第6回 奈良マラソン
2015年12月13日(日)、奈良県奈良市で第6回奈良マラソンが開催された。私にとっては初めての参加になる。
以前、住んでいた青森県内のマラソンや、東京マラソンのような全国規模の大都市マラソンを除けば、四国以外でのマラソン大会に出場するのは珍しい。
奈良マラソンは5年前の2010年に始まった新しいマラソン大会だ。2007年に東京マラソンが始まり、その大成功に刺激されて関西の3大都市である大阪、京都、神戸が仲良く同じように真似して2011年度からマラソン大会を始めたのだが、同じ関西でも奈良マラソンだけは1年前から始まっている。マラソン大会が増えるのは喜ばしいことだが、関西の3大都市が揃って同じ年に始めるなんて、節操が無いと言うか独自性が無いと言うか横並びと言うかライバル心が強いと言うか、ちょっと眉をひそめざるを得ないが、奈良マラソンは1年だけでも先行した事は評価できる。
(ピッグ)「何の評価ですか」
(幹事長)「行政の主体性の問題やな」
どうでもいいことだけど、今年も北陸の富山と金沢が揃って第1回のマラソン大会を、しかも同じ11月に開催している。もうちょっと調整できないのだろうか。
〜 エントリー 〜
今年5月のオリーブマラソンで阿南のスーパー女性ランナーY浅さんから聞いところによると、彼女は奈良マラソンによく出ていて、コースが良くてとっても楽しいマラソン大会なんだそうだ。ただ、関西の他のマラソン大会が、大阪マラソンも京都マラソンも神戸マラソンもエントリーが抽選となっているのに対して、奈良マラソンだけは先着順になっているので、秒単位の熾烈なエントリー競争があり、「数秒の差が命取りになりますよ」とのことだった。奈良マラソンの定員は12000人だが、奈良県民枠ってのが2000人分あり、県外者の定員は10000人だ。さらに抽選枠ってのも1000人分あり、インターネットでの先着順枠は9000人だ。似たような規模の徳島マラソンの申し込みが20〜30分で終わってしまう事を考えると、先着争いはもっと熾烈だろうと容易に予想できる。そのためエントリーには気合いを入れて臨んだ。
奈良マラソンの前にも、今年はエントリーに気合いを入れていた。なぜなら去年は、マラソンのオフシーズンである夏場に開催される数少ないマラソン大会の汗見川マラソンと酸欠マラソンのエントリーに連続して失敗してしまったからだ。ついうっかりして数日経ってから申し込もうとしたら、あんなマイナーな草レースなのに、あっという間に定員オーバーになってしまっていたのだ。それに懲りて、今年は申し込み開始の前からパソコン前に陣取り、申し込み開始時間になったら即座にパソコンのキーを叩くようにして汗見川マラソンと酸欠マラソンに無事エントリーできた。
て事で、今回も事前に時計を正確に合わせ、申し込み開始時間の8時を5秒過ぎてからエントリーボタンを押した。当然のように「ただいま大変混み合っていますから、しばらくお待ち下さい」ってメッセージが出る。奈良マラソンと同じく1万人規模の徳島マラソンだと、以前は10分以上も待たされたりしていたが、最近はランネットのサーバーが増強されたのか、待ち時間は少なくなっている。それでも、さすがは超人気の奈良マラソン。次の画面に移行したのは8分後だった。しかも、その次に再び待たされ、結局、本当のエントリー画面に入れたのは12分後だった。
ま、しかし、エントリー画面に入れたら、もうエントリーに成功したも同然で、淡々と入力していって、無事エントリーに成功した。思ったほどのシビアさでもなかったかな、なんて余裕を感じたりもしたが、後から確認したら、なんと8時22分には定員いっぱいになって受付終了となっていた。ちょっと背筋が寒くなる際どさだった。
上にも書いたけど、関西のマラソンでは、他の大阪、京都、神戸はいずれも抽選で、東京マラソンも抽選だ。抽選の方が心臓には悪くないけど、結果発表まで何ヶ月も待たされるし、予定が立たなくて困ったりもする。それに競争率が高いと滅多に当選しないから、せいぜい数年に一度しか出場できない。一方、先着順は熾烈な戦いであり、勝てば即座に出場が決定し、スッキリするが、レース本番よりもエントリーの方が厳しくて、エントリーに成功すればレース本番で完走するより満足してしまうという本末転倒状態となるので、どっちが良いかは一概に言えない。
ところで、熾烈な申し込み競争に勝利してエントリーできた事は喜ばしいんだけど、その結果、ここんとこマラソン大会が連続してしまった。4週間前には神戸マラソンでフルマラソンを走り、2週間前には瀬戸内海タートルマラソンでハーフマラソンを走り、そして今回、奈良マラソンでフルマラソンを走るのだ。つまり、1ヵ月の間にフルマラソン、ハーフマラソン、フルマラソンと3回もマラソン大会に出るのだ。私の日常から言えば、どう考えても過密スケジュールだ。これは珍しく神戸マラソンに当選してしまったせいだ。東京マラソンや大阪マラソン、神戸マラソン、京都マラソンと言った大都市マラソンは、どれも競争率が高いから、毎年、全て申し込んではいるものの、落選するのを前提として他の大会にエントリーする。で、今年は秒を争う熾烈な先着争いを勝ち抜いて奈良マラソンのエントリーに成功したかと思ったら、その4週間前の神戸マラソンにも当選してしまったのだ。そして、この2つのフルマラソンの間にある瀬戸内海タートルマラソンも、私のマラソン人生の原点であるからパスする訳にはいかず、図らずも1ヵ月の間にフルマラソン2回とハーフマラソン1回の過密スケジュールとなったのだ。
でも、本番のマラソン大会が続くと、それが絶好のトレーニングになって、後の方のマラソン大会では良い結果が出るかもしれない。
(ピッグ)「で、1つ目の神戸マラソンに惨敗した後、2つ目のタートルマラソンはどうだったんでしたっけ?」
(幹事長)「知ってるのに聞くな!」
タートルマラソンは、神戸マラソンほどの惨敗ではなかったが、ゴール直前数百mってところでピッグに逆転負けした苦い思いが蘇ってくる。だが、トレーニングの量としては十分のような気がするので、奈良マラソンでどういう結果が出るか楽しみだ。
〜 前日受付 〜
大都市のマラソン大会は、どこも前日に受付を済ませなければならない。参加者が多くて当日の朝では大混乱になるからだろう。しかし、奈良マラソンも大都市ではないくせに当日朝の受付は無く、受付を前日に済ませなければならない。遠方から参加する人にとっては負担感が非常に大きい。東京なら、どうせ当日に受付があったとしても高松を朝出発していては間に合わないので前日に移動せねばならないから仕方ないけど、関西になると、これは微妙だ。11年前の加古川マラソンや17年前の明石海峡大橋開通記念駅伝大会に出たときは、朝出発して楽勝で間に合った。明石や加古川が間に合うんだったら神戸や大阪だって間に合うはずだ。酸欠マラソンの時、朝の5時半に出発したのに比べたら、よっぽどマシかもしれない。ただ、そうは言っても、奈良まで行くとなると、さすがに難しいかもしれない。
ちなみに今年、初開催された岡山マラソンも前日受付だった。岡山なんて電車で1時間の距離だ。小豆島のオリーブマラソンやタートルマラソンより近い。始発電車では間に合わない徳島マラソンより時間距離は近い。楽勝で朝出発できる。それなのに前日しか受け付けないなんて、一体どうしろと言うのだ!電車で1時間の岡山に前夜から行って泊まる訳にはいかんじゃないか。おそらく、これは、岡山市が見栄を張って「岡山も大都市だ。だから他の大都市マラソンと同じように前日受付にするのだ!」なんて思っているのだろう。
岡山は許せないにしても、奈良は少し遠いから仕方ない。それに、神戸マラソンの時もそうだったけど、奈良にも親族がいるので、宿には困らない。とは言え、少し遠方なので交通費はかかる。しかも参加費も8200円かかる。8200円てのは大都市マラソンよりは少し安いが、決して安くはない。
普通の市民感覚から言えば、マラソン大会ごときに8000円も出すなんて高いと思う。ほんの少し前まで、マラソン大会の参加料はせいぜい3000円くらいだった。ただ、田舎のマラソンに比べれば大都市マラソンは参加する価値も高いので、東京マラソンの10800円はギリギリ許容範囲だ。どっちみち東京まで行くんだったら交通費や宿泊費でも何万円もかかるので、もう誤差の範囲だ。でも、東京よりだいぶ近い大阪マラソンの11800円とか神戸マラソンの10810円とか京都マラソンの12000円なんかは、高すぎるような感じがする。それに比べれば奈良マラソンの8200円てのは微妙に安いが、Tシャツやフィニッシャータオルや弁当までくれて4000円の瀬戸内海タートルマラソンなんかに比べれば随分高い。それでも、参加申込み受付開始と同時に瞬間蒸発してしまう圧倒的な人気を考えると、高くないと考える人間が多いんだろうなあ。
