第8回 とくしまマラソン

〜 3月なのに暑さとの戦い!? 〜



2015年3月22日、第8回とくしまマラソンが開催された。
この徳島マラソンは、レースの半年近く前から戦いが始まる

(ピッグ)「そんな前からトレーニングやってるんですかっ!」
(幹事長)「3年連続で同じ突っ込みを入れてくれてありがとう。もちろん、これは申し込みの戦いです」


徳島マラソンは今回で8回目だけど、7年前の最初の年から申し込みは混乱がつきまとってきた。その背景には、昨今の異常なまでのマラソンブームがある。徳島マラソンの定員は年々、増強されてきたんだけど、それを上回るマラソンブームにより申込者が激増して、申し込み競争が激化しているのだ。このため、徳島マラソンの申し込みは、第1回の時から混乱を極めてきたが、これについては毎年しつこく書いてきたし、最近はようやく落ち着いてきたので、もう書くのは止めます。

ただ、落ち着いてきたってのは募集方式が落ち着いてきただけであり、申し込み競争そのものは、ますます激化の一途をたどっている。今回の募集方式自体は、昨年と同様、定員が10000人で、うちインターネットでの先着順が9000人、振替用紙での抽選が1000人だ。そして、このインターネットでの予約が激しく厳しい戦いになるのだ。
申し込みの受付は、以前は夜中の12時だったのが、昨年から夜の10時になった。時間が早くなった事は、それまで睡魔と戦いながら苦労して12時まで起きていた事を考えると朗報とも言えるが、申し込みしやすい時間帯になるので、申し込み競争に参加する人数は増えるから、競争は激化する。そして昨年は、受付開始から1時間ちょっとの間に9000人の枠が埋まってしまい、ちょっと出遅れた人は申し込みできなかった。

今年も同じ方式だから、競争は激しくなることはあっても、緩まることは考えられない。て事で、受付開始の10時の30分くらい前から受付サイトに入っておき、あとは10時になったらエントリーボタンを押すだけ、って状態でスタンバイする。他のメンバーには、夕方に一度、「エントリーを忘れたらいかんよ」っていうメールを送っていたが、再度、直前に電話で念を押しておく。
それから試しに、ちょこっとエントリーボタンを押してみたが、「まだ駄目よ」っていうメッセージが出た。やはり素直に10時になってからボタンを押さねばならない。ただ、これまでの経験からすると、10時になった直後にエントリーボタンを押したつもりでも、一瞬の遅れがあれば、あっという間に既に長蛇の列ができていて、かなり待たされる。なので、正確に合わせた時計を睨みつつ、フライイング気味に10時になるほんの数秒だけ直前にボタンを押してみた。ところが、これが大失敗。そんな時にボタンを押したもんだから、一瞬で凍り付いてしまい、ウンともスンとも言わなくなってしまった。「こらヤバイっ!」って思って、慌ててブラウザーを立ち上げ直して、再び受付画面まで到達しようとしたんだけど、再び受付画面に入るまでに待たされてしまい、最終的にエントリーボタンを押して入力を開始できたのは10時10分くらいになっていた。でも、入力を開始できたって事はタイミング的には間に合ったって事なので、ホッと一息。ただ、入力は開始できても、入力にモタモタしていると、その間に定員一杯になって受付終了になる恐れもあるので、急いで入力を終え、無事、エントリー完了となった。

他のメンバーにも電話で問い合わせ、みんな無事にエントリーできた事を確認した。てな訳で、今年の参加メンバーは、私のほか、支部長、ピッグ、國宗選手、ゾウ坂出、ヤイさんと言ったところになった。他に準メンバーのW部選手片岡氏も出る。

みんな無事にエントリーできたため、なんとなく余裕でエントリーできたような気がしていたが、後から聞くと、今年は受付開始から20分くらいで定員オーバーになってしまったとのことだった。去年も早かったとは言え、1時間ちょっとは大丈夫だった。それに比べて、たった20分で一杯になるなんて、後から考えると背筋が寒くなる。

(支部長)「精神衛生上、良くないなあ」
(幹事長)「本番で走るより、エントリーする方が疲労困憊やなあ」
(支部長)「無事にエントリーできたら、それだけで完走したような達成感があるなあ」
(幹事長)「もう本番なんか、どうでもいいような気になるよなあ」


まさに本末転倒だが、なぜ徳島マラソンが毎年毎年こんなに人気が高まるのかと言えば、坂がほとんど無くて、とても走りやすいフルマラソンだからだ。今や日本中、至る所でマラソン大会が行われているが、フルマラソンでフラットなコースってのは意外に少ない

日本は山が多いから平坦なコースを片道21kmも確保できる場所は少ない、って事ではなく、交通規制の問題だ。21kmの平坦な道なんて、いくらでもある。ハーフマラソンではメジャーな大会になった丸亀マラソンだって、折り返し点を坂出から高松まで延長すればフルマラソンが行えるけど、ああいう幹線道路を長時間、交通規制してフルマラソンを開催するのは容易ではない。

東京都知事や大阪府知事みたいに絶大な権力を誇る政治家なら、警察も文句を言えないから、都心のど真ん中でマラソン大会を開催できるけど、そうでなければ簡単ではない。そのため、香川県内では、交通量の少ない小豆島で行われる瀬戸内海タートルマラソンが唯一のフルマラソンだ。
小豆島に限らず、交通量の少ない山間部や島嶼部なら大がかりな交通規制をしなくても42kmのコースを確保するのは比較的簡単だから、多くのマラソン大会が、そういうコースで実施される。ただ、当然ながら、そういう場所では、どうしても坂が多いコースとなってしまう。なので、坂がほとんど無い徳島マラソンは、我々にとって、大変貴重なレースなのだ。
なぜ山間部でも島嶼部でもない徳島でフルマラソンの開催が可能なのかと言うと、吉野川という真っ直ぐな大河川があるからだ。この川の堤防の上をコースにすれば、大して交通規制をしなくてもフラットで真っ直ぐなコースを確保できるのだ。このように、徳島マラソンはコースとして魅力的なため、昨今のマラソンブームのせいで参加希望者が激増しているのだ。
我々としても、同じ県内だけど船で行かねばならない小豆島より、徳島の方が行きやすいから、とてもありがたいフルマラソンなのだ。



てなわけで、熾烈な申し込み競争を勝ち抜いたことに安心しきって油断しきっていた2015年3月22日に、第8回とくしまマラソンは開催された

(ピッグ)「いつもより1ヵ月も早いんですよねえ」
(幹事長)「ちょっと早すぎるよなあ」


徳島マラソンは、これまで4月下旬に開催されてきた。気候も暖かくなってきて、天気が良いと暑いくらいの季節だ。記録的には、もっと寒い時期のレースの方が良い記録が出やすいのだが、個人的にはフルマラソンの場合、終盤には足を引きずって歩く事も多く、そうなると寒い季節の大会は辛い。4月下旬になれば、トボトボと歩いても、それほど寒くはないのでありがたい。
ところが今年は1ヵ月も早まって3月下旬の開催となった。理由は、4月には統一地方選挙があって忙しくなるからだそうだが、本当は選挙運動がらみの政治的な理由がありそうだ。統一地方選挙は4年に一度あるから、4年前の第4回大会も3月下旬の開催予定だった。ところが、あの年は大会の9日前に東北大地震が発生したため、急遽、延期となり、11月に開催された。この延期については、当時、青森県に住んでいた私としては身動きが取れなかったため個人的には非常に助かったが、東北大地震と何の関係も無い徳島県でマラソン大会を自粛するという行為自体には大いに疑問が残った。青森県内ですら、直後にマラソン大会が開催されていたというのに。
ま、そんな事もあって、3月の開催は今年が初めてだ。

3月にフルマラソンがあると何が困るかと言えば、練習が十分でないって事だ

(支部長)「異議ありっ!それは季節に無関係の要因では!?」
(幹事長)「いえいえ、決してそのような事はございません」


4月下旬の開催なら、3月辺りからフルマラソンに向けて徐々に練習量を増やしていって本番に備えるのだが、3月下旬の開催なら2月始めの丸亀マラソンの直後から練習量を増やしていかなければならない。増やせばいいじゃないか、と言われそうだが、2月なんて一年で一番寒い季節だ。そんな寒い時にフルマラソンに備えて20kmも30kmも走れる訳がない。どんなに寒くても、短い距離なら一生懸命走って体が熱くなればいいが、20kmも30kmも走る場合は一生懸命走ったら足が動かなくなってしまうのでチンタラ走らなければならない。しかし、チンタラ走っていると体が熱くならないので寒いのだ。

だが、徳島マラソンは基本的には年に一度の貴重なフルマラソンだ。他にも毎年、東京マラソンや大阪マラソンや京都マラソンや神戸マラソンなど色々と申し込んではいるけど、競争率が高いから滅多に当選はしない。小豆島のタートルマラソンは坂が多いので、たいていはハーフマラソンの部に出ている。他にも四国内でフルマラソンがいくつか開催されているが、ちょっと遠方だったり坂が多かったり寒い時期だったりで、なかなか適当な大会が見あたらない。なので、この徳島マラソンだけが毎年必ず参加する貴重なフルマラソンなのだ。なので、今年は寒い時期だからといってロクに練習もせずに参加するのはもったいない。
てことで、寒い時期にもかかわらず、割と真面目に練習した。なんて言うと言い過ぎだが、少なくとも、ことさら強調するほどの練習不足ではない

(ピッグ)「どれくらい練習したんですか?」
(幹事長)「いや、ま、大したこと無いけどな。週末に2〜30kmと週2回平日に5kmほどかな」
(ピッグ)「どひゃーっ!すごいじゃないですかっ!月間走行距離が100kmを越えてますよっ!」


月間の練習量が100kmを越えている程度で驚いているピッグだが、どう考えても、普通なら、フルマラソンを走る直前の練習量としては圧倒的に少ないんじゃないだろうか。せめて200kmは走っておきたいところだ。

