第9回 とくしまマラソン

〜 理解を超えた惨敗! 〜



2016年4月24日、第9回とくしまマラソンが開催された。
徳島マラソンは、レースの半年近く前に戦いが始まる

(ピッグ)「そんな前からトレーニングやってるんですかっ!」
(幹事長)「すまんなあ。飽きもせず4年連続で同じ突っ込みを入れてくれてありがとう」


〜 エントリー 〜


もちろん、半年近く前から始まるのは申し込みの戦いだ。徳島マラソンは今回で9回目だけど、8年前の最初の年から申し込みは大混乱がつきまとってきた。その背景には、昨今の異常なまでのマラソンブームがある。徳島マラソンの定員は年々、増強されてきたんだけど、それを上回るマラソンブームにより申込者が激増して、申し込み競争が激化してきたのだ。このため、徳島マラソンの申し込みは、第1回の時から混乱を極めてきたが、これについては毎年しつこく書いてきたし、最近はようやく落ち着いてきたので、もう書くのは止めます。

(ピッグ)「よかったです。また延々と8年前の状況から書くのかと思いましたよ」

ただ、落ち着いてきたって言うのは募集方式が落ち着いてきただけであり、申し込み競争そのものは、ますます激化の一途をたどってきた
最近は、申し込みの受付は夜の10時にスタートするんだけど、10時前からパソコンの前にスタンバイして、10時になった瞬間にパソコンのキーを叩いてランネットに入らなければならない。10時になった直後にエントリーボタンを押したつもりでも、キーを叩くのが一瞬でも遅れると、あっという間に長蛇の列ができてしまい、何十分も待たされることになり、待っている間に定員オーバーで受付終了になったりする。なので10時になった瞬間にキーを叩かなければならない。
それで去年は、試しに、ちょっとだけフライイング気味に10時になるほんの数秒だけ直前にボタンを押してみた。ところが、これが大失敗。そんな時にボタンを押したもんだから、一瞬でフリーズしてしまい、ウンともスンとも言わなくなってしまった。「こらヤバイっ!」って思って、慌ててブラウザーを立ち上げ直して、再び受付画面まで到達しようとしたんだけど、再び受付画面に入るまでに待たされてしまい、最終的にエントリーボタンを押して入力を開始できたのは10時10分くらいになっていた。なんとかエントリーできたから良かったものの、危険な行為だった。
その反省から、今年は事前に電波時計を使って手許の時計を超正確に合わせ、10時1秒になった瞬間にパソコンのキーを叩いた。そしたら、なんと、僅か2分待っただけでサイトに入っていけて、あっさりとエントリーできた。早速、勝利の連絡を他のメンバーにも送った。ところが他のメンバーからはいつまで経っても連絡が入らない。正確に言うと、D木谷さんからは、10時直前に「パソコンの前でスタンバイしています」という連絡はあったんだけど、その後の連絡が無い。おかしい。

実は今年は大きな安心材料があった。再び定員が大幅に増強されたのだ。去年は総定員10000人、うちインターネットでの受付が9000人だったのが、今年は総定員が15000人になり、うちインターネットでの先着順が13800人になった。ざっと1.5倍だ。これだけ増えると競争率はだいぶ下がるような気もする。でも、分からない。この大会は抽選じゃなく先着順なので競争率がどれくらいなのか分からないのだ。もし競争率が低かったのなら今年は楽勝で申し込めるけど、所詮1.5倍くらいじゃさばけないほどの競争率だったら、焼け石に水だ。
て事で、いくら定員が増強されても油断は禁物なので、メンバーには、前々から当日の直前に至るまで、しつこく周知していた。なので、よっぽどボンヤリしてない限り忘れるはずはないと思う。実は私自身、当日は仕事関係で、どうしても断れない飲み会があり、2次会への誘いを強引に断って、なんとか10時にギリギリ間に合うように帰宅できた。むしろ、だからこそエントリーを忘れるって事はなかったとも言える。以前、申し込み受付開始が夜中の12時だった頃は、酒飲んで食事しているうちにエントリーすること自体忘れてしまって、あやうく寝てしまうこともあったが、今日はちゃんと覚えていた。

それなのに、他のメンバーからはいつまで経っても連絡が無い。1時間近く経過した11時前になっても連絡が無い。去年は受付開始から僅か20分くらいで9000人の枠が埋まって受付終了になってしまい、ちょっと出遅れた人は申し込みできなかった。それを考えると、1時間も経った11時に連絡が無いって事は、もうアカンかったってことかも。
絶望的な気持ちになっていたら、支部長からようやく連絡が入る。やっと申し込めたのかと思ったら、なんと「まだ苦戦中」なんて連絡だ。まだエントリーできないらしい。もう絶対に無理やぞ。しかも支部長は自分の分だけでなく、いつものようにヤイさんや國宗選手やゾウさんの分も一緒にグループエントリーすることになっているから、一網打尽に全滅だ。
暗澹たる気持ちになっていたら、11時を過ぎてからD木谷さんからメールが届く。ドキドキしながら見ると、ようやく繋がって申し込み完了したとの事だった。良かったあ!でも、10時前からスタンバイしていたのに1時間も待たされた事にも驚いたが、それでもまだ受付できた事にも驚いた。今年は一体どうなってるんだ?
少なくとも、これで一人寂しく参加って最悪の事態は免れたと一安心していたら、11時10分頃になって、ようやく支部長から「なんとかエントリーできた」っていうメールが届いた。良かった良かった。ほんとに良かった。

それにしても、こんなに時間がかかるのは一体何があったんだろう?実は私は自分のエントリーが例年になく簡単に済んだので、その後も試しにエントリーサイトを覗いたりしていた。すると、混雑は徐々に緩和されていき、11時前には、すぐに入っていけるようになっていた。だからこそ、D木谷さんや支部長が苦戦したのが不思議だった。
事情を聞くと、D木谷さんはスマホでアクセスしていたらしい。また支部長もタブレットパソコンでアクセスしていたとのことだ。徳島マラソンのホームページを見ると、注意書きとして

・スマートフォンでのエントリーはオススメできません。RUNNET推奨環境外のため、機種やブラウザ、通信環境によって正常に動作しない場合があります。
・携帯電話でのエントリーはオススメできません。回線の都合上、つながりにくくなる可能性がありますので、パソコンでのエントリーをオススメします。


なんて書いてあった。そうだったのか。パソコンでやらないと問題があったんだ。なんとかエントリーできたから良かったものの、危ない橋を渡っていた訳だ。
さらに注意書きには

・グループエントリーはオススメできません。インターネット申込は短時間で終了することが予想されます。グループ申込は記入事項が多くなり、入力している間にエントリーが終了してしまう可能性があります。

などとも書いている。支部長はダブルで危険な行為をしていた事になる。おお、こわ!

なんとか一安心はしたが、ピッグからはまだ連絡が無い。そう言えば彼も飲み会があるって言ってたような気がする。もしかしてエントリーできなかったかもしれない。
ただ、徳島マラソンはインターネットのエントリーに失敗しても、まだ可能性は残っている。定員のうち1000人分は振替用紙での受付なのだ。これは先着順じゃなくて抽選であり、たしかピッグはかつて一度、インターネットの申し込みには失敗したけど、郵便振替の抽選に当たって参加した事があったはず。でも、2回も当選するかなあ、って思ってたら、なんと今年は、飲み会でエントリーできそうになかったので、支部長が彼の分もグループエントリーしていたことが判明。何はともあれ、良かった良かった。

残るは、スペインに出張中の小松原選手だけだ。こっちの夜の10時は、スペインでは昼の2時で、仕事中なのでエントリーできないかもしれないっていう連絡が来たが、今回の状況なら、スペインで夜になってから申し込んだのでも間に合ったのではないかと期待する。

(ピッグ)「それにしても、半年も前の出来事を、よく細部まで覚えてますねえ」
(幹事長)「何を言ってるんや。今は、その半年前やぞ」
(ピッグ)「えっ?今って、まだ12月なんですか?てっきり4月末かと思ってました。そんなに前から原稿を書いてるんですか?」
(幹事長)「そやで。計画的やろ?だから徳島マラソンはレースの半年近く前に戦いが始まると言うただろ」


ただ、いくら定員が1.5倍に増強されても、去年は20分で終了してたんだから、今年は30分くらいで終了してもおかしくないはずだ。なんで1時間以上も経過してエントリーできたんだろうって不思議に思っていたら、1.5倍に増強されたため、なんと今年は、その夜のうちには定員いっぱいにはならなかったらしい。つまり、D木谷さんや支部長がサイトに入るのに1時間以上もかかったのは、単にスマホやタブレットでアクセスしていたからであり、まだまだ受付自体は大丈夫だったのだ。
結局、13800人の定員がいっぱいになったのは、翌日の午前11時39分だったようだ。受け付け開始から2時間後の夜中の12時までに申し込んだのは12000人程度だったとのことで、去年までは、この12000人が激しく争って悲喜劇を生んでいたが、今年は熱心なランナーは全員がエントリーできたって訳だ。てことで、時差のあるスペインに出張していた小松原選手も、仕事が終わって夜になってからでもエントリーできたとの連絡が入った。

