第18回 北山林道駆け足大会
2016年6月12日(日)、高知県津野町において第18回北山林道駆け足大会なるマラソン大会が開催された。我々ペンギンズとして初めて参加するレースだ。て言うか、こんなレースは存在すら知らなかった。
〜 新しいレースのお誘い 〜
4月も半ばに差し掛かったある日、携帯電話に1通のメールが入った。差出人はおんちゃんだ。おんちゃんは、以前から時々「みんなの広場」に書き込みしてくれていたのだが、去年7月の第28回汗見川清流マラソン大会で偶然、運命的な出会いをしたランナーだ。
(ピッグ)「特に運命的ってほどでも」
(幹事長)「ま、ええがな」
おんちゃんはかなりの実力者で、四万十ウルトラマラソンの100kmの部にも出ており、どちらかと言えば、坂のある厳しいコースが好きなM系ランナーだ。そういうハード系ランナーからのメールなので、ウィルスに感染しないように用心して開かなければならない。
「本日より北山林道駆け足大会の申し込みが始まりました。先着500名です」
ぬぬ?北山林道駆け足大会だと?林道だと?駆け足だと?もう、怪しさ爆発の興味をそそられる大会名だ。しかも定員500人だなんて、完全なる草レースだ。こんな貴重な情報を放っておく訳にはいかない。さっそくネットで調べてみる。
どうやら高知県津野町の旧葉山村で開かれる山岳レースのようだ。ところが、過去のレースの簡単な情報は拾う事ができたが、いくら探しても今年のレースの情報が無い。超マイナーな草レースだからネットで申し込めないのは分かるとしても、津野町のホームページにも情報が無い。いったいどういうことだろうと思っておんちゃんに問い合わせてみると、返事が来た。
「この大会は大変ほのぼのとしたファミリー的な大会ですのでネットではエントリーできないかもしれません。葉山ランニングクラブの中山さんか津野町教育委員会に電話して申し込み書を取り寄せ振り込みです」
ううむ。そうなのか。中山さんに連絡を取ればいいのか。
さっそくピッグに打診してみた。
(幹事長)「おんちゃんから、こんなん来たけど」
するとピッグの目が即座に輝いた。超マイナーな草レースの探求心では、ピッグは私を遙かに上回る。青森でも徳島でも、その鋭い嗅覚で数々の草レースを開拓してきたパイオニアだ。
(ピッグ)「ええですねえ。魅力的ですねえ。定員500人だなんて、文句なしの草レースですねえ」
(幹事長)「もしかしたら徳島航空基地マラソンと日がダブるかもしれんけど」
(ピッグ)「日がダブっても、こっちにしましょうよ」
思った以上にピッグが食いついてきたので、私の決意も固まり、次に支部長に打診してみる。支部長の感触は予想通りイマイチだった。なぜなら坂が厳しい山岳コースだからだ。入手できた情報では「上り勾配10%、下り勾配19%のきついコース」となっているので、坂が苦手な支部長としては大いにためらっているのだ。なぜ上り勾配と下り勾配が異なるのか意味不明だが、10%としても相当に厳しい急坂だ。
(支部長)「私は徳島航空基地マラソンの方がええなあ」
徳島航空基地マラソンは徳島空港の滑走路を走るので、もちろん坂は無い。ただ支部長も、以前は絶望的なほど坂に弱かったが、去年10月の龍馬脱藩マラソンでは、終盤の大きな厳しい坂でも歩かずにゴールし、レフコ・トライアスロンの成果を見せつけた。なので、支部長自身も多少は坂に対する苦手意識が薄れてきていて、最終的には「ほな出ましょうか」という結論になった。ヤイさんにも打診したら、出るという。さらにスーパーアスリートウルトラマラソンアイアンマンの小松原選手も興味を示した。
てことで、おんちゃんがメールに中山さんの電話番号を書いてくれていたので、さっそく電話してみる。ところが電波が通じない。今どき、NTTドコモの回線で電波が通じないなんて普通はあり得ないんだけど、高知の山奥だから十分にあり得る。なので、次に津野町教育委員会に電話したら優しそうなお姉さんが出て、申込書を送ってもらえることになった。
一つ懸念材料は、毎年参加している徳島航空基地マラソンと同日開催の危険性があるって事だ。徳島航空基地マラソンは去年は6月6日、一昨年は6月22日で、その前は5月に開催されていた。普通のマラソン大会は、たいていは、例えば「6月の第2日曜日」てな具合に決まっているのだが、徳島航空基地マラソンも超マイナーな草レースなので、日程は平気でコロコロ変わる。こちらもネット上では何の情報も出回ってないので、過去の募集要項に記載してあった海上自衛隊「徳島航空基地マラソン大会」係に電話してみる。
(幹事長)「今年の徳島航空基地マラソンの日程を教えて欲しいんですが」
(自衛隊)「はあ?何ですか?お宅どちらさん?」
妙に威圧的な返事だ。ま、自衛隊なんだから威圧的なのは仕方ないだろうけど、それにしても「何ですか?」はないだろう。
