第6回 京都マラソン2017

〜 亀ちゃんと走る京都路 〜


2017年2月19日(日)、京都市で第6回京都マラソンが開催された。6年目にして、ようやくエントリーの抽選に当選し、初出場できた2年前の神戸マラソン以来の大都市マラソン出場だ。

(ピッグ)「サブタイトルの『亀ちゃんと走る』って、以前どこかで見たような気もしますね」
(幹事長)「探してみたら、20年前の第18回瀬戸内海タートルマラソンのサブタイトルに似たようなのがあったな」


20年前のレースでは、彼が私を追い抜いていったが、今回は20km近く一緒に走ってもらった。とてもお世話になりました。


〜 4大都市マラソン制覇 〜


今回の京都マラソン出場により、2013年の東京マラソン大阪マラソン2015年の神戸マラソンに続き、4大都市マラソンを全て制覇したことになる。とっても嬉しい。

(ピッグ)「大都市マラソンは他にもあるんじゃないですか?」

確かに、例えば横浜マラソンなんてのがある。でも、これは2013年は10kmレースのみ、2014年にいたっては開催無し、2015年からはフルマラソンとなったがレース後に距離が短かった事が判明するなど、混乱の極みにあり、まともに相手にするようなレースではない
去年、第2回大会が開催されたさいたまマラソンも、参加費が15000円と異常に高いくせに「給食が無い」とか「ボランティアが不足している」なんて批判が殺到したレースで、これまたまともに相手にするようなレースではない
名古屋ではフルマラソンの名古屋ウィメンズマラソンがあるが、男子も参加できる名古屋シティマラソンはハーフマラソンしかない。
もちろん、他にも北海道マラソンとか福岡マラソンとかあるだろうけど、大都市とは言え地方都市なので、あんまり大都市マラソンってイメージではないので食指は動かない。
てな訳で、私の中では、これで大都市マラソンは一通り完結したことになる。まことに目出度い。

京都マラソンは2012年に始まった新しいマラソン大会だ2007年に東京マラソンが始まり、その大成功に刺激されて関西の3大都市である大阪、京都、神戸が仲良く同じように真似して2011年度からマラソン大会を始めたのだ。マラソン大会が増えるのは喜ばしいことだが、それにしても関西の3大都市が揃って同じ年に始めるなんて、節操が無いと言うか独自性が無いと言うか横並びと言うかライバル心が強いと言うか、何と言うか。ちなみに、同じ関西でも、2015年に初参加した奈良マラソンは1年前の2010年から始まっている。

京都マラソンは大人気を誇る大都市マラソンの例に漏れず、エントリーは抽選で、競争率が高くてなかなか当選しない。今年は一般枠の定員13120人に対して56478人の応募があったので、競争率は4.3倍だった。他にも京都市民枠やボランティア経験者枠なんてものもあり、合計では定員15320人だが、基本的にあらゆる抽選やクジに弱い私としては、このような高い競争率を勝ち抜いて当選したことは、本当に嬉しい。
競争率が10倍を超える東京マラソン(今年は12.2倍)のほか、競争率が4〜5倍の大阪マラソン(今年は4.2倍)、京都マラソン(今年は4.3倍)、神戸マラソン(今年は3.8倍)4大都市マラソンの出場期待値を計算すると、だいたい0.8回/年、つまり1年に1回弱の当選となる。過去の実績を見ると、4年前の2013年に東京マラソンと大阪マラソンの両方に当選し、2年前の2015年に神戸マラソンに当選し、今年ようやく京都マラソンに当選したので、なんとかギリギリ確率通りのような気もするが、京都マラソンは6回も応募してようやく当選したので、今回やっと出場できるのは本当に嬉しい

ただ、京都マラソンの参加費用は参加料12,000円と手数料618円を合わせると12,618円もする。普通に考えたら、マラソン大会ごときに10,000円も出すなんて高い。高すぎる。ほんの少し前まで、マラソン大会の参加料はせいぜい3,000円くらいだった。もちろん、田舎のマラソンに比べれば大都市マラソンは参加する価値も高いし、東京マラソンも10,800円だったし、大阪マラソンなんか、参加料は同じく10,800円だけど、強制チャリティ募金が1,000円もあり、合計すると11,800円だ。チャリティ募金て、チャリティなんだから任意じゃないとおかしいと思うんだけど、強制徴収される。はっきり言って詐欺だ。だが、京都マラソンはそれよりさらに高く、はっきり言って限界だ。
なんでこんなに高いのか理解できない。那覇マラソンなんか6,500円だった。もちろん、12,000円でも赤字ってのは分かる。必要な経費を参加人数で割れば1人当たり何万円もかかるってのは分かる。でも、赤字が嫌なら開催しなければいいじゃない。なにも京都市はマラソン大会で儲けようとしている訳じゃないだろう。観光の効果とか狙って開催する訳だ。だから、単体で見れば赤字になるのは承知の上での開催だ。だから、もう少し下げたらどうかと思う。
さらに、少し遠方なので交通費はかかる。ただし、これは東京や沖縄に比べれば安いものだ。四国から離れて参戦しようとすれば、最低でも同じくらいはかかるだろうから、これは仕方ないから許す。でも、参加料そのものが、いくらなんでも12,000円は高すぎる。東京マラソンや大阪マラソンは1万円以上出したって、可能であれば毎年でも出たいと思うが、京都マラソンはどうだろう。どうせなら他の大会にも出てみたいし。


〜 京都マラソンの特徴 〜


4大都市マラソン」と一緒くたに述べたが、4つの大会が全く同じジャンルという訳ではない。正真正銘の大都会の東京マラソンと大阪マラソンは間違いなく群を抜いた楽しいマラソンで、何度でも出たいと思ったが、それに比べて神戸マラソンは大都会特有のパノラマ感が乏しかった。うちのメンバーで神戸マラソンに出たことがあるピッグも同じような感想だった。田舎じゃないのでコースの周りに田んぼがある訳ではなく、人家が建ち並ぶんだけど、東京や大阪のように高層ビルや観光名所になるような建造物に囲まれた道を走るのは、ほんの一部で、コースの大半は低層の建物が続く道だった。
そして、うちのメンバーで京都マラソンに出たことがある支部長の話によると、京都マラソンも同じような感じらしい。て言うか、さらに京都マラソンは大都会感が無く、田舎のマラソンのようだったらしい京都は古い建造物が多く、建築規制も厳しいので、そうなるのかもしれない。しかも、他の3大会のコースが基本的にフラットなのに対し、京都マラソンは市街地周辺の道を走るため、意外にアップダウンがあるらしい

それでも、普段なら絶対に走れない都会の街中を走れるというシティマラソンの魅力は同じだ。山と海ばかり見て走る瀬戸内海タートルマラソンや川と田畑ばかり見て走る徳島マラソンとは趣が異なる。
それに、何と言っても古都京都の観光名所を巡るんだから、やはり楽しみでワクワクする。コース周辺には、天龍寺、仁和寺、龍安寺、金閣寺、上賀茂神社、下鴨神社、銀閣寺の7つの世界文化遺産をはじめ、梅宮大社、松尾大社、清凉寺、大覚寺、平野神社、わら天神、大徳寺、今宮神社、平安神宮など数多くの寺社仏閣がある。また嵐山の渡月橋を眺めながら桂川沿いを走るし、嵯峨野の広沢の池も通るし、京都府立植物園の中も走るし、鴨川沿いや京都御苑の側も走るし、送り火の五山(鳥居形、左大文字、船形、妙法、大文字)も見られる。これぞ古都京都マラソンの醍醐味だ。

(支部長)「そういううたい文句に私も騙されたんだけど、確かに有名な寺社仏閣の前の道は走るけど、寺社仏閣が見られる訳ではないで」
(幹事長)「え?そうなん?見えないの?」
(支部長)「寺社仏閣は道から奥まった所にあるからな。それに送り火の五山なんかも見る余裕は無かったな」
(幹事長)「そうなのか?奈良マラソンでは、結構、景色も楽しめたけどなあ」


ま、自分で走ってみないと分からない。

それにしても最近、フルマラソンへの参加が多くなった。以前は徳島マラソンのほかは、瀬戸内海タートルマラソンで、たまにフルマラソンの部に出たりするくらいだったが、2013年は徳島マラソンのほか東京マラソン大阪マラソンに出場し、2015年は徳島マラソンのほか神戸マラソン奈良マラソンに出場し、去年は徳島マラソンのほか龍馬脱藩マラソン那覇マラソンに出場し(ただし那覇マラソンは直前の怪我で棄権)、さらに続いて今回の京都マラソンだ。本当はフルマラソンは体にきついので年に1回かせいぜい2回くらいに抑えたいところだが、4大都市マラソンは全て抽選なので、いつ当選するか分からないから毎年、全てにエントリーしているし、奈良マラソンとか那覇マラソンとか新しいレースにも食指を動かしているので、こうなってしまった。今回も京都マラソンも、1ヵ月後の3月には徳島マラソンがあるので、ちょっとしんどい感じがしないでもない。

また、季節的にも2月の開催ってのは、個人的には好ましくはない。一般的にマラソン大会は秋から春にかけて開催され、特にシリアスなマラソン大会は冬場がメインとなる。しかし冬は寒い。寒いのが苦手な私としては、冬のマラソン大会は嫌いだ。特に冬場の寒さが厳しい京都で、2月という一年で一番寒い時期に開催されるってのは難点だ
もちろん、好き嫌いとは別に、良い記録が出るのは寒い季節だ。7月末の汗見川マラソンなんか論外としても、5月のオリーブマラソンでも天気が良い時は猛暑のレースとなって惨敗する。2月の丸亀マラソンなんかの方が良いタイムが出る。でも寒いのはやっぱり嫌だ。特にフルマラソンの場合は寒いのは辛い。せいぜいハーフマラソン程度の距離までなら、最後まで同じように走れるから、寒くても体は熱を発散する。でもフルマラソンの場合は、前半は体が動いているから熱も出てきて暑くなるが、後半は疲れ切った体を引きずって歩くように走るので、体が熱を発散せず、どんどん冷えてくる。なので寒い時期のフルマラソンは辛い。なーんて言っても仕方ない。いくら寒くても一度は出てみたいマラソン大会だ。


