第11回 高松ファミリー&クォーターマラソン in 庵治

〜 着実に忍び寄る老化 〜



2016年10月23日(日)高松市庵治町において第11回高松ファミリー&クォーターマラソン in 庵治が開催された。


〜 エントリー 〜


庵治マラソンに参加するのは、私としては4年ぶりだ。この大会には10年前の第1回大会から4年前の第7回大会まで毎年参加していたのに、この3年間、何をしていたかと言うと、まず3年前は同じ日に開催された大阪マラソンに出場した。大阪マラソンは競争率5倍以上の狭き門なので、当選したら当然ながら最優先だ。一昨年は、同じ日に開催されたサイクリングしまなみ2014に参加した。今治と尾道を結ぶ瀬戸内しまなみ海道の高速道路を自動車通行止めにして自転車で走れる大イベントだったので、こんな貴重な機会を逃すわけにはいかないと最優先で参加した。
そして去年は3年ぶりに出場しようと思っていたら、なんと気が付いた時には既に定員いっぱいでエントリー受付が終了になっていたのだ。いつもなら大会事務局からパフレットが送られてきて、それから申込みをするんだけど、なぜか最近、パンフレットが来なくなっていた。こんなところで経費節減なのか?なんて思っていたら、何のことはない、パンフレットは前年に出場した人に送られてくるものであり、前年に参加してなかった我々には送られてこなかっただけなのだ。

だが、それにしても、パンフレットが送られてこなかったとしても、以前なら庵治マラソンごときなら、気付いてから、やおら申し込んでも十分間に合った。庵治マラソンごときが定員一杯になってエントリー受付を打ち切るなんて事は考えられなかったのだ。かつては庵治マラソンみたいなマイナーな草レースは、むしろ参加者が少なくて大会の存続を危ぶんでいたくらいだ。だから、完全に油断していたのだ。それが、いつの間にか、エントリー受付開始と同時に申し込まなければエントリーできないという末期的な状況になっていたのだ。東京マラソンや大阪マラソンのような超メジャーな大会は抽選になっているが、それに次ぐような奈良マラソンや那覇マラソンのような大会は先着順になっていて、以前から熾烈な先着順争いが繰り広げられてきた。でも、庵治マラソンのようなマイナーな草レースは慌てる必要なんて無かった。それが、最近は、汗見川マラソンのような山の中の超マイナーな草レースだってエントリー受付開始と同時に瞬間蒸発するようになったので、庵治マラソンが定員一杯になって受付終了になっても不思議ではない。

(幹事長)「もう嫌になっちゃうなあ」
(ピッグ)「時代の流れを受け入れてください」


てことで、今年は年間スケジュール表を作成して、常にそれを確認して申し込みを忘れないようにしていたため、いち早く情報を入手し、なんとか無事にエントリーする事ができたのだ。

(ピッグ)「とは言いながら、こんぴら石段マラソンのエントリーには今年も失敗しちゃいましたけどね」
(幹事長)「あんなマイナーな草レースまで僅か1日で受付終了になっちゃうなんて、ほんと予想できなかったなあ」


こんぴら石段マラソンなんて、数多くのマイナーなレースの中でも、群を抜いてマイナーな超草レースであり、以前は、事前申し込みなんかしなくても、当日行っても大丈夫って雰囲気のレースだったから、油断してしまったのだ。


〜 コース 〜


庵治マラソンのコースは12kmだ。なぜクォーターマラソンっていう名前が付いてるのに1/4の10.5kmじゃなくて12kmかと言うと、実は、かつて庵治町が存在していた時は庵治マラソンのコースは10kmだった。これならクォーターマラソンと言える。一方、その頃、高松市は屋島の周りを一周する12kmコースの屋島一周クォーターマラソンてのを開催していた。庵治町が高松市に吸収合併された時に、この2つのレースが合体したのだが、場所は庵治マラソンの場所で開催し、距離は屋島一周クォーターマラソンの12kmを引き継いだのだ。その結果、以前の庵治マラソンのコースに比べ、折り返し点まで1km、往復で2kmの延長となったのだ。

(ピッグ)「ちょちょちょ、ちょっと待ってください。場所は庵治マラソンの場所で開催し、距離は屋島一周と同じ12kmにして、名前は両方の合体って事は分かりますけど、
       そもそも屋島一周の頃から12kmなのにクォーターマラソンって名前だったんですよねえ。おかしいじゃないですか?」
(幹事長)「あれ?ほんまやな。説明になっとらんがな」