(幹事長)「て言うか、そこまで練習量の少ないピッグに、いつも負けてばかりってのが腑に落ちないんだけどな」

ピッグは、去年だってロクに練習もしなかったのに、海部川風流マラソンでサブ4目前のタイムを出している。「なぜだっ!」と思わず叫びたい気分だ。
結局、練習量的には、去年の大会前と同じくらいの量だったから、多くはないけど少なくもない。いつもの調子だ。



大会当日は、今年はピッグの車に乗せてもらうことになり、我が家に朝の6時に迎えに来てもらった。
3月の開催と言うことで寒さを心配していたが、大会の2〜3日前から暖かくなり、4月中頃から下旬並の陽気になった。しかし、その後、再び大寒波が降りてくるとのことで、大会当日がどうなるか心配だった。寒気が遅れると暖かいままだが、寒気が早めに来ると寒くなる。寒いのは苦手なのでヤキモキしていたが、早朝なのに、そんなに寒くない。天気は良くなりそうだし、風も無いから、このままだと寒さは気にしなくても良さそうだ

その後、國宗選手を迎えに行く予定だったが、なんと今年も業務多忙でドタキャンになってしまった。國宗選手は去年も直前になって業務多忙を理由にドタキャンしている。

(幹事長)「どう思う?」
(ピッグ)「本当に忙しいんじゃないですか」
(幹事長)「そうかなあ。どうも怪しいぞ」


支部長は大会の後、そのまま池田支部に帰るとのことで自分の車を出すことになり、行きはゾウ坂出ヤイさんを拾っていくと言う。なので、ピッグ車には私だけが同乗して徳島へ向かう。

朝6時の出発は、早いと言えば早いが、小豆島のマラソン大会に出るために船に乗る時間も似たようなものだ。若い頃は6時に出発するなんてトンでもなく辛かったけど、最近は老化が進んで朝早く目が覚めるようになったので、割と平気で6時に家を出られるようになった。
しかし、6時に高松駅に来なければならないゾウさんにはきついようだ。

(幹事長)「まだ若いからか?」
(ゾウ)「3時に起きなきゃならないからですよっ!」
(幹事長)「さ、さ、さ、3時ぃっ!?なんで、また?」


6時に高松駅に着く電車に坂出駅から乗るためには、家を5時頃に出る必要があり、女子だから色々準備とかすると3時に起きなければならないのだそうだ。

なんで高松を6時に出なければならないかと言えば、徳島マラソンは受付時間がとても早く、朝の8時までに済ませなければならないからだ。スタート時間が9時だから仕方ないんだけど、ちょっと早すぎる。車で行くと、帰りは疲れ果てた足が攣りそうになって運転が危険になるので、可能ならJRで行きたいところだが、高松発の始発列車で行っても間に合わないのだ。高松と徳島なんて東京なら通勤圏内だというのに、8時に間に合う便が無いなんて、いくらなんでもあんまりだ。

去年の記事を読み返してみると、車で行く場合、6時に高松を出れば楽勝で間に合ったと書いてあるので、今年も6時発にしたのだ。

(幹事長)「ほんとに、このホームページは役に立つな」
(支部長)「自分の日記をつけてれば十分やけど」


徳島の高速道路事情は、ちょっといびつで、高松から鳴門を通って神戸に抜ける高松自動車道は徳島市内を通らず、ほんのすぐ側を並行して走っている徳島自動車道とは接続していない。なので、徳島市内まで高速道路を降りずに行く事は不可能だった。しかし、つい先日、高松自動車道と徳島自動車道を接続する区間が開通し、徳島ICまで高速道路を降りずに行くことができるようになった

(幹事長)「せやけど、地図で見ると、えらく遠回りになるぞ。ほんとに早くなるのか?」
(支部長)「う〜ん、微妙なとこやな」


て事で、試しに、私が乗ったピッグ車は従来通り、高松自動車道の板野ICで降りて、そのまま一般道路で行き、支部長車は高速道路から降りずにぐるっと遠回りして徳島ICで降りて時間を比べてみることにした。

行き先は吉野川河川敷の臨時駐車場だ。徳島マラソンの受付会場には駐車場が無く、だいぶ離れた所にある臨時駐車場からシャトルバスで会場に移動するのだが、臨時駐車場は2ヵ所ある。沖洲マリンターミナルと吉野川河川敷だ。スタート会場には沖洲マリンターミナルが近い。なので以前は沖洲マリンターミナルの臨時駐車場に車を停めた。ところが、交通規制のせいかバスのドライバーが慣れてなかったせいか、沖洲マリンターミナルからスタート会場の県庁横までものすごく時間がかかり、受付時間に遅刻してしまった。さらに、レースが終わった後は、ゴール会場の陸上競技場から沖洲マリンターミナルまで1時間もかかり、ウンザリしてしまった。徳島市内の道路は日中はすごい渋滞になるのだ。この反省から、去年は、スタート会場までは多少遠いものの、帰りがゴール地点から近い吉野川河川敷の臨時駐車場を利用してみたら、行きも思ったほどは時間がかからず、帰りも早かった。なので今年は迷わず吉野川河川敷へ向かう。

途中、車の中で朝食を食べる。これまでマラソン大会の朝食と言えば、決まって菓子パンを食べていた。もともと菓子パンは大好きで、色んな種類があって、手軽に食べられるからだ。ところが、最近、ようく考えてみた。マラソン大会になると、時々、走っている最中にお腹を壊すことがある第1回徳島マラソンとか一昨年のオリーブマラソンでは、その顛末を記事にも書いたが、書いていないレースも含め、レースの途中でトイレに駆け込む(もしくはトイレが無くて物陰で用を足す)ことは珍しくない。そして、これはマラソン大会だけでなく、登山に行った時とか、観光に行った時にもある。そして、最近、ようく考えてみたら、これらには共通点があった。いずれも朝、菓子パンを食べた時なのだ。普段と違って早朝に家を出る時は、家では朝食を食べられないから、菓子パンを持っていき、途中で食べるのだ。菓子パンの何が悪いのかは分からないが、その結果として、お腹を壊すことが多いようなのだ。菓子パンなんて、そんなに消化が悪いとも思えないが、もしかして中に入っているクリームとかが悪いのかもしれない。て事で、今日は初めて菓子パンじゃなくて、おにぎりを持ってきた。おにぎりで好きなのはタラコや鮭なんだけど、なんとなく消化に悪いような気がするので、梅のおにぎりを2個持ってきた。フルマラソンを走るのに、おにぎり2個じゃ少ないような気もするけど、食べ過ぎてお腹を壊す方が怖いので我慢する。さらに用心には用心を重ねて、下痢予防のために下痢止めの薬も飲む。これで万全だ。て言うか、これでもお腹を壊したら、別の対策が必要になる。

去年と同じく、休日の朝の高速道路は空いていて、とても順調に進み、7時には臨時駐車場に着いた。ピッグ車から少し遅れて高松を出発した支部長車も、すぐ後に着いたから、結局、朝の混雑してない時間帯なら、どっちのルートでも時間は変わらないようだ

(ピッグ)「これもメモ代わりの情報ですか?」
(幹事長)「うん。最近、物忘れがひどいから、来年、読んで参考にしないとね」


臨時駐車場に着いて外に出ると、車に乗っている時には分からなかったが、意外に風が少しある。そして、意外に肌寒い

(幹事長)「おや?今日は暖かいと持っていたけど、案外、寒いぞ。やっぱり3月だから寒いのか?」
(支部長)「これくらい平気平気。全然、寒くないって」


駐車場には既に沢山の車が停まっていたが、シャトルバスもいっぱい待機してて、どんどん運んでくれるので、全然待たずにバスに乗れた
ところが、バスがノロノロと動き出した瞬間、突然、支部長が座席から立ち上がり、運転手さんに「すんません、降ろしてくださいっ!」って言い出す。何事かと思ったら、携帯電話を車に忘れてきたとのことだ。携帯電話を全く愛用していない私としては、理解に苦しむ行動だが、支部長は仕事柄、時々、緊急呼び出しがあり、対応する必要があるので携帯電話を手放せないのだ。

(幹事長)「マラソン大会で走っている時も携帯電話は手放さないの?」
(支部長)「もちろん、常に携帯してますがな」
(幹事長)「でも、走ってる最中に電話がかかってきたら、どないするん」
(支部長)「そのままコースをはずれて走って職場に向かいますがな」
(幹事長)「途中で力尽きないようにね」


ここから池田支部までは70kmもあるから大変だ。
急な事態だったので、支部長がバスから飛び降りてから気が付いたけど、参加証を預かっておいて、先に代わりに受付を済ませておけば良かった。支部長の遅れがどれくらいになるのか分からないけど、かなりギリギリになるかもしれない。



徳島市内は慢性的に交通渋滞が発生するが、まだ朝早かったため、なんとか渋滞に巻き込まれることもなく、比較的、順調に進み、受付終了の30分も前の7時半頃には受付場所に着いてしまった。受付を済ませると、記念品ランニング手袋をくれた。普通、マラソン大会の記念品と言えばTシャツに決まっている。昔の記念品Tシャツは品質が悪かったから、どんどんヨレヨレになっていって次々と消費していた。ところが最近のTシャツは品質が良くて、どれだけ着て洗濯しても、なかなかヨレヨレにならない。そのため着てない新品のTシャツが山のように溜まる一方だ。なので、Tシャツでない記念品はありがたい。使っている布の面積から言えば、手袋はTシャツの1/10くらいのような気がするから、なんとなく損したような気もしないことないけど、なかなかお洒落な手袋だ。

受付も済ませ、あとは、支部長が到着するのを待つだけだが、ここで、お決まりの悩みだ。何を着るべきか。どんなマラソン大会であっても、最大の悩みが着るものだ

(ゾウ)「ほんっとに幹事長は、いつもいつも寒さの事ばっかり心配してますねえ。もっと他に大事な事があるでしょ?」
(幹事長)「寒いのは本当に苦手なんよ」


今日は、結局、寒波はやって来なかったから、3月の割には比較的、暖かい。なので、長袖シャツの上から半袖シャツを着れば十分のような気がする。しかし、さきほど駐車場で体感した感じでは、高松と違って少しは風が吹いているので体感温度は少し寒い。

