第32回 汗見川清流マラソン大会
2019年7月28日(日)、猛暑の高知県本山町で第32回汗見川清流マラソン大会が開催された。
このレースは、暑い暑い四国の真夏に開催される大変貴重なマラソン大会だ。
以前は、真夏の四国のレースとして、ほかにも四国カルストマラソンがあった。真夏に開催されるというだけでなく、かつての強烈登山レース塩江山岳マラソンに匹敵するものすごい急な坂が延々と続くという異常に厳しい20kmコースだったので、強烈な日射しにより地獄のような暑さで体が焦がされる中、走るのが不可能なほど急な坂をよじ登るという発狂するようなレースだった。しかし、この殺人レースは、あまりの厳しさのため危険すぎるってことで、数年前に廃止になってしまった。(ちなみに、その後継レースとして出来た龍馬脱藩マラソンは、季節は10月で走りやすい時季になったが、フルマラソンの部は最大標高差560m、累積の標高差は860mという、四国カルストマラソンを遙かに上回る発狂しそうな超厳しいコース設定となっている)
他にも夏場の山岳レースとしては、9月初めに開催される四国のてっぺん酸欠マラソンもあり、ここ4年間は連続でエントリーしているが、夏場の山岳レースとは言え、9月に入っているので、灼熱の炎天下というほどではない。ロクに日陰が無いコースだから天気が良いと炎天下にはなるが、7月末に比べたら随分マシだ。逆に、天候が悪いと寒くなるくらいで、4年連続でエントリーしたが、なんと、そのうち2回は悪天候で中止になっている。
てことで、汗見川清流マラソン大会は真夏の四国のレースとして唯一の貴重なレースになった。四国で真夏のレースが少ないのは、あまりにも暑くて走るのが大変だからだ。でも、だからと言って真夏にレースに出ないと、夏の間、ランニングをサボってしまいがちになる。レースが無くても地道にトレーニングできる真面目な人ならいいんだけど、我々のように心が弱いと、レースが無いとどうしてもサボってしまう。レースが無いと完全に休養してしまう弱い我々としては、少しでもモチベーションを維持するため、この時季にレースを1つ入れたいわけだ。
(ピッグ)「レースがあっても、こう暑いと練習はサボりがちになりますけどね」
暑いと走っていてしんどくなる。呼吸が苦しくなる。喉が渇く。頭がボウッとする。体がぐったりする。それは分かる。暑いんだから汗も大量にかくし、頭も暑くてボウッとして、体全体が疲れる。それは分かる。当たり前だ。
でも、それだけでなく、暑いと体が動かなくなる。せめて週に1〜2回ほどは10kmくらいは走りたいのに、どう頑張っても10kmも走れない。足が止まってしまうのだ。暑くてクラクラしながら汗まみれで走るのは大好きなんだけど、足が動かなくなるので大した距離を走れない。
どうして足が動かなくなるんだろう?全身が疲れて足も疲れて動きにくくなるっていう感じじゃなくて、本当に筋肉が疲労して、筋肉痛が残ったりする。普段より練習量を落としても疲れがどんどんたまっていき、どうしようもなくなる。一体、とうすればいいんだろう?
(支部長)「それを世間では老化と言うんやがな」
(幹事長)「ひえ〜!」
〜 エントリー 〜
練習もロクにできない発狂しそうなほど暑い四国の真夏に、マラソン大会に出たいって思う人がそんなにいるとは想像しにくいかもしれないが、実は汗見川マラソンの人気は高くて、申し込むのが大変だ。
(ピッグ)「定員が1300人と少ないってのも大きな理由ですけどね」
以前は、申し込み期間が過ぎてからでも、役場に電話してお願いしたら出場させてもらえていた。11年前に参加した時なんかは、ざっと見て300人くらいしか参加してなかったから、人が集まらなくて大会が消滅しないか心配していたくらいだ。場所が四国の山の中で超不便なうえ、いくら標高が高いと言っても、山の中の盆地なので真夏はクソ暑いし、コースが川沿いの林道を延々と10kmも登り続ける厳しいコースだから、人気が無くて当たり前だったのだ。
それなのに、7年前、久しぶりに出てみようと思ったら、申し込もうと思ったときには既に定員に達して受付終了になっていたのだ。確かに申し込もうとした時期は遅かったが、それでも定員オーバーだなんて、かつての汗見川マラソンを知っている者なら、信じられない現象だ。しばらく四国から離れていた間に、人気レースになっていたのだ。近年の異常なマラソンブームの中、真夏の四国のレースとして唯一の貴重なレースになったため、人気が沸騰したのだろう。種目も、10kmコースのほか、ハーフマラソンの部や6kmコースも出来たので、超マイナーな山奥の草レースが、メジャーな大会になりつつあるのだ。
(ピッグ)「定員僅か1300人なんだからメジャーってのは言いすぎですけどね」
こんなに人気沸騰しているのだから、今どき定員1300人だなんて少な過ぎるような気がするが、狭い山道のコースを考えると1000人程度が限界のようにも思える。こじんまりした和気藹々とした大会の雰囲気も好ましいので、エントリーしにくくなったとは言え、定員は増やさないほうが良いのかもしれない。
てなことで、6年前は、エントリー受付がいつ始まるのか、毎日、今か今かと注視し、受付開始の情報を聞くや否や、慌ててすぐさま申し込み、なんとかエントリーできた。
それなのに、5年前は受付開始当日につい忘れてしまい、気が付いた時には既に定員オーバーで受付終了となっていた。恐るべし若年性認知症!