もしかしたら、参加費が去年から一気に2000円も値上がりして9000円になった影響もあるかもしれない。ちょっと前の感覚から言えば、マラソン大会ごときに10000円近くも出すなんて高い。高すぎる。かつては、マラソン大会の参加料なんて3000円が相場だった。それがだんだん高騰していき、大都市のメジャーな大会は軒並み10000円を超えるようになってきた。東京マラソンや神戸マラソンは10810円だったし、大阪マラソンは11800円、京都マラソンは12000円もする。そして、この徳島マラソンも年々参加料が高騰を続け、遂に今年は9000円になったわけだ。確かにマラソン大会は経費がかかるだろうとは思うけど、タオルやTシャツやお弁当までくれて4000円の瀬戸内海タートルマラソンのような例もあるので、少し釈然としない。

このように、定員増強の影響やら参加料高騰の影響で、エントリーの競争率はだいぶ緩和されたんだけど、エントリーサイトであるランネットへの繋がりにくさは、まだまだ解消されていない。一気に殺到するから、仕方ないのかなあ。

(支部長)「ほんと、今年は手間取り過ぎて絶望的な気持ちになったなあ」
(幹事長)「結果的にはセーフだったけど、普通のパソコンでやらんと危なすぎるなあ」
(支部長)「無事にエントリーできたから、もうこれで完走したような達成感があるわ」
(幹事長)「もう本番なんか、どうでもええような気になるわな」


まったく本末転倒だが、なぜ徳島マラソンの人気がこんなに高いのかと言えば、坂がほとんど無くて、とても走りやすいフルマラソンだからだ。今や日本中、至る所でマラソン大会が行われているが、フルマラソンでフラットなコースってのは意外に少ない。日本は山が多いから平坦なコースを片道21kmも確保できる場所は少ない、って事ではなく、交通規制の問題だ。21kmの平坦な道なんて、いくらでもある。ハーフマラソンではメジャーな大会になった丸亀マラソンだって、折り返し点を坂出から高松まで延長すればフルマラソンが行えるけど、ああいう幹線道路を長時間、交通規制してフルマラソンを開催するのは容易ではない

東京都知事や大阪府知事みたいに絶大な権力を誇る政治家なら、警察も文句を言えないから、都心のど真ん中でマラソン大会を開催できる。去年初めて出た神戸マラソンも、大半が街中のフラットなコースだったが、知事の力が強いのだろう。しかし知事の力が強くない地方では、そう簡単にはいかない。香川県内では、交通量の少ない小豆島で行われる瀬戸内海タートルマラソンが唯一のフルマラソンだ。小豆島に限らず、交通量の少ない山間部や島嶼部なら大がかりな交通規制をしなくても42kmのコースを確保するのは比較的簡単だから、多くのマラソン大会がそういうコースで実施される。ただ、当然ながら、そういう場所では、どうしても坂が多いコースとなってしまう。なので、坂がほとんど無い徳島マラソンは、我々にとって、大変貴重なレースなのだ
なぜ山間部でも島嶼部でもない徳島でフルマラソンの開催が可能なのかと言うと、吉野川という真っ直ぐな大河川があるからだ。この川の堤防の上をコースにすれば、大して交通規制をしなくてもフラットで真っ直ぐなコースを確保できるのだ。このように、徳島マラソンはコースとして魅力的なため、昨今のマラソンブームのせいで参加希望者が激増しているのだ。我々としても、同じ県内だけど船で行かねばならない小豆島より、徳島の方が行きやすいから、とてもありがたいフルマラソンなのだ。

てな訳で、今年の参加メンバーは、私のほか支部長、ピッグ、國宗選手、ゾウ坂出、ヤイさん、D木谷さん、小松原選手、W部選手と言った顔ぶれになった。


〜 突然の欠場 〜


熾烈な申し込み競争を勝ち抜いて冬を越し、春も終盤になった2016年4月24日に第9回とくしまマラソンは開催された去年は4月に統一地方選挙があって忙しくなるからという理由で、例年より1ヵ月も早まって3月下旬に開催されたが、今年はいつものように4月下旬の開催となった。

4月下旬と言うと気候も暖かくなってきて、天気が良いと暑いくらいの季節だ。記録的には、もっと寒い時期のレースの方が良い記録が出やすいのだが、個人的にはフルマラソンの場合、終盤には足を引きずって歩く事も多く、そうなると寒い季節の大会は辛い。4月下旬になれば、トボトボと歩いてもそれほど寒くはないのでありがたい。そのため、本来は辛く厳しいフルマラソンも、なんとなく楽しみになってくる。

ところが今年もレースの直前になって國宗選手から連絡が入る。レースの直前に入る連絡は悪い知らせと相場が決まっている。特に國宗選手からはドタキャンの連絡に決まっている。分かり切っている。去年の徳島マラソン小豆島オリーブマラソン酸欠マラソンもそうだったし。

(國宗)「あのう、夜分遅くに済みません」
(幹事長)「ああ、はいはい」
(國宗)「実は、今度の徳島マラソンなんですけど・・・」
(幹事長)「ああ、はいはい」
(國宗)「あの、実は、急に出られなくなりまして・・・」
(幹事長)「ああ、はいはい」
(國宗)「えーと・・・」
(幹事長)「ああ、はいはい」
(國宗)「って、理由は聞かんのですかっ!」
(幹事長)「どうせ急な仕事が入ったとか何とか言うんやろ?」


ま、理由はともかく、國宗選手の欠場は2年連続だし、ことさら珍しいものでもない。

衝撃だったのはゾウさんの欠場だ
。ゾウさんは最近、めきめき力をつけてきて、私は負けが続いているのだ。今年に入ってから、1月の満濃リレーマラソンの2kmという短いコースでも初めて負けたし、2月の丸亀ハーフマラソンでも惨敗した。かろうじてフルマラソンだけはまだ負けてないが、去年の徳島マラソンでは僅か4分差にまで追い詰められた。グングン上り調子のゾウさんに対し、こっちは老化のせいで下り基調だから、今年は徳島マラソンでも負ける可能性が高まりつつあった。短い距離から長い距離まで、フルコースで女子部員に負けるとなると、さすがに恥ずかしくて外を歩けない。

(支部長)「H本さんにも、彼女がランニングを始めて僅か数年であっさりと抜かれたやないの」
(幹事長)「すんませーん!」
(支部長)「どっちにしても右肩上がりの彼女達と右肩下がりの私らやから、いったん交差したら二度と逆転はできんで」


てことで、ここはなんとか踏ん張らなければならないので、ゾウさんに負けない事が今回の最大の目標だった。この危機感が大きな大きなモチベーションだった。まさに恐怖と戦っていた。その彼女が欠場するなると、突然、目標を見失い、モチベーションが無くなってしまった。もうダラダラ走るのが目に見えている。

(支部長)「危機感は抱きつつも練習していた訳ではないから、どっちにしてもダラダラ走るんやってば」
(幹事長)「すんませーん」


この危機感を練習姿勢に反映させる事ができれば良いタイムも出るんだろうけど、どんなに危機感が強くても練習量を増やす訳ではないから、良いタイムが出る可能性は無い。ただ、それでも、レース本番になったら、危機感があれば遅いながらも最後までなんとか頑張れるが、モチベーションが無ければ、ちょっと辛くなったらすぐに歩いてしまい、とんでもない惨敗になる可能性が高まる


〜 徳島へ出発 〜


事前の天気予報では、レース当日の天気は曇りでイマイチだけど、気温は暖かいとのことだった。去年は3月開催だったにもかかわらず、4月下旬並の陽気になったため暑くなったが、今年は素直に4月下旬の陽気で、寒くなる心配は無さそうだった

大会当日は、去年は2台に分乗して行ったが、今年はピッグの車1台で行くことになった。まずD木谷さんを5時半に拾い、その後、支部長を拾い、私んちへ来たのは5時45分頃だった。朝の5時45分出発だなんて、若い頃には考えられないくらい早起きで、頭がガンガンしていたが、最近は老化が進んで朝早く目が覚めるようになったので、割と平気で早朝に家を出られるようになった。それに、早朝の奴隷船に乗るために自宅を5時半に出なければならないオリーブマラソンに比べたら、まだマシなくらいだ。