(幹事長)「さらに、もう1枚半袖を着るってのは、着すぎかなあ?」
(ゾウ)「何を考えてるんですかっ!寒さ対策が度を超してますよ。真冬じゃないんですよ」
(ピッグ)「て言うか、厳冬期のマラソンでも、3枚もシャツを着るなんて、あり得ませんよ!」


う〜ん、やっぱり3枚も着るのは止めておこうかなあ。その代わり、いつでも脱げるように雨ガッパ代わりのビニール袋を着ていこう。
まずは長袖シャツを着て、その上に一昨年の大阪マラソンでもらったTシャツを着る。この大阪マラソンのTシャツは格好良いから、もらって以来、ほとんど全てのレースで着ている。
下はランニングタイツを履くことにした。僕はランニングタイツのサポート機能を全く信じてないので、普段は履かないんだけど、今日は防寒用にタイツを履く。ランニングキャップは炎天下か雨の時しか被らないから、今日は不要だ。手袋は必携だが、さっきもらった手袋がお洒落なので、さっそく使うことにした。

他のメンバーは、と言うと、ヤイさんは僕と同じく、長袖の上に半袖を着て、下はタイツも履いている。しかし、ピッグは相変わらず短パン半袖だけだ

(幹事長)「ピッグは、夏でも冬でも、常に短パン半袖やけど、それ寒くないん」
(ピッグ)「慣れれば平気ですよ」


ゾウさんもピッグと同じく短パン半袖で、いつものランニングタイツを履いていない。

(幹事長)「それ、寒くないん?」
(ゾウ)「去年、タイツを履かずに、この格好で良いタイムが出たんですよ。だから今年もこれで行きます」
(幹事長)「去年は4月下旬やったけど、今日は3月やで」
(ゾウ)「気温は去年より暖かいくらいですよ」


ゾウさんによると、今年の方が暖かいんだそうだ。本当に、そうだろうか?全く忘れてしまって分からない。
着るものは準備万端になったが、まだ時間の余裕があるので、トイレに行く。意外に長蛇の列は出来て無くて、大の方に並んだが、割とスムースに用を済ませる事が出来た。

あとは持ち物だ。ポケットには雨ガッパ代わりのビニール袋のほか、ウォークマンティッシュハンドタオルを押し込む。お腹を壊してトイレに駆け込む可能性があるから、ティッシュは必携だ。スタート直前に食べようかと思ってゼリーも一応、持っては来たけど、最近、スタート地点でゼリーを食べてお腹を壊したレースがあったので、止めておく。

(ゾウ)「寒さだけでなく、お腹の心配も過剰ですね」
(幹事長)「心配しだすとキリが無くて」


着替えが終わると、みんなで記念写真と言いたいところだが、支部長がいないので記念写真を撮れない。もう受付時間は終了目前だスタート前の記念写真は断念する

今回の出場メンバー
左から幹事長、ゾウさん、ピッグ、支部長、ヤイさん
(スタート前には撮れなかったのでゴール後に撮った写真)
(なぜ支部長だけが既に着替えているかは後の秘密)

(ゾウ)「支部長、ちょっとヤバくないですか?」
(幹事長)「ちょっと危ないかも」


徳島マラソンに限らず、地方のマラソン大会の受付時間ってのは、だいぶ優しい少々時間を過ぎても受け付けてくれる。徳島航空基地マラソンなんか受付終了時間から30分経っても平気で受け付けてくれる。徳島マラソンも、第4回大会は遅刻したし、それ以降も、常にギリギリだったけど、慌てる必要はない。しかし、今日は、ちょっと不安。支部長がいつ到着するか分からないからだ。
支部長と連絡を取ってみると、支部長が乗ったバスは、もうすぐ近くまで来ているが、渋滞で動かなくなっている状態らしい。ちょっとマズいと思ったので、受付場所に知らせに行く。受付では、既に撤収が始まっていたので、慌てて「待ってください!まだ臨時バスでこっちに向かってる人がいるんですっ!」って言ったら、「そらいかんな。片付けを止めんといかん」って慌ててくれた。さらに別の人が「さっき、1人だけ乗ったバスが向かってるって連絡があったから、その人が到着するまで受付はしますよ」って力強く言ってくれた。良かった良かった。相変わらず優しい受付だ。
みんなの広場回鍋肉さんが書き込んでくれてましたが、受付会場で私が「まだ一人来てない!!」と連呼していたってのは、この事です。お騒がせしました。

(幹事長)「それにしても、支部長はたった一人でバスに乗ってるらしいよ」
(ピッグ)「専用車ですね」


受付時間は既に終了しているが、今度は手荷物預け時間の締切も近づいてきたっていう場内アナウンスが流れた。手荷物預け時間の締切はスタートの30分前の8時30分だ

(ゾウ)「ヤバくないですか?」
(幹事長)「手荷物も多少は遅れても大丈夫とは思うけど」


これまでも遅れた事はある、というか、たいてい、遅れるかギリギリで預けてきたけど、全然、大丈夫だった。でも今日は支部長の到着が読めないので、取りあえず、ヤイさんが支部長を待ち、その間に、みんなの手荷物を預けに行く。外に出たら、思ったほど寒くはない。風が無いから、ちょうどいいくらいか。

手荷物預かり所まで小走りで運んでいると、係の人が「もう締切の時間ですよ〜」って叫んでいる。しかし、ちょっと見渡しただけでも、まだ預けてない人が沢山いる。結局、今年も締切時間は過ぎてしまっていたが、無事、手荷物は預けられた。相変わらず優しい係の人たち。

それでも支部長がまだ来ない。どうなることかとヤキモキしていたら、ようやく支部長が到着した

(幹事長)「えらく時間かかったなあ」
(支部長)「バスが渋滞で動かなくなってなあ」


支部長が乗ったバスは、ほんのすぐ近くまではなんとか来たものの、渋滞に巻き込まれて全く動かなくなってしまったそうだ。それで仕方なく、そこでバスから降ろしてもらって走って受付まで来たそうだ

(幹事長)「たった1人しか乗ってない専用バス状態だったって?」
(支部長)「えっ?そんな事ないよ。バスは満員やったで」


なんと、たった1人しか乗ってないバスってのは、支部長が乗ったバスではなかったのだ。支部長が乗ったバスだけでなく、他にも満員状態のバスが何台も渋滞で立ち往生してしまい、それらのバスからみんな降りて走って受付会場に来たそうだ。たった1人しか乗ってないバスってのは、それよりも、さらに後から来ていたらしい。

(幹事長)「なーんだ。それじゃあ、あんなに焦る必要なかったのかあ」
(ゾウ)「そんな事ないですっ!早くスタートの集合場所に行かないとスタートに遅れますっ!」


確かにそうだ。時計を見ると、9時のスタートまで、もう15分しかない。周りには、まだまだ大勢の参加者がダラダラしているから、ついつい油断したけど、慌てないとスタート時間に遅れてしまう。慌てて集合場所へ急ぐ。それにしても、時間の管理が緩い大会だ。2月の丸亀マラソンなんて、スタート時間の30分前になったら集合場所へ行く通路のシャッターが閉まったというのに、今日は、あと15分なのに、まだまだ集合していない。

(支部長)「あっ、しもた!手袋忘れた」
(幹事長)「手袋はもう要らないんじゃない?」


私は、さっきもらったばかりの手袋を持ってきたけど、今日の暖かさなら手袋は不要のような気がする

(支部長)「いやいや、汗を拭くために手袋が要るのよ」

私はいつも汗を拭くハンドタオルを持っているけど、支部長はいつも汗を手袋で拭いているのだ。

(支部長)「仕方ない。コンビニでタオルを買うよ」
(ピッグ)「コンビニなら、あそこにありますね」
(支部長)「あっ、しもた!財布も預けてしもた!」


いつもならウエストポーチに携帯電話を始め財布やら何やらいっぱい詰め込んで走る支部長なんだけど、今日は時間ギリギリで慌てていたため、色んなものを忘れたらしい。幸い、ヤイさんがウエストポーチに財布を入れていたので、ヤイさんからお金を借りてコンビニで軍手を調達した。

(支部長)「あと、アームウォーマーも忘れてしもた」
(幹事長)「それこそ今日は要らんやろ」


さっきまで寒さを恐れて何を着ようか悩んでいたのに、本当に暖かくなってきた。徳島マラソンは、例年、風が強くて体感温度が寒いのだが、今日は気温も低くないが、何より風が無いから寒くない。て言うか、日射しに当たると暖かい。て言うか、このままだと、これから先どんどん暑くなる予感

(幹事長)「ま、寒いよりマシやけどな」
(支部長)「いや、そんなこと無い。寒い方が良い。て言うか、雨の方が良い」
(幹事長)「んなアホな。5月末のオリーブマラソンなら、みんな実績として雨の方が圧倒的に良いタイムを出してるけど、いくらなんでも3月で雨の方が良いって事はないやろ」
(支部長)「私が徳島マラソンで唯一5時間を切ったのは暴風雨が吹き荒れた第5回大会だけやし」


そうか。私が暴風雨に負けて途中リタイアした悲惨なレースが一番良かったのかあ。あんなコンディションでベストタイムを出すなんて、支部長も極端やなあ。



スタート地点の集合場所は、申告タイムの順番になっている。これは速いランナーと遅いランナーが一緒くたにごちゃ混ぜになっているとスタート時の混雑がひどくなり、混乱するからだ。速いランナーにしてみれば、遅いランナーが混じっていると邪魔になって走りにくいし、遅いランナーだって周りが速いランナーばかりだと走りにくい。分けた方が速いランナーも遅いランナーもスムースに走りやすい。どうせタイムはチップでネットタイムを計測してくれるから、無理して前の方からスタートする必要は無い。て事で、申告タイム順に割り振られたゼッケン番号に従って順序よく並ぶことになっている。どのマラソン大会でも実施していることだ。
なのに、どの大会もそうだけど、いつもいつも、これを守らないで好き勝手に並ぶランナーが多くて、かなりの混雑となる。そのため、去年から申告タイム別の集合場所ごとにゼッケンの色を変えることにより、順序を守らないランナーが一目で分かるようになった。周囲と違う色のナンバーの参加者がいると一目瞭然で、居づらくなるからだ。ところが、それでも色の違いを無視して、仲間同士で一緒に固まって並ぶ参加者がいる