なんで12kmなのにクォーターマラソンて名前だったのかは、今となっては不明だ。たぶん、フルマラソンの1/4に毛が生えた程度の距離だからって事で、適当に着けたんだろう。合体した後にクォーターマラソンて名前を受け継ぐんだったら、距離は以前の庵治マラソンのままで良かったと思うのに、わざわざ12kmに延ばしたってのも意味不明だが、合併に伴う役所同士の魑魅魍魎としたバトルがあったのかもしれない。

(ピッグ)「魑魅魍魎って難しい字ですね」
(幹事長)「書けないどころか、読むこともできません」


4年ぶりの出場となる庵治マラソンだが、上にも書いたように、この大会には10年前の第1回大会から毎年参加していた。毎年タイムは着実に向上し、第4回大会では1時間0分台のタイムを出し、1時間切りも目前と思っていた。ところが、その後、毎年着実にタイムが悪くなっていき、1時間の壁はどんどん遠ざかっていった。
同じ距離だった屋島一周クォーターマラソンの頃は、調子が良ければ1時間を切った事もあるので、1時間切りというのは非現実的な目標ではなかったのだが、屋島一周のコースは坂がなだらかだったのに対し、庵治マラソンは坂がとっても厳しいので、容易ではない。特に大きい坂は5km地点を過ぎて出現する巨大な坂だ。かつて庵治マラソンが10kmコースだった時は、5km地点で折り返していたため、この最後の巨大な坂を走らずに済んでたんだけど、屋島一周と合体してコースが片道1km延長になったため、この巨大な坂を1kmも延々と走らなければならなくなったのだ。

ただし、坂がきついと言ったって、今年6月から挑戦してきた山岳マラソン4連戦のコースに比べたら大したことはない。5km地点から1km続く坂は最大斜度20%、平均斜度10%もある急坂だが、平均斜度10%程度の坂が何kmも続く北山林道駆け足大会四国のてっぺん酸欠マラソン龍馬脱藩マラソンに比べたら坂の距離は短い。それに、坂はあるけど全体の距離も12kmと短いため、フルマラソンやハーフマラソンのようにレース展開に頭を悩ます必要がない点では楽だ。序盤は抑えて走るとか、ペース配分を考えるとか、悩む必要が無いのだ。

(ピッグ)「いくら悩んで作戦立てたって、結局、作戦通りにはいきませんからねえ」
(幹事長)「レース序盤で早々に作戦が打ち砕かれると、一気にやる気も無くすからなあ」


作戦を考える必要が無いというのは、つまり自分自身の中でプレッシャーが無いということだ。何も考えず、ただひたすらに全力疾走すればいいだけだ。もちろん、本当に全力疾走しているのか、と言われれば、それはあくまでも主観的なものであり、他人が見たらチンタラ走っている程度だ。「こんなに無理したら後になって足が動かなくなるんじゃないか」なんて心配せずに、何も考えずに、その瞬間その瞬間における全力を出して走ればいい、という意味での全力疾走に過ぎない。


〜 ドタキャン 〜


今回の出場者は私のほか、支部長、ピッグ、國宗選手、D木谷さんの5人だ。ヤイさんは今回は所用のため不参加だ。國宗選手は5月の小豆島オリーブマラソンに出場した後、夏場の山岳マラソン4連戦はドタキャンの4連戦となったため、5ヵ月ぶりのレースとなる。でも、今回のレースは12kmと距離が短いため、久しぶりでも問題無いだろう。

なーんて思っていたら、レースの前日になって國宗選手から連絡が入る。もちろん、レースの直前に入る連絡は悪い知らせと相場が決まっている。特に國宗選手からはドタキャンの連絡に決まっている。分かり切っている。夏場の山岳マラソン4連戦もそうだったし、汗見川マラソンや酸欠マラソンは2年連続でドタキャンしたし。

(國宗)「あのう、夜分遅くに済みません」
(幹事長)「ああ、はいはい」
(國宗)「実は、明日の庵治マラソンなんですけど・・・」
(幹事長)「ああ、はいはい」
(國宗)「あの、実は、急に出られなくなりまして・・・」
(幹事長)「ああ、はいはい」
(國宗)「えーと・・・」
(幹事長)「ああ、はいはい」
(國宗)「って、理由は聞かんのですかっ!」
(幹事長)「どうせ急な仕事が入ったとか何とか言うんやろ!?」


