第8回 高知龍馬マラソン

〜 原因不明の大惨敗 〜



2020年2月16日(日)、高知市において第8回高知龍馬マラソンが開催された。

この時期はマラソン大会が立て込んでいる2月2日に丸亀マラソンが開催され、その翌週の2月9日には坂出天狗マラソンが開催され、ゾウさんが女子年代別で3連覇の偉業を成し遂げたほか、愛媛マラソンも開催され、さらに翌週の2月16日には海部川風流マラソン高知龍馬マラソンが開催され、さらに翌週の2月22日には善通寺五岳山空海トレイルが開催される。
このうち丸亀マラソンにはのほか支部長、ピッグ、ゾウさん、國宗選手、D木谷さん、のらちゃんなんかが出場し、坂出天狗マラソンにはゾウさんD木谷さんが出場し、愛媛マラソンには渡部選手が出場し、今回の高知龍馬マラソンにはのほか支部長、ピッグ、D木谷さん、T村くんが出場し、善通寺五岳山空海トレイルにはのらちゃんが出場する。D木谷さんは3週連続のレースだし、私も1週あけて4週間で3レースという超ハードな過密スケジュールとなっている。

なんでこんなに立て込んでいるかと言えば、もちろん今がマラソンシーズン真っ盛りだからだ。年間で一番寒い時期だから良いタイムが出やすいため、全国で多くのマラソン大会が開催されており、同じ日に色んな大会がダブっているのは珍しい話ではない。個人的には、あんまり寒いのは苦手なので、4月頃の方が嬉しいし、もっと分散してくれた方が色んな大会に出られて嬉しいんだけど、仕方ない。

いっぱいマラソン大会があっても出場しなければいいんだけど、最近は毎年、同じようなハードスケジュールになっている。発端は3年前だ。3年前は丸亀マラソンの2週間後に開催される京都マラソンに6年目にしてようやく抽選に当たって出場した。どんなに過密スケジュールであろうと、なかなか出られない競争率の高い京都マラソンに当選したのだから、出場しないと言う選択肢は無い。
しかし、京都マラソンは競争率が高い都市マラソンなので、翌年の一昨年は当たり前のように落選したし、去年、今年も連続で落選している。

で、一昨年、京都マラソンに落選して気落ちしていると、龍馬脱藩マラソンに行く途中で、D木谷さんに「京都マラソンと同じ日に海部川マラソンがありますよ」と誘われた。それで一昨年は海部川マラソンに初参加した
海部川風流マラソンは良いタイムが出やすいと評判のレースだったが、実際に出てみると、やはりとても走りやすくて気持ちの良いマラソン大会で、久しぶりにフルマラソンの自己ベストタイムが出た。一緒に出たピッグもサブフォーを達成したし、D木谷さんもフルマラソンの自己ベストは海部川マラソンで出している。やはり良いタイムが出やすい大会だったのだ。
これに味を占めて、去年は支部長も誘って参加した。ところが、誰がいつ走っても好タイムが出ると思っていたマラソン大会だったのに、2回目の去年は目を覆うような惨敗を喫してしまった。理由は不明だ。
一昨年は海部川マラソンで良いタイムを出した翌月の徳島マラソンで惨敗し、去年は惨敗した海部川マラソンの翌月の徳島マラソンではまあまあの好タイムだった。なので、コースのせいと言うより、その日のコンディションとか体調とか様々な要因による当たり前の好不調の波だと思う。

てな事で、今年も再び海部川マラソンに出て去年のリベンジをするべきかどうか悩んでいたら、今年も龍馬脱藩マラソンに行く途中で、D木谷さんから「今年は同じ日の高知龍馬マラソンに出ませんか」と誘われた。高知龍馬マラソンは以前から存在は知っていたが、丸亀マラソンや他のマラソン大会と開催日が同日だったりしてたもんだから、これまで参加していなかった。
高知は梼原町の龍馬脱藩マラソンとか津野町の北山林道駆け足大会とか本山町の汗見川清流マラソンとか伊野町の四国のてっぺん酸欠マラソンとか、高知県内でも辺鄙な場所で開催されるマラソン大会にいっぱい出ていて、それらに比べたら高知市内で開催される高知龍馬マラソンは行くのにそんなに不便ではないが、なんとなく足が遠かった。
しかし、D木谷さんに誘われたことにより、新しいマラソン大会に挑戦してみようという気持ちが一気に湧いてきた。それで龍馬脱藩マラソンに向かう車の中で、支部長が一緒にエントリーしてくれた。

(幹事長)「久しぶりの新しい大会やから、新鮮な気持ちがするな」
(支部長)「気のせいやろ」


実はピッグだけは4年前に高知龍馬マラソンに出場している。その年、高知龍馬マラソンは丸亀マラソンの翌週だったから、ハーフマラソンとフルマラソンが2週連続で続くと言う過密スケジュールだったが、なんとピッグはスキーに行くからと言って丸亀マラソンを欠場したので、過密スケジュールではなかった。マラソン大会よりスキーを優先させるその姿勢が、全国の多くの市民ランナーから一斉に激しいブーイングを浴びたのは言うまでもない。

(ピッグ)「しつこいですね。4年前の事は忘れましょう」
(幹事長)「もちろん、一生言い続けるぞ」


また、かつてペンギンズに在籍していたスーパールーキーモンキー城武選手は、なんと、この高知龍馬マラソンで2013年、2016年、2018年と3回も優勝している

(ピッグ)「城武さんはペンギンズに在籍してたと言うより、ゲストで参加してもらっただけですよね」
(幹事長)「何を言うか。ちゃんとメンバー紹介のコーナーに掲載されているぞ」


城武選手が2014年や2015年に優勝しなかったのは、不調だったからではなく、その2年間はアメリカ勤務で不在だったからだ。出れば優勝するという驚異の城武選手だが、2011年の満濃公園リレーマラソン2010年の小豆島オリーブマラソンに参加しているれっきとしたペンギンズのメンバーだ。その彼が何度も優勝している大会なので、我々にもチャンスがあるかもしれない。

(支部長)「全く無いな」
(ピッグ)「城武さんは四国の全てのマラソン大会で優勝してますよ」


〜 ハードなコース 〜


もちろん、優勝は不可能だが、出場する限りは良いタイムを期待したい。

(幹事長)「ピッグは4年前はどうやったっけ?」
(ピッグ)「フルマラソン自己ワースト2位の大惨敗でしたね」
(支部長)「え?そうやったっけ!?」


ピッグもスタート前までは楽観的なイメージを持っていたらしいが、いざ走ってみると、思いのほか厳しいコースだったらしい。
コースの山場は、ちょうど20km地点にある浦戸大橋高さが50mもあり、それを一気に駆け上がり、また駆け下りる。ただ、ここさえ乗り切れば後半は比較的フラットな道が続く。と私は思う。ピッグもそう思っていたらしい。もちろん、だからと言って私は浦戸大橋でむやみに頑張って体力を消耗して終盤に撃沈するような初歩的なミスを犯すつもりはない。もちろん、ピッグもそう思って、浦戸大橋の上り下りは足に負担をかけないように短い歩幅でゆっくりと走り切ったとのことだ。
そして、うまく体力を温存することができ、これなら後半は楽勝だと思いつつも、無理せずマイペースで走っていたにもかかわらず、中間地点から延々と10km以上も続くほぼ直線の海岸線の道にウンザリというか絶望的な気分になったとのことだ。たぶん、果てしなく延々と続く堤防の上を走らされる徳島マラソンのような苦痛なのかもしれない。
さらに、折り返し地点の直前の30km地点にある仁淀川河口大橋上りが意外にきつく、疲れた足にはダメージが大きいらしい。また仁淀川河口大橋は延々と続くため、精神的にもダメージが大きいらしい。もちろん、折り返し地点の直前にある仁淀川河口大橋だから、折り返した後の帰り道にも再び渡ることになり、ダメージは倍加する。
そして、終盤になってようやくゴールの春野陸上競技場が近付くと、なんと春野陸上競技場は小高い丘の上にあり、最後の最後に再び厳しい上り坂が待っているのだ。