〜 前日受付 〜


大都市のマラソン大会はどこもそうだけど、京都マラソンも当日の受付は無く、受付は前日に済ませなければならない。参加者が多くて当日の朝では大混乱になるからだろうけど、遠方から参加する人にとっては負担感が大きい。東京なら、どうせ当日に受付があったとしても高松を朝出発していては間に合わないので前日に移動せねばならないから仕方ない。沖縄の那覇マラソンも同様だ。でも、関西になると微妙だ13年前の加古川マラソン19年前の明石海峡大橋開通記念駅伝大会に出たときは、朝出発して楽勝で間に合った。京都は明石や加古川より遠いとは言え、新幹線なら大した差は無い。酸欠マラソン龍馬脱藩マラソンに出るために朝の5時頃に出発したのに比べたら、よっぽどマシかもしれない。
話は逸れるが、関西なら、まだギリギリ許せないこともない。でも岡山は許せない。一昨年から始まった岡山マラソンに我々のメンバーが誰一人参加しようとしないのは、この理由による。関西なら、当日の朝に出発するのも多少はしんどいから、前日に行くのも諦めがつくけど、電車で1時間で行ける岡山なんて、始発電車では間に合わない徳島マラソンより時間距離は近い。楽勝で朝出発できる。それなのに前日しか受け付けないなんて、一体どうしろと言うのだ!電車で1時間の岡山に前夜から行って泊まる訳にはいかないけど、前日にわざわざ受付だけに行くには遠すぎるのでアホらしい。おそらく、これは、岡山市が見栄を張って「岡山も大都市だ。だから他の大都市マラソンと同じように前日受付にするのだ!」なんて思っているのか、あるいは、わざと遠方からの参加者に宿泊させようとしているのかもしれないが、参加者の利便性を考えて、なんとしても当日の受付をやってもらいたいものだ。
て言うか、最近は現地での受付自体を廃止して、ゼッケンやタイム計測チップを事前に送ってくるようなマラソン大会も増えてきた11月に出場した瀬戸内海タートルマラソンなんかもそうだ。とても素晴らしい便利なシステムだ。全てのマラソン大会で採用してもらいたいシステムだ。ただ、このシステムだと身代わり出走が可能になるので、人気が高くて競争率の高いマラソン大会ではダフ屋なんかが横行して収拾が付かなくなるからダメなんだろうなあ。参加申込みの競争率が低くて、身代わり出走の恐れが少ないマラソン大会だからこそできることだ。

色々と不満のある前日受付だが、文句を言っても仕方ない。それに、2年前の神戸マラソンの時もそうだったけど、関西には親族が何人かいるので、宿には困らない4年前の大阪マラソンの時は、普通のホテルが取れなかったため釜ヶ崎のドヤ街に泊まり、夜の釜ヶ崎を探検するという貴重な体験をした。ああいう機会でも無ければ、絶対に一生、泊まることがないような場所なので、非常に得難い経験だった。でも、神戸マラソンの時は神戸の親族の家に泊まったし、今回は関西の別の親族の家に泊まることにしている

てことで、レース前日の土曜日に、高松から高速バスで3時間半かけて京都駅まで行き、そこから地下鉄を乗り継いで20分ほどで受付会場の最寄りの駅である東山駅に着く。
京都マラソンのスタート地点は西京極総合運動公園で、ゴール地点は平安神宮前だ。一応、日本陸連や国際陸連の公認コースになっている。そして、前日の受付はゴール地点の平安神宮の横にある京都市勧業館(みやこめっせ)という所でやっている。場所はよく分からなかったが、地下鉄の駅を降りてランナーっぽい人たちの群れに着いて歩いていると、話しかけてくるおっちゃんがいた。

(おっちゃん)「マラソンの受付?」
(幹事長)「ええ、そうです」
(おっちゃん)「わしも昔は出てたんやけどなあ」


なんて話しかけてきた。京都マラソンは5年前にできたものと思っていたが、それより以前はハーフマラソンをやっていたらしい。おっちゃんはハーフマラソンの頃は出ていたけど、もう70歳を過ぎたので、今は走らずに、もっぱら写真を撮っているのだそうだ。首から立派なカメラをぶら下げていたから、かなり本格的に写真を撮っているらしい。おっちゃんに連れられて無事、みやこめっせに到着した。東京マラソンや大阪マラソンなんかと同様に、受付場所へ入るのもランナー本人だけだし、受付では身分証明証が必要だったけど、それほど厳重って感じでもなかった。
受付ではゼッケンや荷物預けの袋をもらい、それから参加賞の京都マラソン2017オリジナルBUFFなんてものをもらう。一瞬、手ぬぐいかと思ったけど、伸縮性のある生地で筒型になっており、ヘッドバンドとかネックウォーマーなんかに使える多機能ギアとのことだが、イマイチ必然性が分からない。まあ、Tシャツでなく良かったかもしれない。ほとんどのマラソン大会の参加賞はTシャツで、それでも大阪マラソンで貰ったような機能性も優れているしデザインも良いTシャツならいいけど、ほとんどのものはマラソンの練習する時にしか着られないようなダサいデザインで、しかも最近のTシャツは生地が良くてしっかりしてて、いつまで着ても全然痛まないので、どんどんTシャツがたまっていき、押し入れが溢れるている。「頼むから、Tシャツ要らないから参加料金を下げてくれ」と言いたい。

受付が終わった後、会場には他にも色々なブースやランニング関係の物品販売も行われていて、大賑わいだ。神戸マラソンの時は、東京や大阪に比べるとブースの数も少なく賑わい感も乏しく、ちょっと寂しい感じを受けたけど、今、改めて考えたら、閉店間際の終了ギリギリに行ったからだったのかもしれない。今日は、まだまだお昼過ぎだったので、大変な混雑ぶりだ。記念写真を撮ってくれるブースや身体機能を測定してくれるブースなんか、30分待ちとかがザラで、とても長蛇の列に並ぶ気はしない。それだけじゃなく、販売コーナーのレジ待ちの行列も100人くらいが並んでいて、一気に買う気が失せてしまう。都会の人は行列待ちに辛抱強いなあ。
お昼過ぎだったので、何か軽食でもと思ったけど、あまりの混雑ぶりに諦めて会場を後にした。

周辺で軽く昼食でもと思って探したけど、なんかそれらしき店が無く、ブラブラ歩いていると祇園の方に出てしまった。そうか、平安神宮の少し南に祇園があるのか。イマイチ京都の町の位置関係を把握してないから意外だった。
もうちょっと散策したかったけど、あんまり歩くと疲れが明日に残るので、適当に切り上げて親族の家に行く。


〜 会場へ出発 〜


1週間前の天気予報では、当日は寒気が来て寒くなるっていう予報だった。以前なら「1週間も前の天気予報なんて当たるはずがないからむしろ安心」なーんて高をくくっていたけど、最近の天気予報は考えられないくらい当たるので、不安だった。そして大会が近づいてきても天気予報は変わらず、2〜3日前は異常なまでの暖かさだったのに、当日は一気に冷え込むと言う。
そして、レース当日、朝起きると、やはり寒かった。雨は降ってないけど、一日中曇りのようなので、気温が上がる要素も無い。
出掛ける前に、今日、何を着るかを決めなければならない。「何を着るか」は、どんな季節でも最も重大な課題だ。特に、今日のような寒い日には死活問題となる

(支部長)「せやから、そんなん関係無いって」

もちろん、タイムという観点からは、結果的に見ると、何を着たかでタイムに影響があった記憶は無い。暑いときもあれば寒いときもあるけど、タイムはそれ以外の体調とか練習不足とかの要因で決まる。しかし、厳冬期の京都マラソンでは、寒さはタイムじゃなくて死活問題になる恐れがあるのだ。

(幹事長)「支部長やって、こないだの丸亀マラソンで寒さで震えてたやないの」
(支部長)「あれは体調悪化で寒い中を歩いたからや」
(幹事長)「今日もフルマラソンやから終盤は歩くぞ」
(ピッグ)「やっぱり歩くことが前提ですか」


もちろん、フルマラソンだからと言って常に終盤を歩く訳ではない。でも、最後まで歩かずに走ったレースでも、終盤の走るペースってのは歩くのと変わらない。自分の主観では走っているつもりでも、他人が見たら歩いているのと変わらない。それくらい遅いペースになると、歩いているのと同じように体は寒くなる
て事で、今日は防寒対策を万全にしなければならない。まずは、去年の丸亀マラソンの会場で買った防寒用の長袖ランニングシャツを着る。生地の厚さはそんなに厚いってわけでもないが、背中の首筋の部分が補強されて暖かくなっている。その部分が暖かいと、身体全体が暖かく感じるのだそうだ。その上には龍馬脱藩マラソンでもらったTシャツを着る。このTシャツの選択は、今回はオレンジ色で統一したかったからだ。去年の秋から履いているシューズはオレンジ色で、妙に派手なので、何を着てもシューズだけが浮いて見える。そこで今回は、逆にウェアをシューズに合わせてオレンジ色で統一しようと思ったわけだ。さらに、今日はその上からウィンドブレーカーを着たいところだが、さすがに寒がりの私でも、これまでウィンドブレーカーを着て走ったことはなく、せいぜい長袖シャツと半袖シャツの重ね着で対応してきた。他のメンバーに止められてきたからだ。

(國宗)「当たり前ですがな。いくらなんでも3枚は多すぎですよ」

厳冬期の京都を走るのだから今日は許してもらいたいところだが、取りあえずはイザという時のための防寒用にビニール袋をポケットに入れて走ることにする。
下はオレンジ色のランニングパンツの下にランニングタイツを履いた。最近は、ランニングタイツを履くランナーの方が多いくらい普及しているが、私はランニングタイツのサポート機能を全く信じてないので、普段は履かない。でも今日は防寒用に履く。もちろん、普段は履かない手袋も必需品だが、今日は手袋も2枚履くことにする。

