第35回 汗見川清流マラソン大会(自主開催)

〜 炎天下の過酷なレース 〜



2022年7月31日(日)高知県本山町において第35回汗見川清流マラソン大会が開催されるはずだった。

このレースは、暑い暑い四国の真夏に開催される大変貴重なマラソン大会だ。

以前は、真夏の四国のレースとして、ほかにも四国カルストマラソンがあった。
真夏に開催されるというだけでなく、かつての強烈登山レース塩江山岳マラソンに匹敵するものすごい急な坂が延々と続くという異常に厳しい20kmコースだったので、強烈な日射しにより地獄のような暑さで体が焦がされる中、走るのが不可能なほど急な坂をよじ登るという発狂するようなレースだった。
しかし、この殺人レースは、あまりの厳しさのため危険すぎるってことで廃止になってしまった。
(ちなみに、その後継レースとして出来た龍馬脱藩マラソンは、季節は10月で走りやすい時季になったが、フルマラソンの部は最大標高差560m、累積の標高差は860mという、四国カルストマラソンを遙かに上回る発狂しそうな超厳しいコース設定となっている)

他に夏場の山岳レースとしては、9月初めに開催される四国のてっぺん酸欠マラソンがあり、2015年以来、毎年連続でエントリーしている。
ただし、こちらは夏場の山岳レースとは言え、9月に入っているので、灼熱の炎天下というほどではない。ロクに日陰が無いコースだから天気が良いと炎天下にはなるが、7月末に比べたら随分マシだ。
一方で、標高が高いため、悪天候に見舞われやすくて中止が多く、2015年以来、開催されたのは僅か2回という幻のマラソン大会だ。

てことで、汗見川清流マラソン大会は真夏の四国のレースとして唯一の貴重なレースになった。四国で真夏のレースが少ないのは、あまりにも暑くて走るのが大変だからだ。
でも、だからと言って真夏にレースに出ないと、夏の間、ランニングをサボってしまいがちになる
レースが無くても地道にトレーニングできる真面目な人ならいいんだけど、我々のように心が弱いと、レースが無いとどうしてもサボってしまう。

(ピッグ)「レースがあっても、こう暑いと練習はサボりがちになりますけどね」

レースが無いと完全に休養してしまう心が弱い我々としては、少しでもモチベーションを維持するため、この時季にレースを1つ入れたいわけだ。

なので、2020年もとてもとても楽しみにしていた


〜 新型コロナ騒ぎで中止 〜


それなのに、ああ、それなのに、なんと2020年は新型コロナウイルス騒ぎのせいで大会が中止になってしまった

事の発端は2020年3月1日の東京マラソンの一般ランナー参加中止だ。これに続き、3月8日の第9回名古屋ウィメンズマラソンも一般市民ランナーの参加が中止になった。
ただ、これらの大会は東京オリンピックのマラソン代表選考会を兼ねていたため、エリートランナーの部は開催された。
しかし、その後、状況はますます悪くなり、遂に3月22日の徳島マラソンは全面的に中止になってしまった。あまりの事に呆然とした。
そして、その後も、
全国的にマラソン大会が次々と中止になっていった

これらの
マラソン大会中止騒ぎってのは、どう考えても、あまりにも非科学的で情緒的でヒステリックな対応だ。

(ピッグ)「え?この説明って、まだ書くんですか?」
(幹事長)「ちょこっとだけね」


ともかく、
素人が見たら、マラソン大会ではランナーが密集しているように見えるかもしれない。しかし、毎日乗っている満員電車に比べたら、はるかにスカスカだ。そうでないとぶつかって走れない。
しかも密室の満員電車に比べて、屋外のマラソン大会はウイルスが蔓延できる環境ではない。新型コロナウイルスは感染した人の咳やくしゃみの飛沫による飛沫感染でうつっていくが、飛沫感染は屋外で走っている時に感染なんかしない。
多くの国民が新型コロナウイルスを非常に恐ろしいもののように勘違いしているが、決して、エボラ出血熱のように極めて致死率の高いウイルスでもなければ、風疹のような感染力の強いウイルスでもない。ただの風邪だ。
それなのに、その後も5月のオリーブマラソン、6月の北山林道駆け足大会、7月の汗見川マラソンと、続々とマラソン大会の中止が発表になり、マラソン大会もサイクリングイベントも全滅してしまった

この暗黒の事態を打開するため、
ピッグの提案により、中止になったイベントをペンギンズで自主開催していくことになった。
マラソン大会では5月の小豆島オリーブマラソンから自主開催を始め、12月の瀬戸内海タートルマラソンまで
全てのマラソン大会を自主開催した
これらは例外なく、とても楽しくて大成功だったが、そうは言っても正式な大会ほどのやる気と達成感は得られないため、願わくは、コロナのバカ騒ぎは2020年で収束して、2021年はマラソン大会が復活して欲しかった。
ところが、
2021年になってもコロナのバカ騒ぎが終わらず全てのマラソン大会の中止が続いたため、2月の丸亀マラソンから始まって11月の瀬戸内海タートルマラソンまで全てのマラソン大会の自主開催を続けた

しかし、バカみたいなコロナ騒ぎもいよいよ収まり、今年の2月の丸亀マラソンから
正式なマラソン大会が復活する予定だった。我々はちゃんとエントリーし、参加費だって払い込んでいた。
ところが、なんと、丸亀マラソンは直前になってドタキャンされてしまった
さらに3月の徳島マラソンも、ちゃんとエントリーし、参加費も払い込んでいたのに、やはり直前になってドタキャンされてしまった。
2020年に全国に先駆けて中止になった徳島マラソンは
3年目の中止になったのだ。

ただし、全国的にコロナのバカ騒ぎによるマラソン大会中止が全面的に3年目に突入した訳では決してない
東京マラソンは3月6日に開催されたし、名古屋ウィメンズマラソンも3月13日に開催され、ゾウさんが出場して完走した。
なぜマラソン大会が復活し始めたのかと言えば、
コロナの感染者数が減ったからではない。相変わらず感染者数は高止まりしている。
しかし
、コロナのバカ騒ぎは収まりつつある。ようやく国民の多くはコロナがただの風邪に過ぎないって事が分かってきたのだ
独善的な医療関係者と下品なマスコミが、あたかもコロナを恐ろしい病気のようにヒステリックにわめきたてるもんだから、国民の多くが理解するまで2年もかかったが、ようやくコロナなんてただの風邪に過ぎないっていう理解が進んできたのだ。

ところが、
人口が密集している大都市の東京や名古屋で大規模マラソンが開催されたのに、なぜか田舎で沿道の観客だってスカスカの徳島マラソンは中止になった
その流れを受けて、
四国で開催されるマラソン大会は、5月の小豆島オリーブマラソン6月の北山林道駆け足大会と相変わらず3年連続の中止になった。

ただ、マラソン大会はいまだに中止が続いている大会も多い一方で、トレラン大会は開催されるレースが増えてきた
6月の秋吉台カルストトレイルランは3年ぶりに無事に開催され、みんなで楽しく参加した。
おそらく、トレラン大会はマラソン大会に比べて参加者が少なくこじんまりした規模の大会が多く、また山の中を走るので沿道で密集して応援してくれるような観客がいないってのが理由だろう。

