第39回 小豆島オリーブマラソン大会

〜 原因不明の絶不調が続く 〜



2016年5月22日(日)、第39回小豆島オリーブマラソン全国大会が開催された。

この大会には19年前の第20回大会から参加し続けているが、昔はヨタヨタ走っていると地元の老人が「ふれあい賞」なんて札を掛けてくれて景品を貰えるなど、のんびりしたムードが漂ったアットホームな大会だったが、近年の異常なまでのマラソンブームにより様変わりしている。


〜 エントリー 〜


この大会に限った事ではないが、以前は田舎のマラソン大会で定員が一杯になるなんて事はあり得なかったから、誰でも気が向いたら参加できていたのに、最近は世紀末的なマラソン狂走曲のせいで、こんなローカルなマラソン大会でも申し込み受付が始まったら、あっという間に定員いっぱいになり、油断して少しでも申し込みが遅れると参加できなくなってしまう。このような熾烈なエントリー競争は、この大会に限ったことではないから、みんな分かり切ったことなんだけど、それでも、どうしても申し込み損ねるケースが後を絶たない。申し込み当日に飲み会なんかが入っていると当然ながらエントリーは不可能だが、そうでないのに忘れてしまう事も多い。申し込み開始時間は夜の8時とか10時が多いので、家で晩酌しながら夕食を食べたりしていると、ついつい忘れてしまうのだ。

(幹事長)「明らかに若年性認知症が進行してるんだろうなあ」
(ピッグ)「もう若年性じゃなくて年齢相応ですよ」


今回はエントリー受付開始時間を書いたメモをあちこちに貼ったりし、また他のメンバーにもしつこく何度も注意喚起のメールを送り、全員、無事にエントリーが完了した。参加メンバーはのほか、ピッグ、支部長、ゾウさん、ヤイさん、國宗選手、DK谷さんといったところだ。

この大会は、出場エントリーもさることながら、交通の便の悪さも大きなネックだ。小豆島は、四国と本州と、どちらからでも船で1〜2時間で行けるため、関西地方からの参加者も多く、そういう意味では立地の良い大会と言える。しかし、レース会場である小豆島坂手地区には、港はあるけど船の定期航路があまりない。なので、主催者が出している高松発の臨時船に乗るか、他の港へ定期便で行くか、どちらかの選択となる。数年前に一度、定員8名の私の車に9人で乗り合わせて池田港に上陸して行ったこともあるが、移動に時間がかかるうえ、駐車場を探すのも一苦労で、会場へ着くのがギリギリになったので、その後は臨時船に戻った。ただ、臨時船は古いフェリーボートを借り切ったものであるため、座席が少くて、早く行かないと通路の片隅に体を丸めてしゃがみ込むか、広い車両甲板に寝転がるしかない。車両甲板は固い鉄板で、おまけに朝は冷え込み、逆に帰りは太陽熱で焼けて熱くなり、とても人間扱いされているとは思えない状況だ。そのため、我々は、この臨時船を奴隷船と呼び、恐れおののいているのだ。
それなのに、最近の異常なマラソンブームにより、この奴隷船にすら、早めに申し込まないと定員オーバーで乗船券を入手できなくなっている。奴隷船は満杯というか定員の3倍くらい詰め込まれるので、もはや家畜船と呼ぶのが相応しいかもしれないが、奴隷船だろうが家畜船だろうが、この乗船券ですら最近は入手が困難なのだ。マラソン大会への参加自体はランネットで申し込めるから簡単なんだけど、奴隷船のチケットは参加申込みとは連動しておらず、別途、郵便振込みで申し込まなければならないから、マラソン大会にはエントリーできても、奴隷船が定員一杯で交通手段に困る人が続出するのだ。

(支部長)「私の部下の田G君は、奴隷船にあぶれたからジャンボフェリーで行くって言ってたよ」
(幹事長)「えっ?ジャンボフェリーって坂手港に着くん?」


知らなかった。ジャンボフェリーなんて、名前から想像すると、いっぱい乗れそうだから、それなら何も苦労して奴隷船に乗る必要はないぞ。ただし、ジャンボフェリーの高松からの出港時間は6時なので6時50分に出港する奴隷船より早い。それだけがネックか。

(支部長)「でも、どうせ奴隷船やって座席を確保しようと思えば6時では遅すぎるくらいやからな」
(幹事長)「そうやなあ。同じやなあ」


しかも奴隷船は2000円もするのにジャンボフェリーは往復で1380円だ。奴隷船よりジャンボフェリーの方が良かったかなあ


〜 天候 〜


大会の数日前の天気予報では、当日の天候は良さそうだ。「良さそう」と言うのは「晴れそう」っていう意味であり、マラソンのコンディションとして良いっていう訳ではない。このレースは毎年5月末に開催されるが、この季節は天気が良いときは本当に気持ちが良い。まだ湿度があんまり高くないから、木陰でボケッとしてるぶんには暑くなく、大変、気持ちが良い季節なのだ。ただし、マラソン大会となると事情は異なる。木陰は気持ち良くても、炎天下を走るとなると非常に暑い。個人的には寒いのは嫌いで、暑い方が好きだから、真夏の炎天下で汗だくになって走るのも楽しくて好きだけど、しかし、いくら好きでも暑いとタイムは悪くなる。
むしろ雨の方が望ましいくらいだ。昔の私たちなら、雨のマラソン大会なんて走る気が起きなかった。朝から雨が降っていると、空を見上げながら連絡を取り合って、結局、みんな揃って欠場って事も多かった。しかし、6年前のこのレースで考えが変わった。その日は朝からものすごい土砂降りの雨だったので、みんなで欠場の相談をしていたら、我がペンギンズのエース城武選手から「雨がどうしたんですかっ!何を考えてるんですかっ!」と一喝され、渋々参加した。ところが、土砂降りの雨は、走りにくいどころか、気温が低くなって走りやすくて、後半の大きな坂も全然、苦にならず、最後までペースダウンすることなく、というか、坂が多い後半の方がペースアップしてタイムが良くなるという考えられないレース展開でゴールし、2時間を大幅に切る大会自己ベストとなった。私だけでなく、最後までデッドヒートを演じたピッグも快走だったし、支部長も例年なら絶対に歩く最後の大きな坂も歩かずに2時間を切る大会自己ベストを出した。もちろん、エース城武選手が優勝したのは言うまでもない。それ以来、暑い季節には、むしろ雨を好むようになったのだ。

