第38回 小豆島オリーブマラソン大会

〜 炎天下なのに快走! 〜



2015年5月24日(日)、第38回小豆島オリーブマラソン全国大会が開催された。

この大会には18年前の第20回大会から参加し続けているが、
昔はのんびりしたムードが漂ったアットホームな大会だったのに、近年は様変わりしている。
この大会に限った事ではないが、以前は田舎のマラソン大会で定員が一杯になるなんて事はあり得なかったから、誰でも気が向いたら参加できていたのに、最近は末期的な全国的マラソン狂走曲のせいで、
こんなローカルなマラソン大会でも申し込み受付が始まったら、あっという間に定員いっぱいになり、油断して少しでも申し込みが遅れると参加できなくなってしまうのだ。もちろん、このような熾烈なエントリー競争は、この大会に限ったことではないから、みんな分かり切ったことなんだけど、それでも、どうしても申し込み損ねるケースが後を絶たない。特に、申し込み当日に飲み会なんかが入っていると、まずは不可能だ。

(ピッグ)「家に帰ってからでは間に合わないって事ですよね」
(幹事長)「いえいえ、それより、泥酔して申し込みを忘れてしまうのよ」


申し込み開始時間は夜の8時とか10時っていうケースが多いので、飲み会が無くても、家で晩酌しながら夕食を食べたりしていると、泥酔しなくても、ついつい忘れてしまう。

(幹事長)「若年性認知症のせいだろうなあ」
(ピッグ)「もう若年性とは言えない年齢になってませんか?」


てな訳で、今回は、エントリー受付開始時間を書いたメモをあちこちに貼ったりしたので、なんとか忘れずにエントリーできた。他のメンバーも、今年は全員、無事エントリーが完了し、参加メンバーは
のほか、ピッグ、支部長、ゾウさん、ヤイさん、國宗選手、DK谷さん、W部選手といったところとなった。

さらに、この大会は、出場エントリーもさることながら、
交通の便の悪さも大きなネックだ。
小豆島は、四国と本州と、どちらからでも船で1〜2時間で行けるため、関西地方からの参加者も多く、そういう意味では立地の良い大会と言える。しかし、レース会場である小豆島坂手地区には、港はあるけど船の定期航路がほとんど無い。神戸からはフェリーがあるようだが、高松からは定期便が無い。なので、主催者が出している高松発の臨時船に乗るか、他の港へ定期便で行くか、どちらかの選択となる。数年前に一度、定員8名の私の車に9人で乗り合わせて池田港に上陸して行ったこともあるが、移動に時間がかかるうえ、駐車場を探すのも一苦労で、会場へ着くのがギリギリになったので、その後は臨時船に戻った。ただ、臨時船は古いフェリーボートを借り切ったものであるため、座席が少くて、早く行かないと通路の片隅に体を丸めてしゃがみ込むか、広い車両甲板に寝転がるしかない。車両甲板は固い鉄板で、おまけに朝は冷え込み、逆に帰りは太陽熱で焼けて熱くなり、とても人間扱いされているとは思えない状況だ。そのため、我々は、この臨時船を
奴隷船と呼び、恐れおののいているのだ。
それなのに、最近の異常なマラソンブームにより、
この奴隷船にすら、早めに申し込まないと定員オーバーで乗船券を入手できなくなっている。奴隷船は満杯というか定員の3倍くらい詰め込まれるので、もはや家畜船と呼ぶのが相応しいかもしれないが、奴隷船だろうが家畜船だろうが、この乗船券ですら最近は入手が困難なのだ。マラソン大会自体にはエントリーできても、奴隷船のチケットを入手できなければ、大会に参加する事が難しくなるのだ。しかも不便なのは、マラソン大会への参加自体はランネットで申し込めるから簡単なんだけど、奴隷船のチケットは今だに郵便振込みで申し込まなければならない。大会への参加と同じく先着順だが、ネットで受け付ける大会への参加は、先着順で定員に達したら即座に受付終了となって分かりやすいが、郵便振込みなのに先着順なので、大会へは申し込めたものの、奴隷船の乗船券を確保できるかどうかは、すぐには分からないのだ。
そして、なんとW部選手がチケットを申し込みし損ねてしまい、交通手段を考えなければならなくなった。

(幹事長)「定期便で他の港に着いて駆けつけるのも大変だよなあ」
(W部)「なんかモチベーションが下がりましたよ」


おまけに渡B選手はハードな練習がたたって腰を痛めてしまい、欠場の意志を固めてしまった。ところが、大会直前になって、またまた國宗選手がドタキャンになってしまった。

(幹事長)「なんか、ここんとこ、ずうっとドタキャンが続いてないか?
       最近、顔を見たのは、こないだの飲み会の時だけじゃないか?」
(國宗)「何を言ってるんですか!2月の丸亀マラソンには出たじゃないですか!」


確かに、丸亀マラソンの記事を見ると写真に写っている。

(幹事長)「これは私が合成したんじゃないだろうな?」
(國宗)「自分がやったかどうかも覚えてないんですかっ!?」


ま、少なくとも今回は社内の用事で参加できなくなったとのことだから、やむを得ない。
て事で、國宗選手の奴隷船チケットがW部選手に譲渡され、渡B選手もなんとかモチベーションを復活させ、みんな揃って出発することとなった。



大会の数日前の天気予報では、当日は雨模様とのことだった。昔の私たちなら、雨のマラソン大会なんて走る気が起きなかった。朝から雨が降っていると、空を見上げながら連絡を取り合って、結局、みんな揃って欠場って事も多かった。しかし、5年前のこのレースに、土砂降りの中を走ったら、メンバー全員が考えられないような好タイムを出してしまい、それ以来、暑い季節には、むしろ雨を好むようになったのだ。

このレースは毎年5月末に開催されるが、この季節は天気が良いときは本当に気持ちが良い。まだ湿度があんまり高くないから、木陰でボケッとしてるぶんには暑くなく、大変、気持ちが良い季節なのだ。ただし、炎天下を走るのは非常に暑い。だから、トップクラスの選手が走るマラソン大会という意味では、5月下旬なんて、もうマラソンシーズンは終わっているのだ。私は個人的には寒いのは嫌いで、暑い方が好きだから、真夏の炎天下で汗だくになって走るのも楽しくて好きだけど、しかし、いくら好きでも暑いとタイムは悪くなる。寒いのは大嫌いだが、寒い方がタイムは良い。そして、それが如実に証明されたのが、その5年前のこの大会なのだ。

この大会は、18年前の1997年から出続けているが、昔からずうっとタイムが悪く、なんと2時間を切ったことがなかった。

(ピッグ)「塩江山岳マラソンなら分かりますが、そこまで坂が厳しくはないオリーブマラソンで、そんなに遅かったとは恥ずかしい限りですねえ」
(幹事長)「でもタイムが悪かったのは私だけではなく、他のメンバーも悪かったぞ」


ピッグだって、私ほど悪くはなかったけど、他のレースに比べたら遅かった。でも、それが暑さのせいだとは誰も思わなかった。いくら暑いと言ったってまだ5月なんだから、7月下旬の炎天下の汗見川マラソンや四国カルストマラソンのような地獄の暑さではないからだ。なので、このレースのタイムが悪い理由は坂が多いからだと信じていた
この大会のコースは、スタート直後の大きな坂の後は、前半は草壁の町の中心地まで行って折り返してくるという坂が無いフラットなコースなんだけど、後半に入ると、二十四の瞳の舞台となった岬の分校まで行って折り返してくるという曲がりくねった狭い海岸線のコースとなる。この海岸線の道路は、曲がりくねっているだけでなく何度も何度も丘を越えてアップダウンが繰り返される。10kmの部は前半の部分だけを走るので、スタート直後の大きな坂(折り返しコースなのでゴール直前にも同じ坂があるが)以外は、フラットな部分だけを走るので楽だが、ハーフマラソンは後半が厳しい。まだまだ元気な前半に坂があるのなら耐えられるけど、疲れ始めた後半に坂が次から次へと襲ってくるので、後半は厳しい戦いとなるのだ。
同じ小豆島だけど、反対側の北西部で行われる11月の瀬戸内海タートルマラソンも同じように坂が多いが、なぜかそちらの方はタイムが良い。毎年、超フラットで高速コースとして有名な丸亀マラソンと同じようなタイムなのだ。これは非常に不思議で、理由は不明だが、タートルマラソンはコース全般に満遍なく坂が配置されているからマシなのかなと思っていた。逆に、オリーブマラソンは後半に坂が集中するのが良くないのだと思っていた。なので、この大会では2時間を切るなんて絶対不可能だと信じていた。
マラソンは極めてメンタルなスポーツなので、走る前から「このコースでは2時間を切るなんて絶対不可能だ」なんて決めつけていたら、現実にも2時間を切ることは難しい。途中で苦しくなったら、「どうせ良いタイムは出ないレースだから」と、すぐに諦めるからだ。以前は、最後の大きな坂では、ほぼ必ず歩いていた。無理して走っても、どうせ良いタイムは出ないと信じていたからだ。