だが、
汗見川マラソンは四国内の他のマラソン大会と同様に、今年も中止になってしまった。それで仕方なく、今年も3年連続の自主開催となったわけだ。

なお、この大会は例年は7月末の日曜日に開催されてたんだけど、今回はメンバーの都合で、少し早めの2022年7月9(土)の開催となった。


〜 人気の大会 〜


練習もロクにできない発狂しそうなほど暑い四国の真夏に、マラソン大会に出たいって思う人がそんなにいるとは想像しにくいかもしれないが、実は汗見川マラソンの人気は高くて、申し込むのが大変だ。

(ピッグ)「定員が1300人と少ないってのも大きな理由ですけどね」

以前は、申し込み期間が過ぎてからでも、役場に電話してお願いしたら出場させてもらえていた2007年に初参加した時や、その翌年の2008年に参加した時なんかは、ざっと見て300人くらいしか参加してなかったから、人が集まらなくて大会が消滅しないか心配していたくらいだ
場所が四国の山の中で不便なうえ、いくら標高が高いと言っても、山の中の盆地なので真夏はクソ暑いし、コースが川沿いの道を延々と10kmも上り続ける厳しいコースだから、人気が無くて当たり前だったのだ。

それなのに、しばらく四国を離れていたあと、四国に戻ってきた2012年久しぶりに出てみようと思ったら、申し込もうと思ったときには既に定員に達して受付終了になっていた
申し込もうとした時期が遅かったのは確かだが、それでも定員オーバーだなんて、かつての汗見川マラソンを知っている者なら、信じられない現象だ。しばらく四国から離れていた間に、人気レースになっていたのだ。
近年の異常なマラソンブームの中、真夏の四国のレースとして唯一の貴重なレースになったため、人気が沸騰したのだろう
種目も、10kmコースのほか、ハーフマラソンの部や6kmコースも出来たので、超マイナーな山奥の草レースが、メジャーな大会になりつつあるのだ。

(ピッグ)「定員僅か1300人なんだからメジャーってのは言いすぎですけどね」

こんなに人気沸騰しているのだから、今どき定員1300人だなんて少な過ぎるような気がするが、狭い山道のコースを考えると1000人程度が限界のようにも思える。
こじんまりした和気藹々とした大会の雰囲気も好ましいので、エントリーしにくくなったとは言え、定員は増やさないほうが良いのかもしれない。

てなことで、2013年はエントリー受付がいつ始まるのか、毎日、注視し、受付開始の情報を聞くや否や、慌ててすぐさま申し込み、なんとかエントリーできた。
ところが2014年は再びエントリーに失敗。
続く2015年2016年は出場できたが、2017年富士登山競走のエントリーに成功したため、そちらに出場した。

そして2018年は富士登山競走のエントリーに失敗したため、再び汗見川マラソンのエントリーに挑み、なんとか無事にエントリーすることに成功した。ところが、なんと大会は中止になってしまった
その理由が信じられないことに、なんと「3週間も前の豪雨」だった。3週間も前の豪雨により、マラソンコースの道路に崩落の危険箇所があるから、という理由なのだ。
豪雨により道路が崩落して通れなくなった、と言うのなら理解できる
が、豪雨は3週間も前の事であり、その豪雨によって崩れてはいないのだ。一体、何を恐れているのだろうか?

て事で、怒り狂ったのだが、それでも貴重な夏場のマラソン大会なので、気を取り直して2019年もエントリーした。大好きな大会への3年ぶりの出場だったから、ウキウキのワクワクだったが、エントリーできたのは私が一緒にエントリーしたのらちゃんのほかは支部長だけだった。
あれほど私が毎年、口を酸っぱくしてエントリーを促していると言うのに、相変わらず他のメンバーはやる気が乏しく、多くのメンバーがエントリーに失敗したのだ。
私がこれだけ必死になってエントリーしているのに、他のメンバーの動きが悪いのは、このレースの坂と暑さに腰が引けてしまい、イマイチやる気が出ないからだ。

確かに「一体どうして、こななクソ暑い時期にマラソン大会が存在するんだろう?」という単純で素朴な疑問はある。
もう35回にもなる歴史ある大会なので、もしかしたら34年前は、7月下旬といえども、四国山地の真ん中の山間部は涼しかったのかもしれない。夏の真っ盛りだけど高地なので気温も下界に比べたら低めだろう、って事で始まったのではないだろうか
しかし、こなな山の中でも高温化は確実に進んでいて、2007年に初参加した時は、この世のものとは思えないようなあり得ない暑さだった。
それで、「四国山地の真ん中の高原で、こんなに暑いんだったら、下界は地獄のような暑さだろうなあ」なんて思っていたら、なんと、その日は、汗見川マラソンが開催された高知県本山町が全国で一番暑かったという、トンでもない状況だった。
昔は涼しかったのだろうけど、少なくとも今は、山の中だからと言って涼しさを期待してはいけない事だけは確かだ。

てことで3年ぶりに参加した2019年の大会だったが、なんと直前に降った大雨による土砂崩れで道が途中で通行止めになってしまい、ハーフマラソンのコースがとれなくなったとのことで、急遽、コース変更になってしまった
土砂崩れになった場所は10kmコースの折り返し点、すなわち5km地点のすぐ向こうだったので、10kmコースは予定通り行われた。
それならハーフマラソンの部もみんな10kmコースに振り替えれば良いような気もするが、なぜか土砂崩れ地点のギリギリまで走ることになり、そのため11kmだなんて中途半端な距離になった。
しかし、ハーフマラソンを走るつもりで来ていたのに、急に11kmレースになると言われても、心の準備ができていない。
ハーフマラソンならペース配分が重要になる。しかし11kmレースになると、ペース配分なんかは気にせず、最初から最後までがむしゃらに走るしかない
これは非常に苦しい。距離が短い方が楽だろうと思うのは素人で、距離が短い方が最初から最後まで全力疾走になってペースが速いから、むしろきつい。
それに11kmレースのタイムなんて、なんの実績にも参考にもならないから、イマイチやる気が出ないまま走り、結局、平凡なタイムに終わった。

そのため、2020年は4年ぶりのハーフマラソンの部で気合を入れて走ろうと思っていたが、コロナのバカ騒ぎで中止になってしまった。
それで仕方なく自主開催でハーフマラソンを走ったんだけど、後半は雨が降り、なかなか面白いレース展開となった
また2021年も自主開催でハーフマラソンを走ったが、やはり雨の中のレースとなった
レース自体は特に変わったこともなく平凡な結果だったが、レース後に大豊にあるひばり食堂へ行った。大きなカツ丼が有名な店だ。
これがなかなか良かったので、今年もレース後にひばり食堂へ行く予定を立てていたら、加藤選手が「それなら是非参加したい」と参加することとなった。

て事で、参加メンバーは去年に引き続いて参加する私、支部長、ピッグ、D木谷さん、のらちゃんに加え、加藤選手が初参加する。


〜 自主開催が当たり前に 〜


せいぜい1年間で終わると思っていたマラソン大会の中止が3年目に突入してしまい、我々の中ではマラソン大会ってのは自主開催がノーマルになってきた

(幹事長)「自主開催がすっかり普通になってきたなあ」
(ピッグ)「これはこれで良いんですけどね」


確かに、
自主開催レースには色んなメリットがある
列挙すると、
  ・みんなの都合に良い日に開催できる
  ・天気が悪い時は延期できる
  ・勝手にスタート時間を決められるから早朝に家を出発しなくてもいい
  ・混んでないから駐車場に困らない
  ・混んでないからトイレに困らない
  ・終わってからも混んでないからスムースに帰れる
  ・必死でエントリー競争する必要が無い
  ・参加費がかからない