この大会には18年前の1997年から出続けているが、昔からずうっとタイムが悪く、実は2時間なんて切ったことがなかった。私に限らず、昔から一緒に出ているピッグや支部長だって、他のレースに比べたらタイムは悪かった。でも、それが暑さのせいだとは誰も思わなかった。いくら暑いと言ったってまだ5月なんだから、7月下旬の炎天下の汗見川マラソンや四国カルストマラソンのような地獄の暑さではないからだ。
なので、このレースのタイムが悪い理由は坂が多いからだと信じていた。この大会のコースは、スタート直後の大きな坂の後は、前半は草壁の町の中心地まで行って折り返してくるという坂が無いフラットなコースなんだけど、後半に入ると、二十四の瞳の舞台となった岬の分教場まで行って折り返してくるという曲がりくねった狭い海岸線のコースとなる。この海岸線の道路は、曲がりくねっているだけでなく何度も何度も丘を越えてアップダウンが繰り返される。まだまだ元気な前半に坂があるのなら耐えられるけど、疲れ始めた後半に坂が次から次へと襲ってくるので、後半は厳しい戦いとなるのだ。
同じ小豆島だけど、反対側の北西部で行われる11月の瀬戸内海タートルマラソンも同じように坂が多いが、なぜかそちらの方はタイムが良い。タートルマラソンはコース全般に満遍なく坂が配置されてるけど、オリーブマラソンは疲れが出る後半に坂が集中するのが良くないのだと思っていた。なので、この大会では2時間を切るなんて絶対不可能だと信じていた。

マラソンは極めてメンタルなスポーツなので、走る前から「このコースでは2時間を切るなんて絶対不可能だ」なんて決めつけていたら、現実にも2時間を切ることは難しい。途中で苦しくなったら、「どうせ良いタイムは出ないコースだから」と、すぐに諦めるからだ。以前は、最後の大きな坂では、ほぼ必ず歩いていた。無理して走っても、どうせ良いタイムは出ないと信じていたからだ。
それなのに、土砂降りの中、みんな揃って快走したもんだから、メンバー全員、衝撃を受けた。オリーブマラソンのタイムが悪かったのは、坂が多いからというだけではなくて、むしろ暑さのせいが大きかったのだ。そのため、それまではみんな雨を嫌がっていたんだけど、一転して、暑い季節のマラソンは雨乞いをするようになった。そして、その翌年も、序盤に激しい雨が降ったため、前年と同じように後半にペースを上げることができて、大会自己ベスト2位を出した
雨さえ降れば良いタイムが出るという事が分かり、それまで大の苦手だったこのレースに対して、なんとなく自信がついたが、その翌年はいつものような炎天下のレースとなり、以前のように2時間オーバーの惨敗となったため、「雨が降ると良いタイムが出るけど、天気が良いとタイムは激悪になる」という法則が確立された。

ところが、一昨年は炎天下だったのにもかかわらず、最後までペースが落ちず、と言うか、後半の方がペースアップして速くなり、好タイムでゴールすることができた。この要因は、秘密兵器のメッシュのシャツだ。他のメンバーからは「恥ずかしいから脱いでくれ」という批判が沸き起こったが、気にせず着て走ったところ、炎天下にもかかわらず暑くならなかったのだ。そして、タイムは土砂降りの時に出した大会自己ベストより6秒だけ遅い大会自己ベスト2位だった。マラソンは極めてメンタルなスポーツなので、「雨が降らなくても頑張れば良いタイムが出る」という事が分かったのは大きな収穫だった。
そして去年も2年連続の炎天下のレースとなったが、自信を持ってメッシュのシャツを着て走ったら、一昨年と同様に前半より後半の方がペースアップできて、しかも過去のタイムを大幅に更新する大会自己ベストで走りきった。最後まで全然足が重くならず快調に走れたのが本当に気持ち良かった。一昨年、去年と調子が良かったのは、他に要因が見付からないので、やはりメッシュのシャツの威力だと思う。このおかげで、あんまり暑くなかったのが勝因だ。
つまり、雨が降らなくても、暑さ対策さえ万全に施せば、怖いものは無いのだ。なので「天気が良さそう」っていうだけでなく、前日なんか全国的に30℃を超える猛暑になり、当日も猛暑が続きそうっていう予報だったけど、「それがどうした。返り討ちにしてくれよう!」っていう気持ちだった。


〜 乗船 〜


当日の朝は早起きをしなければならない。いくらプラチナチケットの奴隷船乗船券を持っていても、遅く行ったら奴隷か家畜のように車両甲板に転がされてしまう。奴隷船に人間の尊厳を維持したまま乗るには、かなり早く港に行かなければならない。奴隷船が出港するのは6時50分だが、6時には乗船開始となるので、6時過ぎに港に着いたのでは遅く、既に座る場所が無くなっている。一昨年は5時45分に港に着くと、まだまだ列は短く、余裕で座席を確保できたが、去年は5時45分に着くと、なんと既に50人以上の長い列が出来ていた。たまたま支部長が時間を間違えて、もっと早く来ていたから座席を確保できたが、今年はもっと早く行かなければならない。
て事で、自宅を5時に出た。5時に出るってことは、遅くとも4時半には起きなければならない。4時半に起きるなんて、若い頃なら想像を絶する世界だったが、高齢化が進んだ今は、なんとか起きられるようになっている。5時に家を出ると5時10分には港に着いた。既に何人かは並んでいるだろうと覚悟していたが、なんと、人っ子一人誰もいない。かろうじて船会社の人がいたから「どこに並んだらえんかいな?」って聞くと「まあ、そこら辺におってください」なんて適当な事を言われた。
今日は折りたたみのイスを持ってきているので、一人寂しく座って待っていたら、10分ほどして支部長がやってきた。イスは2つ持ってきているので、二人で座って待ち続ける。さらに10分ほどしたらD木谷さんがやって来た。つい先日、7月31日開催の汗見川マラソンの受付があったんだけど、D木谷さんは失敗したっていうので確認する。

(幹事長)「今年も汗見川マラソンの申し込みを失敗したんですって?」
(DK谷)「せっかく周知メールをもらいながら、ついうっかり時間を過ぎてしまって、11時近くになって覗いてみたら、既に終了してました」
(幹事長)「私は8時1秒にパソコンのキーを叩いてあっさりとエントリーできたけど、聞くところによると今年は8時7分には終了したらしいですよ」
(DK谷)「たった7分で終了ですかっ!」