〜 奈良へ出発 〜
マラソン大会の前日の土曜日、高松を昼頃出発して奈良へは夕方に着き、そこから鴻ノ池陸上競技場に開設された受付会場へ前日受付に行く。鴻ノ池陸上競技場は当日のマラソン会場でもあるのだが、不便な場所にあって、近辺に駅は無い。そもそも陸上競技場ってのは、どこの県でもたいていは不便な場所にある。広い土地を確保するのが難しいからだろうけど、駅から遠く離れた辺鄙な場所にある。鴻ノ池陸上競技場もJR奈良駅からだと2.4km、近鉄奈良駅や親族の家からも2km近くある。大会当日の朝のスタート前はまだ疲れてないからいいにしても、マラソンが終わって疲れ果てた足を引きずって2kmもトボトボと歩いて帰るのは非常に厳しい。て言うか、スタート前だって、そんな事で貴重な体力を消耗したくない。
(ピッグ)「ウォーミングアップにちょうど良いくらいじゃないですか?」
(幹事長)「だから、わしらの辞書にはウォーミングアップっていう言葉は無い、としつこく言ってるだろ」
当然ながら自動車を停める駐車場は無いが、事前案内によると、なんと駐輪場すら無いとのことだ。そうは言っても、自転車を停める場所くらい周辺にいくらでもあるだろうと楽観視しつつ、取りあえず、前日の受付は親族の家から自転車を借りて出かけた。だが競技場の近くに自転車を勝手に停められるようなスーパーなんかは無いし、ちょっとその辺に停められるって感じでも無い。こら困ったなあなんて思いつつ会場に着いたら、なんと前日の受付時には自転車の駐輪場が用意されていた。それで駐輪場の警備に人に聞いてみる。
(幹事長)「明日もここに停めたらええんですね?」
(警備員)「いや、ここは今日だけです」
(幹事長)「ほな明日はどこに停めたらえんかいな?」
(警備員)「○×△#$%&¥@」
なーんだ、そうか。
自転車を停めて受付会場へ行く。天気予報では大会の2〜3日前は雨だけど、当日は大丈夫って事だった。実際、前々日の金曜日はとんでもない台風のような大荒れの天気だったらしいが、前日には雨の心配はすっかり無くなり、穏やかな天気になっいてた。
受付でゼッケンや荷物預けの袋をもらい、それから記念品のTシャツをもらう。奈良マラソンについては3年前の大会の様子をNHKのランスマでやっていて、その年のTシャツは黒字に白で背中に仁王様が描かれた格好良いものだったので期待していたが、今年のTシャツは色も白だし柄もイマイチだった。大阪マラソンや神戸マラソンのTシャツは格好良かったので、いきなり本番でも着たけど、今回はちょっとためらってしまう。
マラソン大会のTシャツってのは、なかなか困りものだ。昔のは生地が悪く、何回も洗濯するとボロボロになっていったが、その方がちょうど良かった。今のは生地が良くてしっかりしてて、いつまで着ても全然痛まないし、黄ばみも少ない。ほとんどのマラソン大会では記念のTシャツをくれるから、出場するたびに、どんどんTシャツが溜まっていき、押し入れが溢れることになるのだ。もちろん、デザインが良くて普段から着たくなるようなものなら良い。2年前に出た大阪マラソンのTシャツや先月の神戸マラソンのTシャツは素晴らしいものだった。機能性も優れているしデザインも良い。でも、ほとんどの大会でもらうTシャツは、マラソンの練習をする時にしか着られないようなダサいデザインだ。こないだ整理したら、使うアテのないTシャツが100枚を超えていた。「頼むから、Tシャツ要らないから参加料金を下げてくれ」と言いたい。
受付を済ませて、隣でやっている奈良マラソンEXPOってのに行ってみた。大きなマラソン大会では、たいてい前日受付している横で催し物をやっているのだが、4週間前の神戸マラソンの時は、会場はなんとなく閑散としていた。ランニング関係の物品販売や企業ブースなんかもあったんだけど、東京や大阪に比べると数も少なく賑わい感も乏しく、ちょっと寂しい感じだった。ところが今回は、大会規模はそんなに大きくないので、ランニング関係の物品販売や企業ブースは大したことないんだけど、屋台の出店なんかがたくさん出ていて、まるでお祭りのような大変な賑わいだった。これだけ賑わっていると、ブラブラするだけでも楽しい。
会場では公式ジャンパーも売っていた。Tシャツと同様、今年のジャンパーのデザインはイマイチだったが、売れ残り商品の在庫一掃処分だろうと思うけど、過去のジャンパーも安価で売っていて、去年のと一昨年のが格好良かったので2枚とも買った。これで今年の冬は寒くても楽しくトレーニングができるぞ。
ついでに明日の駐輪場について、大会本部の人にも聞いてみた。
(幹事長)「明日は自転車はどこに停めたらえんかいな?」
(本部員)「駐輪場は無いんです」
(幹事長)「でも警備の人が○×△#$%&¥@って言ってたで」
(本部員)「えっと、公式には無いんですよ。○×△#$%&¥@」
(幹事長)「分かった。みなまで言うな。苦しゅうない」
やっぱりそうか。そういう事だったのか。
〜 レースの朝 〜
当日の朝、起きて窓を開けると、さすがにひんやりする。奈良マラソンは坂が多くて厳しいという評判と共に、寒さも厳しいという評判を聞いた。地理的には奈良と四国なんて似たようなものだが、奈良は盆地なので夏も暑いけど冬も大変寒いのだ。
一般的にマラソン大会は秋から春にかけて開催され、特にシリアスなマラソン大会は冬場がメインとなる。寒いのが苦手な私としては、冬のマラソン大会は嫌いで、逆にみんなが嫌がる夏場の暑い時季の方が個人的には好きだが、好き嫌いとは別に、良い記録が出るのは寒い季節だ。7月末の汗見川マラソンなんか論外としても、5月のオリーブマラソンでも天気が良い時は猛暑のレースとなって惨敗するが、2月の丸亀マラソンなんかは寒いから良いタイムが出やすい。でも寒いのはやっぱり嫌で、特にフルマラソンの場合は終盤に疲れ切って体が冷えてくるので、本当に辛い。
て事で、奈良マラソンは坂の厳しさもさることながら、寒さが一番の不安材料だった。NHKテレビのランスマでやっていた3年前の奈良マラソンは、12月の初旬なのに雪が積もっていたし、ランナーもみんなマラソン大会とは思えないように、いっぱい着込んで厚着で走っていた。事務局から事前配付された資料なんかにも「防寒対策をしっかりしてください」なんて書いてある。そんなこと書いてあるマラソン大会なんて初めてだ。これまで、一番厳冬期の丸亀マラソンでもウィンドブレーカーやジャケットを着て走ったことはなく、せいぜい長袖シャツと半袖シャツの重ね着で対応してきた。だが、丸亀マラソンのようなハーフマラソンなら終盤でも頑張って走っているから体が熱を発散し、そんなに冷え込むことはない。しかしフルマラソンでは、前半は良いにしても、終盤には疲れ果ててトボトボと歩くようにペースダウンするから、体が熱を発散せず、体がどんどん冷えてくる。5年前の弘前アップルマラソンなんか、10月初旬にもかかわらず低体温症になって震えが止まらずに辛い思いをした。なので、一体何を着ようか悩んでいた。
(ピッグ)「出ました。幹事長の最大の悩み」
(支部長)「だから、何着てもタイムには影響無いって」
確かに、結果的に見ると、何を着たかでタイムに影響があった記憶は無い。しかし、厳冬の奈良マラソンでは、タイムどころか死活問題になる恐れがあるのだ。
ただ、今朝の感じでは、そんなに恐れていたような寒さではない。前々日の台風のような暴風雨の影響かどうか知らないが、今日は気温があんまり低くならないみたいだ。おまけに風も無い。て事で、防寒着を着る必要は無いと判断し、取りあえず長袖のシャツと半袖のTシャツを重ね着する。これでも寒ければビニール袋をかぶれば何とかなるだろう。
着るTシャツは神戸マラソンでもらったTシャツにする。奈良マラソンで神戸マラソンのTシャツを着るなんて喧嘩を売ってるようだけど、格好良いから許してもらおう。
下はランニングパンツの下にランニングタイツを履いた。最近は、ランニングタイツを履くランナーの方が多いくらい普及しているが、私はランニングタイツのサポート機能を全く信じてないので、普段は履かない。でも今日は防寒用に履く。さらに、昨日、事前受付に自転車で行ったら手が寒くてかじかんだので手袋も履く。ただし、雨や雪の可能性は無いので帽子は被らない。