本当に仕事だった。休日でも仕事なんて大変だなあ。
國宗選手が不参加となったので、今回の出場者はのほか、支部長、ピッグ、D木谷さんの4人だ。ただ、國宗選手からは、1週間後のサイクリングしまなみ2016の関係書類を事前にもらっておく必要があったので、朝、行くときには、当初予定通り途中で立ち寄ることとなった。


〜 会場へ出発 〜


最近のレースは6月の北山林道駆け足大会7月の汗見川マラソン9月の四国のてっぺん酸欠マラソン、そしてこの間の龍馬脱藩マラソンと、どれも高知県内の山の中で行われた山岳マラソンだったので、どれも朝の5時や6時といった早朝に出発して眠かったが、今回は庵治なので高松市内から30分もかからないし、受付は9時20分までOKなので、ゆっくり出ればいい。支部長がD木谷さんとピッグを乗せて我が家に8時過ぎに迎えに来てくれた。

ところが、外に出てビックリ。タイミングが悪い事に、今日は朝から近所総出で溝さらいの大掃除をやっていた。これはうちの近所だけでなく、たぶん高松市内全域でやっていると思うんだけど、支部長が迎えに来てくれる時間が、うちの周辺では作業のピークになっていたのだ。そう言えば、ついさきほど、家内がバケツとか持って外に出て行ったが、私は朝からマラソンに行くから、教えてくれなかったのだ。うちの前の狭い道路で、近所の人が総出で大掃除している所へ支部長車が入ってきたので、慌てて押しとどめたけど、大掃除に参加もせずに出かけていくのを目撃されたのはバツが悪かった。
なんかデジャブのように、以前にも同じ事があったなあと思って過去の記事を読み返してみたら、最後にこのレースに出た4年前が全く同じ状況で、近所の人たちの冷たい視線の中、出かけたと書いてあった。どちらも高松市の行事だから、庵治マラソンも一斉大掃除も同じ日にやるんだろうなあ。て事は、来年以降も同じ状況が続くはずだぞ。ちゃんと覚えておいて、来年からは自宅から離れたところで待ち合わせることにしなければならない。

事前の天気予報では、今週末は天気がイマイチで、前日の土曜日は意外にしつこく雨が降った。今日は朝から曇りで、いつ雨が降ってもおかしくないような空模様だ。以前は、雨は悪い思い出しか無く、極端に毛嫌いしていたが、6年前の第33回小豆島オリーブマラソン大会で大雨の中を快走してからは、我々は雨に対する抵抗感は払拭されている。大会が中止になるほどの雨でなければ気にしない。もちろん、これが冬なら冷たい雨の中を走るのは嫌だが、今の季節なら大丈夫だ。まだ晴れたら暑くなる季節なので、下手に天気が良くて暑いよりは、雨が降って涼しい方が良いと思うようになったのだ。曇りのままなら、ベストの天候と言えよう。

(支部長)「いや、どうせなら雨が降った方がええな」
(幹事長)「まあ、そこまで雨が好きでもないけど」
(支部長)「雨が降った方が呼吸が楽になるし、身体から水分補給もできるで」


植物じゃあるまいし、身体から水分を補給できるとは思えないけど、支部長は極端に汗っかきなので、少なくとも雨の方が身体からの水分発散は防げるのだろう。

途中で予定通り國宗選手んちに立ち寄る。ご苦労なことに、休日だと言うのに彼はスーツ姿で現れ、これから仕事に行くとのことだった。

(幹事長)「来週のサイクリングしまなみは参加できるんやろな!?
       ホテルを予約してるんやから、ドタキャンしたらキャンセル料が発生するで!」
(國宗)「へへいっ!来週こそは必ず参加いたしますっ、隊長!」


その後、庵治の会場へと向かう。以前は、だいぶ手前の道路から混んでいた記憶があるんだけど、今日はあまり混んでいなかった。順調に会場に近い庵治中学校のグランドの駐車場に着いたが、まだまだ車は少なかったので、我々の出発が早かったのかもしれない。受付時間は9時20分までだから、もっとゆっくり来れば良かったのかもしれない。


〜 会場到着 〜


受付をすると、参加の記念品をくれるが、これがくせ者だ。この大会の前身だった屋島一周クォーターマラソンの頃は、参加費が僅か1000円だったにもかかわらず、素晴らしく立派なスポーツバッグをくれたりしていた。もちろん、何かの残り物だったのは間違いないが、参加者が少ない草レースで数が少なくよかったから、結構、良い品をもらえていたのだ。ところが、庵治マラソンになってからは、参加費が2500円にアップしたにもかかわらず記念品は逆にとてもセコくなってきた。以前と同じように何かの残り物なんだけど、参加者が多くなって記念品の数も多くなったため、爪切りだったりコカコーラの粗品の小さなタオルだったり、ガッカリするものが多かった。ところが、今年はちゃんとしたタオルだった。