ほんとに7分で終わったのかどうかは分からないけど、去年も1時間後には終了していたから、あっという間に終わったのは間違いない。あんな山の中のマイナーな草レースなのに、信じられない人気だ。

意外なほど行列は延びず、5時半になったというのに数人しかいない。ちょっと早く来すぎたか。なんて思って5時40分頃に後ろを振り返ってびっくり。いつの間にか一気に50人くらい並んでいる。電車が着いたんだろうか。

結論](来年への教訓メモ)
 ★5時半まではほとんど来ないが、5時半を過ぎると一気に人が増える。なので5時半までに来ればOK。

(幹事長)「本当に役に立つメモやな」
(支部長)「それは認めよう」


6時前になり、ようやく乗船開始となる。ところがここで問題発生。奴隷船の乗船券はピッグが一括して申し込んでくれて、保管していた。私と支部長は場所取りに早めに並ぶため事前に乗船券をピッグから受け取っていたが、D木谷さんの乗船券はピッグが持ったままだ。なのでピッグが来るまでD木谷さんは船に乗れない。てことで、私と支部長が二人でダッシュして座席の確保に走る。船の2階席の一番前にあるボックス席を2つ押さえた。
しばらく待っていると國宗選手やヤイさんがやってきた。さらに福家先生も登場する。福家先生も最近は出るレースが減っているが、このオリーブマラソンは欠かさず出ている。それからゾウさんもやってきた。ゾウさんもエントリーはしてたんだけど、オメデタとなったため、しばらくはレースに出られなくなった。でも、せっかく奴隷船も申し込んでいたため、今日は応援のために来てくれた。

(幹事長)「体調はどうなん?」
(ゾウ)「すごく良いですねえ。早く走りたいなあ」


ゾウさんが欠場するのは大きな痛手だ。「ゾウさんに負ける訳にはいかない」という危機感が無くなってしまうからだ。先月の徳島マラソンで史上空前の惨敗を喫したのも、ゾウさんが欠場したという要因が大きいハーフマラソンでは、フラットな丸亀マラソンで負けてしまったので、坂が多くて厳しいオリーブマラソンで真の実力を発揮してリベンジしようと思っていたのに、ゾウさんが欠場するとなるとモチベーションが一気にダダ下がりだ

乗船券を預かっていたメンバーが揃ったのでピッグも船に上がってきた。さらに支部長の知り合いの徳島支店のN村さん夫妻もやってきた。奥さんの方が参加で、旦那の方は応援というか付き添いだそうだ。ペンギン中村君とこみたい。さらに、今年も恋さんが登場した。

(幹事長)「1年ぶりですねえ、鯉さん。相変わらず大会に出まくってるんですか?」
(故意)「なんぼでも出とるな」


恋さんは、かつて私が経理部に居た頃の同僚で、マラソン大会に出始めたのは一昨年からだけど、もともと基礎体力もあるし、あっという間に我々のレベルを追い越していった。今年に入っても、フルマラソンに出まくっている。

(幹事長)「体は大丈夫ですか?」
(濃い)「最初の年はあちこち故障したけど、今は全然大丈夫やな」


〜 出港 〜


6時50分になって、ようやく船が動き始めたので、朝食だ。さすがに早起きしたからお腹が空いてきた。本当は家を出る前に朝食を食べてトイレも済ませたいところだが、いくら早起きが苦痛でなくなったとは言え、普段より早い時間に朝食を食べるとお腹を壊す可能性が高いので、家では食べず、船に乗ってから食べるのだ。
以前はマラソン大会の朝食と言えば、決まって菓子パンをたくさん食べていた。もともと菓子パンは大好きだし、マラソン大会に出る時は、たいてい普段より早く家を出るので、手軽に菓子パンを食べていたのだ。しかもエネルギー補給と言うことで、たくさん食べていた。ところがここ数年、2008年の徳島マラソン2009年の走れメロスマラソン3年前のオリーブマラソンのように、マラソン大会で走っている最中にお腹を壊してトイレに駆け込むことがある。そこまでいかなくても、ゴールと同時にトイレに駆け込むこともよくある。一昨年のタートルマラソンだって、ゴールしてソーメンを食べたところでお腹の調子が悪化の頂点を迎え、トイレに駆け込んだし、去年の丸亀マラソンも苦しんだ。この原因を深く考えてみたら、菓子パンが原因ではないのかって思えてきた。て事で、去年の徳島マラソンから菓子パンじゃなくて、おにぎりを食べるように変えた。そのせいかどうかは分からないが、少なくともそれ以降はマラソン大会でお腹を壊していない。
単なる気のせいかとも思っていたが、去年の秋のNHK「ためしてガッテン」を見てたら、パンなんかに含まれるフルクタンという糖類は消化に悪く、下痢になりやすいことが分かった。もちろん個人差があって、みんながみんな下痢する訳ではない。でも、牛乳を飲んだら下痢をする私のようなタイプの人間は、朝、空きっ腹にパンをたくさん食べると数時間後にはお腹を壊すらしい。特に、マラソン大会の朝食って言うと、エネルギー補給とばかり砂糖なんかを大量に使った甘い菓子パンをたくさん食べていたので、とてもお腹に悪かったのだろう。これに対して、お米に含まれている糖類は消化が良いとのことなので、おにぎりを食べれば問題ない。で、パンの代わりにおにぎりを2個食べるようにしてたんだけど、先日見たNHKのラン&スマで金さんがおにぎりは大き目なのを2個食べた方が良いって言ってたから、コンビニの小さ目のおにぎりなので3個に増やした。おにぎりで好きなのはタラコや鮭なんだけど、なんとなく消化に悪いような気がするので、梅とオカカと昆布のおにぎりにした。あと、金さんのアドバイスに従って、スタート直前に食べるバナナも持ってきた。

(支部長)「この、どうでもいいような詳細な記述もメモ代わり?」
(幹事長)「はいな。来年も覚えておかないといけないからな」


さらに、今のところお腹の調子は悪くないんだけど、用心には用心を重ねて、下痢予防のために予め下痢止めの薬も飲む

(國宗)「相変わらず着るものと、お腹を壊すことには心配性ですね」
(幹事長)「ふふふ、今日は着るものには悩まないんだよ」
(國宗)「え?どしたんですか?」
(幹事長)「後ほど公表しよう!」

(ゾウ)「こないだの徳島マラソンは調子悪かったんですって?」
(幹事長)「絶望的な絶不調やったなあ。何が原因か分からないのが困るんよ。当日のコンディションとしては寒くもなく暑くもなく風もなく絶好のマラソン日和だったし、
       体も痛いところは無いし風邪も引いてないし、何の言い訳もできない状況で、あり得ないほどタイムが悪かったんよ」