ところが、我がペンギンズのエース城武選手が優勝した5年前は、考えられない結果となった。朝からものすごい土砂降りの雨だったので、みんなで欠場の相談をしていたんだけど、「雨がどうしたんですかっ!何を考えてるんですかっ!」という城武選手の一喝で、渋々参加した。ところが、土砂降りの雨は、走りにくいどころか、気温が低くなって走りやすくて、後半の大きな坂も全然、苦にならず、最後までペースダウンすることなく、というか、坂が多い後半の方がペースアップしてタイムが良いという考えられないレース展開でゴールし、2時間を大幅に切る大会自己ベストとなった。私だけでなく、最後までデッドヒートを演じたピッグも快走だったし、支部長も例年なら絶対に歩く最後の大きな坂も歩かずに2時間を切る大会自己ベストを出した。
この結果には全員、衝撃を受けた。オリーブマラソンのタイムが悪かったのは、坂が多いからというだけではなくて、むしろ暑さのせいが大きかったのだ。そのため、それまではみんな雨を嫌がっていたんだけど、一転して、暑い季節のマラソンは雨乞いをするようになった
そして、その翌年も、序盤に激しい雨が降った。中盤以降は雨が上がり、気温がどんどん上昇していったが、それでも序盤の雨のおかげで、いつもよりは気温も低めで快適に走れた。その結果、前年よりは遅かったものの、やはり後半にペースを上げることができて、2時間を切って大会自己ベスト2位を出した。2時間を切ったことも嬉しいが、坂が多い後半の方がペースアップして速くなったというのが自分でも驚きだ。

このように、2年連続して好タイムを出した結果、このレースも雨さえ降れば良いタイムが出る、という事が分かり、それまで大の苦手だったこのレースに対して、なんとなく自信がついたが、2年前の大会は以前のような炎天下のレースとなり、おまけに暑さに加え腹痛との戦いとなった結果、以前のように2時間オーバーの惨敗となった。てことで、「雨が降ると良いタイムが出るけど、天気が良いとタイムは激悪になる」という法則が確立された。
なので、雨模様という天気予報は朗報だった。

ところが、前日になると、天気予報は「曇り」になった。曇りって中途半端だ。すっきり雨が降ってくれた方が冷えて良いんだけど、曇りだと湿度がモワッと高くなって不快感が増すかもしれない。ただ、予想気温は20℃前後とのことなので、割と涼しめだ。これなら悪くないか。



なんて思っていたら、当日、朝の天気予報では、午前中は曇りだが、午後から晴れになっている。レースは午前中に終わるだろうけど、天気はどんどん良くなっていくから安心できない。て言うか、早朝の空を見上げると、どう見ても、既に晴れている。雲も無いことはないけど、全面に広がる雲じゃなくて、雲が点在している程度。予想気温もいつの間にか25℃以上になっている。こら、炎天下のレースになるぞ。

だが、しかし、実は上の話には続きがあり、今の私は炎天下のレースも恐れなくなっている昨年のレースは炎天下だったのにもかかわらず、好タイムを出したからだ。炎天下のレースではタイムは悪くなるはずだったのに、最後までペースが落ちず、と言うか、後半の方がペースアップして速くなり、好タイムでゴールすることができたのだ。
この原因は、秘密兵器のメッシュのシャツだと思う。他のメンバーからは「恥ずかしいから脱いでくれ」という批判が沸き起こったが、気にせず着て走ったところ、炎天下にもかかわらず暑くならなかったのだ。そして、タイムは5年前に出した大会自己ベストより6秒だけ遅い大会自己ベスト2位だった。僅か6秒差だなんて、もし事前に分かっていたら、途中でもっと頑張ってスパートして大会自己ベストを出せたと思うが、あんな炎天下のレースでまさか大会自己ベストを出せるとは思ってもいなかったので、油断して完全にノーマークだったのだ。どんなレースでも目指すべきは大会自己ベストであり、過去の記録をちゃんと頭に入れておかねばならないと思い知った。
大会自己ベストを出せなかったのは悔しいが、雨が降らなくても頑張れば良いタイムが出る、という事が分かったのは大きな収穫だ。良いタイムとは言っても、タートルマラソンや丸亀マラソンのようなタイムではない。それでも、そこそこのタイムは出すことが可能だと分かった。雨が降らなくても、暑さ対策さえ万全に施せば、怖いものは無いのだ。



当日の朝は早起きをしなければならない。いくらプラチナチケットの奴隷船乗船券を持っていても、遅く行ったら奴隷か家畜のように車両甲板に転がされてしまう。奴隷船に人間の尊厳を維持したまま乗るには、かなり早く港に行かなければならないのだ。奴隷船が出港するのは6時50分だが、6時には乗船開始となる。過去の記事を読むと、6時過ぎに港に着いたのでは遅く、既に座る場所が無くなっているが、去年なんかは、5時45分に港に着くと、まだまだ列は短く、余裕で座席を確保できたと書いてある。てことで、今年も同じ時間を目指す。港に5時45分に着くためには、自宅を5時半には出なければならない。以前なら考えられないような早起きだが、最近は高齢者の仲間入りしてきたため、早寝すれば早起きは苦痛でなくなった。てことで前夜は10時に寝床に着き、すぐに深い眠りに入った。
ところが、深夜、東京の娘から電話が入り、しょうもない話を延々とした結果、目が覚めてしまい、再び眠るのに苦労し、結局、なんとなく寝不足状態で朝を迎えた。腹立つ。

それでもなんとか予定通り5時45分頃に港に着いたんだけど、なんと今年は既に50人以上の長い列が出来ている。一体、なぜ?これではみんなが揃って座れるボックス席を確保するのは難しいかも。
なんて愕然としたが、見ると、支部長様が前から3番目という驚異的なポジションを確保している

(幹事長)「ど、ど、ど、どしたん!?なんで、そんなに前におるん?」
(支部長)「いや、時間を間違えてな」


どういう風に時間を間違えたのか知らないが、5時過ぎに着いたらしい。確か、ボックス席は3つ以上はあったはずだから、支部長がボックス席を確保できるのは間違いない。良かった良かった。
私と同じ頃にDK谷さんが到着し、二人で一緒に並ぶ。つい先日、7月26日開催の汗見川マラソンの受付が始まり、みんな忘れずにエントリーするように周知していたので、その結果を聞く。

(幹事長)「汗見川マラソンの申し込みは無事できましたか?」
(DK谷)「いや、それが、ちょっと油断していたら、あっという間に受付終了になってしまってエントリーできなかったんですよ」
(幹事長)「うわ、残念。実は支部長も当日、忘れてしまって、翌朝6時に思い出して慌ててエントリーしようとしたら、既に完売になっててエントリーできなかったんですよ」


なんて話していたら、我々の後ろに並んでいたおじさん3人組が、

(おじ)「汗見川マラソンの受付は、まだ始まってないでしょ?」
(幹事長)「???いえ、もう始まったと言うか終わったと言うか」
(おじ)「でも、ウェブサイトでエントリーしようとしても、まだ受け付けてくれませんよ」
(幹事長)「それ、もう終了したんですよ」
(おじ)「え!?そんなアホな。ずっと毎日、チェックしてたんだけど、いつまで経っても受け付けてくれなくて」


おじさんは、毎日、ちゃんとウェブサイトをチェックしたらしい。しかし、5月21日の夜8時に受付開始となる前は「まだ準備中」ということで受付してくれなかったし、夜8時の受付開始から1時間くらいで完売になったから、それ以降は「受付終了」って事で再び受付できなくなった。なので、21日の夜8時〜9時の間にチェックしなかったら、一見あたかもずうっと受付してくれないままになっているように見えるのだ。

(幹事長)「私は8時ジャストにパソコンのキーを叩いて、即、エントリーできたし、ピッグも8時40分頃にあっさりとエントリーできたけど、それを過ぎたら受付終了になってましたよ」
(おじ)「ひえ〜っ!」


