第10回 神戸マラソン

〜 女王様フルマラソンデビュー戦で快走 〜



2022年11月20日(日)、神戸市第10回神戸マラソンが開催された。
最後にフルマラソンに出たのは2020年2月の高知龍馬マラソン以来だから、実に3年ぶりとなる久しぶりのフルマラソンだ。

もちろん、3年もの間、サボっていた訳ではない。高知龍馬マラソンの翌月には徳島マラソンにエントリーしていた
それなのに、ああ、それなのに、なんと2020年の徳島マラソンは新型コロナウイルス騒ぎのせいで大会が中止になってしまった

事の発端は2020年3月1日の東京マラソンの一般ランナー参加中止だ。これに続き、3月8日の第9回名古屋ウィメンズマラソンも一般市民ランナーの参加が中止になった。
ただ、これらの大会は東京オリンピックのマラソン代表選考会を兼ねていたため、エリートランナーの部は開催された。
しかし、その後、状況はますます悪くなり、遂に3月22日の徳島マラソンは全面的に中止になってしまった。あまりの事に呆然とした。
そして、その後も、全国的にマラソン大会が次々と中止になっていった。

これらのマラソン大会中止騒ぎってのは、どう考えても、あまりにも非科学的で情緒的でヒステリックな対応だ。

(ピッグ)「この説明って、いつまで書くんですか?」
(幹事長)「今でも腹が立って仕方ないから、当分は書くよ!」

ともかく、
素人が見たら、マラソン大会ではランナーが密集しているように見えるかもしれない。しかし、毎日乗っている満員電車に比べたら、はるかにスカスカだ。そうでないとぶつかって走れない。
しかも密室の満員電車に比べて、屋外のマラソン大会はウイルスが蔓延できる環境ではない。新型コロナウイルスは感染した人の咳やくしゃみの飛沫による飛沫感染でうつっていくが、飛沫感染は屋外で走っている時に感染なんかしない。
多くの国民が新型コロナウイルスを非常に恐ろしいもののように勘違いしていたが、決して、エボラ出血熱のように極めて致死率の高いウイルスでもなければ、風疹のような感染力の強いウイルスでもない。ただの風邪だ。
それなのに、その後も5月のオリーブマラソン、6月の北山林道駆け足大会、7月の汗見川マラソンと、続々とマラソン大会の中止が発表になり、マラソン大会もサイクリングイベントも全滅してしまった

この暗黒の事態を打開するため、ピッグの提案により、中止になったイベントをペンギンズで自主開催していくことになった。
マラソン大会では5月の小豆島オリーブマラソンから自主開催を始め、12月の瀬戸内海タートルマラソンまで全てのマラソン大会を自主開催した
これらは例外なく、とても楽しくて大成功だったが、そうは言っても正式な大会ほどのやる気と達成感は得られないため、願わくは、コロナのバカ騒ぎは2020年で収束して、2021年はマラソン大会が復活して欲しかった。
ところが、2021年になってもコロナのバカ騒ぎが終わらず全てのマラソン大会の中止が続いたため、2月の丸亀マラソンから始まって11月の瀬戸内海タートルマラソンまで全てのマラソン大会の自主開催を続けた

しかし、バカみたいなコロナ騒ぎもいよいよ収まり、2022年2月の丸亀マラソンから正式なマラソン大会が復活する予定だった。我々はちゃんとエントリーし、参加費だって払い込んでいた。
ところが、なんと、丸亀マラソンは直前になってドタキャンされてしまった
さらに
3月の徳島マラソンも、ちゃんとエントリーし、参加費も払い込んでいたのに、やはり直前になってドタキャンされてしまった。2020年に全国に先駆けて中止になった徳島マラソンは3年目の中止になったのだ。
この流れを受けて、四国で開催されるマラソン大会は、5月の小豆島オリーブマラソン6月の北山林道駆け足大会7月の汗見川マラソン9月の酸欠マラソンと相変わらず3年連続の中止になった。

ただし、全国的にコロナのバカ騒ぎによるマラソン大会中止が全面的に3年目に突入した訳では決してない
東京マラソンは3月6日に開催されたし、名古屋ウィメンズマラソンも3月13日に開催され、ゾウさんが出場して完走した。
なぜマラソン大会が復活し始めたのかと言えば、
コロナの感染者数が減ったからではない。相変わらず感染者数は高止まりしている。
しかし
、コロナのバカ騒ぎは収まりつつある。ようやく国民の多くはコロナがただの風邪に過ぎないって事が分かってきたのだ
独善的な医療関係者と下品なマスコミが、あたかもコロナを恐ろしい病気のようにヒステリックにわめきたてるもんだから、国民の多くが理解するまで2年もかかったが、ようやくコロナなんてただの風邪に過ぎないっていう理解が進んできたのだ。

このような全国的な流れの中で、
今回、
神戸マラソンが3年ぶりに開催され、我々は久しぶりの四国外でのマラソン大会に出場することになったのだ。誠に目出度いぞ。


〜 楽しい都市型マラソン 〜


神戸マラソンには2015年に初参加しており、今回が2回目だ。
また、2017年の京都マラソン以来の都市型マラソン出場でもある。

都市型マラソンは楽しい。田舎のマラソンとは全く違う。
何が楽しいのかと言うと、普段は絶対に走る事のできない高層ビルが立ち並ぶ大都市のど真ん中を走るのが楽しいのだ。ワクワク感があり、爽快感を味わえる。
都会の人にとっては、自然の中を走る田舎のマラソンの方が逆に新鮮で楽しいかもしれないが、常日頃、田舎で生活している我々にとっては、自然の中を走る田舎のマラソンコースの見慣れた風景は飽きてしまう。
なので、私は都市型マラソンが大好きだ。

私の主観では、都市型マラソン東京マラソン大阪マラソン京都マラソン神戸マラソンの4大会だ。

(支部長)「京都マラソンは都市型マラソンとは言えんやろ」
(幹事長)「京都は高層ビルとかが無いから大都市って雰囲気は乏しいけどな」


確かに、京都マラソンは他の都市型マラソンほどの爽快感やワクワク感は無い。京都の町は高層ビルが無く、あんまり大都市って雰囲気は無い。
ただ、京の都は日本でも特別な街であり、気持ちの問題として都市型マラソンと見なしたい。
そして私は、これまでにこれら4大会に1度ずつ出場しており、4大都市マラソンを全て制覇したランナーという栄誉を欲しいままにしている。

(ピッグ)「制覇って言っても、単に参加しただけですけどね」

ちなみに、名古屋も大都市だけど、女子には名古屋ウィメンズマラソンがあるものの、男子向けの適当なフルマラソンは無い。

(ゾウ)「ふふっ、男子は気の毒ね」
(のら)「私も来年は名古屋ウィメンズに出るよ」


ゾウさんは名古屋ウィメンズに出たことがあるし、のらちゃんも来年3月にはゾウさんと一緒に出場する予定だ。

そのほか、横浜マラソンなんてのもあるが、年によって開催されたりされなかったりだし、開催時期もコロコロ変わるし、レース後に距離が短かった事が判明するなど、混乱の極みにあり、まともに相手にするようなレースではない
埼玉マラソンも、開催されたりされなかったりだし、参加費が高いくせに「給食が無い」とか「ボランティアが不足している」なんて批判が殺到したりしており、これまたまともに相手にするようなレースではない

神戸マラソン2011年に始まった比較的新しいマラソン大会だ。
2007年に東京マラソンが始まり、その大成功に刺激されて関西の3大都市である大阪、京都、神戸が競い合って同じように真似して2011年度からマラソン大会を始めたものだ。
マラソン大会が増えるのは喜ばしいことだが、それにしても関西の3大都市が揃って同じ年に始めるなんて、節操が無いと言うか独自性が無いと言うか横並びと言うかライバル心が強いと言うか、何と言うか。
ちなみに、同じ関西でも、12月に開催されている奈良マラソンは前年の2010年から始まっている。

4大都市マラソンのうち東京マラソン大阪マラソンは間違いなく群を抜いた楽しいマラソンで、何度でも出たいと思う。
東京マラソンも大阪マラソンも超高層ビルが立ち並ぶ大都市のど真ん中を駆け抜ける事ができる代表的な都市型マラソンだ。

一方、神戸マラソンと京都マラソンは、それほどでも無かった。東京マラソンや大阪マラソンほどのパノラマ感が無かったからだ。
神戸も京都も東京や大阪ほどの大都市ではないので、仕方ないかもしれない。
そのため、東京マラソンと大阪マラソンには、その後も応募したりしているが、神戸マラソンと京都マラソンには、一度出た後は応募していなかった。
うちのメンバーでも支部長が京都マラソンに一度出たが、イマイチ良い印象は抱かなかったようだし、ピッグは神戸マラソンに一度出たが、やはり再び出ようという気は起きないようだ。

もちろん、そうは言っても、山と海ばかり見て走る瀬戸内海タートルマラソンや川と田畑ばかり見て走る徳島マラソンなんかとは趣が異なる。
そのような四国の田舎のマラソン大会に比べたら、遥かに楽しくてワクワクする。なので、小豆島や徳島のように手軽に行ける距離にあれば、京都マラソンや神戸マラソンにも、もっと出たいと思うだろう。


〜 エントリー 〜


しかし、都市型マラソンはどこも前日受付なので前日から行かなければならない。また、行くのに時間がかかるし、交通費や宿泊費もかさむ
東京マラソンや大阪マラソンほどの魅力があれば時間やお金がかかったりしても参加したいが、京都マラソンや神戸マラソンでは二の足を踏んでしまう。

(ピッグ)「それなのに、今年は出るんですね?」
(幹事長)「まあ、そういう流れになってしまって」

なぜ今年、神戸マラソンに応募してしまったのかは、今となっては思い出せない。

(ピッグ)「僅か半年前の事なのに?」
(幹事長)「一昨日の夕食も思い出せない」


なんとなく思い出せる1つの理由は、のらちゃんフルマラソンにデビューしたいと駄々をこねた事だ。
ゾウさんと並んでペンギンズに君臨する2大巨頭と言うか2大女王様であるのらちゃんは、ハーフマラソンなら私らを蹴散らしまくっているが、まだフルマラソンを走った事が無い。そのため、密かに肩身の狭い思いをしていた。

(支部長)「よう言うわ。あれだけ私らを蹴散らしておいて」
(のら)「ほんとだってば!42kmは未知の世界なのよ」


もちろん、そんな事はなく、マラソンより厳しいトレラン大会では、2019年に距離40kmの秋吉台カルストトレイルランを余裕で完走している
なので、平地を走るマラソンならフルマラソンだって余裕で完走するだろう。

ただ、フルマラソンを一度も走った事が無いのに他人に「マラソンやってるよ」って言うのが憚られるとの事で、一刻も早いフルマラソンデビューを願っていた。
それで2020年の徳島マラソンにエントリーしてフルマラソンデビューするはずだったんだけど、コロナのバカ騒ぎで大会が中止になってしまった。
さらに、それ以降も3年近くの間、マラソン大会がことごとく中止になってきたので、なかなかフルマラソンデビューする事ができなかったのだ。

そのため、なんとか彼女がフルマラソンデビューできそうな大会を物色していたところ、神戸マラソンの募集があったので、とりあえずペアで一緒に応募してみたのだ。
応募はしてみたものの、当初は出場できる可能性は低いだろうと思っていた
神戸マラソンのエントリーは抽選だが、大人気を誇る都市型マラソンの例に漏れず、これまでは競争率が高くてなかなか当選は難しかった。コロナのバカ騒ぎで中断する前は、毎年、競争率は4倍超だった。
他の都市型マラソンも同様で、東京マラソンは競争率が10倍を超えていたほか、大阪マラソンや京都マラソンや神戸マラソンは、いずれも毎年競争率が4倍を超えていた。
基本的にあらゆる抽選やクジに弱い私としては、このような高い競争率を勝ち抜いて当選するのは至難の業であり、それにもかかわらず4大会全てに出場できたのは、毎年毎年、くじけずに応募し続けた成果だ。

なので、応募はしてみたものの、たぶん当選はしないだろうなあ、と期待はしてなかった
ところが、なんと、クジ運の悪い私としては珍しく、当選してしまった。ペアで申し込んでいたので、晴れてのらちゃんはフルマラソンデビューの機会を得たのだ。

(幹事長)「やったーっ!奇跡じゃ!」
(のら)「やった、やったーっ!ようやくフルマラソンにデビューできるよっ!」


そして、なんとD木谷さん支部長と一緒に申し込んだペアも当選してしまった。

(D木谷)「嘘みたいですね」
(支部長)「本当はフルマラソンは走りたくないんだけどなあ」


支部長は本当はフルマラソンはそれほど好きじゃないんだけど、私らが応募したので、連られて、つい出来心でD木谷さんと一緒に応募してもらっただけなのだ。
そして、さらに単独で申し込んでいた加藤選手も当選した。なんとなんと5人も当選するなんて奇跡のような結果になったのだ。

一方で、ゾウさん長谷さんは落選したので、抽選は例年のように行われ、5人が奇跡的に当選したものとばかり思っていた。
ところが、その後、ゾウさん長谷さんも、補欠で当選となった。当選はしたもののお金を振り込まなかった人が大量に出たらしい。
最終的に、我々のメンバーは応募した7人全員が当選するという有り得ない結果となった

結局、応募者の激減により、競争率は1.6倍程度にまで下がったようだ。
しかも当選しても参加費を払い込まない応募者が大量に出たため補欠当選も大量に出て、結果的に今年の神戸マラソンは応募した人が全員当選するという前代未聞の事態となったのだ。
決して我々にだけ奇跡的なラッキーが降ってわいた訳ではなかったのだ。

ちなみに、同じように毎年競争率が4倍を超えていた大阪マラソンも定員割れとなり、応募期間を延長したりしていた。
これは関西のマラソン大会だけでなく、全国のマラソン大会で同じような定員割れの異常事態が発生しているらしい。

て事で、応募したメンバー7人全員が当選したんだけど、ゾウさん加藤選手は最終的に出場を辞退した。
そのため、結局、幹事長、支部長、D木谷さん、のらちゃん、長谷さん5人が今回の神戸マラソンに出場することになった。


〜 マラソン大会の応募者が激減している 〜


全国的にマラソン大会への応募が激減した理由としてランネットでは

 @コロナ禍で大会が中止になり、努力や参加費が無駄になったことへの反発
 Aコロナ対策などに伴う参加費の高騰
 Bオンライン大会が広まり、リアル大会にこだわらない層が生じた


などを挙げている。

@ 私としては、何と言ってもランナーの怒りが最大の理由だろうと思う。
開催予定のマラソン大会を目標に日々厳しいトレーニングに励んでいるのに、それが突然中止になると、それまでの努力が無駄になり、本当に落胆する

(支部長)「それは、もっと練習してるランナーが言うセリフや」
(幹事長)「全てのランナーを代弁して」


通常のエントリー開始の時期に「今年は中止にします」って言って募集を止めるのであれば、本大会の半年以上前なので心の準備もできる。そのため怒りもさほどではない。
ところが、今年の丸亀マラソンや徳島マラソンなんかは、大会直前まで「開催します」って言っておきながら僅か2週間ほど前にドタキャンされた。これを怒らずにおられようか。
しかも既に支払っていた高い参加費は全額は戻ってこない。今年の丸亀マラソンや徳島マラソンは何がしかの小銭が戻ってきたが、マラソン大会の中止が始まった2020年なんかは、ほとんどの大会でビタ一文返金が無かった
このような理不尽な行為に対してランナーの怒りは爆発しており、大会が再開されたからと言って素直に参加はしたくない
また、高い参加費を払ったのに直前になってドタキャンされ、参加費がほとんど戻ってこないっていう悲惨な経験が続いたため、また今回もドタキャンされるかもしれないっていうトラウマが払しょくされないので、当選しても参加費を払い込むのをためらうランナーも多いだろう。
大阪マラソンは東京マラソンと並ぶ大人気の大会だったが、今年は開催の僅か11日前にドタキャンした。一方、その翌週の東京マラソンは予定通り開催された。
そのため、大阪マラソンは多くのランナーの怒りをかい、来年は開催すると言われてもランナーの不信感は拭えず、定員割れとなったのだ。