今回の汗見川マラソンで言うと、正式な大会は例年7月末に開催されてきたが、
参加メンバーの都合で7月9日の開催になった

(ピッグ)「誰の都合なんですか?」
(幹事長)「一番徳の高いお方や」


幹事長様が7月中旬以降、長期にわたって登山遠征に行く計画を立てていたせいで、今年の汗見川マラソンは7月上旬の開催となったのだ。
ただ、その後、長期的に天候不順となり、登山遠征は延期になったので、結果的には汗見川マラソンはもっと遅らせても良かった。

汗見川マラソン当日も天気は悪いとの予報だったが、7月になると天気が良いと暑くて大変なので、決行することにした
他の季節のマラソン大会なら、天気予報を睨みながら雨を避けて開催しているが、この時期は逆に
雨の方が好ましい

(支部長)「炎天下でなくて良かったわい」
(幹事長)「私は炎天下のランニングも好きやけどな」
(ピッグ)「好きなのとタイムが良いのとは別問題ですけどね」


このように自由に日程を調整できるほか、基本的に参加者は我々だけなので、
正式なマラソン大会のように参加者が溢れて混雑するって事がない
そのため、駐車場にも困らないし、トイレの前で長蛇の列に我慢して並ぶ必要も無い。もちろん、レースが終了してからもスムースに帰れる。
それに、秒を争って必死にエントリーする必要もないし、
参加費がかからないってのも大きなメリットだ。

(幹事長)「最近のマラソン大会の参加費は異常なほど高騰してるからなあ」
(支部長)「ほんとほんと。私らのような貧乏人はマラソン大会には出られなくなったよ」
(のら)「二人とも、どこが貧乏なのよ!」


一方、自主開催レースの唯一のデメリット
  ・正式な大会ほどは気合が入らないから良いタイムは出ない
ってことだ。
唯一のデメリットだが、このデメリットは大きい。

もちろん、これは人による。
私なんかは、本番でないと気合が入らない。本番なら参加者が大勢いて、たくさんのスタッフがサポートしてくれて、沿道の声援も多いから、やる気がみなぎる。
なので、私は本番のマラソン大会が大好きだ。本番になると、気合が高まり、普段以上の力が出る
逆を言えば、
本番でないと、どうしても気合が入らない。いくら頑張ってるつもりで、からっきし駄目だ。

ただ、これは私の個人的な問題であり、
女子部員のゾウさんやのらちゃんは、普段の練習でも本番と同じようなペースで走っている。練習の質がとても高い。
このように練習の時ですら本番と同じようなスピードで走れるゾウさんやのらちゃんなら、自主開催レースでも正式な大会と同じようなタイムを出すことも可能だ。
でも、私なんて、どんなに頑張ってみても、本番のようなペースを練習で出すのは不可能だ。
自主開催レースなら、永遠のライバルである支部長やピッグと一緒に走るから、独りで練習している時よりはマシだが、それでも
大したスピードは出ない

また、常に大勢の参加者が周りにいるため緊張感が持続する本大会と違って、参加者が少ない自主開催レースだと、
他のメンバーから少し遅れてしまうと、すぐに一人旅となり、その時点で緊張感もやる気も無くなり、トボトボと足を引きずりながら撃沈する。

(幹事長)「やる気なくなるよな?」
(ピッグ)「完全になくなりますね」


私もピッグも、調子が良い時は自主開催レースでも優勝することがあるが、
みんなからちょっと遅れると、一気にやる気を無くして、ダントツの最下位に転落してしまう

(幹事長)「その点、支部長は最近、妙に粘り強いよなあ」
(支部長)「勝負を諦めんからな」


以前は、
あんなに撃沈していた支部長が、最近は最後まで粘り強く走るのが理解できない。

(幹事長)「あの粘りはどこから出てくるん?」
(支部長)「練習のたまものやねえ。練習量は嘘つかんからねえ」

私は最近、登山にばっかりうつつを抜かしているため、月間走行距離はギリギリで100kmを越える程度だが、支部長は相変わらずコンスタントに月間走行距離200kmを維持している
なので、今回も暑くなければ支部長に惨敗するのは確実だ。暑くなって支部長が自滅する事を祈るのみだ。


〜 会場へ出発 〜


この大会は高知の山奥まで日帰りするので、当然ながら早めに出発しなければならない。
しかも、かつては10時スタートだったので、6時に出発したら楽勝だったんだけど、なぜかスタート時刻が少しずつ早まり、最近はスタート時刻が8時40分になってしまったので、5時に出発するようになった。
大会案内を見ると「安全対策のためスタート時間を早めています」なんて書いてるので、暑くなる前に終わらそうと言う魂胆なんだろう。

実は2016年の大会では、衝撃的なアンケートが手渡された
このマラソン大会は夏の真っ盛りに開催してきたけど、近年、地球温暖化のせいで非常に暑くなっており、事故の危険性も出てきてるので、開催時期の変更を検討しています。どう思いますか?
なんていうトンでもない内容だったのだ。
もちろん我々は、
何を言うてるんや!他のマラソン大会が開催しないような、このクソ暑い時季に開催するからこそ存在価値があるんやないか。開催時期を変えるんやったら参加せんぞ!
と怒りの声をぶつけた。
おそらく、大半の参加者は同じような意見だったと思う。こんなマイナーな大会が人気を集めているのは、他にマラソン大会が皆無の酷暑の時期に開催されるからだ
そういう参加者の圧倒的多数の声を聞いて、開催時期の変更を断念した事務局が、仕方なくスタート時間を早めたって事だろう。

しかし、今年は自主開催なので、我々で勝手にスタート時刻を決めることができる。去年と同様に、スケジュールは後の予定で決まってくる。
汗見川マラソンは、レース終了後の川遊びが一番のメインイベントだ。
それが終わると、次はお風呂だ。3年前にオープンしたモンベル・アウトドアヴィレッジ本山に行ってお風呂に入らなければならない。川遊びが終わったらすぐにお風呂に入らないと体が冷えてしまうが、お風呂の営業開始は13時だ。
さらに、その後はひばり食堂で巨大なカツ丼を食べなければならないが、ひばり食堂は15時ごろまでに行かないと閉店している恐れがある。

てことで、逆算してスケジュールを決めると、
 ・9時:会場到着
 ・9時半:レーススタート
 ・12時:レース終了、川遊び
 ・13時:モンベルのお風呂
 ・14時半:ひばり食堂

という行程にした。なかなかタイトな行程だ。

今年も支部長様が車を出してくださいまして、D木谷さんを乗せて我が家に6時50分に迎えに着てくれ、ピッグをピックアップして7時に高松を出発し、途中でのらちゃんをピックアップして現地に向かった。
加藤選手はレース後に別の用事があるとのことで、別行動で現地集合となった。

朝の高速道路は空いていて、順調に進んだ。空を見上げると、朝から天気予報通り曇り空だ。
今年は異常に梅雨明けが早く、四国地方は6月28日に梅雨明けしてしまった。
6月中に梅雨が明けたのは1951年の統計開始以来最も早いし、梅雨の期間が僅か15日間というのも過去最短だった。
梅雨が早々に開けて7月は好天が続くとの天気予報だったから長期の登山遠征を計画していた。
ところが、梅雨が明けたとたん、全国的に天気が悪くなり、毎日毎日天気の悪い日が続いている。要するに、気象庁の梅雨明け宣言が勇み足だったという事だろう。