朝食はおにぎり2個だ。以前はマラソン大会の朝食と言えば、決まって菓子パンをたくさん食べていた。もともと菓子パンは大好きだし、マラソン大会に出る時は、たいてい普段より早く家を出るので、手軽に菓子パンを食べていたのだ。しかもエネルギー補給と言うことで、たくさん食べていた。
ところがここ数年、2008年の徳島マラソンや2009年の走れメロスマラソンや一昨年のオリーブマラソンのように、マラソン大会で走っている最中にお腹を壊してトイレに駆け込むことがある。そこまでいかなくても、ゴールと同時にトイレに駆け込むこともよくある。去年のタートルマラソンだって、ゴールしてソーメンを食べたところでお腹の調子が悪化の頂点を迎え、トイレに駆け込んだし、今年の丸亀マラソンも苦しんだ。この原因を深く考えてみたら、菓子パンが原因ではないのかって思えてきた。て事で、今年3月の徳島マラソンから菓子パンじゃなくて、おにぎりを食べるように変えた。さらに用心には用心を重ねて、下痢予防のために下痢止めの薬も飲むようにした。そのせいかどうかは分からないが、少なくともそれ以降はマラソン大会でお腹を壊していない。
これは単なる気のせいかもしれないとは思っていたが、ところが先日、11月18日放送のNHK「ためしてガッテン」によると、パンなんかに含まれるフルクタンという糖類は消化に悪く、下痢になりやすいんだそうだ。もちろん、これは個人差があって、みんながみんな下痢する訳ではない。もしそうだったら、誰もパンなんか食べなくなるだろう。でも、牛乳を飲んだら下痢をする私のようなタイプの人間は、朝、空きっ腹にパンをたくさん食べると数時間後にはお腹を壊すらしい。実は普段でも毎朝、パンは食べてるんだけど、通常はお腹は大丈夫だ。量の問題だろうと思う。普段の朝食はおかずも多くてパンの量は少ないけど、マラソン大会の朝食って言うと、エネルギー補給とばかり砂糖なんかを大量に使った甘い菓子パンをたくさん食べていたので、とてもお腹に悪かったのだろう。一方、お米に含まれている糖類は消化が良いとのころで、おにぎりに代えれば問題ない。量も控えめに2個にした。後はおまけとして、スタート直前に食べるゼリーも用意した。
〜 会場へ出発 〜
トイレも順調に大の用を済ませ、準備ができたので家を出る。ちょっと早いかもしれないって思ったけど、自転車を停める場所を知らないので、ちょっと早めに出たのだ。ちょっと走ると、色んな道路を色んな経路で大勢のランナーが歩いている。奈良は古い町で、車が通りにくい狭い路地が多く、色んな経路で競技場まで行けるのだ。昨日、警備員に聞いた方面へ適当に走っていくと、自転車の人もチラホラ走っていて、その後を着いていくと、あっさりと自転車を停めることができる場所に着いた。なるほど、そういう事か。
自転車も無事、停められたので、余裕を持って会場へ入る。フルマラソンのスタートは9時だが、スタートブロックへの整列は8時45分までで、手荷物を預けるのは8時半までだ。手荷物ったって、預けるのはランニングウェアの上に来ているトレーニングウェアくらいのものだから、ギリギリまで着ておく。
今日のフルマラソンに出場する人は12000人だが、知っている人と言えば、阿南のスーパー女性ランナーY浅さんくらいだ。さすがに、こんな大勢の中からたった一人の知り合いを捜し出すのは不可能だと思って全然期待もせずにブラブラしていたら、セーラー服を着た一団がいる。動物の格好をした仮装ランナーはどこのマラソン大会でも一般的だし、最近はメイド姿やセーラー服も珍しいものではない。でも、いい歳したおっさんやおばさんがセーラー服なんか着ていると気持ち悪いから、つい注目してしまう。そしたら、おや?なんとっ!
(幹事長)「Y浅さんやんかーーーーっ!!!」
(Y浅)「うわ、こんなとこで見つかってしもた。よう分かったねえ」
(幹事長)「いや、なかなか分からんかった。
て言うか、変な集団やと思って凝視はしてたんやけど、まさかY浅さんとは思わんかった!」
女性はY浅さんともう1人、男性も2人で、計4人でセーラー服で走るんだそうな。
(男1)「それにしても恥ずかしいなあ」
(男2)「自分ではよく見えないから、あんまり恥ずかしくはないですよ」
(男1)「さっきトイレから出てきたら女性にキャーって言われたがな」
(幹事長)「まさか女子トイレに入ったん?」
(男1)「いや、さすがにそれは止めたけどな」
Y浅さん軍団は、普段から変わった格好が多い。でもこれまでは、タイガース応援団スタイルで固めるとか、常識的な範囲だった。
(幹事長)「何でこんな事になったん?」
(Y浅)「四国でこんな格好してたら知ってる人に見つかって恥ずかしいやん。
奈良まで来たら知った人もおらんやろ思って、こっそりと」
何が、こっそりなんやろ。どう見ても、自分からわざわざ人目を引いているとしか思えない。
セーラー服姿のY浅さん(右)と幹事長(左)
そろそろ時間が来たので手荷物を預けに行く。手荷物預け場は、絶望的なほど混雑していて、とんでもなく時間がかかった。あまりの混雑ぶりに時間内に預けられない人が大量に発生していたため、時間を過ぎても、止めどもなく預けられていた。どう考えても動線が悪すぎる。
それから最後のトイレに行く。家を出る時に済ませてきてはいるが、スタート直前にも行っておいた方が安心だ。ただ、マラソン大会の会場でトイレに行くのは大変だ。スタート前のトイレは、どこも大変な混雑をして、ものすごい長蛇の列が出来ている。だが、最近は空いているトイレを探すのが得意になった。動物的勘と言うか野性的勘と言うか、的確に空いているトイレを探し出せるようになった。たいていの場合、臨時の仮設トイレは分かりやすいから混雑しているが、既設の建物の、しかも奥まった分かりにくい場所にあるトイレは空いている。
(ピッグ)「字が小さくて読みにくいですけど」
(幹事長)「極秘情報やからな」
トイレも済まし、ゼリーも食べて、さらに用心のために下痢止めも飲んでから、準備万端でスタートブロックに整列する。スタートブロックの入り口には、防寒用のビニール雨合羽が用意されていた。ビニール袋は持ってきているし、今日の天気ならビニールは不要かなとも思ったけど、まだ寒さへの不安があったので、取りあえずもらってポケットに入れておく。
スタート地点の集合場所は申告した予想タイム順になっているが、これは速いランナーと遅いランナーが一緒くたにごちゃ混ぜになっているとスタート時の混雑がひどくなり、混乱するからだ。こういう場合、申告する予想タイムは正直な方がいい。実力より前からスタートすると、周りのみんなから置いてきぼりになって精神的に落ち込むか、あるいは周りの速いランナーにつられて無理して飛ばしてしまって潰れる可能性が高い。逆に、後ろの方からスタートすると、おしゃべりしながら固まって走る遅いおばちゃん連中にブロックされて前へ行けない。なので、自分の実力通りの場所からスタートするのが一番良い。
私が並んだブロックは、ちょうど真ん中当たりだ。フルマラソンの部の定員は12000人だから、ざっと言って前に6000人、後ろにも6000人のランナーがいるわけだ。前の方では既に開会式が始まっていて、音声だけはスピーカーで聞こえるけど、何やってるか全然見えない。有森裕子がゲストで来ているらしいって事だけは分かった。
スタート地点に並んだら、以前はストレッチすらやってないことを思い出し、慌ててスタートまでの短い時間でストレッチをやっていた。しかし、我々のように体力の無いランナーにとってウォーミングアップが百害あって一利無しなのは常識になったが、最近は、ストレッチすら無用という説を聞き、それを実践しているので、素人のように慌ててストレッチの真似事をしたりはしない。
また、フルマラソンの時の必須アイテムとしてウォークマンがあるが、今日は初めてのコースで色々楽しもうと思っているので、ウォークマンなんかは聴かない事にする。終盤トボトボと歩くときに気を紛らせるためには必要なんだけど、そうならないことを願う。
ウォーミングアップやストレッチはしないんだけど、最近、スタート地点でシューズの紐を締め直すと、なんとなくしっくりこない。
(ゾウ)「それも以前からですよねえ。ちょっと気にし過ぎじゃないですか?」
(支部長)「そんな事でタイムは変わらんって」