(幹事長)「なかなか厳しいコース設定やな。前半から徹底的に抑えて走らないといけないかな」
(ピッグ)「前回も前半から徹底的に抑えて走ったんですけどね」


ヘタに色気を出して好タイムを狙ったりすると、フルマラソンは終盤に絶対に撃沈する。去年の海部川マラソンでは前半から調子に乗って飛ばしたせいで、信じられない撃沈をした。一方、前半から少しでも上り坂があると徹底的に歩いた去年の龍馬脱藩マラソンは最後まで足が痛くならずに済んだ

(支部長)「タイムは驚異的に悪かったけどな」
(幹事長)「あれでも大会自己ベストやから勘弁してちょ」


とは言え、前半から抑えて走ったつもりの去年の那覇マラソンでは空前絶後の大惨敗を喫してしまった。なので、前半から抑えて走ったからと言って、かならずしも最後まで順調に走れる訳でもない。難しいところだ。
ただ、今年は2週間前の丸亀マラソンで久しぶりに大会自己ベストが出た。24年目の出場で、この歳になって大会自己ベストが出るなんて、とても嬉しい。たぶん12月と1月に自分としてはたっぷり練習した成果だと思う。なので、その余韻が残る今回の高知龍馬マラソンでも好タイムを期待したいのだ。

上記のように、コースとしては高知龍馬マラソンは簡単ではないが、コースのアップダウンの高低差とタイムとは必ずしも正確には比例しない。一昨年好タイムを出した海部川マラソンはかなりの高低差があるのに、超フラットな徳島マラソンよりもタイムは良かった。ハーフマラソンでも、超フラットな丸亀マラソンより坂が多いタートルマラソンの方が良いタイムが出ることも多い。
なので、普通に考えたら好タイムが出そうな超フラットな徳島マラソンよりも、コースが厳しい高知龍馬マラソンの方が良いタイムが出る可能性もあるのだ。

(支部長)「いや違うな。アップダウンの有無じゃなくてコースが単調かどうかが重要や」
(幹事長)「あ、そうかも!」


確かに、超フラットな徳島マラソンのタイムがイマイチなのは、どこまでもどこまでも遥か彼方まで延々と続く堤防の上を走らされるから苦痛になるのだ。景色も川と田んぼと山ばかりで、全く変わらないから、一体どこを走っているのか分からなくなってしまう。超ウンザリなコースだ。それに比べて他のマラソン大会はコースがもっと変化に富んでいる。
一方、高知龍馬マラソンのコースは、中間地点まではなんとか多少は変化があるようだが、後半は超退屈なウンザリするようなコースのようだから、徳島マラソンと同じく、退屈して惨敗する可能性も高い
しかし、せっかく初出場する高知龍馬マラソンなんだから、出る限りは良いタイムを狙いたいぞ。


〜 会場へ出発 〜


今回、一緒に行くのは支部長、ピッグ、D木谷さん、T村くん、N谷選手だ。N谷選手は、D木谷さんと一緒にトライアスロンを荒らしまくっている強豪選手で、一昨年の海部川マラソンにも一緒に行った。またT村くんは、マラソン歴は浅く、デビューしてからまだ2年くらいしか経っていないが、もともと素質があるらしく、とても速い。フルマラソンはまだ数回しか走ったことないのに、去年11月のタートルマラソンでは3時間15分なんていうトンでもない記録を出したし、2週間前の丸亀マラソンでは1時間29分という快記録を出した。

(T村)「なんかモチベーションが無くなってしまって」
(幹事長)「え?どゆこと?」
(T村)「フルマラソンで3時間半、ハーフマラソンで1時間半を切ることを目指してたんですけど、どっちも達成しちゃって目標が無くなったんですよ」
(幹事長)「まだマラソンを始めて2年しか経ってない人間の言うセリフとは思えんな。フルマラソンでサブ3を目指したらどう?」
(T村)「さすがにサブ3は、本格的な練習をしないと無理でしょう」


彼の話では、これまではただ闇雲に走りこんだだけで達成できたが、サブ3になると、練習メニューとか考えて辛い練習をこなしていかなければならないから、そこまでは無理とのことだ。

(幹事長)「確かに、私もただ闇雲に走りこんでるだけやなあ」
(支部長)「レベルが違うがな!」


今日の高知龍馬マラソンのスタートは9時なんだけど、徳島マラソンと同様、会場へのアクセスは悪い。て言うか徳島マラソンよりも悪い。徳島マラソンは高松からだと時間的に公共交通機関の利用が不可能で、車で行くしか方法が無いが、広い臨時駐車場が用意されている。臨時駐車場と会場の往復にはシャトルバスがあり、ものすごい渋滞に巻き込まれてトンでもなく時間がかかって大変だが、一応、臨時駐車場が用意されている。
ところが、この高知龍馬マラソンは、徳島マラソンと同様に、高松からだと時間的に公共交通機関の利用が不可能で、車で行くしか方法が無いのに、臨時駐車場が無い。自分でどこか駐車場を確保して、そこから自分で何とかして会場へ移動するしかないのだ。しかもスタートは県庁前で、ゴールは遠く離れた春野陸上競技場だ。もう不便で不便で仕方ない。この不便さも、これまで私が高知龍馬マラソンを敬遠してきた理由の1つだ

ただ、今回はN谷選手が車を出してくれて、駐車場の手配もしてくれたので、のんびりと出発することができる。のんびりと言っても、それは、ただボウッと車に乗っていれば良いっていう意味で、出発は超早い。N谷選手が他のメンバーを拾って最後に私の家に来てくれたのは4時半だ。これは早い。トンでもなく早い。早すぎる。
なーんて言うほどのことではない。かつての私なら、早起きができなかったので、4時半出発だなんて不可能だったが、老化が進んだ最近ではそれほど無茶な時間設定ではない。一昨年や去年に海部川マラソンに行った時も同じような時間だったし、小豆島オリーブマラソンだって奴隷船に乗るために5時には港に行ってるから、家を出るのは同じようなものだ。
スタート時間は9時、集合は8時半まで、手荷物預けは8時15分まで、受付は8時までだから、7時頃に到着すれば楽勝なんだけど、道が混んでるかもしれないし、初めての参加で何かと不安があるので、少し早めに出発したのだ。

高松地方は朝から曇りだ。しかし、高知の方は天気予報ではレース当日は雨模様だと1週間も前から言っていた。以前なら、1週間も前の天気予報なんて、絶対に外れると思っていたが、最近は1週間も前の天気予報が信じられないほど良く当たる。なんで1週間も先の天気予報が当たるのか、一体どういう仕組みになっているのか理解できないが、本当に良く当たる。たぶん中国人民解放軍がヨウ化銀を空中散布して気象操作をしているのだろう。
しかも、これが香川県地方なら、天気予報で雨だと言っても、実際に降る事は少ないし、降っても小雨程度だ。香川県の方言では「雨模様」ってのは「雨が降りそうに見えるかもしれないけど、結局は全然降らないよね」って言う意味だ。
しかし、日本一雨が多い高知県の場合は違う。高知の天気予報で「雨模様」になってると、雨が降るのは間違いない。土佐弁で「雨模様」ってのは「いきなり土砂降りになるから流されないように気をつけてよね」と言う意味になり、雨が降るかどうかではなく、雨の程度の問題になる。

