第13回 徳島マラソン
2023年3月19日、第13回とくしまマラソンが開催された。2019年の第12回大会以来、実に4年ぶりの開催だ。
徳島マラソンには青森への単身赴任期間も含めて、2008年の第1回大会から欠かさず出場してきた。第1回大会から皆勤を続けているのは、この徳島マラソンと1月の満濃公園リレーマラソンだけだ。
これは、徳島マラソンが近場で開催される貴重なフルマラソンだからだ。
もっと近場の小豆島では、太古の昔から瀬戸内海タートルフルマラソンが開催されており、徳島マラソンができる前までは、貴重なフルマラソン大会として参加していた。
しかし、瀬戸内海タートルマラソンは坂が多いと言うか、ほとんど坂ばかりの非常に厳しいコースなので、徳島マラソンができてからは、基本的にハーフマラソンにばかり出ている。
一方、徳島マラソンは坂がほとんど無いフラットなコースなので、とても走りやすい。
今や日本中、至る所でマラソン大会が行われているが、フルマラソンでフラットなコースってのは意外に少ない。なので、フラットなコースの徳島マラソンは魅力であり、好記録が期待できる大変貴重なレースとして人気が高いレースなのだ。
そのため、徳島マラソンのエントリーに当たっては、激烈なエントリー競争を繰り広げてきた。
(ピッグ)「あの熾烈なエントリー競争を13年間も勝ち抜いてきたって、すごいですね」
(幹事長)「すごい執念やろ?」
そして、本来の第13回目となる2020年大会も無事にエントリーを果たし、近年の体たらくを打ち破るべくリベンジに燃えていた。
また、のらちゃんもフルマラソンのデビュー戦だったので、一緒にずうっとトレーニングに励んできた。
それなのに、ああ、それなのに、なんと2020年は新型コロナウイルス騒ぎのせいで大会が中止になってしまった。
事の発端は2020年3月1日の東京マラソンの一般ランナー参加中止だ。これに続き、3月8日の第9回名古屋ウィメンズマラソンも一般市民ランナーの参加が中止になった。
その後、状況はますます悪くなり、遂に3月22日の徳島マラソンは全面的に中止になり、その後も全国的にマラソン大会が次々と中止になっていった。
これらのマラソン大会中止騒ぎってのは、どう考えても、あまりにも非科学的で情緒的でヒステリックな対応だ。
(ピッグ)「この説明は今回で最後ですよね」
(カッパ)「さあ、それはどうかな、明智君」
素人が見たら、マラソン大会ではランナーが密集しているように見えるかもしれない。しかし、毎日乗っている満員電車に比べたら、はるかにスカスカだ。そうでないとぶつかって走れない。
しかも密室の満員電車に比べて、屋外のマラソン大会はウイルスが蔓延できる環境ではない。新型コロナウイルスは感染した人の咳やくしゃみの飛沫による飛沫感染でうつっていくが、飛沫感染は屋外で走っている時に感染なんかしない。
多くの国民が新型コロナウイルスを非常に恐ろしいもののように勘違いしていたが、決して、エボラ出血熱のように極めて致死率の高いウイルスでもなければ、風疹のような感染力の強いウイルスでもない。
それなのに、その後も続々とマラソン大会の中止が発表になり、マラソン大会もサイクリングイベントも全滅してしまった。
この暗黒の事態を打開するため、ピッグの提案により、中止になったイベントをペンギンズで自主開催していくことになった。マラソン大会では5月の小豆島オリーブマラソンから自主開催を始め、全てのマラソン大会を自主開催した。
これらは例外なく、とても楽しくて大成功だったが、そうは言っても正式な大会ほどのやる気と達成感は得られないため、願わくは、コロナのバカ騒ぎは2020年で収束して、2021年はマラソン大会が復活して欲しかった。
ところが、2021年になってもコロナのバカ騒ぎが終わらず、全てのマラソン大会の中止が続いたため、丸亀マラソンから始まって全てのマラソン大会の自主開催を続けた。
しかし、バカみたいなコロナ騒ぎもいよいよ収まり、2022年2月の丸亀マラソンから正式なマラソン大会が復活する予定だった。我々はちゃんとエントリーし、一気に高騰した参加費だって払い込んでいた。
ところが、なんと、丸亀マラソンは直前になってドタキャンされてしまった。
さらに3月の徳島マラソンも、ちゃんとエントリーし、高額な参加費も払い込んでいたのに、やはり直前になってドタキャンされてしまった。
ただし、全国的にコロナのバカ騒ぎによるマラソン大会中止が全面的に3年目に突入した訳では決してない。東京マラソンは3月6日に開催されたし、名古屋ウィメンズマラソンも3月13日に開催され、ゾウさんが出場して完走した。
なぜマラソン大会が復活し始めたのかと言えば、コロナの感染者数が減ったからではない。相変わらず感染者数は高止まりしている。
しかし、コロナのバカ騒ぎは収まりつつある。国民の多くが理解するまで2年もかかったが、ようやくコロナなんてただの風邪に過ぎないっていう理解が進んできたのだ。
ところが、人口が密集している大都市の東京や名古屋で大規模マラソンが開催されたのに、なぜか田舎で沿道の観客だってスカスカの徳島マラソンは中止になった。
その流れを受けて、四国で開催されるマラソン大会はことごとく3年連続の中止が続いた。
しかし、遂に2022年10月、高知県梼原町において四国のマラソン大会として3年ぶりに龍馬脱藩マラソンが復活した!
それに続いて同じく10月に庵治マラソンも3年ぶりに復活し、さらに今年1月の満濃公園リレーマラソンや2月の丸亀マラソンや坂出天狗マラソンも3年ぶりに復活した。
そして、この徳島マラソンも4年ぶりに復活となったのだ。まことに、めでたいめでたい。
〜 エントリー 〜
かつて徳島マラソンは、レースの半年近く前に戦いが始まっていた。半年近く前に受付が開始になるんだけど、そのエントリーが大変だったのだ。しかし2016年から定員が大幅に増強されたおかげで、楽勝になった。
それまでも少しづつ定員は増やされてたんだけど、昨今の異常なまでのマラソンブームのせいで、申込者がそれを上回る勢いで激増してたもんだから、一向にエントリー競走の激しさは解消されず、申し込みは混乱を極めていた。
申し込み受付は夜の10時にスタートするんだけど、10時前からパソコンの前にスタンバイして、10時になった瞬間にパソコンのキーを叩いてランネットに入らなければならなかった。
キーを叩くのが一瞬でも遅れると、あっという間に長蛇の列ができてしまい、何十分も待たされることになり、待っている間に定員オーバーで受付終了になったりするので、10時になった瞬間にキーを叩かなければならなかった。
ところが2016年に、それまでの総定員10000人が一気に15000人に増員された。
もちろん、定員が1.5倍に増えたって、希望者が何万人もいたら焼け石に水で、激しい競争は緩和されない。東京マラソンなんか定員が3万人もあるけど、何十万人も希望者がいるから競争率は10倍を超えている。
徳島マラソンも、それまでの熾烈なエントリー競争を考えたら、定員が1.5倍に増えたくらいでは厳しい競争が緩和されるとも思えなかったのだが、蓋を開けてみると、状況は激変した。
どうやら、それまで定員10000人の枠を目指して熾烈なエントリー競争を繰り広げていたのは10000人ちょっとだったらしく、その人たちが全員エントリーできてしまえば、後はのんびりした状況になってしまい、翌日でも余裕でエントリーできるような状況になったのだ。
それが分かったので、もうそんなに目をつり上げて必死にエントリーする必要も無いとは思われたが、これまで数々の油断による失敗を繰り広げてきた我々なので、その後も一応は時計を睨みながら、受付開始と同時にパソコンのキーを叩いてエントリーしてきた。
それで最近は何の問題も無く全員あっさりとエントリーすることができていた。
その後、上にも書いたように2020年はコロナ騒ぎで中止になったが、2021年は開催すると発表されたので、私のほか支部長、D木谷さん、のらちゃん、田村選手がエントリーした。
(幹事長)「君はエントリーしなかったねえ」
(ピッグ)「ちょっと腹立って」
2020年は直前になって中止になって大迷惑だったのに、高額な参加費はびた一文返金されず、後始末の対応も心がこもっていない事務的なものだったため、我々全員が怒り狂っていたのだが、それでも大半のメンバーは性懲りもなくエントリーした。なんだかんだ言っても貴重なフルマラソン大会だからだ。