本当に徳島マラソンの結果は衝撃的なほど悪かった最後まで一歩も歩かずに完全完走したのに、過去、いっぱい歩きまくった時よりタイムが悪かった。歩かなかったと言っても、最後の方は歩いているのと同じくらいのペースだった。一体、何が悪かったのか未だに原因不明だ。

(支部長)「だから単なる老化やってば。もう歳なんよ」
(幹事長)「老化が進んでいるのは認めるけど、そんなに急に劣化するかなあ」
(ヤイ)「練習はしてるんですか?」
(幹事長)「いや、ま、ちょっと、ほかごとで遊び過ぎたかもしれないけど」
(ピッグ)「徳島マラソンの後も登山に行ったり自転車に乗ったり、ですよねえ」


確かに4週間前に徳島マラソンで惨敗した後も、その翌週には超強行スケジュール南アルプス日帰り電撃弾丸登山に行ったし、そのまた翌週は香川県最高峰の竜王山へサイクリング登山したし、その翌週は吉野川市の船窪つつじ公園へツツジを観に行ったりした。つまり先週のことだ。

(ピッグ)「ランニングはしてないんですか?」
(幹事長)「さすがにマズいと思って船窪つつじ公園へ行った翌日に20kmほど走ろうとしたら、なんと8kmほど走っただけで足が動かなくなって、
       休んだり歩いたりしながら12km走ったのが最長」


いくら惨敗したと言っても、フルマラソンを完走したんだから、1ヵ月後のハーフマラソンくらい練習しなくても楽勝で完走できると思っていたけど、そんな甘いもんではないような気がしてきた。

(支部長)「ほんじゃ、今日の目標は?」
(幹事長)「密かに大会自己ベストを狙いつつも、取りあえず2時間切りを目標とします」


どんなレースでも、常に大会自己ベストを狙うのが良い子のランナーとしてあるべき姿だ。今日は炎天下のレースになりそうだけど、去年は炎天下のレースで大会自己ベストを出せたので、もう暑さは平気だ。一昨年も炎天下で結構、良いタイムだったし、3年連続の炎天下のレースで今年も良いタイムが出る可能性はゼロではない。しかし一方で、徳島マラソンの絶不調が解消したとも思えないので、取りあえず控えめな目標としては2時間切りを目指すことにした。
レース展開としては、他のレースのように前半にできるだけ貯金して後半にペースダウンしていくというパターンではなく、前半は抑えて後半にペースアップするという理想的な走りを目指す。なかなか難しいパターンだが、このオリーブマラソンに限って言えば、ここ数年、好タイムを出したときのレース展開は、どれも後半にペースアップできている。それを表したものが、このグラフだ。

過去のレースの1kmごとのタイム推移


このグラフは、過去のオリーブマラソンの1kmごとのタイムを折れ線グラフにしたものだ。最初のうちは距離表示が1kmごとに無いからフラットなグラフになっているが、どっちみちあまり違いは無い。違いが大きくなるのは後半だ。明らかに2つのパターンが見て取れる1つは14km以降、みるみるうちにタイムが悪くなっていくパターンで、もう1つは逆に終盤にペースアップしていくパターンだ。2つ目の折り返し点である二十四の瞳の岬の分校までが13.5kmほどだから、そこからの帰りに大きく違いが現れるということだ。当たり前と言えば当たり前過ぎる結果だ。前半はそれほど大きな違いは無く、違いが現れるのは終盤で、普通に考えればペースダウンしていく。特に後半に坂が多いオリーブマラソンでは、ペースダウンの程度も激しい。ところが、前半をうまくコントロールできれば終盤にペースアップする事が可能であり、その場合は、良いタイムが出るということだ。これまた当たり前と言えば当たり前のようだが、このようにきれいに2つのパターンに分かれるのはオリーブマラソンだけだ。

(ピッグ)「見事に2つのパターンに分かれてますねえ。中間ってのが無いんですねえ。どうやったら良いパターンで走れるんですか?」
(幹事長)「それが分かんないから困るのよねえ」


どうやったら失速パターンになり、どうやったらペースアップ・パターンになるのかは、全く分からない。雨が降った時は良いパターンになったが、一昨年と去年は炎天下でもペースアップできたから、よく分からない。ただ、2つ目の折り返し点を過ぎてもペースが落ちなかったら、その後はペースアップできる可能性が大きいということだ。諦めることなく、最後まで突っ走れば良いタイムが期待できるのだ。

(幹事長)「ところで支部長の調子はどんなん?」
(支部長)「ふふふ、実は最近、1500mを40分で泳げるようになったのだよ」
(幹事長)「ええっ!?40分でっ!?げげげげっ!!」


近い将来、高松トライアスロンへの参加を目指している我々だが、最大のネックはスイムだ。自転車とランは何とでもなるだろうけど、スイムで撃沈しそうなのだ。高松トライアスロンのスイムは距離が1500mで制限時間が50分なんだけど、私はプールで泳いでも、なかなかこれをクリアできない。波がある海なら、もっと厳しいだろう。ところが支部長は一気に40分で泳げるようになったと言うのだ。これなら海でも大丈夫だろう。

(幹事長)「すごい!すごすぎるっ!」
(支部長)「わっはっはっは」
(ピッグ)「・・・あのう、マラソンとはあんまり関係無いのでは・・・」


たぶん、私の場合、自己流で適当に泳いでいるからフォームが悪いのだと思う。一度、誰かの指導を仰ぎたいものだ。

(ピッグ)「だから、その前に今日のマラソンをクリアしてくださいな」


〜 島上陸 〜


1時間半の船旅が終わって小豆島の坂手港に着くと、いつものように島の小学生達の鼓笛隊が演奏で迎えてくれる。本当に心温まる歓迎だが、年々、隊員の数が減ってきているような気がする。少子高齢化が急速に押し寄せる島嶼部なので、小学生の数も減っているんだろうと思うが、いつまで鼓笛隊を維持できるのか心配だ。

