままティガーがゴールしてくるまで待ち、一緒にスタンドに戻る。
ティガーの次はライオン4世が走っていく。満濃公園リレーマラソン以来、一歩も走っていないはずなのに意外に速い。
その次は新ペンギンだ。彼もまたロクに走った事は無いはずなんだけど、なかなか速い。
(カッパ)「なんでみんなあんなに速いん?」
(トラ)「ワシらが歳取って遅くなっただけじゃよ」
その次は骨付き鳥奉行だ。
(骨付き鳥奉行)「私は頭に骨付き鳥奉行を被っているだけで体は普通のランナーだから、みんなみたいにチンタラ走る訳にはいかないので真剣に走りますね」
体は普通のランナーとは言え、頭に大きな骨付き鳥奉行を被っているから、なかなか走りにくいとは思うんだけど、素晴らしいスピードで走り出し、他のランナーを次々に抜いていく。
そして最後はトラだ。足の故障を抱えながらも、スローペースで走る事ができないため、結構なスピードで走り出した。
(カッパ)「あれ?アンカーのタスキを付けてないよ」
アンカーは最後にタスキ受け渡しレーンとは異なるゴールレーンを走らなければならない。そのため、交通整理しているスタッフが分かるように赤いアンカー用タスキを付けなければならない。それをトラは付けていないのだ。
慌ててピッグがアンカー用タスキをもらいに行き、2階にトラが上がってくるのを待ち、通路のそばから声を掛けてタスキを渡した。
(カッパ)「忘れたらあかんがな」
(トラ)「タスキが無かったんよ」
なんと、トラがアンカー用タスキをもらいに行ったら、既にタスキが無くなっていたんだそうだ。アンカー用タスキはチームの数だけ用意すべきだと思うんだけど、足りなかったようだ。
〜 ゴール 〜
足の具合が心配されたトラだが、特に痛くなることもなく、そのまま最後までスピードを落とさず、ゴールまで帰ってきた。
すると、すぐ後ろから小さな女の子が猛スピードで迫ってきた。まるで坂出天狗マラソンでゴール直前にゾウさんに追い抜かれたのと似たような状況だ。
なんとかトラは頑張って最後まで走ってゴールし、写真判定の結果、ギリギリで逃げ切れていた。
(カッパ)「なんとか逃げ切ったやんか。すごいなあ」
(トラ)「ゼイゼイゼイゼイ」
基本的には今日はチンタラ楽しく走ったんだけど、思ったほど順位は悪くなくて、半分よりは上だった。
(カッパ)「骨付き鳥奉行が頑張ったからかな?」
(ティガー)「私も頑張ったよ」
(ピッグ)「私もまあまあ頑張りましたよ」
(新ペンギン)「私も頑張りました」
(ライオン4世)「私も私なりに頑張りましたよ」
(ティガー)「元祖馬とトラは足を故障してるから仕方けど、足がなんともないのに手を抜いてたのはカッパだけだよ」
(カッパ)「え?そうなん?趣旨が違うぞ?」
みんな真面目と言うか、負けず嫌いが出てしまったと言うか、割と真剣に走ったようで、まずまずの結果だった。
〜 反省会 〜
走り終えるとバナナ1本と水1本の支給があったが、終盤になったら、なぜか取り放題になっていた。数が余ったのかと思ってバナナを3本も食べた。
ところが、トラが走り終えると、バナナも水も無くなっていて、もらえなかった。バナナや水を配っていたテーブル自体が既に片付けられていた。
まだまだ走っているランナーがいるのに、バナナも水も全部さっさと配り終えて片付けてしまったようなのだ。
昼食の時間になったので、食べ物が無いか探していたら、2階席の通路でお好み焼きとうどんを売っていた。
お好み焼きを焼いているのは私が好きなふみやだったので食べたかったが、焼くのに時間がかかるため、ものすごい長蛇の列になっていたので、早々に諦めてうどんを食べた。
それだけでは足りなかったが、赤飯やおにぎりも売ってたので、それも食べた。
いつもなら、レースが終わったら温泉に行くところだけど、今日はたった1周しか走ってないから、あんまり汗もかいてないので、温泉には行かなかった。
今日のレースは最初からお気楽にダラダラ走るつもりだったから、特に反省点は無いが、思ったより楽しいレースだった。
コースはややこしくて走りにくいコースだったが、変化に富んでいると言えば言えなくもないし、2階部分は見晴らしも良いし、なかなか面白いコースだった。
レース後に主催者らしき人と話をしたが、来年もやるとの事だった。
意外に面白かったので、来年もやるのなら来年も出てみたいが、改善点として以下の点を要望したいぞ。
・2階席からグラウンドに降りていく階段は、上りと下りと2つ設置して欲しい
・アンカー用タスキはチームの数だけ用意して欲しい
・最終ランナーまでバナナや水を配って欲しい
さて次は、いよいよ2週間後に超長距離の富士五湖ウルトラマラソンがある。
ウルトラマラソンと言っても、我々が出るのは62kmの部だが、フルマラソンより長い距離を走った事が無い私にとっては未知の世界だ。
(カッパ)「今度こそは最初から最後までダラダラ走るぞ!」
(トラ)「わしゃ歩くぞ!」
〜おしまい〜
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