(ピッグ)「って、私もそうです。すんません」

他のメンバーは、みんな一緒にスタートしたいから同じような申告タイムで揃えたので、ゼッケンの色が同じだが、実績タイムが速いピッグは正直に申告したため、僕らより前の方に集合するゼッケンナンバーが割り振られているのだ。

(幹事長)「今日はサブ4は狙わないん?もっと前の方から走った方が走りやすいんじゃない?」
(ピッグ)「いや、今日はサブ4を狙えるような状態じゃないです。絶対にタイムは悪いと思うので、みんなと一緒で良いです」


ピッグは、私の月間走行距離が100kmを越えていただけで驚いていたくらいで、もともと練習量が少ないことで有名だ。それでも、実績としては去年の海部川風流マラソンでサブ4目前のタイムを出したくらいだから、練習量の少なさは彼の弱さには直結しない。しかし、それでも、さすがに最近の練習量の少なさは度を超しているらしく、かなり弱気になっている。

(ピッグ)「練習量が少ないっていうレベルじゃなくて、ほとんど練習してませんから」


ほとんど練習しないでフルマラソンに出るなんて、普通の人では怖くてできない行為だ。

(幹事長)「ねえヤイさん!」
(ヤイ)「どきっ」


もちろん、ヤイさんも練習不足だ。て言うか、ピッグと同様、て言うか、ピッグ以上に練習してないはずだ。

(支部長)「マラソンを舐めてますね」
(ヤイ)「いやいや、そんな事はないですよ」
(幹事長)「いやいや、絶対に舐めきってますよ」


ヤイさんは、去年もフルマラソンを舐めきって練習もせずに参加して、途中で膝が痛くなって足を引きずりながら帰ってきた。ただ、ヤイさんは驚異的な基礎体力を誇っており、初参加した第4回大会の時も、全然練習してなかったのに私と一緒にゴールした。正確に言えば、私が力尽きて歩いていたら後ろから来たヤイさんが声を掛けてくれて、一緒にゴールまで連れて行ってもらったようなものだ。

(ヤイ)「あれは幹事長がトンでもなく遅かっただけですね」

ピッグだって、練習不足でも侮れない。どんなにリードしていても、彼は最後まで力尽きないから、終盤にペースダウンしていると追い越される事が多いのだ。逆に、前半でリードされていると、追いつくことは至難の業だ。
しかし、なんと言っても一番の脅威はゾウさんだゾウさんには2月の丸亀ハーフマラソンで数十秒の差で負けてしまったのだ。まさか自分より先にゴールしているとは思ってもみなかったので、もう茫然自失だ。予想もしていなかった。そんな事になるなんて分かっていたら、もう少し頑張っていたと思うが、本当に予想もしてなかったので、完全に油断していたのだ。
しかし、丸亀はハーフマラソンだ。今日はフルマラソンだ。せめてフルマラソンだけは死守したい。絶対に負けたくない!

(幹事長)「そうだよなっ!」
(支部長)「いやいや、私は既に去年、負けてるし」


そうだった。支部長は既に去年、ゾウさんに負けていたのだ。ヤバイ。ヤバ過ぎる。ほんと、真剣に走らないとゾウさんに負けてしまう。それだけは避けたい。

(支部長)「私は、もう失うものも無いから、のんびり走りますわ」
(ヤイ)「幹事長はサブ4狙い?」
(幹事長)「いえいえ、とんでもございません」


心の奥底ではサブ4願望はあるが、今の状態では絶対に無理だ。去年も、取りあえず目標タイムは大会自己ベストとなる4時間半にしたのに、前半で調子が良いような気がして無謀にもサブ4願望が頭をもたげてきて飛ばしすぎたため、終盤に力尽きたから、今日は4時間半を現実的な目標タイムとして、何があっても前半は徹底してペースを抑えて走る事にする

(幹事長)「て言うか、絶対に歩かずに完全に完走できればいいな。全然歩かなかったら、そんなに悪いタイムにはならないし」
(ピッグ)「そうですよね。ちょっとでも歩いたらタイムは一気に悪くなりますからね」
(幹事長)「ちょっとでも歩いたら、絶対にちょっとでは済まないもんな」


一度でも歩いてしまうと、心が切れてしまって、絶対に繰り返し歩いてしまう。歯止めが無くなるのだ。逆に、最後まで歩かなかったら、そんなにひどいタイムにはなりようがない。そして、足が痛くさえならなければ最後まで歩かずに済む。終盤は足が重くなるが、どんなに足が重くなっても、痛くなければ走り続ける事ができる。ペースは極端に落ちて歩くようなスピードになったとしても、痛くさえ無ければ、足を引きずりながらゆっくり走り続けることができる。しんどくなったから歩く、なんて事は無い。しんどければペースが落ちるだけだ。疲れとか、足が棒の様になる、っていう状態なら、精神力で乗り切れるものだ。しかし、足が痛くなると我慢できない。立ち止まって屈伸したりして、なんとか痛みを取るしかない。
最後まで足が痛くならないようにするためには、前半のペースを抑える事だ。これが分かったのが一昨年の大阪マラソンだ。風邪を引いていたこともあるし、競争率5倍を突破して参加できた貴重な大都市マラソンなので、速く走るより、のんびり見物しながら走る観光マラソンに徹したため、最初からものすごく遅いペースで走ったら、非常に珍しく最後まで足が痛くならなかったのだ。それまでフルマラソンに出ると、終盤は必ず足が痛くなって辛くなり、「なんでアホみたいに、こんなレースに出たんやろ。もうフルマラソンなんて出るの止めよう」って思っていたのだが、大阪マラソンで開眼したのだ。

(ピッグ)「東京マラソンはどうだったんですか?」
(幹事長)「東京マラソンも最後まで足は痛くならなかったけど、大阪マラソン以上に観光マラソンに徹してカッパの格好をして
       のんびり走ったし、あちこちで立ち止まって記念写真を撮りまくったりしたから、何の参考にもならない」


東京マラソンは論外としても、大阪マラソンも最初から極端にペースを抑えて走ったため、最後まで足が痛くならなかったにもかかわらず、タイムはとても遅かった。なので、もう少し速いペースで走る必要がある。てことで、去年の徳島マラソンでは、抑えめとは言いながら、大阪マラソンよりは早いペースで前半を走った。その結果、35km辺りまでは、なんとか良いペースで走れた。ところが、その後は急激にペースダウンしてしまい、大阪マラソンのように最後までペースを維持することはできなかった。それでも最後まで足は痛くならなかったので、最後まで全く歩くことなく完走できたし、タイムも大阪マラソンよりは良かった。今年は、さらにそれを上回る結果を出したいのだ。
4時間半を目標にすると、単純計算すると6分20秒/kmでいいが、それだとギリギリ過ぎる。スタート直後は大混雑でもっと時間がかかるし、給水所で立ち止まる事も考慮する必要があるし、途中でトイレに行くかもしれない。なので、6分10秒/kmくらいのペースで最後まで走れたら、ちょうど良いだろう

我々が集合した場所は、ちょうど真ん中の辺りだが、スタート地点は角を曲がった先なので、全然見えない。場内放送が聞こえてくるが、臨場感が無いので、周囲の人達も、何の緊張感も無く、ダラダラおしゃべりしている。ダラダラしているとお日様が当たって暖かい。

(幹事長)「これ、どう考えても暑くなるんじゃない?」
(ゾウ)「だから言ったでしょ!絶対に暑くなりますよ!」


ゾウさんに言われるまでもなく、明らかに去年より暖かい。去年は寒くてスタート地点で防寒用のビニール袋を被ったくらいだ。今日はビニール袋を被るどころか、2枚も着ているのを後悔し始める

(幹事長)「1枚脱ごうかなあ」
(ゾウ)「またですかっ!」


これまでも2枚着ていたのを、スタート直前になって1枚脱いだことはある。3年前の丸亀マラソンでは脱いだTシャツを近くの木にくくりつけてレース後に回収したし、同じく3年前の瀬戸内海タートルマラソンでもスタート地点でTシャツを1枚脱いでその辺に置いて走った。ただ今日は、ここで1枚脱ぎ捨てる勇気も無い。なぜならフルマラソンだと終盤に力尽きてトボトボと足を引きずって歩く事も多いから、そうなると体が冷えるのだ。その事態に備えて最後まで持っておきたいのだ。

(ピッグ)「歩くことを前提にしてますね」
(幹事長)「だって寒いのは苦手なんだも〜ん」


ゼッケンを着けている半袖は脱ぐわけにいかないから、下に着ていた長袖を脱いで、腰に巻き付ける

(支部長)「それって走りにくくない?」
(幹事長)「大阪マラソンでも経験済みやし」


一昨年の大阪マラソンの方が大変だった。風邪気味だった事もあって今日と同じように長袖の上から半袖を着て走っていたんだけど、途中で暑くなったので、走りながら下に着ていた長袖を脱いだ。結構、大変だった。しかも、終盤には寒くなったので再び長袖を着込んだ。あれに比べれば、今日はまだスタート前なのでゆっくり準備できた。

(幹事長)「それにしても着るものには苦労するよなっ!」
(ゾウ)「そんなん幹事長だけです。気にし過ぎですっ!」



そんな事をしていると、あっという間にスタート時間になったらしく、場内アナウンスが盛り上がっている。だが、我々の場所からスタート地点までは、まだまだ長いので、周囲は全然緊張感もなく、ようやくノロノロと動き出す。
角を曲がると、ようやく遠方にスタート地点のアーチが見えてくる。アーチをくぐるまでに既に7分も経過していた。去年より後ろの方からスタートしたため、去年より時間がかかった。スタート地点の横では、朝礼台の上からゲストランナーの市橋有里が声援を送ってくれる。市橋有里と言えばシドニーオリンピックで優勝した高橋尚子様を果敢に追走した時の可憐な姿が目に焼き付いている。彼女も走るとのことだが、フルマラソンを走るのだろうか。それと、噂では金哲彦さんも走るとのことだが、姿は見えなかった。