一昨年までは会場横の公園に陣取っていたが、去年は帰りの船に乗るのが便利っていう理由で、船を降りてすぐの狭い芝生のところに陣取った。何かと都合が良かったので、今年もここに陣取ることにした。シートを敷いて荷物を置き、受付へ向かう。
このマラソン大会は事前にゼッケンやチップが送られてくるようになったので、受付と言っても、参加賞をもらうためだけの受付だ。最近、大きな大会になると、前日に現地で受付をしなければならない、なんていうトンでもない風習が蔓延しており、遠方から参加する人にとっては迷惑この上ないのだけど、当日の朝の受付さえ不要なオリーブマラソンのシステムは大いに評価されるべきだ。
参加賞は今年もタオルだ。Tシャツはタンスから溢れているのでタオルの方が大歓迎だが、今年のタオルはあんまり大きくないので、バスタオルには小さいかも知れない。

もらう物をもらったら、いよいよマラソン大会における最重要課題のウェアの選択に入る。と言っても、今年は迷う余地はない

(國宗)「どどど、どしたんですかっ!あらゆるマラソン大会で何を着るかで悩みまくっているのに!?」
(幹事長)「ふふふ。もう着るものは決まっておるのだよ。一昨年、去年と大活躍した秘密兵器じゃ!」


もう2年も着ているので秘密とは言えなくなっているけど、秘密兵器とはメッシュのシャツだ。一昨年、去年と炎天下のレースにもかかわらず大会自己ベストを更新できたのは、このメッシュのシャツのおかげだと思う。他のメンバーから「恥ずかしいから脱いでくれ」という批判が沸き起こったにもかかわらず、気にせず着て走ったところ、炎天下にもかかわらず暑くならなかったのだ。それまで炎天下のレースでは惨敗続きだったのが、急に快走できるようになった理由は他には見当たらない。なので、今年も炎天下になった場合は、これを着ると決めてきたのだ。徳島マラソン以降の絶不調は原因不明で、脱却できるきっかけすら分からない状況だが、もしかしたら、このメッシュのシャツで今年も快走して一気に脱却できる可能性に賭けているのだ。

(DK谷)「それ良いですねえ。私も欲しいなあ」
(ピッグ)「でも、もうボロボロですねえ。首のところ破れてますよ」
(幹事長)「新しいのが欲しいんだけど、どこにも売ってないんよ」


今から30年近く前に子供と海水浴に行く時に着てたもので、一昨年、突然、存在を思い出し、押し入れの奥底から発掘したのだ。これならどんなに強い日射しが照りつけてきても、ほとんど何も着てないのと同じくらい涼しい。

今年もメッシュのシャツで行くよーっ!


(國宗)「それにしても幹事長が着るもので悩まないなんて、本当に珍しい!」
(幹事長)「本当なら裸で走りたいくらいだけど」
(DK谷)「トライアスロンでも裸は駄目ですね」
(ピッグ)「それって網目状に日焼けしませんか?」


さすがに、そんな事にはならないと思うけど。
下は、青森勤務時代に作った陸上部のユニフォームのランニングパンツだ。短くて軽いので、これを着ると非常に走りやすく、一昨年も去年もメッシュのシャツとセットで着て快走できた。
一方、いつものことだけど、支部長もヤイさんも國宗選手も重装備で、タイツを履いたりしている。

(幹事長)「見てるだけで暑そうやなあ」
(支部長)「どっちみち暑いんやってば。それにタイツにはサポート機能があるからな」

着替えが終わってやる気まんまんのメンバー
(左から國宗選手、ゾウさん、ヤイさん、N村さん、支部長、幹事長、ピッグ、D木谷さん、福家先生)


炎天下なので日焼け防止は必須だ。ピッグも私も日焼け止めクリームを塗りまくる。

(支部長)「汗で流れてベタベタするやろ」
(幹事長)「どっちみち汗でベタベタするんやってば」


さらにサングラスも必須だ。歳とってくると紫外線による目への悪影響が強まって白内障の危険性が出てくるので、鬱陶しいけどサングラスをかけなければならない。日射しを遮るため帽子は迷ったけど、頭が蒸れて暑くなるのも嫌なので被らないことにした。最後に持ち物点検だが、汗を拭くハンドタオルは必携なんだけど、このランニングパンツはポケットが無いので持てない。しかし、お腹を壊した時に絶対に必要になるのでティッシュペーパー下痢止めだけはパンツの中に強引にしまいこむ。

(ピッグ)「お腹を壊す事に異常なまでの不安感を持ってますねえ。下痢止めはさっき飲んでたじゃないですか」
(幹事長)「用心には用心を重ねて」


準備も終わったので、そろそろトイレを済ましておこうと思い、例年のように港にある小さなターミナルビルの中の小さなトイレに行こうとした。ほとんど存在を知られていないため、いつも空いているのだ。ところが、我々が陣取った場所のすぐ側に仮設トイレが多数並んでいて大勢のランナーが長蛇の列を作っているのだが、一部のトイレボックスは妙な配置になっていて、長蛇の列に並んでいるランナー達からは死角になって見えないようになっている。そのため、ほとんど空室のままだ。我々は長蛇の列の反対側に陣取っているから、並んでいるランナー達から見られることなく空室のトイレに自由に出入りできる。

(幹事長)「これは一体、どういう事なんだろう?」
(支部長)「トイレの配置ミスやな。ラッキー!」


長打の列に並んでいるランナー達には気の毒で、なんとなく後ろめたい気持ちもあるが、ずうっと空室のまま放置されているのだから、使ってあげないともったいない。て事で、今年は全員、速やかにトイレを済ますことができた。

スタート時刻は10時なので、まだまだ時間がある。ダラダラしていると矢野プロにバッタリ出会う。矢野プロには、3週間後に出場する北山林道駆け足大会について、ちょっと前に電話で問い合わせた事がある。北山林道駆け足大会は「おんちゃん」からメールでお誘いがあって初めて知ったマラソン大会だが、矢野プロも出たことがあるらしいと言うので、様子を聞いてみたのだ。その時、彼と同じ職場にもう一人、同姓の人がいて、間違ってそっちに電話を掛けてしまい、妙に話がかみ合わないまま延々と話をしてしまった。オレオレ詐欺って、「なんであんなんに引っかかるんやろ。声が違うから詐欺やって分かるやろ」って思ってたんだけど、思い込んだら電話の声なんてアテにならないって事が身に染みて分かった。勉強になりました。
しばらくすると、矢野プロから聞いたとて新城プロもわざわざ来てくれた。新城プロは去年の春から東京へ職場を移していて、色々と活躍しているが、東京へは単身赴任で行ってるので、この大会には帰ってくるのだ。