それで4年前は、他のメンバーにも数日前や当日の直前に一斉メールを流すと共に、自分も忘れずにパソコンの前でスタンバイしていた。それなのに、ちょっと焦って受付開始の8時よりほんの少し5秒くらい前にエントリーボタンを押してみたら、なんと画面がフリーズしてしまい、ウンともスンとも言わなくなってしまった。それでも、慌てて再起動させたおかげで、なんとかエントリーすることはできた。しかし、受付開始から数十分で受付終了となってしまったため、他のメンバーはエントリー失敗者が続出し、結局、ピッグ増田選手と2人で参加した。
さらに3年前は、従来以上にしつこくメンバーに注意喚起してプレッシャーをかけ続けた結果、私とピッグのほか、支部長がヤイさんと國宗選手の分も含めてエントリーに成功した。ただ、エントリー競走は一段と過熱して10分程度で受付終了となったようで、DK谷さんは前年に続いて失敗した。いくら定員が少ないとは言え、こんな四国の山奥の超マイナーなレースが10分で受付終了になるなんて、本当にもう世の中、信じられない。
てな事で、連続出場していた大会なんだけど、2年前は同じ週末に開催された富士登山競走のエントリーに成功したため、そちらに出場し、この汗見川マラソンはエントリーしなかった。私が参加しないとなると、他にエントリーを促す人がいないため、他のメンバーも誰も参加しなかった。
そして去年も本当なら私は富士登山競走に出場して前年のリベンジを果たしたかったが、なんとパソコンの不具合により富士登山競走のエントリーに失敗したため、再びこの汗見川マラソンに戻ってきた。もちろん、過去の失敗を繰り返す訳にはいかないので、パソコンの調子を確認した上で10分前からパソコンの前に座り、受付時間の開始と同時にパソコンのキーを叩いて、なんとか無事にエントリーすることに成功した。それなのに、あれほど口を酸っぱくしてエントリーを促していると言うのに、他のメンバーは全員エントリーに失敗し、結局、私一人で出場することになった。
ところが、なんと去年の大会は中止になってしまった。その理由が信じられないと言うか理解できないと言うかあり得ないものだった。理由は、なんと「3週間も前の豪雨」だったのだ。3週間前の豪雨の後は、ずうっと猛暑の晴天が続いていると言うのに、直前になって豪雨を理由に中止にしたのだ。3週間も前の豪雨により、マラソンコースの道路に崩落の危険箇所があるから、という理由なのだ。豪雨により道路が崩落して通れなくなった、と言うのなら理解できる。あるいは、再び雨が降っていて、今にも崩れそうだから、と言うのなら理解できる。しかし、豪雨は3週間も前の事であり、しかもその豪雨によっても崩れてはいないのだ。そして、その後は晴天が続いてカラカラだ。土砂崩れが発生する可能性はゼロに近い。一体、何を恐れているのだ?もう全く理解できない。本当に理解できない。
去年は、汗見川マラソンだけでなく、7月初旬のサンポート高松トライアスロンも雨天で中止になったし、9月初旬の四国のてっぺん酸欠マラソンも雨天で中止になった。どちらも暴風雨とかじゃなくて、ただの雨が理由だ。雨量は多かったとは言え、所詮はただの雨だ。トライアスロンの方は自転車のスリップ事故が起こりやすくなるから、雨での中止もやむを得ないかもしれないが、マラソン大会は雨なんか中止の理由にはなりえない。
かつてマラソン大会は、どんなに暴風雨が荒れ狂っても、天気のせいで中止にはならなかった。7年前の徳島マラソンは台風顔負けの暴風雨の中でも決行された。マラソン関係者の間では、雨や風の影響で大会を中止にするなんて発想は皆無だったはずだ。
それが、いつから変わってしまったのだろう。おそらくは、事故でも起きたら、アホなマスコミ共が一斉に声高に非難するからだろう。実際に参加しているランナー達は、天候の事は自己責任で出場しているのだから、天候のせいで事故が起きても文句言うような幼稚な人はいないはずだ。
実際のところ、その7年前の徳島マラソンでは時間を計測しているラインを敷いたゴムが強風で大きくめくれ上がり、それに足が引っかかった私は転倒して血まみれになってしまい、結局、途中リタイアしたが、私は大会関係者を責めることはしなかった。
(ピッグ)「いやいや、めちゃめちゃ主催者を非難してたじゃないですか」
(幹事長)「あれは主催者の不手際を非難してたのであり、暴風雨なのに開催したことを非難してたんじゃないよ」
しかも、マラソン大会が中止になった場合、参加費は基本的に戻ってこない。確かに、ある程度は既に費用が発生してるから、仕方ない面もある。でも、何日も前に中止を決めたのなら、まだ支出していない費用もあるだろう。それなのに、送られてくるのは発注済みだった記念品のTシャツくらいだ。他の金はどこに消えたんだ!と言いたい。
てな事で、相次ぐマラソン大会の中止に、去年は怒り狂ってたんだけど、それでも気を取り直して今年もエントリーした。もちろん今年も、過去の失敗の教訓を胸に、だいぶ前からパソコンの調子を確認した上でスタンバイし、受付時間の開始と同時にパソコンのキーを叩いて、なんとか無事にエントリーすることに成功した。3年ぶりの出場だ。大好きな大会なので、ワクワクのウキウキだ。