スタート地点を越えると、ゆっくりだけど小走りができるようになる。まともに走れないのでフラストレーションが溜まるが、ウォーミングアップ代わりと割り切らなければならない。ただ、今年は最初から暖かいから、ウォーミングアップは必要ない。
その後もしばらくはノロノロ状態だが、少しずつ走るスピードが上がっていく。スタート順によってゼッケンの色を変えたことにより、遅いタイムで申告した人が前の方から走るっていうケースは少なくなったけど、どんなレースでもそうなんだけど、そもそも申告タイム自体を実力より大幅に速く申告している人がいて、相変わらず周囲の迷惑を顧みず、仲間内でおしゃべりしながらブロックして走る連中がいる。おばちゃん軍団だけでなく、若い兄ちゃん連中でも迷惑な連中がいる。それでも、焦っても仕方ない。遅いランナーをかき分けて走るスペースも無いし、この程度のタイムロスは織り込み済みだ。

最初の1km地点のラップを見ると、やはり7分半もかかっている。去年よりさらに時間がかかっているし、1km地点を過ぎても、まだまだ混雑は続く。しばらく行くと、しらさぎ大橋の上りになる。ほとんど坂が無い徳島マラソンのコースでは最大の坂だが、標高10mくらい上るだけなので、まだ何の負担も感じない。だが、去年もそうだったけど、まだ1km過ぎだと言うのに、こんな坂で歩いている連中がいる。みんな若い兄ちゃん達だ。しかも、かなり前方からスタートして早々に歩いているのだ。邪魔になるから端っこを歩いて欲しい。て言うか、こんな所で歩くくらいなら、参加するな、と言いたい。て言うか、絶対に完走できないぞ。

しらさぎ大橋に上がったら道幅も広がり、だいぶ走りやすくなってくる。それでも2km地点のラップを見ると、1km6分半以上かかっている。う〜む。さすがに遅すぎるかも。
しらさぎ大橋は、毎年、風に苦しめられる。橋の上に限らず、徳島マラソンのコースは基本的に堤防の上の道なので、遮るものが無くて風が強く、しかも前半は、西風が向かい風となってランナーを苦しめる。スタート直後は街中なので建物で風が遮られるが、このしらさぎ大橋に上がってからは風との戦いになるのだ。ところが、今年は風が無くて、走りやすいと言えば走りやすいんだけど、無風状態なのでむしろ暑いくらい

しらさぎ大橋を渡り終える頃に3km地点がある。ペースは相変わらず6分半近い。う〜む。さすがに遅すぎて焦りが出てくる。いくら前半は抑えて走ると言っても、限度がある。こんなペースでは惨敗してしまう。ただ、橋を渡り終わって吉野川の北岸の堤防を西向きに走り始めると、さすがにあんまり邪魔もなく自分のペースで走れるようになる。吉野川の堤防に入っても相変わらず風は無く、早くも汗ばんでくる

次の4km地点では、ようやく1kmラップが6分ちょっとの狙ったペースになり、良い感じになってきた。このままのペースを維持できれば、望み通りのレース展開となる。こうなると気持ちも落ち着き、快調に走るのが楽しくなる。
ここには最初の第1給水所がある。普通なら、まだまだ走り始めたばかりの給水所はパスするんだけど、今日は暖かいと言うか暑いくらいなので、最初からこまめに水分補給をしておく。もちろん、急いで飲むとお腹を壊す恐れがあるので、冷たい水を少しずつ口に含んで時間をかけて飲み干す。

しばらく行くと吉野川大橋のたもとの5km地点第1関門に着く。ここでのラップも、ほぼ同じで6分ちょっとだ。快調に走れている。て言うか、快調って言えるほどの速いペースでは決してないが、同じペースを維持できているってのが嬉しい
と思ったのに、次の6km地点では10秒ほど遅くなっていた。しかし、去年、気付いた事だけど、このマラソン大会の距離表示には疑惑を感じている。同じペースで走っているつもりなのに、上下の変動が激しいのだ。極端な区間では、プラスマイナスで1分も変動したりする。坂も無ければ風も無いし、立ち止まったりもしていないのに、いくらなんでも1kmで1分も変動するって、絶対にあり得ない。しかも去年と一昨年の記録を比べてみると、区間による上下の変動が寸分の狂いも無く見事に一致していたのだ。つまり、去年も一昨年も距離表示が同じように狂っていたのだと思う。なので、今年は1kmごとのタイムの変動には一喜一憂しないことにした

そのまま同じペースで走っていると、吉野川橋をくぐった所にある次の7km地点では、再び6分ちょっとのペースに戻った。
今日は序盤から抑えて走る作戦なので、最初からウォークマンを付けて走っている。ハーフマラソンなら最初から最後まで真剣に走るので、ウォークマンなんか不要だが、フルマラソンは長くて途中で飽きてくることも多く、しかも終盤、痛い足を引きずって歩くようになると、ウォークマンでも聴いてないと止めたくなるのだ。それでも、たいていは後半から聴き始めるんだけど、今日は最初から抑えて走るので、もしかして前半から退屈するかもしれないので、最初から付けている。ただ、今のところ、ゆっくり走っていても気持ちの良いペースで走れているので、スイッチは入れていない。

次の8km地点でも同じく6分ちょっとのペースで、その次の9km地点でも、ほんの少しだけ遅くなったが、距離表示を信用してないので気にしない。相変わらず、とても自然なペースで走っている。決して無理はしていないので、走っていて楽しい
しばらく行くと第2給水所が現れたので、再び素早く水を取る。どんなに喉が渇いてなくても、今日はことごとく少しずつ水を補給していく予定だ。しかも非常に素早く、ほとんどタイムロス無しに水を取れているので充実感がある。

次の10km地点では、時計を見てびっくり。なんとラップが一気に30秒も速くなっている。いくら給水のタイムロスが無かったとは言え、30秒もペースアップしているはずがないので、これも距離表示の誤差だろう。基本的に、5kmごとの距離表示は正確だろうと思う。なぜなら5kmごとにタイムの計測器が設置されているからだ。それ以外の地点は看板が突っ立っているだけなので、信用できない。なので、5kmごとのタイムを見て現状を把握しなければならない。ここまでの10kmの合計タイムから計算すれば、このままのペースを維持できれば目標の4時間半はクリアできる。ただ、あんまり余裕は無い。とは言え、最初の3kmはタイムロスが多かったので、それを差し引くと、若干の余裕はありそうだ。

次の四国三郎橋を越えたところの11km地点では、ラップは再び6分ちょっとに戻った。ま、こんなところだろう。さらに次の12km地点でも、同じようなペースで、相変わらず気持ち良く走れる
ただし、この気持ち良く走れている状態ってのは、必ずしも体調が良いだけとは限らない。決して力んではいないつもりでも本番でアドレナリンが噴出しているせいで本来よりはオーバーペースになっている可能性もある。いくら体感的にはすごく自然に走れていても、油断はできない。とは言え、今日は決して速いペースでも無いので、これでオーバーペースって事はないだろう。このまま行けるところまで6分ちょっとのペースを維持しよう。

しばらく行くと、名田橋のたもとの第2関門第3給水所がある。ここには水以外に氷砂糖なんかもあり、糖分を捕球する。レース中の氷砂糖は、とても美味しい。味が純粋で素直で喉に優しいし、飴玉と違ってベタつかずサラサラしていて食べやすい。風は相変わらず完全に無風で、暑い。汗が流れ落ちる。例年、4月に開催されてきた徳島マラソンだけど、こんなに暑かった事は無かったような気がする。これが3月だなんて信じられない。完全に暑さとの戦いになってしまった。給水所で水分を補給しても、すぐまた欲しくなる。
その直後の13km地点で確認すると、ラップは6分を切っていてちょっと速いが、給水所があったのにペースアップしているはずはないので、やはり距離表示の誤差だろう。

次の14km地点では相変わらず6分ちょっとのペースだったけど、その次の15km地点では、なんといきなり6分半にペースダウンしていた。いくらなんでもあり得ないペースダウンなので距離表示に問題があるのだろう。しかも、ここはやはり5kmごとのタイム計測器設置場所だ。誤差の発生メカニズムが分かった。どうやら1kmおきの距離表示は、かなりいい加減なため、どんどん誤差がたまっていくが、5kmごとのタイム計測器設置場所のタイムは正確なため、そこで誤差が一気に出てくるのだ。なので、5kmごとのタイム計測器設置場所での直前の1kmラップは信用してはいけない。その代わり、5kmごとのラップは正確だと思われる。10km地点から15km地点までの平均ラップは1km6分ちょっとで、良いペースを維持できているので安心した。
14kmで全体の1/3なので、15kmを快調に走れたと言うことは、この先どうなっても、今日はなんとか完走できそうな気がする。まだ残りが27kmもあると思うと気が遠くなるけど、そういう事は考えないようにする。

まだまだ元気溢れる力強い走りを見せる幹事長

15km地点を過ぎてしばらくすると、吉野川の対岸からスピーカーのアナウンスが微かに聞こえてくる。吉野川の川幅は1kmくらいありそうだけど、遮るものが無いから聞こえてくるのだろう。よく見ると、どうやらトップのランナーが対岸を反対方向に走っているように見える。あまりの速さに驚くけど、彼らとは住む世界と言うか走る世界が違うので、気にはならない。