確かに、何を着るかと同じように、靴紐の締め具合でタイムが変わることはない。よっぽどグスグスになってほどけかけるとか、きつくて足が痛くなるなんてのは論外だけど、そなな事はするはずがない。ほんとに微妙な締め具合なんだけど、右足と左足の紐のきつさが少し違っているような気がして落ち着かないのだ。実は、かつての恩師、鈴木先生も、いつも「左右のきつさが違うなあ」とか言って何度も何度も締め直していたので、気になる人は気になるもんだ。しかし最近は、そう言った気分の問題だけでなく、左の足の甲が痛くなるのだ。そんなにきつく締めているつもりはないんだけど、ちょっと痛い。痛くなくなるまで緩めると、さすがに脱げてしまいそうなので難しい。
〜 スタートの合図 〜
そうこうしていると、スタートの合図が鳴った。
(ピッグ)「今回も神戸マラソンと同じように、割りと早くレースの記事になりましたね」
(幹事長)「一人で参加すると面白い事も少ないからな」
(支部長)「でも神戸マラソンはスタートしてからが長かった。油断したらいかんで」
(ピッグ)「神戸マラソンの記事は1kmごとのラップを細かに分析してましたからね」
(幹事長)「今回は、もう止めますってば」
スタートの合図は鳴ったものの、もちろん我々はすぐには動き出せない。しばらくするとようやくダラダラと歩き始める。歩き始めても、相変わらずシューズの紐がしっくりこない。すぐ痛むのだ。タイムは自分がスタート地点を越えた時点からネットタイムで計測してくれるので、焦らず、何度もしゃがみ込んで紐を締め直すが、どうやっても痛みが取れないので、最終的には諦めた。たぶん今日は、この痛みは治まらないのだろう。我慢できないほどではないから、気にしないでおこう。
(ピッグ)「今回の目標タイムは?」
(幹事長)「いや、今回はもう、完走できればよろしい」
もちろん、出場するからには良いタイムを狙いたいのは山々だ。でも、このコースは坂が多くて厳しいので、楽しんで完走できれば、それだけで良しとしたい。
4大都市マラソンの東京マラソンと大阪マラソンは間違いなく群を抜いた楽しいマラソンだった。神戸マラソンは、都市の規模が東京や大阪より小さいので、大都市マラソン特有のパノラマ感は少し落ちたが、それでも小豆島や吉野川で開催される四国のマラソン大会に比べたら圧倒的に楽しかった。大都市のマラソンは普段なら絶対に走れない大都市のど真ん中を走れるので、風景が変化に富んでいて最後まで退屈しないし、沿道の応援も楽しい。これは私が田舎に住んでいるからそう感じるのだろうとは思う。逆に大都市に住んでる人からすれば、普段見慣れた大都市じゃなくて、自然の中を走る田舎のマラソンの方が魅力を感じるだろう。
で、奈良マラソンはどうかというと、決して大都市ではない。田舎の県庁所在地に過ぎない。だがしかし、四国の地方都市と違って古い文化遺跡がふんだんにある。平城宮跡や奈良公園や天理など、見所が多い。ただひたすら海岸線を走る瀬戸内海タートルマラソンや、ただひたすら吉野川の堤防を走る徳島マラソンなんかと違って、なんだか楽しそうだ。そんなコースでしゃかりきになって良いタイムを出そうとしたって仕方ない。まずは周りの景色を楽しみながら、のんびり走る観光物見遊山マラソンにしたい。
さらに、奈良マラソンのコースは、フラットな神戸マラソンと違ってアップダウンが激しく、瀬戸内海タートルマラソン並の高低差がある非常に厳しいコースだ。瀬戸内海タートルマラソンのフルマラソンには何度も出たが、終盤の坂では例外なく歩いた。疲れた足を引きずり冷えた体を震わせながらトボトボ歩いた。あれは辛い。とても辛い。12月の奈良は11月の小豆島より気温が低いから、下手するともっと悲惨な運命になる可能性がある。それだけは絶対に避けたい。
てな事で、しゃかりきに走るんじゃなくて楽しんで走りたい、という気持ちと共に、坂が厳しいコースなので前半を抑えて走らなければ終盤に潰れてしまうという恐怖もあり、良いタイムを狙う余裕は無いのだ。最後まで歩かずに完走できれば万々歳だ。
(幹事長)「どんなに遅いペースでも、全然歩かずに完全に完走できたら、そんなに悪いタイムにはならないしな」
(ピッグ)「そうですよね。ちょっとでも歩いたらタイムは一気に悪くなりますからね」
一度でも歩いてしまうと、「ちょっとだけ」は通用しなくなる。心が切れてしまって、絶対に繰り返し歩いてしまう。歯止めが無くなるのだ。逆に、最後まで歩かなかったら、そんなにひどいタイムにはなりようがない。いくら遅くても歩くのと走るのではペースが違うからだ。そして、足が痛くさえならなければ最後まで歩かずに済む。終盤は足が重くなるが、どんなに足が重くなっても、痛くなければ走り続ける事ができる。ペースは極端に落ちて歩くようなスピードになったとしても、痛くさえなければ、足を引きずりながらゆっくり走り続けることができる。しかし、足が痛くなると我慢できない。立ち止まって屈伸したりして、なんとか痛みを取るしかない。
最後まで足が痛くならないようにするためには、前半のペースを抑えることだ。「序盤は我慢してペースを抑えろ」というのは耳にタコが出来るほど聞いてきたが、いくら聞いていても、いざ本番になるとアドレナリンが爆発してしまい、「今日だけは例外的に調子が良さそうだ。こんなに調子が良い時に記録を狙わないとしたら、いつ記録を狙うのか?今でしょ!」なんて思ってレース序盤から頑張って走ってしまい、終盤に大きなツケが返ってきて惨敗してしまう。分かっていても、同じ過ちを過去何十回も繰り返してきた。それが一昨年の大阪マラソンでは、体調不良だったし、せっかく滅多に走れない大都市大阪のど真ん中を走れるマラソン大会なのだから、のんびり見物しながら楽しんで走る観光マラソンに徹して、最初からものすごく遅いペースで走ったら、最後まで足が痛くならなかったのだ。それまでフルマラソンに出ると、終盤は必ず足が痛くなって辛くなり、「なんでアホみたいに、こんなレースに出たんやろ。もうフルマラソンなんて出るの止めよう」って思っていたのだが、大阪マラソンで開眼したのだ。その後は、去年の徳島マラソン、今年の徳島マラソン、1ヵ月前の神戸マラソンと、同じように前半から徹底してペースを抑えて走ったおかげで、最後まで足が痛くならず、全然歩かずに走り続けられた。
(ピッグ)「あれ?神戸マラソンでは歩きませんでしたっけ?」
(幹事長)「だから、あれは給食所で、走りながらじゃ食べにくいから少し歩いて食べていただけですぅ」
(ピッグ)「食べ終わってからも惰性で随分歩いてましたよね」
(幹事長)「そんなに歩いてないですぅっ」
もちろん、前半から徹底してペースを抑えて走ると、タイムはイマイチだ。なので、記録を狙う時は、徹底してペースを抑えるとは言いながら、どの程度まで抑えるか考えなければならない。しかし今日は、坂が非常に厳しいコースなので、とにかく歩かずに完走することだけが目標だ。
〜 スタート 〜
スタートの合図があってから7分近く経ってから、ようやくスタート地点を越えた。大都市マラソンほどではないにしても、スタート直後はランナーが混雑して走りにくいが、周りのランナーとは同じようなペースなので、あんまり混乱もなく進んでいく。鴻ノ池陸上競技場の前のやすらぎの道に設けられたスタート地点から1kmほどは下り坂になっている。そのせいか、多少の混雑はありつつも、割りとすんなりとペースが上がっていく。ウォーミングアップ代わりとしては十分なスピードだ。
しばらく行くと最初の1km地点の距離表示があり、時計を見ると、ぎょぎょ!6分ちょっとだ。なんぼなんでも速すぎる。最初からこんなスピードで走っていたら、絶対に終盤に潰れる。特に今日は坂の多い厳しいコースなので、余力を残しておかなければならないのに。ちょっと自重しよう。
奈良女子大学の西側を通ってさらに500mほどやすらぎの道を南下したら高天の交差点で広い道路に出て、そこを西に曲がる。ここから平城宮跡まで直線道路が続く。曲がってしばらくすると2km地点があったが、下り坂が終わったにもかかわらず、相変わらず1km6分ちょっとのペースだ。どんなレースでも、レースの出だしは気合いも入っているし調子に乗ってペースが上がるもんだが、今日の厳しいコースを考えると、いくらなんでも速すぎる。真剣にペースを抑えなければならない。
ただでさえ普段と違って気温が高かったうえ、天気が良くて日射しが出てくると、寒くないどころか暑くなってきた。ビルの陰に入った時は日射しが遮られて良いんだけど、そうでないときは日射しが当たって、かなり暑い。あれだけ防寒の事ばかり心配していたのに、こんなに暑くなるとは思ってもみなかった。空を見る限り、今日は晴天がこのまま続きそうだ。まだ9時過ぎだが、この先、気温はどんどん上がっていくだろう。決断するなら早い方がいい。やるなら、そう、今でしょ!