しかし、感情を抑えきれないピッグはエントリーしなかった。
そして、結局、2021年も中止になった。
(ピッグ)「思った通りですね。徳島マラソンを信じたらダメですよ、ははは」
(幹事長)「君は中止になって喜んでおるのか?」
さらに翌年の2022年も今度こそ開催すると発表されたので、私のほか支部長、ピッグ、ゾウさん、D木谷さん、のらちゃん、倉石選手がエントリーし、一気に高騰した参加費だって払い込んでいた。
(幹事長)「君もエントリーしたな」
(ピッグ)「さすがに今回は開催するでしょ」
ところが、ピッグの予想を裏切り、結局、2022年も直前になってドタキャンされてしまった。
(ピッグ)「むちゃくちゃ腹立ちますね!」
(幹事長)「私らは、もう慣れたよ」
徳島マラソンが不誠実だって事は分かってしまったので、我々には怒りのエネルギーも無くなってしまった。
2023年も開催するとは発表されたが、3回連続で裏切られ続けているのだから、不誠実極まりない徳島マラソンを素朴に信じてはいけない。
また、第1回から12回連続で皆勤している私としては、かなり飽きてきた。長く出場を続けているから飽きてきた訳ではない。
満濃公園リレーマラソンも第1回から出場を続けているが、決して飽きる事はない。丸亀マラソンもペースランナーを務めたとき以外は第1回から出場を続けているが、飽きるどころか、翌年のレースが楽しみで仕方ない。
(ピッグ)「そうなんですか!」
(幹事長)「いつも惨敗しているから、早くリベンジしたくて」
徳島マラソンに飽きてきたのは、堤防の上を延々と走らされるつまんないコースのせいだ。支部長もそれほど熱心ではないから、みんなでボイコットしようかという雰囲気もあった。
ところが、3年前の2020年大会でフルマラソンに初挑戦するはずだったのらちゃんが早くフルマラソンを走りたいと訴えたので、女王様の言う事には逆らえないと言う事で、みんなでエントリーした。
実は、その時点でのらちゃんは既に神戸マラソンや名古屋ウィメンズマラソンにもエントリーしていたが、まだまだコロナ騒ぎによる中止が続いていたので、どの大会が開催されるか分からなかったから、可能な限りエントリーしていたのだ。
(幹事長)「君はまたエントリーしなかったねえ」
(ピッグ)「もう許し難いほど腹立って」
今年の定員は以前の15000人から半減の7500人となった。こうなると競争率がどうなるのか見当がつきにくい。
かつて定員が10000人だった頃の激しいエントリー競争が再現する可能性も否定はできないが、コロナ騒ぎで3年間も中止が続いた影響で、従来は大人気だった大阪マラソンを始めとして、全国のほぼ全てのマラソン大会が定員割れになっている。
なので、たぶん大丈夫だろうとは思ったが、一応、エントリー開始と同時にすぐさまエントリーした。
でも、結果的には徳島マラソンも定員割れになってエントリー期間を延長したりしていた。ピッグのように怒り狂ったランナーが多いのだろう。当たり前だ。
て事で、4年ぶりに開催された今年の徳島マラソンには私のほか支部長、ゾウさん、D木谷さん、のらちゃん、加藤選手、長谷選手、倉石選手、木村選手がエントリーした。
〜 フラットなコースなのに惨敗続き 〜
定員増によりエントリー競争が緩和されたとは言え、なぜ徳島マラソンの人気が高いのかと言えば、坂がほとんど無くて、とても走りやすいフルマラソンだからだ。
今や日本中、至る所でマラソン大会が行われているが、フルマラソンでフラットなコースってのは意外に少ない。日本は山が多いから平坦なコースを片道21kmも確保できる場所は少ない、って事ではなく、交通規制の問題だ。
21kmの平坦な道なんて、いくらでもある。ハーフマラソンではメジャーな大会になった丸亀マラソンだって、折り返し点を坂出から高松まで延長すればフルマラソンが行えるけど、ああいう幹線道路を長時間、交通規制してフルマラソンを開催するのは容易ではない。
東京都知事や大阪府知事みたいに絶大な権力を誇る政治家なら、警察も文句を言えないから、都心のど真ん中でマラソン大会を開催できる。しかし知事の力が強くない地方では、そう簡単にはいかない。
香川県内では、交通量の少ない小豆島で行われる瀬戸内海タートルマラソンが唯一のフルマラソンだ。
小豆島に限らず、交通量の少ない山間部や島嶼部なら大がかりな交通規制をしなくても42kmのコースを確保するのは比較的簡単だから、多くのマラソン大会がそういうコースで実施される。ただ、当然ながら、そういう場所では、どうしても坂が多い厳しいコースとなってしまう。
なので、坂がほとんど無い徳島マラソンは、好記録が期待できる大変貴重なレースだ。我々としても、同じ県内だけど船で行かねばならない小豆島より、徳島の方が行きやすいから、とてもありがたいフルマラソンなのだ。
なぜ徳島マラソンのコースは坂が無いフラットなコースなのかと言うと、知事の力が強いからではなく、吉野川という真っ直ぐな大河川の堤防を走るからだ。吉野川の堤防の上をコースにすれば、大して交通規制をしなくてもフラットで真っ直ぐなコースを確保できるのだ。
このようにフラットで走りやすいはずの徳島マラソンだが、最近は惨敗する事が多い。2016年は5時間ギリギリの大惨敗で、2017年はあまりの不調に途中リタイアしたし、2018年も5時間近い大惨敗だった。
(支部長)「3年連続となると、それはもう不調じゃなくて、単に歳のせいなんよ」
(幹事長)「いやだ!老化は認めたくない!」
2018年なんて、徳島マラソンの1ヵ月前の海部川マラソンでは良いタイムを出すことができて、長期低落傾向に歯止めをかけることができた。老化は進んでいるが、まだまだ頑張る余地が残っているって事が分かった。
そのため、さらに上を目指して張り切って出た1ヵ月後の徳島マラソンだったのに、結果は大惨敗だった。
その理由はコースがフラットだからだ。コースがフラットなので良いタイムを狙ってしまい、ついつい序盤からハイペースで飛ばしてしまい、そのツケが回って終盤に撃沈するのだ。
それに、徳島マラソンのコースは超つまんない。
吉野川という真っ直ぐな大河川の堤防を走るからフラットで真っ直ぐなコースが確保できるんだけど、それは裏を返せば、これは徳島マラソンのコースがつまらないことを意味する。ただひたすら延々と吉野川の堤防を走るだけだからだ。
はっきり言って途中から飽きてくる。前半の途中の10km辺りで既に飽きてくる。それでもなんとか20kmくらいまでは我慢して走れるが、折り返して吉野川の北側から南側に移ってしばらく走ると、強烈に飽きてくる。
なかなか30kmまでたどり着けない。30km辺りと言えば、体力的にも厳しくなってくる頃で、精神力が非常に重要になってくる辺りなので、そこで飽きがくると心が折れて致命的になる。
なので、フラットではあるけど、精神的には厳しいコースと言える。
ただ、最後の開催となった2019年は、タイムがイマイチでモチベーションが無くなった上に雨が降り出してトボトボ歩くように走っていた40km地点で、ゾウさんがペースを上げて追いついてきたもんだから、一気に息を吹き返して一緒にガンガン走ったおかげで、まあまあのタイムでゴールできた。
なので、もともとフラットで走りやすいはずのコースだから、精神力さえ保つ事ができれば良いタイムが出るだろうって事が再認識された。
ところで、以前は徳島マラソンは4月下旬に開催されていた。2015年は4月に統一地方選挙があって忙しくなるからという理由で、例年より1ヵ月も早まって3月下旬に開催されたが、2016年は4月下旬の開催に戻った。
ところが2017年からは特に理由も無いのに3月下旬の開催となっている。
(幹事長)「もしかして、もうずうっと3月の開催になるんかいな?」
(支部長)「暑くなる心配が無くなるから、ええ事やな」
暑いのが苦手な支部長は歓迎してるが、私は反対だ。4月下旬なら気候も暖かくなってきて、天気が良いと暑いくらいになるが、個人的には大好きな季節だ。
もちろん、記録的には寒い時期のレースの方が良い記録が出やすいんだけど、フルマラソンの場合、終盤には足を引きずって歩く事も多く、そうなると寒い季節の大会は辛い。