ただし、今の我々は雨を恐れていた昔の我々ではない。昔の我々なら、雨のマラソン大会なんて走る気が起きなかった。朝から雨が降っていると、空を見上げながら連絡を取り合って、結局、みんな揃って欠場って事も多かった。
しかし 、第33回小豆島オリーブマラソン大会で考えが変わった。その日は朝からものすごい土砂降りの雨だったので、みんなで欠場の相談をしていたら、スーパールーキーモンキー城武選手から「雨がどうしたんですかっ!何を考えてるんですかっ!」と一喝され、渋々参加した。
ところが、土砂降りの雨は、走りにくいどころか、気温が低くなって走りやすくて、後半の大きな坂も全然、苦にならず、最後までペースダウンすることなく、というか、坂が多い後半の方がペースアップしてタイムが良くなるという考えられないレース展開でゴールし、2時間を大幅に切る大会自己ベストとなった。私だけでなく、ピッグも支部長も快走した。
それ以来、我々は雨そのものに対する抵抗感は払拭されており暑い季節には、むしろ雨を好むようになった
でも、それは気温が高いシーズンの話であり、今は一年で一番寒い時期なので、冷たい雨の中を走るのは嫌だ

(支部長)「そんな事はない。どんな季節でも雨の方が良い」
(幹事長)「20年前の事を忘れたのか!?」


もう古い話になってしまったが、20年前の丸亀マラソンでは、冷たい雨の中、体中の筋肉がこわばってしまい、空前絶後の大惨敗を喫したのを今でもはっきりと覚えている。

(幹事長)「老化で認知症が進んで記憶力が衰弱しているのに、あの悲惨な戦いは鮮明に覚えているぞ。支部長やって一緒に惨敗したやんか」
(支部長)「そんな事あったかなあ?」


今は一年で最も寒い時期だ。こんな季節の雨は悲惨な結果を招くのが目に見えている。
ただし、天気予報によると、この時期としては気温は低くなさそうだ。ほんとに寒くないのなら、多少雨が降っても耐えられる。でも本当に気温が高めなのか、また雨の量がどれだけのものなのか、不安は大きい。

まだ朝早いけど、少しだけお腹が空いてきたので、朝食を食べ始める。もちろん、朝食はおにぎりだ。以前はレース中にお腹を壊すことが多かったので、用心して朝食と一緒に下痢止めの薬も飲んでいたが、5年前の徳島マラソンから朝食を菓子パンからおにぎりに変えたため、その後は一度もお腹を壊さなくなった。パンに含まれるフルクタンという糖類は消化に悪く、下痢になりやすいが、お米に含まれている糖類は消化が良いので、おにぎりを食べれば、もう下痢を心配する必要は無いのだ。
ただ、マラソン大会の前の食事は、ゴールの5時間前が良いっていう話だ。もちろん、それだと我々ならスタートの直前になってしまうから、もう少し早く食べる必要があるが、いくらなんでもまだ早すぎるので、取りあえず1個だけにしとく。

日曜日の早朝なので、高速道路はガラガラで、順調に進む。高知が近付くにつれ、雨がパラパラし始める

(ピッグ)「遂に降ってきましたね」
(幹事長)「雨は避けられないとしても、どれだけ激しくなるかが不安やなあ」

高知インターで高速道路を降り、まだ真っ暗な中、高知市中心部に到着した。まだ6時過ぎだ。こんなに順調に到着するとは思わなかった。いくらなんでも早すぎたかも。


〜 会場へ到着 〜


スタート高知県庁前で、受付なんかは県庁の北西にある城西公園だ。車を近くに停め、県庁を横切って到着する。
少しずつ雨は強くなってきたが、まだそんなに本降りではない。でも、公園に到着すると、地面は泥の海と化していた
公園の中に設置された受付では、ウェアに付けているゼッケンを見せると、参加賞のTシャツをくれた

(支部長)「なんでもうゼッケン付けてるん?」
(幹事長)「こんな雨の中でゼッケン付けるのは面倒やから家で付けてきたんよ。用意がええやろ」
(支部長)「違うがな。なんでもうゼッケン持ってるん?」
(幹事長)「え?事前に送られてきたやろ?」
(支部長)「え?知らんで。うちは来てないで!」


なんと、支部長宅にはゼッケンが送られてきていないと言い張る。でも、支部長が一緒に申し込んでくれた私のところには何週間も前に送られてきている。

(幹事長)「絶対に送られてきてるはずやってば」
(支部長)「そんなん見たことないで!」
(幹事長)「認知症が進んで忘れているか、奥さんが嫌がらせで隠したか、どっちかやな。どっちが良い?」
(支部長)「どっちもイヤ。て言うか、ほんとに来てないってば!」


私のところに来てるんだから支部長のところにだけ来てないはずはないから、たぶん見過ごしていたんだろうけど、支部長は頑として自分の非を認めない。

(幹事長)「受付で『ゼッケンが送られて来なかった』って嘘をつくしかないな」
(支部長)「嘘やないってば!」


ところが、意気込んで受付へ行ってケンカ腰でねじ込もうとしたら、あっさりと「ああ、そうですか。済みませんでした」なんて謝られて、拍子抜けしてしまった。ゼッケンとチップはその場で代わりのものを支給された

着替えはテントが用意されていたが、土の地べたに設置されたテントの中にはブルーシートが敷かれてはいるものの、既に雨でベチャベチャだ。文句言っても仕方ないので、冷たいシートに座って準備を始める。
いよいよ何を着るかを決めなければならない。

(幹事長)「今日は何を着るかが大問題やなあ」
(支部長)「今日に限らず、いつも大問題やんか」

何を着るかは、どんな季節のマラソン大会であっても最も重要な問題だ寒いのは大嫌いだけど、暑くなるとバテてしまうから避けなければならない。冬なら基本的に寒いから、どれだけの防寒着にするかが問題となる。
めちゃめちゃ寒い日は、迷うことなく防寒用のぶ厚い長袖ランニングシャツを着て、その上に半袖Tシャツを着ればいい。一方、2014年の丸亀マラソンのように冬とは思えない暑さの日には、冬でも半袖Tシャツ1枚でいい。その中間の気温、つまり普通の寒さであれば、長袖シャツ1枚か、長袖シャツの上に半袖Tシャツを着ればいいが、長袖シャツにも色々あって、今年の丸亀マラソンでは3種類の長袖シャツを用意しておき、スタートの直前に決定した。

ただ今日は、寒さだけでなく、雨と言う嫌な要因にも対処しなければならない。
今日はそんなに寒くはなさそうだから、防寒用のぶ厚い長袖ランニングシャツは不要だろう。雨対策と言う観点からは、一番下は、雨が降って濡れてもベチョベチョしないように、登山用に愛用している吸湿性と速乾性に優れた長袖のインナーウェアを着るべきだ。
ハーフマラソンなら、今日みたいなコンディションなら長袖シャツ1枚でも十分かもしれない。ハーフマラソンなら2時間もかからないし、最後まで一生懸命に走って体が熱を発散しているから、雨が降っていても寒さにも耐えられるからだ。
しかしフルマラソンの場合は、ペースが遅いからそこまで体は熱くならないし、終盤は疲れて足を引きずって歩くようなスピードになる。自分の主観では走っているつもりでも、他人が見たら歩いているのと変わらない。それくらい遅いペースになると、歩いているのと同じように一気に体が冷えて寒くなる
寒くて辛いのは絶対に嫌なので、暑いのはまだしも、寒いのだけは避けたい。炎天下でゼイゼイ言いながら歩くのは嫌いではないが、寒い中を震えながら歩くのだけは絶対に避けたい。なので、それに備えるために、せめて長袖シャツの上に半袖Tシャツも着るべきだろう。半袖Tシャツは、3年前のタートルマラソンでもらったショッキングピンクのTシャツだ。