(支部長)「まさか、またコカコーラのタオルと違うか?」
(幹事長)「違う!ちゃんと庵治マラソンの名前が入ってる!」


山ほど溜まって押し入れから溢れ出て困っているTシャツよりは、タオルの方がよろしい。

受付時間は9時20分までだが、その後も開会式だとか3kmのファミリー部門のレースだとか行われて、我々が出る12kmレースのスタートは10時50分だ。まだ2時間もある。ゆっくりゆっくり着替えする。なーんて言っても、着替えは早い。この時期のレースは、着るものに悩む余地が無いからだ。

(ピッグ)「珍しく今日は着るもので悩まないんですか?」
(幹事長)「今日は半袖Tシャツ以外に選択の余地はないやろ」


さすがに今の時期なら、仮に天気が良くてもメッシュの袖無しシャツを着るほど暑くはない。また仮に冷たい雨が降ったとしても、12kmだと寒くなる前に終わってしまうので、長袖は必要ない。おまけに今日は曇り空が続きそうなので、半袖Tシャツで決まりだ。て言うか、12kmなんてすぐ終わるから、何を着ても問題無いのだ。着るのは3年前の大阪マラソンでもらったTシャツだ。このTシャツは格好良いから、一番のお気に入りだ。2週間前の龍馬脱藩マラソンでは、寒くなるといけないと思って、去年の神戸マラソンで貰った少しだけ厚めのTシャツを着たが、今日はそんな心配は要らない。
ピッグは龍馬脱藩マラソンの赤いTシャツに、お馴染みの白いランニングパンツを履いている。

(幹事長)「そのランニングパンツって、大昔から履いてない?」
(ピッグ)「そうですねえ。もう20年以上は履いてますねえ」


支部長はランニングタイツを履いているけど、私はランニングタイツのサポート機能を全く信じてないので、寒い時以外は履かない。ランニングキャップは炎天下か雨の時しか被らないから、今日は不要だし、手袋も不要だ。

(支部長)「いや、汗を拭くために軍手が必要や」

確かに支部長は大変な汗かきだが、ランニングタイツや軍手なんか履くから、よけいに暑くなって汗が噴き出るんじゃないかなあ。

(幹事長)「今日は秘密兵器が登場だ!」
(ピッグ)「また何か怪しいグッズですか?」
(幹事長)「おニューの
ランニングシューズだっ!」

職場の同僚のW部選手なんかはランニングシューズにうるさく、色んなランニングシューズを収集して取っ替え引っ替え試して走っており、シューズの多さから四国のマルコス夫人と呼ばれている。

(幹事長)「ナベちゃん、いくつくらいシューズ持ってるの?」
(W部)「40足くらいですかねえ」


40足もあったら、どれがどれやら管理できなくなるので、私はボロボロになるまで使い果たす主義だ。これまで履いていたシューズは7年前に買ったものだ。それが2週間前の過酷な龍馬脱藩マラソンの下り坂で、とうとう寿命を迎えてしまい、履けなくなってしまったのだ。それで久しぶりに新しいシューズを買った訳だ。

(幹事長)「ええやろ?」
(ピッグ)「軽いっすねえ」
(支部長)「でも、シューズを変えたくらいでタイムが良くなるもんではないで」


確かに、W部選手ほどの実力者ならシューズの違いが結果に反映されるのだろうけど、我々はそれ以前の問題なので、シューズに大きな期待をしてはいけない。でも、新しいシューズを履いていると、何となくウキウキする。

緊張感も無く、余裕が漂うメンバー
(左からD木谷さん、幹事長、支部長、ピッグ)


着替えが終わっても、まだまだ時間がある。この大会の一番の難点は、この退屈な待ち時間だ。ウォーミングアップに余念がない人が見受けられるが、いくらなんでも早すぎる。

(支部長)「て言うか、私ら素人の市民ランナーにウォーミングアップは不要だからな」

ウォーミングアップが不要と言うのは間違いないから、外に出る気は起きないんだけど、更衣室は混雑している。我々が出る12kmレースの参加者は男子653人、女子160人の合計813人で、他に5kmレースの参加者が230人、中学生以下の子供と親が一緒に出る3kmのファミリー部門の参加者が212組で、参加者の総数は定員どおり1500人ほどだが、ファミリー部門の応援に来ているじいさん、ばあさんなんかがやたら多く、結構な賑わいだ。以前は開催が風前のともしび的な寂しい草レースだったのに、時代も変わるものだ。