(幹事長)「4月下旬やったらトボトボ歩いても寒くないんやけどなあ」
(支部長)「最初から歩くことが前提やなあ」
(幹事長)「それはお互い様やろ?」
それに、4月にレースが無くなると、次は5月下旬の小豆島オリーブマラソンまで2ヵ月も間隔が開いてしまうから、ついついトレーニングをサボってしまう。なので、できることなら4月開催に戻して欲しいなあ。
〜 超過密なスケジュール 〜
上にも書いたように、のらちゃんは3年前の2020年の徳島マラソンでフルマラソンに初挑戦するはずだったのだが、ドタキャンされてしまった。
その後も3年間、コロナ騒ぎによってマラソン大会がことごとく中止になってきたので、早くフルマラソンにデビューしたいと悶々としていた。
そのため、今年度は11月の神戸マラソン、3月の名古屋ウィメンズマラソン、3月の徳島マラソンと立て続けにエントリーしていた。どれが実際に開催されるか分からなかったから、とりあえず片っ端からエントリーしていたって感じだ。
それが2022年の秋頃から全国的にマラソン大会が復活してきたため、2022年の神戸マラソンが彼女のフルマラソンデビューとなった。
この時は、私がペースメーカーとなって30km辺りまで一緒にペースをキープして走ったおかげで、4時間半ちょっとと言う見事なタイムでデビュー戦を飾った。
(ピッグ)「ペースメーカーに徹した幹事長は惨敗しましたよね」
(幹事長)「30km地点でお腹を壊してトイレにこもったからなあ」
そして、名古屋ウィメンズマラソンに向けては、さらにペースを上げてサブ4.5を達成するために一緒にトレーニングに励んだ。
ここんとこ、彼女は序盤で調子に乗って飛ばし過ぎて終盤に撃沈するレースが多かった。
(支部長)「我々が何十回と失敗してきたパターンやな」
(幹事長)「何百回かもしれんよ」
なので、どんなに調子が良いような気がしても抑えて走るように強く指導した。ペースは1km6分20秒だ。このペースで最後まで走れればサブ4.5を達成できる。
逆に、下手に序盤で貯金しようなんて考えると、終盤に何倍もの借金となって返ってきて返済しきれなくなる。
1km6分20秒なんてハーフマラソンのペースより1分以上遅いから、守るのがなかなか難しい。油断すると、ついついもっと速くなってしまう。
でも、私のありがたい教えを忠実に守ったのらちゃんは、序盤から35km地点まで徹底して安定したペースを守り、35km地点を過ぎてから余力を吐き出して一気にペースを上げて軽くサブ4.5を達成した。
ここまで素晴らしい走りができるとは思わなかった。まさに驚異的な会心のレース展開だった。
てな事で、快進撃を続けてきたのらちゃんだが、ここに大きな試練が訪れる。
名古屋ウィメンズマラソンの僅か1週間後に徳島マラソンが開催されるのだ。
(幹事長)「2週間連続でフルマラソンだなんて無謀の極みやな」
(のら)「それくらい大丈夫だって幹事長が言ったからやんか!」
(幹事長)「ゾウさんだって2週連続で出るし、平気平気」
(のら)「ゾウさんは日程を勘違いしてたんだよ!2週間連続のフルマラソンになる事が分かって青ざめてたよ!」
2週間連続でフルマラソンというだけで無謀と言うか無茶だが、さらなる試練が我々に襲い掛かった。
(幹事長)「名古屋から帰ってきた翌々日に八ヶ岳に行くから」
(のら)「え?何のこと?」
私が所属している山岳会の超ベテランの人が八ヶ岳の中腹にある赤岳鉱泉のアイスキャンディーに行くというので、連れて行ってもらう事にしたのだ。
赤岳鉱泉のアイスキャンディーと言うのは、人工的に作られたアイスクライミングの練習用氷瀑だ。
前々からとても興味があったのだが、アイスクライミングを全くやった事がないので、誰かベテランの人に連れて行ってもらわなければならない。
それで機会を伺っていたところへ、そういう話があったので、「ここで行かないと二度と行く機会は無い。そうなると一生の後悔になる」と決意した訳だ。
その日程が、ちょうど名古屋ウィメンズマラソンと徳島マラソンの間だったのだ。
(ピッグ)「いつ帰ってくるんですか?」
(幹事長)「徳島マラソンの前日」
(ピッグ)「遠方で登山して帰ってきた翌日にフルマラソンですか?完全に徳島マラソンを舐めてますよね?」
(幹事長)「舐めていると言うより徳島マラソンは捨てているかな」
て事で、のらちゃんは、
・10日(金)に香川を出発して名古屋に行き
・12日(日)に名古屋ウィメンズマラソン(フルマラソン)に出場し
・13日(月)に名古屋から帰ってきて
・15日(水)に再び香川を出発し
・16日(木)に八ヶ岳の赤岳に登り
・17日(金)にアイスクライミングをやり
・18日(土)に香川に帰ってきて
・19日(日)に徳島マラソン(フルマラソン)に出場する
という無謀と言うか信じられない超人的スケジュールとなった。
(幹事長)「のらちゃんの超人ぶりが試されるウィークとなったな。ははは」
(ピッグ)「いやいや、幹事長だって超人的なスケジュールですよ!」
久しぶりに登った八ヶ岳は素晴らしい展望を楽しめたし、初めてのアイスクライミングはとっても面白くて一発で虜になってしまった。なので、本当に行って良かったと思う。
しかし、その代償として、金曜日の夜、山から下りてきて、そのまま高速道路に乗り、途中、何度か仮眠を取りながらも夜通し運転して土曜日に香川に戻り、日曜日に徳島マラソンに出るという無茶苦茶な行程を余儀なくされた。
夜通し運転して帰ってきたのは、できるだけ早く帰りたかったからだ。土曜日の朝に出発してのんびり帰っていたのでは、家に帰るのが遅くなってしまう。
日曜日は朝の4時に起きて準備をしなければ徳島マラソンに間に合わないから、土曜日はできるだけ早く家に帰って、少しでも体を休めたかったのだ。
なんだけど、当たり前だが非常に疲れた。疲れ切った。
〜 ドタキャン 〜
て事で、私とのらちゃんは極度の疲労困憊状態だが、一応は参加する。
しかし、ゾウさんの状態が悪い。彼女は以前から関節に痛みがあり、痛み止めを飲みながら走ってたんだけど、最近、痛みが悪化している。
1週間前の名古屋ウィメンズマラソンでも痛み止めを飲みながら走ったんだけど、途中で痛みが激しくなり、思うように走れなかった。
それで、名古屋から戻ってきて病院に行って診てもらった。
(幹事長)「どうやった?」
(ゾウ)「関節がうまく動いてなくて、骨が削られて痛みが出てるようでした」
(幹事長)「げげげっ、怖そうな症状!」
(ゾウ)「しばらくは激しい運動は控えるように、との事なので徳島マラソンは欠場します」
(幹事長)「その方が良いよね。無理せず気長に治してね」
(ゾウ)「オリーブマラソンには間に合うように治します」
大変そうだけど、とりあえず手術はしなくて良いようなので、そこは一安心だ。
てことで、残念ながらゾウさんは参加できなくなった。
(幹事長)「代わりに走る?」
(ピッグ)「ゼッケンの色が男女で違うからバレるでしょ」
(幹事長)「体は男やけど心は女なんやって言い張れば?」
〜 徳島へ出発 〜
当日はのらちゃんに5時過ぎに迎えに来てもらい、出発する。他のメンバーは長谷選手の車に相乗りして、5:40に津田松原SAに集合する。
ちょっと早いようにも思えるが、2016年はこれより少しだけ遅いスケジュールだったが、駐車場が異常な混雑ぶりで大変だったため、それ以来、これくらいの出発にしている。
駐車場のオープンは5:30で、シャトルバスの運行は6:00〜7:40なので、早すぎるって事はないだろう。
以前なら少しでも遅く出発しようとしていたが、歳とってくると早起きがさほど苦痛ではなくなってきた。
しかも、以前はギリギリで起きていたが、最近は余裕をもって起床し、ゆっくり朝食をとってから出発するようにしている。
(幹事長)「歳とると悪い事ばかりではないな」
(支部長)「私なんか毎日3時頃起きてるよ」
前日は雨模様だったが、当日の天気は予報ではとても良さそうだ。天気が良いからか、外に出るとかなり冷える。気温は低そうだ。
休日の朝の高速道路は空いていて、とても順調に進む。
徳島マラソンのスタート会場周辺には駐車場が無く、だいぶ離れた所にある臨時駐車場からシャトルバスで会場に移動するのだが、今年も臨時駐車場は吉野川河川敷とマリンピア沖洲の2箇所が用意されている。