(支部長)「どうせ悩んで悩んで悩みまくって決めても、タイムには何の関係も無いからな」

もちろん、タイムという観点からは、結果的に見ると、暑かろうが寒かろうが何を着たかでタイムに影響があった記憶は無い。暑いときもあれば寒いときもあるけど、タイムはそれ以外の体調とか練習不足とかの要因で決まる。て言うか、寒いのは辛いがタイムはむしろ寒い方が良いことが多い。しかし、タイムが良いとか悪いではなく、寒くて辛いのは嫌なのだ。
そして、さらに、雨対策としてビニール袋も持っていくべきだろう。去年の徳島マラソンでは、途中でいきなり強風と共に雨あられが撃ちつけてきて、慌ててビニール袋を被った。ただ、あの時は時間的には短時間の暴風雨だったから、ビニール袋でもしのげた。しかし、今日の雨は長時間続きそうだ。しかも高知の雨なので、激しい雨を予想しなければならない。長時間の激しい雨に対してビニール袋で対応できるだろうか
ビニール袋の致命的な点は袖が無いことだ。ビニール袋に穴を3つ開けて頭と両手を出すものだから、袖が無いのは当たり前だ。風が身体を素通りしないから防寒にはなるけど、クビや肩に隙間があるから雨はどんどん入ってくるので、防水効果は乏しく、寒い時期に長時間走っていると寒さに震えるようになる

(支部長)「他にどんな対応策があると言うの?」
(幹事長)「ビニールの雨合羽」


どんなに激しく雨が降っていても、マラソン大会で雨合羽を着て走ってるランナーなんていない。そんな事してたら素人と思われる。恥ずかしすぎる。私がこれまでマラソン大会でビニールの雨合羽を着て走ってる人を見たのは、4年前のタートルマラソンが最初で最後だ。

(ピッグ)「まさか私のことですか?」
(幹事長)「他に、あんな恥ずかしい格好で走ってる人を見たことはないやろ。
見てるこっちが恥ずかしかったわ」
(ピッグ)「あのカッパのおかげで幹事長には圧勝しましたよね」

ピッグが着てたのは、コンビニなんかで売っているビニールのペラペラの雨合羽で、フードも着いているし丈も長い。そのため、見るからに空気抵抗が大きい。特に風があればなおさらだ。
でも、フードは邪魔になるにしても、袖が付いているので防水効果は高い

(ピッグ)「あれだけ私を非難しておいて、自分も着るつもりなんですか?」
(幹事長)「私は頭が柔らかいから、柔軟に対処するんよ」


取りあえず、ポケットに入るサイズなので、ビニール袋と共にビニールの雨合羽も持って走ることにした
もちろん冬なので、迷うことなくランニングタイツも履いた。ランニングタイツは、最近は履いてるランナーの方が圧倒的に多いくらい普及しているが、私はランニングタイツのサポート機能を全く信じてなかった。
ところが、去年の龍馬脱藩マラソンで、一緒に走った航路さんからタイツの機能を教えてもらった。彼によると、タイツを履くと筋肉の無駄な動きが抑制されて疲労が防止できるのだそうだ。テーピングも同じ効果があるとのことだが、航路さんは元陸上部なので、彼の言う事なら信用できる。て事で、それ以来、暑くない限りタイツを履いている。ところがT村くんはタイツを履いていない。

(幹事長)「そんな素足で寒くないん?」
(T村)「この方が快適に走れるんですよ」

T村くんは速いから、走る時間も短いし、最後までガンガン走って体から熱を発散するから、寒くないのかもしれない。

(幹事長)「あれ?ピッグもタイツを履いてないやん」
(ピッグ)「今日はタイツの代わりに脹脛サポーターにしました」


普段は鬱陶しいから被らないランニングキャップも、雨対策で今日は被る。
気温が低ければ手袋を二重に履こうかと思っていたけど、そんなに寒くはないので1枚だけにする。
ポケットにはハンドタオルとポケットティッシュのほか、足攣り防止用のドーピング薬2RUNを4錠ポケットに入れる。これは竜馬脱藩マラソンの時に航路さんに教えてもらった劇薬だ。航路さんによると「足が攣りかけたな」と感じてから飲んでもいいし、足が攣ってから飲んでも即効性があると言う。実は、その後の10月の秋吉台カルストトレイルラン12月の那覇マラソンでも携帯し、ちょっと危ないと思ったらすかさず飲んだんだけど、イマイチ効果があった実感は無い。相変わらず攣りそうになるのだ。ただ、本格的に攣りはしなかった。もしかして、飲んでなかったら本格的に攣っていたかもしれないので、用心して、今回も飲むことにした。
さらに今日はウォークマンも持ってきた。ゾウさんなんかは常にウォークマンを手放さないが、私はたいてい忘れてしまう。12月の那覇マラソンでも持って行かなかったため、終盤にトボトボ歩いた時に後悔した。今日は終盤に冷たい雨の中を歩きそうなので、気を紛らせるウォークマンは必携だ。
シューズは、今日は雨が降って汚れるから、古いシューズにしようかとも思ったが、古いシューズはすぐ水を吸って重くなり、ビショビショで気持ち悪い状態になるので、いつも履いているシューズを履いた。最近のシューズは性能が良くて、濡れても全然水を含まないから重くならないし、ビショビショ感が無くて気持ち悪くならない

(幹事長)「それは古いシューズなん?それとも新しい方?」
(支部長)「これは汚れてもいいように古いシューズやで」


支部長は古いシューズと全く同じ新しいシューズを持っていて、天候によって使い分けている。

テントの中で健闘を誓うメンバー
(前列左から支部長、T村くん、後列左から幹事長、D木谷さん、N谷選手、ピッグ)


着替えが終わったら、朝食の続きだ。おにぎりをもう1個食べ、さらにバナナを食べる。
9時のスタートまでまだ2時間も待たなければならないが、雨に濡れた冷たいシートの上は不快だし、雨が降ってるので外には出たくない。これならもっとゆっくり出発してくれば良かったが、狭い狭いテントの中は、既にかなりいっぱいになってるから、もっとゆっくり来たら、テントに入ることすらできなかったかもしれない。
それに、まだ人が少ないから、常設の洋式トイレが空いていて、ゆっくりと大の用を足すことができた。仮設トイレはいっぱいあって、そっちもまだガラガラだが、ゆっくり大をするには常設トイレの洋式便器に限る。

無理矢理時間をつぶしていたら、ようやく8時になり、外では「手荷物は8時15分までに預けてください」っていうアナウンスが聞こえるので、最後にゼリーを食べてから、重い腰を上げてテントの外に出る
手荷物預けは泥の海に並んでいるトラックに預けるんだけど、預けるのに長蛇の列ができていて、既に全身がびしょ濡れのうえシューズは泥だらけだ。雨のせいかどうか分からないが、とても手間取っていた。


〜 スタンバイ 〜


手荷物を預けたら、8時半までに集合場所しなければならない。集合場所は、各人の予想タイムに従ってブロック別に分けられている。私や支部長は控えめに申請しているので、最後尾に近いブロックだ。
一般的に、スタートしてからの混雑を避けるためには、できるだけ前の方からスタートした方が良い。タイムはゼッケンに着けたチップでネット計測してくれるから、後ろの方からスタートしても構わないんだけど、後ろの方からスタートしたら、仲間同士でおしゃべりしながらゆっくり走るおばちゃん軍団なんかにブロックされて走りにくい。参加者の多い大会になると、最後まで混雑は緩和されず、最後までおばちゃん軍団に前をブロックされたままになるので、それは避けなければならない。自分と同じ速さのランナー達と一緒に走れば、邪魔なランナーを追い抜く必要も無ければ、後ろから抜かれる事も無いので、秩序良く走ることができる。
だがしかし、このマラソン大会は初参加でコースが分からなくて不安要素が多いため、前の方からガンガン飛ばすのは控えて、後ろの方からゆっくりスタートする方が良いと判断したのだ。

いくら雨が激しくても、雨合羽を着て走るなんて恥ずかし過ぎるから、着ようかどうしようか迷っていたんだけど、外に出てみると、なんと大半のランナーがビニールの雨合羽を着ている。着てない人は、むしろ少数派だ。うちのメンバーはみんなビニール袋を被っているが、雨合羽を持ってきているのは私だけだ。

(幹事長)「今日はピッグは雨合羽は持ってきてないの?」
(ピッグ)「これくらいの雨ならビニール袋で十分ですよ」
(幹事長)「甘いな。甘すぎるな。高知の雨を舐めたらいかんぜよ」