更衣室ではゆっくりくつろげないし、あまりにもヒマなんで外をぶらついているとK岡氏にあう。片O氏は会社の同僚だけど、マラソン大会以外では滅多に会わない。今年の汗見川マラソンで会えるかなあと思っていたが、彼はエントリーに失敗したとのことで会えなかったから、随分、久しぶりだ。
それから、好敵手のH本さんにも会う。過去の記録を読み返すと、彼女がマラソンをやってるのを知ったのは、7年前のこの大会だった。彼女にとっては、それが生まれて初めてのマラソン大会だった。その頃は当然ながら私の方が早かったんだけど、最近は全く歯が立たず、負けが続いている。しかし、今年は彼女に自慢できることがある。2週間前に龍馬脱藩マラソンのフルマラソンの部に出場したことだ。龍馬脱藩マラソンには、彼女も何度も出たことがあるが、フルマラソンの部はあまりに坂が厳しいので、実力者の彼女もハーフマラソンの部にしか出たことが無い。私の実力からすれば脱藩マラソンのフルマラソンは無謀だ、との彼女の忠告を聞かずに出場し、見事に討ち死にしたのだ。

(H本)「脱藩マラソンどうでした?」
(幹事長)「見事、完走・・・もとい完歩したよ」
(H本)「だから言わんこっちゃないんですよ」
(幹事長)「前半の上り坂を2時間半で折り返したから、後半は下りだから5時間を切れると思ってぬか喜びしていたら、
       後半は足が止まってしまって、下りなのに前半より時間がかかってしまった」
(H本)「脱藩マラソンのフルマラソンを舐めたらあかんぜよ」


まだまだスタートまでは時間があるので、ファミリーマラソンを見物する。これは親子で揃って走る3kmレースだが、ガキんちょのくせにやたら速くて、トップ集団はめちゃ白熱したレースが展開される。速い親子は12分を切るタイムで帰ってくるから、親子揃って1km4分以内で走ってるわけで、はっきり言って、これはすごい。

ファミリーマラソンも終わり、ようやくスタートの時間が近づいてきた。天気は相変わらずの曇りで、晴れる気配は無い。風も無い。もう絶好のコンディションだ。体調としても、今日はどこも痛くないし、ダルくないし、一昨日までの東京出張の疲れも残っていない。万全だ。

(ピッグ)「練習も積んでるんですよね?」
(幹事長)「先週はお休みしたけど、2週間前の脱藩マラソンまでは十分に練習したからな」
(ピッグ)「私は最近、ほとんど練習ができてないんで、今日は軽く走ります。幹事長は目標タイムはあるんですか?」
(幹事長)「このレースは、もちろん1時間切りを目標にせんといかんのやけど、過去のタイムの推移を見ると、かなり厳しいんよ」


10年前の第1回から4年前の第7回までのタイムをグラフにしてみたら、最初の4年間は着実にタイムが縮まっていき、1時間切りの目前まで行ったのに、なんとその後はV字回復、もといV字に悪化しているのが分かった。

見事にV字で悪化している過去のタイム


(ピッグ)「うわあ。きれいにV字ですねえ」
(支部長)「これは明らかに老化の影響やな」


今回は4年ぶりの参加なんだけど、この基調からすれば、1時間切りどころか、ますます悪くなる可能性がある。老化が原因なら、悪くなることはあっても良くなる訳がない。なので、この傾向をなんとしても食い止めなければならないのだ。

12kmレースなので1時間を切るには1km5分を切るペースとなる。坂が無い区間なら可能なペースだが、坂が厳しい庵治マラソンでは、全ての区間を1km5分を切るペースで走り続けるのは難しい。なので、フラットな区間では、もっと速く走って貯金しなければならない。そのためには、序盤から速めのペースで突っ込む必要がある。しかし、序盤から無理し過ぎたら、終盤に一気にツケが回ってきてペースダウンしてしまう。序盤の飛ばし方の加減が難しい

(支部長)「ペース配分なんか考えずに全力疾走するって言ってた割りにはゴチャゴチャ悩んでるなあ。考えたってしょうがないって」
(幹事長)「確かに!」


〜 スタート 〜


スタート時間が近づいてきたのでスタートラインに集合し、真ん中どころにポジション取りする。小さな大会なので、前にいようが後ろにいようが、大した違いは無い。見渡す限り仮装ランナーはいない。最近のマラソン大会で仮装ランナーが一人もいないというのも珍しい。
スタートのピストルと同時に飛び出すが、参加者が少ないからスタート時の混雑はあんまり無かったし、スタートしてからも周囲は同じようなペースで、邪魔になるランナーは少ない。まずは自然体で気持ち良い感じで走る。ふと前を見ると、H本さんが走っている。彼女なら序盤から無茶な走りはしないだろうし、最初から最後まで同じペースを維持するだろう。今もちょうどいいペースだ。よし、今日は彼女に着いていこう。名付けてストーカー走法だ!