A 参加費の高騰も大きな理由だろう。参加者の気持ちを全く考慮もせずに自分勝手に大会を中止にしておきながら、いざ再開が始まるとバカみたいに参加費が高騰しており、開いた口が塞がらない。
ほとんどの大会で2倍近くに値上がりしている。フルマラソン大会は1万円以上するのが当たり前になり、都市型マラソンに至っては2万円近くにまで高騰している。
その理由として主催者が挙げるのが「コロナ対策で費用が増えた」って事なので、ますます腹が立つ。
具体的には消毒液や検温器なんかだろうけど、コロナなんてただの風邪に過ぎないって事実が分かってきたと言うのに、いつまでそんな物に金をかけてるんだ?
そんな事をやってるのは世界中で日本と中国だけだ。お願いだから悪の大帝国の中国と同じ事をするのは止めてもらいたいぞ。
それに、コロナ対策という名目で、エイドステーションでは飲み物や食べ物の手渡しは無くなり、ゴールしても何かにつけて自分でやらなければならなくなった
何もかも自分でやるって事は、それはそれで良いと思うんだけど、それなのに参加費を値上げするってのは理由になってない。便乗値上げに他ならない。

神戸マラソンの参加費用は今回は参加費16200円と手数料891円を合わせると17091円になった。前回、出場した2015年の時は10810円だったから、凄まじい高騰ぶりだ。
ちょっと前の感覚から言えば、マラソン大会ごときに10000円も出すなんて有り得なかった。高すぎる。ほんの少し前まで、マラソン大会の参加料はせいぜい3000円くらいだった。
こんなに参加費が高騰すると我々のような貧乏人はマラソン大会に出る事もできなくなってしまう。

(のら)「そんな事を言ってると後ろから刺されるよ」
(幹事長)「えっと、全てのランナーを代弁して」


しかも、参加費が高騰している一方で、記念品が貧弱になった。Tシャツが無くなったりしている。

(支部長)「Tシャツはもう要らないけどな」
(幹事長)「マラソン大会のTシャツがどんどん増えて収納場所に困ってるからなあ」
(のら)「やだやだ、Tシャツ欲しいよ!」


のらちゃんがTシャツを欲しがるのは、マラソン大会に出始めてまだ間もないため、あんまりTシャツがたまってないからだ。
一方、私なんかは、こないだ整理したら、恐らくこのまま永遠に袖を通すことは無いだろうと思われるまっさらなマラソン大会のTシャツが100枚を超えていた。
とは言え、一般的に言うと、参加費がバカみたいに高騰しているのに記念品が貧弱になっているってのは理解されにくいだろう。

B 一方、Bの理由は私には当てはまらない。
私がマラソン大会に出ているのは、マラソン大会として初めて出場した1995年の瀬戸内海タートルマラソン大会がとっても楽しかったからだ。
当時はまだまだマラソン大会は一般的ではなく、極めてマニアックな世界で、素人が出るようなイベントではなかった。
私のような素人が誰かから誘われた訳でもなく一人でマラソン大会に出るなんて事は珍しかったが、ついフラフラと軽はずみな気持ちで申し込んでしまったのだ。

(支部長)「無謀にもほどがあるな」
(幹事長)「ほとんど練習もしないで、いきなりトライアスロンに出て撃沈した支部長よりはマシやで」

結果はもちろん大惨敗だったが、初めて出場したマラソン大会は感動的なものだった。誰でも参加できる市民マラソン大会を走っているだけなのに、沿道の住民からは熱い声援があり、まるでオリンピックを走る一流選手になったような気分になれたからだ。
今思えば、人口が少ない地域でのマラソン大会だから、都市部のマラソン大会に比べたら、沿道で声援を送ってくれる人は少なかったはずだ。でも、他人から声援を受けて走るなんて事は、義務教育を終えてからは初めてだったので、とても快感だった。
初めてだったから、ペース配分も何も分からずに走ったため、ゴールしたら足が動かなくなって座り込んだけど、今思えば、あの疲労感も心地よかった。
初マラソンでマラソン大会に出る楽しさを知ってしまったから、それ以来、マラソン大会に病みつきになったのだ。

逆に、オンラインマラソンには極めて否定的だ
コロナのバカ騒ぎで中止になったマラソン大会の多くが、本大会を中止にする言い訳としてオンラインマラソンなんて子供だましのような事をやっている。しかし、オンラインマラソンなんて全く何の意味も無い。
マラソン大会の存在意義ってのは、普段の練習コースとは違う新鮮なコースを、沿道の声援を受けて走るからそこ楽しい。
また、数多くの他のランナーと競い合うからこそ緊張感も高まり、アドレナリンが大量に分泌してやる気が漲り、その結果、良いタイムも期待できる。
だが、オンラインマラソンなんて自分で普段走ってる練習コースを好き勝手に走るだけなので、なんの緊張感もやる気も湧いてこない。
参加している他のランナーと競い合っているんだと思い込もうとしても、現実に周りにいないんだから、極めて非現実的な設定だ。
そんな意味の無いオンラインマラソンに参加するくらいなら、我々のように仲間内で大会を自主開催した方が3億倍くらいマシだ。
しかも、オンラインマラソンなんて姑息な事をしてお茶を濁し、それを理由に払い込んだ参加費の全額返金を拒んでいる
オンラインマラソンに参加する人には全額返金しなくてもいいけど、我々のようにオンラインマラソンを断固として拒絶するランナーには高い参加費を全額返金しろと言いたい。

ただ、我々のように、キチガイみたいなマラソンブームが起きるずっと前からマラソン大会に出ている中毒者と違って、最近ランニングを始めたような健康目的で走る人は、気持ち良く汗がかければお金を払って大会に出なくてもいいと考える人が増えてもおかしくはない。
世紀末的なマラソンブームが起きたため、よく分からないまま周囲に流されてマラソン大会に出ていたけど、マラソン大会の中止をきっかけに、マラソン大会に出る意義を冷静に考えて、冷めたと言うか飽きた人が出てもおかしくはない
健康増進が理由なら、日々コツコツと走るだけで目的は果たせる。レース抜きでもマイペースで充実した運動ができれば、それで十分かもしれない。

しかし、我々は違う。最初は健康増進を目的にランニングを始めたものだが、日々のトレーニングの成果をマラソン大会で試すのが楽しくなり、さらに自己ベストに挑戦し続けるようになった。

(幹事長)「本末転倒ではあるけど、モチベーションは必要やからな」
(支部長)「ただし、自己ベストは遠のくばかりやな」


意思が強い人なら、マラソン大会なんか無くても継続してトレーニングを続ける事ができるかもしれないが、我々のように意思が薄弱な者は、ワクワク感があるマラソン大会に挑戦する事で、マンネリ化しやすい日々のトレーニングを継続する事ができるのだ。
コロナのバカ騒ぎでマラソン大会が無くなってしまった事から、ランニングのモチベーションが低下して走ることを止めてしまった人たちもいるだろう。
我々がかろうじてモチベーションを維持して走り続けられているのは、マラソン大会の自主開催を続けてきたからにほかならない。

(幹事長)「自主開催の主催者である幹事長様にひれ伏したまえ」
(ピッグ)「自主開催のアイデアを出したのは私ですけど」


いずれにしても、応募者の激減は、我々のように、いくら怒りと反発を抱えていても、何があってもとにかくマラソン大会に出たいという中毒者にとっては喜ばしい状況だ。
このまま永遠にマラソン大会の人気低迷が続いてくれたら良いんだけど。


〜 コース 〜


神戸マラソンのコースは、行きと言うか前半は、神戸市の中心地である三宮をスタートして西に向かって真っ直ぐ走り、須磨海岸で海岸線を通る国道2号線に合流し、そのまま明石海峡大橋まで行って折り返す
帰りと言うか後半は、走ってきた道を東に向かって逆に走るんだけど、途中で走ってきた道から外れて、須磨海岸を過ぎてもずっと海岸線を走り、最後は神戸大橋を渡ってポートアイランドでゴールするというものだ。

最後は橋を渡って埋め立て地でゴールというのは、東京ビッグサイトがゴールだった以前の東京マラソンや、インテックス大阪がゴールだった以前の大阪マラソンと同じだ。
神戸マラソンも東京マラソンも大阪マラソンも基本的にフラットなコースなんだけど、最後のゴール地点である埋立地に行くのに大きな橋を渡って行く
ほぼフルマラソンを走り終えた最終盤に大きな橋が待っているので、本当に厳しいラストだ。
それに、市街地から離れて臨海部の埋め立て地でゴールするってのは、沿道からの声援も無くなり、ちょっと寂しい。
でも、ゴール後の混雑なんかを考えると、市街地では対応が難しいからかもしれない。

なーんて思っていたら、東京マラソンは皇居がゴールに変更になり、また大阪マラソンは大阪城がゴールに変更になり、どちらもゴールが埋め立て地ではなくなった。やればできるじゃん!
でも、神戸マラソンだけは今もゴールは埋立地のポートアイランドだ。
それでも、最後のポートアイランドへ渡る神戸大橋の坂は厳しいが、それ以外は基本的にフラットなコースで、大きなアップダウンは無い

2015年に初出場した時は、既に出場経験があったピッグから3つの注意事項があった。

 @ 明石海峡大橋の折り返し点まで来ると、イメージ的には中間地点のような気がするが、実際は18km付近で、決してまだ半分には達していない。明石海峡大橋を見て「もう半分終わった」と思ったらガッカリするので要注意。

 A ポートアイランドへ行く神戸大橋は、大した高さじゃないんだけど、終盤の疲れ切った所にあるので、思った以上に厳しい。低いからと言って侮ってはいけない。

 B 神戸大橋を下ってポートアイランドに降りたら、もうゴールしたような気になるが、そこからまだ4kmもあるので、精神的に非常にきつい。神戸大橋を渡って「もう終わった」と思ったらガッカリするので要注意


だが、このうち@とBは今は改善されている

 @ 折り返し点が明石海峡大橋より西に1kmほど延長になった。

 B ポートアイランドに入ってからの走行距離が2kmほど短くなった。


どちらが先に決まったのかは分からないが、たぶん、「ポートアイランドに入ったらもうゴールのような気持ちになるのに、さらに延々と4kmも走らされるのは精神的にきつい」と言う声が多かったため、折返し点を移動させたのではないだろうか。
このコース変更により、折返し点スタート地点から19kmの地点となり、そこから折り返して再び明石海峡大橋の下をくぐるところが20km過ぎになる。なので、まだ中間地点ではないにしても、大きな目安にはなる。
また、ポートアイランドに入ってから延々と4kmもグルグル走りまわされる事が無くなったのもとても嬉しい。

て事で、注意点はAだけになった。
最後の神戸大橋は、以前のコースでは36km地点から38km地点にかけて出現したが、折返し点が延びた関係から、今回は38km地点から40km地点にかけて出現する事になる。後の方になればなるほど疲れているので、足には堪えるだろう。
でも、橋の坂を下り始めてから4kmも走らされていたのが2kmに短縮されたので、気分はもうラストスパートだから、だいぶ気は楽だ。

また、開催時期が11月ってのは個人的には好ましい
一般的にマラソン大会は秋から春にかけて開催され、特にシリアスなマラソン大会は冬場がメインとなる。
しかし冬は寒い。寒いのが苦手な私としては、冬のマラソン大会は嫌いだ。東京マラソンはとっても楽しいんだけど、寒い時期に開催されるってのが難点だ。
みんなが嫌がる夏場の暑い時季の方が個人的には好きだ。

(支部長)「いつも言ってるが、好きなのとタイムが良いのとは無関係やで」
(幹事長)「分かっておりまする」


もちろん、好き嫌いとは別に、良い記録が出るのは寒い季節だ
7月末の汗見川マラソンなんか論外としても、5月のオリーブマラソンや10月の脱藩マラソンでも、天気が良い時は猛暑のレースとなって惨敗する。2月の丸亀マラソンなんかの方が良いタイムが出る。
でも寒いのはやっぱり嫌だ。特にフルマラソンの場合は寒いのは辛い
せいぜいハーフマラソン程度の距離までなら、最後まで同じように走れるから、寒くても体は熱を発散する。
でもフルマラソンの場合は、前半は体が動いているから熱も出てきて暑くなるが、後半は疲れ切った体を引きずって歩くように走るので、体が熱を発散せず、どんどん冷えてくる。なので寒い時期のフルマラソンは辛い。
その点、神戸マラソンは11月開催なので、終盤に力尽きてトボトボ歩いても寒くないだろう

(D木谷)「幹事長はいつもいつも歩くことを前提ですねえ」
(幹事長)「フルマラソンは厳しいのよねえ」
(支部長)「もちろん、私も歩くで〜!」


〜 宿泊場所の確保 〜


大都市のマラソン大会はどこもそうだけど、神戸マラソンも当日の受付は無く、受付は前日に済ませなければならない
参加者が多くて当日の朝では大混乱になるからだろうけど、遠方から参加する人にとっては負担感が大きい
東京なら、どうせ当日の朝に受付があったとしても高松を朝出発していては間に合わないので前日に移動せねばならないから仕方ないけど、関西になると、これは微妙だ。
2004年の加古川マラソン1998年の明石海峡大橋開通記念駅伝大会に出たときは、朝出発して楽勝で間に合った。明石や加古川が間に合うんだったら神戸だって間に合うはずだ。
朝の4時に自宅を出ている脱藩マラソンに比べたら、よっぽどマシかもしれない。

諸悪の根源前日受付だ。確かに、2万人以上ものランナーが参加する神戸マラソンの受付を当日の朝にやったら阿鼻叫喚の世界になるだろう。ソウルのハロウィン事件どころではなくなるだろう。
でも、そもそも今どき受付をする必要があるのか?という根源的な問いを投げかけたい。
最近は、従来は受付でもらっていたゼッケンや参加賞などを事前に送付してくるマラソン大会も増えてきた
徳島マラソンなんかは、だいぶ以前からゼッケンやチップのほかパンフレットや記念品も事前に送られてくるので、前日や当日の受付は無い
それで済むんだから当日や前日に受付する必要は無いんじゃないか?