スタート会場にはマリンピア沖洲の方が近いので、以前はマリンピア沖洲の臨時駐車場に車を停めていたが、シャトルバスがトンでもなく時間がかかって遅刻ギリギリになった事があったため、最近は吉野川河川敷の臨時駐車場を利用している。
スタート会場までは多少遠いものの、割りとスムースに行けるのだ。しかもマリンピア沖洲は200台しか停められないが、吉野川河川敷には1000台も停められるので安心だ。
て事で、今年も吉野川河川敷の臨時駐車場へ向かう。
(幹事長)「ルートはいつもの道で良いかな?」
(支部長)「あれがベストやな」
徳島の高速道路は非常にいびつなルートになっていて、徳島ICまで乗るとかなり遠回りになる。
距離的に最も近いのは、高松自動車道の板野ICで降りて、そのまま一般道路で行くルートだ。ただ、駐車場周辺で道路が混雑すれば時間がかかるので、徳島ICまで行くか板野ICで降りか迷うところだ。
ところが2016年に、よそ事を考えていたピッグが鳴門ICなんていう中途半端なところで降りてしまったため、その後のルートで私と支部長が「右だ」「いや左や」なんて言い争い、ピッグがますます混乱してトンでもない道を通ったため、渋滞に巻き込まれることなくスムースに駐車場へ到着することができた。
板野ICで降りても徳島ICで降りても鳴門ICで降りても、正しいルートは、吉野川橋の北側へたどり着き、そこから吉野川橋を北から南へ渡って吉野川河川敷の臨時駐車場に到着する、というルートだ。
ところが毎年、吉野川橋の上は端から端までビッシリと渋滞になり、ほとんど身動きできない状態になってしまう。橋の上だから、いったん入ってしまうと引き返す事もできず、身動き取れなくなるのだ。
2016年は、別行動で移動していたW部選手が板野ICから来たんだけど、吉野川橋の上で渋滞に巻き込まれて身動きが取れなくなり、僅か1kmの吉野川橋を渡るのに40分もかかって、危うくスタートに遅刻するところだった。
一方、我々は、ピッグが右往左往して訳の分からないルートを通ったから渋滞に巻き込まれずスムースに駐車できたのだ。
それ以来、毎年、その抜け道ルートを通っており、今年もほとんど待つことなくスムースに駐車場に到着できた。時刻はまだ6:30頃だ。我々が着いた時には、駐車場はまだまだ十分な空きがあった。
渋滞を回避してスムースに到着できるのだから、もっと遅く出発しても良さそうなものだが、この10分や20分の差が、駐車場の混雑状況を大きく変える。ほんの少し遅れるだけで駐車場はあっという間に満杯になり、停める場所が無くなってしまう危険性がある。
駐車場に着くとコロナ騒ぎの検温があり、次に健康チェック表を提出する。それを通ると手首に入場リストバンドを巻いてくれる。これが無いとシャトルバスにも乗れないしスタート場所に整列する事もできない。
去年の秋から神戸マラソンや丸亀マラソンなど多くのマラソン大会に参加してきたが、今だにここまで過剰な対応をしているのは徳島マラソンだけだ。
ただ、スタッフも仕方なく対応させられている感じで、ことさら時間がかかる事もなく、スムースに通過できた。
到着した時間が早かったのでスタート開場へ行くシャトルバスにも待たずに乗ることができた。
〜 会場到着 〜
スタートが徳島県庁前なので、スタート会場も徳島県庁の周辺だが、これと言って大きな施設が無いため、毎年のように更衣室の場所が変わっていた。それでも更衣室があっただけマシだ。
なんと今年は更衣室が無くなってしまった。コロナ感染予防のためだと言う。もっと大規模な神戸マラソンだって更衣室はあったのに、本当に徳島マラソンはコロナ騒ぎが過剰だ。
更衣室が無いので、そのまま走る格好で集合してくれという要請があったが、そうは言っても寒いのでみんな上に着こんでいる。空を見上げると快晴になっているが、それだけに朝は冷え込んでいる。
スタートは9:00で手荷物預けは8:30までだが、まだ7時頃なので、上着を脱ぐには早すぎる。
寒さで震えていると、長谷選手がホットスポットを探し出してきてくれた。朝日が当たって暖かいんだそうだ。て事で、そこにみんなで移動する。
今年もゼッケンやチップのほかパンフレットや記念品も事前に送られてきているので、当日は受付が無い。
記念品だが、マラソン大会の記念品と言えばTシャツと相場が決まっているが、徳島マラソンはTシャツ以外の時もあった。ランニング手袋やペットボトルホルダーだった事もあるし、チャチなバッグだった事もある。
昔のマラソン大会記念品Tシャツは品質が悪かったから、どんどんヨレヨレになっていって次々と消費できていたが、最近のTシャツは品質が良くて、どれだけ着て洗濯してもなかなかヨレヨレにならないから、着てない新品のTシャツが山のように溜まる一方なので、Tシャツでない記念品の方が基本的には嬉しい。
(幹事長)「このチャチなバッグは使い勝手が良いよなあ」
(支部長)「私も最近は常に愛用してるよ」
もちろん、今日もそのちゃちなバッグに荷物を入れてきている。
しかし、最近は記念品が再びTシャツに戻っており、今年もTシャツだった。ただ、なんとなくデザインのテイストが以前とは変わっていた。
場所が落ち着いたら、そろそろ着替えなければならない。
何を着るかはマラソン大会において最も重要な要素だ。寒いのは大嫌いだし、暑くなるのもバテてしまうから避けなければならない。
(幹事長)「今日は悩まない予定だったけど、悩むなあ」
(支部長)「今日は晴れて暑くなるよ」
私も今日は晴れて暑くなると思っていた。なので、悩むことなく、丸亀マラソンや坂出天狗マラソンの時と同じように、半袖Tシャツとアームウォーマーの組み合わせで走ろうと思っていた。
ところが、今はとても寒い。こんなに寒いと、長袖シャツにしようかと悩んでしまう。冬のマラソン大会なら、いつもは長袖を着て、その上から半袖Tシャツを着るので決まりだからだ。
フルマラソンは終盤に歩いたりするので、よっぽど暑い日でなければ2枚着るのでちょうど良い。
(支部長)「心配せんでも暑くなるってば」
(幹事長)「そうかなあ」
(支部長)「どっちにしても暑くても寒くてもタイムには関係ないってば」
もちろん、タイムという観点からは、結果的に見ると、暑かろうが寒かろうが何を着たかでタイムに影響があった記憶は無い。
暑いときもあれば寒いときもあるけど、タイムはそれ以外の体調とか練習不足とかの要因で決まる。て言うか、寒いのは辛いがタイムはむしろ寒い方が良いことが多い。
でも、タイムも重要だが、辛いか楽しいかも大きな要素だ。フルマラソンで長時間、寒さを我慢して走るのは辛い。
真冬の丸亀マラソンでも、今年は天気が良かったから半袖Tシャツで走ってちょうど良かったくらいだから、3月に入った今日なら半袖Tシャツで十分のようにも思える。
しかし、丸亀マラソンはハーフマラソンで2時間もかからないから、最後まで一生懸命に走って体が熱を発散しているから寒さにも耐えられる。
一方、フルマラソンはゆっくり走るのでそれほど熱くはならない。終盤で歩いたりすると、むしろ寒くなる。
フルマラソンだからと言って常に終盤を歩く訳ではないが、最後まで歩かずに走ったレースでも、フルマラソンでは終盤、疲れて足を引きずって歩くようになるので、終盤の走るペースってのは歩くのとあまり変わらない。
それくらい遅いペースになると、歩いているのと同じように体は寒くなる。タイムが良いとか悪いではなく、寒い中を震えながら歩くのだけは絶対に避けたい。
かなり散々悩んだが、丸亀マラソンも坂出天狗マラソンも半袖Tシャツで問題無かったので、今日も半袖Tシャツとアームウォーマーの組み合わせにした。
フルマラソンは長丁場なので、9時にスタートしてもゴールするのは午後の1時や2時になる。スタート時に少し寒くても、そのうち暑くなるだろう。
以前は夏でも常に長袖シャツの上に半袖Tシャツを重ね着していたのらちゃんも、今日は私と同じように半袖Tシャツとアームウォーマーの組み合わせだ。
支部長を始め、大半のメンバーも半袖Tシャツとアームウォーマーの組み合わせだ。D木谷さんに至っては、アームウォーマーすら着けていない。
さらに、今日はランニングタイツを履かず普通の薄手の防寒タイツにした。
私はもともとはランニングタイツはなるべく履かない主義だった。ランニングタイツを履くと足が突っ張って走りにくくなり、履いてない方が走りやすいような気がしたからだ。