この日も四国地方の天気予報は、全域にわたって「曇ったり雨が降ったり」てな感じだった。
これは香川県の方言では「雨が降りそうに見えるかもしれないけど、結局は全然降らないのよね〜」って言う意味だ。
しかし土佐弁では「トンでもない雨が降って土砂崩れや洪水になるかもしれないから気をつけてね〜」と言う意味になる。雨が降るかどうかという問題ではなく、雨の量の問題となる。

ただし、今の我々は雨を恐れていた昔の我々ではない
昔の我々なら、雨のマラソン大会なんて走る気が起きなかった。朝から雨が降っていると、空を見上げながら連絡を取り合って、結局、みんな揃って欠場って事も多かった。
しかし、2010年のオリーブマラソンで考えが変わった。その日は朝からものすごい土砂降りの雨だったので、みんなで欠場の相談をしていたら、我がペンギンズのエース城武選手から「雨がどうしたんですかっ!何を考えてるんですかっ!」と一喝され、渋々参加した。
ところが、土砂降りの雨は、走りにくいどころか、気温が低くなって走りやすくて、後半の大きな坂も全然、苦にならず、最後までペースダウンすることなく、というか、坂が多い後半の方がペースアップしてタイムが良くなるという考えられないレース展開でゴールし、2時間を大幅に切る大会自己ベストとなった。
私だけでなく、ピッグも支部長も快走した。それ以来、暑い季節には、むしろ雨を好むようになったのだ

(のら)「私は雨は嫌だなあ」
(幹事長)「まだ言ってるの?早く雨に慣れてよ」


のらちゃんは夏場の炎天下のレースに出た事がないから雨を嫌がっているが、一度、体験すると、夏場は雨を好むようになる。
特に、極端に汗っかきで暑さに弱い支部長は隠れて雨乞いをしているくらいだ。

(支部長)「雨が降らないんやったら夏場のレースは参加せんよ」

この汗見川マラソンにおいても、10kmの部しかなかった2007年2008年や、ハーフマラソンができた2015年2016年は炎天下で地獄の暑さに苦しんだが、2013年だけはスタート直前に土砂降りの雨が降ったため、一気に気温が下がり、なかなか快調に走れた。
ただし、日本一雨が少ない香川県地方では、いくら梅雨どきと言っても大した雨は降らないが、日本一雨が多い高知県では梅雨のイメージとはかけ離れた豪雨が降る。
2018年は3週間前に降った豪雨により土砂崩れの危険個所があるからと中止になったし、2019年は直前に降った豪雨により土砂崩れが発生してコースが変更となった
高知では大雨になると土砂崩れが発生する可能性が高くなるのだ。

整理すると、過去、参加した年は、2007年、2008年、2015年、2016年が灼熱の炎天下で、2013年、2018年、2019年は直前に豪雨が降った

(幹事長)「豪雨か炎天下なんて、極端だよなあ」
(支部長)「豪雨でも良いから雨は降って欲しいぞ」
(幹事長)「心配せんでも、今日は大雨の中のレースになるよ。楽しみやなあ」
(ピッグ)「あれ?幹事長は炎天下のレースが好きなんでしょ?」
(幹事長)「炎天下も空きやけど、大雨も好きなんよ。ワイルドなのが良いねえ」
(ピッグ)「まともなレースだと勝ち目が無いから、色物を狙ってますね」


炎天下と豪雨とどっちが良いかと言えば、今日は久しぶりに豪雨の中を走りたい気分だ。
自主開催になってからは、2020年は後半から激しい雨になって走りやすくなった。
2021年は大雨ではなく、ずっと小雨が降っていた。中途半端に小雨が降ると、炎天下のような強烈な暑さはないが、ものすごく蒸し暑くなるので、必ずしも走りやすい訳ではない。
今日は、瀬戸内海側は曇りだったが、高知の山の中に入っていくと、雨がポツリポツリと降り始めた。どこまで雨が激しくなるか楽しみだ。


〜 会場到着 〜


車はその後も順調に進み、レース会場の吉野クライミングセンターに着いた。
本番レースでは早明浦ダム直下の広い河川敷駐車場に車を停めるが、自主開催レースではクライミングセンターの前の駐車場に車を停めることができる
我々が着くと既に加藤選手は待ちくたびれていた。
支部長は前日にトップガンの映画を見て感動してしまい、「トップガンになったような気分で飛ばしまくるぞ」と宣言していたけど、なぜか逆に尋常ではない安全運転に徹したため、到着がだいぶ遅くなってしまった。

本番レースではクライミングセンターの裏にあるグラウンドの芝生の上に大きなテントが張られ、その中にテーブルとイスが並べられて待機場所になるが、今日はクライミングエリアの前の屋根付きスペースを自由に使えるので、雨が降っても濡れずに準備できる。
ところが、雨が降るどころか、晴れ間が出ていて、どんどん暑くなってきた。大雨の中のレースを楽しみにしていきたのに、想定外だ。

(支部長)「めちゃ暑いやんか!」
(幹事長)「天気予報が大外れやなあ」


大雨でないとしても、小雨は確実と思っていたのに、まさかの炎天下になりそうだ。こうなると、何を着るかが大問題となる。
ウェアの選択は、どんな季節のマラソン大会であっても最も重大な問題だが、今日は大雨が前提だったので、半袖Tシャツしか考えてなかった。
ただ、前回の秋吉台カルストトレイルランで炎天下のレースを想定してなかったため大慌てした反省から、いかなる事態にも対応できるように準備はしてきた。
バッグの底の方から引っ張り出してきたのは北山林道駆け足大会でも着た薄手の袖無しのランニングシャツだ。
秘密兵器のメッシュシャツほどではないが、背中側が少しメッシュになっているし、袖も無いから、普通のTシャツに比べるとかなり涼しい

他のメンバーは半袖Tシャツが多いが、D木谷さんはアームカバーを付けているし、加藤選手は長袖を着ているし、のらちゃんにいたってはTシャツの下にアンダーシャツも着ている。

(幹事長)「それは暑いやろ?」
(のら)「だって日焼けしたくないんだも〜ん」


私は肩が剥き出しなので日焼けしそうだけど、雨を想定していたので日焼け止めクリームサングラスも持ってこなかった。
逆に、大雨に備えて嫌いなランニングキャップを持ってきたが、雨が降らないのなら不要だ。

(のら)「炎天下だから帽子は要るよ。日焼けするよ」
(幹事長)「嫌いなのよねえ」


筋肉の疲労防止のために、寒い時期ならタイツを履くところだが、今の時期にタイツを履くと暑すぎるので、脹脛サポーターを履いた。
でも、のらちゃんは今日もタイツを履いている。

(幹事長)「全身が暑そうやなあ」
(のら)「だから日焼けしたくないんだってば!」


D木谷さんもタイツを履いているが、なんと、短パンを履かずにタイツだけだ。我々はこれをスースースタイルと呼んでいる。
スースーは短パンを履かないので走りやすいが、ちょっとセクシー過ぎて、ちょっと恥ずかしい

(D木谷)「今日は山の中を走るので、観客の目を気にする必要がないから平気ですね」

支部長も似たような生地の短パンを履いているが、短パンだとあまりセクシーでなく、あまり恥ずかしくないから不思議だ。

自主開催なので給水所が無いため、水分の補給は自己責任で何とかしなければならない。
北山林道駆け足大会では距離が短いので飲料を持たずに走ったが、今日は21kmと長いので飲料は必携だ。
私と支部長はトレランリュックにボトルを入れて走るが、D木谷さんとのらちゃんは飲料ボトル用ホルダーを腰に巻いている
トレランリュックより飲料ボトル用ホルダーの方が軽量だが、私は腰に着ける飲料ボトル用ホルダーは揺れて気になるので、あんまり使いたくない。
でも、D木谷さんやのらちゃんは気にならないらしい。