去年までの私と同様、おじさん達は、昔の汗見川マラソンのイメージを持っていて、そんなすぐに受付終了になるとは夢にも思ってなかったようだ。

しばらくするとみんなの乗船券をまとめて持っているピッグがやってくる。
國宗選手の奴隷船乗船券はW部選手に融通できたが、実は、もう1枚、一緒に申し込んでいた人が来られなくなってしまい、乗船券が1枚余っていた。去年は列に並んでいる時、前に並んでいるグループの一人が乗船券を忘れて困っていたので、原価の2000円で譲ってあげた。今年も同じ展開を期待していたら、案の定、支部長の近くで若い女性ランナーが乗船券を無くして係員に泣きついていたらしい。それを聞いた支部長は即座に譲ってあげたそうだけど、なんと半額の1000円で譲ったとのことだ。

(支部長)「もう捨てたものと割り切っていたからね」
(幹事長)「甘いっ!甘すぎるっ!」
(ピッグ)「若い女性に優しいですねえ」



6時になると同時に乗船が始まった。支部長は真っ先にボックス席を確保し、そこへ私とDK谷さんがなだれ込む。ヤイさんやゾウさんはJRの到着時間が遅いため、ピッグは彼らの乗船券を持って外で到着を待つ。
船の中では福家先生に再会し、W部選手も現れた。さらにヤイさんも到着したが、ゾウさんは6時34分に高松駅に到着する電車で来たのでギリギリになった。
さらに、なんと恋さんが登場した。

(幹事長)「うわあ、鯉さん、いつからマラソンなんかしよったんですかっ!?」
(故意)「ランニングは数年前からしてたけど、マラソン大会に出たのは去年からや」


恋さんは、かつて私が経理部に居た頃の同僚だ。

(幹事長)「どの大会に出たんですか?」
(濃い)「去年はフルマラソン4回とハーフマラソン4回に出たな」
(幹事長)「それ、出過ぎですがな!体、大丈夫ですか?」
(古井)「一通り、あちこち故障したけど、今は大丈夫やな」

さすがは恋さん、基礎体力がある。かつて私が高知に勤務していた時、よさこい祭りに同じ連で出たことがあるが、全員、20歳代のメンバーの中で、私と鯉さんだけが40歳代だった。よさこい踊りは、余りにも激しいため、30歳代でもきついのだ。

船が動き始めたら朝食だ。本当は家を出る前に朝食を食べて用も済ませたいところだが、いくら早起きが苦痛でなくなったとは言え、普段より早い時間に朝食を食べるとお腹を壊す可能性が高いので、家では食べず、船に乗ってから食べるのだ。そして、去年まではマラソン大会の日の朝食と言えば決まって菓子パンを食べていたんだけど、今年の徳島マラソンから、おにぎりに変えた。もともと菓子パンは大好きで、色んな種類があって、手軽に食べられるからだ。ところが、実は、マラソン大会で時々、走っている最中にお腹を壊すことがある。第1回徳島マラソンとか2年前のオリーブマラソンでは、その顛末を記事にも書いたが、書いていないレースも含め、レースの途中でトイレに駆け込む(もしくはトイレが無くて物陰で用を足す)ことは珍しくない。そして、ようく考えてみたら、これはマラソン大会だけでなく、登山に行った時とか、観光に行った時にもあり、これらには共通点があることが分かった。いずれも朝、菓子パンを食べた時なのだ。普段と違って早朝に家を出る時は、家では朝食を食べられないから、菓子パンを持っていき、途中で食べるのだ。菓子パンの何が悪いのかは分からないが、その結果として、お腹を壊すことが多いようなのだ。菓子パンなんて、そんなに消化が悪いとも思えないが、もしかして中に入っているクリームとかが悪いのかもしれない。て事で、今年の徳島マラソンでは初めて菓子パンじゃなくて、おにぎりを食べた。おにぎりで好きなのはタラコや鮭なんだけど、なんとなく消化に悪いような気がするので、梅のおにぎりを2個を食べた。マラソンを走るのに梅のおにぎり2個じゃ少ないような気もするけど、食べ過ぎてお腹を壊す方が怖いので我慢した。その結果なのかどうか分からないが、少なくとも今年の徳島マラソンではお腹は壊さなかった。
て事で、今日も、菓子パンではなく梅のおにぎりを2個持ってきた。たった2個のおにぎりだけど、お腹を壊すといけないから、ゆっくり十分過ぎるほど噛んで食べた。

(ピッグ)「相変わらず着るものと、お腹を壊すことには心配性ですね」
(幹事長)「特に最近は、マラソン大会の2回に1回はお腹を壊しているような気がするよ」


第1回徳島マラソンでは自動車修理工場に駆け込んだし、ピッグと一緒に出た青森県の走れメロスマラソン大会でもビニールハウスの中に駆け込んだ。

(ピッグ)「それって、一応、所有者に断ってるんですよね」
(幹事長)「そんな余裕は無い」


なので、ティッシュペーパーは最優先の必携アイテムだ。

(ピッグ)「で、今日の目標タイムは?」
(幹事長)「以前の私なら、この大会では2時間を切れれば嬉しいと思っていたが、今は素直に大会自己ベストを目指す」


どんなレースでも、常に大会自己ベストを狙うのが良い子のランナーとしてあるべき姿だ。以前は極端にタイムが悪かったオリーブマラソンだが、雨も炎天下も怖いもの無しとなった今では、やはり大会自己ベストを狙うのが正しい姿だ。

(支部長)「でも大会自己ベストは5年前の土砂降りの中で出した記録やろ?今日は炎天下やから無理と違うか?」
(幹事長)「ふふふ、実は炎天下の去年のタイムは、5年前の大会自己ベストにあと6秒差まで迫っていたのだよ」


てことで、今日は6秒差で大会自己ベストを逃した去年の悔しさを晴らすために、綿密な分析を行ってきた。ネット計測をしてくれない大会なので、スタート地点を越えるまでに1分程度のタイムロスがあるだろうし、スタートしてからしばらくは思うように走れないので、それを勘案すると1km5分20秒で走れば大会自己ベストを達成できる計算だ。

(ピッグ)「最初は、もっとペースを上げて貯金するべきじゃないですか?」
(幹事長)「そのような考えは捨て去った」

これまで長らく、どんな距離のどんな大会でも、前半にできるだけ貯金して、後半にペースダウンしていくというパターンで攻めてきた。しかし、今は、前半は抑えて後半にペースアップするという理想的な走りを目指している。当然ながら、それができれば良いタイムが出る。

(幹事長)「ジャジャーン!これが、その証拠じゃっ!!」

過去のレースの1kmごとのタイム推移

このグラフは、過去のオリーブマラソンの1kmごとのタイムを折れ線グラフにしたものだ。最初のうちは距離表示が1kmごとに無いからフラットなグラフになっているが、どっちみちあまり違いは無い。違いが大きくなるのは後半だ。明らかに2つのパターンが見て取れる。1つは14km以降、みるみるうちにタイムが悪くなっていくパターンで、もう1つは逆に終盤にペースアップしていくパターンだ。2つ目の折り返し点である二十四の瞳の岬の分校までが13.5kmほどだから、そこからの帰りに大きく違いが現れるということだ。当たり前と言えば当たり前過ぎる結果だ。前半はそれほど大きな違いは無く、違いが現れるのは終盤で、普通に考えればペースダウンしていく。特に後半に坂が多いオリーブマラソンでは、ペースダウンの程度も激しい。ところが、前半をうまくコントロールできれば終盤にペースアップする事が可能であり、その場合は、良いタイムが出るということだ。これまた当たり前と言えば当たり前のようだが、このようにきれいに2つのパターンに分かれるのはオリーブマラソンだけだ。丸亀マラソンの大会自己ベストは、序盤から終盤にかけてコンスタントにペースダウンしていって出したものだ。

(ピッグ)「素晴らしい分析だとは思いますが、どうやったら良いパターンで走れるんですか?」
(幹事長)「それが分かれば苦労はしない」
(支部長)「意味ないじゃん!」


どうやったら失速パターンになり、どうやったらペースアップ・パターンになるのかは、全く分からない。雨が降ったらペースアップ・パターンになるってのは分かったけど、去年は炎天下にもかかわらずペースアップできたから、よく分からない。前半をどれくらい抑えれば良いのか見当も付かない。ただ、2つ目の折り返し点を過ぎてもペースが落ちなかったら、その後はペースアップできる可能性が大きいということだ。諦めることなく、最後まで突っ走れば良いタイムが期待できるのだ。