まだまだ早朝だが、決して寒くない。天気は割りと良さそうだし、風も無いから、このままだと寒さは気にしなくてもいい。

6時少し前に高速道路に入り、6時過ぎに津田PAでヤイさんを拾い、一路、徳島へ向かう。途中、車の中で朝食を食べる。以前はマラソン大会の朝食と言えば、決まって菓子パンをたくさん食べていた。もともと菓子パンは大好きだし、マラソン大会に出る時は、たいてい普段より早く家を出るので、手軽に菓子パンを食べていたのだ。しかもエネルギー補給と言うことで、たくさん食べていた。ところがここ数年、2008年の徳島マラソン2009年の走れメロスマラソン3年前のオリーブマラソンのように、マラソン大会で走っている最中にお腹を壊してトイレに駆け込むことがある。そこまでいかなくても、ゴールと同時にトイレに駆け込むこともよくある。一昨年のタートルマラソンだって、ゴールしてソーメンを食べたところでお腹の調子が悪化の頂点を迎え、トイレに駆け込んだし、去年の丸亀マラソンも苦しんだ。この原因を深く考えてみたら、菓子パンが原因ではないのかって思えてきた。て事で、去年の徳島マラソンから菓子パンじゃなくて、おにぎりを食べるように変えた。さらに用心には用心を重ねて、下痢予防のために下痢止めの薬も飲むようにした。そのせいかどうかは分からないが、少なくともそれ以降はマラソン大会でお腹を壊していない。
最初は単なる気のせいかと思っていたが、去年の秋のNHK「ためしてガッテン」を見てたら、パンなんかに含まれるフルクタンという糖類は消化に悪く、下痢になりやすいことが分かった。もちろん個人差があって、みんながみんな下痢する訳ではない。でも、牛乳を飲んだら下痢をする私のようなタイプの人間は、朝、空きっ腹にパンをたくさん食べると数時間後にはお腹を壊すらしい。普段も毎朝、パンを食べてるんだけど、通常はお腹は大丈夫だ。たぶん量の問題だろう。普段の朝食はおかずも多くてパンの量は少ないけど、マラソン大会の朝食って言うと、エネルギー補給とばかり砂糖なんかを大量に使った甘い菓子パンをたくさん食べていたので、とてもお腹に悪かったのだろう。一方、お米に含まれている糖類は消化が良いとのころで、おにぎりに代えれば問題ない。おにぎりで好きなのはタラコや鮭なんだけど、なんとなく消化に悪いような気がするので、梅と昆布のおにぎり2個にした。フルマラソンを走るのに、おにぎり2個じゃ少ないような気もするけど、食べ過ぎてお腹を壊す方が怖いので我慢する。あと、スタート直前に食べるゼリーも持ってきているし。

去年と同じく、休日の朝の高速道路は空いていて、とても順調に進む。

(ピッグ)「どういうルートにしましょうか?」
(幹事長)「ちょっと悩むところやな」


徳島の高速道路は、去年から高松自動車道と徳島自動車道を接続する区間が開通し、徳島ICまで高速道路を降りずに行くことができるようになったが、かなり遠回りとなる。距離的に近いのは、高松自動車道の板野ICで降りて、そのまま一般道路で行くルートだが、混雑すれば時間がかかる。去年は試験的に2台の車で別々のルートを試したが、現地へはほぼ同時に着いた。なので、どっちが良いのか悩んでいると、ピッグが何気なく板野ICを通り過ぎてしまった。じゃあこのまま徳島ICまで行こうかと思っていたら、今度はピッグは何気なく鳴門ICで降りてしまった。

(幹事長)「そのルート選択はどういう意味があるんや?」
(ピッグ)「何の意味もないです。て言うか、ちょっとよそ事を考えてました」


鳴門ICで降りるくらいなら板野ICで降りれば良いし、板野ICで降りないのなら徳島ICまで行けば良いと思うのだが、ま、日曜日の早朝で混雑してないから、どういうルートでも時間に大差は無い。

行き先は吉野川河川敷の臨時駐車場だ。徳島マラソンの受付会場には駐車場が無く、だいぶ離れた所にある臨時駐車場からシャトルバスで会場に移動するのだが、臨時駐車場は3ヵ所ある。吉野川河川敷と沖洲マリンターミナルと小松海岸緑地だ。スタート会場には沖洲マリンターミナルが近いので、以前は沖洲マリンターミナルの臨時駐車場に車を停めていた。ところが3年前、交通規制のせいかバスのドライバーが慣れてなかったせいか、沖洲マリンターミナルからスタート会場の県庁横までものすごく時間がかかり、受付時間に遅刻してしまった。さらに、レースが終わった後は、ゴール会場の陸上競技場から沖洲マリンターミナルまで1時間もかかり、ウンザリしてしまった。徳島市内の道路は日中はすごい渋滞になるのだ。この反省から、一昨年、スタート会場までは多少遠いものの、帰りがゴール地点から近い吉野川河川敷の臨時駐車場を利用してみたら、行きも思ったほどは時間がかからず、帰りも早かったので、今年も迷わず吉野川河川敷へ向かう
鳴門ICを降りて吉野川河川敷の臨時駐車場へ行くには、国道11号線を南下して吉野川大橋の手前を西へ折れて吉野川の北岸の堤防を走り、吉野川橋で南へ折れて吉野川を渡れば、そこに臨時駐車場がある。ところが、国道11号線を吉野川大橋の手前で西へ折れるには、右折ではなくて、いったん手前で左折して回り込まなければならない。それなのに私や支部長が「右だ」「左だ」なんてワアワア騒いでいたらピッグが左折するタイミングを逃してしまい、そのまま吉野川大橋を渡ってしまった
吉野川大橋を渡ってしまったら、今度は吉野川の南岸の堤防を西へ折れれば良いのだが、ここもそのまま右折することはできず、いったん通り過ぎて次の大きな道を西へ右折して遠回りしていかなければならないのだ。ここまで来ると、吉野川橋から南へ進んだ道との交差点まで行ってから北へ右折すれば臨時駐車場へたどり着けるのだが、ここでも私や支部長が「右や」「いや左じゃ」なんてワアワア騒いでいたら、ピッグが手前の狭い道を右折してしまい、妙なところで吉野川の堤防に出た。そこは堤防が狭くて一方通行になっていたりして、結構、手間取って、だいぶ時間をかけながらなんとか臨時駐車場に着いたら、駐車場は既に満杯状態だ。去年は同じような時間に来たけど、まだまだ余裕があった。今年は参加者が1.5倍になったため駐車場も早々に一杯になったようだ。ただ、当初予定の駐車スペースは一杯になっていたものの、本来は通路だったところにも停めさせてくれたため、あんまり待つこともなく割りとスムースに駐車することができた。
ところが、ここで吉野川橋を見てびっくり。橋の上はずうっと向こうの方まで渋滞が続き、ほとんど身動きできない状態になっている。もし板野ICで降りたり、鳴門ICで降りても吉野川の北岸を進んできていたら、とんでもない渋滞に巻き込まれていたはずだ。ピッグの優柔不断なルート選択で遠回りしてきたのがラッキーになったのだ。良いぞピッグ!でかしたぞピッグ!

(ピッグ)「なんか素直に喜べない褒め方ですねえ」
(ヤイ)「そもそもマラソンと直接関係の無い話を細かく書いているのは例によって来年への備忘録ですか?」
(幹事長)「もちろん、そうです。来年、これを読み返してルート選択せねばなりませんからね」


来年への教訓としては、
 @ 6時に高松発ではちょっと遅い。定員が増えたため、もっと早く出発しよう。
 A 吉野川臨時駐車場へは西からではなく、遠回りになるけど東から攻めよう。

本当に役に立つホームページだ。

なんでこんなに細々と書いているかと言えば、徳島マラソンは受付時間がとても早く、朝の8時までに済ませなければならないから時間を気にしているのだ。スタート時間が9時だから仕方ないんだけど、ちょっと早すぎる。車で行くと、帰りは疲れ果てた足が攣りそうになって運転が危険になるので、可能ならJRで行きたいところだが、高松発の始発列車で行っても間に合わないのだ。ともかく、今年はなんとか順調に到着できて良かった。

例年、車の中は暖かくても、臨時駐車場に着いて外に出ると寒い事が多い。でも今年は曇っている割りには外に出ても寒くない。風もあんまり無いし、今日は寒さは気にしなくても済みそうだ