一方、ピッグは何も持たずに走るという。

(幹事長)「舐めとんか?」
(ピッグ)「そんなに暑くないかなと思って」


炎天下のレースになったとしても、このコースは木陰が多いので飲料無しでも大丈夫と判断したようだ。

準備が終われば使用前の写真撮影だ。
子供用の遊具のようなものがあったので、そこに上がって写真を撮る。かなり高くて危険だったので、今日はジャンプは止めておいた。

高い所に登るおサル軍団


初参加のメンバーもいるので、スタート前にコースを周知する。コースはとてもシンプルで分かりやすい
スタート地点は会場のクライミングセンターの前だ。そこをスタートして、すぐ県道264号線を北に入る。
その後は吉野川の支流の汗見川という川に沿って県道264号線を延々と北上し10.5km上った冬の瀬というところで折り返して帰ってくる。

前半の10.5kmはひたすらずっと上り坂、後半は全て下り坂往復21kmだ。
ただ、汗見川は急流という訳でもないし、川に沿った坂はそんなに激しいアップダウンではない。北山林道駆け足大会は、絶壁のような急坂をよじ登り、よじ降りてくるという過酷なコースだが、それに比べたら大した勾配ではない
特に、前半はずうっと上り坂とは言え、そのうちの前半の前半である5.5km地点までは大した傾斜ではない。緩やかに上っているだけだ。5.5km地点から折り返し点までがきつい上り坂となっている
折り返してからは、後半の前半はきつい傾斜の下り坂なので、調子に乗って飛ばして下ってこられるが、後半の後半は緩やかに下っているだけだから、体感的にはほとんどフラットで、かなりきつい区間だ。

(加藤)「道を間違えそうな所は無いですか?」
(幹事長)「分かりやすいコースやから大丈夫だと思うよ」


前半の前半は汗見川の東岸(前半は川を遡って走るから川に向かって右側)を走り、5.5km走ったところにある1つ目の橋を渡って川の西岸(川に向かって左側)に渡り、9.5km走ったところにある2つ目の橋を渡って再び東岸に渡る
キーワードは、橋を渡る回数だ。橋を渡るのは2回だけなので、それさえ覚えておけばいい。
途中にいくつか分岐はあるが、明らかに脇道なので、ボウッと走っていても間違うことはない
と思ってたんだけど、一昨年の最初の自主開催レースでは、レース前に「橋を渡るのは2回だけやからね!」と強く念押ししていたのに、ピッグが間違って3つ目の橋を渡りかけていたので、慌てて呼び止めた。
この失態で気持ちが折れたピッグが、ダントツの最下位に転落したのは言うまでもない。
このように、分かりやすいコースであっても、ボウッと走っていると、どこで間違えるか分からないから、注意しながら走らなければならないのだ。

初参加の加藤選手は走っていてしんどくなったら、5km地点で折り返し、10kmレースにするという。

(加藤)「10kmの部なら優勝できますかね?」
(幹事長)「他にいないから優勝間違いなしやな」


1つ目の橋を渡ったところが5.5km地点だから、橋の少し手前で折り返せば片道5km、往復10kmのコースなる

(D木谷)「私も足の具合が悪くなったら10kmの部にしようかな」
(幹事長)「何をたわごとを」


D木谷さんは1週間前に石鎚山の岩場で転倒した際に足を痛打して、走ると痛いんだそうだ。
でも、ウルトラD木谷さんの事だから大丈夫だろう。


〜 スタート前 〜


スタートする前に本日の目標を立てなければならない。
もちろん、どんな時でも、どんなレースでも、常に大会自己ベストを狙うのが良い子のランナーとしてあるべき姿だ
マラソンはコースや季節によってタイムが大きく変わってくるため、違うレースのタイムを比較するのは不適当なので、どんなレースに出ても、とりあえず大会自己ベストを狙うのが良い子の正しい道だ。
特に、このレースは坂が厳しいから、他のレースとの比較は意味が無い。

なので、目安はあくまでも過去のタイムだ
この大会は、トンでもなく暑い時季の山岳マラソンなので2時間を切るのは不可能だろうと思っていたけど、2013年にはスタート直前にスコールが降り、高気温が少し和らいだおかげで、2時間を切ることができた
これがこの大会の唯一まともなタイムなので、目標はその時のタイムだ。
汗見川マラソンとしてはまともなタイムではあるが、なんとか2時間を切った程度なので、他のマラソン大会のタイムに比べたら惨敗レベルのタイムだ。
なので、ハードルは高くないように思えるが、今日のような炎天下のレースになれば、このコースで2時間を切るのが限りなく不可能なのは認識している。

今日の戦略は、前半からペースを抑えるなんて事はせず、自然体で思うままに走っていくことにした。
なぜなら、老化のせいか、最近はどのレースでもタイムがものすごく遅くなっているので、前半から抑えて走ったりしたら、とんでもない大惨敗になってしまうからだ。
取りあえず、前半は頑張って走ってみて、そのまま行ければラッキーだし、力尽きても後悔はない。
もちろん、前半に無理して飛ばして貯金したって、無理が祟って終盤に失速したら元も子もないって事は分かっている。過去、何百回も同じ失敗を繰り返してきたからだ。
ただ、このコースは前半は登りで、後半は下るだけだ。なので勝負は前半だ。後半は惰性で降りてこられるから大きな失速は無いだろう。

(幹事長)「なーんて言いながら、後半の後半は、ほとんどフラットやから、失速する可能性はあるんだけどな」
(支部長)「フラットと言うか、むしろ上り坂に思えてしまうよ」


そもそも、正式な大会でもないのに良いタイムを出すのは難しい
上にも書いたように、ゾウさんやのらちゃんら女子部員は精神力が強いから、練習の時でも本番同様のスピードで走ることができる。
しかし私なんかは練習になると、どんなに気合を入れようとしてみても、本番のような気持ちの高まりを得る事はできないため、アドレナリンの分泌が皆無になる
今日はみんなで走るので、単独での練習よりは気合も入るだろうと思うが、そうは言っても正式な本番とは比べ物にならないスローペースになるのは目に見えている。

それに相変わらず練習不足だ。1月頃はまだ月間走行距離200kmを達成していたが、ここんとこやたら登山ばかりにうつつを抜かしていて、月間走行距離は100kmを超えるのが精一杯だ。
相変わらず月間走行距離200kmを維持している支部長と差がつくのは当然だ。

てなわけで、自己ベストは無理だろうから、一応、目標として2時間切りを目指すことにした。
去年も一昨年も同じような目標を掲げて走ったが、雨で暑くなかったにもかかわらず、2時間は切れなかったから、今年も簡単ではないだろう。


〜 スタート 〜


主催者の幹事長からありがたいお言葉が発せられ、開会式が10秒ほどで終わり、支部長のカウントダウンにより9時50分に一斉にスタートとなった。
タイムはもちろん自己計測だ。自主開催なので当たり前だ。

本番の大会なら、周囲のランナーがいきなり最初から一斉にガンガン飛ばすため、連られて一緒にハイペースで走り出してしまう。
このコースは前半は坂道をひたすら登る過酷なレースなので、ペース配分を考えて無理せずにゆっくりと走り出すランナーが多いと思われがちだが、そんなことはない。
こんな過酷なレースに出場する選手はレベルが高くて、最近のメジャーなマラソン大会に大挙して出てくるような初心者はあまりいないから、スタートの合図と共に、みんなすごい勢いで一斉に駆け出す
彼らがペース配分を考えていないのではなく、私のレベルからすればレベルが高すぎて速すぎるという訳だ。