私と支部長は高知で勤務した事があるから良く知ってるが、高知の雨はすさまじい。香川県では台風の時くらいしか降らないような豪雨が、普通に年中降っている。今日の参加者の大半が雨合羽を着ているということは、地元高知の人は高知の雨の激しさをよく知ってるからではないだろうか。

(幹事長)「みんな、このまま雨合羽を着て走るんやろか?それともスタートするまで着てるだけかなあ?」
(支部長)「そのまま着て走りそうやな」


雨合羽着て走るランナーなんて滅多にいないから、ランナーの大半が雨合羽を着て走るマラソン大会なんて前代未聞だが、こんなに多くのランナーが雨合羽を着てるのなら、恥ずかしがらずに堂々と着ることができる。て事で、私も雨合羽を被った。
ところが、いざ雨合羽を着てみると、弱点が現れた。ボタンがすぐ外れるのだ。とてもチャチな安物の雨合羽なので、ボタンもザッとしてて、すぐ外れてしまう。普通に歩く程度ならなんとかなるけど、走り出すと、すぐに前がはだけてしまい、風よけにも雨よけにもならない。どうしようか悩んだ末、雨合羽の上からさらにビニール袋を被るというアイデアを思い付いた。これならボタンが外れても前がはだけない。

(幹事長)「素晴らしいアイデアや!画期的やろ?」
(支部長)「どうせ中から濡れるやろ?」

もちろん、中からは濡れる。雨が降ってなくても、普通に走ってるだけでも汗まみれになるんだから、雨合羽なんか着てると湿度で内部はベチョベチョになる。それでも、冷たい雨が直接当たらないから体の冷えは防げる。寒さに弱い私にはありがたい。一方、暑さには極端に弱いけど、寒さには異常なまでに強い支部長は、こんな冬の雨でもへっちゃらだ。

スタート時間が迫ってきたので、本日の目標を設定せねばならない。もちろん、どんな時でも、どんなレースでも、大会自己ベストの更新を狙うのが良い子の有るべき姿だが、この大会は初参加なので、どんなに遅くたって大会自己ベストになる。

(支部長)「そんなんは自己ベストとは言わんがな」

上にも書いたように、2週間前の丸亀マラソンでは久しぶりに自己ベストを出したので、この大会でも良いタイムを狙いたいが、ハーフマラソンとフルマラソンは全く別物であり、ハーフマラソンで順調に走れたからと言って、フルマラソンでも通用するかとなると全く分からない。フルマラソンは前半で調子に乗って飛ばして終盤に撃沈してトボトボ歩くという苦い経験を山ほど積んでいるので、あくまでも慎重に進めなければならない。
しかも、この大会は厳しいコースの上、今日は雨という悪コンディションだから、あまり高望みしてはいけない。なので、好タイムを狙って多少のリスクを冒して最初からハイペースで入る、なんて作戦は怖くて取れない。取りあえず前半はできるだけ抑えて走ってみよう
どんなレースでも最初は軽快に走れて「なんだか今日は調子いいな」なんて勘違いするんだけど、それは気分が高揚しているのと、始めだからまだ元気が有り余っているのと、周囲のランナーにつられているだけだ。そのまま調子に乗って飛ばしたら絶対に後半に撃沈する。なので、前半はできるだけ抑えて走らなければならない

(幹事長)「支部長の目標は?」
(支部長)「ま、控えめに5時間切を目指すわ」
(幹事長)「ピッグは?」
(ピッグ)「できればサブ4を狙いたいですね」


唯一、このマラソン大会に出たことあるピッグは、前回は5時間近い惨敗だったが、コースが分かっているので、一気に1時間もタイムを縮めようという魂胆だ。

コースは、国道32号線の県庁前をスタートして、そのまま東に向かって真っすぐに9kmほど進み、そこから南に折れて坂ノ松トンネルを抜けて4kmほど進むと土佐湾に出る。そこから西に折れて7km進むと20km地点の浦戸大橋に達する。上にも書いたように、橋を渡ってしばらく進んだ中間点からは真っ直ぐな海岸線の道を延々と11kmも進み、折り返し点に達する。折り返し点の直前には仁淀川河口大橋があるため、折り返し点の前後で2回橋を渡る。帰りは折り返し点から東に向かって進み、6kmほど走ったところで北に折れ、ゴールの春野陸上競技場を目指すというコースだ。
上にも書いたように、最大の難関は浦戸大橋だが、それに続く長い長い海岸線の道や、仁淀川河口大橋や、最後の上りなど、後半には難所が多い。ただでさえ疲れて足が動かなくなったところに現れる難所なので、やはり後半が勝負だ

スタート時間が近付いてきたら、少しずつ移動が始まり、スタート時間直前には電車通りと呼ばれる広い道に出た。スタート地点は、電車通りの県庁前だ。でも、遠くを見てもスタート地点を示すようなものは見えない。普通は、スタートのゲートだとか掲示板とか立っているもんだが、何も無いから、スタート地点がどこなのか分からない。

いよいよスタートの時間になり、ピストルの音は聞こえたが、もちろん、スタートと同時に一斉に走り出すわけではない。しばらく待っていたら、ようやく少しずつ動き出した。でも、少し歩いたかと思ったら、すぐまた止まるの連続で、なかなか進まない。かなり進んだところで、ようやくスタートを示す表示が立っていた

ところが、そこまで来て、靴ひもの結び具合が足りないような気がしてきた。いつも靴ひもの結び方には自分でも嫌になるくらい神経質で、何度も何度も結びなおす。

(支部長)「着るものと言い、靴ひもと言い、ほんまに神経質やなあ。走りだしたら関係ないってば」
(幹事長)「分かってるんだけど、気になってなあ」


分かってはいるけど、どうしても気になる。スタートしてしまうと、もう止まる事はできないので、スタート地点の直前で沿道に上がり、靴ひもを結びなおした。いきなり、なんとなくドタバタしてしまった。
結局、スタート時間からスタート地点を越えるまで10分以上かかってしまった。


〜 スタート 〜


ようやくスタートとなった。
とにかく最初から抑えて走らなければならない

(支部長)「平均して1km7分で走ったら5時間を切れるから、それくらいが目安やないかな?」
(幹事長)「最初から1km7分で入って、最後までペースダウンせんやろか?」


ここが難しいところだ。いくら抑えて走ると言っても、最初から1km7分ペースだなんて、ちょっと抑え過ぎではないだろうか?もちろん、序盤から飛ばすと終盤に撃沈するのは確実だけど、序盤のスピードは遅ければ遅いほど良いって訳でもない
去年の那覇マラソンの空前絶後の大惨敗は、序盤がスローペース過ぎたんじゃないかとも思っている。レース全体のペース配分を考えて、終盤までペースが落ちないことを期待して序盤を超スローペースで走ったんだけど、やっぱり後半はいつものように疲れてしまい、ペースはどんどん悪くなった。しかも、序盤のスローペースからどんどん悪くなっていくので、とんでもなく超スローペースになってしまったのだ。
序盤を速く走ろうが遅く走ろうが、序盤からの落ち具合は同じで、終盤はいつもよりさらに遅くなるのだ

て事で、いくらなんでも最初から1km7分ペースってのは遅すぎるので、せめて6分台前半くらいが適当じゃないかって思うんだけど、なんと、それどころではなかった。あまりにも大混雑してて、なかなかまともに走れないのだ。1万人強の参加者数ってのは2週間前の丸亀マラソンと同じだけど、きちんとブロック分けされて最初から走りやすかった丸亀マラソンと大違いで、ものすごい大混雑だ。て言うか、前の方からスタートできたから空いていた丸亀マラソンと異なり、今日は最後尾に近い場所からのスタートになったから、大混雑しているのだろう
人が多くても、みんなが揃ってもっと速く走れば問題ないが、こんな後方からスタートしている人は、たいてい遅いから、全体のスピードが異常に遅い。いつまで経っても、余りの人の多さに、なかなかまともに走れない。
もちろん、ウォーミングアップなんかを一切しない我々にとっては、序盤のスローペースがウォーミングアップ代わりなので焦ってはいけない。ダラダラ進む前のランナーは鬱陶しいが、前のランナーの前にも、その前にも延々とランナーがダラダラ走っているから、無理して追い抜いても意味は無い。