その後も、16km地点、17km地点、18km地点、19地点と、上下変動2〜3秒の驚異的な正確さで1km6分ちょっとの一定ペースで走り続ける。まさにランニングロボットと言ったところだ。こういう正確無比なペースを維持できていることからしても、やはりタイム変動の大きい区間は距離表示がおかしいのだろう。
19km地点の直前の六条大橋のたもとにある第3関門には第4給水所があり、ここでも水を取る。どこの給水所でも手前にスポーツドリンクがあり、その後に普通の水がある。通常なら、どちらか1つを取るところだが、今日は暑くて汗まみれで喉が渇くので、スポーツドリンクを飲んでから、さらに水も飲んで口の中をさっぱりさせる。
まだまだ前半なんだけど、今年は既に歩いている人が目に付く。ここで追い抜くってことは、かなり前方からスタートした、かなり速いランナー達のはずなんだけど、それがトボトボと足を引きずって歩いている。これは暑さのせいだろうか。暑いにもかかわらず、普段と同じようなハイペースで飛び出したため、結果的にオーバーペースになってしまったのだろう

次の20km地点では、再び一気にペースが落ちて6分半をオーバーしている。しかし、ここは問題の5kmごとのタイム計測器設置場所だ。ここまでの誤差が一気に出てきているのだろうから、気にしない。ただ、ここまで誤差が蓄積されてきていたってことは、この5kmのペースはちょっとだけ落ちているって事だ。しかし、まあ、まだ1km6分ちょっとだから安心だ。

まだまだ足に疲れは感じないまま高瀬橋のたもとをすぎて21km地点に来た。ほんの少しずつペースダウンしているけど、まだまだ6分ちょっとの範囲内だ。21kmまで来れば、もう半分だ。これは精神的に大きい。半分てことは、まだまだハーフマラソンと同じ21kmが残っているから、そう考えると絶望的な気分になるけど、「もう半分終わったのに、まだまだ走れる力が残っている。これなら42kmも走れるかも」って思えば随分、気が楽になる。この期に及んで「完走できれば良い」っていう発想があること自体が情けないと言えば情けないが、フルマラソンの場合は、いくら常に自己ベスト、あわよくばサブ4を狙っているとはいえ、まずは完走する事が最低限の目標なのだ。今日の余力具合からいけば、少なくともあと10kmは歩かずに走れるだろう。
21km地点には第5給水所がある。この辺り以降の後半は、給水所の数が多くなり、ここまでは4〜5kmおきだったのが2〜3kmおきに配置されている。第4給水所があったばかりだが、今日は暑くて喉が渇いているので、ここでも迷わずスポーツドリンクを飲む。さらに、ここにはソイジョイもあったので、そろそろお腹も空いてきたので、もらって頬張る。

次の22km地点でも同じペースを維持できている。次の23km地点では、誤差なのかどうか少しペースが落ちている。1kmごとのラップに一喜一憂はしないものの、さらに次の24km地点でもペースダウンしていく。さすがにそろそろ、ジワジワと足が重くなりつつあるし、ペースダウンしても不思議ではない。ただ、ペースダウンの仕方は緩やかなので、このままのペースダウンぶりを続けていけば、なんとか4時間半は切れそうだ。

ここで、ようやく折り返し西条大橋となる。西条大橋に上がって、びっくり。例年なら、ここまでは西風が向かい風になって、ここでようやく追い風に変わってホッとするところだけど、なんと今日は、ここで向かい風となる。今まで無風だと思っていたのは、実は追い風だったのだ。考えてみれば、走っているのに完全に無風状態ってことは、追い風だよなあ。こんな風向きの事は珍しいので予想もしてなかった。いきなりの向かい風は走りにくい反面、今まで暑さに苦しんでいたのが一気に涼しくなり、その点では良かった。

西条橋を渡り終えると、第4関門第6給水所があり、25km地点となる。ここは問題の5kmごとのタイム計測器設置場所だが、1kmラップは大きな変動も無く、相変わらず少しだけペースダウンしている
西条大橋は折り返しなんだけど、距離で言えば既に25kmも走っており、半分を大きく超えて、なんとなくレース終盤に入ったような気分になれる。まだ17kmもあると思ったら悲しいけど、それを考えなければ、精神的には「峠を越した」ような気分で、あとはもう逃げ切りだ。
調子が悪くて無理している時は、ここまで来れば目的を半分以上達成したような気分になり、気持ちが切れて精神力は緩んでいき、これ以上頑張ろうと言う気が急激に失せていくが、今日は調子が悪くないので、ますますやる気が沸いてくる

ただ、やる気とは反対に、ここからはペースダウンの度合いが激しくなっていく26km地点でのラップは6分半を越えてしまい、距離表示の誤差だと良いなって思っていたら、次の27km地点では、さらに悪化している。これはもう距離表示の誤差ではなく、明らかなペースダウンだろう。過去の実績では、どんなに調子が良かった時でも、25kmを過ぎるとジワジワとペースダウンしていくのが常だ。今年も含めて調子が悪くなければ、25kmまではそんなにペースダウンすることなく、ある程度のペースは維持できるのだけど、25kmを越えると、どうしてもペースダウンしてしまう。そして、ペースダウンが緩やかか激しいかで結果が違ってくるのだ。そういう意味で、ペースダウンそのものは避けがたいようだが、このまま緩やかなペースダウンでとどめたいところだ。

さて、この27km地点では大きな選択をしなければならない。何かと言えば、ここにある第7給水所には、徳島マラソンで一番の楽しみであるそば米汁半田そうめんの接待があるのだ。調子が悪い時は、ここで本格的に休憩し、そば米汁と半田そうめんをしっかり食べて、くつろぎ、元気回復して再び走り始める。ただ、元気回復して走り始めたつもりでも、数kmも走らないうちに、再び力尽きることになる。なぜかと言えば、27kmも走った地点で、しゃがみ込んでそば米汁と半田そうめんなんか食べてくつろいだりしたら、足がすっかり終了モードになってしまい、再びレースに参加するなんて不可能な状態になるのだ。もう絶対に回復することはない。いくら頑張ろうと思っても、足が言う事を聞かないのだ。
なので、いくら徳島マラソンで一番の楽しみと言えども、ここで本格的に休憩するかどうかは、難しい判断なのだ。今年で7回目となる徳島マラソンだが、今まで、ここで休憩せずにそば米汁と半田そうめんを食べなかったのは、5年前の第3回大会昨年の第7回だけだ。いずれも、ここまで結構、快調なペースで走り、自己ベストを更新できると思って、給食を全てパスして走ったのだ。そこまでして頑張ったのに、その後は結局、いつものように大幅にペースダウンして平凡な記録に止まったが、一応、いずれも、その時点で大会自己ベストは達成できた。
で、今日はどうしようかと悩むところだが、ここまでなんとか大きくペースダウンせずに走ってこれて、このままでいけば自己ベストの更新もまだ可能なので、楽しみにしていたそば米汁と半田そうめんをパスして、給水もそこそこに走り続ける。お腹の方も、菓子パンをやめておにぎりにしたうえ、下痢止めも飲んで万全の対応を取ったおかげか、今日は今のところお腹を壊す予兆は無い

しかし、去年と同じく、せっかく給食を完全にパスして走っていると言うのに、その後のペースの落ち方はひどく、28km地点、29km地点着実にペースダウンが続いていく
28kmを過ぎると、もう2/3も終わった訳で、残りは1/3だ。まだ14kmも残っているんだけど、さすがにここまでくると終盤モードだ。

30km地点の手前の六条大橋のたもとにある第5関門第8給水所では、バナナやパンなど給食も充実しているんだけど、去年に続き、今回も水を飲んだだけで、食べ物は取らなかった。給食を取る時間が惜しいっていうより、だんだん足が重くなってきて、給食を取りに行くのが面倒になってきたのだ。一度、立ち止まると、再び走り始めるのが大変そうな気もするし。お腹は空いたけど、今さらエネルギー補給しても消化して吸収する前にゴールしてしまうだろうし。

ところが、そこまでして頑張っているのに、30km地点のタイムは、愕然とするほど悪くなっている。なんと1km7分を大きく越えている。ここは問題の5kmごとのタイム計測器設置場所だから、累積した誤差が一気に出てくるからだけど、それにしても危機的なタイムだ。ここまでペースダウンすると、さすがにもう4時間半は厳しくなってきた。ここでペースダウンを食い止めればいいけど。

多少、気合いを入れたせいか、次の31km地点は少しだけペースが上がったけど、それも束の間で、次の32km地点では再び7分を越えてしまい、このままでは4時間半は絶望的となった
足はまだまだ痛くなくて、その点は救われるのだけど、確実に足は重くなっている。一生懸命足を出しているつもりなのに、あんまり前に出ていない。明らかに僕を追い越していくランナーが多くなっている。みんながペースアップしたとは考えられないので、僕がペースダウンしているのは間違いない。

天気は雲が無い晴天が続き、日焼けしているような気もするけど、向かい風のため、暑くはなくなった。暑くないどころか、だんだん体が冷えてきたような気もする。腰に巻き付けた長袖を再び着ようかなあなんて思ったりもするけど、着てしまえば暑くなるような気もするし、走りながら着替えるのも面倒なので、もうちょっと寒くなるまで我慢する。
ちょっと肌寒くなってきたとは言え、喉はまだ乾き続けていて、第9給水所でも水を補給する。ここにもソイジョイがあり、欲しいなと思ったけど、足が重くて取りに行くのが面倒で、パスしてしまった。

次の33km地点では、遂に1km7分半を越えてしまい、大会自己ベストも絶望的になる。足の重さを考えると、この先、さらにペースが落ちる事はあっても、ペースを上げるのは不可能だろう
さらに34km地点でも悪化し、次の35km地点では遂に一気に1km8分半を越えてしまった。ここも問題の5kmごとのタイム計測器設置場所だから、累積した誤差が一気に出てきているんだろうけど、それにしても一気に8分半だなんて、もう歩いているようなスピードだ。確かに、周囲を見ると、どう見ても歩いた方が早いだろうっていう遅いペースのランナーが次々と僕を追い抜いていく。て事は、僕のペースは、歩くよりも遅いってことか。ただ、今日は一方で、歩いているランナーも大量にいて、トボトボと歩いているランナーよりは僕の方が早いので、追い抜かれるだけでなく、追い越すランナーも多い。ま、大して慰めにはなりませんが。