しかし、今日は参加メンバー6人の自主開催だから、そんなにハイペースにはならない。取りあえずは何も考えずに自然体で走る
大勢のランナーと競いながら真剣勝負する正式大会には程遠いが、みんなと走るので、単独で練習している時に比べたら、だいぶ気合が入り、清々しい気分でしっかり走れている。競い合う感じが心地いい。
天気は相変わらず晴れだ。もう雨を期待できるような状況ではない。
こうなると炎天下のレースを楽しもう。暑さに弱い支部長に勝てるチャンスだ。

前半は上り坂とは言え、最初の5kmくらいは大した上り坂ではないので、スタート直後の元気なうちは、あんまり苦にならない。
調子に乗って走っていると、他のメンバーの足音が聞こえない。振り向いて確認すると、いつもならみんなすぐ後ろをピタッと付いてくるのに、かなり離れている。
どうしたんだろう。みんな何を自重しているんだろう。それとも私が絶好調なのだろうか。
いずれにしても、かなり差が開いているので、このまま一気に引き離して圧勝できれば気持ち良いぞ。

雲が無くて日射しが照りつけてくるが、このコースは木陰も多い。木陰に入ったとたん、一気に暑さが和らぐので、木陰を求めて右へ左へ進路を変えながら走っていく。
道は基本的には上り基調とは言え、大した傾斜ではなく、フラットな区間も多い。みんなをだいぶリードしているため、やる気がみなぎり、あまり暑さは気にならない。

なーんて思ってるんだけど、なかなか1つ目の橋が現れない。時計を見ながら、おかしいなあと思っていると、ようやく5.5km地点にある1つ目の橋が現れた。
そこで改めて時計を見て驚いた。去年よりだいぶ遅い。みんなをリードしているから、調子よく走れていたと思っていたのに、実はかなりスローペースだったのだ。もうガッカリだ。
つまり、今日は全員、かなりスローペースになってるって事だ。やはり暑さのせいだろうか。

がっかりしていると、後ろから足音が近づいてきた。恐れていた通り、ここでようやく支部長が追いついてきたのだ。
あっさり追い抜かれる訳にはいかないので頑張って着いていこうとしたが、ジワジワと離されていく。着いていくのがしんどくなってきたので、そのうち支部長が歩き出すのを期待して、とりあえず着いていくのは諦めた。

1つ目の橋を渡って前半の後半に入ると、それまではちらほら田んぼもある風景だったのが、山深くなってきて、だんだん坂が厳しくなっていく。全体的に傾斜がきつくなると言うより、所々に急な坂が出てくるようになる
ただ、北山林道駆け足大会のような激坂ではないし、龍馬脱藩マラソンのように延々と厳しい坂が続くわけでもない
勾配が10%以上の急坂が何度も出てくるが、そういう急坂の区間がずっと続くわけではないから、 なんとか乗り切れる。

しばらく走っていると、再び後ろから足音が近づいてきた。今度はピッグだった。ピッグにも着いていこうとしたが、すぐに力尽きて諦めた。
さらにしばらく走っていると、再び後ろから足音が近づいてきた。今度はのらちゃんだった。のらちゃんにも着いていこうとしたが、やはり力尽きて諦めた。
結局、調子が良いと勘違いして走っていたが、いつものように次々とみんなに追い抜かれてしまった。
ただし、D木谷さんだけは迫ってこない。足を痛めて走りにくいというのは本当だったようだ。もしかしたら加藤選手と一緒に5kmで折り返してしまったのかもしれない。

3人には次々と追い抜かれたとは言え、それほどスピードの差は大きくない。くねくね曲がりくねった道になってきたので、3人の後ろ姿が見え隠れする
すぐ前ののらちゃんとの差は2〜30m、のらちゃんとピッグの差も2〜30m、さらにピッグと支部長の差も2〜30mと言ったところで、4人が等間隔で走っている状態だ。その差は広がりもせず狭まりもしない。
僅かな差なので、頑張れば追いつけそうだが、なかなか差は縮まらない。他のメンバーも同じ事を考えてるだろう。

1つ目の橋から折り返し点までの前半の後半は、厳しい坂の連続っていうイメージを持っていたが、今日はそれほどでもない。前半の前半とあまり変わらない緩やかな坂に思えてくる
以前はかなり坂が厳しいレースと思っていたが、北山林道駆け足大会や酸欠マラソンや脱藩マラソンのような強烈な激坂のレースに慣れてきたので、このレースの坂は平気になってきたのだろう。
少し喉が渇いてきたので、早目に走りながらスポーツドリンクを飲む

すると、なんと突然、支部長が歩き出した。よっしゃ、期待通りだ。支部長が歩き出したので、すぐ後ろを走っていたピッグがどんどん近づいていく

(幹事長)「行け、ピッグ、一気に抜いてしまえ!支部長の気持ちをへし折るのだ!」

などと心の中で叫んだのだが、あと一歩というところで支部長が再び走り出した
私も含めて他のメンバーは、一度歩くと、再び走り出してもペースは上がらない。ズルズルとペースは遅くなっていく。
ところが支部長は、ちょっと坂が続くとすぐに歩き出すが、再び走り出すと一気にトップスピードに戻る
ペースを落として走る事ができないのか、しなくても平気なのか、良く分からないが、トップスピードか歩くかの両極端な走りをする。
なので、ピッグがあと一歩で追いつけそうだったのに、走り出すと再び一気に差を広げた

ただ、しばらく走って再び坂がきつくなると、またまたあっさりと歩き出す。
後ろからピッグが迫ってきている事に気づいているのだろうか。それとも、そんな事は気にしてないのだろうか。
今度もピッグが追い付きそうになると、すぐに再びトップスピードで走り出して差を広げる。

そんな事を何度か繰り返していたら、今度は突然、ピッグが歩き出した
支部長とのデッドヒートに疲れ果てたのだろうか。追い抜けると思ったのに何度も跳ね返されて心が折れたのだろう。
歩いてもすぐに走り出す支部長と違って、ピッグは歩き出すとなかなか走り出さない。あっという間にのらちゃんに抜かれ、私も一気に追い付いた。

(幹事長)「どしたん?」
(ピッグ)「休んでます」


支部長と違って、私と同様、一度歩き出すと、もう立ち直れないピッグなので、今日は復活は無理だろう。

目の前ののらちゃんも後ろから見てると足取りはおぼつかない。あれなら少し頑張ったら追いつけそうだが、自分の足取りも重いようで、なかなか差は縮まらない。
でも、あの足取りでは、たぶんのらちゃんもそのうち力尽きそうなので、それを待つことにしよう。
なーんて思ってたら、案の定、のらちゃんが突然歩き出した。かなり坂の傾斜がきつくなった所だ。
これは追いつけるチャンスなので頑張ってペースを落とさずに走り続ける。ただ、あと少しってところで彼女が後ろを振り向き、私の姿を見ると慌てて走り出した
でも、この調子なら、そのうち追いつけそうだ。

9.5km地点にある2つ目の橋を渡って再び川に向かって右側に移ると、折り返し点は近い
ここで時計を見て5.5km地点からのペースを確認すると、やはり去年に比べてかなり遅い。坂がそれほど厳しく感じないな、なんて思ったのは、単にペースが遅いからだったのか。
みんな似たようなペースなので、ついつい油断してしまうが、みんな揃って惨敗ペースだ。やはり暑いからだろうか。

折り返し点の直前になって、ようやく折り返してきた支部長とすれ違う
続いてのらちゃんも折り返してきた。表情を見ると、明らかに疲れ果てている。
私もすぐに折り返し点冬の瀬に到着したので、スポーツドリンクを飲んで、すぐさま折り返す。
折り返し点のでタイムは1時間5分をオーバーしている。元気な時ならともかく、この状態では2時間を切るのは難しいだろう。

折り返して驚いた。5km地点で折り返して戻ったのかと思っていたD木谷さんが、すぐ後ろを走って来るではないか。いつの間に!?