なーんて思いながら走っていると、最初の1km地点の表示が見えてきたので時計を見ると、なんと7分以上かかっている。いくらなんでも遅すぎる。さすがに、ちょっと焦った。ウォーミングアップ代わりのスローペースとは言え、前の人にぶつからないようにして走らなければならないから、思わずブレーキをかけたりしているので、自然体で走るより、むしろ筋肉を使っており、明らかに無駄な体力を消耗している。トンでもなく遅いランナーがたくさんいるのだ。
右へ左へ他人をかき分けながらチョコチョコと追い越して走るのは体力と精神力を無駄遣いする割には大してペースアップできないってのは重々承知しているけど、走りにくくて仕方ないから、仕方なく作戦を変更して、こまめに邪魔なランナーを無理矢理追い抜いて、少しでもペースアップを図っていくことにした。

普通なら、初めて走るコースなので新鮮でワクワク感があるはずなんだけど、雨をよけるために帽子のつばを深く降ろしているし、この天気じゃ周りを見るゆとりもないので、どこを走っているのかも分からず、何の面白味も無い。全くテンションが上がらない。ただ単に時計を見ながら、距離表示を探すだけだ。
しばらく走ると2km地点になったが、なんと相変わらず1km7分を越えている。あかんがな!もう少し気合を入れて前に抜け出そうと思い、さらに強引に邪魔なランナーを抜いていく

次の3km地点でようやく1km7分を切り、さらに4km地点、5km地点とペースは上がっていく。ただし、ペースは上がったと言っても、せいぜい1km6分半程度で、普通のマラソン大会の感覚で言うと、全然速くない。このままのペースを最後まで維持できるのならいいけど、終盤にペースダウンするのであれば、せめて序盤はもう少し速く走りたいところだ。

雨は相変わらず降ってるが、恐れていたような大雨にはなっていない。そして、雨合羽の上からビニール袋を被っているのが暑くなってきた。ちょっと暑すぎる。て事で、ビニール袋だけ脱いだ。ビニール袋と雨合羽は雨で濡れて引っ付いているから、ビニール袋だけスルッと脱ぐのは不可能で、結局、一度、全部脱いでから、再び雨合羽だけを着た。走りながらそれをやったのて、とっても苦労して、無駄なエネルギーを浪費した。

5km地点の直後に最初の給水所がある。今日は雨も降ってるし、しかもまだレースは始まったばかりで喉は渇いてないが、足の攣りを防止するためには水分の補給は欠かせないし、そもそも「給水は喉が渇いてからでは遅く、早め早めに給水しろ」ってのが鉄則なので、最近は全ての給水所で真面目に水分を補給することにしている。
とは言え、給水所はトンでもない大混雑で、丸亀マラソのように走りながら素早く水コップを取ることなんてできない。立ち止まって人混みをかき分けてテーブルに進まないと、コップは取れないのだ。大混雑の中で給水したりしてるうちに支部長とはぐれてしまった。

給水所での遅れを取り戻すためにも、少し頑張って走ったんだけど、その後もペースは上がらず、6km地点、7km地点、8km地点と似たようなペースが続く。
ここまでスタート地点からひたすら東に向かって真っすぐに進んできたが、8km地点を過ぎてしばらく進むと、ようやく南に折れる。雨のせいで周りを何も見てないから、ここまで走ってきた平坦で真っ直ぐな道は何の変化も感じられなかったが、ここからは南の山に向かって走っていくので変化が感じられそうだ。

南に折れてすぐに9km地点があり、その後坂ノ松トンネルに入ると、トンネルの中に10km地点がある。さらにその次の11km地点まで、タイムは1km6分半程度が続く。パッとしないが、最後までこのペースが続けば十分だ。

11km地点を過ぎてしばらく走ると、再びトンネルがあった。蛸の森トンネルだ。トンネルは1つだと思っていたので、少し戸惑った。
トンネルを抜けたところに12km地点があったが、この区間は上り坂だったため、再び1km7分をオーバーした。ただ、その後は下り坂になったため、13km地点では1km6分半を切っていた。でも、下り坂なのに思ったほど速くはない。あんまり良くない展開だなあ。

13km地点を過ぎると、今度は西に向きを変え、浦戸大橋を目指して走っていく。ここから浦戸大橋まで7kmもあるが、相変わらず周りを見る余裕が無くて、単調な走りが続く。海岸に近くなったためか、風が少しだけ強くなり、なんとなく少し肌寒くなってきた。でも、まだビニール袋を被りなおすほどでもない。

この辺りで、少しお腹の具合が悪くなってきた。スタート前にはちゃんと用を足したし、パンじゃなくておにぎりを食べているので、お腹を壊す心配は無いはずだ。以前は、しょっちゅうレース中にお腹を壊していたが、5年間の徳島マラソンで朝食をパンからおにぎりに変えて以降は、一度もレース中にお腹を壊したことはない。でも、なんとなく怪しい感じ。
それもあってか、次の14km地点では1km7分近くにまでペースダウンしていた。

しばらく走ると再びトンネルがあった。トンネルの終わりに15km地点があり、さらに16km地点、17km地点と1km7分近いペースが続く。まだ半分も来てないのに、こんなペースになるなんて、もう今日は駄目なんじゃないかって思えてきた。

お腹の調子はさらに悪くなる。我慢しようと思えば、まだまだ我慢はできそうだが、過去の辛い経験を思い出してみると、途中では我慢できたとしても、ゴールまで我慢できたことはなかった。最初は軽く我慢できていても、だんだん我慢するのが困難になり、最後は漏れるのを必死で我慢しながらトイレを探すという苦行になった。「もう駄目だ、限界だ」と思った時に、すぐにトイレがある訳ではないから、どこまで我慢するかが大問題になる。
なーんて思い始めたら、ちょうど17km地点仮設トイレが設置されていた。今はまだまだ大丈夫だが、トイレがあった時にさっさと済ませておいた方が被害が少ないと思い、迷わずにトイレの列に並んだ。結構、長い列が出来ていたが、大半の人は小なので、思ったよりは短い時間で入る事ができた。
時間がもったいないのでさっさと済ませたいところだが、適当に切り上げると、再び行きたくなると困るので、十分にお腹の具合が収まるまでトイレに籠っていた。結局、トイレで10分以上無駄な時間を使ってしまったが、既に十分に遅い惨敗ペースになっているから、あまり気にしない。トイレのせいで自己ベストが出なかった、なんて悔しい事にはならないだろう。

一度トイレにしゃがみ込んでしまうと、再び走り出す時に足が重くなる。ペースを取り戻すのに苦労する。
なーんてのは、調子が良い時のペースであって、今日は既にスローペースになっていたから、特に悪影響も感じず、18km地点でのペースは似たようなものだった。
しかし、その後、ペースは大きくダウンしていき、特に大きな坂も無いのに19km地点、20km地点大幅にドンドンとペースダウンしていた

20km地点を過ぎると、いよいよコース最難関浦戸大橋だ。なんとなくトレランコースのような急登を想像していたが、そんなに急な坂ではない。普通に車が通る道だから、考えてみたら当たり前だ。なので最初は軽く走って上った。もちろん歩幅は狭くしてチョコチョコ走った。しかし、それでも足に負担がかかっているような気がして、途中から歩くことにした。ここで走ろうが歩こうがタイムに大きな差は出ないだろう。
私の周囲のランナーも大半は歩いている。走っているランナーもいるが、ペースは歩くのとあんまり変わらない。
意外に長い浦戸大橋を渡り終えたら下り坂になる。その途中に21km地点があったが、当然ながらここは1km8分もかかっていた。