でも、ランニングタイツには筋肉疲労を防止する効果もあるという事を聞いてからは、寒い季節には防寒用も兼ねて必ずランニングタイツを履いていた。
ところが、丸亀マラソンでは、ランニングタイツを履いていたのは私と支部長とのらちゃんの年寄りトリオだけで、他のメンバーはタイツを履かず、代わりに脹脛サポーターを履いていた。そして、ランニングタイツを履いていた年寄りトリオは揃って大撃沈してしまった。
ゾウさんだっていつも「タイツは履かない方が絶対に走りやすいですよ」と言ってタイツは履いていない。
なので、今日は足が突っ張って走りにくくなるランニングタイツは履かない事にした。でも、それだと寒そうなので、代わりに普通の防寒用タイツを履くことにしたのだ。防寒用と言っても、一番薄手のものなので、足は突っ張る事なく動かしやすい。
また、筋肉疲労を防止するため、タイツの下には脹脛サポーターを履いた。
(のら)「脹脛サポーターを履いた上にタイツを履いたら暑くなるんじゃないの?」
(幹事長)「寒がりだから、それは良いんよ」
支部長やのらちゃんはいつものようにランニングタイツを履いているが、D木谷さんは脹脛サポーターも履かず、脹脛にテープを貼っているだけだ。
そのほか、顔を拭くハンドタオルとティッシュはポケットに入れたが、いちいち出すのは面倒なので、汗はできるだけ手袋で拭きたい。
寒くなった時のために、一応ビニール袋もポケットに入れておく。また、いつものように、嫌いなランニングキャップは被らない。
準備が整ったら団旗を持って記念撮影だ。
寒さに震えながら雄たけびを上げる参戦メンバー
(左から木村選手、倉石選手、長谷選手、のらちゃん、加藤選手、D木谷さん、幹事長、支部長)
朝食は家を出る前に食べてきたが、ちょっと時間が早かった。
マラソン大会に出る時の朝食は、ゴールの5時間前に食べるのが理想とのことだ。消化してエネルギーに変わるまで、それくらいの時間はかかるって事だ。
もちろん、我々のように遅いランナーだと、ゴールの5時間前なんてスタート直前になってしまうから、もっと早めに食べなければならないが、家で食べてきたのでは早すぎる。
て事で、今日はゼリーを2種類持ってきた。それをチビチビと吸っていると、お腹も良い感じになってきた。
さらに今日は濃縮された小さなゼリーも持ってきた。最近、フルマラソンがイマイチ不調なのは、エネルギーが不足するからではないか、なんて思うのだ。
ハーフマラソンならエネルギーが切れる前にゴールとなるが、フルマラソンは長丁場なので後半はエネルギーが切れる。しかし、後半になってお腹が空いてから食べていたのでは、当然ながら既に遅い。レース中は、まだお腹が空いてなくても、早め早めにエネルギーを補給すべきだろう。
エイドにも食べ物はある。ただ、エイドにある食べ物は地元の銘菓とかパンとかフィッシュカツとか竹輪とか食べにくい物が多い。ゆっくり休んで食べるのならいいけど、走りながらでは食べにくい。
なので、今日の栄養補給は濃縮ゼリーで賄う事にした。
(支部長)「名物のそば米汁は食べないん?」
(幹事長)「その時点での調子しだいやな」
27km地点の手前にある第7給水所ではそば米汁やそうめんのお接待があり、毎年、とても楽しみにしている。
ただ、そこで座り込んでそば米汁やそうめんを食べてしまうと、足がすっかりお休みモードになってしまい、再び元のペースで走り出すことはできなくなる。
なので、その時点で、まだまだ戦えそうな調子の時にはそば米汁やそうめんはパスしてペースを維持して走り続け、もうボロボロになりかけている時は勝負を捨てて腰を落ち着けてそば米汁やそうめんを食べるつもりだ。
お腹が良い感じになってきたら、トイレに行きたくなった。家で朝食を食べた時には、時間が早すぎたので、まだ出る気配が無かったが、さすがに今は出そうな感じだ。
いつもなら、更衣室が設けられているホテルや県庁建物の内部のトイレを探索するのだが、今日は更衣室が無いので、屋外に設置された仮設トイレに行くしかない。
少し歩くと仮設トイレはすぐ見つかったが、トンでもない長蛇の列が出来ている。あまりの列の長さに呆然としつつも、並ぶしかないので、仕方なく並ぶ。
これは時間がかかりそうだ。とは言っても、時刻はまだ7時半だ。手荷物預けは8:30までだから、まだ1時間はある。大丈夫だ。何の問題も無い。
と思ってたんだけど、列はなかなか進まない。なぜなら、7000人もの参加者がいるのに、仮設トイレは男子10個、女子10個しかないのだ。
女子は参加者も少ないので、それほど長い列は出来てないが、男子は気が遠くなるような長い列が出来ており、それが遅々として進まないのだ。
かなりヤキモキしていたが、なんとかギリギリでトイレに駆け込み、出てきたら8:10くらいになっていた。
いつまでもコロナ対策なんかしているお金があるんなら、トイレを常識的な数まで増設して欲しいぞ。
慌ててみんなの所に戻り、シューズを履く。シューズは今回の秘密兵器だ。
レース用のシューズとして一昨年の暮れにアシックスのハイパースピードを買った。これは足にとてもフィットして走りやすく、良い感じだと思っていた。
なんだけど、この頃、タイムは悪くなる一方だ。
(支部長)「それはシューズのせいではなく老化が原因やな」
(幹事長)「やっぱり?」
とは言え、同年代の支部長はここのところタイムは全く落ちていない。
そして支部長が最近、ナイキのフライ5とどちらにしようか迷ったあげくアシックスのマジックスピードを買った。
(支部長)「足が勝手に前に前に進むんよ」
(幹事長)「ほんまか!?」
そして同時期にD木谷さんもマジックスピードを買った。
(D木谷)「いやあ、本当に足が進みますね。1km20秒は速くなります」
(幹事長)「ホントに!?」
二人が揃ってそんな事を言うもんだから、心穏やかではない。私の心もマジックスピードに大きく傾いた。
一方、同じように新しいシューズを求めていたのらちゃんはマジックスピードではなくアシックスのノヴァブラストを買った。
(幹事長)「それって初心者向けのシューズじゃないの?」
(のら)「クッション性が良くて足が疲れないんよ」
アシックスの説明を読むと、ハイパースピードやマジックスピードはサブ3.5ランナー向けだが、ノヴァブラストはサブ5を目指す初心者ランナー用みたいな位置づけだ。
値段はマジックスピードもノヴァブラストも似たようなものなので、それなら絶対にマジックスピードの方が良さそうに思える。
そのため、のらちゃんが強く勧めても半信半疑というか、ほとんどゼロ信全疑だったんだけど、一緒に30km走なんかをやっていると、私が終盤に足が疲れてペースダウンしている横で、彼女は一気にペースアップしたりするのだ。
もしかして、これは本当に疲れを軽減するシューズかもしれないと思い、のらちゃんに騙されたと思って同じノヴァブラストを買ったのだ。
その後、名古屋ウィメンズマラソンでものらちゃんが終盤に一気にペースアップするという驚異的な走りを見せたため、ゼロ信全疑だった私も半信半疑にまで考えが変わった。
(のら)「まだ半分は疑ってるのね?」
(幹事長)「君の言う事はあんまり信用できないけど特に失うものも無いから賭けてみるよ」
ノヴァブラストは支部長やD木谷さんが評価するマジックスピードのようにスピードが速くなるシューズでは決してないが、足が疲れないのなら、いつものような終盤のペースダウンは避けられるかもしれない。
マジックスピードを履いて前半を快調なペースで走れたとしても、終盤で足が疲れてペースダウンしたら元も子もない。
逆に、終盤でのペースダウンを避けられるのなら最初からスローペースで走っても仕上がりでは良いタイムになるかもしれない。
どうせ駄目でも失うものが無い12回目の徳島マラソンなので、のらちゃんの言葉に賭けてみようと思う。
て事で、今回は支部長&D木谷さんのマジックスピード組と私とのらちゃんのノヴァブラスト組との対決となった。
〜 集合 〜
手荷物預けは8:30までとなっているので、大慌てで急いで持って行った。手荷物預けのトラックに着いたら締め切り2分前のギリギリだった。
もちろん、こういうのは少しくらい遅れたって預かってくれるものだ。なーんて思っていたら、なんと、8:30キッカリにテーブルが片付けられて預けられなくなった!