(國宗)「え?手袋を2枚ですか?それも聞いたこと無いですねえ」

普通のピッタリしたランニング用手袋の上に軍手を履くのだ。
着るものが決まったら朝食だ。最近はマラソン大会の日の朝食と言えばおにぎりに決めている。以前はマラソン大会の朝食と言えば、決まって菓子パンをたくさん食べていたが、マラソン大会で走っている最中にお腹を壊してトイレに駆け込むことがよくあり、この原因を深く考えてみたら、菓子パンが原因ではないのかって思えてきた。て事で、最近は菓子パンを止めておにぎりを食べるように変えた。そのおかげだと思うが、それ以降はマラソン大会でお腹を壊していない。これは単なる気のせいではなく、NHKの「ためしてガッテン」で、パンなんかに含まれるフルクタンという糖類は消化に悪く、下痢になりやすいと言っていたので間違いないだろう。
まだ朝早いので、取りあえずおにぎりは2個食べて、もう1個持って行くことにした。おまけとして、スタート直前に食べるバナナとゼリーも持っていく。
朝食が終わったらトイレに行く。普段よりだいぶ時間が早いので、出るかどうか不安だったけど、なんとかひねり出す事に成功した。会場では、小だったらなんとかなるけど、大はすごく混んでいるので不可能に近いが、これで一安心だ。

トイレが終わったら、いよいよ会場へ出発だ。親族の家からスタート会場の西京極総合運動公園までは電車を2回乗り換え、時間にして1時間ちょっとかかる。結構な移動距離だ。フルマラソンのスタートは9時だが、手荷物を預けるのが8時15分までなので、余裕を持って6時過ぎに出発した
電車は順調に進むが、だんだんランナーが増えてきて混雑度がひどくなってきた。臨時電車もいっぱい出ていて、西京極の駅で降りた時には臨時出口なんてのも用意されていた。運動公園の場所はよく分からなかったが、大勢のランナーの後を着いていけば何の問題も無く会場に到着した。


〜 会場到着 〜


会場に着いたのはまだ7時半過ぎで、まだまだ時間がある。スタートは9時で、手荷物預けも8時15分まで大丈夫だ。男子の更衣スペースは2箇所あって、体育館と競技場のスタンドだ。体育館は少し離れていたので、競技場のスタンドに上がったけど、更衣スペースと言ったってただの観客席だった。しかも前夜に少し雨が降ったらしく、濡れている。スタンドが濡れているだけならいいけど、なんと競技場のフィールドは前夜の雨が凍っている。そんなに寒いのか!周辺の山は上の方にうっすらと雪を被っているし。こら寒い。取りあえずトレーニングウェアを脱いで走る格好になってみたが、強烈に寒い
今は天気が良くて晴れていて陽が差しているから、なんとなく寒さも和らいでいるような気がするけど、今日の天気予報は朝のうちは晴れるけど、すぐに曇っていくって言ってる。これで曇ったら厳寒になる。防寒用の長袖ランニングシャツと半袖のTシャツを重ね着してきたが、これだけじゃ絶対に寒すぎる。ビニール袋は持ってきたが、それでも物足りないような気がする。て事で、思い切って防寒用の長袖ランニングシャツと半袖Tシャツの間にフリース生地の長袖シャツを着た

(國宗)「3枚も着たらダメですってあれほど言ったのに!」
(幹事長)「今回だけは許してください!」


これで一気に暖かくなった。もちろんビニール袋もポケットに入れていく
なんとか寒さもしのげるようになったので、残っていた最後のおにぎりを食べる。ゆっくりダラダラしていたら、係の人が「あと5分で手荷物預かりの時間が終わりますから急いでくださいっ」なんて叫び始めたので、仕方なく腰を上げて、バナナと飲料だけ別にして手荷物を預けに行く。集合時間の締切は8時45分なので、まだ30分もある。なーんて思いながらバナナを手にブラブラしていると、なんとなく再びトイレに行きたい気分になってきた。大の方だ。これは少しヤバイ気配だ。こういう時は、スタートして走っている最中に激しくトイレに行きたくなる可能性がある。そして、そういう不安を抱えて気にし始めると、そればっかりが頭に浮かんできて走る事に集中できなくなってしまう不安材料はできるだけ早く除去しておかなければならない
しかし、もちろん、マラソン大会の会場でトイレに行くのは大変だ。今回も例外ではなく、ものすごい長蛇の列が出来ていて気が遠くなる。いくら、まだ時間があると言っても、これは無理じゃないか?しかし、実は最近、空いているトイレを探すのが得意になった。動物的勘と言うか野性的勘と言うか、的確に空いているトイレを探し出せるようになった。たいていの場合、臨時の仮設トイレは分かりやすいから激しく混雑しているが、既設の建物の、しかも奥まった分かりにくい場所にあるトイレは空いている。今回も少し離れた場所まで探しに行ったら、案の定、ガラガラだったので、余裕を持って用を足すことができた。しかも洋式だったので、ゆっくり座ってバナナを食べながら用を足せた。

(ピッグ)「バナナを食べながら用を足すんですか!意味無いじゃないですか!」
(幹事長)「バナナをそのまま出す訳ではないから、意味はあるぞ!」


結構、大量に出た。家を出る前にトイレを済ませてきたと言うのに、あれは無理矢理ひねり出しただけで、まだまだ残っていたようだ。


〜 集合 〜


バナナも食べたし用も足したし、もう不安材料は無いので、集合場所に行く事にした。もう大半のランナーが集合していて、すごい混雑ぶりだ。混雑しているので、あんまり寒くない。気温そのものは、まだまだ低いような気がするけど、風が無く、しかも天気が良くて陽が当たるから暖かい。て言うか、なんとなく暖かすぎるくらいになってきた。走る前から暖かい状態なら、走り始めたら暑くなるのではないか。なんて再び迷い始める。

(國宗)「だから言わんこっちゃないんですよ!」
(幹事長)「すんません」


ただし、スタート間際になって1枚着たり脱いだりするのは慣れている5年前の丸亀マラソンでは脱いだTシャツを近くの木にくくりつけてレース後に回収したし、同じく5年前の瀬戸内海タートルマラソンでもスタート地点でTシャツを1枚脱いでその辺に置いて走って後から回収した。これはスタート地点とゴール地点が同じだから可能だったもので、今日はスタート地点とゴール地点が異なるから、一昨年の徳島マラソン神戸マラソンの時のように、脱いだ長袖シャツは腰に巻いて走る事にする。それに、フルマラソンだと終盤に力尽きてトボトボと足を引きずって歩く事も多いから、そうなると体が冷えるので、その事態に備えて用心して最後まで持っておきたいからだ。

(ピッグ)「相変わらず歩くことを前提にしてますね」
(幹事長)「ほんと寒いのは苦手なんよ」


特に今日は、今は天気が良くて暖かいけど、天気予報通りなら、そのうち曇ってきて寒風が吹き荒れるはずだ。絶対にもう1枚の長袖シャツが活躍する場面が出てくるだろう。走りながら脱いだり着たりするのも、もう慣れた。去年の龍馬脱藩マラソン一昨年の奈良マラソン4年前の大阪マラソンでは、途中で暑くなったので走りながら下に着ていた長袖を脱いだり、寒くなって再び着たりした。慣れてしまえばどうって事はない。他に同じように走りながらウェアを脱いだり着たりしているランナーを見かけた事が無いのが不思議なくらいだ。タイムのロスなんてほとんど無いんだから、我慢せずに脱いだり着たりすれば良いのに。

(支部長)「本当に往生際が悪いなあ。1枚くらい着ても脱いでも同じやってば!」

もちろん、実際には少し寒いくらいの方がタイムは良いことが多い。でも、フルマラソンに限れば、寒くて震えながら足を引きずって歩いた嫌な記憶がいくつか蘇る。タイムより何より、辛い思いはしたくない。トイレと一緒で、悩んでいるよりはサッサと対策を取った方が精神的によろしい。
さらに2枚履いていた手袋も、上に履いた軍手を脱いで、普通のランニング用手袋だけにした。なんだか手が汗ばんできそうだし、それより何より2枚も履いたらきつくて手が動きにくいのだ。

(國宗)「当たり前でしょ!だから言わんこっちゃない」
(幹事長)「すんません」


ただ、長袖シャツを1枚脱いでしまうと、今度は少し寒いかなあ、なんて感じ始める。周囲のランナーを見ると、半数近いランナーがビニール袋を被っているので、同じようにビニール袋を被ろうかとも思った。でも、今後の展開を考えると、たぶんすぐに曇ってきて本格的に寒くなり、今脱いだ長袖を再び着て、それでも寒かったら最後の手段としてビニール袋を被る段取りなので、ビニール袋は取りあえず我慢する。

だんだんスタート時間が近づいてきたので、本日の目標を決めなければならない。もちろん、どんなレースであれ、基本的には大会自己ベストを狙うのが常だ。マラソンはコースや季節によってタイムが大きく変わってくるため、違うレースのタイムを比較するのは不適当なので、どんなレースに出ても、とりあえず大会自己ベストを狙うのが良い子の正しい道だ。
しかし、この京都マラソンは初出場なので、どんなに惨敗しても大会自己ベストのタイムになる