〜 スタート 〜


まだスタートまで時間はあったが、どうせダラダラ待っているだけだから、スタート地点に移動する。スタート地点では、予想タイム順に並ぶようになっている。昔のように参加者が少ないときは、誰がどこに並んでも何の問題も無かったけど、最近のように大勢のランナーが出るようになると、コースの道路が狭いだけに、大混雑になって走りにくいので、予想タイム順の整列は必須だ。だが、どうしてもみんな、できるだけ前の方に並ぼうとして混雑している。一番前は70分台を目標にしたランナーが並ぶようになっているが、どう考えても多すぎる。て言うか70分台で走れるランナーなんかほとんどいないはずだ。それなのに、めっちゃ大勢のランナーが並んでいる。ランナーが前の方に並びたがる理由は、もちろん、スタートの号砲から自分がスタート地点を越えるまでのタイムロスを少なくするためだ。この大会はタイムをチップで計測してくれるんだけど、それはゴール地点だけで、スタートはチップでは計測してくれず、ネットタイムは出してくれないのだ。なんでかなあ。

空は相変わらず雲が無く、ジリジリと日射しが照りつける。待っているだけで支部長なんかは汗びっしょりだ。しかし私はメッシュのシャツのおかげで全然暑くない

(幹事長)「君ら暑いやろ?スタート前から勝負は着いたな」
(支部長)「いや、ほんと、めっちゃ暑いなあ」


スタートまで、あと30秒」というコールの後は、カウントダウンは無くて、いきなりスタートのピストルが鳴った。去年も同じだったので心の準備は出来ている。て言うか、すぐには動き出せないので、心の準備は不要だ。しばらくして動き出すが、まだ走るのは無理で、スタート地点に行くまではゆっくり歩かなければならない。スタート地点まで歩くと、ようやく走り始める。とは言っても大混雑で思ったようには走れず、しばらくはノロノロと走る。ダラダラ進む前のランナーが鬱陶しいが、前のランナーの前にも、その前にも延々とランナーがダラダラ走っているから焦っても仕方ない。無理して追い抜いても意味は無い。最初はウォーミングアップと割り切って、ゆっくり走ればいい。

このコースはスタートした直後にいきなり大きな坂があり、以前は恐れおののいていたが、一昨年、自転車で小豆島を一周した時に通ると拍子抜けするほどあっさりと登れてしまい、恐れるに足りない存在となった
大きな坂を過ぎると、その後は草壁港の近くにある第1折り返し地点まで平坦な道が続く。混雑はまだまだ解消されていないが、だんだん自分のペースで走れるようになってくる。炎天下ではあるが、メッシュのシャツのおかげで、ほとんど暑さを感じない。調子に乗って走り出すと、関節や筋肉など、足のあちこちが痛み出す。でも、これは深刻に考える必要はない。普段と違うペースで走り出せば色んな所が痛み始めるが、しばらく走っているうちに痛みは消えるものだ。
大惨敗した徳島マラソン以来の絶不調を引きずっているので、まともに走れるかどうかも不安だったが、周囲のランナーとも同じようなペースで走れているから、取りあえず問題無さそうだ。ただ、このレースは距離表示が5km地点まで無いため、今のペースがどれくらいなのか見当がつかない。不安を抱えながらも、とにかく5km地点まで自然体で走っていくしかない。
なんて思って走っていたら、早くもDK谷さんが追い抜いていく。まだまだ序盤なので着いていこうかと思ったけど、あんまり無理すると後で悪影響が出ると思い、自重する。

このレースは、マイナーなローカル大会なんだけど給水所は多い。普段のレースなら前半の給水所はパスする事が多いけど、今日は暑くて早くも喉は乾き気味なので、早めにこまめに水分補給していく
まあまあ悪くないペースで走っているつもりなんだけど、まだ折り返し点にも達してないのに、なんとなく私を追い越していくランナーが多いことに気付いた。レース終盤にヨタヨタと走っている時は当然ながら大勢のランナーが追い抜いていくが、まだまだ序盤なのに追い越していくランナーがいるってのは珍しい。後ろの方からスタートした速いランナーがいっぱいいる、と解釈したいところだが、早くもペースダウンしているんじゃないかっていう不安が出てきた。

しばらくすると、1つ目の折り返し点で折り返してきたランナーとすれ違い始める。まだまだ上位陣も団子状態なので、誰が走っているのか確認は難しい。それでも一生懸命探していると、DK谷さんとすれ違う。早くもかなりの差が付いてる。彼が速いのか私が遅いのか。その後はランナーの数が多くなり、もう誰も見つける事ができなかった。折り返し点で折り返した後も他のメンバーを探したが、やはり見つからない。

折り返し点からしばらく行くと、最初の距離表示である5km地点が現れる。時計を見ると27分30秒くらいだ。序盤の混雑を考えても、さすがにちょっと遅い。去年と比べても1分ほど遅い。5km地点で1分遅れているって事は、21km走ると4分以上遅れるってことだ。しかも去年は後半にペースアップした。て事は、今年はそれ以上にペースアップしないと大会自己ベストは出せない。う〜む。早くも厳しい戦いになったか。どうりで追い抜いていくランナーが多いはずだ。
まだまだ暑さは感じないし、足が動かないっていう感覚も無い。でも徳島マラソンでも、自分では遅くなっている感覚が無いのにどんどんペースダウンしていったから、自分の感覚はアテにならない。
なんて思っていたら、なんとピッグが追い抜いていくではないか。去年はピッグは絶不調に苦しめられ、て言うか、あまりの練習不足のため超低空飛行を続け、このオリーブマラソンを含め私の敵ではなかったが、最近、復活してきたため、負けてもおかしくはないのだが、まだまだ前半なのに追い抜かれるとは思わなかった。やはり自分がよっぽど遅くなっているのだろうか。

しばらく行くと二十四の瞳の分教場がある岬へ向かう分岐点があり、その道へ入っていく。坂が多い海岸線のクネクネした道だ。前半のフラットな区間が終わったので、気分的には、ここまでで半分終わったって感じなんだけど、実はまだ8kmも走ってなくて、ここからの方が長い。
少し行くと、ようやく2つ目の距離表示がある8km地点となる。時計を見ると、この3kmは1km平均5分45秒くらいに落ちている。序盤も遅かったけど、さらに大幅にペースダウンしている。調子が良いときのパターンでは、後半になってペースを上げるんだけど、どう考えても今日はペースアップできるとも思えない。せめて、これ以上ペースが落ちないように踏ん張らなければならない。