スタート地点は県庁前の国道11号線で、集合場所は申告タイムの順に6つのブロックに分けられている。これは速いランナーと遅いランナーが一緒くたにごちゃ混ぜになっているとスタート時の混雑がひどくなり、混乱するからだ。
速いランナーにしてみれば、遅いランナーが混じっていると邪魔になって走りにくいし、遅いランナーだって周りが速いランナーばかりだと走りにくい。分けた方が速いランナーも遅いランナーもスムースに走りやすい。
どうせタイムはチップでネットタイムを計測してくれるから、無理して前の方からスタートする必要は無い。
また、単にブロック分けしているだけでなく、S、A、B、Cの4ブロックの第1ウェーブと、D、Eの2ブロックの第2ウェーブのスタート時間を10分間ずらすウェーブスタート方式となっている。
第1ウェーブのスタートは9:00、第2ウェーブのスタートは9:10だ。
今年はウルトラ4兄弟がBブロック、私と支部長、のらちゃんの年寄りトリオがCブロック、加藤選手がEブロックだ。
自分たちの集合場所を目指して歩いていると、突然、声を掛けられた。
(航路)「おやまあ、幹事長じゃないですか!」
(幹事長)「うわ、香炉さんやんか!」
なんと、こんな所で偶然にも元四痙攣の高炉さんに会ってしまった。航路さんとは普段は会った事は無いが、レースではよく会う。それも、今日のように偶然に会うのだ。
去年11月の神戸マラソンでも、走り出してすぐ同じように声を掛けられた。不思議な探知能力を持った人だ。
香炉さんも我々と同じCブロックなので、一緒に移動していたが、途中でトイレに行ってしまった。
(幹事長)「さっきは列に30分以上も並んだよ」
(高炉)「もうスタート時間が迫ってきているから列は短くなってるでしょ」
スタート地点に着いて大勢のランナーの中で支部長とのらちゃんと3人で整列して待っていると、寒さが和らいできた。周りに人がいるので風が弱くなり、陽射しも当たるようになってきて、暖かくなってきた。寒ければビニール袋を被ろうと思っていたが、その必要は無くなった。
すると、支部長の元同僚のA部さんという女性がやってきた。話を聞くと、私よりは年齢は下だが、なんと私と同期入社だった。徳島支店の人なので知らなかった。
それほど昔からマラソンをやってる訳ではないが、フルマラソンのベストタイムを聞くと、我々より速かった。すごい人がいっぱいいて、参ってしまう。
スタート時間が迫ってきたので、本日の目標を設定せねばならない。もちろん、どんな時でも、どんなレースでも、大会自己ベストの更新を狙うのが良い子のあるべき姿だ。
マラソンはコースや季節によってタイムが大きく変わってくるため、違うレースのタイムを比較するのは不適当なので、どんなレースに出ても、とりあえず大会自己ベストを狙うのが良い子の正しい道だ。
徳島マラソンの自己ベストは2014年大会で出した4時間36分だ。大したタイムではないので、終盤に失速しなければ簡単にクリアできそうなタイムだ。
そもそも、この徳島マラソンは坂の無い高速コースなので、良いタイムが出ても不思議はない。
なんだけど、今年は状況が厳しい。3日前に八ヶ岳の主峰である赤岳に登り、2日前は八ヶ岳の山中でアイスクライミングに挑戦し、その夜、下山してから夜通し車を運転して昨日、帰ってきたばかりだ。疲労と睡眠不足で体はボロボロだ。
一緒に八ヶ岳に行ったのらちゃんも似たようなものだ。彼女は車は運転していないので、疲れ具合は私よりマシだが、1週間前に名古屋ウィメンズマラソンを走っているので、トータルの疲労困憊ぶりは同じようなものだろう。
(幹事長)「こんな状態でまともに走れるわけが無いから完走できれば万々歳ですぅ」
(のら)「同じくですぅ」
(支部長)「同じくですぅ」
(幹事長)「なんで支部長も同じくなん?」
(支部長)「転倒した後遺症が治らなくて」
支部長は2週間前にランニングしてる最中に転倒し、膝を打撲したんだけど、その具合がかなり悪いらしい。
のらちゃんは名古屋ウィメンズマラソンで素晴らしいレース展開でフルマラソン自己ベストを出したばかりなので、今日のレースは完走さえできれば良いと考えている。
私は13回目の徳島マラソンで、もう飽き飽きしているので、完走すらできなくてもさほど悔しくもない。
て事で、今年は年寄りトリオは揃ってゆっくり走る事にした。
とにかく、辛い思いだけはしたくない。辛い思いには2つのパターンがある。
1つ目の辛いパターンは足が痛くなるパターンだ。足が攣るのも辛いが、足が痛くて走るどころか歩くのさえできなくなるのは本当に辛い。
2つ目の辛いパターンは疲労でボロボロになるパターンだ。全身が疲労でボロボロになり、走ってはいるけど歩くようなスピードでトボトボとゴールするのも辛い。
どちらのパターンも辛いが、絶対に避けたいのは1つ目の足が痛くなるパターンだ。
今回は完走さえできれば良いと考えているので、後半に足が痛くなるリスクを冒してまで前半から頑張るつもりはサラサラ無い。なので、前半から抑えに抑えてのんびり走る。
また、走るのが辛くなったら、迷わずリタイアしよう。
(のら)「え?リタイアするの?」
(幹事長)「わしらリタイアに何の抵抗も無いからな」
(支部長)「1回リタイアしたら平気になるよ」
私は過去、2012年の第5回大会と2017年の第10回大会でリタイアしているので、リタイアに関しては何の抵抗も無い。支部長もリタイア経験は豊富だ。
足が痛くなったら、迷わずリタイアしよう。痛い足を引きずって無理して完走しなければならないような重要なレースではない。
逆に、足が痛くならずに最後まで歩かずに完走できれば、そんなにひどいタイムにはならないだろう。
ペースは極端に落ちて歩くようなスピードになったとしても、痛くさえ無ければ、足を引きずりながらゆっくり走り続けることができる。
しかし、足が痛くなると我慢できないから、歩かざるを得なくなる。
タイムが多少良かったとしても足が痛くなるよりは、タイムは徹底的に悪くても足が痛くならない方がマシだ。
最後まで足が痛くならないようにするためには、前半のペースを抑えるのが絶対必要条件だ。
ただ、前半を抑えて走ったつもりでも、終盤に撃沈したレースはある。理由は簡単だ。自分では抑えて走ったつもりでも、実は抑え方が不十分だったからだ。
どんなレースでも序盤は軽快に走れて「なんだか今日は調子いいな」なんて勘違いするんだけど、それは気分が高揚しているのと、始めだからまだ元気が有り余っているのと、周囲のランナーにつられているだけだ。そのまま調子に乗って飛ばしたら絶対に後半に撃沈する。
とにかく、今日の最優先目標は辛くならずに完走する事であり、そのためには最初から徹底的に抑えたペースで走らなければならない。
お日様がだいぶ上がってきて、かなり暖かくなってきた。
遠くでは開会式が始まったようで、何も見えないが場内放送の声だけは聞こえてくる。今年も例年通り野口みずきがゲストに来ている。
彼女も我がアイドル高橋尚子様と同じオリンピックの金メダリストなんだけど、高橋尚子様に比べたらどうしても地味で、華やかさに欠ける。だが実は私は、野口みずきも高橋尚子様と同じくらい好きだ。
高橋尚子様は元来走るのが大好きで、ものすごいトレーニング量なんだけど、悲壮感が無かった。悲壮感をうまく隠していただけかもしれないが、それが功を奏して明るいイメージが定着している。
それに比べて野口みずきは、どうしても悲壮感が漂い、何となく暗いイメージになってしまっている。でも彼女の真面目さは大好きで、現役時代は心から応援していた。
それから金哲彦さんも来ている。金さんとは神戸マラソンでも会ったし、丸亀マラソンでも会った。もしかして全国の全てのマラソン大会に来てるんだろうか。
〜 スタート 〜
いよいよ9時になってスタートの号砲が鳴り、前方のブロックの人たちがスタートした。
我々がスタートできるまでは、まだ少し時間がかかるが、前方ブロックの人たちがスタートしたため、ゾロゾロと前方へ動き出す。
しばらく進むとスタート地点のアーチが近づいてきて、それを通過すると我々もスタートだ。我々の整列場所からスタート地点までは3分半くらいだった。
アーチの横では野口みずきが櫓の上から声援を送ってくれている。間近で見ると、テレビで見る以上に明るい雰囲気で可愛く、とても好感が持てる。
スタート地点を過ぎると、小走りができるようになる。まだまともには走れないが、今日は最初から徹底的に抑えて走るつもりだから、特にフラストレーションは感じない。
それに、以前は序盤に狭い道を折れ曲がったりして結構、混雑したが、2016年からコースが少し変更になり、広い国道をストレートに走るようになったため、混雑はマシになった。
たぶん、参加者を増やしたため従来のスタート場所やコースでは道が狭くて収容しきれなくなり、スタート地点とコースを変えたのだろう。
ただ、以前のコースはしらさぎ大橋を渡って吉野川北岸に出ていたが、今は県庁前の広い国道11号線をそのまま北に走って吉野川大橋を渡って吉野川北岸に出るようになった。個人的には新しいしらさぎ大橋を通るコースの方が気持ち良くて好きだった。
また、吉野川大橋はしらさぎ大橋より1km以上も西側にあるので、距離が往復で2kmは短くなる。それを取り返すために西条大橋手前の折返し点が遠くなった。これも嫌な感じだ。
無理せず抑えて走り出したつもりだったが、最初の1km地点のラップは1km6分15秒くらいだった。あんまり遅くない。次の2km地点ではさらにペースアップして6分10秒を切っている。
(幹事長)「ちょっと速いなあ」
(のら)「そうやね」