今年はのらちゃんも女子部員として初めて参加することになり、私が一緒にエントリーした。彼女は丸亀マラソンには4回出場しているが、それ以外では去年と今年のオリーブマラソンと去年のタートルマラソンに出ただけで、まだまだ初心者だが、それは単にレース経験が少ないと言うだけで、オリーブマラソンでは支部長に2年連続で勝利したし、去年のタートルマラソンや今年の丸亀マラソンでも支部長とほぼ同じタイムだったから、女子としてはとても速いランナーだ。なので、酷暑の山岳レースである厳しい汗見川マラソンだが、なんの不安も無い。
(のらちゃん)「そんな事はないよ!不安爆発だよ!」
実力女子ランナーの彼女だが、酷暑の季節のうえ、前半はひたすら上り坂の山岳コースなので、すごく不安があるようだ。でも、5月末のオリーブマラソンでの走りを見る限り、何の問題も無いだろう。
しかし、他のメンバーは、あれほど私が毎年、口を酸っぱくしてエントリーを促していると言うのに、今年も多くのメンバーがエントリーに失敗し、エントリーすることができたのだ支部長だけだった。
私が必死になってエントリーしているのに、他のメンバーの動きが悪いのは、このレースの坂と暑さに腰が引けてしまい、イマイチやる気が無いからだ。確かに「一体どうして、こななクソ暑い時期にマラソン大会が存在するんだろう?」という単純で素朴な疑問はある。もう32回にもなる歴史ある大会なので、もしかしたら31年前は、7月下旬といえども、四国山地の真ん中の高原地帯は涼しかったのかもしれない。汗見川マラソンも四国カルストマラソンも、夏の真っ盛りだけど高地なので気温も下界に比べたら低めだろうって事で始まったのではないだろうか。
しかし、こなな山の中でも高温化は確実に進んでいて、12年前に出場したときは、この世のものとは思えないようなあり得ない暑さで、「四国山地の真ん中の高原で、こんなに暑いんだったら、下界は地獄のような暑さだろうなあ」なんて思っていたら、なんと、その日は、汗見川マラソンが開催された高知県本山町が全国で一番暑かったという、トンでもない状況だった。昔は涼しかったのだろうけど、少なくとも今は、高原だからと言って涼しさを期待してはいけない事だけは確かだ。 そういう事もあって、このレースに対するペンギンズの軟弱メンバーの反応は鈍かったのだ。
(幹事長)「支部長だけはやる気を出してくれましたな」
(支部長)「10kmコースやけどな」
(幹事長)「え?ハーフマラソンじゃないの?」
暑さと上り坂が苦手な支部長は、ハーフマラソンを回避して10kmの部に出ることにしたのだ。
以前、10kmの部しかなかった頃の10kmコースは、延々と上り坂を10km上り続ける厳しい片道コースだった。スタート地点とゴール地点が異なっていたのだ。今のハーフマラソンのコースは、それと同じコースを、さらに500m上って、10.5km地点で折り返して帰ってくるコースだ。
ところが、ハーフマラソンの部ができてからの10kmコースは、昔のような片道コースじゃなくて、5km上って5km下ってくるコースになった。ハーフマラソンができてからはゴール地点がスタート地点と同じになったため、10kmコースも5km走ったら戻ってくるのだ。なので、10kmコースはかつてのようなひたすら10km登り続ける過酷なコースではなくなった。
しかも、ハーフマラソンのコースは、前半はずっと上りっぱなしとは言え、そのうちの前半の5km地点までは大した傾斜ではない。緩やかに上っているだけだ。5km地点から折り返し点までがきつい上り坂となる。なので、5km地点で折り返してくる10kmコースは、前半は上り坂だと言っても、たいした傾斜ではない。つまり、10kmコースはハーフマラソンに比べて距離が短いだけでなく、坂の傾斜も緩やかな楽勝コースなのだ。
(幹事長)「それやったら支部長も楽勝やな」
(支部長)「ほんとかなあ?」
〜 会場へ出発 〜
当日は、高知の山奥まで日帰りなので、当然ながら早めに出発しなければならない。過去の記事を見ると6時に出発したら楽勝だったようなので、今年も同じ頃に出ようかと思っていたら、なんとスタート時間が早くなっている。かつては10時スタートだったのが、少しずつ早まり、3年前は9時40分だった。ところが今年は一気に1時間も早くなってスタートは8時40分になっている。書類を見ると「安全対策のためスタート時間を早めています」なんて書いている。
(幹事長)「どゆこと?」
(支部長)「暑くなる前に終わらそうってことじゃない?」
そう言えば、3年前の大会では、衝撃的なアンケートが手渡された。何を書いていたかというと、
「このマラソン大会は夏の真っ盛りに開催してきたけど、近年、地球温暖化のせいで非常に暑くなっており、
事故の危険性も出てきてるので、開催時期の変更を検討しています。どう思いますか?」
てなトンでもない内容のアンケートだったのだ。
もちろん我々は、
「何を言うてるんや!他のマラソン大会が開催しないような、このクソ暑い時季に開催するからこそ存在価値があるんやないか。
開催時期を変えるんやったら参加せんぞ!」
と怒りの声をぶつけた。