(ピッグ)「まさかとは思いますが、走りながらシャツを脱ぐんじゃないでしょうね」
(幹事長)「もう慣れてるから」
最近では、2枚着ていたのをスタート直前になって1枚脱ぐのはしょっちゅうだ。3年前の丸亀マラソンや瀬戸内海タートルマラソンではスタート地点でTシャツを1枚脱いでその辺に置いて走ったし、今年の徳島マラソンや神戸マラソンでは脱いだ長袖シャツを腰に巻いて走った。フルマラソンだと終盤に力尽きてトボトボと足を引きずって歩く事も多いから、そういう事態に備えて最後まで持って走ったのだ。今回は既に走り出しているが、一昨年の大阪マラソンでも、今回と同じように途中で暑くなったので走りながら下に着ていた長袖を脱いだし、終盤には寒くなったので再び長袖を着たりした。走りながらの着脱も、慣れてしまえば簡単なものだ。
て事で何の抵抗も無く、下に着た長袖シャツを脱ぐことにする。まずは半袖Tシャツと長袖シャツを一緒に脱いで裸になる。それまで暑かったから裸で走ると気持ち良い。そのまま走りたかったが、さすがにまずいと思い、しばらく走ってから半袖Tシャツだけを着た。長袖シャツは終盤に寒くなった時に備えて腰に巻いた。当然、手袋だって脱いだ。
(ピッグ)「ようやりますねえ。他にそんな人はいないでしょ?」
(幹事長)「みんな2枚も3枚も着て暑そうだったなあ。なんで脱がないんかなあ」
(ピッグ)「寒さが苦手ってのは知ってましたけど、暑さもそんなに苦手ですか」
(支部長)「暑くても寒くてもタイムは変わらんってば。神経質になり過ぎ!」
上だけでなく、下に履いたランニングタイツも暑かったが、さすがに脱ぐのが面倒なので、そのまま走る。
着替えてたせいか、次の3km地点で見た1kmラップはだいぶペースダウンしていた。ちょうどいいくらいのペースだ。でも、奈良市役所の前を通り過ぎた次の4km地点での1kmラップは再びペースアップしていた。確かに、坂があったり着替えしたりでペースは安定していなかったかもしれないが、それにしてもペースが上下している。
ここで例によって距離表示疑惑が出てくる。マラソン大会の距離表示は、必ずしも正確ではないっていう疑惑だ。龍馬脱藩マラソンは明らかに距離表示が間違っていたと確信を持って断言できるけど、そういうマイナーな大会に限らず、先月の神戸マラソンの距離表示も大いに疑問があった。あんなにきっちりした大都市マラソンの神戸マラソンともあろうものが、距離表示が間違っているなんて俄に信じがたいが、どう考えてもおかしかった。なので、奈良マラソンだって距離表示が間違っていても何の不思議も無い。て事で、1kmごとのラップに一喜一憂するのは止めた。
半袖シャツだけになって爽やかな気分で直線道路を走ると、4.5kmくらいの所に平城宮跡がある。遠方に巨大な朱雀門が見え、さらにその向こうに大極殿が見える。平城宮跡にこんな巨大な建造物が建っているなんて、最近まで知らなかったが、本当に立派なものだ。その朱雀門の前に第1給水所がある。まだ喉は渇いてないが、この暑さではこまめな水分補給が必要なので、スポーツドリンクを飲む。スタート前に解消できなかった左足の甲の痛みは、予想通りだんだん感じなくなってきて、もう大丈夫だろう。
しばらく行くと5km地点の折り返しがある。1kmごとの距離表示については早々に信用できなくなっているが、5kmごとの地点ではチップでタイムを計測する設備が設置されているので、ここの距離は正確だと思われる。最初の5kmのタイムは、そんなに良くもなく悪くもないってレベル。今日は終盤に備えてペースを抑えて走らなければならないから、むしろまだ速すぎるくらいだ。
折り返してすぐに最初の第1関門があり、さらに進んで7km地点には第2給水所がある。ここでもこまめに水分を補給しておく。
最初からこまめに水分を補給しておきながら言うのも何だけど、なんだか尿意を感じてきた。スタート直前にトイレには行ったんだけど、こんなに早々に尿意を感じるのはどうしてだろう。実は神戸マラソンでも、途中で我慢できなくなってトイレに行った。神戸マラソンも今日も、スタート直前にトイレを済ませたし、暑くて汗をいっぱいかいているにもかかわらず、だ。マラソン大会の朝は、水分を十分に補給しておかなければならないと思って大量の水分を飲んでいるのが原因だろうか。ハーフマラソンなら最後まで我慢できるけど、フルマラソンでは我慢し続けるのは無理だ。もう少し水分は控えた方が良いのかも知れない。今日も最後までは我慢できそうにないので、どこかでトイレに行かざるを得ない。トイレに行くと当然ながらタイムをロスしてしまう。今日はタイムの事なんか気にせず完走だけが目的とは言え、できるなら無用なタイムはロスしたくない。なので、どうせトイレに行くのなら、疲れたときに行って休憩がてらに用を足すのが理想だ。なので、しばらくは様子を見よう。
と、その時、前方にいきなり有森裕子が現れた。ほんと、目の前に突然現れて、危うくぶつかるところだった。ランナー達が走っているど真ん中に立ってハイタッチしながら激励してくれているのだ。もちろん思いっきりハイタッチしたけど、ほんと危なかった。
さらにしばらく進むとさきほど曲がった高天の交差点に戻り、今度はそのまま奈良公園に向かう。この辺りから春日大社の辺りまで上り坂になる。大した傾斜ではないんだけど、真っ直ぐに上っているのできつそうに見える。
9km地点の手前には近鉄奈良駅があり、そこに親族が待ってくれているはずだ。2年前の東京マラソンでは、東京に住んでいる親族に写真を撮って貰おうとしたんだけど、黄色い派手なカッパの格好をしていたにもかかわらず、お互いになかなか見つけられずに苦労した。なので、今日は近鉄駅前のローソンの前、と場所をきちんと指定しての待ち合わせだ。現場に行くと、すぐに分かったのでポーズを取って写真を撮って貰う。さらに不要になった手袋やビニール袋やビニール雨合羽も渡す。腰に巻いた長袖シャツはどうしようかと一瞬悩んだけど、レース終盤になって体が冷えてきた時の事を考えて、そのままキープする。
半袖でポーズをとる幹事長
9km地点で見た1kmラップは大きくペースダウンしていたが、写真を撮ったり坂になったりしているので当然だ。9km地点を過ぎると奈良公園に入り、トイレの表示がたくさんある。このコースは、臨時の仮設トイレと既設のトイレの活用と合わせて、最初からトイレが多いんだけど、特に奈良公園に入ると多くなる。そうなると、よけいに尿意が気になる。どうせ最後までは我慢できないんだったら、疲れてから行くなんて事は考えずに、早めに行ってスッキリさせたい気持ちになってきた。レース序盤のトイレは、どこもそんなには混んでいない。スタート直後からトイレに駆け込むような準備不足のランナーは少ないからだ。「スタート直前のトイレは混雑しているから、いっそ居直ってスタートしてからトイレに行った方が早い」なんていうアドバイスがあるくらいだ。ただ、そうは言っても、どこも行列は出来ている。しかし、上にも書いたように、最近は空いているトイレを探すのが得意になった。動物的勘で空いているトイレを的確に探し出せるようになっているのだ。狙い目は、やはり臨時の仮設トイレではなく、奥まったところにある既設の建物だ。コースは東大寺の大仏殿の辺りで南へ折れるが、10km地点の手前まで行ったところに、コースからちょっと外れた場所に既設のトイレを見つけた。どう見てもガラガラだったので、迷わず駆け込んだ。
スッキリしたところで飛火野の10km地点を通過してタイムを確認する。当然ながら、この5kmは、さっきの写真撮影とトイレで大きくタイムをロスしているが、ま、仕方ない。
さらに進んで第2関門を通過したら奈良教育大学の横をいったん西に折れて11km地点を通過する。ここには第3給水所もあり、水を少し飲んで顔もあらう。