それでも、しばらくは下り坂だし、遅れは取り戻せるだろうと思ってたら、次の22km地点では1km7分ちょっとまでしか上がってなかった。あまりにも期待外れだ。

ここからは延々と10km以上、海岸線の道が続く。土佐湾に面した、ほぼ真っ直ぐの海岸線の道だ。どう考えても超退屈な苦行の区間だが、どうせ今日は雨のためずっと下を向いて走っているから、どこを走っても周りが見えないのは同じだ。今日はただひたすら何も見ないで走り続ける苦行だ。ただ、もう止めてリタイアしたとは思わない。最低限、完走はしたい。
でも、ペースはすさまじく悪化を続け、23km地点、24km地点、25km地点と7分半前後で推移した後、26km地点では遂に1km8分にまで落ちてしまった。普通に走ってるつもりなのに、浦戸大橋を歩いて上った時と同じペースだ。そんなにしんどい訳でもないのに、もう理解できない。

足は攣りそうな気配も無いから、足攣り防止用のドーピング薬2RUNの出番は無い。退屈しのぎにウォークマンを聴こうかと思ったけど、雨合羽を着ているため、ポケットの中のウォークマンからイヤホンを延ばして耳に装着するのが大変そうなので、諦めた。雨合羽とウォークマンは両立しにくい。これは大失敗だった。

26km地点からは、対向車線を先行ランナーが折り返して戻ってくるのとすれ違うようになる。私より12kmも前方を走っているランナー達だ。必死で頭で計算すると、3時間半ペースのランナー達だ。かなり速いランナー達だが、意外に人数が多い。速いランナーって多いんだなあ。

真っ直ぐの海岸線の道はまだまだ続き、折り返し点までまだ6kmもある。天気が良ければ海のそばの道で気持ちよさそうだけど、今日は本当に苦行だ。肌寒さか我慢できなくなってきたので、ここで再びビニール袋を被る。脱ぐのは苦労したが、被るのは簡単に被れた。雨合羽とビニール袋の2枚重ねにすると、たちまち暖かくなる。

27km地点、28km地点、27km地点と1km7分台後半のスローペースが続いた後、ようやく仁淀川河口大橋が現れた。この橋は高さが15m程度で、50mもあった浦戸大橋に比べたら何でもないんだけど、疲れた足には同じように堪える。最初はチビチビと走ってたんだけど、すぐに諦めて歩き出した。私の周りのランナーも大半は歩いている。

仁淀川河口大橋は高さは大したことないが、長さは1km以上も続く。晴れてたら、きれいな海が見渡せて気持ちよさそうなんだけど、今日は海を見る気も起きない。単調な橋の上をただひたすら下を向いて走るだけだ。
橋の途中に30km地点があったが、なんと1km9分近くかかっていた。
橋を渡り終えると31km地点があり、ここは橋からの下りなので持ち直していたが、それでも7分半ペースだ。

そろそろ折り返し点が近付いてきたので、はぐれてしまっている支部長の姿を探すが、分からなかった。32km地点の手前に折り返し点があり、折り返した後も支部長の姿を探したが、やはり見つからなかった。私がトイレに籠っている間に、だいぶ前に行ってしまったのか、それとも早々にどこかで撃沈して後ろの方を走っているのか。

32km地点では1km7分半くらいのペースだったが、その後は再び仁淀川河口大橋を上り返すため、33km地点ではまたまた8分半にまでペースダウンしていた。
橋を渡り終えると34km地点があり、下り区間だったため少しだけ持ち直していたが、その後はさらに一層、とどまるところを知らないペースダウンぶりになった。この超退屈な海岸線の道も、あと4km東に戻れば終わる。だから気を取り直して行こう、なんて思ったんだけど、35km地点で1km8分になったかと思うと、次の36km地点では、いきなり1km9分に達してしまった。
足は攣ってないし、痛くもないし、坂があった訳でもないし、完全にやる気を失っている訳でもない。一応、なんとか頑張って走っているつもりなのに、それでも1km9分って、一体どういう事なんだろう。足が動いていないようで、もう歩いているのとほとんど変わらない。ゆっくり歩いているランナーはなんとか追い抜けるが、シャキシャキと一生懸命歩いているランナーとは良い勝負だ。
それでも、歩こうかとは思わない。足が痛くないから歩きたいとは思わない。まだまだ、少しでも早くゴールしたい。それは速いタイムを出したい、というのではなく、「こんな辛いことは少しでも早く終わらせたい」という気持ちと、「みんなにあまりにも長時間待たせるのは悪いなあ」という思いだ。

そんな時、道端の手作りエイドでどろめ汁なんてものを配っていた。どろめが入った味噌汁で、これが暖かくて美味しかった。なんだか生き返った気分だ。
ただ、そこで時間を使ってしまったため、次の37km地点では1km10分近くかかっていた。

なんとか歩かずに38km地点まで戻ってきたら、ここで太平洋とお別れして北に向かって山の方に折れる。もう残り4kmちょっとだ。
もう少しだと思うと、再びやる気が湧いてくる。でも、その割には次の39km地点も含めて1km9分前後が続く。
この時点で5時間すら切れないのは明白になっていたが、よくよく考えてみたら、このままダラダラ走っていたら、なんと去年の脱藩マラソンよりタイムが悪くなるかもしれないって事に気づいた。いくらなんでも、累積の標高差が900m近くもある史上最強の山岳マラソンである脱藩マラソンよりタイムが悪いなんて、有り得ない大惨敗ぶりだ。
実は去年12月の那覇マラソンも脱藩マラソンよりタイムが悪かったが、あの時は暑くてしんどくてかなり長い間、歩き続けた。いくら坂があると言っても脱藩マラソンに比べたら大したことない那覇マラソンで脱藩マラソンよりタイムが悪かったのは衝撃だったが、歩いたんだから当たり前だ。でも今日は、浦戸大橋と仁淀川河口大橋の上りで歩いたほかは全く歩いていないし、歩こうとも思わなかった。それなのに脱藩マラソンよりタイムが悪いとなると、マラソンなんてもう止めなければならなくなる。
て事で、自分でも情けなさ過ぎるので少し気合を入れなおして頑張ってみた。そしたら40km地点41km地点では1km8分を切ることができた。

そして最後の1kmは最後の難所であるゴールの春野陸上競技場への上りだ。ピッグから聞いていたので覚悟はできているが、思った通り、かなりの距離がある。1km近くありそうだ。海部川マラソンとかも最後は上りだが、こんなに長くはない。周りのランナーはほとんど歩いている。でも、ここまでダラダラと走ってきたから、足は痛くないし、まだまだ余力があるので、頑張って走り続ける。こんなところで頑張れる余力があるのなら、「ここまで、もっと真剣に走れよ」って自分でも思うが、決してサボっていた訳ではなく、どうしても足が動かずにスピードダウンを食い止められなかったって感じだ。それなのに、今は頑張れるのは気持ちの持ち方なんだろうなあ。

最後に陸上競技場に入るとホッとするが、普通、徳島マラソンとか丸亀マラソンとか、トラックに入って1/4周くらい走ってゴールするが、なんとここは3/4周くらい走らされる。元気で好タイムの時なら嬉しいウィニングランになるんだろうけど、今日みたいなボロボロの日には辛いだけだ。それでもなんとかゴールできたのは嬉しい。


〜 ゴール 〜


結局、脱藩マラソンよりはマシだったものの、空前の大惨敗となった
トボトボと記録証を受け取り、完走メダルをもらう。完走メダルは林業県らしく木製だった

預けておいた手荷物の受け取りと着替え体育館なんだけど、陸上競技場から体育館までが遠くて、嫌になった。着いたらクタクタだ。しかも体育館も床がベチョベチョで、そんな場所で着替えたくない。体中が濡れて気持ち悪いけど、着替えは我慢して、そのまま待ちくたびれている他のメンバーと合流した。