(ピッグ)「本人確認する必要があるからですかねえ」
(幹事長)「それも矛盾してるよ」


確かに、前日受付の際にはコロナワクチン接種証明書や本人確認のための身分証明書を提示するが、それでゼッケンをもらったら、当日はゼッケンさえ付けていれば誰でも会場に入って出走する事ができる
つまり、前日受付さえ本人がすれば、当日は別の人が出走しても分からないって事だ。

(幹事長)「本人確認の意味なんて無いやろ?」
(ピッグ)「おでこに焼き印でも押してもらいますか」


このように受付というシステム自体の存在意義が問われているのだから、当日受付は許容するとしても、前日受付なんて止めてもらいたい

(幹事長)「それなのに、岡山マラソンが前日受付ってのは、どういうこった!?」
(支部長)「あり得ないよなあ」


岡山なんて電車で1時間の距離だ。小豆島のオリーブマラソンやタートルマラソンより近い。電車では間に合わない徳島マラソンより時間距離は近い。楽勝で朝出発できる。
それなのに、前日受付を求められるので、参加する意欲が無くなる。
わざわざ往復2時間をかけて前日受付に行くのは面倒だし、だからと言って前泊なんて事はあり得ない。
そもそも岡山なんて徳島と同じような田舎町なんだから、当日受付でも十分に対応可能だろう。て言うか、徳島マラソンと同じように事前送付にしてほしい。

前日受付何が大変かと言うと、宿泊場所の確保がとっても大変なのだ。
2015年の神戸マラソンの際は、神戸の親戚に泊めてもらったが、今回は5人で行くので、私だけ親戚の家に泊めてもらう訳にはいかない。

(長谷)「えっと、すんません。私は娘んちに泊めてもらいます」
(幹事長)「なんとかーっ!」


ま、娘さんなら仕方ないわな。

マラソン遠征の際の宿泊場所確保は極めて重大な問題だ。
一番記憶に残るのが2013年の大阪マラソンだ。
予約しようと思ってネットで探すと、山ほどホテルが空いている。さすがは大都市だと思ったら、妙に安い。カプセルホテルでも普通なら3000円はするのに、1000円程度から大量にある。
一体こりゃ何じゃと思って場所と条件を確認していくと、極端に安いホテルは西成区に集中していた。つまり釜ヶ崎(あいりん地区)のドヤ街のホテルなのだ。
ドヤ街で労務者が住んでいた簡易宿所(通称ドヤ)が時代の流れでビジネスホテルっぽく模様替えしているだけなのだ。いくら模様替えしたとは言っても、元々3畳トイレ無しといった狭い部屋だし、エリアとしては極端に怖いイメージだ。
しかし、釜ヶ崎のドヤ街以外のホテルを探そうとすると、何万円もする高額なホテルしか残っていなかったため、仕方なくドヤ街に泊まり、夜の釜ヶ崎を探検するという貴重な体験をした
その辺りのドヤ街の相場は1泊1000円程度だったが、私が泊まったところは1泊2400円もしたから、地域では高級な部類だろうが、もちろんそれなりのものだった。
この夜の体験は非常に面白く、ああいう機会でも無ければ、絶対に一生、泊まることがないような場所なので、結果的に非常に得難い経験だった。

4年連続で遠征した那覇マラソンも似たような状況だ。那覇マラソンもエントリー以上に宿泊場所の確保で苦労する
沖縄なんて全国有数のリゾート観光地だからホテルはいっぱいある。なーんて思うのは素人で、いくら沖縄でも那覇マラソンのような大規模イベントが開催されたら宿泊場所の確保は困難を極める。
当選が決まってから探していたのでは、もちろん遅すぎる。なので、応募した時点で宿泊場所の確保に動くのだ。
ところが、それでも遅く、その時点で既に手頃なホテルは全滅だった。大阪と同じで、我々のような貧乏人には手が出ない高級ホテルか、極端な安宿しか残っていない。他の参加者達は、それより早く、はるか以前に手配に動いていたようだ。
過去の経験から言えば、こういう場合には、ためらう事なく安いホテルを選択するのがよろしい。どんなに安いホテルでも、日本なので危険を感じる事はない。それにマラソン大会はどこも朝が早く、そんなにゆっくりくつろぐ時間も無い。単に夜、寝るだけだ
沖縄には大阪のようなドヤ街は無いが、主に海外からのバックパッカー達が泊まるユースホステルみたいな宿がある。
我々が確保した宿は、4人が1部屋に転がされる窓の無い息苦しい倉庫のような部屋だったが、1人1泊2000円だったので、文句は言えない。

また、龍馬脱藩マラソンも苦労した。
もともと宿泊施設が少ない高知の山奥で開催されるマラソン大会なので、宿泊場所の確保には非常に苦労し、2015年大会は数少ない民宿のおばちゃんとの2年越しのバトルを繰り広げてなんとか泊まる場所を確保した
ただ、宿泊はできたものの食事は作ってくれないし、風呂場は狭くて暗くて汚くて入る気が起きなかったし、みんなで雑魚寝だったので夜更かしして酒盛りしてマラソンのタイムも良くなかったし。
そのため、翌2016年以降は前夜泊を諦めて早朝に高松を出て日帰りにしている
脱藩マラソンは高松から車で3時間もかかる梼原町で行われるので、当日の早朝出発の日帰りは強行軍だが、宿泊場所の確保に苦労するよりはマシだ。

マラソン以外でも、サイクリングしまなみでも毎回、宿泊場所の確保に非常に苦労している。
これも前日受付なので止むを得ず前泊しているのだが、当日の受付にしてくれたら早朝出発の日帰りで問題は無いはずだ。

このように、宿泊場所の確保では非常に苦労を重ねてきたので、最近は行動が早い
バカ正直に当選が決まってから探したのでは遅すぎて、手が届かない高級ホテルしか残っていないのは分かっている。
しかも、神戸には大阪のドヤ街とか沖縄のバックパッカー用の宿のような格安ホテルも無い。逃げ道は無いのだ。
て事で、今回は非常に素早く宿泊場所の確保に動いた。そのおかげで大会会場である三ノ宮の神戸市役所に歩いていける距離の元町のホテルに4人分の部屋を確保する事ができた。

(幹事長)「皆の衆、私にひれ伏して感謝したまえ」
(支部長)「ありがとうでございます」
(D木谷)「ありがとうございます」
(のら)「あ〜りがっとさんっ」


〜 神戸へ移動 〜


これまで神戸マラソンや大阪マラソンや京都マラソンや奈良マラソンなど、関西地区で開催されるマラソン大会に参加する時は高速バスで移動していた
高速バスの乗り場は自宅から割りと近いし、行きも帰りも乗り換えが少なくて済むため、楽だからだ。

しかし、今回は5人での移動になる。当初は今回も高速バスにしようかと思っていたが、5人もいれば車で移動するのも有り得ると思ってコスト計算してみた。
そしたら5人もいたら車で移動した方が割り勘でバスの半額程度で済む事が分かった。
大都市なので駐車場の確保が問題となるが、それさえクリアできれば、車で移動した方が何かと便利だし、時間も早そうだ
駐車場はホテルと大会会場の神戸市役所の間に適当な所を探し出して目星を付けたので、そこを当たってみる事にした。
て事で、今回は車で移動する事にして、長谷さんに車を出してもらい、5人で乗り合わせて行く事となった。

当日は、長谷さんのらちゃん、D木谷さん、支部長を乗せて我が家まで迎えに来てくれて、朝10時に出発した。
高速道路に入り、淡路島を通り、明石海峡大橋を渡って神戸にはお昼ごろに着いた

車で神戸マラソンのコースを通ってみたが、マラソン大会の前日だと言うのに、街にはその気配が無い
普通、マラソン大会が開催されるとなると、だいぶ前からのぼり交通規制周知の看板が出ているものだが、そういうものが見当たらない。

(支部長)「本当に明日開催されるんやろな?まさかドタキャンになってないやろな?」
(幹事長)「ホームページ見る限りでは開催するみたいやけどなあ」


なんとなく釈然としないまま、元町に着いた。
ホテルのチェックインには時間が早かったので、まずは駐車場に行く。目星をつけていたのはデビスパーキング1という駐車場だ。(←備忘録)
神戸の中心街で土曜日だったので、駐車場が空いているか不安があったが、かろうじて空いていた駐車スペースになんとか車を停める事ができた。休日は1日最大料金2000円なので、2日停めても4000円だ。(←これも備忘録)

車を駐車場に停めたら、途中で昼食をとりながら三ノ宮駅まで歩く。
前日受付の会場ポートアイランドなので、三ノ宮からポートライナーで移動するのだ。
せっかく車で来てるのだから、ポートアイランドへも車で行ければ便利が良いんだけど、ポートアイランドには駐車場が無く、ポートライナーで行くしかないようだ。

三ノ宮駅のポートライナーの券売機の前には臨時の乗車券販売デスクが出されており、記念乗車券が売られていた。カラフルできれいな記念乗車券だ。
しかも、通常は片道250円するのだが、3回乗って700円と、50円お安くなっている。

(支部長)「3回も乗ることあるか?」
(幹事長)「今日の往復のほか、明日もゴールした後に戻ってくるからな」


明日は、行きはポートアイランドまで走ってゴールするが、ゴールした後はランナーはみんなポートライナーに乗って戻って来なければならない。

ポートライナーに乗る客は、ほとんど全員が神戸マラソンの出場者みたいだった。
街中には、あまりにもマラソン大会前日の賑わいが無かったので不安だったが、ようやく安心した。
ポートライナーに乗ったら、10分ほどでポートアイランドに着いた。


〜 前日受付 〜


ポートアイランドゴール地点でもあり、また前日受付の会場にもなっている。前日受付の建物は神戸国際展示場だ。
受付会場に入る時にコロナワクチン接種証明書とか本人確認書類なんかを見せ、また事前に送られてきていた体調管理チェックシートを提出する。
先月の脱藩マラソン庵治マラソンでも似たような健康チェック表を提出させられた。大会の1週間ほど前から「喉に痛みがある」とか「頭痛がある」とかいった体調を申告するものだ。
もちろん、何か異常が1つでもあったら参加できないという理不尽で無茶苦茶なシステムだ。て言うか、全く無意味なシステムだ。
1つでも異常があったら参加できないと言うのに、該当するというチェックを入れたチェックシートをわざわざここまで提出しに来る人がいるだろうか?

(幹事長)「何も悪いところは無いっていうチェック表しか提出しないやろ?」
(支部長)「役所のアリバイ作りやがな」
(幹事長)「分かってまんがな」


出場したランナーのコロナウイルス感染が判明した場合、あくまでも虚偽申告したランナーの責任であり、主催者側には何も落ち度が無かったって事を証明するアリバイ作りのためとは分かっている。
でも、そもそもマラソン大会なんて、何が起きても参加者の自己責任だ。マラソン大会に限らない。学校の体育じゃないんだから、どんなスポーツイベントでも参加者の自己責任だ
それは当たり前の事であり、かつては全ての参加者が自覚していた。それが、いつの間にか主催者の責任が問われるようになってきた。炎天下のレースで参加者が倒れたりすると、主催者は大慌てだ。

これは独善的なマスコミが騒ぎ立てる事が原因だ。スポーツイベントの参加者はあくまでも自己責任で参加しているのに、あたかも主催者の責任のように騒ぎ立てる
このマスコミのヒステリックな態度のせいで、コロナのバカ騒ぎが巻き起こり、全てのマラソン大会を始めとする多くのスポーツイベントが中止に追い込まれてきたのだ。
マラソン大会に参加した人が、コロナに感染したからと言って主催者を責めるような事はあり得ない。それなのに、無関係のマスコミが大騒ぎするから多くのスポーツイベントが中止に追い込まれてきた
マスコミが社会を破壊していると言っても過言ではないだろう。

(支部長)「ちょっと過言やな」
(幹事長)「すんません」


このような無意味な体調管理チェックシートを求めるくせに、なんと今回の記念品はショボいペラペラのエコバッグだけだった。Tシャツが無かったのだ。
何も私はTシャツを無条件で歓迎している訳ではない。
一般的にマラソン大会のTシャツはパッとしたデザインのものが少なく、マラソンの練習する時にしか着られないようなデザインのものが多い。他に使い道が無いのだ。
しかも、昔のTシャツは生地が悪く、何回も洗濯するとボロボロになっていったので、ローテーションとしては、それでちょうど良かった。
ところが最近のTシャツは生地が良くてしっかりしてて、いつまで着ても全然痛まないし、黄ばみも少ない。
そのため、どんどんTシャツが溜まっていき、押し入れから溢れているので、常日頃から「頼むから、Tシャツは要らないから参加費を下げてくれ」と言ってきた。
なので、今回、Tシャツが無かったのは本来なら良い事だけど、参加費をバカみたいに値上げしておきながらTシャツも出さないってのは腹が立つ

しかも、前回の神戸マラソンのTシャツは珍しくとても格好いいものだった。
これまで貰ったマラソン大会のTシャツで一番良かったのは2013年の大阪マラソンでもらったものだった。機能性も優れているしデザインも良くて、マラソン大会で貰ったTシャツとしては随一と言うかほぼ唯一の優れモノだ。なので早速、本番のレースに着て走った。
前回の神戸マラソンのTシャツは、それに次ぐ格好いいものだった。なので、これまた早速、本番のレースに着て走った。
それで、今回も期待していたのにTシャツが無いなんて、本当に腹が立つ。参加費がバカみたいに値上がりしているのに、Tシャツくらい出せよと言いたいぞ。

絶対に使う事は無いと断言できるペラペラのエコバッグの他は、ゼッケンや荷物預けの袋をもらい、あっさりと前日受付が終わった。
こんなんだったら事前に送付してくれたら良いくらいの無意味な前日受付だ。

その後は、全参加者の氏名が記載された巨大なパネルの前を通って、神戸マラソンEXPO2022と銘打ったスポンサー企業の展示コーナーに行く。
前回の2015年の時は、受付会場に行ったのが夕方ってこともあり、会場は閑散としていたが、今回はまだお昼過ぎだったので、そこそこの賑わいがあった。

のらちゃんはここで記念にTシャツを買うのらちゃんは初めての神戸マラソン出場だし、そもそもフルマラソンもデビュー戦なので、記念としてTシャツが欲しかったんだけど、記念品としてTシャツをくれなくなったので、仕方なく自分で購入する事にしたのだ。
色んなデザインのTシャツを売っていて、なかなか良いじゃんって思ったんだけど、なんと、既にほとんど売れ切れていた。
のらちゃんはかろうじて残っていたSサイズのものを買えたが、一般的なSサイズ、Mサイズ、Lサイズなんかはほとんど売れ切れていて、残っているのはXSとか2Lとかの極端なサイズのものばかりだった。
まだお昼過ぎで、そんなに遅くもないと思うんだけど、準備した品数が少なかったのだろうか。これまた腹が立つ。

(幹事長)「もっと準備しろよ!」
(のら)「怒ってばかりだと体に悪いよ」


その後、血管年齢測定とか筋肉・脂肪量測定なんかをする。のらちゃんは血管年齢が実年齢よりだいぶ若くて喜んでいたが、支部長は実年齢とピッタリ同じだった。

(幹事長)「実年齢と同じだなんて、滅多にないぞ。ピッタリ賞や。めでたい、めでたい!」
(支部長)「めでたくない!もっと若いと思ってたのにガッカリやがな!」


私は脂肪が極端に少なくて筋肉バランスは普通という、測定しなくても分かる結果だった。

(のら)「意味ないやん」
(幹事長)「20分も列に並んだのに」


わたしの神戸マラソン宣言」と題した大きなパネルがあり、選択肢として9つの目標が書かれた中から、自分の目標のところにシールを貼って写真を撮るコーナーがあった。
私は「自己ベスト更新」にシールを貼ったが、フルマラソンデビューののらちゃんはものすごく控えめに「完走する」にシールを貼った。

(D木谷)「女王様はサブ2じゃないんですか?」
(幹事長)「サブ2できたら世界新記録やがな。女王様でも無理やろ」


そもそも「サブ2」という選択肢がある事が不思議だが、既に20人くらいがシールを貼っていた。

(幹事長)「支部長は『歩かない』に貼ったら?」
(支部長)「いや、絶対に歩くから、それは不可能やな」


目標タイムを掲げた記念写真も撮ってくれた。今回は、ちょっと控え目に4時間半切りを目標として掲げた。

(ピッグ)「いつもサブフォーだとか言って、野心的というか無謀な目標タイムを設定する幹事長にしては控えめですね。
       やっと自分の実力が分かってきたんですか?」
(幹事長)「今回はのらちゃんのサポート役だから」


今回はフルマラソンデビューしたいというのらちゃん付き合って参加したものなので、彼女の初フルマラソン完走をサポートする事が最優先だ。なので目標は控え目にした。
それに、なかなか走れない神戸の街のど真ん中を走れるマラソン大会なんだから、しゃかりきになって走るんじゃなくて、周りの風景を楽しみながらのんびり楽しみながら走りたいとも思う。


〜 ホテルにチェックイン 〜


その後は、受付会場を後にして三ノ宮に戻り、駐車場に停めていた車から荷物を取り出し、ホテルに向かう。
ホテルメリケンポート神戸元町というホテルだ。

上にも書いたように、かなり早目に宿泊場所の確保に動いたので、かろうじて予約できたんだけど、普通のシングルルームは既に無くて、トリプルベッドルームなんて表示された部屋だった。
トリプルベッドルームと言いつつ、普通のベッド3台のほかにソファベッドも1台あり、最大で4人が宿泊できる部屋だ。