(ピッグ)「で、練習量は十分なんですか}
(幹事長)「君の練習風景を見たことは無いが、過去の実績から推測すれば、君よりは練習を積んでいると思うぞ」
(ピッグ)「私より練習量が多いってのは、あんまり意味は無いと思いますけど」


ピッグは去年2月の海部川風流マラソンでサブ4目前の快記録を出したくらいだから、速い時は速い。とても速い。一時期はピッグに対しては連戦連敗で歯が立たなかった。しかし、去年の春、高松に転勤になってからは練習量が減少し、みるみるうちに遅くなり、今年に入ってからは丸亀マラソン徳島マラソンと連勝している。
ただ、痩せたソクラテスから太った豚になってしまった今のピッグに勝っても、意義は無い。ピッグは丸亀マラソン、徳島マラソンと私に負けただけでなく、実はゾウさんにも負けている。もう私の目標ではないのだ。

(ピッグ)「ちょっとちょっと、幹事長だって丸亀ではゾウさんに負けたじゃないですか」
(幹事長)「あれは、だから、何度も何度も言い訳を繰り返すけど、ゾウさんに負けそうだって状況が分かっていれば、私だって、もっと真剣に走ったと思うよ。
       もう何の目標も無くなって、モチベーションがゼロになってダラダラ走っていたから負けたんよ」
(支部長)「見苦しい言い訳やなあ。負けは負けや」
(ピッグ)「で、結局、練習は十分なんですか?」
(幹事長)「ピッグよりは多いけど、中途半端で終わりました」


例年ならフルマラソンの徳島マラソンが4月下旬にあるから、その勢いでオリーブマラソンを乗り切るんだけど、今年は徳島マラソンが3月下旬だったから、2ヵ月もあいている。なので、きちんと練習をしておかないと不十分なのだ。それで今年のゴールデンウィークは毎日、交互に、ランニングとサイクリングを繰り返して練習を積んだ。ランニングとサイクリングでは使う筋肉が異なるので、毎日練習しても、使う筋肉としては一日おきになるので練習過多になるとは思わなかったのだ。ところが、これが裏目に出てしまい、なぜか踵に疲労がたまったようで、走ると踵が痛むようになってしまった。それ以来、自転車は休んでいるし、ランニングも数日休むと痛みも治まるが、続けて走ると、すぐに痛みが出てしまう。今日は数日前からランニングを控えているから、痛みは出ないことを期待しているけど、ここへきて練習量は少し不安だ。

(幹事長)「支部長はどんなん?」
(支部長)「ふふふ。私は練習量は十分じゃよ」


なんと支部長は、ここんとこ1ヵ月間、毎日、早朝ランニングをしてきたそうだ。

(幹事長)「毎日って凄くない?」
(支部長)「距離は短いけどな」
(ピッグ)「いくら短くても、毎日、朝、走るって、ちょっと考えられませんねえ」
(幹事長)「まさか、今日は久しぶりにゾウさんにリベンジしようと?」
(支部長)「うわっはっはっは。今日はゾウさんには絶対に負けないのだよ」


なんとゾウさんは、今日はみんなと同じハーフマラソンではなく、10kmの部に出るとのことだ。なので、支部長もゾウさんに負ける心配がないのだ。

(幹事長)「足を故障してるから?」
(ゾウ)「足を故障したのは最近の事なんですけど」


実はゾウさんは去年も大会直前にテニスの大会で足を大怪我してしまい、やむなく欠場となった。今年も同じく、ちょっと前にテニスで足を捻挫してしまい、今日も足首にガッチリしたプロテクターを付けている。でも、大会への申し込みをした2月の時点では、まだ怪我はしてなかった。それなのに、なぜかハーフマラソンではなく10kmの部に申し込んでいたのだ。

(ゾウ)「だって10kmの部はスピードがあって楽しいんですよ
(幹事長)「ううむ。分かるような分からないような」


我々も12kmレースの庵治マラソンとか10kmレースの徳島航空基地マラソンになると、ハーフマラソンに比べてペースは上がる。しかし、それが楽しいかと言えば、微妙なところだ。ペースが上がると、足は気持ち良いような気もするが、当然ながら呼吸は苦しくなる。それを快感と捉えるかどうかは人それぞれで、私はハーフマラソンくらいが一番快適だ。

(幹事長)「ま、いずれにしても、今日はゾウさんに負ける心配は無いから、緊張感が薄れるな」
(支部長)「やっほーいっ!」
(ピッグ)「やっほ、やっほ!」


一方、ヤイさんも足を故障している。こちらは捻挫じゃなくて、肉離れを起こしているのだそうだ。捻挫にしても肉離れにしても、もし私だったら、当分は完全休養するところだが、二人とも超人的な体力を持っているので、出場するのだ。



1時間半の船旅が終わって小豆島の坂手港に着くと、いつものように島の小学生達の鼓笛隊が演奏で迎えてくれる。本当に心温まる歓迎だが、年々、隊員の数が減ってきているような気がする。少子高齢化が急速に押し寄せる島嶼部なので、小学生の数も減っているのではないだろうか。
船を降りて空を見上げると、まだ少しは雲があるが、どんどん雲は少なくなっていく。やっぱり炎天下になりそうだ。

例年のように会場横の公園に陣取ろうと歩き始めたところ、港を降りてすぐの小さい芝生のところに陣取っている人達がいる。今まで気付かなかったけど、ここなら帰りの船に乗るのが便利なので、我々も今年はここに陣取ることにした。取りあえずシートを敷いて荷物を置き、受付へ向かう。受付と言っても、このマラソン大会は事前にゼッケンやチップが送られてくるようになったので、実は事前の受付は不要だ。最近、大きな大会になると、前日に現地で受付をしなければならない、なんていうトンでもない風習が蔓延しており、遠方から参加する人にとっては迷惑この上ないのだけど、当日の朝の受付さえ不要なオリーブマラソンのシステムは大いに評価されるべきだ。なぜ、このような便利なシステムが広がらないかと言えば、代理出走を排除するためだ。東京マラソンとか大阪マラソンのような超メジャーな大会は、競争率も激烈なため、油断すると代理出走が増える。そして、最初から転売を目的として出走権を得て、それを高値で転売してマージンを稼ぐダフ屋が横行するようになる。それを防ぐために本人確認が厳しいのだ。なので事前にゼッケンを送るなんて甘い対応は絶対に取らないのだ。このオリーブマラソンも、最近は人気が高まりエントリーするのに一苦労するようになったが、本人確認するほど厳しくはない。
て事で、受付と言っても、参加賞をもらうための受付であり、走り終わってからでもいいらしい。でも、弁当券ももらわなければならないので、事前に貰っておいた方が便利だ。参加賞は去年に引き続いて今年もタオルだ。去年のタオルは大きくてフワフワで、とても斬新なデザインだった。デザインがちょっと斬新過ぎたため、家族は誰も使おうとしなかったので、私が1年間、毎日のようにバスタオルとして使ってきた。さすがに最近、くたびれてきたので、今年のタオルを楽しみにしていた。ところが今年のタオルは、デザインは可愛らしくなったが、大きさが小さくなった。ちょっとバスタオルには小さいかも知れない。

(幹事長)「でも、他の大会のようにTシャツでないだけマシだよな」
(DK谷)「毎年、Tシャツばっかり何枚もたまっていって、押し入れから溢れてますからねえ」


受付が終わったところで集合写真を撮ろうとしたら、なかなか全員が揃わない。ひとたびトイレに行ったら長蛇の列で何十分も帰ってこないので、全員が揃うのは諦めて、何回かに分けて撮って、後から合成した。

ちょっと不自然な精鋭部隊
(左からDK谷さん、ヤイさん、支部長、幹事長、ゾウさん、福家先生、ピッグ、W部選手)

会場近くには仮設トイレが多数並んでいるが、トイレの数以上に大勢のランナーが長蛇の列を作っている。小のボックスでもはるかかなたまで並んでいるから、結構、時間がかかりそうだが、大に至っては、果たしてスタート時間に間に合うのかどうかすら分からないほど時間がかかりそうだ。しかし、私は穴場を知っている。港にある小さなターミナルビルの中に小さなトイレがあるのだ。とても小さいトイレだが、ほとんど知られていないため、結構、空いている。

(ピッグ)「いいんですか、そんな貴重な情報を公開して」
(幹事長)「このホームページを見てくれている良い子のみなさんへのプレゼントだ。ただし文字は小さくしてあるけどね」