コースはさらにすぐ再び南へ折れ、ここから4km以上はひたすら南へ向かう。緩い下り坂になっているらしいが、走っていて分かる程の傾斜ではない。道は田畑も混じる田舎道で、退屈しがちなコース設定だが、沿道の応援が盛んで、なかなか楽しい。関西らしい派手なノリで、神戸マラソンより奈良マラソンの方が沿道に人の数は少ないけど応援は楽しいような気がする。中にはロックンローラーの格好をして「完走ワッケンロー、ワッケンローっ!」って延々とひたすら叫んでいるおじさんが居た。後で調べたら関西ローカルで「こんにちワッケンローShow」ってテレビ番組があり、その関係らしいが、それにしてもずうっと叫んでるのが面白かった。
それに加えて、奈良マラソンではボランティアの数の多さも特筆すべきだ。どんな山間部でも数十m間隔で必ず立っていて、雑用をこなしながらランナーに声援を送ってくれる。前夜祭もお祭り騒ぎで盛り上がっていたけど、市民県民あげての歓迎が嬉しい。
ただ、退屈はしないものの、まだレース序盤なのに、早くもなんとなく足に疲労感が出てきた。筋肉が疲れたと言うより、股関節辺りに疲労を感じる。ここんとこマラソン大会が続いているので、関節なんかに負担がかかっているのかもしれない。まだまだ1/3も来てないのに、不安になってくる。
でも、真っ直ぐな道をひたすら走って15km地点でタイムを見ると、この5kmも安定したタイムをキープできていた。疲労感は感じ始めたものの、写真タイムやトイレ休憩を除いて、最初からずうっと同じペースをキープできている。最初から決して頑張らず、ごく自然に軽く走っていて同じペースをキープできているのが嬉しい。
15km地点を過ぎてしばらく走ると、今度は東へ折れる。第3関門を過ぎて進むと、前方には奈良盆地の東側に横たわる山地が見える。最初はフラットな直前道路なんだけど、16km地点を過ぎた辺りから徐々に上り坂になっていく。途中、第4給水所では早くもバナナが登場した。普通のフルマラソン大会では、食べ物が出るのは後半に入ってからだ。今日はなんだかお腹が空いていたので、ここでバナナが出たのは嬉しい。
第4給水所を過ぎて、真っ直ぐな直線コースを17km地点まで走って時計を見てびっくり。1kmラップが7分半くらいにまでペースダウンしている。さっきの16km地点のラップもだいぶ悪くはなっていたが、こんなに大きくペースダウンしているとは思ってなかった。
しかも、17km地点で南へ曲がると、直線道路は終わり、いよいよ山道らしい坂が始まる。傾斜そのものは、相変わらずそんなにきつくないけど、延々とウネウネと坂が続いているのが、はるか遠方まで見えるので気が遠くなる。そして、その道にはおびただしい数のランナーが走っている。その数を見ても、やはり気が遠くなる。坂道は途中で山の中へ入っていって見えなくなるので、どこまで続いているのか分からない。でも、これは事前に分かっていたこと。十分に覚悟はできている。
ペースダウンしてきたとは言っても、当然ながらまだまだ体力は残っているので、頑張れば坂道でもペースをキープすることはできる。でも、気持ち良いからと言って調子に乗ってストライド走法の大股でグイグイ上っていって、前半のうちから無闇に頑張って体力を消耗すると、後から大きなダメージが来る。NHKのランスマで金さんは、「奈良マラソンの長い上り坂で無理に筋肉を使うと、終盤に大きなダメージになって返ってくるので、チョコチョコとピッチ走法で刻んで上るのが良い」と言っていた。
チョコチョコと着実に坂道を上っていくと、途中で忌野清志郎のソックリさんの今の葉狂志郎さんが現れる。バカでかい音量でRCサクセションの曲を流しながら、大声で叫びながらハイタッチしてくれる。NHKのランスマにも出ていて、絶対に会いたいと思っていたので嬉しかった。なんでも毎年応援してくれている奈良マラソン名物らしい。
このおじさんに元気をもらったせいか、18km地点での1kmラップは少しだけマシになっていた。
さらにしばらく進むと、長かった上り坂がようやく終わり、白川中央通路北門から天理大学の敷地に入る。すっかり山間部の道路だ。途中、19km地点の第5給水所を過ぎ、しばらく進むと白川中央通路南門で天理大学の敷地外に出て、いったん下って再び少し上って第4関門の20km地点まで来た。この5kmは上り坂だったこともあり、凄まじくペースダウンしていたが、ようやく下り坂基調になってきたため、当初のペースに戻ってきた。
20km地点で反対側車線の復路を見ると、帰りはここが30km地点になっている。つまり、折り返してここまで戻ってくるのに、まだ10kmも走らなければならない。20km地点と言えば、ほぼ中間点に近いはずなんだけど、このコースでは折り返し点まで、まだ5kmも走らなければならない。でも25km地点には楽しみにしているぜんざいのお接待があるので、それを心の支えに走っていく。
20km地点を過ぎると白川大橋に差し掛かる。この橋は川にかかっているのではなく名阪国道にかかってるんだけど、標高が高く、見晴らし抜群で気持ち良い。たぶん、いつもの冬なら冷たい風が吹き荒れてるんだろうけど、今日は風も無くポカポカと暖かく、本当に気持ち良い。
ここから22km地点まで下り坂が続く。上り坂と同様に、そんなに急な坂でもないんだけど、距離が長いので、テレビで金さんは「下りだからと言って大股でガンガン走ると足に筋肉にダメージが溜まり、終盤に足が動かなくなるから、上り坂と同じように小走りで下りるのが良い」と言っていた。ハーフマラソンなら気にしないでガンガン下るんだけど、今日は後半も同じ坂を上り下りするので、金さんのアドバイス通り、慎重に下っていく。坂をどんどん下って第6給水所を過ぎると22km地点に着き、ようやく坂が終わって天理市の平野部に降りてくる。さすがにこの2kmは下り坂だったので本日最速のラップになっていた。
続いて天理教教会本部や天理高校など、天理教関係の荘厳な建物を見ながらフラットな道をチョコチョコと折れ曲がって走る。それにしても天理教関係の建物は立派だ。町ごと世界遺産に指定してもいいくらいだ。
天理教教会本部の前を通って25km地点の手前の天理市役所前にようやく折り返し点がある。距離で言えば、もうとっくに半分は過ぎてるんだけど、コース的にはここでようやく半分ってイメージだ。
折り返すと、後ろからくるランナーの大群衆が見える。ものすごい数だ。だいたい全体の半分くらいの場所からスタートして、周りのランナーと同じようなペースで走ってきているので、相変わらず全体の半分くらいのところにいるはずだ。なので、前を行くランナーも後から来るランナーも6000人ずつってところだ。
折り返し点を過ぎた25km地点でラップを見ると、疲れも出てきているはずだけど、この5kmは下り坂があったおかげでボチボチのタイムだ。
25km地点を過ぎて天理教の学校施設の敷地に入ると、いよいよ楽しみにしていたぜんざいのお接待だ。ぜんざいのお接待は奈良マラソン最大の楽しみであり、前半は、これを目標に走ってきたようなものだ。さっそく1杯いただく。このぜんざいは餅ではなくてアラレが入っている。食べやすいように工夫しているのだそうだ。ただ、個人的にはお腹も空いているので餅が良かった。でも暖かいぜんざいは疲れた体に優しく、ためらわずにお代わりをもらった。
ゆっくりぜんざいを頂いて、再び走り始める。天理教の敷地を出て道路に戻ると第7給水所があり、ぜんざいで甘ったるくなった口を水で洗い流す。
その直後の第5関門を過ぎると26km地点になる。ぜんざいを食べるのに時間をかけたから、さすがにこの1kmはとんでもないタイムロスをしていたけど、それは仕方ない。