(幹事長)「遅くなってすまんのう。支部長はどうやった?」
(支部長)「ま、最低限の目標はクリアしたけどな」


なんと、支部長は当初目標通り5時間を切っていた。最初の超スローペースから、中盤になるとペースアップしたんだそうだ。自分が大惨敗だっただけに、偉業に思えてくる。

(支部長)「これで幹事長に勝ったのは2回目やな」
(幹事長)「そんな事はないやろ」


支部長は、これまで私に勝ったのは2012年の丸亀マラソンだけだと言う。でも、絶対に他にも何回か負けた記憶があるぞ。
他のメンバーは、ピッグとD木谷さんは4時間20分ほどで、私より1時間近く速い。T村くんは、それよりさらに1時間速かったとのことだ。つまり私より2時間も速かった訳だ。

(幹事長)「そんな待たせたんか!すまんかったなあ」
(T村)「カフェでまったり食事してました」


大惨敗したのは今日の悪天候の影響もあるのかと思ってたけど、他のメンバーがいつも通りのタイムなので、単に私が遅かっただけのようだ


〜 反省会 〜


春野陸上競技場から街中へは、シャトルバスで送ってもらう。このバスの乗車場が、またまたトンでもなく遠くて、雨の中を延々と歩かされる。競技場のすぐ側でバスに乗れる徳島マラソンと違い、晴れてたとしても、疲れた足には耐えられない距離だ。ようやく乗車場に着いた後も、バスに乗るのに長時間待たされた
ただし、バスが街中へ戻る道は田舎道なので、徳島マラソンの時のような市街地の大渋滞に巻き込まれることはなく、割と順調に街中に戻った。

停めておいた車に戻り、高知ぽかぽか温泉へ行く。ぽかぽか温泉は高松に本店があるが、高知にまで進出しているとは知らなかった。中は、高知龍馬マラソンに出たランナー達で溢れかえっていた。
お風呂から出て、アイスを食べながら反省会をする。と言っても、反省しなければならないのは私一人だ
最初から徹底的に抑えたペースで走ったのに、後半ではどんどん失速して行った。一体何が悪かったのだろう。

(幹事長)「今日の大惨敗の原因が全く分からないよ。
      脱藩マラソンみたいな長大な坂があるわけでもないし、那覇マラソンのような季節外れの暑さだった訳でもないし」

他のメンバーがいつも通りのタイムだったんだから、雨の影響ではないはずだ。途中でお腹を壊した影響はあるかもしれない。でも、それはそれで大きな不安材料だ。以前はレース中にお腹を壊すことが多かったけど、5年前の徳島マラソン以降、朝食を菓子パンからおにぎりに変えてからは、一度もお腹を壊したことはなかった。それなのに再びお腹を壊したとなると、これまた対策の取りようがない。

(幹事長)「もうフルマラソンなんて止めようかなあ」
(ピッグ)「幹事長にしては、えらい弱気ですね」
(支部長)「脱藩マラソンでも毎年、大惨敗して卒業宣言をしながら、結局、翌年も出続けてるから、今だけやろ」
(幹事長)「脱藩マラソンは敗因が明確やから、新たな作戦で挑もうという気持ちが湧いてくるけど、今日は原因が分からないから対策のしようがないよ」
(ピッグ)「12月、1月とバカみたいに練習してたでしょ?たぶん疲れが抜けてなかったんでしょうね」

確かに、今年は丸亀マラソンに力を入れてたから、12月、1月と自分としては過去最大の練習量だった。でも、そのおかげで丸亀マラソンで好タイムが出たから、十分満足し、その後はできるだけ疲労を抜こうと思ってあんまり走っていない。

(支部長)「逆に休んだのが良くなかったんじゃない?私も幹事長に刺激されて1月は250kmも走ったけど、丸亀マラソンの後も走り続けてるよ」

休みすぎて調子が落ちてしまったのだろうか

いや、それよりも、今回の敗因は序盤の超スローペースだったような気がする。ここのところフルマラソンでは、終盤の撃沈が怖くて、序盤からペースを抑えて走るようにしている。これ自体は悪い事ではないと思う。前半に調子に乗って飛ばすと、終盤には絶対に撃沈するからだ。でも、序盤の抑え方の程度が、抑え過ぎだったのではないだろうか?
これは那覇マラソンの大惨敗の時にも思ったことだが、序盤のスピードは遅ければ遅いほど良いって訳でもない。序盤を速く走ろうが遅く走ろうが、終盤にはペースは落ちていく。なので、序盤から超スローペースだと、そこから落ちる終盤は超超スローペースになってしまうのではないだろうか。
さらに、精神的にも、もう少し積極的な攻めの姿勢が必要だったのではないだろうか。今年の丸亀マラソンは、序盤からペースは抑えつつも、スキあらばいつでもペースアップしようという積極性を持ち続け、最初から最後までやる気が溢れてアドレナリンが出まくりだった。自己ベストを出した一昨年の海部川マラソンも、気合十分で攻め続けた。ところが今日のマラソンや昨年末の那覇マラソンは、最初から極端なまでに守りの姿勢になってしまい、積極性が皆無だった
特に今日のレースは、せっかく初出場で新鮮な気持ちで走ろうと思ってたのに、雨のせいでテンションが全く上がらず、ずっと下を向いて走り、最初から最後まで何のやる気も湧いてこない苦行だった。そのためアドレナリンも全く出ていなかったと思う。
嫌々やらされている仕事じゃあるまいし、これじゃあわざわざ高い金を払って遠くまで来て、一体、何のために参加しているのか分からない。前半からむやみに飛ばすのは厳禁だが、ある程度の積極性と、強いやる気は必要だと思う

(幹事長)「よし、次のマラソンでは、もうちょっと強気で攻めてみるぞ!」
(支部長)「それは終盤に撃沈するいつものパターンやがな」

次のレースは3月後半の徳島マラソンだ。吉野川の堤防を延々と走り続ける変化のないウンザリする退屈なコースなので、最近は、もう出るのは止めようかなんて思い始めていたところだけど、去年は久しぶりに、まあまあ良いタイムだったからやる気が出てきた。
それに、去年も丸亀マラソンで良いタイムを出した2週間後の海部川マラソンでは惨敗したけど、翌月の徳島マラソンは良いタイムだった。今年も同じパターンで、丸亀マラソンで良いタイムを出した2週間後の高知龍馬マラソンで惨敗したから、翌月の徳島マラソンでは良いタイムが出る可能性がある。

(支部長)「そんなうまい具合に事が運ぶかなあ」
(D木谷)「それより、今度の土曜日は
善通寺五岳山空海トレイルでしょ?大丈夫ですか?」
(幹事長)「大丈夫だと思いたいですね」


トレランは厳しいけど、普通のマラソンとは筋肉の使い方が少し違うので、1週間休めばなんとかなるかな。

それより、新型コロナウィルスのため、東京マラソンが一般ランナーの出場を中止してしまった。東京マラソンの選考会を兼ねているので全面的に止める訳にはいかないが、エリートランナーだけの大会にするらしい。
私は今年も抽選に外れているので、直接的な影響は無いが、間接的な影響が怖い。気になるのは、翌週の名古屋ウィメンズだ。これにはゾウさんの出場が決まっているが、なんとなく同様な措置になりそうな雲行きだ。

(ゾウ)「せっかく当選したのに!」
(幹事長)「ひどい話やなあ」


さらに、この異常な動きが徳島マラソンにまで波及する可能性もある。徳島マラソンは、東北大震災が起きた2011年に、何の関係も無いのに、突然、中止になってしまった。当時、私は青森にいたんだけど、被災地の青森では、例年と変わらず、震災の直後から南部町うぐいすマラソン大会とかわかさぎマラソン大会とか開催された。それなのに、遠く離れて何の関係も無い徳島マラソンが中止になってしまった。理由はよく分からないけど、すぐ忖度する徳島マラソンなので、今回の中止騒動に巻き込まれない事を祈るばかりだ。




〜おしまい〜




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