スタート開場へ行くシャトルバスはいっぱい待機してて、どんどん運んでくれるので、全然待たずにバスに乗れた。


〜 会場到着 〜


徳島市内は慢性的に交通渋滞が発生するが、日曜日の早朝のため、特に渋滞に巻き込まれることもなく、受付終了の30分も前の7時半頃には受付会場に着いた。ここでW部選手から電話が来る。どこか落ち合う場所を決めるようというのだろうと思って電話に出ると、なんと吉野川の臨時駐車場で身動きが取れなくなっているとのことだ。国道11号線を降りて吉野川の北岸を西に進み、吉野川橋に左折したところで渋滞に巻き込まれウンともスンとも言わなくなり、身動き取れない状態らしい。我々が停めた時点で、ほとんど空きスペースは無くなっていたから、もしかしたら他の臨時駐車場へ誘導させられるかも知れない。とんでもなく時間がかかりそうだ。ただ、どう考えても主催者側の不手際なので、受付は待ってくれるだろう。ただ、いくら受付は待ってくれても、スタート時間までは待ってくれないだろうから、なんとしてもスタートの9時までには来る必要がある。

(幹事長)「でも、なべちゃんは私らより1時間は早いから、10時スタートでもええやん」
(W部)「言うときますけど、私は幹事長なんかと勝負している訳ではないですから!」


受付場所は、例年通り徳島県庁の周辺ではあるものの、例年と違ってグランヴィリオホテルになっていた。今年はゼッケンやチップは前もって送ってきてくれていたので、受付と言ってもパンフレットや記念品をもらうだけだ。今年の記念品はTシャツだった。
普通、マラソン大会の記念品と言えばTシャツと相場が決まっているが、この徳島マラソンはTシャツ以外の時も多かった。去年はランニング手袋だったし、ペットボトルホルダーだった事もある。ところが今年は再びTシャツだ。品が尽きたんだろうか。昔の記念品Tシャツは品質が悪かったから、どんどんヨレヨレになっていって次々と消費できていたが、最近のTシャツは品質が良くて、どれだけ着て洗濯しても、なかなかヨレヨレにならない。そのため着てない新品のTシャツが山のように溜まる一方だ。なので、Tシャツでない記念品の方がありがたいのだ。

受付も済ませ、あとはお決まりの悩みだ。何を着るべきかどんなマラソン大会であっても、最大の悩みが着るものだ

(ピッグ)「相変わらず着るものに悩みますねえ」
(支部長)「暑かろうが寒かろうがタイムには何の影響も無いってば」


私も最近は学習効果により、暑かろうが寒かろうがタイムに何の影響も無いらしいって事は分かってきた。寒いのは辛いがタイムはむしろ寒い方が良いことが多いし。だが、ハーフマラソンなら2時間もかからないからいいけど、フルマラソンで長時間、寒さを我慢して走るのは辛い。そんな辛い思いはしたくないから、暑いのはまだしも、寒いのだけは避けたい。
だが、しかし、今日は悩む余地は少ない。この時期、春も終盤で暖かくなってきてるので、ハーフマラソンなんかだと半袖Tシャツでも暑くなる。でもフルマラソンになると終盤、疲れて足を引きずって歩くようになるので、半袖Tシャツでは寒くなる。しかも吉野川の堤防は例年、風が強く、気温が低い時は本当に寒くなる。でも今日は、気温はそんなに低くないし風も無い。かと言って曇ってお日様は出そうにない。なので暑くもなく寒くもない。なので長袖シャツの上から半袖Tシャツでちょうど良いだろう
まずは長袖シャツを着て、その上に3年前の大阪マラソンでもらったTシャツを着る。この大阪マラソンのTシャツは格好良いから、もらって以来、ほとんど全てのレースで着ているものだ。下はランニングタイツを履くことにした。私はランニングタイツのサポート機能を全く信じてないので、普段は履かないんだけど、今日は一応、終盤の防寒用に履く。ランニングキャップは炎天下か雨の時しか被らないから、今日は不要だし、今日は手袋も不要だろう。
他のメンバーは、ピッグは相変わらず短パン半袖だけだ。

(幹事長)「ほんとにピッグは夏でも冬でも全然気にせず常に短パン半袖やなあ。寒くないん?」
(ピッグ)「気にしなければ全然平気ですよ」


さらに今年はD木谷さんも半袖だけだ。一方、支部長とヤイさんは半袖の下に長袖を着ているし、下にはタイツを履いているから私と同じだ。ただ、彼らはどんなに暑い時期のマラソンでも同じ格好だ。つまりピッグも支部長らも、みんな暑かろうが寒かろうが同じ格好なのだ

(支部長)「だから、しつこいようだが、暑かろうが寒かろうがタイムには無関係なんやってば!」
(幹事長)「だから、もうそれは分かってるってば!!」


着替えが終わって記念写真を撮りに外へ出ると、女性のDJポリスが車の上にいたので、彼女らをバックに写真を撮った。

パトカーの上に乗った女性のDJポリスをバックに記念写真
(左からヤイさん、ピッグ、D木谷さん、幹事長、支部長)

写真も撮り終わったが、まだ時間があるので、トイレをどうするか悩むところだ。普段なら7時頃に起きて朝食を食べてから大きい方をするが、今日みたいに早起きして車の中で朝食を食べるとトイレに行くタイミングが難しい。ホテルの1階のトイレを見ると、長蛇の列が出来ている。列の流れは非常に悪そうだ。こういう時は目に付きにくいトイレに行くに限る。てなことで2階へ探検に行くと、2階の奥まったところに小さなトイレがあり、そこは大と小と列が別れていて、大の列はビクともしないが、小の列は短い。まだまだ時間的な余裕はあるとは言え、大の方の列がビクともしないので、大は諦めて軽く小を済ませる。ピッグは「時間ある限りトライしてみます」と言いつつ大の列に並んだ。

トイレも終わり、ポケットにティッシュとハンドタオルを押し込む。お腹を壊したときの胃腸薬も必携だ。終盤になって走るのが飽き飽きしてきた時のためにウォークマンも用意する。スタート直前に食べようかと思っていたゼリーも、ここで食べておく。さらに用心には用心を重ねて、下痢予防のために下痢止めの薬も前もって飲んでおく

そろそろ8時半が近づいてきたので、手荷物を預けに行く。ピッグはトイレに並んだままなので、ピッグの荷物も持って出発する。
今年はコースが微妙に変更になった。これまでは、ちょっと裏道的な道路を出発して、しらさぎ大橋を渡って吉野川北岸に出ていたが、今年は県庁前の広い国道11号線を走って吉野川大橋を渡って吉野川北岸に出る。吉野川大橋はしらさぎ大橋より1km以上も西側にあるので、距離は往復で2kmは短くなる。ゴール地点は同じなので、折返し点が遠くなるのだろう。
スタート地点が変わったのは、たぶん、参加者が増えたため、いつものスタート場所では道が狭くて収容しきれなくなったのだろう。それはいいのだが、手荷物を預ける場所も変更となり、これまでは受付会場のすぐ側だったのに、随分遠方になり、手荷物を預けに行くのが大変になった。

荷物をかついで歩いていると、少し暑くなってきた。お日様が顔を出し始めたのだ。もともと気温が低くないから、お日様が出ると、さすがに暑くなるのだ。歩いていても少し暑いくらいなので、走り始めるとだいぶ暑くなりそうだ。もちろん、今の体感温度だけで決めてはいけない。終盤になってトボトボと足を引きずる頃に寒くなるのだけは避けたいので、慎重に考える必要がある。しかし、それでも、どう考えても、2枚も着ていたらレース前半は暑くてたまらないだろう。今日は風も無いから、半袖Tシャツ1枚でも終盤を乗り切れそうだ。
この大会は、本当に気温に翻弄される。一昨年は今年と同様、4月末だったが、あまりの寒さにスタート地点では防寒用のビニール袋を被っていた。ところが3月末開催だった去年は今年以上に暑くて、結局、スタート直前になって長袖シャツを脱いで、腰に巻き付けて走った。これまでも2枚着ていたのを、スタート直前になって1枚脱いだことはある。4年前の丸亀マラソン瀬戸内海タートルマラソンではスタート直前に脱いだTシャツを近くの木にくくりつけてスタートし、レース後に回収したりした。だがフルマラソンでは終盤に力尽きてトボトボと足を引きずって歩く事が多く、そうなると体が冷えるので、そういう事態に備えて最後まで持っておきたいから腰に巻き付けて走ったのだ。3年前の大阪マラソンでは、スタートしてから途中で暑くなったので、走りながら下に着ていた長袖を苦労して脱いだし、終盤には寒くなったので再び長袖を着たりした。
しかし去年の徳島マラソンは、結局、最後まで腰に巻いた長袖シャツを再び着る事はなかった。今日もなんとなくそんな感じ。て事で、結局、手荷物を預ける直前に長袖を脱いで手荷物の中に入れ、半袖Tシャツ1枚で走る事にした。もう寒くなっても着るものは無い。

(幹事長)「いわば背水の陣だ」
(ピッグ)「おっしゃってる意味が・・・」
(支部長)「だから、しつこいようだが、暑かろうが寒かろうがタイムには無関係なんやってば!
       私の徳島マラソンでのベストタイムは暴風雨が吹き荒れた第5回大会やし!」
(幹事長)「確かに、それが凄いのは認めましょう」