おそらく、大半の参加者は同じような意見だったと思う。こんなマイナーな大会が存続というか、人気を集めているのは、他にマラソン大会が皆無の酷暑の時期に開催されるからだ。もし普通のマラソンシーズンに開催されたら、参加する人なんていなくなるだろう。そういう参加者の声を聞いて、開催時期の変更を断念した事務局が、仕方なくスタート時間を早めたって事だろう。
しかし、便利の良い町中で開催されるマラソン大会ならイザ知らず、ただでさえ不便な山奥で開催されるから、従来のスタート時間でも早起きしなければならなかったのに、さらに1時間も早起きしなければならないなんて、もう大変だ。
て事で、支部長に我が家へ迎えに来てもらい、5時に出発した。その後、のらちゃんちに行って彼女をピックアップし、高速道路に乗った。
(幹事長)「疲れは残ってない?」
(のらちゃん)「残りまくりだよ。おまけに眠いよ」
実は、私とのらちゃんは、長年の念願だった剱岳に登頂して帰ってきたのが前々日の金曜日だったから、休養できたのは前日の土曜日だけだった。ハードな登山の疲れたまだ取れてないのに、こんな早起きして遠方までマラソン大会に行くなんて、どう考えても無理がある。
ただ、今日は天気がイマイチってのが希望の光だ。普通なら、マラソン大会の日の天気は晴天が好ましいのが当たり前だ。誰だって雨の中は走りたくない。できれば晴れ上がった空のもと走りたい。しかし、厳しい日射しが照りつける酷暑の時期のマラソン大会では晴れるより雨の方が望ましい。しかも、このレースは、前半は延々と坂を登る厳しいコースなので、できれば雨が降ってくれる方が望ましい。
6年前はスタート直前にスコールが降り、スタート時点では止んでいたが、だいぶ気温が緩和されていたため走りやすく、思ってもみなかった好タイムが出た。好タイムと言っても、なんとか2時間を切った程度なので、普通のハーフマラソンの基準からすれば惨敗なんだけど、坂の厳しいレースなので、2時間を切れれば万々歳だ。その後の4年前、3年間は、天気が良かったため2時間をオーバーしてしまった。
今日は香川地方は雨は降りそうもないが、雨の多い高知は雨の可能性も十分あるって感じだ。少なくとも炎天下にはならない可能性が高い。
早朝のため道路は空いていて、高速道路も順調に進んだ。車の中で朝食を食べる。もちろん、朝食はおにぎりだ。以前はレース中にお腹を壊すことが多かったので、用心して朝食と一緒に下痢止めの薬も飲んでいたが、4年前の徳島マラソンから朝食を菓子パンからおにぎりに変えたため、その後は一度もお腹を壊さなくなった。パンに含まれるフルクタンという糖類は消化に悪く、下痢になりやすいが、お米に含まれている糖類は消化が良いので、おにぎりを食べれば、もう下痢を心配する必要は無いのだ。
(のらちゃん)「不便な体やねえ。牛乳も駄目なのよね?」
(幹事長)「牛乳なんか飲んだら速攻でトイレだよ」
なんとなく、歳を重ねるごとにお腹が弱くなっているような気がするなあ。
さらにバナナやゼリーも持ってきたが、それはスタート直前に食べよう。
高速道路を降りる直前の立川パーキングエリアでトイレに行ったが、普段はほとんど客がいないサービスエリアなのに、早朝からレースに参加するランナー達で大賑わいだった。
トイレで大をした方が良いタイミングだが、出そうになかったので小だけ済ませた。支部長は素早く大を済ませていた。
〜 まさかのコース変更 〜
車はその後も順調に進み、現場の駐車場には予定通り7時前には着いた。この駐車場が一杯になると、遠く離れた第二駐車場に停めてバスで移動することになるので避けたかったが、まだまだ駐車場にはスペースがあった。
レース会場はクライミングセンターだ。高さ15m、幅4mの人工のクライミングウォールが2面ある西日本で有数の屋根付き競技場だ。5月末のオリーブマラソンの前日には、西条市へスポーツクライミング・コンバインドジャパンカップを見に行ってきたが、まだ新しい西条市の施設に比べて、ここの施設はずっと前からある。なんでこんな山の中にクライミングウォールがあるのか不思議だ。
以前は、このクライミングセンターのテント屋根の下が受付とともに選手の控え場所になっていたんだけど、最近はクライミングセンターの裏のグラウンドが待機場所になっている。グラウンドの芝生の上に大きなテントが張られ、その中にテーブルとイスが並んでおり、他のマラソン大会ではあり得ないような快適な待機場所になっている。他のマラソン大会だと、オリーブマラソンのように自分達でなんとかスペースを見つけて、炎天下で強引にシートを敷くというのが基本だ。この大会は定員が少ないため、こういう快適な環境が準備できるのだろう。
まずは受付だ。送られてきていた参加証の自分のゼッケン番号を確認して、該当する受付コーナーへ行く。ところが、自分のゼッケン番号に該当するコーナーには「11kmコース」なんて書いてある。おかしいな。でも自分のゼッケン番号のコーナーは、ここしかない。て言うか、11kmコースなんて、あったっけ?
(幹事長)「ハーフマラソンのコーナーは、どこですか?」
(係)「ハーフマラソンは11kmコースに変更になったんですよ」
(幹事長)「なんとかーっ!」
なんと、ハーフマラソンが無くなって、代わりに11kmコースになっているのだ!