一応、4人分予約したんだけど、表示が分かりにくくて、4部屋を予約できたのか(つまりトリプルベッドルームを4部屋確保できたのか)、それとも4人分のベッドを確保できたのか(つまりトリプルベッドルーム1部屋に4人が詰め込まれるのか)、どっちなのか分かりにくい
4人で大部屋1つに泊まるのは避けたいところだが、4人も泊まれる広い部屋を1人に1部屋ずつ提供してくれるってのも有り得ない話のような気がする。
しかし、他には空いているホテルが無く、他に選択肢は無かった。

て事で、恐る恐るチェックインしたら、最大4人が泊まれる広いトリプルベッドルームを1人1部屋ずつ提供してくれた。ソファベッドはちょっと寝心地は悪そうだが、広めのシングルベッドが3つあり、3人はゆったりと寝られそうだ。
バスもトイレも洗面所も別々になっているし、とても快適だ。て言うか、1人で泊まるのはもったいなさすぎる。
お値段は1人1部屋10000円だから、シングルルームよりほんの少しだけ高いようだが、そんなには変わらない。シングルルームが早々に売り切れた後に残ったトリプルベッドルームをシングルユースで提供してくれたようだ。

(支部長)「1部屋に4人で泊まったら1人2500円になるんやろか?」
(幹事長)「そうやったら嬉しいぞ」


でも、1部屋に4人で泊まっても、1人当たりの料金は10000円近かった。よく分からない料金システムだ。
いずれにしても、ラッキーだったようだ。

おまけに、10月から始まった全国旅行支援事業の恩恵も受けた。宿泊料金は4割引になる。
以前のGoToトラベルでは、事業が始まってから予約した旅行にしか適用されなかったが、今回の旅行支援事業では、既に予約していた旅行にも適用されるため、10000円が6000円になった。これは嬉しい。
また、商品券ももらえる。以前のGoToトラベルでは、確か3000円分くらいの商品券を貰えたと記憶しているが、今回は平日なら3000円分の商品券を貰えるものの、休日は1000円分の商品券しかくれない。それがちょっと残念だが、文句は言えない。

長谷さんは、娘さんの所で泊まるため、車は駐車場に置いたまま元町から電車に乗って娘さんの所へ行った。
明日の朝は、また電車でホテルのロビーまで来てくれる事になっている。色々とご不便をおかけして申し訳ない事です。

我々は、商品券を使って夕食を食べるために、近くにある元町の中華街に繰り出す。
今どき、中華街なんて中高年の人しか行かないのかと思ってたら、以外にも若い人たちでものすごく賑わっていた

(幹事長)「何で若い人がこんなに中華街に来てるんや?」
(支部長)「昔は滅多に来なかったけどなあ」


支部長は学生時代に神戸に住んでいたので、神戸の街には詳しいが、隔世の感があるようだ。
若い人たちで大混雑していた割には、神戸マラソンの参加者風の人は見当たらない。ランナーは中華街に来ないのだろうか?
商品券は額面1000円で、1000円以上の買い物をした時に使えるものなので、各自1000円以上のメニューを注文した。
私はフカヒレが入っているらしき麺が中心になったセットを頼んだ。値段からして、本当にフカヒレが入っているとは思えないし、実際、どこに入っているのか分からなかったし、そもそもフカヒレが入っていたとしても私の舌では分からないんだけど、ともかく中華を満喫した。

(幹事長)「お腹いっぱいになったなあ」
(支部長)「若い人向けの量やな」


お腹いっぱいになったくせに、帰りにゴマ団子も買って帰り、ホテルで分けっこして食べた。なかなか美味しかった。
ちょっと食べ過ぎてお腹がパンパンになってしまい、マラソン大会前夜だと言うのにお腹を壊さないがヒヤヒヤしていたが、なんとか朝まで大丈夫だった。


〜 朝の準備 〜


ホテルの朝食は7時からだった。ちょっと遅いので、何か買ってきて部屋で食べようかとも思ったが、ギリギリで間に合いそうなので、ホテルの朝食を食べる事にした。
朝食をとったら即、出発しないといけないので、ウェアも着て、すぐに走れる状態で集合だ

ウェアの選択は、どんな季節のマラソン大会であっても最も重大な問題だ
今日はスタート位置がみんな一緒ではないので、お互いに見つけやすいように目立つTシャツで揃える事にした。目立つ色ということで、こんぴら石段マラソンの黄色いTシャツにした。
私は毎年こんぴら石段マラソンに出ていたので毎年のTシャツを持っているが、他のメンバーは全員が同じ年に出たことは無かった。そのため、私は一緒にスタートするのらちゃんが唯一出場した2019年のこんぴら石段マラソンのTシャツを一緒に着た。
D木谷さん2017年のこんぴら石段マラソンのTシャツしか持って無かったので、一緒にスタートする支部長も一緒に2017年のTシャツを着た。長谷さんには、私が持っている2017年のTシャツを貸してあげた。
2017年のと2019年のとでは柄が少し異なるが、基本的には似たようなTシャツなので、遠くから見ても分かるだろう。

(支部長)「お揃いのTシャツを着るんやから、今日はもう悩む余地は無いな」
(幹事長)「いやいや、Tシャツの下に何を着るかが悩みの種や」


一番上にはこんぴら石段マラソンの黄色いTシャツを着る事に決まったが、その下に何か着るのか考えなければならないのだ。

天気予報では1週間も前から、神戸マラソン当日は全国的に雨だと言っていた。
実は1週間前の日曜日も雨だった。その時も、その1週間前から天気予報では雨だと言っていたが、どうせ外れるだろうと思っていたのに、本当に雨だった。
そのせいで、せっかく3年ぶりに開催される予定だった善通寺のフォトウォークラリーが中止になってしまった。
今年のテーマは善通寺市内各所にある黒板アートを回るというものだったので、事前に全員で下見して回って準備万端だったのに、残念だ。もちろん、我々は雨でも気にせず、自主開催して勝手に回ったのは言うまでもない。

そして今週も雨の予報だ。なんで2週間連続で週末になると雨が降るのか腹立たしいが、それ以上に、なんで1週間も前から雨が降るのが分かるのか不思議だ。
ただし、今の我々は雨を恐れていた昔の我々ではない。昔の我々なら、雨のマラソン大会なんて走る気が起きなかった。朝から雨が降っていると、空を見上げながら連絡を取り合って、結局、みんな揃って欠場って事も多かった。
しかし、2010年のオリーブマラソンで考えが変わった。その日は朝からものすごい土砂降りの雨だったので、みんなで欠場の相談をしていたら、我がペンギンズのエース城武選手から「雨がどうしたんですかっ!何を考えてるんですかっ!」と一喝され、渋々参加した。
ところが、土砂降りの雨は、走りにくいどころか、気温が低くなって走りやすくて、後半の大きな坂も全然、苦にならず、最後までペースダウンすることなく、というか、坂が多い後半の方がペースアップしてタイムが良くなるという考えられないレース展開でゴールし、2時間を大幅に切る大会自己ベストとなった。
私だけでなく、ピッグ支部長も快走した。それ以来、暑い季節には、むしろ雨を好むようになったのだ
なので、今日も雨が降ってもそれほど気にするつもりは無かった。

(のら)「やだやだ、雨は嫌だよう」
(幹事長)「まだ言ってるなあ」


のらちゃんはマラソン歴が浅く、雨の中を走った経験も乏しいので、雨を嫌がる。

(幹事長)「一度、思いっきり濡れたら平気になるってば」
(のら)「せっかくのフルマラソンデビュー戦なのに雨は悲しいよ」


確かに、せっかくのフルマラソンデビュー戦なんだから、気持ち良く走りたい気持ちは分かる。そりゃそうだ。
て言うか、ハーフマラソンくらいなら冬でもない限り雨くらい平気だが、フルマラソンだと私も雨は避けたい

(支部長)「雨の方が走りやすいってば」
(幹事長)「今の季節は寒くなるってば」


ハーフマラソン程度なら、最後までしっかり走れるから体から熱が発生して寒くはならないけど、フルマラソンだと終盤は歩くか、歩かなくても歩くようなペースにスローダウンするから体から熱が発生しなくなり、寒くなる
雨のフルマラソンと言うと2006年のタートルマラソンを思い出す。もう16年も前の事だが、辛かった事を鮮明に覚えている。
何が辛いかと言うと、やはり終盤に体が冷える事だ。タートルマラソンと神戸マラソンは同じ時期の開催だが、タートルマラソンだって天気が良いと暑くなるけど、雨が降ると本当に体が冷えてくる
あの時は体を震わせながら、早くリタイヤしようと思って救護車を探しながらトボトボと歩くようなスピードで走りってたんだけど、救護車が見当たらなかったから仕方なくゴールまで泣きながら走った。
あの辛い経験があるから、フルマラソンでは雨は避けたい。

外に出てみると、夜中に降った雨で路面は濡れていたが、今は雨は止んでいる。天気予報を見ると、大阪は雨だが神戸はちょうど境目で、降ったり止んだりみたいな事になっている。とても微妙だ。
一方、雨が降っていたせいか、気温は恐れていたほど低くはない。ただし風は少し強めだ。もうめちゃくちゃ悩む気象条件だ。
今日は雨が確実だったので、雨対策のウェアを用意してきた。半袖のTシャツの下に、濡れてもベチョベチョしない速乾性の長袖シャツを着て、さらに雨ガッパ代わりのビニール袋を被るつもりでいた。大嫌いなランニングキャップも雨除けで被るつもりでいた。
ところが雨が上がり、しかも、もう降るかどうか分からないし、気温は低くないけど風は強いなんていう微妙な状況になると、悩んでしまう。

(幹事長)「Tシャツだけだと寒いよなあ」
(支部長)「寒くなんかないってば。今まで寒かった事あるか?」
(幹事長)「だから16年前のタートルマラソン」
(支部長)「そんな大昔の事は忘れろ」


確かに、あれ以来、寒さで辛かった事は無い。いつもいつも「寒くならないかなあ、寒くなると嫌だなあ」って悩むけど、薄着でスタートして実際に寒かった事はほとんど無い
逆に、厚着でスタートして暑くなって走りながら1枚脱いだ事は数えきれないほどある
前回の2015年の神戸マラソンの時も、寒さに備えてTシャツの下に長袖シャツを着ていたが、暑くなったのでスタート直前に脱いで腰に巻いて走った。
長袖シャツと半袖Tシャツを重ね着しておけば、どんな気象状況にも対応できるとは言え、腰に巻いて走るのは鬱陶しい。

て事で、今回は自分に気合を入れるつもりで、清水の舞台から飛び降りるつもりで思い切って半袖Tシャツ1枚だけでスタートする事にした。

(幹事長)「決死の決断や!」
(支部長)「そんな大袈裟な事ではないやろ!」


その代わりアームウォーマーを付けた。酸欠マラソンで長袖シャツを持って行くのを忘れて困っていた時、のらちゃんがアームウォーマーを貸してくれたら、腕は寒くないし体は熱くないしちょうど良かった。そのため、脱藩マラソンでも半袖Tシャツにアームウォーマーで走ったら、やはりちょうど良かったのだ。
さすがに今日は寒くなる事はあっても暑くなることはないだろうけど、アームウォーマーは暑くなったらいつでもはずせるので柔軟な対応ができる。

下はいつも履いている短パンの下に、筋肉の疲労防止のためにタイツを履いた。脹脛サポーターにしようかとも思ったが、雨が降ると冷えるので、防寒対策の意味もあってタイツにした。
雨は今は止んでるし、また降ったとしても大雨にはなりそうにないので、嫌いなランニングキャップは被らないことにした。
ただ、終盤にトボトボ歩いて寒くなった時のために雨ガッパ代わりのビニール袋をポケットに入れた。

(のら)「どうしても歩く事を心配してるんやね」
(幹事長)「何度も何度も辛い目をしたからなあ」


またエネルギー補給のための濃縮ゼリー足攣り防止用のドーピング薬なんかを入れてたらポケットがパンパンになってきた。
お腹を壊した時のためにティッシュは絶対に必要なので、顔を吹くハンドタオルは入れるのを止めた。手袋を履くので、汗は手袋で拭けばいい。

(のら)「どうしてもお腹を壊す事を心配してるんやね」
(幹事長)「何度も何度も辛い目をしたからなあ」
(のら)「フルマラソンは辛い思い出ばっかりなんやね」
(支部長)「フルマラソンは体に悪いしな」
(のら)「なんだか不安が爆発しそうだよ」


〜 会場へ出発 〜


ホテルの朝食は7時からと言ってたが、少し前からレストランは開くだろうと思って10分前にはロビーに集合した。
ところがレストランはなかなか開かず、本当に7時になってようやく開いた。我々は先頭で待っていたが、開いた頃には神戸マラソンの参加者が我々の後ろに長蛇の列を作っていた。

(支部長)「これくらいの事態は予想して早目に開けてほしいぞ!」
(のら)「みんな高齢化が進んですぐ怒るようになったね」


ホテルの朝食は予想通りバイキングだった。そうなると、もちろん、ご飯を中心に食べなければならない。
以前はレース中にお腹を壊すことが多かったので、用心して朝食と一緒に下痢止めの薬も飲んでいたが、2015年の徳島マラソンから朝食を菓子パンからおにぎりに変えてみたらその後は一度もお腹を壊さなくなった
パンに含まれるフルクタンという糖類は消化に悪く、下痢になりやすいが、お米に含まれている糖類は消化が良いので、おにぎりを食べれば、もう下痢を心配する必要は無いのだ。
なーんて、すっかり油断してたら、なんと2020年の高知龍馬マラソンで5年ぶりにレース中にお腹を壊して20分もトイレにこもってしまった。原因は分からない。でも、少なくともご飯路線が悪い訳ではないだろう。
エネルギーをいっぱい摂取しようと思って、おにぎりの他に、バナナやゼリーも食べたりしていたが、それらを控えるべきかもしれない。あんまり無理してレース前に食べすぎるのは禁物だ。
て事で、今日もご飯は軽めにとり、おかずも消化に良さそうなものを少量選んで食べた。

(幹事長)「バイキングやから、もっともっと色んなものをいっぱい食べたいんだけどなあ」
(のら)「我慢せんといかんよ」


誰かが「足攣り防止用ドーピング薬は早目に飲んでおいた方が良い」なんて言うので、普段は足が攣ってからでないと飲まない足攣り防止用ドーピング薬を事前に飲んでおく。
朝食を食べたら、トイレに行きたくなったので、素早く大を済ませる。どうせ大会会場のトイレは激混みだろうから、ホテルで用を足せたのは嬉しい。

朝食が終わった頃には長谷さんもやってきて、全員集合となった。時刻は7時半だ。
第1ウェーブのブロックのスタートは9時だが、手荷物を預けるのが8時30分までなので、現地での混雑を考えると、もう出発しないといけない。
まずは駐車場に向かう。外に出て歩いていると、それほど風は無い。これならそんなに寒くない。
駐車場に着いて、車に荷物を入れる。持って行くのは手荷物預かりで預けるビニール袋だ。

大会会場の神戸市役所付近まで行くと、周辺の区画を大きく囲んだ柵が設置されており、中に入るにはゼッケンを見せなければならない。
ところが、みんな揃って入場しようとしたら、支部長D木谷さん長谷さん第1ウェーブのブロックなのでそのまま入れたが、私とのらちゃん第2ウェーブのブロックなので集合場所が違うとの事で入れてくれなかった

(幹事長)「なんで私らだけ第2ウェーブなんかなあ?」
(D木谷)「申告した予想タイム順なんですよ」


スタート待機場所は申告した予想タイム順になっていたのだ。
私はのらちゃんが初フルマラソンなので控え目な予想タイムで申告したため第2ウェーブとなったが、D木谷さんは目標タイムで申告したそうだ。それでD木谷さんと一緒にペアでエントリーした支部長も同じように前の方からのスタートとなったようだ。
私も同じようなタイムで申告していれば、みんな一緒にスタートできたのに、失敗だった。なので、ここでお別れだ。