あんな暴風雨の悲惨なレースでベストタイムを出すような真似は私にはできません。


〜 集合 〜


手荷物を預けてスタート地点に並ぶと、スタート時間が近づいてきた。以前はフルマラソンを走るとなると、かなり緊張感があった。ハーフマラソンくらいなら、もう慣れきって緊張感なんて沸きようが無いが、さすがにフルマラソンは大変なので、それなりに切迫感があった。ところが最近は、フルマラソンですら何の緊張感も無くなってしまった。おまけに今回はゾウさんが欠場なので、何のモチベーションも無い。

(幹事長)「ま、しんどくなったら歩いたらいいし」
(支部長)「ま、しんどくなったらリタイアしたらいいし」
(ピッグ)「最初っから緩みすぎ!」
(支部長)「ほんで、今年は練習は十分なんかいな?去年は、3月の開催だったから練習が不十分だったと言い訳してたけど」
(幹事長)「すんません。4月開催でも不十分になりました」


フルマラソンに出るからには、できれば2ヵ月くらい前からは練習したいところなので、3月下旬にフルマラソンがあると2月始めの丸亀マラソンの直後から練習を開始する必要がある。でも、2月なんて一年で一番寒い季節だから、そんな寒い時にフルマラソンに備えて20kmも30kmも走れる訳がない。どんなに寒くても、短い距離なら一生懸命走って体が熱くなるからいいが、20kmも30kmも走る場合は一生懸命走ったら足が動かなくなってしまうのでチンタラ走らなければならない。しかし、チンタラ走っていると体が熱くならないので寒いのだ。
その点、4月下旬の開催なら、寒さも和らぐ3月辺りから徐々に練習量を増やしていって本番に備えればいいので、ちゃんと練習できるはずだった。ところが、今年の3月は週末にかけて出張があったり、家族でスキー旅行に行ったり、ランニングだけじゃなくてプールや自転車もやったりで、はっきり言って練習不足だった。さらに4月に入っても遠方の娘の所に遊びに行ったりして、最後まで納得できる練習量を積めなかった。

(ピッグ)「それで、結局、去年に比べて練習量はどうやったんですか?」
(幹事長)「すんません。今年の3月の練習量は去年の2月の練習量の2/3弱でした」


去年だけじゃなくて、一昨年と比べても、その前の年と比べても、今回の練習量は圧倒的に少なかった

(ピッグ)「ちょっと緊張感が乏しくなってるんじゃないですか?」
(幹事長)「すんません。その通りです」


もともと徳島マラソンは基本的には年に一度の貴重なフルマラソンだった。毎年、東京マラソンや大阪マラソンや京都マラソンや神戸マラソンなど色々と申し込んではいるけど、競争率が高いから滅多に当選はしない。小豆島のタートルマラソンは競争率が低くエントリーが容易だが、坂が多くて厳しいコースなので、たいていはハーフマラソンの部に出ている。他にも四国内でフルマラソンがいくつか開催されているが、ちょっと遠方だったり坂が多かったり寒い時期だったりで、なかなか適当な大会が見あたらない。なので、この徳島マラソンだけが毎年必ず参加する貴重なフルマラソンなのだ。ところが去年の11月は初めて神戸マラソンに当選して出場し、さらに12月には秒速を争う熾烈な先着順争いを勝ち抜いて奈良マラソンにも出場したため、私の中で徳島マラソンの貴重さと言うか有り難みが薄らいでしまい、緊張感が乏しくなって練習をサボり気味になったのだ。

(幹事長)「ピッグは2年前はサブフォー目前だったけど、今年は狙わないよな?」
(ピッグ)「今となっては夢のような話ですね」


ピッグは、元々は私以上に練習量が少ないのだが、2年前までは勤務先の関係で毎日のように走っていたためサブフォー目前までいっていた。だが、2年間から極端に練習量が少ない生活に戻り、タイムも戻ってしまったので、サブフォーは遠い夢となった。去年なんか私だけでなくゾウさんにも負けてしまった。

(ピッグ)「幹事長だってまさかサブフォー狙って撃沈しないでくださいね」
(幹事長)「今の私には天変地異が起きてもサブフォーは不可能です」


もちろん常に心の奥底ではサブ4願望はあるが、今の状態では絶対に無理だ。練習量が決定的に不足している今年の私としては、最後まで歩かずに走るのが第一目標だ

(幹事長)「全然歩かなかったら、そんなに悪いタイムにはならないし」
(ピッグ)「ちょっとでも歩いたらタイムは一気に悪くなりますからね」
(幹事長)「ちょっとでも歩いたら、絶対にちょっとでは済まないもんな」


一度でも歩いてしまうと、心が切れてしまって、絶対に繰り返し歩いてしまう。歯止めが無くなる。逆に、最後まで歩かなかったら、そんなにひどいタイムにはなりようがない。そして、足が痛くさえならなければ最後まで歩かずに済む。終盤は足が重くなるが、どんなに足が重くなっても、痛くなければ走り続ける事ができる。ペースは極端に落ちて歩くようなスピードになったとしても、痛くさえ無ければ、足を引きずりながらゆっくり走り続けることができる。しんどくなったから歩く、なんて事はなく、ペースが落ちるだけだ。足が痛くなると我慢できないが、疲れとか足が棒の様になるっていう状態なら、精神力で乗り切れるものだ。
最後まで足が痛くならないようにするためには、前半のペースを抑える事だ。これが分かったのが3年前の大阪マラソンで、最初からものすごく遅いペースで走ったら非常に珍しく最後まで足が痛くならなかったのだ。それまでフルマラソンに出ると、終盤は必ず足が痛くなって辛くなり、「もうフルマラソンなんて出るの止めよう」って思っていたのだが、大阪マラソンで開眼したのだ。それ以来、一昨年去年の徳島マラソン去年の神戸マラソン奈良マラソンと、最後まで一歩も歩かず完走を続けている。フルマラソンと言えば終盤に足を引きずってトボトボ歩くのがお決まりだったが、今では最後まで歩かないのが当たり前になりつつある。
そして、坂の無い徳島マラソンなら最後まで歩かずに走れば4時間半は切れるかもしれない。てことで今日の目標は4時間半だ1km平均6分20秒で走れば達成できるが、それだとギリギリ過ぎる。スタート直後は大混雑でもっと時間がかかるし、給水所で立ち止まる事も考慮する必要があるし、途中でトイレに行くかもしれない。なので、去年は6分10秒/kmくらいのペースで攻めた。ところが、それでも若干、無理だったのか、終盤になって大きくペースダウンしてしまい、4時間半を切れなかったので、今日は徹底的に序盤から1km6分20秒のペースで攻めることにする。1km6分20秒なんて、めちゃ遅いペースだから、最後までキープできる可能性はある。ヘタに序盤で貯金しようなんて思っていつものように飛ばしてしまうと、終盤にガクンとペースダウンして、前半の貯金をはき出すだけでなく、大きな借金を抱えて悲惨なタイムでゴールすることになる。今まで何十回何百回と繰り返してきた失敗だ。
いずれにしても、今日は多少は暑いかもしれないが、寒くは無いし風も無いし、体も痛いところは無いし体調も悪くはない。つまり絶好のコンディションであり、なんだかんだ言いながらも密かに良いタイムが出るのではないか、っていう期待がこみ上げてくる

他のメンバーは、と言えば、ピッグは相変わらずの練習不足とは言え、2月の高知龍馬マラソンで惨敗した反省から、今日はリベンジに燃えている。彼も龍馬マラソンでは前半に調子に乗って飛ばして終盤に大きくペースダウンしてしまったので、今日は前半から徹底してペースを抑えて走る作戦だ。
さらに支部長は、去年、途中で無念のリタイアをした反省から、さらにもっと徹底的に前半から抑えて走る作戦で、なんと1km7分のペースで刻むのだそうだ。さすがに1km7分なんて遅すぎるから、周囲のランナーにつられてもっと速く走ってしまいそうだが。
ヤイさんは、と言えば、相変わらず肉離れ気味で走るのも様子を見ながら怖々って感じ。D木谷さんも足の様子を見ながらペースを考えるらしい。ただし、この二人は様子を見ながらと言っても、元々基礎体力がすごいから、調子に乗れば一気に蹴散らされてしまう可能性を秘めている。