コースは国道11号線を真っ直ぐ北上して吉野川大橋に入り、橋の真ん中に3km地点の距離表示がある。この1kmも6分10秒を切っている。
徳島マラソンのコースは基本的に橋と堤防の上を走るので、例年、北西からの強風に苦しめられる。しかし今年は吉野川橋の上も風はそれほど強くはない。かなり暖かくなってきた頃なので、冷たい風が気持ち良いくらいだ。
吉野川大橋を渡って吉野川北岸の堤防の道路に入ると、第1救護所があり、しばらく進むと4km地点がある。この1kmは6分にまでペースアップしている。
(幹事長)「やっぱり速いなあ」
(のら)「そうやねえ」
抑えて走っているつもりなのに速いって事は、例によって気分が高揚しているのだろう。今日は疲労困憊しているはずなので、間違っても「今日は調子が良いのかも」なんて勘違いはしない。
支部長も一緒に走ってくる。
(幹事長)「足の具合は大丈夫?」
(支部長)「体重のかけ方で痛みが出るから、痛くならないような姿勢で走ってるよ」
いつもの支部長のペースと比べれば、かなり遅いペースだから大丈夫だろうとは思うが、無理な体勢で走ってると別の部分が痛くなりそうだ。
ここで高炉さんが追いついてきて、再び声を掛けてきた。
(幹事長)「トイレは無事に行けたんですか?」
(航路)「タイムアウトで駄目でした」
長蛇の列は解消されておらず、ギリギリまで並んでいたけど、結局、間に合いそうにないのでトイレは諦めたんだそうだ。やはり、もっとトイレを増やして欲しいぞ。
(香炉)「今日はどれくらいのペースで走るんですか?」
(幹事長)「私ものらちゃんも登山で疲れているから完走だけを目指して自然体でゆっくり走るつもりなんです」
(高炉)「私も30kmくらいまでは抑えて走り、もし余力が残っていたら、そこからペースアップしてみます」
航路さんはフルマラソンでサブ4を達成した事もある実力者だが、神戸マラソンでは練習不足がたたり、10km過ぎで足が止まり、なんと残り30kmほどを全部歩いたんだそうだ。25km地点から17kmも歩いた支部長を上回る健脚ぶりだ。
吉野川橋の付け根の5km地点には第1給水所があり、以前は走り始めたばかりの給水所は時間の節約のためにパスしてたけど、最近は足攣り防止のために最初からこまめに給水する。
結局、最初の5kmは1km平均6分10秒程度だった。これは去年の神戸マラソンの時よりかなり速いペースだし、のらちゃんが快走した名古屋ウィメンズマラソンのペースよりも速い。
(幹事長)「だいぶ速いけど、全然無理はしてないよね」
(のら)「うん、楽に走ってるよ」
たぶん、神戸マラソンや名古屋ウィメンズマラソンはランナーがもっと多く、混雑して走りにくかったからだろうと結論付けた。
それに、今日は絶対に無理はしていない。これまでのレースでは、序盤を抑えて走ってる時でも、遅いペースながらもペースは一定に保っていた。なので、上り坂があると頑張ってペースを維持していた。
しかし、今日は絶対に無理はしないとの方針なので、上り坂があれば極端にペースダウンしている。ペースを維持するのではなく、足の力の入れ具合を一定に維持しているので、上り坂になると一気にペースダウンするのだ。
上り坂と言っても、橋の下をくぐって上がる時くらいなので、緩やかな坂だが、それでも極端にペースが落ちる。
(香炉)「上り坂になると極端に遅くなりますね」
(幹事長)「絶対に無理はしない事にしてるから」
なので、緩くても上り坂があると高炉さんや支部長、のらちゃんから一気に離れてしまう。でも、みんなもスローペースなので、フラットな所に出れば、しばらくしたら追いつける。その繰り返しだ。
徳島マラソンのコースは、前半は吉野川の北岸の堤防を延々と西に向いて走るんだけど、たいていは向かい風になり、風よけになるものが何も無いので非常に辛いのが常だ。
でも、今日は風がそれほど強くはないので、あまり無理せず走れる。て言うか、適度な風があった方が暑くなくて気持ち良い。
その後も1kmごとのラップは変動があまり無く、同じようなペースを維持して走っていく。10km地点までの5kmも、ほとんどペースは変わらず、ずうっと1km平均6分10秒程度だった。まだ神戸マラソンや名古屋ウィメンズマラソンのペースよりも速い。
なかなか良い感じが続いている。でも、決して「今日は調子が良いのかも」なんて勘違いはしてはいけない。あれだけ疲労困憊していたのだから、調子が良いはずがない。
支部長と航路さんもずっと一緒に走っている。
ただ、15km地点までの5kmでは1km平均6分15秒ほどに少しペースダウンしていた。ようやく神戸マラソンや名古屋ウィメンズマラソンのペースよりも少し遅くなった。
とは言え、まだまだ当初の想定よりは速い。
(幹事長)「足の具合はどうなん?」
(支部長)「だいぶ痛くなってきたよ。20km地点で止めようかな」
20km地点を過ぎた所にあるエイドには支部長の知り合いがいるらしいので、そこまでは頑張るが、そこで止めるかもしれないとの事だ。
このレースには全部で12箇所の給水所がある。以前は給水所は、せいぜい3回に1回くらいしか給水してなかったけど、最近は足の攣りの予防のため、全ての給水所でマメに給水する事にしている。
19km地点を過ぎた第5給水所には氷砂糖があったので、エネルギー補給のために頂いた。手前の第4給水所にはバナナがあったが、走ってる最中にお腹を壊すといけないので、今日は大きなものを食べるのは止めた。
20km地点までの5kmも、その前の5kmと同じ1km平均6分15秒ほどのペースを維持していた。神戸マラソンや名古屋ウィメンズマラソンのペースよりもほんの少し遅いだけだ。
しばらく行くと、ちょうど半分になる21km地点の表示がある。これでなんとか半分終わったっていうのは嬉しい。完走できるかどうか不安だったけど、今の疲れ具合からすると、このまま行けばなんとか完走はできそうだ。
さらにしばらく進むと西条大橋が現れる。以前のコースはしらさぎ大橋を渡っていたが、今は吉野川大橋を渡るようになったから、ここまでの距離がだいぶ短くなっている。
そのため、西条大橋の手前で距離をかせぐため、吉野川から離れてだいぶ北の方まで折り返し区間を走らされる。単調な堤防の上を走るのも退屈で苦痛だが、この折り返し区間も先が見えないので精神的に苦痛な区間だ。
なんとか淡々と進んだら、ようやく折返し点になり、再び吉野川へ向かって引き返す。ここから西条大橋まで緩いんだけど長々と上り坂が続く。これまでなら頑張ってペースを維持して走っていたが、今日は頑張るのは厳禁なので、どんどんペースが落ちていき、のらちゃんや香炉さんの背中が遠のいていく。
上り坂が終わってしばらくするとのらちゃんには追いついたが、支部長の姿が見えない。
(のら)「支部長が見当たらなくなったね。リタイアしたのかなあ」
(幹事長)「あっ、あそこにいる!」
目を凝らして遠くを見ると、折り返し点に向かって支部長が歩いて行くのが見える。足が痛くなって走るのを止めたようだ。無理して悪化させるより、早目にリタイアした方が良い。たぶんリタイアバスがある所まで歩くんだろう。
西条大橋を渡って吉野川の南岸の堤防に移ると、後半は東に向いて走るようになる。風が強い時は強力な追い風になってくれるが、今日は風が弱いので追い風は期待できない。
第6給水所を過ぎてしばらく進むと25km地点がある。この5kmは少しペースダウンして1km6分20秒ちょっとに落ちていた。
西条大橋への上り坂でペースダウンしたのが原因だろう。でも、神戸マラソンではもっとペースダウンしていたし、名古屋ウィメンズマラソンのペースもほぼ同じだ。
しばらく行くと27km地点の手前に第7給水所が現れる。ここにはお待ちかねのそば米汁や半田そうめんのお接待がある。かつては楽しみで仕方なかった休憩ポイントだ。
でも今日は、意外にもそれほど疲れてなくて、まだまだペースを維持して走れそうなので、パスする事にした。
ここで本格的に休憩し、そば米汁やそうめんをしっかり食べてくつろいでしまったら、気分的には元気回復しても、足がすっかり終了モードになってしまい、再びレースに参加するのに苦労するからだ。
その代わり、ここで濃縮ゼリーを食べた。これが終盤のエネルギー補給になってくれればいいのだが。
(幹事長)「のらちゃんは初めてで食べた事ないやろから、そば米汁やそうめんを食べに行ってもいいよ」
(のら)「やだよ。私だってペースを維持して走っていくよ」
のらちゃんもお接待よりタイムを優先するようだ。
一方、高炉さんは何か食べるのかエイドに吸い込まれていった。
次の30km地点までの5kmも、その前の5kmと同じ1km6分20秒ちょっとのペースを維持していた。スタートからここまでの平均では1km6分15秒ほどだ。
スタート前は、疲労困憊で完走すら危うかったと言うのに、思ってもみなかった健闘ぶりだ。
30km地点で余力があれば、ペースアップしても良いとは思っていたが、さすがにそんな余力は残っていない。それでも、このまま行けば大会自己ベストが出るんじゃないかって言う色気が出てきた。この先、どこまでペースを維持できるかが勝負だ。
ただ、さすがにこの辺りから少しずつペースダウンし始めたようで、のらちゃんの背中が少しずつ離れていく。のらちゃんは相変わらずペースを維持しているようだ。大したものだ。
少しペースダウンしたせいで、次の35km地点までの5kmは1km6分30秒をオーバーしてしまった。
ここには第10給水所があり、バナナやトマト、竹輪、フィッシュカツなど給食も充実している。でも、この時点で食べ物を補給しても、お腹は満たされるが、今さらエネルギー補給しても消化して吸収する前にゴールしてしまう。