(H本)「ちょっと!やめてくださいよ!」

あんまり真後ろにピッタリ着いて息がかかると警察に訴えられるので、少しだけ離れて着いていく。少し離れると間に他のランナーが入ったりして乱されてしまうが、彼女はペースを抑えて走っているようなので、すぐに追いつける。
最初の1km地点でラップを見ると、ちょうど5分くらいだった。全然坂が無い区間なのに、あんまり速くないが、スタート時には多少の混雑があったことや、明らかに余裕を持って抑えて走っているので仕方ないだろう。
ここでD木谷さんが前方に離れていく。そろそろペースを上げるタイミングだと判断したのか。一瞬、一緒に行こうかと思ったけど、自重する。

1km地点を過ぎると最初の坂が現れる。以前は負担感のあった坂だが、山岳マラソンを数多くこなしてきた今年は、全くへっちゃらだ。気持ち良く快調に走っていくと、H本さんは相変わらず抑えめのペースで、油断したら追い抜いてしまいそうになる。ここで悩む。自然体で走って追い抜くのが良いのか、それとも自重して抑えて走るべきか。でも、彼女のように序盤を抑えて走った方が終盤に余力が残ってペースを維持できると思ったので、今日は徹底的に彼女をストーカーすることにして、抑えて走る。最初の坂を下りるとしばらくフラットな区間が続き、次の坂の手前で2km地点になる。ここで見たラップは、1km5分を少し切っていた。ペースアップしたと言うより、最初の1kmがスタート時の混雑で遅かっただけだろう。
2km地点を過ぎると、小刻みなアップダウンが続き、少しペースダウンする。まだまだ足は快調で余力はあり、もっとスピードアップしようと思えばできるが、H本さんを追い抜く訳にはいかないので、自重して着いていく。そんな事をしてたら、ターザンみたいな柄のワンピースを着たランナーが追い抜いていく。仮装ランナーはいないと思ってたけど、一人いたようだ。しかも彼女の足下を見ると、なんと裸足ではないか!ぎょぎょ!

(幹事長)「それ、足痛くないんですか?」
(女ターザン)「痛くないですよう」


軽やかにペタペタ走っていく。歳はどれくらいだろう。私らと同じくらいかなあ。分からない。でも身体はとても締まった素晴らしい体型をしている。明らかに実力者だ。彼女に着いていこうかとも思ったけど、思い直してH本さんに着いていく。

アップダウンの途中に3km地点があり、時計を見ると1km5分を大幅に超えるくらいにペースダウンしていた。なんとなく、もっとペースを上げたい気持ちがあるが、ここで抑えて余力を残していた方が後半にペースアップできると思って自重する
3kmを過ぎると、アップダウンは続くものの、全体的に下り基調となる。するとH本さんがペースアップした。彼女は下り坂に強いのか。一緒に着いて下り坂をガンガン駆け下りると、周りのランナーを追い越して、さっきの女ターザンも追い抜いた。4km地点で見たラップは1km5分くらいだったので、少し安心。でも1時間を切るためには、速い区間では大幅に5分を切る必要があるので、もっとペースを上げる必要があるなあと思うが、終盤で一気にペースを上げたらいいか、などと納得する。

4km地点を過ぎてしばらくはフラットな海岸線が続くが、最後の大きな坂を上り始めたところに5km地点がある。ここで時計を見ると、再びペースダウンしている。おかしいなあ。まだまだ余力はあるし、周囲のランナーに追い抜かれている感じも無いし。ただ下り坂ではガンガン飛ばすH本さんは、フラットな区間や上り坂では抑えめに走るから、女ターザンには再び追い抜かれる