(D木谷)「それじゃあお互いに健闘しましょう」
(幹事長)「途中で追いつくから、待っててね」
(支部長)「待ってるよう」


とは言ったものの、我々第2ウェーブのスタートは第1ウェーブのスタートより15分遅れなので、15分の差を挽回しなければ追いつく事はできない。普通に走ったのでは追いつけっこないので、支部長の撃沈を待つしかない。

支部長らと分れてのらちゃんと二人で第2ウェーブの手荷物預かり場所を探して歩くが、行けども行けども入場口が無い。あちこちに立っているスタッフに聞いても、「もっと向こう」って言われるばかりだ。
延々と歩いてようやく手荷物預け場所に到着した頃には早くも疲れ果ててしまった
ただ、手荷物預け場所の混雑状況は恐れていたほどではなかったので、時間はまだまだ余裕がある。

着ていたジャケットやトレパンなんかを脱いで手荷物預けのビニール袋に入れると、一気に寒くなった。ホテルを出た時には弱かった風も、ここではかなり吹いている。

(幹事長)「めちゃ寒いやんか!」
(のら)「本当に寒いね」


のらちゃんはTシャツの下に長袖シャツを着ているから、まだマシなはずだが、私は決死の覚悟で長袖シャツを車に置いてきたから、もうどうしようもない。

(幹事長)「せめてここまで長袖シャツを持ってきてたら良かったよ。ここで最終判断すべきやった!」

あまりに寒いから、雨ガッパ代わりのビニール袋を被った。すると、だいぶマシになった。

手荷物を預けた後は、最後のトイレに向かう。ところが、予想していた事ではあるが仮設トイレには、頭がクラクラするほどの長蛇の列が出来ている。
のらちゃんはここに来るまでの途中にあったトイレで用を済ませてきた。そこは空いていて列も出来てなかった。私もそこで済ませておけば良かったが、もっとギリギリまで待とうとしたのが失敗だった。
文字通り、蛇のようにクネクネと曲がりくねって、どこが最後尾なのか分からないように列が入り組んでいて、どの列が短いのかも全く分からない状態だ。
ただ、たまたま並んだ列が割りと短くて、意外に早めに用を足す事ができた。


〜 スタンバイ 〜


準備が終わったらスタート待機場所に移動しなければならない。これが、またまた遠くて延々と歩かされた。我々のブロックの待機場所に着いた時には、もうすっかりくたびれてしまった

スタート待機場所は申告した予想タイム順になっているが、これは速いランナーと遅いランナーが一緒くたにごちゃ混ぜになっているとスタート時の混雑がひどくなり、混乱するからだ。
こういう場合、申告する予想タイムは正直な方がいい。実力より前からスタートすると、周りのみんなから置いてきぼりになって精神的に落ち込むか、あるいは周りの速いランナーにつられて無理して飛ばしてしまって潰れる可能性が高い。
逆に、後ろの方からスタートすると、おしゃべりしながら固まって走る遅いおばちゃん軍団にブロックされて前へ行けない。参加者の少ないマラソン大会なら問題ないけど、2万人も参加する巨大マラソン大会では、最後まで遅いランナーに邪魔されてイライラすることになる。
なので、自分の実力通りの場所からスタートするのが一番良い

ただ、今回は初フルマラソンののらちゃんの完走が最優先目標なので、かなり控え目な予想タイムで申告した。
ゼッケン番号から推測すると、我々は前から6割程度の順番だ。半分より少し後ろってところだ。ちょっと控え目過ぎたかもしれない。
今日の参加者数は22000人ちょっとなので、前には1万人以上、後ろには1万人弱のランナーがいる。前も後ろも多すぎて終わりが見えない。
前の方から放送が聞こえてくる。何を言ってるのかは分からないが開会式をやってるのだろう。

ここまで、いつものようにウォーミングアップをしていないのはもちろん、ストレッチすらやっていない
我々のように体力の無いランナーにとってウォーミングアップが百害あって一利無しなのは常識だが、最近、ストレッチすら無用という説を聞き、それを実践している。
ただ、ここまでかなり長距離をダラダラ歩いてきたので、足がかなり疲れてきた。走る前から足が棒のようだ。これではいけないので、待っている間に屈伸して、凝りをほぐした
集合したランナー達を見ていると、多くのランナーが私と同じようにビニール袋かビニールの雨がっぱを被っている。やはりみんな寒いようだ。
ただ、集合場所はランナーが密集しているのであんまり寒くはなかった。

今日の目標のらちゃんにフルマラソンを笑顔で完走してもらう事だ。タイムは5時間を切れば良いと思っている。
いくらのらちゃんでも初フルマラソンでいきなり4時間は切れないだろうから、次の目安としては5時間だ。て言うか、笑顔で完走できれば5時間は切れるだろう。
5時間を切るには1km7分で走ればいいのだから、アホみたいに楽勝に思えるが、終盤に歩くとオーバーしてしまう可能性はある。
いくらなんでも、それじゃあ楽勝過ぎる」って思って、ついつい前半から貯金を貯め込もうとして終盤に惨敗するのが過去に数え切れないほど繰り返してきた失敗パターンだ。
最初に飛ばし過ぎると終盤に撃沈して足を引きずるようになるが、終盤に歩かなければ絶対に5時間は切れる

なので、今日はできるだけ1km6分半程度の超スローペースを堅持したい
スタート直後の混雑ではタイムロスがあるだろうし、これだけ大勢のランナーがいると、給水所でも多少のタイムロスはあるだろうが、1km6分半のペースを守る事ができれば何の問題も無い。

て事で、今回はのらちゃんのフルマラソンデビューをサポートするために、スローペースで長距離を走るトレーニングをやった。
1ヶ月ほど前からスローペースの30km走を毎週1回ずつ、計4回走った。ペースは1km6分半程度の超スローペースだ。
超スローペースではあるが、最後までこのペースを維持できれば4時間35分くらいでゴールできる。
普段はもっと速く走る癖がついているのらちゃんは、ついついハイペースで走ろうとするので、それを抑えながら走った。そのおかげで、少なくとも30kmまではペースダウンする事無く走れるようになった

(幹事長)「あのトレーニングのおかげで、少なくとも30mまでは問題無く走れる自信がついたやろ?」
(のら)「うん、それは自信になったよ。でも、30kmの先が不安だよ」
(幹事長)「本番になると気合が入るから大丈夫だよ」


30kmでは本番の42kmに10km以上足りないが、それくらいは本番の気合いで乗り切れるだろう。

とにかく、最後まで歩かずにゴールする事が重要だ。
少しでも歩いたらタイムは一気に悪くなる。て言うか、一度でも歩いてしまうと「ちょっとだけ」は通用しなくなる。心が切れてしまって、絶対に繰り返し歩いてしまう。歯止めが無くなるのだ。
逆に、どんなに遅いペースでも最後まで歩かずにゴールできれば、そんなに悪いタイムにはならない。いくら遅くても歩くのと走るのではペースが違うからだ。

足が痛くさえならなければ最後まで歩かずに済む。終盤は足が重くなるが、どんなに足が重くなっても、痛くなければ走り続ける事ができる
ペースは極端に落ちて歩くようなスピードになったとしても、痛くさえ無ければゆっくり走り続けることができる。
しんどくなったから歩く、なんて事はあんまり無い。しんどくなればペースはどんどん落ちていくが、だからと言って歩く訳ではない。疲れとか、足が棒の様になるっていう状態なら、精神力で乗り切れるものだ
しかし、足が痛くなると我慢できない。立ち止まって屈伸したりして、なんとか痛みを取るしかない。最後まで足が痛くならないようにするためには、前半のペースを抑える事だ

これが分かったのが2013年の大阪マラソンだ。
それまでも「序盤は我慢してペースを抑えろ」というのは耳にタコが出来るほど聞いてきた。
しかし、いくら聞いていても、いざ本番になるとアドレナリンが爆発してしまい、「今日だけは例外的に調子が良さそうだ。今日だけはいけるかもしれない。こんなに調子が良い時に記録を狙わなければ記録を狙える時なんて無いじゃない」なんて思ってレース序盤から頑張って走ってしまい、終盤に大きなツケが返ってくるのだ。同じ過ちを何十回繰り返しても身に染みなかった。
それが大阪マラソンでは、体調不良だったし、せっかく滅多に走れない大都市大阪のど真ん中を走れるマラソン大会なのだから、のんびり見物しながら楽しんで走る観光マラソンに徹して、最初からものすごく遅いペースで走ったら、最後まで足が痛くならなかったのだ。

それまでフルマラソンに出ると、終盤は必ず足が痛くなって辛くなり、「なんでアホみたいに、こんなレースに出たんやろ。もうフルマラソンなんて出るの止めよう」って思っていたのだが、大阪マラソンで開眼したのだ。
もちろん、その時は最初から極端にペースを抑えて走ったため、最後まで足は痛くならなかったけど、タイムは遅かった
でも、今日はタイムは気にせず、5時間以内での完走を目指すだけなので、それで構わない。

場内放送が盛り上がってきたかと思うと9時になり、いよいよ支部長らの第1ウェーブのランナーがスタートした
スタート直前に食べるためにゼリーを持ってきたので、それを吸いながら待っていると、我々も少しずつ前に進みだした。
待っている間は寒かったが、走り出すと暑くなるだろうと思い、被っていたビニール袋を脱ぐ。他の多くのランナーもビニール袋を脱ぎ、ゴミ箱に捨てたりしている。
ただ、私は捨てない。また雨が降るかもしれないし、雨が降らなかったとしても、終盤に力尽きてトボトボと足を引きずって歩く可能性もある。
そうなると体が冷えるので、その事態に備えて最後まで持っておきたいので、歩きながらビニール袋を丁寧にたたんでポケットに入れる

ダラダラ移動を続けていくと、ようやくスタート地点のある神戸市役所前フラワーロードに出て整列した。
その後、9時15分となり、我々の第2ウェーブのスタートのピストル遠くで鳴ったようだ
もちろん、私がいる場所からスタート地点までは、まだまだ長いので、周囲は全然緊張感もなく、ノロノロと動き出すだけだ。
これだけランナーが多いと、スタート地点を越えるまでに時間がかかるだろうし、タイムはチップでネット計測してくれるから、焦らずにのんびり歩いていく
ただ、前方を見るとスタート地点の印が見える。思ったほどは遠くない。いよいよスタートかと思うと、ようやく緊張感が漲ってきた


〜 スタート 〜


スタート地点の目印が見えたかと思ったら、意外に移動が速くなった。立ち止まる事なく歩いていくと、スムーズにスタート地点が近づいてきた
結局、スタート地点を越えるまで3分くらいしかかからなかった。第2ウェーブの中では我々は前の方だったようだ。
隣ののらちゃんを見ると緊張でガチガチだ。私もそれくらい緊張感が欲しいが、どうしてもたるんでしまっている。

スタート地点を越えたら、ゆっくりではあるものの、大きな混乱もなく走り始めた。まともに走れないのでフラストレーションは感じるが、最初はウォーミングアップ代わりと割り切らなければならない。
神戸市役所の前三宮駅に向かって北にスタートし、すぐ左に折れて西に向かう。さらにしばらく走って再度左に折れて中華街の入口の門の前を通ってすぐまた右に折れて西に向かう。
この辺りは道幅がちょっと狭くなり、混雑は一向に解消されず、走りにくい状態が続く。

この辺りに最初の1km地点の距離表示があり、時計を見ると7分もかかっている。当初計画の6分半を大きくオーバーしているが、スタート直後の混雑によるタイムロスは織り込み済みだ。これくらいは許容範囲だ。
私らが泊まったホテルのすぐ側を通ってしばらく走ったら、再び右折し、またすぐに左折して西へ向かう。
さっきから基本的には西に向かって走ってるんだけど、なんだかチョコチョコと右へ曲がったり左へ曲がったりで走りにくい。最初から三宮駅前の道へ出ていれば真っ直ぐに走れたのに、道路の構造上の問題があるのだろうか。

この辺りに2km地点の距離表示があり、時計を見るとラップは少しマシになったものの6分半だ。6分半ってのは想定のペースだが、まだまだ走りにくくて、前の人にぶつかりそうになったりしている。もうちょっと自然に走りたいところだ。
だが、JR神戸駅の高架をくぐった辺りから道幅が広くなり、一気に走りやすくなる。ようやく混雑もマシになり、そろそろ自分のペースで走れるようになってきた
ただし、貯金しようと思って無理して一気にペースを上げると終盤のペースダウンに繋がるので、余裕を持って自然体で走る。

向かっている西の空は明るく、当分、雨は降りそうにない。空は曇ったままだが、走り始めると暑くなってきた。風は少し吹いているが、北東の風なのでどちらかと言えば追い風に近い。

(幹事長)「走り始めたら暑くなってきたよ。長袖シャツを着てこなくて良かったよ」
(のら)「ちょうど良い感じだね」


やはり悩んだ時は薄着にすべきのようだ。
のらちゃんとペチャクチャおしゃべりしながら走っていると、隣を走っていたランナーが突然こっちを向いて声を掛けてきた。

(航路)「あれ!?幹事長じゃないですか!」
(幹事長)「うわ、香炉さんやんか!」


なんと、こんな所で偶然にも元四痙攣の高炉さんに会ってしまった。香炉さんとは普段は会った事は無いが、レースではよく会う。それも、今日のように偶然に会うのだ。
今回は私がのらちゃんと大きな声でおしゃべりしながら走っていたから気付いてくれたものだ。大きな声でおしゃべりしてて良かった。
高炉さんは、脱藩マラソンでは2017年、2018年と連続してピッグを献身的にサポートし、ピッグの完走に貢献した優しい実力者だ。
さらに2019年の脱藩マラソンでは途中まで私と一緒に走ってくれて、脱藩マラソンの私の大会自己ベスト更新を助けてくれた人だ。

(航路)「今日はどれくらいのペースで走るんですか?」
(幹事長)「のらちゃんのフルマラソンデビュー戦を完走する事が目的なんで1km6分半のペースで走ろうと思ってます」
(航路)「私は5時間での完走を目指して1km7分で走るつもりでしたが、しばらく一緒に走ります」


高炉さんはフルマラソンでサブ4を達成した事もある実力者だが、普段の練習量はあまり多くない。その代わり、マラソン大会にはよく出ており、川内優輝のように本番で鍛えているランナーだ。
それで、コロナのバカ騒ぎでしばらくレースが無かったため、練習不足で調子が悪いと言う。でも、元々実力者なので我々と一緒に走るのに何の問題も無い。

しばらく行くと3km地点の距離表示があり、時計を見るとラップは6分10秒くらいに上がっていた。想定より少し速いが、自然体なので無理はしていない。
さらに気持ちよく走り続けると、御旅公園という小さな公園の前に最初の第1関門があり、その直後に4km地点がある。時計を見ると、ラップは同じく6分10秒くらいだ。

(航路)「想定よりちょっと速いですよ。このまま行くんですか?」
(幹事長)「ちょっと落とします」


高炉さんは当初予定の1km7分からだいぶペースアップしてしまったので、ちょっと不安そうだ。
私も調子に乗ってペースを上げ過ぎると危険なので、少し落ち着かせる事にした。スタート直後の混雑による借金は完済しているので、当初予定のペースを守って走っていけばいい。

しばらく行くと、微妙に道路が曲がって、再び狭い道に入る。そのまま行けば広い道を走れるのに、なぜ狭い道に入るのか、よく分からない。
狭い道に入ってすぐの所に5km地点の距離表示があり、ラップは6分半になっていた。ちょっと落とし過ぎかも。
この直後に最初の給水所がある。今日は暑くないのでまだ喉は渇いていないが、最近はどのレースのどこの給水所でもこまめに補給することにしているので、ここでもスポーツドリンクを取って少し口に含む。

その後、小さな川があって、ほんの少しだけ坂のアップダウンがあるが、まだまだ大丈夫だ。
真っ直ぐ走り続けると6km地点の距離表示があり、ラップは6分半を僅かながらオーバーしている。さすがに落とし過ぎだ。もうちょっとペースアップしなければ。