ウロウロしていると、仕事でお付き合いのあるT屋さんに会う。土Yさんは私と同じキャノンデールの自転車に乗っているチャリダーなんだけど、マラソンもする。でも、今日は目に障害がある人の伴走をするとのことだ。目に障害がある人の伴走ランナーと言えば、以前、丸亀マラソンで伴走ランナーを探すお手伝いをした事があるので知っているが、とても難しい。人混みでも他のランナーとぶつからないようにコース取りをしなければならないし、ちょっとした路面のデコボコも障害になりうるし、そもそもペースを合わせて走らなければならないから実力が無いと難しい。T屋さんって、実力者だったんだ。知らなかった。

さらに、久しぶりに新城プロと再開できた。実は新城プロは、今年の春から東京へ職場を移していて、直前に私の事務所にも挨拶に来てくれたんだけど、たまたま私は外出していて会えなかったのだ。

(幹事長)「うわあ、良かったあ。もう会えないのかと思ってましたよ」
(プロ)「単身赴任で行ってますから、時々は帰ってきてるんですよ」


新城プロはハーフマラソンに出るとのことだ。きっと上位に食い込むんだろうな。

さて、いよいよ最重要課題のウェアの選択に入る。

(ゾウ)「また今日も何を着るかで悩みまくるんですか?」
(幹事長)「いえいえ、今日はもう決めてます。去年、大活躍した秘密兵器!」


もちろん、秘密兵器とはメッシュのシャツだ。上にも書いたように、去年、炎天下のレースにもかかわらず大会自己ベストに迫る好タイムを出せた大きな要因が、このメッシュのシャツだ。他のメンバーから「恥ずかしいから脱いでくれ」という批判が沸き起こったにもかかわらず、気にせず着て走ったところ、炎天下にもかかわらず暑くならなかったのだ。なので、今年も炎天下になった場合は、これを着ると決めてきたのだ。

(ピッグ)「うひゃあ、またですか。て言うか、もう秘密でも何でもないですけど」
(DK谷)「そんな珍しいもの、どこで入手したんですか?見たことないですよ」
(幹事長)「昔、子供が小さい頃、海水浴に行く時に着てたんですよ」


ずうっと存在すら忘れていたんだけど、なぜか去年、突然、思い出し、押し入れの奥底から発掘したのだ。空を見上げると、まだ少し雲はあり、太陽が雲に隠れた時は、それほど暑くもないが、太陽が雲から出たとたん、ものすごい日射しが照りつけてきて、一気に暑くなる。しかし、このメッシュのシャツを着ている限り、編み目が大きいため、ほとんど何も着てないのと同じくらい涼しい。

(支部長)「いっそのこと、裸で走ったら?」
(幹事長)「えっ?裸でもかまわんの?」


もちろん、裸は禁止だ。と思う。

(幹事長)「トライアスロンでも裸で走ったらいかんのでしょ?」
(DK谷)「違反ですね」


ツールドフランスでも、ゴール時は自転車のジャージの前をはだけるのでさえペナルティの対象となる。見苦しいからだ。サッカーだって、最近は、ゴールして喜んでシャツを脱いだらイエローカードだ。

(支部長)「そのメッシュのシャツだって裸同然なで」
(幹事長)「裸同然と裸とは違うのだよ」
(ピッグ)「大昔のアイドルがステージで着ていた衣装みたいですよねえ」
(支部長)「今から海へ行ってビーチバレーやるとしか思えない雰囲気。おお恥ずかしっ!」


側で見ている方は恥ずかしいと感じるんだろうけど、着ている本人は自分の目に入らないから、意外に恥ずかしくないものだ

(ピッグ)「そう居直れるのは幹事長くらいですってば!」

昔、明石海峡大橋開通記念駅伝大会に出場したとき、自宅から会場までカッパの格好で新幹線に乗って出かけたのに比べたら、何の恥ずかしさも無い。
下は、青森勤務時代に作った陸上部のユニフォームだ。短くて軽いので、これを着ると非常に走りやすく、これを着たときは、たいてい好タイムを記録している。もちろん、去年もこれを履いて走った。
私がこれほど暑さ対策に力を入れていると言うのに、ただでさえ暑さに弱い支部長は、今日も厚手のランニングタイツを履いている。

(幹事長)「見てるだけで暑そうやなあ」
(支部長)「どっちみち暑いんやってば。それにこれはサポート機能があるからな」


ランニングタイツのサポート機能を信じていない私としては、見るだけで暑くなる。なんとゾウさんも、腕にアームウォーマーを付けている。

(幹事長)「この暑いのに、なんで!?」
(ゾウ)「日焼け防止ですよ」


日焼け防止は私も抜かりはない。今日はスプレー式の日焼け止めクリームを持ってきてて、顔にもくまなく吹きかけた。

(ゾウ)「日焼け止めクリームを腕に塗るとベタベタして気持ち悪いし」

暑さと気持ち悪さとの選択か。

(幹事長)「サングラスは必要かなあ?」
(ゾウ)「もちろんですよ!」


てことで、サングラスもかける。ゾウさんと違って、眩しいからではなく、年取ってくると紫外線による目への悪影響が強まって白内障の危険性が出てくるので、鬱陶しいけどサングラスをかけるのだ。でも、帽子は被らないことにした。帽子を被ったら直射日光による暑さは防げるけど、頭が蒸れて暑くなったりして、結局、脱いだり被ったりの連続になって邪魔になる。
最後に持ち物を点検する。汗を拭くハンドタオルは必携だし、お腹を壊した時に備えてティッシュペーパーや胃腸薬も必携だ。フルマラソンじゃないからウォークマンなんかは必要ない。
と、ここで重大なミスに気付いた

(幹事長)「いかん!このランニングパンツはポケットが無い!!
(支部長)「パンツの中に入れるしかないな」
(幹事長)「ひえ〜」


ティッシュペーパーはなんとかパンツの中に入るが、ハンドタオルは大きく邪魔だし、パンツの中に入れたら汗でビショビショになり、意味が無くなるので諦める。シャツは目が粗いメッシュなので汗を拭くことができないから、今日は汗を拭く術が無い。胃腸薬も入れにくいので、まだお腹を壊していないけど、事前に飲むことにした。

(ピッグ)「お腹こわしてないのに飲むんですか?」
(幹事長)「用心に用心を重ねてな」

なんとか準備が終わったところへY浅さんが登場した。彼女はピッグの元同僚なんだけど、去年の四万十ウルトラマラソンではピッグと共に60kmの部を走った強者だ。今日は頭から足先までタイガース一色のウェアだ。10人ほどのタイガース軍団で来ているとのことで、今日はみんなでゆっくり楽しむ事に徹するそうだ。

今からマラソンするとは思えないタイガース応援グッズで固めたY浅さん

(Y浅)「第2折り返しで食べるソフトクリームが美味しいのよ」」

彼女は第2折り返し点の売店にあるソフトクリームを食べるのを楽しみにしているらしい。我々が去年の小豆島一周サイクリング第2ラウンドで行った二十四の瞳の映画村にあるソフトクリームだ。我々はオリーブソフトクリームを食べたが、確かに美味しかった。



ようやくスタート時間が近づいてきたので、スタート地点に移動する。
スタート地点では、予想タイム順に並ぶようになっている。昔のように参加者が少ないときは、誰がどこに並んでも何の問題も無かったけど、最近のように大勢のランナーが出るようになると、コースの道路が狭いだけに、大混雑になって走りにくいので、予想タイム順の整列は必須だ。しかし、どう見ても、みんながみんな、正直に自分の目標タイムの場所に並んでいるとは思えない。一番前は70分台を目標にしたランナーが並ぶようになっているが、どう考えても多すぎる。70分台で走れるランナーって、ものすごく速い。そんなに大勢、いるわけがない。それなのに、めっちゃ大勢のランナーが並んでいる。
ランナーが前の方に並びたがる理由は2つある。まず1つ目は、スタートの号砲から自分がスタート地点を越えるまでのタイムロスを少なくすること。そして2つ目は、スタート直後の混雑を回避すること。2つ目はどうしようもないが、1つ目はタイムをネット計測してくれたら解消される問題だ。このオリーブマラソンも、タイムはチップで計測してくれるようになっているんだから、スタートもチップで計測し、ネットタイムを出すようにしてくれたらいいんだけど、チップの計測はゴール地点だけで、タイムはグロスタイムだけだ。なので、少しでも前の方に並ぼうとするランナーが後を絶たない。
ま、しかし、このマラソン大会に限って言えば、所詮、大したタイムは期待してないので、あんまり気にせず、中ほどに並ぶ。