最後の巨大な坂は、以前は目の前が真っ暗になるほどの絶壁に感じられたが、山岳マラソン4連戦をこなしてきた今年の我々にとっては、どうってことはない。全然へっちゃらだ。なーんて思いつつも、ペースは遅い。H本さんに着いているからだけど、これだけ遅ければ余裕があるのも当然だ。
巨大な坂の傾斜度が緩やかになった頃に、折り返してきたD木谷さんが早くもすれ違って帰って行く。だいぶ差が付いてしまった。
しばらく進むと折り返し点があり、ここがちょうど6km地点なんだけど、この1kmは6分くらいかかっていた。過去の良かった時のタイムと比べれば、だいぶ遅いが、ま、仕方ない。後半が勝負だ。折り返して他のメンバーを確認すると、すぐ後ろを支部長が走ってきた。意外に早く、差は1分くらいだ。上り坂なのに差が着いていない。支部長は下り坂に強いから、油断したら、この後の下り坂で追い付かれてしまう。一気に緊張感が走る。その後、しばらく行くとピッグがやってきた。私より2分遅れくらいだ。まあまあの差だが、決して油断できる差ではない。

て言うか、下り坂に入ったとたん、H本さんの速いこと速いこと。ガンガン飛ばすもんだから、あっという間に見えなくなってしまった。あかんやんか!彼女に着いていくために前半の上り坂を自重したのに、下り坂で離されたら意味無い!一生懸命着いていこうとするが、追いつけない。女ターザンには追いついたが、H本さんは見えなくなってしまった。ただ、H本さんは見えなくなったが、支部長が後ろから追い付いてきそうで、緊張感と言うかモチベーションは維持できている。
とは言え、期待したほどスピードアップはできない。足が思うように前に出てないようのだ。一体、これはどうした事だ。2週間前の龍馬脱藩マラソンは、前半の上りより後半の下りの方が時間がかかったが、あれはフルマラソンで、後半には疲労の蓄積で足が止まったので仕方ないが、今日はまだまだ元気で余力満々なのに思ったように足が出ない。思ったようにスピードアップできない。足の故障は無く、何の心配も無いからガンガン駆け下りていきたいのに、なんだかイマイチ。これは老化なのか?
大きな坂の終盤7km地点があるが、思ったとおり、大してスピードアップできてなかった。それでも、1時間は切れないとしても、大会自己ベストとか、せめて大会自己2位とかは狙いたいから、まだまだ気合いは入っている。

大きな坂が終わると、しばらくはフラットな区間が続き、その後、再び上り坂に入ったところ8km地点となる。フラットだった割りにはタイムはイマイチだ。モチベーションも維持できているし、体力的にもまだまだ余裕はあるんだけど、目の前のH本さんを追いかけていた前半と違い、目の前に目標がいないため、どうしてもズルズルとペースダウンしているようだ。やっぱりペースランナーは必要だなあ。
空からは小雨が降り出した。支部長じゃないが、どうせならもっと降って欲しいところだが、微かにポツリポツリ感じるくらいで、身体の冷却効果は期待できない。給水所は何ヵ所か設置されているが、たかが12kmレースなので、飲んだ水が身体に回るまでにはゴールしてしまうので、少しでもタイムを稼ぐため全てパスする。

その後はアップダウンが繰り返される区間になり、9km地点で見たラップは、一気に悪くなった。さきほど降り始めた雨はあっという間に止んでしまい、上り坂では暑くなるが、大したことはないし、まだまだ結構、頑張れているつもりなんだけど、着実にペースダウンしている。なんでかなあ。
次の区間もアップダウンが続きはするが、基調的には下りが多いので、一生懸命走ったおかげで、10km地点で見たラップは、だいぶペースアップできていた。下り坂になると、下り坂に強い支部長がすぐ後ろから追い抜いていきそうで、恐怖心が沸くから、かなり頑張れる。一方、上り坂になると、支部長は追いつけないだろうから、ついつい油断してしまうのかもしれない。

残りは2kmなんだから、もうラストスパートだと思ってペースアップしたつもりなんだけど、最後の坂を越えて11km地点で見たラップは、とんでもなく悪くなっていた。全然スパートできていないじゃん!まだまだ身体は元気で、そんなにペースダウンしているつもりもないのに、これはどういう事だろう?やっぱり老化なのか?H本さんはもとより、女ターザンにもだいぶ離されてしまい、もう追いつけそうにない

最後の1kmこそは、もう全力を出し切ってラストスパートと思ったんだけど、ペースが全然上がらない。足が前に伸びない。おかしいなあ。
と思いつつも、ちょっと前から勝手にライバル視していた目障りなランナーがいて、こいつにだけは勝とうと思ってスイッチを入れ直すと、一気にスピードアップできた。やはり気持ちの持ちようと言うか、精神的なものでスピードは変えられるもんだ。レースの中盤で、こんな風に気持ちを切り替えられたらいいんだけど、なかなかうまくコントロールできない。