(幹事長)「やっほーっ!」
(ピッグ)「それ、嬉しいですか?」


もちろん嬉しくはないが、そもそも今回は事情が異なる。

昨年12月4日の那覇マラソンの直前に交通事故で肋骨を3本も骨折してしまい12月いっぱいは安静にしていた。ようやく軽くジョギングし始めたのは1月初めの満濃公園リレーマラソンの直前からで、そのため満濃公園リレーマラソンでは想像を絶する遅さで惨敗した。自分では全力疾走しているつもりなのに、トンでもなく遅いのだ。理解を越える空前絶後の遅さだった。1ヵ月の安静期間のうちに筋力が極端に弱っていたのだ。もともと真面目にトレーニングしている人なら、1ヵ月も休めば走力は大幅に落ちるだろうけど、私のように、もとからチンタラ練習しているだけのランナーなら、1ヵ月くらいサボったって大した影響は無いように思えるのだが、レベルが低ければ低いなりに、やはり落ちるようなのだ。
さらに、筋力の低下により足が動かないだけでなく、呼吸も思うようにできなくなった。肋骨の骨折の治療は自然治癒を待つしかないんだけど、くっつきかけた肋骨が再び広がってちぎれないように、胸にバストバンドを巻いて胸が広がらないようにしていたせいで、バストバンドをはずしても胸が広がらなくなってしまった。胸の筋肉が小さくこわばって深呼吸ができなくなったのだ
こういう状態だったので、せっかく当選した京都マラソンだけど、フルマラソンなんか完走できるだろうかっていう不安感が爆発していた。
ところが、このような不安感満載で出場した2週間前の丸亀マラソンでは、ハーフマラソンとは言え、最後まで余裕を持って完走することができた。最初から最後まで遅いタイム設定のペースランナーにピッタリと着いていったのが功を奏したのだ。最初から徹底して抑えたペースだったため、最後まで足がヘタることなく何の問題も無くあっさりと余裕を持って完走できたので、本当に気持ち良かった。ハーフマラソンなので、これがそのままフルマラソンの完走に結びつくかどうかは不安は残るが、爆弾のような不安感は無くなった。
そうは言っても、丸亀マラソンの余裕を持った完走も、あくまでもペースが遅かったから達成できたものだ。「完走できて嬉しい」なんて初心者ランナーのような感想を述べたが、タイムはトンでもなく遅かったのだ。なので今日も、取りあえずは完走することが目標であり、同じように最初から抑えたペースで走ろうと思う。

それに、東京マラソンや大阪マラソンと同じように、せっかく滅多に走れない大都市のど真ん中を走れるのだ。しかも古都京都の観光地を巡るコースなので、まずは楽しみながら走りたいと思う。なにも、こんな大会でしゃかりきになって良いタイムを出そうとしたって仕方ない。周りの風景を楽しみながら、のんびり走る観光物見遊山マラソンにしたい。
それに、アップダウンがあるコースなので、前半を抑えて走らなければ終盤に潰れてしまうという恐怖もある。良いタイムを狙うような余裕は無く、最後まで歩かずに完走できれば万々歳だ

(ピッグ)「そうですよね。ちょっとでも歩いたらタイムは一気に悪くなるけど、歩かなかったらそんなに悪いタイムにはなりませんからね」
(幹事長)「そうだよな。って言いたいところだが、最近、それも怪しくなって」


以前なら、どんなに遅いペースでも全然歩かずに最後まで完全に完走できたら、そんなに悪いタイムにはならなかった。いくら遅いと言ったって、走るのと歩くのではペースが違うからだ。逆に、一度でも歩いてしまうと心が切れてしまって、「ちょっとだけ」は通用しなくなり、絶対に繰り返し歩いてしまう。歯止めが無くなるのだ。て事で、最後まで歩かなかったレースは、惨敗は免れていた。
ところが去年の徳島マラソンでは、最後まで一歩も歩かなかったにもかかわらず、5時間ギリギリなどと言う恥ずかしくて表も歩けないようなタイムで惨敗してしまった。暑くもなく寒くもなく、例年のような風も無く、体もどこも痛くなく疲れも無く、絶好のコンディションだったし、終盤に撃沈しないように前半は徹底的にペースを抑えて一定のペースで走ったにもかかわらず、途中で歩きまくった時より酷いタイムだった。なので、今回も、最後まで完走できたとしてもタイムが良いとは限らないのだ

ただ、最後まで歩かずに完走できたレースは、裏を返せば足が痛くならなかったレースだ。足が痛くならなかったからこそ最後まで歩かずに完走できたのだ。終盤は足が重くなるが、どんなに足が重くなっても、痛くなければ走り続ける事ができる。ペースは極端に落ちて歩くようなスピードになったとしても、痛くさえ無ければ、足を引きずりながらゆっくり走り続けることができる。しんどくなったから歩く、なんて事は無い。しんどければペースが落ちるだけだ。疲れとか、足が棒の様になる、っていう状態なら、精神力で乗り切れるものだ。しかし、足が痛くなると我慢できない。辛くて辛くて歩かざるを得なくなる。立ち止まって屈伸したりして、なんとか痛みを取るしかないのだ。こうなると、タイムが多少良かったとしても足が痛くなるよりは、タイムは徹底的に悪くても足が痛くならない方がマシだ。なので、タイムはさておき、最後まで足が痛くならずに完走できる事を目指したい

スタート地点の集合場所は申告した予想タイム順になっているが、これは速いランナーと遅いランナーが一緒くたにごちゃ混ぜになっているとスタート時の混雑がひどくなり、混乱するからだ。こういう場合、申告する予想タイムは正直な方がいい。実力より前からスタートすると、周りのみんなから置いてきぼりになって精神的に落ち込むか、あるいは周りの速いランナーにつられて無理して飛ばしてしまって潰れる可能性が高い。逆に、後ろの方からスタートすると、おしゃべりしながら固まって走る遅いおばちゃん連中にブロックされて前へ行けない。参加者の少ないマラソン大会なら問題ないけど、1万6千人も参加する巨大マラソン大会では、最後まで遅いランナーに邪魔されてイライラすることになる。なので、自分の実力通りの場所からスタートするのが一番良い。
で、私の集合場所は、と言うとEブロックだ。S,A,B,C,Dブロックに続くブロックで、後ろにはFとGブロックしか無い。だいぶ後ろの方だ。どういうタイムで申告したのか忘れたけど、ちょっと後ろ過ぎるような気もする。そう言えば、プログラムに載っていた各自の予想タイムの分布では3時間台の人が30%もいた。サブフォーランナーは一般的には1割程度と言われているので、随分、みんな強気やなあって思っていたけど、そんなにレベルが高い大会なんだろうか?最近の実績から言えば、少なくともハーフマラソンなら上から1/4〜1/3辺りの順位が多い。

(支部長)「え?私ら、そんなに速くなった?」
(幹事長)「私らは速くなってないけど、マラソンブームのせいで遅いランナーが大挙して参加するようになったから相対的に上位になっただけや」


でも、ま、フルマラソンは惨敗続きなので、これくらい後ろの方が順当かも知れない。
競技場の出口付近にスタートのゲートがあり、その後ろにSブロックのランナーが並び、それに続いてAブロックからEブロックのランナーが並ぶ。一応、我々Eブロックまでは陸上トラックの上にいる。私らより後ろのFブロックのランナーはトラックからはみ出し、真ん中のフィールドの上に並んでいる。さらにGブロックのランナーになると、陸上競技場の中にすら入れず、競技場を取り囲むように外に待機している。


〜 スタート 〜


開会式が始まり、開会式が終わり、まったりした時間を過ごしたら、いよいよスタートとなった。まずはSブロックのエリート選手がスタートし、それに続いてAブロックのランナーから走り始める。当然ながらしばらくは我々は動かない。少しずつ集団が前方へ移動し始め、ダラダラとスタートゲートに近づいていくが、小走りすらできない。タイムはチップでネット計測してくれるから、焦る必要は無いんだけど、動いたり止まったりの繰り返しで少しイライラする。いつになったら走れるようになるんだろうって思ってたけど、さすがにスタートゲートをくぐった辺りから小走りができるようになった。スタートゲートを越えるまで7分くらい経過していた

スタートゲートを越えて競技場の外へ出たら、ゆっくりではあるものの、大きな混乱もなく走り始めた。コースは、西京極競技場を出て五条通をいったん東へ向いて走り、葛野大路通に出たら北へ向かって左折する。葛野大路通をしばらく進むと1km地点の表示がある。時計を見ると、トンでもなく遅い。1km7分近くかかっている。驚きの遅さだ。でも、まだまだ混雑がひどく、思うようには走れないので仕方ない。フラストレーションは感じるが、ウォーミングアップ代わりと割り切らなければならない。ペースが遅いせいか、走り始めてもまだ暖かくはならず、少し肌寒い。

しばらく進むと四条通に出るので、そこを西に向かって左折する。だんだん混雑は緩和されて走りやすくなってきたため、2km地点のラップはだいぶマシになり、さらに3km地点のラップはジャスト6分ほどとなった。良い感じだ。と言いたいところだが、なんとなく足が重い。まだまだ無理はしてないが、自然体で走っていると1km6分のペースがなんとなく限界だ。丸亀マラソンで1km5分半くらいのペースランナーに着いて走り始め、あまりのペースの遅さに足がもつれそうになったのに比べたら、今日は体が重く感じられる
なんとなく去年の徳島マラソンの惨敗が思い出される。あの時は、終盤に撃沈するのを避けるために前半から徹底してペースを抑えて走ったら、そのまま低調なペースで進んでしまい、終盤は前半の抑えたペースからさらに大幅にペースダウンして、一歩も歩かなかったにもかかわらず信じられないような惨敗を喫してしまった。最初から遅く走ったら、身体はそれに順応して、その遅いペースが基準になってしまい、そこからどんどんペースダウンしてしまい、全体としてトンでもないタイムになってしまったのだ。なので、いくら終盤の撃沈を避けるためとは言っても、序盤からあんまりペースを抑えすぎるのは良くないっていう教訓を得た。なので、完走だけが目標の今日のレースではあるが、いくら序盤から抑えて走ると言っても、あんまり抑えすぎるのは良くないと思っていた。ところが、今の体感では、1km6分のペースは決して抑えすぎではなく、むしろ限界と感じるのだ。なんだか不吉な前兆だ。

4km地点を過ぎると桂川の堤防に出たので、少し気分がリフレッシュされる。堤防に出てすぐ、第1給水所があるが、まだまだ喉は渇いてないのでパスする。4km地点や5km地点でのラップは6分ちょっとで安定している。今日は風がほとんど無いとは言え、堤防の道は障害物が無いので、少し風が当たるようになり、ますます肌寒い。そんなにペースが上がらないせいもあって、身体も温まらない。もう少ししたら長袖シャツを着込もうかと思い始める。
この辺りから桂川にかかる渡月橋が見えてくる。嵐山観光の中心スポットで、一昨年の秋には紅葉を見に来たところだ。今日のコースの中でも、最も楽しみにしていた場所の1つで、やはり見事な景観だ。