空は完全に雲が無くなり、すっかり炎天下だ。しかし、メッシュのシャツのおかげで思ったほど暑くはない。

(ピッグ)「て言うか、気温はそんなに高くなってないんじゃないですか?」
(幹事長)「湿度が低いのかな?」
(支部長)「いやいや、やっぱり暑いで」


「スタートまで、あと1分」というコールは聞いたが、その後、カウントダウンが始まるものとばかり思っていたら、いきなりスタートのピストルが鳴った。慌ててスポーツウォッチのボタンを押すと同時に走り始める。とは言っても、まだ動かない、しばらくして動き出すが、まだ走るのは無理。スタート地点まで歩くと、ようやく走り始める。とは言っても大混雑で思ったようには走れず、しばらくはノロノロと走る。ダラダラ進む前のランナーが鬱陶しいが、前のランナーの前にも、その前にも延々とランナーがダラダラ走っているから仕方ない。遅いのに前の方に並び、周囲の邪魔になってる遅いランナーがいっぱいいるんだけど、ここで苛ついてもストレスが溜まるだけだし、隙間をかき分けて右へ左へ移動しながら走っても、ほとんどタイムは変わらない。最初はウォーミングアップと割り切り、ゆっくり走ればいい。

上にも書いたように、このコースはスタートした直後に、いきなり大きな坂があり、これまで恐れおののいていた。ところが昨年、自転車で小豆島を一周した時に通ると、なんだか拍子抜けするほどあっさりと登れてしまい、「なんだ、この程度の坂だったのか。恐れるに足りないぞ」という認識に変わった。昨年、支部長と一緒にヒィヒィ言いながら登頂した寒霞渓ヒルクライムに比べれば、取るに足りない坂だ。て事で、気負うこともなく淡々と坂を上る。大きな坂を過ぎると、その後は草壁港の近くにある第1折り返し地点まで平坦な道が続く。混雑はまだまだ解消されていないが、時々遅いランナーを避けつつ、なんとか自分のペースで走れるようになってくる。炎天下ではあるが、気温はさほど高くないし、湿度も高くないうような気がする。て言うか、たぶんメッシュのシャツのおかげだろうと思うが、ほとんど暑さを感じない。短いランニングパンツもとても走りやすくて、快調に足が前に出て、どんどん走っていける。サングラスで太陽の眩しさも感じないので、帽子は被ってないけど快適だし、自分では快走している感じだ。ただ、周囲のランナーとは同じようなペースであり、追い越すランナーも追い越されるランナーも同じくらいの数だから、そんなに速いとも思えない。何と言っても、距離表示が5km地点まで無いから、今のペースがどれくらいなのか皆目検討が付かないのが不安だ。とにかく5km地点までは今のまま自然体で走っていくしかない。

このレースは、マイナーなローカル大会なんだけど給水所は多い。喉はまだまだ渇いてないが、暑い日は水分は早めにこまめに取らなければならないので、面倒くさがらずに最初の給水所からこまめに水分補給する。ただ、炎天下のレースとあって給水所は混雑しており、我先に水を奪い合うランナー同士の戦いが醜い。

しばらくすると、早くもトップ選手が折り返してくるのとすれ違う。トップは4人の選手が団子になって激しく争っている。その後は、だいぶ間を開けて後続ランナーが続くが、だんだんすれ違うランナーの数が増えてくる。調子が悪い時は、なかなか距離が進まず、この最初の折り返し点まででさえ長く感じられ、なかなか辿り着かないが、今日は調子が良くて気分良く走れているからか、あっという間に折り返し点にやってきた。折り返し点の直前から他のメンバーを探したが、見つからない。スタートして以降、誰かに追い越された形跡はないので、今のところ、メンバーでは先頭だろう。
第1の折り返し点で折り返してからもメンバーを探すが、まだまだ大混雑なので、結局、誰も見つけられなかった。折り返し点からしばらく行くと、ようやく最初の距離表示である5km地点が現れる。時計を見ると26分30秒だ。思った以上に速い。去年より2分ほど速い。スタート直後のタイムロスが1分以上はあるだろうから、1km平均5分ほどで走っていることになる。確かに快調に走ってきた感覚はあるが、それにしても想定より速い。ちょっと悩む。「速ければいいじゃないか」と言われそうだが、マラソンの場合は、そう簡単には言い切れない。序盤がオーバーペースになってると、終盤にガクンとペースダウンしてしまうからだ。去年は大会自己ベストに肉薄する良いタイムだったが、それより2分も速いってのはオーバーペースの可能性が大きい。さすがにまずいだろうと思い、ちょっとペースを抑えることにする

そのうち、我々より後からスタートした10kmの部の選手がやってきて、トップ選手達とすれ違うようになる。10kmの部にはゾウさんが出ているので、探そうとするが、まだハーフマラソンの部のランナーもいるし、なかなか見つけられない。
相変わらず炎天下だけど大して暑くない。とても快調。気持ちよく走れている。給水所でも確実に素早く水を取ることができている。お腹の調子も悪い兆しは無い。例年、暑さ対策として道路の上から水をシャワーのように掛けてくれる場所があるんだけど、今年は1ヵ所だけ、しかも水量が少なかったが、なんとしても水浴びしようと思ってサングラスを取ってシャワーの中に突入する。気持ち良い。
すると、突然、ゾウさんがすれ違いながら声を掛けてくれた。こっちは見つけるのをすっかり諦めていたけど、この派手なウェアは目立つようだ。

しばらく行くと二十四の瞳の分教場がある岬へ向かう分岐点があり、10kmの部はそのまま真っ直ぐに会場に帰るんだけど、ハーフマラソンは来た道から別れて、岬の分教場へ行く道に入っていく。坂が多い海岸線のクネクネした道だ。気分的には、なんとなくここまでで半分って雰囲気なんだけど、実はまだ8kmも走ってなくて、ここからの方が長い。なので、以前は「ええっ?まだ半分も来てないのか?」って精神的にしんどくなるのが常だったけど、今日みたいに調子が良いと、全然、平気だ。
少し行くと、2つ目の距離表示がある8km地点にやってくる。時計を見ると、この3kmは1km平均5分30秒くらいに落ちている。いくらペースダウンしたと言っても、これはちょっと落としすぎだ。確かに、追い越すランナーよりも追い越していくランナーの方が明らかに増えている。相対的に遅くなってるのだ。それほど遅くなった感覚はなかったけど、1km当たり30秒も遅くなったとなると、ちょっとマズイ。スタート前の皮算用では、大会自己ベストを達成するには1km平均5分20秒で走らなければならない。最初の5kmが当初予定より多少速かったから、まだ焦る必要はないが、ペースを上げる必要がある。ただ、この辺りから最初の坂が現れるので、多少頑張っても、ペースを上げるのは難しい。せめて、これ以上ペースが落ちないように踏ん張らなければならない

と思った瞬間、なんとDK谷さんが後ろから突然、現れ、「やっぱり暑いですねえ」なんて言いながら、そのまま抜いていく。やっぱりペースを落としすぎたのか。これはマズいので、着いていこうかとも思ったけど、DK谷さんのペースは速く、ここで無理して着いていくと後が苦しくなると思って、取りあえず追うのは止めておいた。

8kmの距離表示の後は、ようやく1kmごとに表示があるので、ペースが分かって有り難い。坂は次から次へと出てくるので、区間によって上り坂の区間と下り坂の区間があり、ペースを一定に維持するのは難しくなる。ただ、9km地点、10km地点、11km地点と、多少のデコボコはありながら、なんとか1km5分30秒程度のペースは維持できて、少なくともペースダウンはしていない。目標タイムからの遅れは、終盤に取り戻そう。
しばらくすると、第2の折り返し点を折り返して帰ってきたトップランナーとすれ違う。先頭集団は既にバラけていて、先頭のランナーが2位のランナーを大きく引き離している。さらに3位以下のランナーも大きく離れており、1位と2位は確定したように見えた。

まだまだ折り返してすれ違っていくランナーは少ないので、メンバーはいないだろうと思っていたら、いきなり新城プロに声を掛けられた。そうか、新城プロは速いから、もうこんな所まで来ていたのか。それにしても、よく見つけてくれたものだ。目立つ格好をしていると分かりやすくてよろしい。