その後、新長田駅に向かって左折し、駅の西のガードをくぐると、すぐにまた西へ向かって右折する。このコースは序盤から右へ左へ曲がりまくっているが、この辺りで再び何度か折れ曲がる。
さっきまで広い道を走ってきたが、ここから国道2号線に出るまでは数kmほど狭い道が続く。そのため、再び混雑するようになってきた。スタートから既に6kmも走ってきたのに、参加者が多いから混雑が続いていて、走りにくい。

これだけ大勢のランナーが走っている割には、仮装しているランナーは意外に少ない。て言うか、ほとんどいないくらい。
私らが初めて動物チームで出場した1998年の明石海峡大橋開通記念駅伝大会なんか、10チームに1チームくらいは仮装チームがいて、スーツ姿で頭に大きなウンコを乗せたチームとか、バレリーナの格好をしたチーム(全員男)とか、看護婦さんチーム(これも男)とか、明石の大蛸とか、マーブルチョコの箱だとか、電車とか、お侍さんチームや土人チームや点滴打ちながらの病人チームや、もう阿鼻叫喚の世紀末的世界だった。
だから関西のマラソン大会は仮装のオンパレードかなあなんて思っていたけど、大阪マラソンも神戸マラソンも、とても少ないので意外だ。さすがにこういうマラソンになると真面目に走るのだろうか
と思ってたら、沿道から「食パンマンさ〜ん、頑張って!」なんて声援が聞こえる。すると後ろから頭が食パンになったランナーが追い抜いて行った。少しは仮装ランナーもいるようだ。

(幹事長)「て言うか、食パンに抜かれたのでは情けないなあ」
(のら)「我慢、我慢」


新長田駅のすぐ西には鉄人28号が立っている。阪神・淡路大震災復興のシンボルのモニュメントだ。

(幹事長)「ほら、鉄人28号がいるよ」
(のら)「え?どこどこ?」


あいにく、こちら側からでは海を向いている鉄人28号の背中しか見えないが、それでもなんとなく嬉しい。

その直後にあった7km地点で見たラップは相変わらず6分半近い。もうちょっとペースアップした方がいいような気もするが、無理せず自然体で走る事が大事だ。
その直後には第2給水所があり、ここでもこまめに水を補給する。

今日はマラソン写真撮影販売のオールスポーツのカメラマンがやたら多く、あちこちで写真を撮ってくれている。彼らもコロナのバカ騒ぎでマラソン大会が長らく開催されてなかったが、ようやく活動ができるようになって力が入るだろう。
私としてはどんなに疲れていても、カメラに気が付いたら近づいていってポーズを取るようにしている。疲れてくると、頭が下がってきて、目の前の足元しか見なくなるので要注意だ。

しばらく行くと、今度はJR鷹取駅があり、またまた駅前でチョコチョコと細かい道路を曲がる。こうなると、まるで農道を走っていた昔の丸亀マラソンみたいだ。神戸マラソンともあろうものが、なんでこういうコースなんだろう
その後にあった8km地点で見たラップは6分10秒ちょっとにまでペースアップしていた。いい感じと言えばいい感じだが、あんまりペースは上げ下げしない方がいい。

(航路)「また想定よりちょっと速いですよ。このまま行くんですか?」

再び高炉さんが不安そうに言う。無理して上げている訳ではなく、まだ自然体なので難しいところだ。
その後もJRの線路沿いの狭い道を走り、9km地点天神橋東詰にある第2関門で見たラップは6分ちょっとにまで上がっていた。

(航路)「私のペースよりちょっと速すぎるので、ここで一緒に走るのをやめます」
(幹事長)「あら、そうですか、残念。じゃあ、また後で会いましょう」


て事で、ここまで長いことおしゃべりしながら一緒に走ってきた高炉さんとお別れした。
ここから国道2号線に入り、ようやく広い道になる。道は広いんだけど、ここからは往路と復路が対面通行になっていて、道の半分しか走れないから、結局は同じような広さだ。
ここに少しだけど上り坂があった。JRの線路を越えるためだ。

(のら)「ちょっと坂があるじゃん」
(幹事長)「ほんとやなあ。小さい坂だから、すっかり忘れてたよ」


ま、坂と言っても高さ10mくらいの小さな坂なので、問題は無い。
坂のピークから見ると、国道2号線は広くて真っ直ぐなので、ずっと先まで見通せる。見渡す限りものすごい数のランナーだ。我々の前には1万人以上のランナーが走っているはずなので、すごい眺めだ。

しばらく行くと第3給水所があるので、そこでもこまめに水を補給する。
そこを過ぎるとJR須磨駅の前に10km地点がある。時計を見るとペースは少し落ちていて、ちょうどいい感じだ。
スタートから10km走ったタイムは、当初予定の1km6分半と比べると1分ちょっと貯金ができているが、誤差の範囲だ。このまま自然体で走り続けよう

この辺りから国道2号線は海岸線の道になり、海が良く見える
風向き次第では厳しくなる区間だが、今日は北東の風なので、往路は追い風気味になる。とは言え、あんまり風は強くない。そのため、体感的にはほとんど無風状態で、少し暑いくらいだ。
私も含め、スタート前にビニール袋を被っていた多くのランナーはスタート前にビニール袋を脱いだが、まだ寒いからそのまま走り出したランナーもかなりいた。彼らは途中から暑くなったようで、走りながらビニール袋を脱いでいた。

少し走ると第4給水所があり、そこには本日最初の給食がある。
給食と言っても、バナナとチョコがあるだけだが、とりあえずチョコを何個か取って食べる。バナナはお腹を壊す恐れがあるので回避した。

(幹事長)「チョコは取れた?」
(のら)「うん、取れたよ」


大混雑の大マラソン大会だが、のらちゃんも落ち着いて、ちゃんと水や食べ物を取れているようだ。
その直後に11km地点があり、ラップは少し落ちていたが、給食で少し時間を取ったので許容範囲だ。

この辺りで、早くも折り返してきたトップランナー達が白バイに先導されて走ってくるのとすれ違う。黒人の3人組だ。
ものすごく速い。有り得ないほど速い。速すぎる。次のランナーの姿が見えないほど離している。

(のら)「あれくらい気持ちよく走りたいねえ」
(幹事長)「無理!絶対に無理!!」


同じ人間とは思えないような走りだ。いや、たぶん同じ人間ではないのだろう。

次の12km地点13km地点でのラップは6分10秒ちょっとに上がっていたが、誤差の範囲だ。
そこを過ぎると第5給水所があり、ここでも水を補給して進むと14km地点がある。ほんの少しペースダウンしていたが誤差の範囲だ。

て言うか、実は私は神戸マラソンの距離表示を信用していない
前回の2015年大会で、同じようなペースを維持して走ってたつもりなのに、それまでより急に1km30秒以上遅くなった区間があった。一体何事があったのかと焦って戸惑っていたが、次の区間では逆に1km30秒以上速くなっていた。
つまり、同じように走っているのに、隣接区間で1分以上もペースアップした事になっていた。そんな事はあり得ないので、明らかに距離表示がアテにならない事が分かった。
龍馬脱藩マラソンでは、トンネルの内部は暗いから距離表示を置かず、トンネルを出たところまでズラして設置するなど、明らかに距離表示が間違っていると確信を持って断言できる場所がある。脱藩マラソンは田舎の手作りのマラソン大会なので、それでも納得できる。
しかし、神戸マラソンなんて、ものすごくきっちりした大マラソン大会なのに、そんないい加減な距離表示があるなんて衝撃を受けた。
さすがに5kmおきに設置されているタイム計測機では5kmごとにチップで正確にタイムを計測してくれるようになっているので、その距離表示は正確だと思われるので、それは信用できる。
でも、1kmごとの距離表示はいい加減なものがあるので一喜一憂してはいけない

て事で、次の15km地点での距離表示は正確なはずで、10km地点からの5kmの平均ラップは1km6分10秒ちょっとで、当初予定のペースより少し速い
でも、ずっと自然体で走っており、無理して上げている訳ではないので、速すぎるって事はないだろう。て言うか、スタートからあまりペースが変動していないので嬉しい。

その後、そのまま国道2号線を走ればいいのに、再び海側へ左折し、海岸線の狭い漁港道路に入る。なんで、こうもチョコチョコ曲がりまくるのか分からない。
この道は海の近くを走るため気持ちの良い道で、しかも明石海峡大橋もどんどん近づいてくるのが見えて、景色は楽しい。
ただ、道が狭くて大混雑で走りにくい。一体いつまで走ったら混雑が無くなるんだろう。

この漁港道路の途中に16km地点があるはずなんだけど、なぜか見つからない。実は前回の2015年大会でも、ここの距離表示だけが見つからなかった。
その時は、神戸マラソンともあろうものが距離表示が抜けているってのもあり得ないので見落としたんだろうと思ってたが、2回連続で同じ場所で見落とすなんて事があるだろうか。
ここだけ見にくい場所にあるのかもしれないが、距離表示の正確さに疑問がある神戸マラソンなので、距離表示が抜けているって事もありうる。

折返し点は19km地点なので、そろそろこの辺りから先行しているメンバーを探す態勢に入らなければならない
第1ウェーブのスタートは私たちより15分早かった。それに加えて、私たちは1km6分半を目安にしたスローペースで走っているから、彼らが1km当り1分ほど私たちより速いペースで走っているとすると、プラス15分くらい差が広がっているはずだ。
て事は、私たちより30分ほど前を走っている事になる。距離にしたら5〜6km程度だ。なので、この当りですれ違う可能性が出てくる。

先行メンバーを見つけるために、できるだけセンターライン寄りの左端を走る。すれ違うランナーが見やすいからだ。
ところが、なぜかセンターライン寄りには遅いランナーが多い。中には早々に歩いている人もいる。
遅い人や歩いている人は真ん中を走るとみんなの邪魔になるから端っこに寄っているのは分かる。でも、できれば、そういう人たちは歩道側を歩いてもらいた。
ところが、歩道側は沿道で声援を送ってくれている人がいるせいか、それを避けるように反対側のセンターライン寄りをゆっくり走ったり歩いたりするのだ。
なので、私としてはとても邪魔になる。彼らをかき分けかき分け、メンバーを探しながら走るのはとても疲れる。

狭い漁港道路が終わって再び国道2号線に戻ると17km地点の距離表示があり、この2kmの平均ラップは6分10秒ほどだった。
まだペースは維持できている。まだ全然疲れていない

(幹事長)「大丈夫?」
(のら)「ぜーんぜん大丈夫だよ」


のらちゃんも軽快に走っている。
その後、第6給水所があり、もう全く喉は渇いてないので、ほんの少し口に含む程度だ。
さらに続いて舞子公園第4関門がある。この辺りは中央分離帯がとても広くて植え込みがあるため、対向車線を折り返して走ってくるランナーが非常に見えにくい
なので、給水所で水を補給しながらも、センターライン寄りを走って必死に探し続ける。すると、なんと奇跡的に支部長の姿がかろうじて見えたので、大声で叫ぶ。

(幹事長)「支部長ーっ!!!」
(支部長)「おおっ?」


支部長はウェストポーチから何かを出そうとしていた。後から聞くと、カメラを出して写真撮影しようとしていたらしい。イマイチ真剣さに欠けるぞ。
でも、お揃いの目立つ黄色いTシャツを着るという作戦は成功だった。そうでなければ見落としていただろう。
支部長を見かけたのは、こっちが17.5km地点辺りで、向こうは20.5km地点辺りだから、差は3kmくらいだ。タイムに換算すると20分程度だから、スタートの時間差からそれほど広がってはいない。
とは言え、20分差を追いつくには、支部長が終盤に撃沈して歩きださないと不可能だ。支部長が歩き始めるのは35km過ぎくらいだろうから、40km地点辺りが勝負どころか。

支部長はかろうじて分かったものの、D木谷さん長谷さん支部長より速いはずだから、見つけられなかったという事か。
でも、こんなに大勢が走っている中で、しかも一番分かりにくい広い中央分離帯越しに支部長だけでも見つけられたのは奇跡に近い。

(幹事長)「すごいやろ?」
(のら)「すごいのは認めるけど、なんでそこまでしてメンバーを探すの?」
(幹事長)「それが幹事長の役目やがな」


舞子公園明石海峡大橋の真下にあり、前回の2015年大会の頃は、この舞子公園が折返し点だったので、明石海峡大橋の下はくぐらなかった。
ここからいよいよ後半戦って感じだったが、今はコースが変更になっており、折返し点は1km以上西に延びた。なので、まだ1km以上走らなければならない。

てことで明石海峡大橋くぐって走り続ける。明石海峡大橋まで来ると、なんとなく半分終わったような気になるが、まだ中間地点までは3kmあるので、気を引き締めていかなければならない。
明石海峡大橋をくぐると18km地点がある。ラップは6分10秒ほどのままだ。

そのままスタスタ走って行くと、やがて19km地点が現れた。ペースは少し落ちたが、一喜一憂する必要は無い。
ここに遂に折返し点があった。折返し点は、マラソン大会で一般的な大きな三角コーンではなく、くら寿司の駐車場の中をグルっと回ってくるというものだった。参加者が多いため、三角コーンでは大混雑になるからだろうか。
折り返すと、後ろからくるランナーの大群衆が見える。ものすごい数だ。
我々の後ろからも1万人近いランナーがスタートしており、ここまではまだそんなに多くのランナーに抜いたり抜かれたりはしてないから、相変わらず1万人近いランナーが後ろから走ってきているはずだ。
前方にも反対側にも道路を埋め尽くすように走っているランナーは、まさに壮観だ。

折り返して再び1km走ると、また明石海峡大橋が間近に迫ってきた。よく通る橋なので珍しくはないけれど、こうやって真下から見る機会はあまり無いので、雄大さに圧倒される
明石海峡大橋の手前に20km地点がある。ほんの少しペースダウンしているが、まだまだ誤差の範囲だ。
ここまでの20kmで、当初設定の1km6分半のペースと比べると、4分くらいの貯金ができている。なので、大きく崩れない限り、目標のペースは維持できそうだ

ここでポケットに入れてきた栄養補給のジェルを食べる。
とても濃厚で粘っこいもので、力いっぱい吸わないとなかなか吸いだせないんだけど、同じようなジェルを2017年の海部川マラソンで走りながら吸い込んだらむせて大変な目にあった。
ジェルが気管に入って詰まってしまい、息を吸い込むことができなくなり、咳き込むこともできず、息をすることができなくなったのだ。
マラソン大会で走っている最中に呼吸が停止するなんて、もう大変というか危険な状態だ。
なんとか必死で肺に残っていた息を絞り出して、少しずつ呼吸ができるようになって、必死で咳をして立ち直ったが、あのまま呼吸停止になるのかと思った。
そのため、今日は慎重に絞りだしてゆっくり食べた。口の中は濃厚なジェルでベチャベチャで気持ち悪い。

その先で、もう一度明石海峡大橋をくぐると第7給水所があり、ここで水を口に入れて口の中に残っていたジェルを洗い流す。
さらに進むと21km地点がある。ペースは少し落ち始めたが、それでもまだ設定の6分半までは落ちていない
21km地点のすぐ先に中間点がある。中間点まで来ると、残りはもう半分だっていう安心感が出る。

(幹事長)「大丈夫かな?」
(のら)「ぜーんぜん大丈夫だよ〜ん」


事前のトレーニングのおかげで二人ともまだまだ余裕がある。
ただ、折り返して復路になると東向きになり、風が向かい風になった。それほど強風ではないが、かなり吹き付けてくるので、抵抗が大きい。
すると、前方に先ほど追い抜かれた食パンマンがフラフラと走っている。力尽きかけたと言うより、食パンの形をした頭に向かい風が当たって大きな抵抗を受けて走りにくそうだ。
て事は、前半で追い抜かれた時は、彼は追い風を受けていたはずだ。帆掛け船のように頭に風を受けて軽快に走っていたのかもしれない。