スタート地点の集合場所は、申告タイムの順番になっている。これは速いランナーと遅いランナーが一緒くたにごちゃ混ぜになっているとスタート時の混雑がひどくなり、混乱するからだ。速いランナーにしてみれば、遅いランナーが混じっていると邪魔になって走りにくいし、遅いランナーだって周りが速いランナーばかりだと走りにくい。分けた方が速いランナーも遅いランナーもスムースに走りやすい。どうせタイムはチップでネットタイムを計測してくれるから、無理して前の方からスタートする必要は無い。
我々が集合した場所は、ちょうど真ん中の辺りで、スタート地点は遙か彼方の天竺で何も見えない。場内放送が聞こえてきて、何やら盛り上がっているようだが、こちらには臨場感が伝わらず、周囲のランナーも緊張感も無くダラダラおしゃべりしている。天気はますます良くなり、完全にお日様が顔を出した。待っていても暖かくなってきた。これで走り始めたら絶対に暑くなる。長袖を脱いで半袖1枚になって本当に良かった


〜 スタート 〜


いよいよスタートの号砲が鳴ったが、我々の場所からスタート地点までは、まだまだ長いので、しばらくしてようやくノロノロと動き出す。動いたり止まったりしつつ、しばらく進むとようやく遠方にスタート地点のアーチが見えてくる。アーチをくぐるまでに5分以上経過していた。今年はゲストランナーに高橋尚子が来ていて、スタート地点で大声でみんなに声援を送ってくれていた。

スタート地点を越えると、ゆっくりだけど小走りができるようになる。まともに走れないのでフラストレーションも感じるが、ウォーミングアップ代わりと割り切れば良い。それに、去年までのコースは序盤に狭い道を折れ曲がったりして結構、混雑したが、今年からコースが微妙に変わり、最初から広い国道をストレートに走るので、混雑はひどくなく、割と走りやすい。相変わらず周囲の迷惑を顧みず、仲間内でおしゃべりしながら後ろのランナーをブロックして走る連中がいるが、道幅が広いので、それほど邪魔にもならない。

最初の1km地点の距離表示は見落としてしまい、次の2km地点こそは探していたんだけど、なんと連続で見落としてしまう。まさか距離表示が無かったなんて事はないと思うんだけど、序盤のペースが分からず、ちょっと不安になる。コースは国道11号線を真っ直ぐ北上して吉野川大橋を渡る。
吉野川大橋の真ん中でようやく3km地点の距離表示を見つける。ここまで19分ちょっとかかっていた。当初予定の1km6分20秒より少し遅いが、スタート直後の混雑を考えれば仕方ない。ここで遅れを取り戻そうと無理すると後々良くないので、そのまま自然体で走る。

徳島マラソンのコースは基本的に橋と堤防の上を走るので、例年、北西からの強風に苦しめられる。しかし今年は風が無くて、走りやすいと言えば走りやすいんだけど、むしろ暑くて、少し風が欲しいくらいだ
吉野川大橋を渡って吉野川北岸の堤防の道路に入ると、第1救護所があり、しばらく進むと4km地点がある。ペースは1km6分10秒程度で、少し速い気もするが、自然に走っているので誤差の範囲だろう。

吉野川の堤防に入っても相変わらず風は無く、かなり汗をかいている吉野川橋の付け根の5km地点には第1給水所があり、普通なら走り始めたばかりの給水所はパスするんだけど、今日は汗をかいて喉も渇いているので、最初から迷わず水を取る。
この1kmは6分半もかかっており、とんでもなくペースダウンしていることになるが、実感としてはそんなにペースが変わっているはずはない。やはり距離表示が不正確なのではないかと思われる。これに気付いたのは一昨年で、このコースは同じペースで走っているつもりなのに、区間によるタイムの変動が激しいのだ。極端な場合は、プラスマイナスで1kmで1分も変動したりする。坂も無ければ風も無いし、立ち止まったりもしていないのに、いくらなんでも1kmで1分も変動するって、絶対にあり得ない。しかも毎年、区間によるペースの上下が同じパターンなのだ。今年はコースが少し変わってしまったので、去年までの変動とはパターンが異なるだろうが、それでも距離表示に疑惑があるのは同じだ。なので1kmごとのタイムの変動に一喜一憂してはいけない。
ただし、5kmごとには正確にタイムを計測する機器が設置されているので、おそらく距離も正確だろうと思われる。で、この最初の5kmの平均タイムを見ると1km6分20秒を少しオーバーしているが、まあ許容範囲だ。

その後の6km地点、7km地点、8km地点も同じようなペースで進み、四国三郎橋の付け根にある第2給水所で水分を補給する。
さらに進んで9km地点、10km地点も同じようなペースで進む。この5kmはペースが安定しているし、距離表示の疑惑も感じない。予定通り1km6分20秒のペースを正確にキープできている

名田橋の付け根にある第3給水所11km地点と、次の12km地点は、なぜかペースダウンしていて6分30秒近くかかっていた。まだ10km過ぎで早くもペースダウンしてるのかと驚いたが、距離表示疑惑は払拭されていないので一喜一憂はしない。
思った通り、ペースを上げた訳でもないのに続く13km地点、14km地点でのタイムは元に戻り1km6分20秒弱になった。
次の15km地点は5kmごとのタイム計測地点なので正確なはずなんだけど、なんと5分30秒ちょっとだった。有り得ない。これは絶対に有り得ない。1km1分もペースを上げるなんて、相当意識しないと無理だ。なので、やはり今年も絶対に距離表示に問題がある事を確信した。それにしても、この5kmはトータルでも少しペースアップし過ぎだ。本当だろうか。自然体で走っているのに、そんな事があるだろうか。

そして次の16km地点のタイムを見て驚愕。なんと一気に7分近くになっている。そんな事があるだろうか、いや、あるはずがない。同じペースで走っているつもりなのに、一気に1分以上もペースダウンする事なんてあるはずがない。さっきから、あまりにもペースの変動が激しいが、それにしても距離表示がひどいのではないだろうか。
そして、当然ながら次の六条大橋の付け根にある17km地点でのタイムは再び6分ちょっとにまでペースアップしていた。もう1kmごとのタイムは完全に無視しなければならない。ここには第4給水所があり、ここでもまめに水を取っていく。今日は暑くて喉もすぐにカラカラになるので、こまめな水分補給を怠ってはいけない。水分補給時にもできるだけペースは落とさず、多少むせる事もあるが、走りながら飲み続ける

続く18km地点、19km地点では再び大きくペースダウンしているが、気にせずに第5給水所で水分補給すると、ここにはソイジョイもあったので、そろそろお腹も空いてきたので、もらって頬張る。ところが、暑くて喉が渇いている状況で、飲み物を飲んだ後でソイジョイを食べたもんだから口の中がパサパサになって苦しんだ。飲み物をキープしたままで食べるべきだった。次の給水所まで苦しまなければならない。

次の20km地点ではまた当初予定通りのペースに戻っていたが、この5kmは1km平均6分30秒くらいだった。1kmごとのタイムは気にしないにしても、5kmごとのタイムは正確だと思われるので、明らかにペースダウンしているようだ。おかしい。まだ2kmなのに、早くもペースダウンしているのか?今日は最初から1km6分20秒なんて超スローペースで走ってきたのに、それでもペースダウンするのか?先行きがちょっと不安だ。
確かに、超スローペースとは言え、そんなに軽やかに走ってきているわけではない。決して力んではおらず、自然体ではあるものの、超スローペースの割りには余裕があるわけではない。やっぱり練習不足のせいか?それとも悪くないと思っていた体調が、実はイマイチだったのか?

しばらく行くと、ちょうど半分になる21km地点の表示がある。これでなんとか半分終わったっていうのは嬉しい。取りあえずホッと一息だ。半分終われば、あとは何とか先が見えてくる。半分てことは、まだまだハーフマラソンと同じ21kmが残っているから、そう考えると絶望的な気分になるけど、「もう半分終わったのに、まだまだ走れる力が残っている。これなら42kmも走れるかも」って思えば随分、気が楽になる。「完走できれば良い」っていう発想は弱気と言えば弱気だが、フルマラソンの場合は、いくら常に自己ベストを狙っているとはいえ、まずは完走する事が最低限の目標なのだ。
と思ってタイムを見ると、なんと、一気に7分をオーバーしている。んなアホな。そんなにペースダウンしているはずがない。またまた距離表示が間違っているのだろう。

しばらく進むと西条大橋が現れる。去年まではスタートの後、少し東に回ってしらさぎ大橋を渡っていたのが、今年はそれよりだいぶ西の吉野川大橋で吉野川を渡ったから、距離がだいぶ短くなっている。そのため、西条大橋の付近で距離をかせぐため、吉野川から離れてだいぶ北の方まで走らされる。しばらく進んだら、ようやく折返しになり、再び吉野川へ向かって南へ進む。こういう折返し区間は、先が見えないので、なんとなく精神的に嫌な感じだ。すれ違いざまに前を行くランナーや後続のランナーが見えるが、どっちもあまりにも数が多く、メンバーを探せるような状況ではない。