名田橋のたもとにある第6関門第10給水所でも水を飲む。ここまで来て脱水になることは無いだろうし、体も少し冷えてきているが、それでも汗はかいているらしく、喉は渇く。て言うか、何か飲んでリフレッシュでもしないと走る意欲が切れかかっている。カツなんかもあったけど、さすがにカツを食べる気力と言うか元気は失せてしまった。

ただ、歯止め無く下がっていくペースに危機感が高まり、次の36km地点でのタイムは、なんとか頑張って7分半程度にまで持ち直した。しかし、それも束の間、次の37km地点では、またまた1km8分のラップとなった。
この辺りから、「37km」といったスタートからの距離表示と、「ゴールまで5km」といった距離表示が入り乱れてきて、混乱する。時計で計測しながら頭で必死で計算すると、次の四国三郎橋のたもとの38km地点でのラップは再び7分半くらいのペースに上がっている。ただし、疲れた頭なので、計算があっているかどうか分からない。
でも、7分を大幅に越えたペースでは、自己ベスト更新も完全に不可能になっていて、モチベーションの低下は甚だしい。あまりのタイムの悪さに、本当にこんな遅いペースで走っているのか時計を疑いたくもなるが、自分の足を見ると、ほとんど前に出ていないし、ほとんど地面から上がってもいない。まるで、すり足で歩いているような足取りだ

それでも、今日は去年に引き続き、まだ足が痛くならない。疲労がひどく足が痺れて動きにくいが、少なくとも痛くはない。痛くないから、なんとか走り続けられる。もちろん疲労が極限に近くなっているので、歩きたい気持ちも大いにあるが、痛くなければ精神力で歩きたい気持ちを抑えることができる。ほんの小さな緩やかな坂でも、終盤になると、周囲のランナーは大半が歩いているが、なんとか歩かずに走り続けることも可能だ。ペースは歩いてもほとんど同じなので、無理して歩く意味は乏しいんだけど、「最後まで歩かずに完走したよ!」と言えるために、無理して走る。それだけが走り続けるモチベーションと言える。
それに、足が痛くないから気を紛らす必要が無くて、結局、最後までウォークマンは聴かなかった

ただ、ここまでペースダウンしてくると、もはやランニングと言うよりウォーキングに近い運動量になり、身体から熱が発生しなくなり、身体が冷えてくる。今日は良い天気で暖かいとはいえ、後半はずっと向かい風だし、だいぶ体が冷えてきた。それでも長袖シャツに着替えるのは面倒くさいので、あと数kmなので半袖Tシャツのまま走り続ける。

四国三郎橋のたもとの辺りで、ようやく吉野川の本流の堤防を降りたんだけど、ここにある第11給水所のすぐ先には、いつものようにJALのエイドがあり、キャビンアテンダントの制服姿お姉さん達が飲み物を渡してくれる。飛行機の機内で配っているキウイジュースだ。今日は全ての給水所で水分補給をしてきたので、もう喉は渇いていないが、美味しそうだったので、これも頂く。すると、これまでのスポーツドリンクとは違って、濃厚な味で美味しくて、疲れた体が蘇るような気分だ。
その後は、ちょこちょこと道を曲がり、鮎喰川という支流の堤防に移る。もう残り4kmと思うと、一気にスパートしたくなる。当初の予定では、残り5km辺りでラストスパートする予定だった。しかし、もう足が限界だ。4kmもスパートできる力は残っていない。なんとかペースダウンを食い止めるのが関の山、と言いたいところだが、ペースダウンは著しく、第7関門の直後の39km地点では、再び8分半の超スローペースとなった。

さすが、いくらペースダウンし続けてきたと言っても、歩かずに走り続けている限り、ペースダウンも限界にきたようで、これ以上の悪化はないのだが、次の40km地点もほぼ同じラップだった。これ以上ペースダウンはしないだろうとは言え、最終的なタイムがどれくらい悪くなるのか疲れた頭では計算したくないほどのペースだ。
もちろん、5時間を超えるようなタイムになるのは避けなければならない。どこも故障してないし、暴風雨でもないし、最後まで完走して5時間だなんて、恥ずかしくて表を歩けなくなる。しかし、さすがに、あと全部歩いたとしても5時間を超えることはないだろうから、その不安はない。ふと、ゾウさんの顔が頭を横切るが、5時間ギリギリでなければゾウさんに負けることもないだろう
て事で、やはり後は、単に「一歩も歩かずに完全に完走した」と胸を張ることだけがモチベーションだ。

さすがに、もう残り2kmになると、精神力でスパートできるかと思ったけど、やっぱり無理で、全然スパートできない。これは精神力をもってしても足の疲労はカバーできない、っていうのではなく、何の目標も無くなってダラダラ走っているだけなので、そんなに精神力が沸いてこないからだ。41km地点でのラップは、なんとか7分半程度にまでペースアップしたが、そんな遅いペースではスパートとは言えないだろう。
41km地点を過ぎたところに最後の第12給水所があるが、さすがに、ここではもう水は取らない。

そして、本当に最後の最後、残り1kmとなったところで、さすがに気合いを入れようと思って、自分で自分に「残り1km!」って大きな声で叫んだら、少しは気合いが入り、確実にペースアップした。そして、大通りに出てゴールの陸上競技場が見えてきたら、一段とペースを上げることができ、最後はちゃんと走れた。こんなにちゃんと走れるんだったら、もっと手前からちゃんと走りたいところだが、誰かとつばぜり合いでもしていれば良いんだけど、一人で目標も無くダラダラ走っていると無理なのだ。本当にマラソンはメンタルなスポーツだ
て事で、最後は足をひきずっているランナー達をごぼう抜きにして陸上競技場に入り、一気にゴールしたおかげで、久しぶりに1km6分台のペースでゴールしたが、最後だけあがいても焼け石に水で、ゴールのタイムは言うのも恥ずかしい惨敗ぶりだった

力強い走りで圧勝した幹事長

最後まで歩かなかった上に、最後の1kmは一応、スパートしたにもかかわらず、ゴールした後も足が平気だ。昔はフルマラソンなんか走った後は、ゴールしたら足が痛くて動けなくなったものだが、最近は、どうしても余力が残ってしまってて、ゴールしても平気で歩けてしまい、それが情けない。終盤、足がどんどん重くなって、どんどんペースが落ちていったんだけど、最後の1kmはスパートできたってことは、本当は余力が残っているってことだ。精神をコントロールして、そういう余力をなんとかうまい具合に引き出せれば、全力を使い切って良いタイムが出るだろうし、ゴールした後は足が痺れて動かなくなるだろう。タイムは悪いし、余力が残っているっていう状態だと、不完全燃焼感が満ちあふれて、達成感が乏しい



ゴールすると、そのまますぐに記録証完走メダルを受け取るようになっている。パッとしない記録証をもらった後は、例年のように万歳おばちゃん達の万歳三唱サービスを受ける。タイムは悪いとは言え、ま、一応、完全に完走したから、そういう意味での達成感はあり、一緒に力一杯声を出して万歳したら、気持ち良くなった。これって、端で見ているとアホみたいだが、自分がやると本当に気持ち良い。

足は平気なので、休まずに、まずは手荷物を受け取りに行く。手荷物受け取り場所へ向かっていると、ボランティアの高校生達が、はるか遠方から選手のゼッケンを確認して、大急ぎで走って手荷物を持ってきてくれる。他のマラソン大会ではあり得ないようなキビキビした動きで、感動もののサービスだ。徳島マラソンはボランティアやスタッフのサービスが本当に素晴らしくて気持ち良い
手荷物を持って再びゴール地点の近くの万歳おばちゃんのサークルの側に座り込み、他のメンバーを待つ。

結局、平凡と言うより、むしろ惨敗に近いタイムだった。去年も終盤に極端にペースダウンしたため平凡なタイムではあったが、なんとか大会自己ベストは更新できた。でも今日のタイムは、屈辱の5時間オーバーは免れたとは言え、悲しい結果と言えよう。しかも、最後まで一歩も歩かずに、給水所でも立ち止まらずに、完全に完走したにもかかわらず、こんなひどいタイムだ。去年、思ったのは「最後まで歩かなかったら、そんなにひどいタイムにはならない」って事だった。それなのに、最後まで一歩も歩かなかったのに、こんなひどいタイムが出てしまった。つまり、歩かなかったとは言え、スピードは歩くようなノロノロだったって事だ。悲しい。悲し過ぎる。

とは言え、最後まで足が痛くならなかったのは朗報だ一昨年の大阪マラソンで開眼し、去年の徳島マラソンで確認できた事だけど、前半で欲を出さずに徹底的にペースを抑えて走れば、最後まで足は痛くならないってことが3回連続で証明された。これは、もう真理と言っていいだろう。足が痛くなっても、なんとかマシなタイムを出すのと、悲惨なタイムでも最後まで足が痛くならずに完走できるってのと、どっちが良いかと聞かれれば、タイムは悪くても足が痛くならない方が良い。最後まで足が痛くならずに済むと、少なくとも辛くはない。走っている途中で、フルマラソンに出た事を後悔したりすることはない。また出たいと思うようになれる。どんなにタイムが悪くても、フルマラソンを一歩も歩かずに完走できたってことは、それだけで嬉しい事だ

て事で、悲惨なタイムにもかかわらず、なんとなく充実感に浸って、のんびりくつろいでいると支部長から電話がかかってきた。まだ私がゴールしてから5分くらいしか経っていない。てっきり5時間オーバーになると思っていたのに、支部長にしては、えらく早いような気がする。すぐに支部長が現れたが、なんと、もうすっかり着替えも済ませている

(幹事長)「うわ、むちゃくちゃ早いやん!何があったん?」
(支部長)「はるか昔に帰ってきたで。車で」


なんと、支部長は途中で足が動かなくなり、20km辺りでリタイアしたそうだ3年前の暴風雨の中での第5回大会で私が途中リタイアした時は、リタイアバスがなかなか来ず、結局、回収されて競技場に戻ってきたのはみんながゴールした後だったけど、あの当時から比べたらリタイア回収システムが大幅に改善されているようで、支部長は真っ先に帰ってきていたのだ。