(幹事長)「ななな、なんでですかっ!?」
(係)「土砂崩れで道が通れなくなって」
なんでも、10kmコースの折り返し点、すなわち5km地点のすぐ向こうで、先日の大雨による土砂崩れで道が通行止めになってしまったそうだ。10kmコースの折り返し点よりは向こうなので、10kmコースは予定通り行われる。それならハーフマラソンの部もみんな10kmコースに振り替えれば良いような気もするが、なぜか土砂崩れ地点のギリギリまで走ることになったようで、そのため11kmだなんて中途半端な距離になったようだ。10kmの部と統合してしまうと、景品だとか色々と混乱するから、部門としてはあくまで別々にしたいのだろう。でも、10kmの部と11kmの部だなんて、違いが無さすぎるよなあ。
実は、先日の大雨のとき、この本山町では溜池が決壊する恐れがあるからと避難勧告が出たりしていた。もしかして、去年に続いて今年も大会が中止になると困るなあ、なんて心配していたが、結局、その溜池は決壊しなかったようだったから、ホッと安心したのだが、すごい大雨が降ったのは間違いない。その大雨のせいで、土砂崩れが起きたのだろう。
まあ、しかし、実際に土砂崩れが発生しているのだからコース変更は仕方ない。去年のように、「土砂崩れが起きるかもしれないから」なんて訳の分からない理由で開催が中止になるよりは、よっぽどマシだ。
でも、ハーフマラソンを走るつもりで来ていたのに、急に11kmレースになると言われても、心の準備ができていない。
(支部長)「距離が短くなるんやから、ええやないか」
(幹事長)「我々は素人じゃないんだから、そんな簡単なものではないぞ」
ハーフマラソンならペース配分と言うものを考えなければならない。しかも、丸亀マラソンのように最初から最後までフラットなコースなら、割と単純なペース配分でかまわない。しかし、この汗見川マラソンは前半はひたすら上り坂で、後半はひたすら下り坂だ。しかも前半の上り坂のうちでも、そのまた前半は緩やかな上り坂で、前半の後半が過激な上り坂になる。当然ながら、後半の前半は過激な下り坂で、後半の後半は緩やかな下り坂になる。このような変化に富んだコースなので、ペース配分はとても重要になる。
ところが11kmレースになると、前半は上り坂で後半は下り坂とは言え、その傾斜は緩やかなものだから、あまり坂の事を気にする必要はない。前半の上り坂ではペースを抑えて無理しない、と言ったようなペース配分を気にする必要はないのだ。しかも距離が11kmと短くなるから、終盤の撃沈なんて気にすることなく、最初からがむしゃらに走るしかない。これは非常に苦しい。距離が短くなれば楽になると考えるのは、ど素人だ。
(支部長)「わしゃ、ど素人か」
フルマラソンとハーフマラソンなら明らかにハーフマラソンが絶対的に楽だ。しかし、ハーフマラソンより短い距離のレースになると、距離が短い方がむしろきつい。最初から最後まで全力疾走になるからだ。
(幹事長)「困った困った」
(のらちゃん)「あたしだって困ったよ」
のらしゃんは初参加だから、僕が懇切丁寧にコースの概要とペース配分をアドバイスしてきたのに、それが一気に崩れ去ってしまった。
(幹事長)「もう、仕方ないから、最初から好きに飛ばしていいよ」
(のらちゃん)「ひえ〜!」
という事で、突然のコース変更に、やる気をそがれてしまった。登山から帰ってきたばかりで疲れが残っている中で、いかにして坂の厳しいハーフマラソンを攻略するか考えて、楽しみにしていたのに、いきなり距離の短い全力疾走コースになったから、戸惑いが大きい。
スタート時間は、ハーフマラソン改め11kmコースは8時40分のままだが、当初は10遅れでスタートする予定だった10kmの部は9時00分のスタートとなった。10分しか違わなかったら、11kmコースのランナーと10kmコースのランナーが入り乱れて訳が分からなくなるからだろう。
ところで、今日はおんちゃんの姿が見えない。この汗見川マラソンを始め、北山林道駆け足大会や四国のてっぺん酸欠マラソンや龍馬脱藩マラソンなど、6月から10月にかけて開催される高知県内の山岳マラソン大会シリーズでは、おんちゃんがいつも来ていて、場所取りから色んなアドバイスまで、何かにつけてお世話になりっぱなしなんだけど、今日は来ていない。6月始めの北山林道駆け足大会で会ったとき、汗見川マラソンのエントリーには失敗しような事を言っていたような気がするけど、寂しいな。
会場の方では開会式をやっているが、突然のコース変更のショックから立ち直れなくて、わざわざ行く気は起きない。
(支部長)「で、今日も着るもので悩むわけ?」
(幹事長)「夏場のレースは着るもので悩む余地は無いわな」
空は曇り気味だが、なんとなく晴れ間も見えてきた。もう雨は全く期待できない。それどころか、炎天下になる可能性すらある。こうなると、本当は裸で走りたいくらいだが、裸で走ったら日焼けでボロボロになるだろう。
上は北山林道駆け足大会でも着た薄手の袖無しのシャツにした。炎天下のレースなら、本当はオリーブマラソンで着た秘密兵器のメッシュシャツを着たいところだが、古くなってボロボロになってきてるから、今日は温存することにした。この袖無しシャツも、背中側は少しメッシュになっているし、袖も無いから、普通のTシャツに比べるとかなり涼しい。
下は青森勤務時代の職場の陸上部で作った超薄手の短いランニングパンツを履いた。これは涼しいだけでなく、超短いため、足を開くときの抵抗感が全く無くて、とても走りやすい。
日射しを避けるためには帽子を被った方がいいんだけど、帽子を被っても、いつも途中で頭が蒸れて暑くなり、結局、脱いで手に持って走るようになるので、今日は最初から被らないことにした。サングラスもどうしようか迷ったが、距離も短いし、鬱陶しいし、途中で水浴びしにくいので止めておいた。このレースは猛暑のレースなので、コース途中で地域の住民の人があちこちで水をかけてくれるのだ。