自分のペースは、なんとか踏ん張れているような気がするが、12km地点のタイムを見ると、かなり遅くなってる。ただ、この区間は大きな上り坂があるので、過去のデータを見ると、毎年、遅くなっており、あまり気にする必要はない。次の区間は大きな坂の下り坂になるので、そこで取り返せるのだ。
周囲のランナーも同じようなペースで、特に追い抜いていくランナーが増えたとも思えない。相変わらず足が重いとか暑くて苦しいとかの感覚はない。自分としては、あくまでも快適だ。まだまだやる気は萎えていない。
炎天下が続いたせいか、さすがに気温も高まりつつあり、だいぶ汗が出てきた。日焼け止めクリームが落ちるのが嫌なので、前半は顔も拭かなかったが、さすがに気持ち悪くなってきて、給水所で水を浸したスポンジを受け取り、顔を拭う。ついでに頭から水をかける。その場限りだけど、涼しくなって気持ち良い。

下り坂をブレーキをかけることなく大股で走っていくと、次の13km地点でのタイムは一気に1km5分を切っていた。ちょっとオーバーペース気味だけど、下り坂だし、もう後半に入っているので気にしない。て言うか、スピードがアップしたので大変気持ち良い。
そこからしばらく行くと、二十四の瞳の映画村の前が第2の折り返し点だ。折り返し点のちょっと前で先行するDK谷さんとすれ違った。時間にして2分差程度か。終盤の頑張り次第では再逆転も可能な差だ。
折り返した後は、すぐにサトやんとすれ違い、声を掛けてくれる。サトやんは、練習量が豊富で速い時はすごく速いが、練習量が減った時は私より遅い。練習量の多さは、彼の勤務形態に大きく依存しており、たぶん今は、あんまり練習できない環境にいるのだろう。

折り返し点を過ぎると氷を手渡してくれるエイドがある。口に含むと、あまりの冷たさに顔がこわばるが、そのままほっぺたに氷を入れて走る。
すれ違うランナーの中からメンバーを探すと、私より数分遅れて支部長が来た。調子が悪いときは、とんでもなく遅い支部長にしては、思ったより速い。あんまり油断できないかも。
そして、なんと、さらに数分遅れて、ようやくピッグが現れた。いくらなんでもピッグがこんなに後ろにいるとは予想外だ。去年、高松に異動になってから練習量が減り、どんどん遅くなっていくピッグだが、ここまで遅いとは驚きだ。「今日は完走だけが目標です」なんて言ってたのは本気だったのか。

折り返してすぐ14km地点の距離表示がある。この1kmは坂が無いフラットな区間だったため、さきほどの下り坂区間ほどではないが、かなり速いペースを維持できている。次の15km地点になると再び少しは坂が現れ始めるが、なおも良いペースで走れている。奴隷船の中で見せたグラフで一目瞭然なように、調子が良いときと悪い時の差は、この辺りからはっきりと現れてくる。調子が悪いときは、この14〜15km地点辺りからみるみるうちに奈落のようにペースが落ちていく。しかし、調子が良いときは逆にペースを上げることができる。そして今日のパターンは、明らかに調子が良いときのパターンだ。つまり、区間事に坂の有無によって多少のデコボコはあるにしても、基本的にはペースを上げていけるパターンだ。つまり、もう怖いものは無い。終盤の失速を恐れる必要はない。もう後の事は考えずに、思い切り全力で走り続ければ良いってことだ。
終盤の心配をしないでもいいってのは、精神的に楽だ。心配しないどころが、今後の展開が楽しみになってくる。調子が悪いときは、走っても走っても次の距離表示が現れないから、辛くて厳しくてウンザリするが、今日のように調子が良いと、あっという間に次の距離表示が現れるので楽しい。調子が悪いときは、走りながら「早くレースが終わって休みたいなあ」なんて事ばかり考えるけど、今日は快調に走れているから、まだまだ今後のレース展開が楽しみで、次のタイムが待ち遠しくて、ホイホイ走れてしまう。

快調に走っていると、K岡氏がすれ違いながら声を掛けてくれる。私はサングラスをしているから顔がよく分からないと思うんだけど、こんなに次から次へと声を掛けてくれるってことは、よっぽど目立つんだろうなあ。それにしても片O氏も遅い。彼も速い時は結構速く、5年前の徳島マラソンでは負けてしまったけど、今日は完全に勝負を放棄したとしか思えないような遅さだ。
さらに、Y浅さんのタイガース軍団にもすれ違う。相変わらず10人ほどのグループで楽しそうに走っている。

次の16km地点のタイムは、再びペースが落ちたが、坂が多い区間なので仕方ない。それに、落ちたと言っても1km5分20秒程度なので、大会自己ベストを達成するには問題ないペースだ。このままペースダウンさえしなければ、大会自己ベストは達成できる。
後半のコースはアップダウンが多くて厳しいが、日射しを遮るものが皆無だった前半に比べて、木陰も多いので、木陰に入ると涼しい。それに、前半に比べて、多少、雲も出てきたようで、時々曇ったりもする。そうなると、だいぶ涼しくなって走りやすい。ほんの少しだけお腹の張りがあるような気もするけど、一昨年のような危険な波ではないから、今日はこのまま大丈夫と思われる。

次の17km地点でのタイムも、ほぼ同じペースを維持できている。過去のオリーブマラソンの実績からすると、残り4kmの地点でペースが落ちてないってことは、よほどの事が無い限り、大会自己ベストは達成できるだろう。て言うか、相変わらず快調で、まだまだ足は全然重くなっていないから、ペースダウンの心配はしなくてもいいような気がする。もちろん、完全に油断はできない。例えば去年の丸亀マラソンでは、同じように17km地点までは非常に快調だったのに、最後の4kmで突然、ガクンガクンと大幅にペースダウンしてしまった。ただ、丸亀マラソンの最後の4kmは魔の直線コースと呼ばれており、必ずペースダウンする区間なので、あんまり気にする必要も無い。
それに、もう残り4kmなので、気持ち的には最後のスパート体勢に切り替える。もちろん、4kmもスパートできる訳はないんだけど、マラソンは極めてメンタルなスポーツなので、気持ちは重要だ。

すれ違うランナーもだいぶ少なくなってきたところで、なんとヤイさんとすれ違った。いくらなんでも、ここまで遅いって事は、明らかに足の故障だろう。もう走って帰ってくるのは無理じゃないだろうか。まだ半分以上も残っているから、歩いて帰るのも不可能だろうし。この大会は、途中でリタイアしても、回収してくれる車ってあるのだろうか?自分で歩いて帰るのなら、リタイアしても仕方ないよなあ。
なんて思っていたら、今度は救急車とすれ違った。炎天下のレースでは、常に何人か倒れる人が出てくるから、今日も誰か倒れたんだろう。普通にリタイアしても誰も回収してくれないかもしれないけど、いっそのこと、救急車で運ばれたら歩かずに帰ってこられるって訳だ。でも、ちょっと恥ずかしいか。

次の18km地点のタイムは、下り坂区間だったおかげで、再び5分を切るハイペースとなった。自分の走りが気持ち良くて仕方ない。これならDK谷さんを再逆転できそうな気がして、一生懸命前方を探すが、よく分からない。まだまだ追いついていないのだろうか。
まだまだ坂は続くが、足は重くない。上りでも快調に登っていける。実際に快調なペースなのかどうかは怪しいが、少なくとも精神的には上り坂でも苦痛ではない。自転車を始めてから、坂に対する嫌なイメージが払拭されたのかもしれない。自転車も、始めた頃はフラットな道を走るのが気持ちよかったけど、だんだん飽きてきて、今では坂道の方が好きだ。そのせいか、走っていても坂があった方が変化があって刺激になるくらいになった。ペースは落ちていても、精神的に辛くなければ、淡々と乗り切れる。

次の19km地点も坂があったにもかかわらず、そんなに悪くないペースを維持できている。そして、その次が、いよいよ最後の大きな坂だ。いくら精神的には克服できていると言っても、さすがにこの大きな坂ではペースは落ちる。たぶん、歩いているようなペースだろう。しかし、もちろん、歩こうなんていう気持ちは全くわいてこない。歩いているランナーを気持ち良く追い抜いていき、ノシノシと上っていくと、思ったより早く上り坂は終わってしまい、あとはもう下るだけだ。
坂を下り終わると20km地点で、さすがに時間はかかったが、それでも5分30秒程度だ。この大きな坂をこのタイムでクリアできれば問題ない。いよいよ残り1kmだ。完全に楽勝ペースだ。1回や2回くらい転んでも大会自己ベストは間違いないくらいのタイムだ。むしろ、どう転んでも大会自己ベスト間違いない状況になってしまったことで、楽勝過ぎて目標を失ってしまったほどだ。あと少しで届きそうな目標があれば、最後は全力で頑張るが、もう楽勝になった場合、本気の全力を出すのは難しい。てことで、最後は全力疾走したつもりだけど、最後の1kmは、思ったほどはペースアップできなかった
それでも、最後まで足は重くならず、本当に気持ち良くゴールできた