8km地点の距離表示の後は1kmごとに表示があるので、ペースが分かる。次から次へと坂が現れるので、上り坂がある区間と下り坂の区間ではタイムは変動するが、おおよそのペースは分かる。すると9km地点、10km地点と、着実にペースは落ちているようだ。やはり厳しい戦いとなった。ただ、徳島マラソンの時と同様に、まだまだしんどくはなっていないし、自分ではそんなにペースが落ちている実感は無い。ただ足の動きは悪くなっていき、スムースに前に出なくなってきた

10km地点辺りで2つ目の折り返し点を折り返して帰ってきたトップランナーとすれ違う。ものすごく速いらしく、彼の後は後続が来ない。いつまで経っても来ない。何かの間違いかと思ったが、ものすごく経ってから後続のランナーがどんどん現れてきたから、1人だけ圧倒的に速いようだ。
しばらくすると新城プロがすれ違い、声を掛けてくれた。去年もそうだったけど、目立つ格好をしているから、見つけてくれ易いようだ。相変わらず新城プロは速い。やはりプロのレベルだ。

さすがに暑さは厳しくなってきて、給水所で水を含んだスポンジを置いてあるところでは必ずもらうようにする。その時だけではあるが、冷たいスポンジで顔や首を拭くとリフレッシュする。
その後、11km地点12km地点のタイムはそんなに悪くなっておらず、なんとか踏ん張れているようだ。
次の区間は大きな坂の下り坂になり、その下り坂をブレーキをかけることなく大股で走っていくと、次の13km地点でのタイムはかなりペースアップできた。ただし、調子が良いときはもっともっとペースアップできるのに、今日は物足りない。やはり足の動きが悪くなっていて、あんまり前に出ない。
ただ、相変わらず追い抜いていくランナーが多いものの、精神的にはまだまだやる気は萎えておらず、できれば挽回したい。

そこからしばらく行くと、二十四の瞳の映画村の前が第2の折り返し点だ。先行するDK谷さんとは、折り返し点のはるか前方ですれ違った。もう絶対に追いつけない距離差だ。しかも、それに続いて國宗選手ともすれ違った。彼にも負けていたのか!がーん!しかも彼とも結構な差が付いている。今のペースを考えると、やはり追いつけないだろう。ピッグの姿は見つけられなかったので差がどれくらい付いているのか分からない。残るは支部長とヤイさんくらいか。

なーんて思いながら折り返した直後に、なんと支部長がすぐ後ろを走ってくるのとすれ違った。ほとんど差は無い。非常にヤバイ。さすがに危機感から気合いが入るが、気合いが入っても足は動かない。折り返してすぐにある14km地点でのタイムも代わり映えのしないものだった。さらにそこからは緩い上り坂になっていき、少しペースダウンしていく。すると、なんと、支部長が遂に追い付いてきた。ひえ〜っ。しかも着実な足取りで追い抜いていこうとする。ここんとこ久しく支部長に負けた記憶は無い。さすがに支部長に負ける訳にはいかない。なんとか引き離されないように着いて行こうとしたが、どうしても無理。もう足が動かない。どうせ支部長の事だから終盤の上り坂では絶対に歩くだろうから、そこで抜き返せば良いと思って、取りあえず先行を許す。

15km地点でのタイムもジリ貧だったが、それ以降になると本格的に上り坂が出てきて、さらにペースダウンしていく。去年のように調子が良いときは、終盤の上り坂でも全然平気でペースを維持できたが、今年はもう駄目のようだ。不思議なのは、徳島マラソンの時と同様に、自分の感覚ではそんなに調子が悪いって感じではない。そこそこ頑張れているような自覚なのだ。でも客観的な事実としては、タイムが着実に悪くなっているのだから救いようが無い。奴隷船の中で見たグラフからしても、今日は明らかに悪いパターンで、みるみるうちに奈落の底へペースが落ちていく。
しかし、それでも、まだまだモチベーションは失っていない。後は支部長に負けないこと2時間を切ることが現実的な目標だ。

頑張って走っていると、ヤイさんとすれ違う。遅い。自分の事を棚に上げて言うのもなんだが、余りにも遅い。尋常じゃない遅さだ。また肉離れしたのかもしれない。完走できるだろうか。
さらにしばらく走ると、今度はS伯先輩に会う。まるで死にそうな表情で走っている。先輩はかつては私より速くて、四万十ウルトラマラソン100kmの部を完走したこともあるんだけど、一時期体調を壊し、最近ようやく復活したところだ。まだまだ回復途上なんだろう。完走できるだろうか。でも声を掛けたら、急に表情が蘇り、元気そうな返事が返ってきたから大丈夫だろう。
さらにしばらく走り、もう最後尾近くになって、ようやく支部長の部下の田G君が走ってきた。遅い。自分の事を棚に上げて言うのもなんだが、トンでもなく遅い。尋常じゃない遅さだ。でも表情はニコニコしている。単にダラダラ走っているだけのようなので、心配する事はない。

その後は、下り坂区間になってもペースはほとんど上がらない。去年と比べると1km当たり1分以上遅い。末期的なまでの不調ぶりだ。2時間切りの目標すら危なくなってきた。かつては、このオリーブマラソンでは2時間を切るのは不可能と思っていたが、最近はグッとタイムが良くなっているから、2時間を切れないなんて絶望的な思いだ。
あわよくば支部長の背中が見えてこないかなあ、なんて思って走るんだけど、なかなか見えてこない。支部長が撃沈して自滅するのを待つしかない。
18km地点を過ぎ、残り3kmになったので、気持ちとしては最後のスパート体勢に切り替えようと思うんだけど、もう全く無理だ。後が無いので何とか頑張ってみたが、19km地点でもほとんどペースアップはできなかった。

そして、いよいよ最後の大きな坂に入る。以前は歩くのが当然と思っていた区間だが、最近は歩かずに走って登るのが当たり前になっている。厳しい坂だが、今日だって歩きたいとは思わない。そんなに大した坂とは思わなくなっている。なんだけど、自分でも明らかに分かるくらいペースは落ちる。他人が見たら歩いているようなペースだろう
坂を上り終わると20km地点で、なんとこの1kmは7分近くかかっている。2時間切りは、とうの昔に不可能になっている。それに、この最後の大きな坂でも支部長に追いつけなかったって事は、もう支部長に追いつくことも不可能になった