〜 ゴール 〜


最後の最後は短距離走のようなスピードに上げてゴールした。最後の最後だけスピードアップしてもあんまり意味は無く、結局、良いタイムは出なかった
なんとか4年前のタイムよりは良かったので、老化による長期的かつ着実なタイムの悪化は食い止められたが、大した挽回には至らなかった。

ゴールするとD木谷さんが出迎えてくれた。彼は最後まで順調に走り、余裕で1時間を切っていた。
しばらくすると支部長が帰ってきた。私とは2分くらいの差だった。折り返した時の差の2倍くらいだから、後半も同じようなペースだったわけだ。

(幹事長)「前半速かったけど、まさか大きな坂でも歩かなかった?」
(支部長)「全然、歩かなかった」
(幹事長)「後半もペースダウンしてないって事は、後半も歩かなかった?」
(支部長)「最後まで一歩も歩かなかった」


あれだけ坂に弱かった支部長が庵治マラソンで一歩も歩かなかったなんて、やはり山岳マラソン4連戦の成果が出ているなあ。
さらに続いてピッグもゴールした。支部長との差は30秒程度だ。折り返し点での差を縮めている。ううむ。やっぱり終盤に強いなあ。

今回の敗因は明らかだ。H本さんに着いていったのが失敗だったのだ。ストーカー走法が失敗だったのだ!

(H本)「だから、やめてって言ったでしょ!」

彼女は上りは抑えて走るけど、下りはガンガン飛ばすのだ。せっかく前半の上りを一緒に抑えて走ったのに、後半の下りで一気に置いてかれると、もう追いつけないのだ。彼女はずうっと一定のペースをキープして走るものと思っていたら、上りと下りでペースが全然違っていたのだ。

(支部長)「私みたいな走法やな」
(幹事長)「上りも下りも、支部長よりは速いで」


結果的に言えば、前半の上りでは、あんなに抑えることなく自然体でもっとスピードを上げて走った方が良かったと思う。ゴールした後の余力の残り具合を見れば、前半で抑えて残していた力を後半に使い切ることはできなかった。他人の力に頼ろうとしたのが間違いだったなあ。

(支部長)「他力本願は、あかんのやってば」
(幹事長)「来年は作戦を変えるぞ!」


レース前半から勝手にライバル視して競り合っていた女ターザンが近くにいたので話をしてみた。

(幹事長)「裸足で走って大丈夫なんですか?」
(女ターザン)「先週走った四万十ウルトラマラソンに比べれば軽い軽い」
(幹事長)「せせせ、先週、うるとらまらそんはしったんですかあっ!?」


なんと四万十ウルトラマラソンでも、100kmのうち50kmは裸足で走ったんだそうだ。

激しく競り合った女ターザンと和解


足の裏はシューズの底のように分厚くて頑丈になっているのかと思ったら、なんと柔らかい綺麗な足の裏をしている。

(女ターザン)「犬や猫の肉球と同じで、柔らかい方が走りやすいんですよ」
(幹事長)「いや、でも、固くならんのですかーっ!?」


特別なケアをしているのだろうか。トンでもない実力者だった。


〜 反省会 〜


参加の記念品と一緒に、近くの温泉のタダ券をくれたので、レース後はみんなで温泉に繰り出して反省会をする。先日の龍馬脱藩マラソンの時もそうだけど、レース後に近くの温泉に入れるのは嬉しい。身体もさっぱりするし足の疲れも和らぐ。

(支部長)「て言うほど疲れては無いけどな。12kmしか走ってないから」

支部長はタイムも悪くはなかったし、何と言っても、大きな坂を含めて一歩も歩かなかったというのは大きな成果だ。
それに引き替え、私は絶好のコンディションの中、体調も万全だったし、何の言い訳も通用しない状況で、しかも自分的には最後まで力尽きることなく快適に走れたのに、ああ、それなのに、パッとしないタイムだった
V字状に着実に悪くなっていたタイムの悪化はなんとか食い止められたけど、何の悪い要因も無いのにパッとしない結果に終わったってことは、これは、もう老化が原因としか思えない。調子が良くてもタイムは良くならないのだ。

(支部長)「今頃気付いたみたいにしみじみ言うの止めてよ」
(幹事長)「いや、諦めたらいかん。もっともっと練習するぞーっ!」
(支部長)「無理やってば」


〜おしまい〜




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