西条大橋に入る手前の23km地点や西条大橋の終盤にある24km地点でのタイムは、なんとずっと7分近いペースになっている。ほとんど変動が無い安定したペースで、トンでもないペースダウンになっている。これは、もう距離表示の問題ではないだろう。
第6給水所を過ぎてしばらく進むと25km地点の計測がある。ここの1kmはほぼ当初予定通りのペースだが、この5kmの平均タイムは、なんと7分近い惨憺たるペースだ。こんな事があり得るのだろうか。15kmまでは安定して当初予定通りのペースを維持し、20kmでは多少ペースダウンしたが、その後の5km一気に7分近いペースになったなんて、考えられない。絶望的だ。距離表示の問題ではなく、完全にバテてしまったのだ。んなアホな!
確かに、ここんところ、急に周りのランナーが揃って私を抜いていくようになってきた。みんながみんな全員、一斉にペースを上げたとは思えないので、明らかに私のペースが一気に落ちたんだろう。それにしても、何があったんだ?レース後半になるとペースダウンするのはレースの常だが、こうまで一気にガクンとペースダウンするのも珍しい。しかもレース終盤じゃなくて、まだ半分が終わったばかりだと言うのに。

25km地点を過ぎたばかりの所で後ろからD木谷さんが追いついてきて声を掛けてくれる。でも、あまりにペースが速くて着いていく事はできなかった

25km地点までの平均ペースを維持できれば、まだ4時間半は可能だが、今のペースでは不可能だ。再びペースアップするなんて無理だろうから、すなわち4時間半は不可能になってしまった
それどころか、次の26km地点は、さらに7分を大きくオーバーして、もう絶望的になってきた。その後、第7給水所ではそば米汁や半田そうめんのお接待があり、かつてはこの休憩ポイントが楽しみで仕方なかったが、最近は少しでも良いタイムを目指してパスするようになった。今日はタイムが絶望的になりつつあり、そんなにタイムにこだわる必要も無くなってきたが、ここで休んでしまうと足が固まってしまい、再び走り始めることができなくなるんじゃないかっていう不安が出てきて、今日もパスすることにした。ここで本格的に休憩し、そば米汁と半田そうめんをしっかり食べて、くつろいでしまったら、元気回復して走り始めたつもりになっても、一度、本格的に休んでしまうと、足がすっかり終了モードになってしまい、再びレースに参加するなんて不可能な状態になるのだ。いくら頑張ろうと思っても、足が言う事を聞かなくなるのだ。

さらに続く27km地点、28km地点ではタイムは落ちる一方で、六条大橋の付け根にある第8給水所の手前の29km地点では、遂に8分を超えてしまった。8分を超えるなんて、普通なら終盤に歩き始める頃のペースだ。一体なにが起きたんだろう、って感じ。少し頑張ろうと思うんだけど、足のあちこちの筋肉が攣りそうで、無理するのがちょっと恐い。足のふくらはぎが攣ることはそんなに珍しい事ではないが、そこだけじゃなくて、あちこちが攣りそうだなんて、かなり全体的に無理しているって事だ。
27km地点を過ぎた辺りでは、遂にピッグにも追い抜かれてしまった。一瞬、着いていこうと思ったけど、到底不可能だった

30km地点で確認したタイムでは、この5kmの平均は1km7分30秒を超えている。せっかく今日は序盤から6分20秒という超スローペースで走ってきたと言うのに、こんな早い段階でこんなに大きくペースダウンしてしまうなんて、一体なんのために序盤から抑えて走ってきたんだろう。
て言うか、考えてみれば、序盤から超スローペースではあったが、無理してペースを抑えていたと言うより、自然体で走っているけど超スローペースになっていたと言うことであり、つまり単に調子が悪いってことなのかもしれない

30kmまで来ると、後はもう終盤モードだ。まだ12kmも残っているとも言えるけど、42kmのうちで言えば、もう終盤だ。
この辺りの給水所には、飲み物だけでなくバナナやパン、竹輪、フルーツなど給食も充実しているんだけど、水を飲んだだけで、食べ物は取らなかった。給食を取る時間が惜しいと言うより、だんだん足が重くなってきて、給食を取りに行くのすら面倒になってきたのだ。お腹は空いたけど、今さらエネルギー補給しても消化して吸収する前にゴールしてしまうだろうし。
あまりにしんどくなって精神的に辛くなってきたので、ポケットに入れていたウォークマンを取り出して音楽を聴きながら気を紛らわせて走ることにする。フルマラソンの時は常にウォークマンを持って走っているが、普段は使用する事は無い。充実した走りができている時は、そんなものを使わなくても良い、と言うか、使いたくない。でも、重い足を引きずって歩くようになると、気を紛らわせないと耐えられなくなるのだ。

もうこれ以上のペースダウンは有り得ないだろうと思ったけど、30kmを過ぎると、ペースは一段と落ち、8分台が当たり前になってきた。名田大橋の付け根にある第10給水所の手前の35km地点で確認したら、この5kmの平均は1km8分ちょっとだ
ここでゴールタイムを予想して愕然とした。このまま8分ちょっとで進むと、ちょうど5時間ペースだ。5時間だなんて、有り得ないタイムだ。もちろん、これまでもフルマラソンで5時間を超えた事は何度もある。でも、それは、終盤に足が痛くなって、トボトボ歩いた時のタイムだ。終盤に歩いても、もっと速かった事も何度もある。全然、歩かずに5時間だなんて、もう信じられない。レース前に、一度でも歩いてしまうと、心が切れてしまうけど、最後まで歩かなかったら、そんなにひどいタイムにはなりようがない、なんて言ってたのに、一体これはどうなってるんだ?
実は、足はまだ痛くない。足は重くなっているが、どんなに足が重くなっても痛くなければ走り続ける事ができる、なんて思っていたけど、足は痛くないのに、もう歩きたくて歩きたくて仕方ない。足が疲れたのだ。しんどくなったぐらいでは精神力でカバーして乗り切れると思っていたのに、本当に我慢できなくなってきた。本当に足が重い。一生懸命足を出しているつもりなのに、あんまり前に出ていない。
周囲を見ると、どう見ても歩いた方が早いだろうっていう遅いペースのランナーが次々と私を追い抜いていく。て事は、私のペースは、歩くよりも遅いってことか。て言うか本当に、めっちゃ歩くのが速いランナーが1人いて、私を追い抜こうとする。さすがに歩いているランナー(もうランナーとは呼べないが)に抜かれたのでは何をやってるのか分からなくなるので、必死で頑張って抜かれないようにした。なんとか歩かずに持ち堪えたのは、彼のおかげだったかも知れない。
一方、終盤になると歩いているランナーも大量にいて、かなりの数のランナーを抜いたが、少なくとも走っているランナーには全員に抜かれたと思う。

36km地点でのタイムは1km8分半近くにまで落ちており、確かに歩いているのと変わりないペースだ。しかし、このペースでは確実に5時間をオーバーしてしまう。いくらなんでも全然歩かずに5時間をオーバーなんて屈辱は避けたいので、なんとか頑張る。頑張ると言っても、次の37km地点38km地点のタイムも、大して速くはなっていない。ギリギリの戦いが続く。

四国三郎橋のたもとの辺りから吉野川の堤防を離れ南へ入っていく。いつも少しややこしくて、どこを走っているのか分かりにくい区間だが、今年はコースが微妙に変わっていて、よけいに現在地を分からなくなってきた。距離表示はあるものの、実感としてどの辺りなのか分からないため、精神的に辛い。
天気は悪くはないが、後半になって雲が出てきて日が陰り、こんな超スローペースでトボトボ走っていると、もはやランニングと言うよりウォーキングに近い運動量になり、身体から熱が発生しなくなり、身体が冷えてきた

終盤になると、ほんの小さな緩やかな坂でも周囲のランナーは大半が歩いているが、なんとか歩かずに走り続ける。ペースは歩いてもほとんど同じなので、無理して歩く意味は乏しいんだけど、「最後まで歩かずに完走した!」と言えるために、無理して走る。それに、歩いてもほとんど変わらないとは言え、今、ほんの少しの違いで5時間を切れるかどうかの瀬戸際だから、少しでも速く進む必要がある。

当たり前だが、その後も一向にペースアップはできず、5時間を目指してギリギリの戦いが続く。いつもレース前には、残り5kmになったら余力を全部振り絞ってラストスパートしようと思ってるんだけど、実際には絶対に無理で、ペースを維持することすら難しい。