いよいよ残り1kmだ。もう後は力を振り絞って全力疾走するだけだ。って思いたいところだが、さすがに全ての目標を失ってモチベーションがゼロになってしまったため、アホらしくて頑張る気力が沸いてこない。やる気を無くしてダラダラ走り、最後はゴール横でみんなが待ってくれていたけど、ガッカリしながらゴールした。


〜 ゴール 〜


奇跡は起きなかった。今年の絶不調の中では、メッシュのシャツの威力も無かった。やっぱり、そんな甘いものではなかったか。大会自己ベストどころか、2時間はオーバーするし、なんと言っても支部長に負けたのは絶望的だ

(支部長)「ちょっと、ちょっと。それは言い過ぎやろ。1月の満濃リレーマラソンでも私が勝ったやないの」

確かに満濃リレーマラソンでも負けたけど、それは1週2kmのタイム比較で負けただけだ。ちゃんとしたレースで支部長に負けたのは4年前の丸亀マラソン以来だ。4月の徳島マラソンだって、空前絶後の大惨敗だったけど、それでも支部長には負けなかった。特に、このオリーブマラソンに限れば、支部長に負けた記憶は無い。3年前のオリーブマラソンでは、途中でお腹を壊してトイレに駆け込んだりしたけど、それでも支部長には負けなかった。なぜなら支部長は終盤の上り坂では必ず歩くからだ。

(幹事長)「今日は坂でも歩かなかったん?」
(支部長)「いやいや、いつものように最後の大きな坂では歩いたな」


ひえ〜っ。やっぱり歩いたのか。

久しぶりに幹事長に勝利して満足の支部長


確かに、支部長のタイムも決して良くはなかった。でも、私は給水所も含めて最後まで一歩も歩かずに完走したにもかかわらず、坂で歩いた支部長に負けたのか。もう絶望以外の何ものでもない。

(幹事長)「もうマラソンやめようかなあ」
(支部長)「ちょっと、ちょっと」


他のメンバーは、と言うと、やはりDK谷さんは良いタイムだった。去年辺りから、どのレースでもメンバーの中で最速を維持している。

(幹事長)「私らが、どんどん遅くなっているというのに、どんどん速くなってませんか?」
(D木谷)「今、走るのが楽しくて楽しくて」

余裕で圧勝したD木谷さん


ピッグも結構、速かった。

(幹事長)「去年のタートルマラソン以来、ずっと負け続けているような気がするなあ」
(ピッグ)「1年前の大スランプからは脱しましたかね」

スランプからの脱出を確実にしたピッグ


さらに國宗選手も悪くはない。

(國宗)「いや、単に、幹事長に比べたら悪くはない、っていうだけですって」

確かに、私に勝ったというだけで、あんまりパッとしないタイムではある。それにしても、ほんとにガッカリな結果だなあ。

幹事長に勝ったというだけで喜びの無い國宗選手


かろうじて部門別(男子50歳代)での順位が半分より上だったのだけが救いだ。ただ、これには理由があって、かつては今日くらいのタイムだったら半分より下だったけど、最近のマラソンブームのせいで田G君のような遅い初心者ランナーが大挙して参加するようになったからだ。

後はヤイさんだけだが、いつまで経っても帰ってこない。途中ですれ違った時の状況からすると、明らかに故障による遅れであり、リタイアしない限り当分は帰ってこないだろうと思っていたら、やはりものすごく経ってから歩いてゴールした。やはり肉離れを再発したとのことだ。

肉離れで足を引きずってゴールしたヤイさん


ヤイさんもゴールしたので、何はともあれ、冷たいソーメンを食べに行く。このレースの一番の楽しみはレース後のソーメン食べ放題なので、いくら惨敗してガッカリしていても食べなければならない。心は晴れないままだが、今日みたいな炎天下のレースの後は、冷たいソーメンがとても美味しい。ソーメンだけでお腹が一杯になると、お弁当を食べられなくなるが、どうせ暑さでバテバテでお弁当は喉を通らないから、取りあえず冷たいソーメンで空腹を満たす。


〜 反省 〜


帰りの船は出港時間が2時なので、まだまだ時間は有り余っているが、朝と同じで、早く行かなければ座る場所を確保できない。今日は10kmの部に出て早々に着替えを済ませた福家先生が先陣を切って場所取りをしてくれて、朝と同じように大きなボックス席を確保してくれた。
帰りの船ではK野選手にも会う。

(幹事長)「どうやったん?」
(K野)「まあ、ボチボチでしたね」


彼は元々速いので、彼の言うボチボチは油断してはいけない。彼も最近、自転車を買ったそうで、やはり時代は自転車なのかもしれない
S伯先輩にも会ったが、死にそうな顔で走っていた割りには、とても元気そうだった。良かった良かった。

いつものように船の中では弁当を食べながら反省会だ。と言っても、徳島マラソンに続き、あまりの絶不調に反省のしようがないなんで調子が悪いのか理由が全然分からないからだ。

(ピッグ)「やっぱり疲労の蓄積なんじゃないですか?」
(支部長)「疲労が蓄積するほど練習はしてないやろ?」


確かに練習不足は否めない。でも、それはサボっているからと言うより、練習で長距離を走れなくなっているからだ。徳島マラソンの時もそうだったけど、今回も、1週間前になっても10kmも走れなかった。さすがに本番は21kmを走れたけど、練習でも本番と同じくらいの距離は走れないと話にならない。

(ピッグ)「山に登ったり自転車に乗ったりしてる疲労が溜まってるんですよ」
(支部長)「ま、はっきり言って、単なる老化やな」
(幹事長)「でも、去年は好調だったぞ。老化って、そんなに急に進むものなのか?」


この状況から脱するには、3週間後の北山林道駆け足大会で頑張ることだ。北山林道駆け足大会は、おんちゃんに誘われて今年、初めて出るレースだが、ものすごい急勾配の林道を上ったり降りたりする厳しいコースらしいので、これを頑張って乗り切れば絶不調から脱却できるかもしれない。言わばショック療法だ。

(ピッグ)「2週間前に竜王山に自転車で登ったりしたから、自転車とランニングは違うとは言え、以前ほど坂も怖くなくなりましたねえ」

確かに、自転車を始めてから坂に対する嫌なイメージは払拭された。自転車も、始めた頃はフラットな道を走るのが気持ちよかったけど、だんだん飽き足らなくなってきて、今では坂道の方が好きだ。そのせいか、ランニングで走っていても坂があった方が変化があって刺激になるくらいになった。

(幹事長)「今度は支部長にリベンジするぞっ!」
(支部長)「私は上り坂では歩きますからね」


〜おしまい〜




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