6km地点を過ぎて渡月橋のすぐ手前で北に向かって右折すると、鉄道の線路を越える嵐山高架道路を渡る。そんなに長い距離でもないし、そんなに激しい坂でもないし、まだまだ序盤で元気は有り余っているはずなんだけど、なんだか今日は坂が厳しく感じられる。やっぱり調子はイマイチなのか。それでも、高架橋を渡った後の7km地点のラップは、まだまだそんなに悪くはなってなかった。上り坂で頑張るせいか、少し体が温まってきて、肌寒さは緩和された。
そのまましばらく北へ進み、一条通で東に向かって右折する。一条通は街中の直線道路の四条通や五条通と違って、山際を通る道だった。道の右側(南側)は市街地だが、左側(北側)は山地になっていて、少しアップダウンがある。それでも8km地点9km地点でのラップは、そこそこで踏みとどまっていた。8km地点の手前には第2給水所があったが、まだまだパスする。それより、なんとなくオシッコに行きたいような気がしてきた。もちろん、まだまだ我慢できるし、このまま我慢できるかもしれないけど、我慢できなくなるかもしれない。なので、トイレがあれば、列の状況を確認する。トイレは少なくとも1kmおきには設置されているが、どこも10人くらいは並んでいる。もう少し走ってみて空いていれば用を足そうかと思い始める。9km地点の左側には広沢池があった。どんな池なのか少し楽しみにしていたが、今の季節はただの寂しい池だった。

道はその後、さらに上り坂の傾斜がきつくなり、10km地点でのラップは遂に1km7分にまで落ちてしまった。ただ、このコースは、いくらアップダウンがあると言っても、そんなに長い間上り坂が続くことはなく、もうそろそろ終わるだろうと思い、無理せずに淡々と上っていく。まだ前半なので元気は残っているが、今日は無理してガンガン上っていくのは控えておこう。まだ天気は良くて日差しが当たるため、寒くならないどころか、上り坂では少し暖かくなってきた。まだ長袖シャツは必要ないか。10km地点を過ぎると第3給水所があり、さすがにほんの少しだけ喉が渇いたような気もするので、ここらで少しだけ水を補給する。トイレに行きたいのに水を飲むのは矛盾しているが、膀胱に溜まった水分が再び活用される訳ではないから仕方ない。
11km地点の辺りには仁和寺があり、ここでは例年、お坊さん達が門の前で応援してくれるっていう評判だったので楽しみにしていたら、やはり今年も大勢のお坊さん達が声を張り上げて応援してくれていた。京都らしくて楽しい応援だ。12km地点を過ぎると第4給水所があるが、さっき補給したばかりなのでパスする。

道は山沿いに曲がりくねって、まだ一条通が続いていたのかどうかも分からないが、馬代通を南へ右折し、13km地点ですぐまた上立売通を東へ左折し、さらにすぐまた平野神社にぶつかって西大路通を北へ左折する。なんでこんなにチョコチョコと曲がらされるのか分からないが、特に走りにくいって事はない。延々と単調な道が続くより、むしろ変化があった方が走りやすいかも知れない。道は緩やかなアップダウンが続き、それに応じてペースも上下しているが、10km地点のラップほど極端に悪くなることもなく、平均したら1km6分半くらいのペースが続く。上り坂で無理しないだけでなく、本当は下り坂でもバカみたいに飛ばすのは控えた方が良いらしいんだけど、今日のコースは下り坂と言っても、そんなに斜度がきつい訳でもないし、距離が長い訳でもないし、疲れて固まり始めた足の筋肉をほぐすために下り坂では思いっきりガンガン飛ばすことにした。なので下り坂の区間のペースはかなり上がっている。

西大路通には14km地点の辺りにわら天神なんてのはあったが、確かこの辺りに金閣寺もあるはずなんだけど、それは全く分からなかった。支部長が「有名な寺社仏閣の前の道は走るけど、寺社仏閣は道から奥まった所にあるから、寺社仏閣が見られる訳ではないで」って言ってたけど、その通りだ。寺社仏閣そのものが見られなかったら、いくら世界遺産を巡るマラソンって言っても、ただの田舎の道で、つまんない。
14km地点を過ぎると、今度は北大路通を東へ右折し、15km地点を過ぎると今宮門前通を北へ向かって左折する。そこに第5給水所があり2回に1回くらいは水分補給しようと思い、今度は給水する。その直後に今宮通との三叉路を東に右折し、すぐに船岡東通を北へ入っていくと16km地点がある。そのまましばらく走って17km地点の辺りにある御薗橋通との交差点を東へ右折すると、すぐに加茂川沿いに出て、久しぶりに視界が広がる。川沿いの道は障害物が無いため、再び風を感じるようになる。さらに、少しずつ雲が出てきて、時折日差しが隠れるようになってきた。こうなると、とたんに寒くなる。もう、このまま曇ってしまうのだろうか。それなら早めに長袖シャツを着込もう。なんて思いながら走っていると、再び日が差してくる。雲は流れてくるが、そんなに大きな雲ではないため、またすぐ晴れるのだ。
賀茂川の西側の堤防は加茂街道となっており、これをしばらく北へ走る。折り返してきたランナーが対岸を走っているのが見えるが、ものすごい数のランナーだ。

これだけ大勢のランナーが走っている割には、仮装しているランナーはほとんどいない。大会のきまりで「安全に走行するために仮装は禁止」となっているからだ。仮装って、そんなに危険だろうか?もちろん、危険なものも無いことはない。私らが初めて動物チームで出場した19年前の明石海峡大橋開通記念駅伝大会なんか、10チームに1チームくらいは仮装チームがいて、スーツ姿で頭に大きなウンコを乗せたチームとか、バレリーナの格好をしたチーム(全員男)とか、看護婦さんチーム(これも男)とか、明石の大蛸とか、マーブルチョコの箱だとか、電車とか、お侍さんチームや土人チームや点滴打ちながらの病人チームや、もう阿鼻叫喚の世紀末的世界だった。このうち点滴やマーブルチョコや電車や侍や土人は危険かも知れない。でもバレリーナとか看護婦さんなら危険性は無いと思う。ま、いちいち判断するのも難しいから一律に禁止しているのだろう。かろうじて頭に小さなウンコを乗せたランナーは見かけたが、それくらいだった。

少し走ると、18km地点の手前に第6給水所がある。この給水所から以降は水やスポーツドリンクのほかに給食もある。とは言え、最初の給食は飴とバナナだけだ。文句を言ってはいけないけど、イマイチ。でもエネルギー補給のために飴ちゃんだけいただく。この飴が意外に濃厚で、少し元気が回復したような気になる。
参加者が多い人気の大会なので、マラソン写真撮影販売のオールスポーツのカメラマンもやたら多く、あちこちで写真を撮ってくれている。もちろん、気付いた時には必ず愛想を振りまいて写真を撮ってもらう。

西賀茂橋を渡って反対側に行って折り返し、今度は東側の堤防を南へ走る。地形的に考えると、このコースの中でここが川の最上流だから、この辺りの標高が一番高いはずだ。てことは、ここからは下り基調になるはずここまでは上り基調だったから、1kmごとのラップは少しずつ悪くなってきており18km地点でのラップは7分近くかかっていたが、ここからは回復していくことを期待したい。
途中、19km地点を過ぎて御薗橋まで来ると、橋を渡って再び西側の堤防を南へ向いて走る。相変わらずトイレに行きたい状態は続いてて、まだまだ我慢はできるが、この先20km以上も残っているので、このまま最後まで我慢できるとも思えない。早めに気分をスッキリさせたいので、この辺りでトイレに行くことに決めた。相変わらず10人くらいは並んでいたが、並ぶ時間も入れて3分程度のタイムロスで用を足すことができた。

その後、20km地点を過ぎて北山通に出るが、期待した通り、この2kmはペースが少し改善され、1km6分半程度になった。相変わらず雲は次々と流れてきて、晴れたり曇ったりの繰り返しだ。曇ると、とたんに寒くなるが、すぐまた晴れると暖かくなる。そんな繰り返しなので、長袖シャツを着込むタイミングが無い。
北山大橋を東へ向かって左折して北山通を走ると、直後に第7給水所がある。ここにはミカンや酢コンブやはちみつレモンパンてのがある。いくら何でもマラソンしながら酢コンブはないだろうと思ってはちみつレモンパンを頂いたが、当然ながら口の中がパサパサして慌てて水も補給する。
しばらく走ると21km地点があり、その直後に中間地点がある。ペースは微かに遅くなっているような気もするが、かろうじて1km6分半くらいで踏みとどまっている。レース序盤に感じた不調感からすれば、半分まで来て、なんとか1km6分半のペースを維持できているのは嬉しい限りだ。ただ、不調感が無くなった訳ではなく、この先どこまで行けるのかは不安だ。

ノートルダム女子大の辺りに22km地点があり、この辺りで左を見ると、北側の山の中腹に送り火の五山のうちの「妙」の字が見える。こんなんだったのか。結構、すぐ近くに見える。
この辺りからコースは少し上り始める。前半の山際の道にあったような大きな傾斜ではないんだけど、疲れ始めた足には着実に負担になってきて、ペースが落ちているのが自分でも分かる。そして、北山通りをしばらく走って23km地点で時計を見てびっくり。一気にタイムが悪くなってて、なんと1km7分をオーバーしている。いくら上り坂と言っても、とっても緩い坂だ。普段なら、ここまでペースダウンするようなものではないはず。でも、疲れ始めた足には確実に堪えているようだ。
こうなると精神的にもきつくなる。まだ半分ちょっとしか走ってないのに、こんなに疲れを感じるなんて、先行きが思いやられる。元気な時なら、少なくとも25km地点か30km地点くらいまでは元気にペースを維持して走り、ペースダウンするのはその先だ。こんなに早々に疲労を感じているようでは、もしかして今日は完走できないかもしれない。そう思い始めると、すごく弱気になってしまい、ますます足取りは重くなる。完全に負のスパイラルだ。