(幹事長)「足は大丈夫なんですか?」
(D木谷)「なんとか走れてますね」


姿形も見えなかったのに、一気に追い付いてきたって事は、かなりペースが速いって事だ。このままでは追い抜かれてしまう。頑張らなければならない。
しばらく走ると、ピッグとすれ違った。既にかなり差が付いている。だいぶ歩いたようだ。しかも、あんまり頑張って走っているようには見えない。

(幹事長)「大丈夫?」
(ピッグ)「まあ、なんとか」


もう完走だけを目標にしているようだ。

後半の前半はかなり急な下り坂だ。急とは言っても、ブレーキを掛けなければ転がり落ちそうになる北山林道駆け足大会や酸欠マラソンほどの急坂ではなく、ちょうど気持ちよく走れる程度の下り坂なので、足を痛める不安もなく駆け下りて行ける。
とは言え、なんとなく足が重い。もっとガンガン駆け下りたいんだけど、足が回らず、なかなか前に出ない。早くも疲れが出てきたんだろうか。

折り返し点での支部長との差は僅かだったが、下り坂に滅法強い支部長は一気にペースアップしたようで、あっという間に後ろ姿が見えなくなってしまった。もう追いつくのは至難の業だ。
逆に後ろからD木谷さんが迫ってくるのが恐怖だ。なんとか必死で逃げるが、D木谷さんはまだまだ元気が残ってるようで、ジワジワと足音が近づいてくる。そして、遂に追い付かれてしまった。

(D木谷)「やっと追い付けましたよ」
(幹事長)「すごいですねえ」


感心する間もなく、そのまま淡々と追い抜いていってしまった
さらに私のちょっと前を走っているのらちゃんにも追い付き、一声かけたかと思うと、あっさりと追い抜いて着実に前方に去ってしまった。

こうなると勝負はのらちゃんとの一騎打ちだ。相変わらず暑いが、そんな事は気にしていられない。
前半の上りでは足取りがおぼつかないように見えたのらちゃんだが、下り坂になったからか割としっかりした足取りで走っていく。
そう簡単には追いつけそうにない。それどころか、なんとなく少しずつ差が開いていく。頑張って走っているつもりなのに足は重くなっていき、徐々にペースダウンしているのだろうか。

なーんて思ってたら、再びのらちゃんが歩き出した。足取りがしっかりしてきたと思っていたが、彼女もいっぱいいっぱいだったのか。
これは追いつけるチャンスなのでペースを落とさずに走り続ける。ただ、あと少しってところで彼女が走り出す
支部長ほどではないけど、走り出すとそこそこのペースで走るので、なかなか追いつけない。て言うか、むしろ少しずつ差が開いていく。彼女のペースは大して速そうには見えないので、私のペースがものすごく遅いのだろう
ただ、彼女も力尽きかけているようなので、このまま粘って走って行き、再び歩き出した時に追い付こう。

彼女との差が縮まりもせず広がりもせず同じようなペースで走り続けていると、後半の前半の急坂区間の終わりを告げる1つ目の橋が見えてきた。残りは後半の後半の5.5kmだ。
ペースを計算すると、折返し点からのペースは、下り坂だったにもかかわらず1km6分近くかかっている。緩やかな上りだった前半の前半よりも遅い
ものすごく遅くなっているので、もう今さらタイムを気にしても仕方ない。のらちゃんとの勝負に徹するのみだ

後半の後半は、一応、下り坂ではあるが、あまりにも緩やかなので、下っているのを全く感じなくなる。疲れて足が動かなくなってくるので、むしろ、なんとなく逆に上っているようにすら感じられてしまう
て言うか、明らかに上り坂になってるところもある。足が疲れて前に出ない
下流に来ると川の曲がりが緩やかになってきて、だいぶ先まで見通せるようになる。しかし、のらちゃんの前を走っているはずのD木谷さんの姿も支部長の姿も見えない。だいぶ差を付けられてしまったようだ。

のらちゃんとの差は縮まりそうで、なかなか縮まらない。彼女も撃沈寸前で、時々歩いてるんだけど、ピッグのように歩き続ける訳ではなく、すぐにまた走り出すので、なかなか追いつけない。
その後、またまた歩いているなと思ったら、なんと立ち止まり、山から流れ出してきている水を手ですくって顔を洗っているではないか。もしかしたら湧き水を飲んでいるのだろうか。
もう撃沈寸前だ。これは大きなチャンスだと思って頑張って走り、追いつきそうになったが、あと一歩ってところで再び彼女は走り出す。
そこまで弱ってるんだから、走り出したってすぐに追いつけそうなものだが、自分も超スローペースになっているようで、全然追いつけない。

死闘を繰り広げていると、遂にゴールのクライミングセンターの屋根が見えてきた。
最後に全力でスパートして追いつきたいところだが、全然力が出ない。もう無理だろうか。


〜 ゴール 〜


あと少しの差を最後まで縮めることができずに、そのままのらちゃんに続いてゴールした
結局、前半の7〜8km地点あたりで彼女に追い抜かれてから、ずっと2〜30mの差を保ったまま走り続けた
どこかで頑張って追いつけていれば、彼女も心が折れたかもしれないが、なかなか追いつけなかったなあ。

ゴールでは先にゴールしたD木谷さんや加藤さんが写真を撮ってくれているので、作り笑顔で元気そうにゴールした。
加藤選手はやはり5km地点で引き返してきたようだ。

(加藤)「折り返してきたトップランナーに追いつかれやしないかとヒヤヒヤしましたよ」

結局、タイムは驚異的な大惨敗だった。目標の2時間が切れなかっただけでなく、ダントツで過去最悪のタイムだった
一昨年や去年の自主開催レースのタイムと比べても、ダントツの過去最悪タイムだ。一昨年や去年は雨模様だったが、今年は炎天下だったのが原因だろうか
最後までのらちゃんを追って力を抜かなかったし、みんなとの差も小さかったから、もっと良いタイムだと思っていたが、みんな遅かったって訳だ。
トップでゴールした支部長も2時間4分台だったから、かなり遅い。

しばらく待っていると、ピッグがマイペースで帰ってきた。

(幹事長)「だいぶ歩いたんかな?」
(ピッグ)「歩き始めたら、すごく楽で気持ちよかったから、しばらく歩き続けてしまいましたね」


ピッグは飲み物を持って行かなかったのが敗因だと言う。

(ピッグ)「今日は飲み物は必携でしたね」
(幹事長)「僕は持って行ったけど、そんなに飲まなかったけどなあ」
(支部長)「私も少ししか飲まなかったなあ」


少ししか飲まなかったけど、その少しが大きな意味を持つのかもしれない。

(のら)「私は500mlのペットボトルが空になって困ったよ」
(幹事長)「それで湧き水をすくってたのか!」


思った以上に暑さでみんなやられたようだ。


〜 川遊び 〜


一休みしたところで、いよいよ、このレースの一番の楽しみである冷たい汗見川での川遊びだ。
かつて上りの片道10kmコースしか無かった時も、ゴール後に山奥の川に飛び込んでいたが、往復のハーフマラソンになってからも、会場近くで川に飛び込むことができる。