今回出場している唯一の知人であるY浅さんはどこかいなと思って、ずっと探していた。彼女らセーラー服軍団は、タイムは二の次で集団走行しているはずだから、僕よりは遅いだろうと思って、中間地点を過ぎてからすれ違う後続集団をずっと見ていた。そしたら、ちょうど26km地点辺りでセーラー服集団を見つけた。女性2人は快調そうだったが、男性2人はなんとなくしんどそうだった。あんな格好させられて恥ずかしくて精神的ダメージが悪影響を及ぼしてるんじゃないだろうか。
他に仮装しているランナーとしては、奈良だけに鹿の仮装が多い。頭だけ鹿の帽子を被っている程度の人が多いが、一人だけ背中に胴体が着いて、まるでケンタウロス状態の鹿がいた。どう見ても走りにくそうだけど、私を軽く抜いていったので、やっぱり実力者なんだろう。
再びフラットな道をチョコチョコと折れ曲がりながら28km地点に来たが、この2kmはぜんざいを食べてリフレッシュした後のフラットな区間だった割りには、だいぶペースダウンしていた。これは仕方ないかもしれない。過去のフルマラソンの結果を見ると、どんなレースでも、25km過ぎまでは調子よく走れていた場合でも、30km手前辺りからは着実にペースダウンしている。さすがに足が重くなりつつあるのだ。ペースが落ちてくるのと同時に、体も少しだけ冷えてきた。空が曇り始めた訳でもないし、時間はお昼過ぎだから冷えるはずもないんだけど、体が発散する熱が減っているのだ。でも、この先は上り坂もあるから、また暖かくなる事を期待する。
そして、28km地点からは再び長い長い上り坂区間に入る。第8給水所を過ぎて白川大橋まで辿り着くと、ようやく一息つけるのだが、なんとか歩かずに走って登れているのが幸いだ。周りを見ると、半分どころか、傾斜が急なところでは7〜8割のランナーが歩いている。スピードという点では、実はこういう場合は歩いても走ってもそんなに大きな違いはない。走っていると歩くのよりは早いリズムをキープできるが、歩幅は逆に歩く方が長くなったりする。走る場合はチョコチョコ走るが、歩く場合はゆっくりノッシノッシと歩けるからだ。そういう事もあって周囲のランナーは大半が歩いている。しかし、一度でも歩いてしまったら、心が切れてしまい、歯止めが無くなって繰り返し歩いてしまうようになる。また、急な坂だけ歩いて傾斜が緩やかになったら走りを再開しようと思っていても、一度歩き始めるとなかなか走りに戻れない。坂が終わってフラットになっても、しばらくは惰性で歩いたりする。そういう積み重ねで惨敗してしまうのだ。逆に、最後まで歩かなかったら、どんなにペースダウンしても、そんなにひどいタイムにはなりようがない。
て事で、長い坂も歩かずに上り、ようやく30km地点に到達したが、そこで見たタイムは、一瞬、目を疑うほど悪かった。ただでさえペースダウンし始める後半になっての上り坂だから仕方ないとは言え、あまりにも遅い。でも、もう残りは12kmだ。ここまで歩かずに来れたって事は、今日も最後まで歩かずに完走できそうな気がする。
(ピッグ)「ぜんざいを食べたときを除いて、ですよね」
(幹事長)「ぜんざいを食べたときは止まっていたぞ。歩いてはいないぞ」
(ピッグ)「食べた後は歩いてないんでしょうね?」
(幹事長)「神戸マラソンの時と違って、一歩も歩いてない事を誓います!」
ここまで来るとレースは終盤だが、まだまだ坂が残っているので油断はできない。いったん下って再び上り坂になり、白川中央通路南門から天理大学の敷地に入ると第6関門があり、そこで急な坂が終わる。大きな立て看板に「上り坂はここで終わり。あとは12km下り坂が続く!」なんて書いてるのが見える。ほんとに?俄には信じられなかったので、そこに立っている人に「ほんとに上り坂は終わり?」って聞いたら「終わりだよ!」って力強く言ってくれたので一安心。そうか、そうなのか。もう上り坂は無いのか。良かった!嬉しいーっ!
って思って前方を見ると、いきなり、また上り坂が見えるやんかーっ!!嘘つきーーーっっっ!!!
確かに、長い長い坂は終わったんだけど、その後も小さな坂は何度も何度も現れた。小さなアップダウンを繰り返して坂を上がったところにある31km地点の第9給水所には三輪そうめんのお接待がある。これもぜんざいのお接待に次いで楽しみにしていたコーナーだ。ただ、このそうめんも大変美味しかったけど、暖かくなかったのが残念だ。スルスルっと食べやすいようにしているのだそうだけど、ちょっと冷え始めた体には暖かいそうめんの方が良かった。
その後、白川中央通路北門を抜けて天理大学の敷地を出ると、今度は長い下り坂の区間になる。疲れもひどくなってきて、足取りが重くなってきているので、下り坂では何も考えずに思いっきり大股でガンガン下りたいところだけど、まだ10kmも残っているので自重して、できるだけ小股で降りる。坂の途中では、往路にいた今の葉狂志郎さんがまだいて、往路と同じように大声援を送ってくれた。こういうのがあると一気に元気が蘇る。
その後、第10給水所の直後に33km地点がある。ラップを見ると、上り坂区間よりは多少マシだが、下り坂の割りには随分遅い。
往路は、ここへは西から直角に曲がって来たが、復路はそのまま真っ直ぐ北へ進む。山際の道なので坂が多く、細かなアップダウンを繰り返す。当然ながら、上り坂区間ではペースが落ち、下り坂区間ではペースが上がるが、基本的にかなり遅いペースが続く。
34km地点を過ぎると第7関門があり、35km地点を過ぎると第11給水所がある。なんとなく体が冷えてきて、どこかで再び長袖シャツを着ようとも思うけど、風が無いのでそんなに寒くはないし、面倒くさいので我慢できるうちは我慢しよう。
しばらく行くと、往路にも居た「完走ワッケンロー、ワッケンローっ!」って延々と叫んでいたおじさんが再び登場した。往路と復路は道が違うので移動して来たんだろう。こっちは元気がもらえて嬉しいけど、ずうっと大声で叫び続けているので大変だろうなあ。
35km地点を過ぎた辺りからしばらく再び急な上り坂が続き、周りのランナーは、たぶん9割は歩いていたと思う。それでも今日は歩こうとは思わない。最後まで歩かずに完走したい気持ちが強いし、一度でも歩いてしまうと歯止めが無くなるのも怖い。長い坂を上り終えると36km地点があり、そこのラップはとんでもなくペースダウンしていたが、歩かずに済んだので気持ち良い。
37km地点を過ぎると、その直後に残り5kmの表示が現れる。いよいよゴールが近づいてきた。僅か5kmなんだから、この辺りからペースを上げたいと思う。ただ、どんなレースでも残り5kmくらいになってくると、もう後はペース配分なんか考えなくてもいいから、全力を出し切りたくなって、めっちゃ気合いを入れてラストスパートのつもりで頑張ってみるんだけど、実際は気持ちではそう思っても足は思うようには動かない。ちょっとだけスピードを上げたつもりでも5kmもスパートはできない。て事で、ペースアップどころかペースダウンしてしまう。
しかし今日は違った。ここまで、かなり徹底してペースを抑えて走ってきたせいか、まだまだ余力が残っている。足はかなり重くなっているけど、痛くはない。ここまで来れば、もう足が痛くなる心配はしなくてもいいだろう。そのため、どんどん加速することができた。どこかで再び長袖シャツを着ようと思っていたけど、もうそれどころではない。そんな事をしている時間も惜しい。
朝食も気を付けたし、下痢止めも飲んで万全の対応を取ったおかげか、今日はお腹を壊す予兆は無い。て言うか、むしろお腹が空いてきた。ぜんざいやそうめんは食べたものの、大した量ではないので、朝からこれだけ走っていると、当然お腹はどんどん空いてくる。でも給水所にある食べ物としては、たまにバナナがあるくらいで、後は飴とかチョコくらいだった。飴やチョコもカロリー補給には有効なんだけど、空腹感を満たすには物足りない。終盤の第12給水所で再びバナナがあったので、何とか空腹を紛らわせる。