露出の多いウェアなので、日焼け防止のため日焼け止めクリームを腕に塗りたくる。どんどん汗が噴き出てくるので、いくら塗っても流れ落ちていくが、それでも効果はある。
一方、のらちゃんは日焼け防止のために半袖Tシャツの下に長袖シャツを着込んでいる。下もタイツを履いている。
(幹事長)「それ、暑くないん?」
(のらちゃん)「めちゃ暑いわ」
暑くても日焼けするよりはマシだそうだ。
支部長は上は半袖Tシャツだが、今日も下はタイツを履いている。
(幹事長)「それ、暑くないん?」
(支部長)「着ても着なくても、どっちみち暑いんよ」
早明浦ダムをバックに気持ちを立て直すメンバー
準備が終われば、今日の目標を立てなければならない。
通常なら、目標は、どんなマラソン大会においても大会自己ベストの更新だ。どんな時でも、どんなレースでも、常に大会自己ベストの更新を狙うのが良い子のランナーとしてあるべき姿だ。マラソンはコースや季節によってタイムが大きく変わってくるため、違うレースのタイムを比較するのは不適当なので、どんなレースに出ても、とりあえず大会自己ベストを狙うのが良い子の正しい道だ。
ところが、今回は急に前例の無い11kmコースに変更になったため、自己ベストもクソも無い。比較する過去の記録が無いからだ。こうなると、もう適当に目標を設定するしかない。目安になるのは庵治マラソンだ。庵治マラソンは距離が12kmで、いつも1時間切りを狙っているものの、ギリギリで1時間を切れない。1km当たり5分のペースだから、不可能ではないと思うんだけど、坂が多くて厳しいコースなので、どうしても壁を破れない。
(幹事長)「でも、今日は11kmだから1時間は切れるんじゃない?」
(支部長)「この暑さなのに?」
確かに暑さはマイナス要因だが、坂は庵治マラソンよりはゆるやかなはずだ。それに11kmしかないから、1km5分25秒くらいのペースで1時間は切れる。てことで、取りあえず目標は1時間切りだ。
どっちにしても、距離が短いから、前半からペースを抑えるなんて事はせず、自然体で思うままに走っていくことにした。
(幹事長)「ええかな」
(のらちゃん)「分からないから着いていくわ」
スタート時刻が近付いてきたが、トイレの様子を窺うと、仮設トイレの列は短い。大の方はしてないままなので、行くのなら今のうちだ。でも、それほど出そうにもないから、行かないことにして、バナナを食べた。
〜 スタート 〜
スタート10分前頃になり、集合のアナウンスもあったので、ようやくスタート場所に移動する。もちろん、スタート10分前だと言うのに、まだスタート地点には並べない。周辺で待機するだけだ。なぜなら、スタート地点の道路は交通規制がかかっておらず、どんどん車が通っているからだ。地域住民のために、スタート直前にならないと通行止めにできないのだ。
スタート3分くらい前になってようやく通行止めになり、ランナーが並び始める。シューズにタイム計測チップは付けているが、これはゴール時に計測するだけで、タイムはネットタイムではなく、グロスタイムしか計ってくれない。なので、前方からスタートしなければタイムはロスする。とは言っても、11kmの部の参加者は875人なので、後ろの方に並んでも、そんなにタイムロスは無い。てことで、特に焦ることもなく、集団の中程に並んだ。のらちゃんも一緒だ。後からスタートする支部長が沿道で見守ってくれている。天気は薄曇りと言うか、なんとなく薄日が射してきて、かなり暑くなり、汗がタラタラだ。
(のらちゃん)「距離表示はあるの?」
(幹事長)「大きく書いてあるよ」
のらちゃんは初参加だから色々と心配している。
(のらちゃん)「もうドキドキして苦しいよ」
(幹事長)「羨ましい緊張感やね」
ゾウさんも、いつまで経ってもスタート前には胃がキリキリ痛むって言ってるけど、のらちゃんやゾウさんのような緊張感を持てれば、我々も、もう少しマシなタイムが出るような気がする。
しばらくするとカウントダウンが始まり、いよいよスタートとなった。スタートラインを越えるまでのタイムロスは20秒ほどだった。
ハーフマラソンなら最初は無理せず自然体で走るんだけど、今日は距離が短くなったから、最初から飛ばしたい。でも、思ったほど周囲のランナーは飛ばさないから、しばらく渋滞が続く。他のランナーは距離が短くなったからと言ってペースを上げようとは思わないんだろうか。
混雑してペースが遅いからと言って、焦って渋滞を掻き分けて少し前に行ったところで、追い抜いたランナーの前にも、そのまた前にも延々とランナーがダラダラ走っているから、無理して追い抜いても、無駄な体力の消耗になるだけで、あんまり意味は無い。なので、最初はウォーミングアップと割り切って、ゆっくり走ればいいと言うのがセオリーだ。だが、しかし、いくらなんでもペースが上がらず、遅すぎるので、仕方なく右へ左へ移動しながら前のランナーを無理矢理追い抜いて行く。
このレースは、前半は、汗見川という、早明浦ダムの直後で吉野川に合流する小さな支流に沿った道を延々と上るから、基本的にひたすらずっと上り坂で、逆に折り返してくる後半は下り坂だ。ただ、今日は距離が短くなって、5km地点から少し行ったところで折り返してくるが、そこまでの上り坂の傾斜は大したことはない。前半はずうっと上り坂とは言え、スタート直後は元気だし、それほど気にすることはないので、頑張って飛ばせば速いペースで走ることができる。
なーんて思って走ったんだけど、最初の1km地点のタイムは5分を大きくオーバーしていた。過去の実績では、序盤は1km5分くらいで走れていたから、思った以上にスタート直後の混雑で時間がかかったようだ。
のらちゃんに距離表示があることを教えてあげようと思って振り返ったが、姿が見えない。スタート直後の混雑ではぐれてしまったようだ。