(のら)「早く川に行こうよ」
(幹事長)「今日は暑いから、走っている時も川遊びの事ばかり考えて走ってたよ」


足を引きずって川に降りていき、そうっと足を入れてみる。

(のら)「きゃあああ〜!冷たい!!」
(D木谷)「これは冷たい!」


ものすごく冷たい。膝から下を浸けてるだけでも足が痛くなる。それでも少しづつ体を入れていくと、なんとか腰まで入る事ができた。
さらにジワジワと水に入り、最後は肩まで一気に浸かると、一瞬で体が凍りつく。心臓が止まりそうだ。慌てて一度出ると、体中が火照ったようになる。
D木谷さんは早くも冷たさに慣れたようで、なんと対岸まで泳いで行ってしまった。
支部長を見ると、なんとゴーグルと耳栓まで付けている

(幹事長)「たかが川遊びなのに、そこまで準備するか?」
(支部長)「真剣に泳ぐで!」


支部長は大きく息を吸い込んだかと思うと、対岸を目指してガンガン泳いでいった。
私も頭から潜って少しだけ泳いだが、足が攣りそうになった。川は浅いが、手で支えられるほど浅くはないから、足が攣ると溺れてしまうので、必死でもがく。

水に浸かっていると体は冷え切るが、水から出ると日差しが強いのですぐに体が熱くなる。
しばらく遊んでいたが、モンベルのお風呂の時間が近づいてきたので、水から出てヨタヨタと車に戻る。


〜 ひばり食堂 〜


川遊びをした後は、3年前にオープンした近くのモンベルのアウトドアヴィレッジ本山に行ってお風呂に入る。
今年もお風呂ではついつい居眠りしてしまい、何回か溺れかけてしまった。
気が付くと誰もいなくなっていたので、慌ててお風呂から出る。

お風呂の後は昼食だ。去年に続いて大豊にある有名なひばり食堂へ行く。15:30営業終了なので、まだ少し時間はある。
と思ったら、

(加藤)「あれ?14:30営業終了って書いてますよ」

なんと、ネットで調べたら、いつの間にか14:30営業終了になったらしい。14時ちょっと前なので、急げば滑り込める、って事で慌てて出発した。
モンベルからひばり食堂までは10kmちょっとなので、なんとか14時過ぎには到着してホッとしたが、店先には16:30までやってるみたいな事を書いてあった。どっちが本当だろう?

14時過ぎだと言うのに、休日だからか店は混雑してて、しばらく外で待たされた。
ようやく店内に案内され、さっそく注文する。

(幹事長)「もちろんカツ丼や」
(支部長)「もちろんカツ丼や」
(D木谷)「もちろんカツ丼ですね」
(のら)「私はミニカツ丼ね」


カツ丼の並盛は、普通の店の2倍はあるので、女性には多すぎる。そのためミニカツ丼ってのがあり、女性はそれを頼む人が多い。ミニカツ丼と言っても、普通の店の並盛と同じくらいはある
ここでピッグが衝撃的な注文をぶちかました

(ピッグ)「うな丼」
(幹事長)「えっ!?今、何て言ったん?」
(ピッグ)「ですから、うな丼」
(幹事長)「ここをどこやと思ってるんや?巨大なカツ丼で有名なひばり食堂やぞ」
(ピッグ)「よそでは、この値段でうな丼は食べられませんから」


うな丼は1100円だ。カツ丼並盛900円よりは少し高いが、うな丼としては安い値段だ。

(支部長)「普通の店でうな丼なんか頼んだら2〜3千円は取られるからなあ」
(ピッグ)「うな丼なんて滅多に食べられませんからね」


なかなか賢い選択だ。
すると加藤選手がさらに超衝撃的な注文を言い放った

(加藤)「おまかせうどん」
(幹事長)「えええええーっ!?今、何を言うたん?」
(加藤)「ですから、おまかせうどんって」


この注文はダブルで衝撃的だ。
まず、加藤選手は当初は今日のレースに参加する予定ではなかったが、レース後に大きなカツ丼が有名なひばり食堂に行く事を聞きつけて急遽、参加を決めたものだ。
それなのに、カツ丼ではないものを注文した。ピッグは去年、カツ丼を食べた事があるから理解できるが、初めてひばり食堂を訪れた加藤選手の行動は全く理解不能だ。

さらに、香川県外でうどんを注文するというのも暴挙だ。香川県内ならマズいうどんに出くわす可能性は小さい。しかし、香川県外では、ほぼ100%の確率でクソマズいうどんしか出てこない。
もしかしたら、愛媛県生まれの加藤選手は、うどんの美味しさを理解できてないのかもしれない。
だが、そうだとしても、なんでわざわざひばり食堂に来てうどんを注文するのだろうか。全く理解不能だ。
出てきたうどんを見てみたが、量は普通だし、ことさら変わったところも無い。
一方、ピッグが頼んだうな丼は、こちらも量は普通だった。でも、普通の量のうな丼が1100円なので、十分に許せる。

ひばり食堂のメニューはカツ丼だけでなく、いのしし焼肉丼とか、いのしし肉カレーとか、しゅわんぽう丼とか気になるものも多い。
なので、それらも食べてみたい気はするんだけど、しょっちゅう来るのなら色んなメニューを食べてみたいが、年に一度となると、やはりカツ丼を食べたい。カツ丼は量が多いだけでなく、味も美味しいのだ。


〜 JR駅舎探訪 〜


お腹がいっぱいになったので、後は帰るだけだ。
と思ったら、加藤選手が妙な提案をしてきた。

(加藤)「すぐ近くのJR大杉駅に行ってみたいと思うんですが、幹事長、時間はありますか?」
(幹事長)「時間はいくらでもあるけど、そなな所には行きたくはない」
(支部長)「ほな、行こうか」
(幹事長)「なんでやねん!」


仕方なく大杉駅に行ってみることとなった。500mほどの距離だったので、すぐに着いた。
大杉駅の駅舎三角形の建物が2つ並んだ可愛い形をしていた。ま、しかし、それほど大したものではない。

(加藤)「じゃあ次は北川駅に行きましょう」
(幹事長)「なんでやねーん!」


北川駅はさらに7kmほど南にある。
行って見て驚いた。なんと北川駅の駅舎高い鉄橋の上にあるのだ。
線路は山の中腹のトンネルから出てきて、穴内川の上に架けられた大きな鉄橋を渡るんだけど、ちょうど川の真ん中の鉄橋の上に駅舎があるのだ。
駅舎と言っても、小さな屋根が片隅にあるだけの無人のホームだが、なんでこんな場所に作られたんだろう。他に土地が無いのだろうか。
道路からホームに上がって行くには、歩行者用の長い鉄橋や階段を迷路のように歩かなければたどり着かない。ややこしい大変な道のりだ。誰がこの駅舎を利用するのだろうか。
疑問が噴出する駅舎だが、ホームに上がると穴内川が作った渓谷の絶景が楽しめる。しかも、下はグレーチングで川底が透けて見えるので、かなり怖い

(幹事長)「こんなすごい駅舎が四国にあったなんて、恥ずかしながら今まで知りませんでした。本日はご案内頂いて本当にありがとうございました」
(加藤)「態度の豹変ぶりに戸惑いますが」


この歳になっても、まだまだ知らない事があるんだなあ。


〜おしまい〜




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