なので、氷砂糖だけもらって食べ物はパスする。
この辺りから疲れた頭で必死に計算する。35km地点でのタイムは3時間40分だった。て事は、残りを1km7分で走れば4時間半を切って大会自己ベストが出る。
完走すら危ういと思っていたのに、意外にも大会自己ベストを狙える状況になってきて、かなりやる気が出てきた。
残りは僅か7kmだからスパートしたい気持ちもあるけど、7kmもスパートできるわけはない。それどころか、さすがにペースを維持するのも難しくなってきた。
1kmごとのラップを見ると、6分50秒近くかかるようになってきた。どんどんペースダウンしている。それでも、ほんの少しずつ貯金は出来ているので、極端にペースダウンしない限りは大会自己ベストが出そうだ。
終盤に入ると、コースには変化が出てくる。四国三郎橋のたもとで、ずうっと走ってきた吉野川の堤防から離れて南に折れ、何度か折れ曲がって鮎喰川の堤防に出たりする。
コースが変化すると気持ちも少しリフレッシュされる。それでもペースは上がらない、と言うか、少しずつペースダウンしている。でも1km7分以内で走っていれば大丈夫だ。
38km地点では例年のようにJALのお姉さんがジュースを配ってくれる。ここまで水とスポーツドリンクだけだったので、フレッシュなジュースがとても美味しい。
40km地点までの5kmは1km6分50秒近くかかってしまい、のらちゃんの背中も見えなくなってしまった。それでも、もう残り2kmなので、なんとか行けそうだ。
終盤になると、小さな坂がいくつか現れるが、下り坂には要注意だ。上り坂は疲れていれば歩くだけだが、下り坂は足が疲れている時に不用意に突っ込むと、足の筋肉を痛めて動けなくなってしまう。
でも、今日はここまで無理してないので、それほど筋肉が疲れておらず、平気で駆け下りていける。
川から離れて南の市街地に向かい始めた41km地点では、ほんの少しだけペースアップできていた。これなら勝利は間違いない。
会場近くの幹線道路である県道30号線に入ると、もう先は短い。最後に県道30号線から陸上競技場の敷地に入ると、遠くにゴールが見えてきた。
〜 ゴール 〜
前回は終盤でゾウさんと一緒になったため、ラスト2kmは二人でバカみたいにペースアップして走ったが、今日はのらちゃんの背中が見えなくなり、そこまで頑張れる状況にはないので、最後まで大してペースアップはできなかったが、なんとかペースダウンする事なくゴールまで駆け込んだ。
最後の1kmもペースは上がらず6分40秒ほどだったが、それでもなんとか4時間半を切り、大会自己ベストを更新する事ができた。実に9年ぶりの大会自己ベスト更新だ。この歳になって大会自己ベストを更新すると、本当に嬉しい。
ただ、今日ものらちゃんには負けてしまった。最近、彼女に勝てるのはトレランだけになってきた。
ちょっと前にゴールしたのらちゃんはゴール横で待っていてくれた。
(幹事長)「どうやった?」
(のら)「名古屋ウィメンズマラソンよりはちょっと遅かったな」
名古屋ウィメンズマラソンの快記録よりは2分ほど遅かったようだが、スタート前には完走すら危ぶまれていた事を考えると、大健闘と言えよう。
二人とも、最初から色気を出さずにペースを抑えて走った事が良かったのは間違いないが、それでも最後まであまりペースダウンしなかったのが不思議だ。
ペースを抑えて走ったと言っても、神戸マラソンの時よりは少しペースが速かった。それなのに、終盤に大きく失速した神戸マラソンと違って最後まであまりペースダウンしなかった。
私は30kmを過ぎてから徐々にペースダウンしていったが、のらちゃんは40kmまで全くペースダウンしなかっただけでなく、最後の2kmは1km5分半ちょっとにまで一気にペースアップしていた。
(幹事長)「不思議やねえ」
(のら)「シューズが良かったんよ」
やっぱり新しいノヴァブラストの威力なんだろうか。もしそうなら、騙されたと思って新調したのが良かったのかもしれない。
いつもならゴールの後には完走バンザイ隊の万歳三唱サービスがあるんだけど、今年は無かった。コロナ対策で無くなったのだろうけど、屋外で万歳したってコロナ感染はしないだろうと思うよ。
その後、完走メダルや完走バスタオルなんかを貰って競技場の外に出る。
手荷物を受け取って着替えをしていると、ウルトラ4兄弟からの連絡が入る。すぐ近くにいるらしいので探してみたら、すぐ見つかった。
みんなの結果を聞くと、なんと長谷選手は3時間30分台というサブ3.5目前のタイムを叩き出していた。また倉石選手も3時間40分を切り、木村選手も4時間10分台の好タイムだった。
一方、D木谷さんは35km地点までは快調に走っていたんだけど、その辺りから股関節痛が出てしまい、終盤は歩いてしまったそうだ。京都マラソンの時と同じような展開で、長距離を走ると痛みが出てくるようだ。
支部長はどうしたんだろうって思っていたら、連絡が入り、近くにいたのですぐに合流できた。やはり20km過ぎてリタイアして、バスに乗って戻ってきたそうだ。足の痛みで走れなくなったんだそうだ。
ゾウさんと言いD木谷さんと言い支部長と言い、故障が相次いでいる。長引かなれば良いんだけど、心配だ。
(幹事長)「じゃあ支部長は完走メダルやバスタオルは貰えなかったんやね」
(支部長)「バスタオルは貰ったよ」
完走してないので完走メダルは貰えなかったが、バスタオルは貰えたようだ。ところが、タオルを見せてもらうと、私たちが貰ったタオルとデザインが異なる。
そう言えば、どのマラソン大会か忘れたけど、リタイアした人には完走した人にくれるタオルとは異なる「残念でしたね」みたいな文字が書かれたタオルをくれたところがあった。
それと同じなのかなあ、と思ったら、なんと2021年の徳島マラソンの記念バスタオルだった。2021年大会は中止になったから、大量に記念バスタオルが余ったので、それを活用しているのだろう。
(支部長)「余り物をくれたんか!なんか腹立つ!」
(幹事長)「いやいや、幻の大会の完走タオルやから、珍しいよ。プレミアムがつくんと違うか?」
第7給水所まで一緒に走っていた高炉さんは、その後、極端にペースダウンしてしまっていた。そうめんを食べて休み過ぎたようだ。
残るは加藤選手だ。応援ナビで彼の動きを見てみると、かなり遅れている。それでも、愛媛マラソン、京都マラソンと2大会連続で途中関門に引っかかってリタイアさせられた悔しい思いを晴らすべく、必死で最後まで走ってゴールした。
(幹事長)「必死で走った割には、大量に写真を撮ってるやんか。舐めとんか」
(加藤)「今日は天気も良くて楽しい観光マラソンになりましたね」
〜 反省会 〜
天気が良くてポカポカして気持ち良い。ここで例年ならうどんが支給されていた。コシのある讃岐うどんと違って、これ以上柔らかくしたら、ちぎれてしまって箸で持てないくらいの柔らかさだが、長距離を走って衰弱したお腹には柔らかいうどんが優しいし、暖かいうどんが非常に嬉しかった。
ところが、今年はコロナ騒ぎへの過剰な対応のため、うどんは無かった。それだけでなく、食べ物は一切、無くなっていた。なんと第7給水所でもそば米汁のお接待が無かったんだそうだ。
お腹が空いて仕方ないから、ゴール後に大塚製薬様がくれたソイジョイやカロリーメイトを貪り食って飢えをしのぐ。
その後はシャトルバスに乗って臨時駐車場へ戻る。だいぶ遅くなっていたため、シャトルバスは空いていて、並ぶ事なくすぐに乗れた。
いつもなら、その後、恒例のあいあい温泉に行って露天風呂で足を揉みほぐすんだけど、なんと、あいあい温泉が長期休業中になっている。いつも大混雑していたくらいだから、潰れた訳ではないだろうが、まさかコロナ騒ぎの影響だろうか。
仕方ないので、今日は温泉も諦めて、そのまま帰ることにした。
食べ物も温泉も無いので、不満が爆発しそうな場面だが、今日は思いがけない良い展開でレースを終えられたので、気持ちは快晴のままだ。
(幹事長)「レース前は完走できるかどうか不安だったのに、9年ぶりに大会自己ベストが出て、わしゃ嬉しいわい」
(のら)「私だって、まさか名古屋ウィメンズマラソンと同じようなタイムが出るとは思ってもみなかったよ」
本当に不思議な結果だ。最初から一貫してペースを抑えて走ったと言っても、これまでだってペースを抑えて走った事はあるが、終盤には大きくペースダウンしていた。
これまでとの違いを探せば、傾斜の緩い上り坂でも徹底的にゆっくり走った事と、新しいシューズを履いた事だ。本当に効果があったのかどうか半信半疑ではあるが、次のレースでも続けてみよう。
次のレースは4月1日に福士加代子「笑って走れば福来たる駅伝」なんてのがあるが、これは100%お遊びの大会なので、まともなレースは4月16日の富士五湖ウルトラマラソンだ。
(ピッグ)「ついに幹事長もウルトラマラソンに出るんですね!あんなに嫌がってたのに」
(幹事長)「勘違いしたらいかんよ。わしゃウルトラマラソンには興味が無いし、100kmも走るつもりは無いよ」
私と支部長とのらちゃんが出るのは62kmの部だ。
何もウルトラマラソンに出たかった訳ではなく、去年、富士山登山をした際に朝ランした河口湖の周りを走るマラソン大会があるとの事でエントリーしただけだ。それが、たまたまウルトラマラソンの62kmの部だったというだけだ。
(D木谷)「いえいえ、これできっとウルトラマラソンの世界に引きずり込まれますよ」
今日のレース後の状態からすれば、ペースをもっと落とせば、あと20kmくらい走るのは不可能ではないと思う。
でも、あと60kmも走るのは絶対に不可能だよ。
〜おしまい〜
![]() 戦績のメニューへ |