次の1kmは多少、上り坂があるため、2km地点でのラップはさらに少し落ちたが、その次の1kmはフラットに近かったこともあり、3km地点でのラップはなんとかペースアップできた。とは言え、1km5分はだいぶオーバーしている。
気分としては、暑さにもかかわらず、割と軽快に走れている感じなんだけど、大したことないと言っても多少は上り坂だからか、それとも暑さのせいなのか、思った以上に苦戦している。
コースは山の中の川沿いで、日陰と日なたは半分づつくらいだ。日陰でホッとしたかと思うと、またすぐ日なたになる。
その後はだんだん坂の傾斜がきつくなっていき、4km地点のラップは再び少しだけ落ちていた。と思ったら、のらちゃんが追いついてきた。スタート直後の遅れを取り戻したようだ。
(幹事長)「距離表示は分かった?」
(のらちゃん)「うん、分かったよ」
のらちゃんは快調で、横に並んだかと思ったら、少しずつ前に行く。一緒に着いて行こうかと思ったけど、あんまり無理すると続かないような気がしたので、着いていくのは諦めた。
のらちゃんとは一緒に練習している時は、ほとんどの場合は負けている。トラックを走ってもロードを走っても、圧倒的に差をつけられて負けてしまう。ただ、本番では、まだ負けたことはない。ゾウさんも同じだが、のらちゃんは練習の時も本番と同じようなスピードで走ることができる。のらちゃんやゾウさんは練習の時でも気合が入っているから、本番と同じように走れるのだ。
一方、我々はどんなに頑張っても、どうしても練習の時は気合が入らず、本番のようなペースでは走れない。なので、本番ではまだ負けたことないが、練習では惨敗だ。今日は本番だから、僕が勝つはずなんだけど、あっさり抜かれていくなんて、やはり僕のペースが上がってないのだろう。暑さのせいだろうか。ちょっと危機感を抱いたが、「ま、負けても仕方ないか」なんてすぐ思ってしまい、気合は続かない。
このレースは、マイナーな草レースではあるけれど、真夏のレースと言うことで給水所は多い。しかも冷水とスポーツドリンクが用意されていて、脱水にならないよう気を遣ってくれている。冬場のマラソンなら、時間が惜しくて給水なんかパスする事が多い私だが、暑い時期のレースなので最初からこまめに水を補給する。
のらちゃんに着いていくのを早々に諦めたせいもあって、次の5km地点のラップは5分半で、一気にペースダウンしていた。着実に坂の傾斜は増してきたとは思うが、まだまだそれほど大した坂でもないから、坂のせいじゃなくて、早くも足が弱ってきたのかもしれない。
でも、5km地点を過ぎれば、あと500mで折り返しだ。そうすれば後半の下り坂になる。そう思うと気が楽だ。上り坂はあと500mだ。
と思ったのだが、なかなか折り返し点が見えない。おかしいなあ。と思ったら、本来のルートからはずれて、横道へ入っていく。土砂崩れ地点まで行くのではなくて、狭い横道へ入っていくのだ。そして、その道はいきなり過激な上り坂になっていた。もうとっくに5km地点から500mは過ぎているはずだから、折り返したらいいのに、なぜか無理矢理、過激な坂の狭い横道を走らされる。一体どうなってるんだろう。
激坂をヒィヒィ登っていくと、折り返してきたのらちゃんとすれ違った。まだまだ元気そうだ。
さらにしばらく登ると、ようやく折り返し点が見えてきた。やっと上り坂が終わる。あとはひたすら下るだけだ。どう考えても片道5.5km以上走らされているが、この辺りは距離表示が全く無くなり、ペースが分からなくなってしまった。一生懸命走って下っているつもりなんだけど、あんまりペースが上がってる感じでもない。
しばらく走ると、ようやくあと5km地点の表示があった。5km地点の表示から9分もかかっている。厳しい上り坂があったとは言え、どう考えても、この区間は1500〜1600mはあったと思う。これで一気に1時間切りの目標は遠のいてしまった。どう考えても不可能だ。
残り4kmくらいの所で、20分後にスタートした10km部門の支部長とすれ違った。1km5分ちょっとで走れば、ちょうどそんなものかな。ペースとしては快調だ。ただ、表情は思ったより苦しそうだ。
あと4km地点では、1km5分ちょっとにまでペースアップできたけど、その後はフラットな区間になったため、次のあと3km地点では再び5分半近くまでペースダウンしてしまった。もう1時間切りは完全に不可能だ。それでも、再び下り坂区間になったため、割と足は動いている。もう残り3kmなんだから頑張らなければならない。目標は無くなったが、少しでもマシなタイムでゴールしたい。
少し頑張って走った結果、あと2km地点では1km5分ちょっとにまでペースアップできた。
そうこうしていると、少し前を走っているのらちゃんの背中がだいぶ近付いてきた。ここへきてペースダウンしているようだ。頑張って走っていくと、あと1km地点で追いついた。ペースは1km5分ちょっとをキープできている。
(幹事長)「あと1kmや。頑張って走ろう。一緒にゴールしようよ」
(のらちゃん)「うん、分かった」
のらちゃんは見るからに明らかに一気に疲れが出て、ペースダウンしている。前半は調子良さそうに見えたけど、ちょっと無理しすぎたのかもしれない。
もう1時間切りは不可能だし、なんの目標も無いので、多少、ペースを落としてもかまわないので彼女のペースに合わせて一緒に走る。彼女はだいぶ弱ってきてたけど、一緒に励ましながら走ると、なんとか立て直せたようで、頑張って走り続ける。時々泣きそうな目になってるけど、元々負けず嫌いで根性あるから、頑張って着いてくる。こういう根性があれば、私ももう少し速く走れるんだろうけど。
3月の徳島マラソンでも終盤にゾウさんと一緒になり、そのまま二人で一気にペースアップしてゴールできたように、終盤に女子部員と一緒に走ると、お互いにペースアップして頑張ることができる。マラソンは極めて精神的なスポーツなので、こういう効果があるのだ。