中間点を過ぎると、往路と同じように、復路も国道2号線から海岸線の狭い漁港道路に入る。狭い道に入ると、相変わらずひどい混雑で走りにくい。まだまだ脱落者は少ないようで、大混雑が続いている。
この区間に22km地点があり、ラップはやはり6分半近い。

漁港道路が終わって再び国道2号線に戻った直後に23km地点があり、ラップは変わらず6分半弱だ。
この後には第8給水があり、久しぶりに給食コーナーもあった。ここの給食コーナーには塩羊羹があるはずなので楽しみしていた。だいぶお腹が空いてきたからだ。
ところが、テーブルに行っても塩羊羹が無い。仕方なくお菓子のようなものを取ってポケットに入れた。

(幹事長)「塩羊羹が見当たらなかったよ」
(のら)「うん、無かったね」


仕方ないので、何か分からないけど、ポケットに入れたお菓子のようなものを食べた。そしたら、なんとそれははくせっこうのようなもので、口の中の水分が吸い取られて口中がパサパサになってしまった
なんでマラソン大会にこんなものが提供されてるんだろう。地元のお菓子なのかもしれないけど、これは食べにくいどころじゃなくて、むせて呼吸困難になりそうだ。

この辺りで、なんとなくお腹の調子が悪いような気がしてきた。まだまだ大丈夫だが、この先、まだ20km近くあるのに、最後まで大丈夫かどうか不安だ。
その直後の24km地点で見たラップは、なんと7分近くにまで一気にペースダウンしていた。
給水所で色々と手間取ったりしたが、それにしても一気に落ち過ぎだ。ただ、神戸マラソンの距離表示は正確ではないので、とりあえずあまり気にしない事にする。

沿道から「マイケルジャクソンっ!」って声援がするので前を見ると、マイケルジャクソンっぽいランナーが走っている。例の黒ずくめの衣装に黒いハットを被りサングラスもして、マイケルジャクソンそっくりの格好をしている。
そして声援がかかるたびに「アウッ!」とかマイケルジャクソンっぽい奇声を発しながら走っている。おまけに、なんと時々後ろ向きになってムーンウォークまでしている。
ムーンウォークしながら走るなんて、これは凄い!凄すぎる!本日、一番すごいランナーだった。

しばらく進むと25km地点があるのでラップを見ると、さきほどよりは少しマシになっているが、それでも1km6分半をオーバーしている。
1kmごとのラップは不正確なので一喜一憂する必要は無いが、少なくとも5kmごとの距離表示は正確だと思われるので、この5kmのペースを計算すると、ちょうど1km6分半のペースだ。
なので、だんだん疲労も出てきて少しずつペースダウンしているのは間違いないが、まだなんとか当初計画通りなので悲観する必要は無い。

空は曇ったままで、風も強いので、全然暑くはないが、それでも時々、道ばたに倒れ込んでいるランナーがいる。大会のスタッフが介抱しても、動かないランナーもいる。
熱中症とは考えにくいが、脱水症状は暑くなくても有り得るかもしれない。

風は相変わらず向かい風なので、なんとか風よけになるランナーを見つけて後ろに着こうとするんだけど、ピッタリ同じペースのランナーはなかなか見つからず、右へ行ったり左へ行ったりして、かえって疲労を感じるので、諦めて風に逆らいながら走る。
隣ののらちゃんは風なんか気にせず力強く走っている。大したもんだ。

その後も海岸線の国道2号線を走り続け、26km地点でのラップは6分半を切っていたが、その後の第9給水で再び手間取ったためか、続く27km地点でのラップは再び7分近くにまで落ちていた。だいぶ危なくなってきたぞ。ちょっと気合を入れなければならない。
と思っていたら、次の28km地点で見たラップは、なんと6分を切って本日の最速になっていた。
そんなアホな!いくら少し気合を入れたからって、ラストスパートじゃあるまいし、1分以上もペースアップできるはずがない。

(幹事長)「そんなにペースは上げてないよね?って言うか、上がるはず無いよね?」
(のら)「うん、同じようなペースで走ってるよ」


やはり明らかに距離表示が間違ってる。神戸マラソンともあろうものが、一体どうした事なんだろう。

もちろん、距離表示が間違っていて、距離が短かったとなると、どこかでは長くなるはずだ。
と思っていたら、いきなり次の区間が長かったようで、次の29km地点でのラップはいきなり7分を大きくオーバーしていた。いくらペースダウン傾向になったと言っても、1分半もいきなりスローダウンするはずがない。明らかに距離表示が間違っている。
この2kmの平均だと想定の1km6分半くらいなので、まだまだ大丈夫だ。
と思うんだけど、少しずつペースは落ちているようで、一緒に走っていたのらちゃん少しずつ前に出てきた。なんとなく着いて行くのがきつくなってきた。

29km地点からは往路で走ってきた道と分れる。往路はここまで狭い道を走ってきて、ここから国道2号線に入ったが、復路は往路と離れてそのまま海側の国道2号線を走るので、すれ違うランナーの姿は見えなくなった。
すると、ここで、なんと突然、支部長の後ろ姿が見えた。歩道寄りの端っこをトボトボと歩いている

(幹事長)「あれ?支部長やんか!こんな所で追いつくとは思わなかったよ」
(支部長)「もうずっと歩き続けてるからな」

折返し点の手前ですれ違った時には20分くらいのタイム差があったのに、29km地点で追いつくなんて、想定より早すぎる。25km地点辺りから歩き出したとしか思えない。

(幹事長)「のらちゃんもすぐそこを走ってるよ」
(支部長)「気付かなかったよ」


少し前をのらちゃんが走っているが、支部長のらちゃんには気付かなかったし、のらちゃん支部長に気づかなかったようだ。
せっかくメンバーを見つけやすいように同じ黄色の目立つTシャツで揃えたと言うのに。

(幹事長)「みんな、もっと注意してメンバーを探してよ!」
(のら)「そこまで一生懸命にメンバーを探すくらいやったら、もっと真剣に走ってよ」


トボトボと歩いている支部長を見つけたからではないが、再びお腹の具合が怪しくなってきた
まだ危機的状況ではなくて、なんとか大丈夫なんだけど、まだこの先10km以上あるのに、最後まで大丈夫とも思えなくなってきた

これまでも、マラソン大会の途中でお腹の具合が悪くなったことは何度もある。特に、朝食にパンを食べていた頃は、かなりの頻度でトイレに駆け込んできた。
朝食をご飯に変えてからは頻度は激減したが、コロナのバカ騒ぎでマラソン大会が中止になる前の最後のフルマラソンだった2020年の高知龍馬マラソンでは久しぶりにお腹を壊し、途中の仮設トイレに20分くらいこもってしまった。
これらの過去の経験からすると、最初の方の小波や中波はなんとか我慢できても、そのうち絶対に我慢できなくなる大波が来る。そして、大波が来た時にすぐにトイレがあるかと言うと、そんな都合の良い話はない。
なので、その辺にあったビニールハウスの中に入ったり、誰もいない工場のトイレに入り込んだりした事もある。しかし、この神戸の街中ではビニールハウスも無人の工場も無いだろう。
なので、まだまだ余裕があるうちに、早々にトイレを探して対処する必要がある。タイムロスするのは仕方ない。

そんな事でお尻に力を入れつつトイレを探しながら走っているとペースは落ちていくので、のらちゃん少し前の方に離れて行ってしまったが、仕方ない。
1kmほど我慢して走って行くと、30km地点辺りに須磨海浜公園があり、そこにトイレがあったので駆け込む。しばらくトイレにこもって、無事に用を済ませ、コースに戻ると、タイムロスはちょうど5分くらいだった。
高知龍馬マラソンの時に比べたら大幅にタイムロスを短縮できた。20分もタイムロスしたら、もうやる気も失せるが、5分程度だったらまだまだ頑張ろうという気力が湧いてくる
て事で、再び走り出す。

トイレがあった須磨海浜公園には第10給水があったが、お腹を壊しているような状況なので、ここはパスする。
その直後に30km地点があり、この1kmはトイレ休憩を除いても7分近くかかっていた。状況を考えたら仕方ない。
また、この5kmのペースは1km6分半を少し上回っていた。でも、スタートからのタイムはまだ当初計画より速く、少しだが貯金も残っている
さすがに明らかに少しずつペースダウンしているのは間違いないが、まだまだ足は動いている。

ここで国道2号線とも分れて、そのまま海岸線に沿った道を直進する。海側の道と言っても海岸からは少し離れていて、海のすぐ横ってわけではない。
トイレにこもっている間に、たぶん支部長が歩いて追い抜いて行ったと思うので、探しながら走るが、見つからない。
しばらく走ったところにある31km地点でのラップは6分半を少しオーバーしていたが、まだまだ踏ん張っている。
事前のトレーニングで30km走を4回もやったから、この辺りまでは元気に走れる自信があった
ただ、この先はどうなるか分からない。いつ力尽きてもおかしくはないという不安がある。だいぶ足に疲労が溜まってきたようで、だんだん足は重くなる。
最初から今日は決して無理はしておらず、自然体で走ってきたが、それでも練習で何度も走った30km走を越えると足が慣れてない感じだ。

そして、次の32km地点で見たラップは、一気に1km7分を大きくオーバーしていた。全く歩いていないし、歩こうとも思ってない状態なのに、ここまで急激にペースダウンしているなんて、少しショックだ。
さらに、その後、第11給水所があったこともあり、33km地点で見たラップは7分半をオーバーしていた。ついに、当初計画に比べたら1km当り1分以上も遅くなっている
ただ、前回の2015年大会では、30km地点を過ぎた辺りで力尽き、歩きはしなかったものの1km8分を超える超スローペースに転落して、歩くようなスピードで足を引きずりながらトボトボを走ったのに比べたら、今日はまだまだマシだ。

でも、その後の34km地点では少しだけ回復したが、次の35km地点では1km8分もかかってしまった。この5kmの平均ペースも遂に1km7分半近くにまで落ちてしまった
スタートからのタイムも一気に悪くなり、さっきまであった貯金も一気に無くなって借金生活となった
ただ、周囲のランナーと比べたら、それほど遅れているような感じでもない。私を追い抜いて行くランナーもいるけど、私が追い抜くランナーもいて、全体的には似たようなものだ。

それに、足取りは重くなり、ペースは急激に落ちてはいるが、足は全く痛くはないあと7kmならこのまま走りきれそうだ。そう思うと、精神的には気が楽になってきた。
いつもなら、フルマラソンを走っていると、中間地点を過ぎると、足が痛くなるのと同時に、走るのも飽きてきて精神的に疲れてくる
そもそも42kmも走るなんて飽きるに決まっているが、特に海岸線をひたすら走るタートルマラソンや、吉野川の堤防をひたすら走る徳島マラソンなんか、絶対に飽きてくる。
でも今日は都市型マラソンなのであまり景色が退屈しない上に、さっきまでのらちゃんと一緒におしゃべりしながら走ってたので、楽しく走って来られた。タイムは良くないが、このまま楽しく終われそうだ。

35km過ぎには第12給水所があり、給食もあったが、もちろん、お腹を壊しているので水を少し含んだだけだ。
支部長の姿は、その後も見えない。もしかしたら30km地点にあった給水所で何か食べたりしてたのかもしれない。
道の反対側の車線は通行止めにしているんだけど、救急車と消防車と白バイなんかが停まっている。担架の上には目を閉じたまま動かないランナーが横たえられていたので、倒れ込んだのだろう。

次の36km地点では、なぜか再び1km6分半ペースに戻っていてビックリして喜んだが、単に距離表示がいい加減だっただけで、続く37km地点では7分半をオーバーしていたから、平均したら1km7分を超えていた。
その直前に第13給水所があり、ここにも食べ物があったが、もちろんパスする。

この辺りからコース最大の難関と言われる浜手バイパスに入っていく。ゴールのポートアイランドへは最終的に橋を渡っていくのだが、橋の上りが始まるのが浜手バイパスだ。
ただ、最大の難関とは言っても、橋の最高地点でも20数m程度の高さだから、山岳マラソンである汗見川マラソンや龍馬脱藩マラソンは言うに及ばず、瀬戸内海タートルマラソンとか小豆島オリーブマラソンとか庵治マラソンに比べても全然大した坂ではない
なので、疲れていなければどうって事のない坂だが、疲労困憊していると、この小さな坂が重くのしかかる

ただ、前回は初めてだったので厳しかったが、今回は分かっているので覚悟ができており、そうなると意外に大した坂ではない
周りのランナーを見ると半分くらいの人は歩いているが、歩きたいとも思わない。
もちろん、冷静に他のランナーと比べたら、私も含めて、走っているランナーも歩いているランナーもスピードはほとんど変わらない。走っていると言っても、足は限界に近いから、ものすごく遅い一方で、歩いてても、しっかり歩いていれば、それほど遅くもない。
て事は歩く方が負担が小さいので歩いた方が体力温存的には良いのだけど、気持ちの問題として「一歩も歩かずに完走する」ってのは達成感があり、気持ちが良いので走り続ける

てな感じで走っていると、あっさりと上り切ってしまった。いくらなんでもあっさりと坂が終わってしまったので、なんだか違和感がある。いくらなんでも、こんなもんじゃなかったような気がする。
それで沿道のスタッフに聞いてみる。

(幹事長)「坂はこれで終わりですか?」
(スタッフ)「はい、これで終わりですよ」


そうは言っても、やはりおかしい。こんなに簡単に終わるはずがない。なので、再び別のスタッフに聞いてみる。

(幹事長)「坂はこれで終わりですか?」
(スタッフ)「はい、終わりですよ」
(幹事長)「もう上り坂は無いの?」
(スタッフ)「ええ、ここで終わりですよ」


ふうむ。やはり、ここで上り坂は終わりらしい。あまりにあっさりと終わったので一安心だ。もう後は下るだけだ。
坂を上り切った当りに38km地点があり、そこでのラップはなんと8分を大きくオーバーしていた。コース最大の上り坂だったのだから仕方ない。

浜手バイパスは普段は自動車専用道路だし、ここから先は人家は無いので沿道に応援してくれる地元民はいない
でも、ゴール地点が人家の無い海の埋め立て地なので寂しくなっていくってのは、かつての東京マラソンや大阪マラソンも同じで、もう慣れてしまったので特に寂しくはない。
ここで、大きなサイレン音がしたかと思うと、反対側の車線を白バイに先導された救急車が走り抜けていき、そのすぐ後ろからは消防車も走り抜けていった。もけたたましいサイレン音は消防車のサイレンだった。
先ほど倒れていたランナーを運んでるんだろう。でも、どうして消防車が一緒に走ってるんだろう。救急車の音は小さいので、消防車が馬鹿でかい音量でサイレンを鳴らしながら並走しているんだろうか。

厳しい上り坂は終わったんだけど、まだまだ緩い上り坂が続く。元気な時ならフラットに感じるくらいの上り坂だけど、疲れた足には少し重く感じる。
それでも39km地点で見たラップは7分半は切っていたので、なんとか走れている。これなら最後まで走りきれるぞ。
なーんて思いながら前を向いたら、ビックリ。まだ上り坂があるじゃないか!真っ赤な色をした神戸大橋だ。
さっきの坂でおしまいって事は信じられなかったんだけど、やはりあれが最後ではなかったんだ。前回も走ってるんだから覚えておけよ、と思うが、完全に忘れていた。
真っ赤な神戸大橋を渡るのは覚えていたが、もう上り坂は無くて、そのままフラットな道を走って行けば渡れるのかと思っていた。

神戸大橋がだんだん近づいてくると、最後の第14給水所があったので、リフレッシュするために水を口に入れる。
そして、いよいよ神戸大橋に突入する。ぜんぜん大した坂には見えないし、実際、ぜんぜん大した坂ではないんだけど、上り始めると疲れた足には負担が大きい
なんとか歩かずに走ろうとするんだけど、どう見ても歩いているのと同じようなスピードだ。
両足が地面から離れる瞬間は無いから、横から見ていると歩いてるように見えるかもしれない。て言うか、それはもう歩いてるのかもしれない。でも気持ちは走り続けている。