炎天下のレースを力強い走りで制した幹事長

目標どおり、大会自己ベストを更新することができた。タイムそのものは、そんなに自慢できるものではないんだけど、つい数年前までは、この大会で2時間を切るのは不可能と確信していた苦手のコースなので、大いに満足だ。それに、30代から出ているこの大会で、50代後半になって大会自己ベストを出せたので、非常に満足。嬉しいなあ。



ゴールして良い気持ちに浸っていたら、DK谷さんを見つけた。結果を見せ合うと、十数秒の差だった。

(DK谷)「終盤は足が重くなってペースダウンしてしまいました。いつ追いつかれるか冷や冷やしてましたよ」

僅か十数秒の差だったのか。もしそれが分かっていたら、モチベーションも高まって頑張って追いつけたかも知れない。見つけられなかったのが敗因だ。
そこへ10kmの部を走り終え、着替えも済ませたゾウさんが現れた。手にカメラを持っているが、

(ゾウ)「うわん。もうゴールしたんですか。ゴールの写真を撮れませんでした」

私らが事前の予想より早くゴールしたもんだから、ゾウさんに写真を撮ってもらう事ができなかった。
ゾウさんは10kmの部で健闘し、部門別で上位10%に入る好成績だ

(幹事長)「上位10%って、すごいなあ。もう考えられない」
(ゾウ)「幹事長だって、いいんじゃないですか?」
(幹事長)「いえいえ、トンでもない」


自分では大健闘したつもりだけど、部門別(男子50歳代)での順位は上から1/4ほどだ。女子も入れた全参加者の中でも上位20%には届いていない。それでも、かつては全参加者の中で下からせいぜい2〜30%程度の順位で、ひどいときは部門別なら下から10%程度の順位だったのだから、大きな飛躍だ。半分より上になったのは、つい数年前からの事だ。

(ゾウ)「その歳になって、そんなにグングン速くなってるんですか!?」
(幹事長)「いえいえ、大して速くはなってませんけど」


順位が上がってきているのは、最近の熱中病のようなマラソンブームのせいで遅い初心者ランナーが大挙して参加するようになったからだ。丸亀マラソンなんか、かつては制限時間が2時間5分だったため遅いランナーが出場していなかったので、常に後ろの方だったのに、制限時間が大幅に延びた最近は相対的に上位になってしまった。ま、気持ち良いと言えば気持ち良いけど、自分が速くなった訳ではないので、勘違いしてはいけない。
しばらくすると支部長がゴールしてきた。悪くないタイムだ。

(幹事長)「炎天下にもかかわらず、結構、速かったんちがう?」
(支部長)「炎天下での大会自己ベストやな。歩いたのは最後の2つの大きな坂だけや」


暑さに弱いにもかかわらず厚着していた支部長だが、バテずに完走できたのは、ここ1ヵ月の早朝ランニングの成果と言えよう。
一方、練習不足のピッグはだいぶ遅かった。

(幹事長)「全くやる気が感じられないが」
(ピッグ)「自分では楽しく走れましたよ」


ううむ。かつての好敵手のイメージが無くなってしまった。

ゾウさんは着替えを済ませているが、まだまだ暑いので、今日は着替えは後回しにして、なにはともあれ、まずは冷たいソーメンを食べなければならない。このレースの一番の楽しみが、レース後のソーメン食べ放題だ。特に、今日みたいな炎天下のレースでは冷たいソーメンがとても美味しい。ソーメンだけでお腹が一杯になってしまい、お弁当を食べられなくなってしまうのが欠点だが、どっちにしても、暑さでバテバテでお弁当は食べる気がしないから、冷たいソーメンをすする。
ふと見ると、たまに緑色のソーメンを食べている人がいる。どこに置いてあるのか分からないが、一見、茶そばのように見えるけど、やっぱりソーメンだ。もしかして、オリーブ味とか?

ソーメンを食べ終わってブラブラしていると、KJ原さんが声を掛けてくれた。梶Hさんは会社の先輩で、しばらく足を故障してマラソン大会からは遠ざかっていたんだけど、今日が復帰後初のレースだそうだ。まずはハーフマラソンから復帰して、次は瀬戸内海タートルマラソンでフルマラソンに復帰する予定とのことだ。

それにしても、今日一日、色んな人から声をかけてもらった。私は、ほとんど他の人の顔を見てないから、自分から気付くことがなくて、申し訳ないんだけど、それにしても、サングラスしているのに、これだけみんなが気付いて声を掛けてくれてるってことは、やっぱり、よっぽどウェアが派手で目立つってことだろう

(ピッグ)「嫌でも目に付きますよ。文字通り、見るのが嫌になりますけどね」

ソーメンを食べていると、ヤイさんがゴールした。すれ違った時に見た様子では、どう見ても故障している風だったので、まだまだ帰ってこられないとのではないかと思っていたけど、意外に速かった。

(幹事長)「また走れたんですか?」
(ヤイ)「しばらく歩いた後、再び走り始めたら、なんとか最後まで走れてね」


どう見ても走るのは無理と思ったんだけど、ヤイさんは元々の基礎体力が我々凡人とは違うから、復活できたようだ。



帰りの船は出港時間が2時だ。まだまだたっぷり時間はあるが、朝と同じく、早く行かなければ座る場所を確保できない。なので、朝と同じように、またまた支部長が先陣を切って列に並んでくれて、朝と同じように大きなボックス席を確保してくれた。

(幹事長)「朝だけでなく、帰りも早々にお並びいただいて、本当にありがとうございまする」
(支部長)「言葉が軽いな」


船の中では弁当を食べながら反省会だ。と言っても、個人的には今日は珍しく反省する事は無い。なんと言っても、この歳になって大会自己ベストを更新できたのが嬉しい。それに、去年に続いて最後まで全然足が重くならず快調に走れたのが気持ち良かった。何度思い返しても気持ち良い。ゴールしても、まだまだ走れそうな感じだったし、心地よい余韻が残る。過去、タイムが良かった時と同じように、前半より後半の方がペースアップできたし。どう考えも、去年、今年と調子が良かったのは、やはりメッシュのシャツの威力だ。このおかげで、あんまり暑くなかったのが勝因だ。誰にどんなに非難されようとも、これから暑い時のマラソンは、これで攻めよう。
と、そのとき、会場で配られていた読売新聞の号外を見ていたW部選手が叫ぶ。

(W部)「幹事長が写ってますよ!他の人も写ってる!」

本当だ。読売新聞の号外にデカデカと掲載されたスタート直後の写真に我々が全員、写っている。

いきなり号外に登場したペンギンズ精鋭部隊
(上:ヤイさん、中:ピッグ、下:左からDK谷さん、幹事長、支部長)

ここでも目立つメッシュのシャツが威力を発揮したようで、すぐに分かったらしい。うちのメンバーがマスコミに登場したのは、気が付いたものだけでも、1997年の小豆島オリーブマラソンの読売新聞1999年の小豆島オリーブマラソンのスポーツ報知1999年の屋島一周クォーターマラソンの四国新聞2002年の小豆島オリーブマラソンの四国新聞2002年の屋島一周クォーターマラソンの四国新聞2006年の丸亀マラソンの広報丸亀2007年の丸亀マラソンの四国新聞2008年の徳島マラソンの徳島新聞2009年の徳島マラソンの電気新聞2009年の弘前アップルマラソンの東奥日報2013年の大阪マラソンの日経新聞2013年の大麻町ジングルベルマラソンの朝日新聞と数多くあり、それだけ活動が活発だという事の証明だろう。

(ピッグ)「マスコミと言っても会場で配られていた号外ですけどね」
(ゾウ)「でも、結構な頻度で登場してますよねえ」
(幹事長)「ま、大半は、本人でないと分からないくらいの小さな写真やけどな」



さて、次は僅か2週間後に徳島航空基地マラソンがある。航空自衛隊が共用している徳島空港の2500m滑走路を2往復して10km走る珍しいレースだ。はるか先まで見渡せる炎天下の滑走路をひたすら走る熾烈な短距離レースなので、精神的にきついけど、面白いレースだ。お楽しみに!


〜おしまい〜




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