23km地点の辺りで左を見ると、北側の山の中腹に今度は送り火の五山のうちの「法」の字が見えた。その直後に第8給水所がる。ここにはミニトマトやチョコパンがあった。ミニトマトを食べたらお腹を壊す恐れがあるので、チョコパンを頂いたら、当然ながらまた口の中がパサパサして慌てて水も補給する。
その直後の高野川の手前で、ようやく上り坂区間が終わって折り返す。折り返せば、坂は逆に下り坂になるので、ホッと一息だ。なんとかペースを立て直せるかも。折り返すと、後ろからくるランナーの大群衆が見える。ものすごい数だ。全体の半分より少し後ろの方からスタートしているから、前を走っているランナーの方が多いとは思うが、それでも後ろにもこんなにいたのかと驚く程のランナーの数だ。前方にも後方にも見渡す限り道路を埋め尽くすようにランナーがいて、まさに壮観だ。
ここで松葉杖をついたランナーを追い越す。松葉杖と言うか、肘から先で支えるロフストランドクラッチていうタイプのものを両手に着けて走っている。足を怪我してるのかと思って足下を見ると、なんと両足とも義足だった。パラリンピックの短距離なんかで使っているようなバネのではなく、単に細い杖の先のようなものが着いた義足で、あれでフルマラソンを走るなんて、もう驚愕だ。ちゃんと普通の足がついているのにヒィヒィ言いながらヨタヨタ走っている自分が情けなくなる。
気合いを入れ直して今度は西に向かって走り始めたところで、声を掛けてくるランナーがいる。なんと亀ちゃんだ。

(幹事長)「うわ、どしたん!?」
(亀ちゃん)「さっき見かけたから、待ってたんや」


私の少し前を走っていた亀ちゃんは、さっき折り返したあと、後続ランナーの中から私を見かけたので、私が追いつくのを待っていてくれたのだ。そう言えば、彼が年賀状に「久しぶりに京都マラソンに出る」って書いていたので、私もメールで「私も初出場するよ」って返していたんだった。すっかり忘れていた。

(幹事長)「それにしても、よく見つけられたなあ」
(亀ちゃん)「いやあ、偶然やなあ。探してた訳でもなんでもないのに、ふと目にとまったんよ」


あんな大群衆の中から見つけてくれるなんて、やはり今日はウェアを派手なオレンジ色で統一したから目立ったのだろう。こんな効果があるとは思わなかったが、良かった良かった。

(幹事長)「わしは初出場やけど、前にも出たことあったっけ?」
(亀ちゃん)「第1回の時に当選して出たんや。今日は、それ以来やな」


亀ちゃんはストイックな実力者で、渋い奴だ。ストイックではあるが、金と時間が有り余っているので、ニューヨークマラソンなど、世界中のマラソン大会を荒らしまくっている。一番すごいのはユングフラウマラソンだ。標高500m程度のインターラーケンから標高2100mまでユングフラウやアイガーを眺めながら登るマラソンだ。

(亀ちゃん)「あれはマラソン大会と言うより登山やったな」

あまりに美しい景色なので、世界中のランナーの憧れのマラソン大会だが、厳しさも半端ではないから誰でも完走できるっていうコースではない。私と同様、亀ちゃんもマラソンだけでなく登山もやるから完走できたのだ。

(幹事長)「去年はどこか行った?」
(亀ちゃん)「去年は
ボストンマラソンに出たで」

世界中の主な大会を制覇してしまった亀ちゃんだった。
それにしても、実力者の亀ちゃんにしては、こんなところで私に出会うようでは遅いような気がする。

(幹事長)「ちょっと遅いんちゃうん?」
(亀ちゃん)「いや、最近はこんなもんやな。あんまりガツガツ走る気力も無くなってきたし」


数年前、私がタイムが伸び悩んでいたとき「もう歳のせいかなあ」なんて相談したら、「お前のレベルでは歳のせいじゃなくて、単なる練習不足や」なんて嬉しいアドバイスを頂いた亀ちゃんだが、遂に彼も枯れ始めたのか。
それでも彼と出会えて一気に精神力が復活した。さっきまで「もうしんどいなあ。まだ半分ちょっとしか来てないのに、こんなにしんどいなんて、今日はやっぱり不調なんだ。少しあるこうかなあ。もうリタイアしてもいいかなあ」なんて弱気の虫が頭を出し始めていたんだけど、一気に楽しくなり、やる気が漲ってきた2週間前の丸亀マラソンの時も、何も考えずに、ただひたすらペースランナーに着いていったら、とても気楽に走る事ができた。孤独に走っていると、調子が良いときはガンガンいけて楽しいが、調子が悪いときは、すぐ弱気の虫が出てきて心が折れてしまうが、ちょうど良いペースの人に着いていくと、とても気が楽になって気持ち良く走れる。今日の亀ちゃんは少し遅めのペースなので、私にはちょうどいい。ただ、彼にはちょっと遅いかもしれない。無理して付き合わせるのも心苦しい。

(幹事長)「無理してペースを合わせてくれんでもええで。ちょっと遅すぎるやろ?」
(亀ちゃん)「いや、ここで多少、頑張ったところで、タイムとしては何の意味も無いし。5時間は切れるやろ」


確かに、このまま行けば楽勝で5時間は切れるけど、相当頑張らなければ4時間半は無理だ。そこまでの力は今日の亀ちゃんにも残っていないようなので、完走できればいいやっていうくらいのモチベーションしか残っていないのだ。て事で、彼の好意に甘えて一緒に走ってもらう。彼とは本当に久しぶりなので、話すことが積もり積もっていっぱいあるから、ずっとベチャベチャおしゃべりしながら走る。ただでさえ彼に着いていったら気楽に走れる上に、おしゃべりしてると走るつらさなんか雲散霧消してホイホイ走れてしまう。

北山通をしばらく走って24km地点を過ぎ、賀茂川まで戻る途中で、下鴨本通を南へ左折すると25km地点がある。本当に無意味なまでにチョコチョコと曲がりくねるコースだ。しばらく南へ走って北大路通まで行って、再び折り返して北に戻る。26km地点を過ぎて北山通へ戻って西へ左折すると、直後に第9給水所がある。ここに本日、一番と言うか、唯一楽しみにしていた給食がある。京都名物の生八つ橋だ。しかも普通の味のと抹茶味の2種類があったので、迷わず2つとも頂く。これはパサパサしてないので水の補給も不要だ。

(幹事長)「これで今日の一番の楽しみをゲットしたから、取りあえずもう満足やな」
(亀ちゃん)「そなな事で満足して、どうする!」


それにしても、名物が色々ありそうな京都のマラソンなのに、給食はあんまり充実してなくて物足りない。他のマラソン大会なら、もっと色んな食べ物がいっぱい提供されるのに、今日は生八つ橋以外は見るべき物がない。誠に残念だ。
生八つ橋に群がっていたのが悪かったのか、その直後の27km地点で確認したら、トンでもなくペースが悪化していた。さきほど、23km地点では一気にペースダウンしていたが、その直後に折り返してからは上り坂が終わったうえ、亀ちゃんに引っ張ってもらって走ったので少しペースが持ち直し、その後の26km地点までの3kmは、かろうじて1km7分は切っていた。ところが、この1kmは一気に8分近くかかっている。

(幹事長)「ぎょぎょっ、この1kmは8分近くかかったで!」
(亀ちゃん)「え?ほんまか?そんな事あり得るか?」


いくら生八つ橋に目を奪われていたとはいえ、一気に8分近くまでペースを落とすほど手間取ってはいないはずなんだけどなあ。とにかく、ちょっと気合いを入れ直さなければならない。
この後、京都府立植物園の公園内に入る。道路からはずれて公園の中を走るマラソン大会も珍しいと思う。国際陸連の公認コースと言ってるけど、公園の中の曲がりくねった道で正確な距離が測れるとは思えない。でも楽しいコースで、疲れた心がリフレッシュされて、とてもよろしい。公園の中に28km地点があり、この1kmはなんとか7分ジャストにまで持ち直した。

(幹事長)「1km7分かあ。持ち直したとは言え、パッとせんなあ」
(亀ちゃん)「ええのよ。残り14kmを1km7分ペースで行けば楽勝で5時間を切れるがな」


ま、そりゃそうだ。5時間さえ切れれば、それ以上、多少頑張って速かったとしても、あんまり意味は無い。
28km地点にはペア駅伝のリレーゾーンがあった。このペア駅伝ってのは、一体なんなのか疑問だったけど、どうやら2人1組でリレーするみたいだ。中間地点でリレーするのかと思ったら、28km地点でリレーだから、後半の人の方が半分の距離で済むし、ゴールでもできるから、絶対に後半を走りたいぞ。

公園を抜けて再び北山通へ出て、北山大橋を今度は西に向かって渡り、賀茂川の西側の堤防の加茂街道を南へ左折する。さっきまで晴れたり曇ったりだったのが、ここへきて雲が無くなり、素晴らしく晴れてきた。天気予報はうまいこと外れてくれて、とても良いコンディションとなり、終盤でペースが落ちてきても、もう寒くなることはないだろう。
加茂街道をしばらく走り、29km地点を過ぎると、北大路通との交差点辺りで河川敷に降りる。ここから3kmほどは舗装されていない土の河川敷の道を走るのだ。

(幹事長)「ほんとに舗装してないん?」
(亀ちゃん)「うん。昨晩の雨でぬかるんでるかもしれんなあ」


でも少し湿っているくらいで、ぬかるんではいなくて、そんなに走りにくくはなかった。河川敷に入った直後に第10給水所があるが、お腹は少しいっぱいになってきたのでパスする。河川敷の道は舗装してないだけでなく、道幅が狭く、なんだか混雑してきた。さっきまでは遅いランナーがいてもスムースに追い越せたが、なかなか抜きにくくなってくる。かなり疲労が溜まってきてて、そんなに無理して追い抜く必要も無いような気もするが、自分のペースで走れないと、かえって疲れてくる。それに亀ちゃんと一緒に他のランナーを追い抜いていくのは楽しいので、隙さえあれば追い抜いていく。
しばらく走ると30km地点があり、さらに31km地点32km地点があり、混雑のせいで多少はペースが落ちているが、1km7分ちょっとで安定している。