神戸大橋の上は吹きっ晒しなので、風向きによっては厳しい向かい風になるところだが、今日は北東の風なので南に向かって走っていると追い風になり、気持ち良い。
神戸大橋の真上辺りに40km地点があり、ラップは再び8分を超えた。上り坂だったから仕方ないだろう。
また、この5kmの平均ペースは1km7分半を超えてしまった。当初計画からの借金もかなり膨れ上がった。でも、もう残り2kmだから、走りきるしかない。

ここからいよいよ下り坂でポートアイランドに入っていく。神戸大橋を下り切った所に41km地点があり、そこで見たラップは6分ちょっとと、レース序盤のようなタイムになった。下り坂だったので早くて当たり前だが、もうラスト1kmなので気持ちも軽い。
前回は「ポートアイランドに入ってからまだ4kmもあるので油断してはいけない」という忠告は聞いていたが、ポートアイランドに入ると、どうしてもレースが終わったような気分になり、気が緩んでしまった。
ポートアイランドに入るとゴールがすぐそこに見えてすっかり終わったようなムードになるのに、なかなかゴールさせてくれず、あちこちをグルグル走らされるので、精神的にガックリ来てしまったのだ。
しかし、今日は本当にもう少しだ。あと1km走ればゴールだ

って感じで身も心も軽くルンルン走っていたら、前方に「金哲彦」って書いたゼッケンを付けたランナーが走ってる。金さんじゃありませんか!
金さんは丸亀マラソンのプロデューサーをしていて、2009年の丸亀マラソン2010年の丸亀マラソンに我々はペースランナーを務めたため、レース後に懇親会を開催して親交を深めた。
なので、思わず声を掛ける。

(幹事長)「金さんじゃないですか!私、丸亀マラソンでペースランナーを務めた‥‥」
(金)「ああっ、覚えてます、覚えてます」


て事で、久しぶりの握手をした。
金さんはとてもスローペースで走っていた。ゲストランナーとして他のランナーに声掛けなんかしながら走っていたんだろう。
後から考えると、もう少し色々とおしゃべりをしたら良かったんだけど、ルンルンと快調に走れていたため、そのままあっさりとお別れしてしまった。


〜 ゴール 〜


最後のコーナーを回るとゴールゲートが見えてくる。いよいよラストなので、気持ちよくスパートする。て言うか、実際にはスピードは全く上がっていないが、スパートしているつもりになる。
オールスポーツのカメラマンが大勢待ち構えているので、カメラを意識しながら、ことさら笑顔を作ってゆっくり万歳してゴールした。

タイムは当初計画よりだいぶ遅れてしまった。トイレにこもったりしたから仕方ない面もあるが、トイレの時間を除いても、だいぶ遅れてしまった。でも、お腹を壊して体調が悪かった割には、まあ許容範囲だろう
終盤はのらちゃんと離れてしまい、一緒にゴールしようと言ってたのは果たせなかったが、最後まで足が痛くならず、気持ちよく走れた
なんと言っても、フルマラソンでは、最後まで足が痛くならずに走れた場合はとても満足だ。

ゴールするとフィニッシャータオルをかけてもらい、メダルや水を貰う。
他のメンバーを探したかったが、その当りに滞留するのは禁止されており、ところてんのように先へ先へ押し出されていく。
少し進むと手荷物受取の場所があり、そこで手荷物を受け取って辺りを見回したらのらちゃんが待っててくれた。

(幹事長)「どうやった?」
(のら)「最後まで完走したよ!」


タイムは当初計画よりは少し遅かったが、初フルマラソンとしては立派なタイムだった。

(幹事長)「すごいやん!足は痛くならなかった?」
(のら)「うん。神戸大橋の上りでしんどくなって10歩くらい歩いてしまったけど、すぐに走りだして、ほぼ完走したよ」


さすがはスーパー女子ランナーののらちゃんだ。足も痛くなってないようだ。
私もゴールしても足は全然痛くなってない。昔はフルマラソンなんか走った後は、ゴールしたら足が痛くて動けなくなったものだが、最近は、どうしても余力が残ってしまってて、ゴールしても平気で歩けてしまう
嬉しいような気もするけど、やはり情けない。終盤、足がどんどん重くなって、どんどんペースは落ちていったんだけど、それでも余力が残っているってことだ。
精神をコントロールして、そういう余力をなんとかうまい具合に引き出せれば、全力を使い切って良いタイムが出るだろうし、ゴールした後は足が痺れて動かなくなるだろう。
タイムは遅いくせに余力が残っているっていう状態だと、不完全燃焼感が残る

とは言え、最後まで足が痛くならなかったのは嬉しい。やはり序盤からずうっと超スローペースで抑えて走ったからだろう。
足が痛くなっても、なんとかマシなタイムを出すのと、悲惨なタイムでも最後まで足が痛くならずに完走できるってのと、どっちが良いかと聞かれれば、タイムは悪くても足が痛くならない方が良い
最後まで足が痛くならずに済むと、少なくとも辛くはない。走っている途中で、フルマラソンに出た事を後悔したりすることはない。また出たいと思うようになれる。
どんなにタイムが悪くても、フルマラソンを一歩も歩かずに完走できたってことは、それだけで嬉しい事だ

ただし、フルマラソンの自己ベストは終盤に足が痛くなって足を引きずりながら泣きながらゴールした時のものだ。前半の貯金が物を言ったパターンだ。これがレース展開の難しいところだ。
前半からペースを抑えて走ると、足が痛くならないのは嬉しいけど、当然ながらタイムは悪い。足が痛くならない範囲でもっとペースを上げる必要がある。どこまでペースを上げるべきか、難しいところだ。

第1ウェーブでスタートしたD木谷さん長谷さんは既にゴールしており、すぐにスマホで連絡がついた。

(幹事長)「どうでした?」
(D木谷)「終盤で目標を見失って歩きました」
(幹事長)「なんとかーっ!」


D木谷さんはサブ4を目標として前半は良いペースで走ってたんだけど、30km地点で目標達成に10分遅れてしまい、もう無理だと思ったとたんやる気が失せて、3kmくらい歩いてしまったんだそうだ。
10分くらいなら何とかなるような気もするが、残り12kmで10分縮めるには1km当り50秒ずつ縮めなければならないから、やはり相当難しい。

(D木谷)「て言うか、足が重くなってペースがどんどん落ちてましたからね」

長谷さんは最後まで快調に走り、サブ4でゴールしたが、目標は3時間45分だったので、少し不満そうだ。

(D木谷)「支部長はどこですかね?」
(幹事長)「29km地点で歩いてたから、まだゴールはしてないと思いますよ」
(D木谷)「え?でも記録は出てますよ」


ゴールしたタイムは速報ですぐ分かるようになっている。それを見ると、なんと支部長は好タイムで早々にゴールしているように見える。

(幹事長)「いや、それは有り得ない。29km地点で歩いていたから、その後、再び走ったとしても、そのタイムではゴールできないはず」
(D木谷)「どういう事でしょうね?」
(幹事長)「29km地点で歩いてたからリタイヤしたんじゃないかなあ」
(D木谷)「でも、リタイヤした場合はタイムは出ないでしょう」


どう考えても29km地点から快足を飛ばしたとしても有り得ないタイムが表示されている。謎だ。謎過ぎる。
後から分かったことだが、速報のタイムは、最終的なゴールタイムでは無くて、5kmごとにある中間計測値の最新版が表示されるようになっていた。なので表示されているタイムは、直前に通過したどこかの関所でのタイムだった。

支部長を待っていると、例のマイケルジャクソンがゴールしてきたので、声を掛けて少しお話をした。東京から来ているそうで、気さくで楽しい人だった。
後日、NHKのランスマを見ていると、東京の別のマラソン大会でも走っている映像が流れていて、その時もムーンウォークを披露していた。その筋では有名な人なのかもしれない。

支部長は、絶対にどかでリタイヤすると思ってたが、なんと6時間近くかかってゴールした。

(幹事長)「お疲れさん。フルマラソンの最長タイムじゃない?」
(支部長)「いや、脱藩マラソンより5分速かった」
(幹事長)「だいぶ歩いたんじゃない?」
(支部長)「25km地点からずっと歩いた。全部で17km歩いた。もうマラソンと言うより街歩きになった」
(幹事長)「それは凄い!凄すぎる!なんでリタイヤせんかったん?」
(支部長)「完走メダルとフィニッシャータオルをもらわんといかんからな」


17kmも歩くなんて、私なら絶対にリタイヤするはずだ。ウォーキングが大嫌いな私としては有り得ない苦行だ。
たかが完走メダルとフィニッシャータオルのために17kmも歩き続けるなんて、頭が下がる思いだ。

(幹事長)「のらちゃんとどっちが凄いかなあ?」
(D木谷)「そりゃやっぱり初フルマラソンを良いタイムで完走したのらさんでしょ」
(幹事長)「そらそうやわな」


やはり初フルマラソンで快走した女王様の快挙を褒めたたえなければならない。

フィニッシャータオルと完走メダルをもらって記念撮影
(左からD木谷さん、支部長、のらちゃん、幹事長、長谷さん)


第1ウェーブで走ったメンバーは早々に着替えを済ませていたが、私とのらちゃんはなんだか面倒なので、着替えは後回しにする事にした。ランナーには銭湯のタダ券が配られているので、後で銭湯に行くから、その時に着替えれば良い。

記録証は後日、ネットからダウンロードしろとの事で、今日はもらえない。せっかくだから、ちゃんとした分厚い紙に印刷された記録証が欲しいところだが、神戸マラソンは前回から既にネットでダウンロードするようになっていたので仕方ない。

大都市のマラソン大会では、ボヤボヤしてると帰りの交通機関が激混みになって大変な目に合うので、早々に引き上げることにした。
ところが、ポートライナーの駅に行くと、既にトンでもない長蛇の列が出来ている。ものすごい長さの列だ。ポートライナーはそんなに大きな車両ではないので、乗るまでに延々と待たされそうだ。

(長谷)「これなら歩いて帰った方が早いでしょうねえ」
(幹事長)「そう思う。でも、もう歩きたくない」


元気な時なら歩いて帰りそうだが、さすがに今日は歩きたくない。
それよりは、反対側の車両に乗って1つ手前の駅まで行ってから乗り直したら待ち時間無しで乗れそうなので、それを真剣に考えていたが、昨日買った記念乗車券はこの駅からでしか乗れないので諦めた。なんとなく罠にはまった気分だ。
だが、トンでもなく長い列は、意外に順調に進み、それほど待つことなく割りとあっさりと乗ることができた。下手に歩いたり反対側に行ったりしなくて良かった。


〜 反省会 〜


三ノ宮駅に着いたら、お腹が空いたので、まずは夕食を食べに行く。行先は、昨晩と同じく、近くの元町の中華街だ。
中華街は今日も大勢の若者でごった返していた。毎日毎日、こんなに若い人たちが繰り出してくるなんて、本当に驚きだ。

(幹事長)「こいつら毎日来てるんか?」
(のら)「別の人だってば」


昨日は各店をかなり細かく吟味して歩いたが、今日はみんな足が疲れているので、席が空いてる店を見つけて早々に入店する。
私は今日は点心が中心のセットメニューを頼んだ。デザートにゴマ団子も付いていた。昨晩も帰りがけにゴマ団子を買って帰り、ホテルで食べたが、もちろん美味しかったが、今日のは暖かくてより一層美味しかった。

お腹いっぱいになったところで、ランナーに配られた銭湯のタダ券を握りしめて銭湯に行く。長田区にある菊水温泉という銭湯だ。
銭湯なので当然ながら石鹸やシャンプーは無いんだけど、持っていくのを忘れていたから、受付で石鹸を買ったら、たった30円だった。包装紙も無いむき出しの小さな石鹸を売ってくれた。なんとなく古き良き時代を思い出して嬉しい。
支部長はタオルを買っていたが、それも120円と微妙に安かった。

お風呂でサッパリしたら、後は車の中で爆睡して帰るだけだ

(長谷)「ちょっとちょっと、私は運転がありますけど」
(幹事長)「助手席のD木谷さん、お相手をお願いね」


今日のマラソンは約3年ぶりのフルマラソンだった。なので、ちゃんと走れるかどうか不安はあった。
でも、タイムは悪かったとは言え、最後まで足も痛くならず気持ちよく完走できたので満足だ
それに、やっぱり都市型マラソンは風景が変化に富んでいて楽しかった。景色が最後まで退屈しないし、沿道の応援も楽しい。
東京マラソンや大阪マラソンに比べたら景色のバラエティさは落ちるけど、小豆島や徳島と言った田舎のマラソンに比べたら終始楽しかった。

(支部長)「私は25kmで足が動かなくなり、17kmも歩いてしまったから、あんまり楽しくなかったよ」
(幹事長)「17kmも歩き続けるなんて、常人ではできない事をやり遂げた満足感があるんじゃない?」
(支部長)「そんなもん、あるかいっ!」


私たちは、やはり事前に何度も30km走のトレーニングをやったのが良かったのだろう。

(のら)「うん、絶対に30km走が役に立ったよ。事前の30km走の方が今日の本番より辛かったもんね」
(D木谷)「やっぱり、それくらい練習しとくべきでしたね。私も練習不足だったので終盤力尽きましたよ」


なんにしても、今日の最大の目的であるのらちゃんフルマラソンデビュー戦の完走が達成されたので、とても嬉しい。満足だ。
彼女は来年3月に名古屋ウィメンズマラソンゾウさんと一緒に出場する。私は出ることができないが、もう何の心配も無い。

(幹事長)「次はもっとペースを上げたトレーニングをして、自己ベストを出そう」
(のら)「うん、頑張るよ!」


ここでD木谷さんが突然、新たな提案をした。

(D木谷)「4月に河口湖の周辺で富士五湖ウルトラマラソンってのがあって、私と長谷さんは100kmコースに出るんですけど、62kmコースもあって、それなら幹事長やのらさんも走れますよ」
(幹事長)「ウルトラマラソンには絶対に手を出してはいけない、という親の教えを固く守り抜いてきた私に、敢えて提案すると言うのかな?」
(のら)「面白そうだよ。行こう、行こう!」


のらちゃんは、ついこないだまでフルマラソンに出るのですら緊張していたのに、今日、楽勝で完走したもんだから、やる気満々だ。
確かに私も100kmは絶対に走れないし走りたくもないが、今日の感じなら62kmくらいなら走れそうな気もする。
これまではウルトラマラソンは頑なに拒絶してきたが、この提案は、ウルトラマラソンとしてではなく、単にフルマラソンより少し距離が長いマラソン大会って感じだ。
河口湖畔は、今年8月の富士山登山遠征の後に温泉に泊まり、早朝ランニングをした辺りだ。とても気持ちの良いきれいな場所で、あそこなら楽しく走れそうな気がする。
ところが、その後、言いだしっぺのD木谷さん長谷さんは仕事の多忙期と重なるため出場できそうにない事が分かった。そうなると二人だけで行くのは心細い。

(幹事長)「支部長はどうする?」
(支部長)「え?何?何の話?」


爆睡していた支部長は冷静な判断ができる状態ではないので、後日、相談する事にした。
でも、なかなか楽しそうな大会なので、やる気が出てきたぞ。

コロナのバカ騒ぎで中止が続いていたマラソン大会だが、ようやく本格的に再開されるようになってきた。来年も頑張るぞ!



(ピッグ)「アホみたいに文章が長かったですね。史上最長の記事じゃないですか?」
(幹事長)「そやな。断トツで最長やな」
(ピッグ)「スタートするまでも長かったですけど、スタートしてからも異常に長かったですね。
       フルマラソンで1kmごとのラップを延々と書かれたら読む気が失せますよ」
(幹事長)「あれは次回に備えての備忘録やから、読み飛ばしてくれたらええんよ」
(ピッグ)「言われなくても読み飛ばしましたけど」


トンでもない長文になってしまいましたが、久しぶりのフルマラソンなので、お許しくださいな。


〜おしまい〜




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