て事で、今回もそのまま最後まで彼女と一緒に走り、一緒に楽しくゴールできた。
〜 ゴール 〜
最後はのらちゃんも立て直し、ラスト1kmは5分を切るペースだった。結局1時間は切れなかったけど、この中途半端な距離のコースで、1時間を切ることに大きな意味は無いので、あまり気にしないことにした。
ゴールすると、まずはお楽しみの冷たいトマトを貰って食べる。大きなバケツに冷えたトマトがいっぱい浮かんでいて、好きなだけ取り放題だ。冷たいだけでなく、完熟で収穫した地元のトマトだから甘くて本当に美味しい。いくら食べても美味しくて、4〜5個食べてしまった。
さらにお楽しみのゆずジュースも貰って飲む。カラカラに渇いた喉にゆずジュースがとても美味しくて、その場でお代わりをもらうと、係のお姉さんが「何杯でも飲んでくださいね」って優しく言ってくれたので、3杯お代わりした。でかいバケツになみなみと入っているジュースを柄杓でどんどん入れてくれるから、いくらお代わりしても無くなる心配は無い。
記録証をもらって確認すると、過去の実績より、少しだけ相対的な順位が上がっていた。丸亀マラソンなんかだと、近年は素人の人たちがわんさか出てくるので、我々のようなレベルのランナーでも昔に比べれば相対的な順位は良くなったが、この汗見川マラソンはレベルが高いから、そうはいかない。こんな酷暑の季節の山岳レースという過酷なレースに出場する選手はレベルが高くて、最近のメジャーなマラソン大会に大挙して出てくるような初心者はあまりいないから、相対的な順位は良くないのだ。その中で、過去の実績より少し順位が上がったのは嬉しい。
記録証をもらってしばらく休んでいると、支部長も戻ってきた。
(幹事長)「どうやった?」
(支部長)「ちょっと歩いたわ」
なんと後半で少し歩いたとのことだ。後半は下りとは言え、ほぼフラットな区間も多く、疲れてくると、フラットなところは上り坂に思えてきて、つい歩いてしまうのだ。
(支部長)「ハーフマラソンと違って、ほとんどフラットやって言ってたけど、上りは結構な坂やったで」
(のらちゃん)「ほんとほんと。幹事長はほとんどフラットって言ってたけど、なかなか厳しい坂だったよ」
確かに、本来のハーフマラソンのコースの5km地点から先は、過激な坂が続くため、その過激な坂に比べたら、前半の坂はフラットに感じるけど、冷静に考えると、そこそこ急な坂かもしれない。
それでも、支部長も歩きながらも1時間はオーバーしなかったので、満足げだ。
一休みしたところで、いよいよ、このレースの一番の楽しみである冷たい川への飛び込みだ。かつて上りの片道10kmコースしか無かった時も、ゴール後に山奥の川に飛び込んでいたが、往復のハーフマラソンになってからも、会場近くで川に飛び込むことができる。このために全員、サンダルを用意してきている。
足を引きずって川に降りていくと、既に多くのランナーが川に入って気持ちよさそうに泳いだりしている。足だけ裸足になって、ランニングウェアのまま川に飛び込む。川の水はものすごく冷たく、足を浸けただけで痛くなるほどだから、少し入っては、すぐに出る。それを繰り返しながら、我慢して少しずつ身体を沈めていくと、最初は心臓が止まりそうになるが、いったん肩まで入ってしまえば、今年はずっと入っていられる。暑く火照った体が冷やされていくのが気持ち良い。
それでも、今年は一段と水が冷たく、長居は難しい。なのに、のらちゃんは元気に泳ぎ始めた。ところが、泳ぎ始めたとたん、足が攣ったようで、溺れかけてしまった。
(のらちゃん)「死ぬかと思ったわ」
(幹事長)「ランニングの後に泳いだら絶対に足が攣るで」
それでもめげずに、滝のようになった所でも、3人でしつこく遊んだ。支部長は「鯉の滝登りや」とか言いながら滝を登ろうとして、かなり良いところまで登って行った。
(幹事長)「さすがは水泳の練習に励んでるだけのことはあるな」
(支部長)「あんまり関係ないけどな」
体も十分に冷え、落ち着いてきたので、会場に戻って弁当券を弁当に引き替える。例年のように弁当は2種類あって、普通の弁当か、ソーメンとばら寿司の組み合わせだ。暑い時期のレースの後はソーメンも魅力的だが、今日は普通の弁当にした。
ゆっくり弁当を食べるていると、ステージの方からは表彰式の様子が伝わってくる。
表彰式が終わったら、お楽しみ抽選会が始まった。北山林道駆け足大会は、はずれる人の方が少ないっていうくらい色んなものが当たりまくるが、普通の抽選会では、くじ運の悪い私らは、まず当選しないので、無視して早々に引き上げるところだが、実は、この大会の抽選会でも、4年前、何の期待もせず、城武選手と世間話をしていたら、いきなり名前を呼ばれ、慌ててステージに走ったら、名産のお米を貰った。なので、一応、ぼうっとしながら呼ばれる名前をチェックしていたが、さすがに今年は何も当たらなかった。
お弁当を食べ終え、帰りがけには、まだ残っていたゆずジュースをいっぱい飲ませてもらい、近くのお風呂へ行く。
いままでこの近くにはお風呂が無かったけど、つい最近、モンベルのアウトドアヴィレッジって施設ができ、その中にお風呂も作られたのだ。行ってみると、真新しい施設で、お風呂も気持ち良かった。この大会はレース後に川に飛び込んで汗を流すことができるから、お風呂は無くても済んだんだけど、やはりお風呂できれいさっぱり洗うことができるのは嬉しい。お風呂から出て、涼しいところでのんびりアイスクリームを食べて、幸せな気分だった。
さて次は9月初めの四国のてっぺん酸欠マラソンだ。この大会も汗見川マラソンと同様に、去年は悪天候で中止になった。しかも、この大会も今年はこれまでとコースが変わっている。なので、過去のレースが参考にならない。コース変更が吉と出るか凶と出るか、お楽しみだ。
〜おしまい〜
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