亀ちゃん(左)に元気づけられて賀茂川の河川敷を快調に走る幹事長(右)


32km地点を過ぎると第11給水所がある。ここもパスしようと思ったら、亀ちゃんが水分を補給すると言うので、一緒に補給した。その後、丸太町通でようやく河川敷から道路へ上がる。丸太町通りを西へ右折し、しばらく走っていると、右側(北側)に広大な公園のようなものがある。何かと思ったら京都御所だった。京都御所って宮内庁関係者しか入れないのかと思ったら、誰でも入れる公園のようだった。広すぎて中に何があるのか分からない。丸太町通りを西へ向いて走っている途中に33km地点があり、しばらく走って烏丸通まで進んで折り返し、今度は東へ向いて走っている途中に34km地点がある。河原町通まで戻ってきたら、今度は河原町通を南へ右折すると、しばらくして35km地点がある。相変わらずチョコチョコと曲がりくねるコースだが、ペースは1km7分ちょっとで安定したままだ。残りはもう7kmしか無いから、どんどんペースダウンしても大丈夫だ。
河原町通を南下して御池通で西へ右折したかと思ったら、すぐに京都市役所の中へ入っていった。何度も言うけど、国際陸連の公認コースと言ってるけど、無理矢理に京都市役所の中を走らされるコースで正確に距離は測れるのかなあ。京都市役所の中は第12給水所になっていて、雪の宿と言う名前のおせんべいらしきものがあった。もちろん、口の中がパサパサの極地になりそうなおせんべいだったので迷わずパスする。この給食の選択は、一体だれが考えたんだろう。単にスポンサーが提供してくれる物を出しているだけなのかなあ。誰が走りながらあんな物を食べるんだろう。

京都市役所を出て河原町通に戻って北へ左折すると、なんだか上り坂になったような気がする

(幹事長)「これ上ってない?」
(亀ちゃん)「え?そうか?よく分からんなあ。上り坂に敏感やなあ」


基本的に京都の町は鴨川が流れているんだから、北から南に向かって緩やかに下っているはずだ。だから、今、河原町通を北上しているって事は傾斜を上っているはずだ。もちろん、とても微かな傾斜で、元気な時には分からないだろうけど、今のように疲れ果てた足は敏感に傾斜を感じ取ることができるのだ。しばらく走ると36km地点があり、時計を見たら案の定、ペースは一気に7分半くらいに落ちている。

(幹事長)「やっぱり一気にペースが落ちたなあ。まずいなあ」
(亀ちゃん)「このまま行ったって5時間は切れるから大丈夫やって」


36km地点を過ぎて丸太町通まで戻ったら東へ右折し、今度は賀茂川を渡って加茂川の東側の堤防を北へ左折する。この道は川端通と言うらしい。川端通は、さきほど以上にますます上りの傾斜が厳しくなったような気がする

(幹事長)「ものすごく上ってない?」
(亀ちゃん)「え?そうか?全然分からんけどなあ」


この傾斜が分からないって事は、亀ちゃんはまだまだ元気があるって事だ。しばらく進むと37km地点があり、ここでタイムを見たら、やはりさらに着実にペースダウンしている。ちょっとまずい。ちょっと前まで二人で他のランナーをホイホイ抜いていたのに、ここへきて他のランナーに抜かれるようになってきたなあ。って思い始めた時に、後ろから突然、5時間のペースランナーが現れて一気に我々を抜いていく。

(亀ちゃん)「あれ?なんで5時間のペースランナーに抜かれるんや?まだ5時間以内のゴールは大丈夫なはずやろ?」
(幹事長)「彼らはグロスタイムの5時間でゴールするから、わしらより早いんや。ネットタイムなら、まだまだ5時間は楽勝やで」


と言ってから気が付いた。私はEブロックで、グロスタイムとネットタイムの差で7分くらい貯金があるから、まだまだ大丈夫だ。でも亀ちゃんは前の方のBブロックのスタートだから貯金はずっと少ないはずだ。2人が一緒にゴールしたら、ネットタイムでは亀ちゃんは私よりだいぶタイムが悪いという気の毒な結果になるのだ。そんなに貯金が無い亀ちゃんにしたら、5時間のペースランナーに置いて行かれる状態は不安なはずだ。なので、5時間のペースランナーに着いていこうとしたが、もう私には余力は残っておらず、着いていくのは不可能な感じだ。こうなったら仕方ない。

(幹事長)「もう俺の事は気にするな。お前だけでも先へ急げ。そして俺の分まで頑張ってくれ」
(亀ちゃん)「そうか。やむを得ない。お前の分まで頑張るから、お前も最後まで諦めるなよ!」


なんと美しい男の友情!

(ピッグ)「そんな大袈裟なもんではないでしょ!」

て事で、15kmもの間、付き合って走ってくれた亀ちゃんを先に行かせて再び孤独な戦いとなる。こうなると一気に精神的に崩壊する。彼と一緒に走っていたら、足の疲れの事なんて意識せず、ベチャベチャおしゃべりしながら気楽に走ってこられたけど、一人になると足の疲れを一気に感じ始めた。さっきまであんまり感じなかったのに急に疲れを感じ始めたって事は、やはり精神的なものだ。もうボロボロのメタメタだ。
そうは言っても、もう残り5kmだ。レース前には「前半から抑えて走り、最後の5kmで余裕が残っていたらロングスパートをかけよう」なんて思っていたくらいだから、ここでくじける訳にはいかない。残り5kmなら、もう後はペース配分なんか考えなくてもいいから、全力を出し切ってラストスパートしたいところだ。もちろん、スパートできるような力が残っている訳では全くないが、ここでレースを放棄する訳にはいかない。せめて5時間以内ではゴールしたい。疲れて回らなくなった頭で、残りの距離と時間を計算する。あと5kmだから、もっとペースが落ちても走り続ける限り5時間以内ではゴールできる計算になる

川端通をヨタヨタと走りながら東一条通まで来たら東に右折する。直後に第13給水所があり、食べ物には目もくれず水分だけ補給する。さらに少し行くと東大路通にぶつかり、そこを北へ左折すると38km地点がある。この1kmは遂に8分を超えてしまった。ここまで微かな上り坂でペースダウンしてきたとは言え、いくらなんでも1km8分を超えてしまうなんて、やはり亀ちゃんと別れたせいだろう。しかし、それでも、このペースで踏ん張れば5時間以内でゴールできる。それだけが心の支えだ。
東大路通から今出川通に出る角に京都大学があり、ここを東へ右折する。この今出川通が最後の上り坂となっており、疲れた足には非常に厳しい区間となる。もちろん、標高差を見ればせいぜい30mも無いくらいで、それを1kmくらいで上るだけだから、山岳マラソンの汗見川マラソンや龍馬脱藩マラソンは言うに及ばず、瀬戸内海タートルマラソンとか小豆島オリーブマラソンとか庵治マラソンに比べても全然大した坂ではない。しかし、フルマラソン終盤で疲労困憊して歩くように足を引きずっている今となっては、この小さな坂が重くのしかかる。ただ、とは言っても、歩くほどではない。はたから見たら歩いているのと同じようなペースだろうけど、歩きたいとは思わない。足はしびれて重くなってきているが、決して痛くはない。痛くなければ歩く必要は無い。せっかくだから最後まで一歩も歩かずに完走したい。もうタイムは全然期待できないが、せめて一歩も歩かない完走だけは達成したい。

次の39km地点で時計を見たら、なんとこの1kmは遂に9分近くかかっていた。止まるところを知らないペースダウンぶりだ。足は重くてしびれたようになり、前に出なくなっている。さすがに5時間以内のゴールに危険信号が灯り始めた。ただ、今出川通を39km地点を過ぎて白川通まで走ると、ここで折り返しになる。つまり、厳しい上り坂区間が終わり、今度は下り坂区間になる。良かった。これで何とか逃げ切れるかも。折り返しの手前で、一足先に折り返してきた亀ちゃんが声を掛けてくれる。思った以上に差が開いている。

(幹事長)「あれ?もしかして5時間のペースランナーを追い抜いた?」
(亀ちゃん)「うん。さっき抜いた」


そうか。さっきまで一緒に走っていたペースは、やはり亀ちゃんにしたら遅いペースだったので、力が余っていたのだろう。残り僅かだけど思う存分走って欲しい。

白川通で折り返したら下り坂区間になって楽になると思ってたけど、さっきまであれほど厳しい上り坂だったのに、逆に下り始めると、あんまり下りを感じない。足の疲労がピークに達していて、これくらいの下り坂ではペースは上がらないのだ。それでも、40km地点で確認したペースは、なんとか1km8分に収まっていたので、ちょっと安心。1km8分もかかっていて安心するのもトンでもない話だが、もう残り2kmだから、歩いても5時間以内でゴールできる。もちろん、歩きはしない。今日の目標は一歩も歩かずに最後まで完全に完走して5時間以内でゴールすることだ。再び京都大学の角を南へ左折して、東大路通を南に進む。

しばらく進むと最後の第14給水所があるが、当然ながらゴールを目前にして、ここで水分を補給する意味は無い。時間のロスと言うより、もう変化のある事はしたくない。ひたすら真っ直ぐに何も考えずに走るだけだ。その直後の41km地点でタイムを見たら、給水所もパスしたと言うのに、再び8分半近いペースになっていた。ここも少しは下っているはずなのに、全然下り坂を感じない。上り坂ではあれほど敏感に傾斜を感じたのに、下り坂では何も感じない。だが、とうとう遂に残り1kmだ。もう歩いても這ってでも帰れると思うと、ほっとして気持ちは晴れやかになる。ただ、もう少しなんだから精神力でスパートできそうなもんだけど、やっぱり無理で、全然スパートできない。これは精神力をもってしても足の疲労はカバーできない、っていうのではなく、何の目標も無くなってダラダラ走っているだけなので、そんなに精神力が沸いてこないだけだ。
コースはそのまま丸太橋通も横切って南下し、平安神宮の西側に出て、そのままチョコチョコ曲がり、最後に平安神宮の大鳥居の前でゴールだ。