(幹事長)「どしたん?前半で飛ばし過ぎたんと違う?」
(支部長)「いやいや、前半から抑えて走ったんやけどな」


ゾウさんやピッグが良いペースで走っているのも気にせず、かなり抑えたペースで走っていたにもかかわらず、20km過ぎた頃から足が動かなくなって、あっさりリタイアしたのだそうだ。

(支部長)「ま、私ら、リタイアに対する抵抗感ってのは無いからな」
(幹事長)「ほんとほんと。一度リタイアを経験すると、なんのためらいもなくリタイアできるもんな」


私も3年前の徳島マラソンだけでなく、瀬戸内海タートルマラソンでも弘前アップルマラソンでも途中リタイアした事がある。残り数kmってところまで来れば、後は歩いてでも帰ろうっていう気持ちも起きるけど、30kmより手前で足が痛くなったら、リタイアするに限る。それ以上、頑張っても辛いだけで良いことはない。

(幹事長)「勇気ある撤退やな」
(支部長)「勇気ある撤退ですがな」


なんて和んでいたら、突然、ゾウさんが現れた

幹事長に続いて快走ゴールしたゾウさん

(ゾウ)「幹事長さん、どうでしたっ?」
(幹事長)「えっ?なんでゾウさんが居るの?」


まだ私がゴールして10分も経ってない。まさかゾウさんもリタイア?いやいや、ゾウさんは手に記録証を持っている

(幹事長)「えっ?もうゴールしたん?」
(ゾウ)「えへへ。去年より良いタイムでしたよ」


記録証を見ると、なんと私と僅か4分差だ

(幹事長)「げげげげーーーーーっ!危なーいっ!」
(ゾウ)「うわあ、あと少しだったのかあ。私、走ってる途中でトイレに行ったんですよ。あれが無かったら、もっと肉薄していたはず」
(幹事長)「ひえ〜っ!危機一髪!」


本当に危ないところだった。ハーフマラソンの丸亀マラソンに続いてフルマラソンでもゾウさんに負けるところだった。丸亀マラソンでも、終盤、大失速したとは言え、歩いた訳でも無いし、今日も終盤は大失速したとは言え、最後まで歩かずに完走したのに、こんなに迫られてしまったとは。終盤になって、ちょっとはゾウさんの事を意識したけど、まさかそんなに迫っているとは思わなかったので、全然、危機感が無かった。完全に油断していた。
冷や汗をかいていると、ピッグが戻ってきた。相変わらず涼しい顔をしている。

いつも陽気に走るピッグ

(幹事長)「ゾウさんに負けてるよ」
(ピッグ)「今日はもう仕方ないですね」


レース展開を聞くと、ゾウさんもピッグも、前半は私より少しだけ遅いペースをキープしたらしい。てっきり、大幅にリードできていたと油断していたけど、ちょっと後ろにいたらしく、大してリードできてなかったって訳だ。その後、ピッグは徐々にペースダウンしてゾウさんに離されたそうだが、ゾウさんはあんまりペースダウンせずに走り続け、私に肉薄していたって訳だ。もし彼女がトイレに行かなかったら、ほんと、危なかったぞ。

一方、ヤイさんはまだ姿が見えない。もしかしたら、ゾウさんみたいに既にゴールしているのかも知れない。って事で支部長が電話してみる。すると、すぐにヤイさんが電話に出た。

(幹事長)「てことは、やっぱり既にゴールしてる?」
(支部長)「ヤイさん?今どこ?え?あと5km?」


すぐに電話に出たから、てっきりもうゴールしてるのかと思ったら、あと5kmの地点を歩いているところだった。去年に続き、今年も足が痛くなって歩いているらしい。
なんとか頑張ってゴールして欲しいところだが、相変わらず天気は良くてポカポカしているので、半袖短パンのまま待っていても寒くなく、とても気持ち良い。

(幹事長)「お腹が空いたなあ。今日は給水所で立ち止まる時間も惜しんで、何も食べ物を貰わなかったから、お腹が空いたよ」
(支部長)「私は早々にリタイアして時間を持てあましたから、近所でカツカレー食べてきた」
(幹事長)「うどんのタダ券を貰ったやろ?うどんは食べてないん?」
(支部長)「それがなあ、リタイアした人にはくれんかったんよ」


ゴールしたら、すぐに、うどんのタダ券とフィニッシュカツをくれるんだけど、なんと無慈悲にも、リタイアした人には何もくれないんだそうだ。そりゃ完走メダルはくれなくても仕方ないだろうけど、うどん券くらいくれたらいいのに。
とにかくお腹が空いたので、さきほど貰ったカツを食べる。それでも物足りないので、受付した時にもらったお菓子も食べる。飲み物も、何度も何度もスポーツドリンクをもらいに行く。

しばらくするとヤイさんがゴールしてきた。疲れ果てたという感じでもない。

最後は余裕で走ってゴールするヤイさん

(幹事長)「何となく余裕が残ってますけど」
(ヤイ)「後半は足が痛くなって、結構、歩いたけど、あと5kmって地点で、最後くらいは走ろうと気合いを入れた瞬間に
     支部長から電話が掛かってきて出鼻をくじかれて、また歩いてしまいましたね」


歩きすぎて余裕が残っているのか。それでも去年よりは少し良いタイムだった。

みんなと一緒に走るって言ってた金哲彦さんは、最初はサブ4で走るって言ってたらしいけど、もっと速くて3時間37分でゴールしたとのことだ。軽く走ってこのタイム。50歳代でサブスリー挑戦を宣言しているらしいので、当たり前かもしれないけど、すごいよなあ。

十分すぎるほど休憩したので、立ち上がってうどんを食べに行く。コシのある讃岐うどんと違って、これ以上柔らかくしたら、ちぎれてしまって箸で持てないくらいの柔らかさだが、長距離を走って衰弱したお腹には柔らかいうどんが優しいし、暖かいうどんが非常に嬉しい。タダだし。
うどんを貰えない支部長は気の毒やなあ、なんて思っていると、すぐ側で「うどん券を無くしちゃった!」なんて困っている女性ランナーがいて、それをみたうどんコーナーのおばちゃんが「ゼッケン付けてるから、券が無くても構わんよ」なんて言ってうどんをくれている。

(幹事長)「おっ、券が無くても大丈夫そうやで。支部長もゼッケン見せてうどんを貰ったら?」
(支部長)「いやいや、もうゼッケンも外してるし、そこまでするのも情けないわ」



うどんを食べ終わり、シャトルバスに乗って臨時駐車場へ行く。今年も吉野川河川敷へは、順調にすぐ着いた。そして、3年連続で恒例のあいあい温泉に行く。さすがに3年目だったので、認知症の進んだ我々でも迷わずにたどり着けた。例年のように、駐車場はいっぱいで、温泉の中も結構、混雑していた。露天風呂で足を揉みほぐすと、気持ち良い。青森時代は、どこへ行っても温泉が沢山あったから、マラソン大会に出た後は必ず温泉に入って体を揉みほぐしていたが、マラソンの後の温泉は本当に気持ち良い。できることならビールも飲みたいところだが、運転する人もいるから我慢する。

温泉から出て大相撲中継を見ながら反省会を行う。

(幹事長)「タイムは良くなかったけど、今日も一歩も歩かなかったもんねーっ!」
(ゾウ)「私も一歩も歩きませんでしたよ!」
(ピッグ)「僕も歩きませんでしたね」
(ヤイ)「すんません。マラソンを舐めてました」


最後まで歩かなかったのは、足が痛くならなかったからだ。今年も最後まで足が痛くならなかったのが本当に嬉しい。それだけが収穫だ。

(ヤイ)「ところで今日もらった完走メダルやけど、これって何のイラストなんかいな?」
(幹事長)「みんな知らんと思うけど、これテレビでやってる
おへんろ。〜八十八歩記〜のキャラやな」

「おへんろ。〜八十八歩記」の女子高生キャラをあしらった完走メダル

「おへんろ。〜八十八歩記〜」とは、女子高生が3人で四国八十八ヵ所巡りをして遍路道を紹介していく番組だ。アニメと実写の合成になってて、ちょっと変わった番組だ。

(ピッグ)「幹事長、そなな番組見てるんですか?」
(幹事長)「ちょっとマニアックな番組やけどな」


この番組は香川、愛媛、高知の3県の民放と、徳島のケーブルテレビで放映されている。ただ、四国の人でも、この番組を見ている人が少ないと思われる。四国八十八ヵ所に関心があるアニメオタクなんて、そうそういないと思われるので、土曜日や日曜日の朝、こんな妙な番組を見てる人は少ないだろう。
それにしても、マラソン大会の完走メダルに、こういう萌え系のアニメキャラが登場するのは珍しい。なんでも徳島県知事の趣味らしい。

(幹事長)「そうそう、それから、途中でリタイアした人には、完走メダルの代わりに、同じキャラの残念タオルをくれるって言ってたけど、支部長もらった?」
(支部長)「え?そう言えば何かくれたかな?」


そうかあ、せっかくの貴重なタオルなのに、このアニメを知らない人には何の価値も無かったか。もったいない。



さて、次のレースは5月末のオリーブマラソンだ。例年なら徳島マラソンからオリーブマラソンまで1ヵ月しかないけど、今回は2ヵ月もあるので、ダレそうだ。

(幹事長)「2ヵ月も緊張感を持続するのは無理だよなあ」
(支部長)「いやいや、1ヵ月しか無ければ、フルマラソンを走った余力で練習せずに乗り切ろうと考えるから、結局、同じやろ」


確かに、これまでの長い実績から言えば、レースの間隔とタイムには何の関係も無い。金さんの本によると、フルマラソンの1〜2週間前にハーフマラソンを走れば、良い効果が期待できるとのことだけど。

(幹事長)「暖かくなってきたから、これからは自転車の季節やな」
(支部長)「ピッグも早く自転車を買わないといかんな」
(ピッグ)「どきっ」


〜おしまい〜




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