さすがに、もう残り2kmになると、精神力でスパートできるかと思ったけど、やっぱり無理で、全然スパートできない。5時間超えの危機感は強烈なんだけど、その精神力をもってしても足の疲労はカバーできない。41km地点でも、まだ1km8分程度だ。やばい。本当にやばい。
ところが、残り1kmを切った辺りで、後方からやたら盛り上がった集団が迫ってきた。何かと思って見ると、なんと高橋尚子様が走ってくるのだ。そして、女王様を取り囲んで100人ほどものランナーが集団で走ってくるのだ。もうゴールが近いため、女王様はみんなに声を掛けて励ましてくれている。なんていう幸運だ。こんな所で女王様に出会えるなんて。これは一緒にゴールしなければならない。なーんて思って着いていこうとしたのに、なんと、この精神力を持ってしても着いていくことができない。足の疲労は極限にまで達していたのだ。それでも、なんとか少しでも着いていこうと努力した結果、多少はペースアップできた。


〜 ゴール 〜


そして、陸上競技場に入ってゴールが近づいてきた所に、高橋尚子女王様がみんなにハイタッチしてくれている。うわお、これは元気が入るぞっ!って言っても、もうゴール目前なんだけど。それでも、最後に女王様から元気をもらったおかげで、なんとか数十秒の差でギリギリ5時間を切ることが出来た。ああ、良かった。

ゴールした後は記録証をもらい、例年のように完走バンザイ隊の万歳三唱サービスを受ける。タイムは悪くても、一歩も歩かずに完走できたので、力一杯声を出して万歳したら、気持ち良くなる。
万歳が終わると、他のメンバーを待つためにゴール横に座りこむ。最近はフルマラソンを完走しても足が平気な場合が多い。昔はフルマラソンなんか走った後は、ゴールしたら足が痛くて動けなくなったものだが、最近は、どうしても余力が残ってしまってて、ゴールしても平気で歩けてしまう。全力を出し切れていない証拠だ。ところが今日は、足が痺れたような疲れで、一度へたりこむと、もう起き上がれなくなった。完全燃焼できた証ではあるが、タイムが異常に悪いので、完全燃焼の達成感には程遠い

D木谷さんとピッグはとうにゴールしただろうと思うけど、辺りには居ない。そのうち支部長とヤイさんがゴールしてくるだろうと思って待っていたが、なかなか現れない。でも、足を休めるのが気持ち良いので、いつまでも待っていた。
そしたら突然、D木谷さんが現れた。

(幹事長)「随分、速かったんじゃないですか?」
(D木谷)「それが終盤、足が動かなくなってしまって」


あんなに快調に飛ばしていたように見えたんだけど、終盤にガクンとペースダウンしてしまったらしい。もちろん、とは言え、私よりはずっと速かったんだけど。
二人でしゃがみ込んだまま待っていると、ようやく支部長がゴールした。

(幹事長)「なんか妙に元気そうやなあ」
(支部長)「かなり長距離、歩いたからな」


支部長も私と同様に今日はレースの序盤から徹底してペースを抑えて走ったんだけど、私と同じように、結局はいつものように後半は大きくペースダウンして、しかも終盤は歩くまくったそうだ。あまりに長い間、歩いたため元気が残っていたのだ。

結局、教訓としては、
  ・いくら前半から徹底してペースを抑えて走っても、後半になればペースダウンは避けられない
  ・前半から後半へペースダウンする幅は、いくら前半に徹底してペースを抑えて走っても変わらない
  ・つまり、前半を徹底的にペースを抑えて走ったら、後半のペースは徹底的に悪くなる

という事だ。
前半から遅く走ったら、身体はそれに順応して、その遅いペースが基準になってしまい、そこからどんどんペースダウンしてしまい、全体としてトンでもないタイムになってしまう、って事だ。
いつもは前半に調子に乗って飛ばして30km辺りからガクンとペースダウンして、終盤はトボトボと歩くけど、前半の貯金があるから、今日のタイムよりはマシだった。今日は20km過ぎてから早くもガクンとペースダウンして、そのまま最後まで足を引きずって完走したから、前半の貯金が無いのに後半は借金まみれになった。

(支部長)「ただ、前半から超スローペースだったから足は攣らなかったし、痛くならなかったな」
(幹事長)「それは真実やな」


タイムは悪くても、最後まで足が痛くならずに走れたら、それはそれで結構なことではある。それに、支部長は去年は途中で無念のリタイアをしたから、今年は完走できただけで満足だ。
そうこうしているとピッグと連絡が取れた。彼はあのまま快調にゴールし、既にタダのうどんを食べていた。ピッグも戻ってきて4人で待っていると、6時間目前になってヤイさんがゴールした。ヤイさんは今日も肉離れが再発しそうになって、怖々走ってきたそうだ。さすがに6時間をオーバーする訳にはいかないと、最後は頑張ったとのことだが、なんとか肉離れは再発しなかった。

十分すぎるほど休憩したので、ようやく立ち上がってうどんを食べに行く。コシのある讃岐うどんと違って、これ以上柔らかくしたら、ちぎれてしまって箸で持てないくらいの柔らかさだが、長距離を走って衰弱したお腹には柔らかいうどんが優しいし、暖かいうどんが非常に嬉しい。2杯でも3杯でも食べたいところだ。

うどんを食べ終わり、シャトルバスに乗って臨時駐車場へ帰るんだけど、なんと今年は臨時駐車場へ直行するシャトルバスが無くなってしまった。どういう事かと言うと、なぜか全てのバスはいったん、後夜祭会場の藍場浜公園に行く。そして、そこで各臨時駐車場行きのバスに乗り換えるのだ。なんで、そんな不可解なシステムになったのだろ。恐らくは全員を後夜祭へ強制的に参加させるためだろう。去年はゴールしたらすぐに貰えた完走メダルも、今年はなぜか後夜祭会場で配ることになっている。
釈然としないまま、とりあえずバスに乗るが、徳島市内は交通渋滞が激しく、とんでもなく時間がかかった。去年は渋滞が激しい市の中心部を通らずに吉野川河川敷へ直行するバスだったから、意外なほど順調にすぐ着いたけど、今年は絶望的な時間がかかった。しかも、そこで乗り換えるバスの乗り場は、ものすごく離れていた。痛い足を引きずって歩くには、遠すぎる。なんでこんなシステムにしたんだ!全然ランナーの立場になって考えていない。足が痛くて歩くのも大変だったので、完走メダルを貰いに行くのも諦めて乗り換えバスを目指してトボトボ歩いていく
そこから駐車場へも時間がかかり、ゴール会場を出発してから1時間半以上もかかった。

だいぶ遅くなったが、疲れを取るために、4年連続で恒例のあいあい温泉に行く。例年のように駐車場はいっぱいで、温泉の中も混雑していたが、露天風呂で足を揉みほぐすと、気持ち良い。マラソンの後の温泉は本当に気持ち良い。できることならビールも飲みたいところだが。
温泉から出てソフトクリームを食べながら反省会を行う。

(ピッグ)「今の練習量からすれば、満足ですね」
(D木谷)「私も、今の状態からすれば、まあまあでしたね」
(支部長)「タイムは良くなかったけど、完走できたし、足も痛くないし、ま、十分やな」


さすがにヤイさんだけは肉離れ寸前で硬い表情だった。そして私は、何度も言うように、考えられない惨敗ぶりだ。理解を超えている。去年も惨敗したと思っていたが、今年に比べたら随分マシだった。「最後まで歩かなかったら、そんなにひどいタイムにはならない」はずだったのに、最後まで一歩も歩かなかったのに5時間ギリギリだなんて、恥ずかしくて表を歩けない。暑くもなく寒くもなく、例年のような風も無く、体もどこも痛くなく疲れも無く、絶好のコンディションだったし、終盤に一気にペースダウンするいつもの失敗を繰り返さないように、前半は徹底的にペースを抑え、当初予定通りの一定のペースで走ったのに。原因は、たぶん単なる練習不足なんだろうなあ。本来ならゾウさんとの最後の決戦のはずだったんだけど、こんな悲惨なタイムなら、ゾウさんに蹴散らされていただろう。本当に危ないところだった。て言うか、よっぽど立て直さないと、来年は惨敗するのが確実だ。



さて、次のレースは5月末のオリーブマラソンだが、そろそろ暖かくなってきたので、自転車部の活動も再開しなければならない。

(ピッグ)「徳島マラソンの惨敗ぶりを嘆いている割には、ランニングじゃなくて自転車ですか?」

ランニングも大事だが、今年は琵琶湖一周サイクリングとか乗鞍岳自転車登山とか、色々とプランを温めているので、自転車の練習も再開しなければならないのだ。

(幹事長)「ゴールデンウィークに香川県最高峰の竜王山に登ろう!」
(支部長)「え?登山?」
(幹事長)「自転車で登るんやがな
(支部長)「それ坂やんか。幹事長は坂が好きやなあ」


メンバーの反応はイマイチだが、近々決行するぞ。


〜おしまい〜




戦績のメニューへ