〜 ゴール 〜


てっきり平安神宮の大鳥居がゴールゲートなのかと思っていたら、その手前がゴールだった。なんて大鳥居をゴールにしてくれないんだろう。たぶん宗教的にマズイのかもしれない。

結局、5時間は切ったけど、いつものレベルから言えば、完全な惨敗のタイムだった最後まで歩かずに完全に「完走」したとは思えないような悪いタイムだ。以前は、どんなに遅いペースでも全然歩かずに最後まで完全に完走できたら、そんなに悪いタイムにはならなかったけど、去年の徳島マラソンで、最後まで一歩も歩かなかったにもかかわらず5時間ギリギリなどと言う恥ずかしくて表も歩けないようなタイムで惨敗してしまったから、「一歩も歩かずに完走しても惨敗する事はある」って事は分かったけど、今回も同じだ。天候だって、結局、気温は低くて風が無くて天気は良い、という絶好のコンディションだったから言い訳はできない。て言うか、最後まで気持ち良く走れたんだから、言い訳は無い。終盤に撃沈しないように前半から抑えたペースで走ったにもかかわらず、途中で歩きまくった過去のレースより悪いタイムなのだ。
ただ、今回は12月の交通事故からの復帰戦だったので、完走できただけで一応は満足だ2週間前の丸亀マラソンはハーフマラソンの復帰戦で、今日はフルマラソンの復帰戦だ。どちらもタイムはめちゃ悪いけど、最後まで完走できたから、取りあえず怪我の後遺症は無くなったと言えよう。後はトレーニングで徐々に完全復活を目指せばいい。

それに、最後まで歩かずに完走できたレースはいつもそうだけど、最後まで足が痛くならなかったのは嬉しい足が痛くならなかったからこそ最後まで歩かずに完走できたのだ。終盤は足が重くなるが、どんなに足が重くなっても、痛くなければ走り続ける事ができる。ペースは極端に落ちて歩くようなスピードになったとしても、痛くさえ無ければ、足を引きずりながらゆっくり走り続けることができる。足が棒の様になっても精神力で乗り切ることが可能だ。しかし、足が痛くなると我慢できずに歩かざるを得なくなる。
足が痛くなっても、なんとかマシなタイムを出すのと、悲惨なタイムでも最後まで足が痛くならずに完走できるってのと、どっちが良いかと聞かれれば、タイムは悪くても足が痛くならない方が良い。最後まで足が痛くならずに済むと、少なくとも、そんなに辛くはない。走っている途中で、フルマラソンに出た事を後悔したりすることはない。また出たいと思うようになれる。どんなにタイムが悪くても、フルマラソンを一歩も歩かずに完走できたってことは、それだけで嬉しい事だ。プロじゃないんだから、タイムよりは最後まで楽しく走る方が良いに決まっている。
ただし、フルマラソンの自己ベストは終盤に足が痛くなって足を引きずりながら泣きながらゴールした時のものだ。前半の貯金が物を言ったパターンだ。これがレース展開の難しいところだ。前半からペースを抑えて走ると、足が痛くならないのは嬉しいけど、当然ながらタイムは悪い。足が痛くならない範囲でもっとペースを上げる必要がある。どこまでペースを上げるべきか、難しいところだ。

(ピッグ)「で、タイムはどうだったんですか?」
(幹事長)「4時間台だったとだけ言っておこう」
(ピッグ)「どういう意味ですか?また大胆に切り捨てですか?」
(幹事長)「もちろん!4時間59分59秒までは4時間台じゃ」


大阪マラソン、神戸マラソン、奈良マラソン、京都マラソンと、関西の人気マラソン大会は出るたびにどんどん着実にタイムが悪くなってきた。フラットな大阪や神戸に比べたら厳しいコースと言えるが、激しい山登りがある奈良マラソンより遅かったってのは、少し悲しむべきかもしれないが、今回は仕方ない。

今日の出走者は16858人で、そのうち完走者は15714人で、完走率は93%だ。最近はこういう大きなマラソン大会では制限時間が7時間のところが多いが、この大会の制限時間は6時間だから割と厳しい方だ。それなのに完走率93%ってのは立派なものだ。やはりレベルが高いマラソン大会だったようだ。なので、タイムも悪かったが、それ以上に順位は悪かった。後ろから数えた方が、はるかに早いという情けない順位だった。

(幹事長)「タイムは惨敗だったとは言え、みんなも同じように遅ければ順位は悪くならないけど、ちゃんと完走したのに順番がこんなに悪いってのも驚き」
(支部長)「何を偉そうに言うてるんや。昔は後ろから数えた方が早かったやろ」


確かに、初めてマラソン大会に出場した22年前の瀬戸内海タートルマラソンでは、男子35〜49歳の部で585人中408位だった。上から数えて7割程度の順位だ。つまり後ろから数えた方がずっと早いという情けない順位だった。さらに1998年の塩江マラソンなんか完走者346人中335位で、後ろから12番目だ。ちなみに、中山選手(元ジュビロ、前コンサドーレ)なんか、この時、後ろから5番目という前代未聞の順位でゴールしている。

(中山)「久しぶりの登場ですが、この話題の時にしか出番が無いですね」

支部長も1999年の塩江マラソンでは後ろから7番目だった。

(支部長)「何を言うか。私なんか2002年の塩江マラソンでは途中で最下位になったから、消防車に救護されて、さらに途中で救急車に乗り換えたぞ」

ことさら自慢する話ではないが、そういう戦火をくぐり抜けてきた我々なのに、最近は異常なまでの熱狂的なマラソンブームのせいで初心者の参加者が激増したため遅いランナーが多く、調子が悪い時でも少なくとも上位1/3くらいには入っている。それなのに今日は後ろから数えた方が早いなんて、やはり情けないけど、ま、今回は仕方ない。

最後に死力を尽くしたスパートなんかしてないので、ゴールしても余力が残ってて、そんなにしんどくもなく、しゃがみ込むような事にはならない。昔はフルマラソンなんか走った後は、ゴールしたら足が痛くて動けなくなったものだが、最近は全力を出し切れなくて余力が残ってしまってて、ゴールしても平気で歩けてしまう。痛くないのは嬉しいけど、一方で情けない。終盤、足がどんどん重くなって、どんどんペースが落ちていったんだけど、それでも余力が残っているってことだ。精神をコントロールして、そういう余力をなんとかうまい具合に引き出せれば、全力を使い切って良いタイムが出るだろうし、ゴールした後は足が痺れて動かなくなるだろう。タイムは悪いし、余力が残っているっていう状態だと、不完全燃焼感が満ちあふれて、達成感が乏しい。ま、しかし、それでも今日は23km辺りから亀ちゃんに引っ張ってもらったから、まだマシかもしれない。欲を言えば、あのまま最後まで引っ張ってもらっていれば、もう少し力を出し尽くせたかもしれないが、それでは亀ちゃんに迷惑がかかり過ぎる。

ゴールするとフィニッシャータオルを掛けてくれた。とても暖かく感じたので、やはり体はだいぶ冷えていたようだ。Tシャツの代わりに得体の知れないBUFFなんて物しかくれないのかと思ったら、完走した人にはタオルもくれるのだ。大阪マラソン、神戸マラソン、奈良マラソンもそうだったけど、関西のマラソン大会のフィニッシャータオルは、どれもデザインが素敵だった。さらに完走メダルも掛けてもらう。「京」の字が走っている楽しいデザインのメダルだ。

なんとか怪我からの復活を証明


ブラブラ歩いていたら亀ちゃんと再会した。亀ちゃんは最後に余力があったのでスパートして、5時間のペースランナーは蹴散らしたようだ。
亀ちゃんが温泉に行こうと言う

(亀ちゃん)「マラソンと登山の後は温泉とビールに限るぞ」


〜 温泉で反省会 〜


(幹事長)「こなな京都市内のど真ん中に温泉なんかあるんか?」
(亀ちゃん)「ちゃんと調べてるがな」


さすがはマラソンと登山の後に必ず温泉に行く亀ちゃんだ。リサーチは万全だ。疲れた足を引きずって電車を乗り継いでいくのは大変なので、タクシーで壬生にあるはなの湯という温泉に行く。京都の街中にある割には郊外型のスーパー温泉だった。龍馬脱藩マラソンや徳島マラソンの後は必ず温泉に入っているが、京都マラソンの後にも温泉に入れるとは思わなかった。これまた亀ちゃんに出会えて良かった。
温泉の後は、取りあえず京都駅まで戻り、ビールを飲みながら食事だ。今日のマラソン大会では食べ物は生八つ橋以外は大した物が無かったから、お腹がペッコペコだったので、ガバガバ食べた。

結論から言えば、タイムは惨敗だったけど、なかなか楽しいマラソン大会だった。東京や大阪はもちろん、神戸に比べても都会感は乏しく、とてもシティマラソンって雰囲気じゃなかったけど、山や海や田畑や川しか見られないような田舎のマラソンとは違い、やはり古都のマラソンだった。同じ古都のマラソン大会でも奈良マラソンはかなり田舎のマラソンだったが、京都は田舎感は無かった。あちこちしつこくチョコチョコと曲がりまくるコースだけど、実際に走ってみると、別に走りにくくもなかった。一本道を遙か彼方までひたすら真っ直ぐ走る田舎のマラソンより変化があって良かった。山際の道が多く、アップダウンもあったが、まあそれほど大したことはない。天候も恐れていた極寒状態ではなく、ちょうど良い感じの体感温度だったし、風も無かったし、走りやすかった。走る前は、一度走れば十分かなあ、なんて思ったりもしたが、走り終わったら、また来年も応募しようって思えてきた

それに何より、亀ちゃんに会って、ちょうど良いスピードで引っ張ってくれたのがとてもラッキーだった。普段なら疲れて心が折れそうになる後半を、楽しくおしゃべりしながら走れた。コースを走りながら思ったこと感じたことを、その瞬間その瞬間、言葉にして言えるってのは楽しい。亀ちゃんとなら登山も同じようなペースで登れるかもしれないな。


〜おしまい〜




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