38km地点の奈良教育大学前の第8関門を過ぎると奈良公園が近づいてきて再び上り坂になったりするんだけど、なんだか調子に乗ってペースアップできた。そして39km地点の東大寺大仏前をいったん西に折れ、往路とは違って、すぐに県庁の東側の道を北へ折れて第13給水所と第9関門を通り過ぎるんだけど、この区間は緩い下り坂になっていたため、本日の最速ラップが出た。今まで40km地点で最速ラップが出たことなんか無い。ここまでいかにペースが遅かったかっていう事の裏返しだけど。
ここでいきなり救急車が走ってきた。見ると男性ランナーが倒れて手当を受けている。もうあと2kmしか無いのに、ここまで来て救急車搬送されるなんて、本当に気の毒だ。
その後、東大寺大仏殿の真横の辺りの40km地点で西に曲がり、しばらく走って最初のやすらぎの道にようやく戻ってきたが、結構良いペースをキープできている。
そしていよいよ残り1kmの表示が現れたが、なんとここから最後の1kmは上り坂だ。スタート直後が下り坂だったから当然、最後は上り坂になるんだけど、スタート直後は大した傾斜は感じなかったのに、疲れた体には、トンでもないくらい厳しい上り坂に感じられる。しかし、ここでヘタったら、ここまで上り坂でも歩かずに頑張ってきたのが台無しだ。それに、本当にこれが最後なんだから、それこそ全力を出し切ろうと思って頑張って走る。
〜 ゴール 〜
ゴールの競技場は見えているのに、コースはなかなか競技場へ入ろうとしないので精神的に辛くなる。だが、最後に競技場に入った後は、半周ほど走ったらゴールとなった。
結局、今日は、写真撮影やトイレや、ぜんざいやそうめんを食べる時に立ち止まった以外は、一歩も歩かなかった。最後まで歩きたいとは思わなかったし、給水所でも立ち止まらずに給水した。神戸マラソンとは違って、完全なる「完走」と言えよう。
(幹事長)「どや?」
(ピッグ)「歩きながら食べた神戸マラソンと、立ち止まって食べた奈良マラソンの優劣が分かりませんが」
(幹事長)「神戸マラソンでは、給食所で食べた後も惰性で少し歩いたからな」
今日のフルマラソン出走者は12211人で、そのうち完走者は11244人、完走率は92%だ。神戸マラソンの驚異の完走率97%に比べたら低いが、制限時間が神戸マラソンの7時間に比べて6時間と短いし、フラットな神戸マラソンと違ってアップダウンの激しい厳しいコースであることを考えると、92%の完走率も十分高いと思う。
そして、私がゴールした順位は、神戸マラソンと同様に、半分を少しオーバーしてしまった。いくら完走だけを目指していたとはいえ、やはり少しショックだ。
(幹事長)「2週間前のタートルマラソンは上から1/4くらいに入ったのに」
(ピッグ)「フルマラソンは厳しいですね」
坂が多い厳しいコースなのに、みんな頑張るなあ。コースも厳しいし制限時間も短いから、そもそもレベルの高い人しか出ないのかもしれない。スタートで集合した場所も前から半分程度の場所だったんだから、順当なとこかもしれないなあ。
(ピッグ)「で、タイムはどれくらいだったんですか?」
(幹事長)「4時間台だったとだけ言っておこう」
(ピッグ)「まさか、また大胆に切り捨て?」
(幹事長)「もちろん!4時間59分59秒までは4時間台じゃ」
ちょっと悲しい事に、惨敗だと思っていた神戸マラソンより20秒くらい遅かった。
(ピッグ)「全くどうでもいい低レベルの比較だと思いますが」
(幹事長)「そんなことない!めっちゃ悔しい」
何が悔しいかと言えば、たった20秒なんて、事前に分かっていれば何とでもなったからだ。2杯食べたぜんざいを、もし1杯で止めていれば1分くらい早かったはずだ。
(幹事長)「やっぱり過去の全てのマラソン大会の記録を覚えておくべきやなあ」
(ピッグ)「認知症が進行してるんですから無理ですよ」
しかし、坂が無いフラットなコースだった神戸マラソンに対し、坂が多い厳しい奈良マラソンがほぼ同じタイムだったというのは、実質的には勝利宣言しても良いのではないだろうか。
ゴールするとフィニッシャータオルを掛けてくれて、完走メダルも掛けてくれる。フィニッシャータオルは素晴らしいデザインで、完走した充実感をより一層高めてくれる。大阪マラソンや神戸マラソンのタオルも良かったけど、関西のマラソン大会のタオルは素晴らしいな。
初出場で初優勝の快挙を成し遂げた幹事長
その後、水とバナナも受け取り、さらにお茶とおかきも頂く。熱いお茶は疲れた体に優しいが、おかきは口の中がボソボソして食べにくかった。やっぱりレース後はバナナの方がよろしい。
昔はフルマラソンなんか走った後は、ゴールしたら足が痛くて動けなくなったものだが、最近は全力を出し切れなくて余力が残ってしまってて、ゴールしても平気で歩けてしまう。嬉しいような気もするけど、やはり情けない。でも今回は、最後の5kmはかなりスパートできたし、特に最後の1kmの上り坂は真剣に頑張ったので、最近には珍しく足の疲労感が心地よい。しゃがみ込んでお茶なんか飲んでいると、足がジワーっとして気持ち良い。
ただ、そうは言っても、まだまだ余力が残っていて、そんなにしんどくもない。最後まで足が痛くならなかったのが嬉しい。こんな坂がきついハードなコースであっても、前半を徹底的にペースを抑えて走れば、最後まで足は痛くならないってことが証明された。もうどんなコースでもへっちゃらだ。タイムはイマイチでも最後まで足が痛くならずに完走できるのは嬉しい。足が痛くて大変だった頃は、ゴールした後は「しばらくはフルマラソンなんて走らないぞ」なんて思っていたけど、今日はゴールした直後なのに、次のフルマラソンが楽しみで仕方ない。この1ヵ月に3回もマラソン大会に出たけど、この調子なら、全然負担じゃないぞ。
記録証をもらって、預けていた手荷物を受け取り、自転車に乗って帰る。まだまだどんどんランナーが帰ってきている横を通るので、道路は混雑していて、自転車に乗っても人混みの中をノロノロと進まなければならない。それでもサドルに乗っているだけでも楽ちんだ。いくら足は平気だとは言っても、2km近くの道をトボトボと歩いて帰るのは大変だと思う。やっぱり自転車に乗ってきて良かった。
〜 楽しかった! 〜
結論を言えば、坂が多くて非常に厳しいコースで大変だったけど、とっても楽しいマラソン大会だった。Y浅さんは「坂がある方が変化があって面白い」って言ってたけど、本当にそうだと実感した。坂が無くても延々と同じような道が続くマラソン大会より、坂が厳しくても変化がある方が面白い。それに沿道の応援も派手で楽しかった。今年は寒いどころか暑いくらいだったので、よけい楽しかった。厳しいコースなのでタイムは悪かったけど、それでもフラットな神戸マラソンと似たようなタイムだったから、悲観することもない。通常の年は寒いんだろうけど、ぜひ来年以降も出たいと思った。
(ピッグ)「ここんとこ2週間おきに3つも大会に出ましたけど、その割りには記事の掲載が早かったですね。やればできるんですね」
(幹事長)「次のレースの前には書いていかないと、どんどん宿題が溜まっていくからな」
(ピッグ)「今回も結構長かったけど、フルマラソンで1kmごとのラップを延々と書いていた神戸マラソンよりは少しだけマシでしたね」
(支部長)「いや、まだ長すぎる!」
さて、次のレースは、いよいよ年始恒例の満濃公園リレーマラソンだ。お屠蘇気分で頑張るぞーっ!
〜おしまい〜
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