(幹事長)「香川県の○○という者ですけど」
(自衛隊)「香川県のどちらから?」
(幹事長)「香川県の高松市からですけど」
(自衛隊)「それで、なに?」
(幹事長)「だから今年の徳島航空基地マラソンの日程を教えて欲しいんですよ」
(自衛隊)「何の事か分かりません」
おいおい、係の電話に掛けているのに何の事か分からないって、どういうことだ?もしかして電話番号の掛け間違いか?埒があかないので取りあえず電話を切って確認したけど、番号はあっている。おかしいなあと思い、基地全体の受付に電話してみる。すると電話交換の優しそうなお姉さんが出た。
(幹事長)「今年の徳島航空基地マラソンの日程を教えて欲しいんですけど」
(お姉さん)「ああ、徳島航空基地マラソンですね。実は今年は開催しない事になったんですよ」
(幹事長)「え!?開催しない!?何があったんですか?」
(お姉さん)「基地全体の活動内容を見直した結果、今年は開催しないことになったんですよ」
(幹事長)「うわあ、残念。毎年、出て、楽しみにしてたんですよ」
(お姉さん)「そうですよねえ。申し訳ないですよねえ」
でも、お姉さんの態度が優しかったので許してあげた。すぐ横で飛行機が発着している飛行場の滑走路を走るという希有な体験ができる徳島航空基地マラソンが無くなったのは非常に残念だが、日程がダブって困る心配は無くなった。これで心おきなく北山林道駆け足大会に参加できる。
ただ、あまりにも情報が少ない。おんちゃんからのメールに「以前、この大会で矢野プロさんをお見かけしましたよ」と書いてあったので、矢野プロに聞いてみることにする。
久しぶりに矢野プロに電話しようと、彼がいるはずの部署のレイアウトを見ると、彼の机が無い。彼は真面目なので、我々のように不始末をしでかして出勤停止処分になっているとも思えない。おかしいなと思って調べてみたら、先月の社内異動で転勤になっていた。新しい職場のレイアウトを見ると彼の名前があったので、さっそく電話してみた。
(幹事長)「お久しぶり!」
(矢野)「え、はあ」
本来は元気な彼なのに、なんとなく声が暗いというか勢いが無い。新しい職場では勤務中に私語をしにくい雰囲気なのだろうか。それとも新しい職場でイジメにあって落ち込んでいるのだろうか。
(幹事長)「知らんかったけど異動になってたんやねえ」
(矢野)「え、はあ」
(幹事長)「この3月に変わったんよね?」
(矢野)「いえ、去年ですけど」
(幹事長)「え?去年?去年はこっちで見かけたやん。おかしいな。ま、ええけど、北山林道駆け足大会って出たことある?」
(矢野)「いえ、ありません」
(幹事長)「おや?出たのを見かけたっていう話を聞いたんやけど、出てないん?」
(矢野)「ええ、出てませんけど」
(幹事長)「そうなんか。いや、それだけや」
と電話を切ったが、なんとなくスッキリしない。釈然としない。不信感を抱いて改めてレイアウトを見ると、なんと、矢野という名前の人が2人いる。役職を見ると、違う人だった。てっきり矢野プロかと思いこんで電話したけど、全くの赤の他人だった。慌てて本物の矢野プロに電話する。
(幹事長)「知らんかったけど異動になってたんやね」
(矢野)「そうなんですよ。今年の3月に」
(幹事長)「そこの職場って、矢野ってのがもう1人いる?」
(矢野)「ええ、ちょっと若いのが1人いますよ」
(幹事長)「すまんなあ。さっき間違って電話してしもて、まったく気付かずにベラベラ話したんやけど、どうも話がすれ違って釈然とせんから見直してみたら、別人やったわ。済まんかったな」
(矢野)「声で分かるでしょ!」
(幹事長)「なんとなく声に明るさが無いなとは思ったんやけど、新しい職場で周囲に遠慮してるんかと思って」
オレオレ詐欺って、みんな「なんであんなんに引っかかるんやろ。声が違うから詐欺やって分かるやろ」って思うけど、思いこんだら、電話の声なんて、アテにならないなあ。本当に貴重な体験をさせて頂きました。
(幹事長)「本題に入るけど、北山林道駆け足大会って出たことある?」
(矢野)「ああ、ありますよ」
やっぱり、あったか。
(幹事長)「実は、おんちゃんって人から誘われて、矢野プロも出たのを見かけたことがあるって言うから」
(矢野)「ああ、時々ホームページに書き込んでくれていた人ですよね。私は知らないんですけど、今度、私を見かけたら、ぜひ声を掛けてくださいって言っといてくださいよ」
矢野プロの情報では、確かに坂は厳しく、その厳しさは汗見川マラソン以上らしい。ただ、ひたすら10km以上上って、同じコースを下って帰る折り返しコースの汗見川マラソンと違い、周回コースなので上り勾配と下り勾配が異なるらしい。そういうことか。勾配は厳しいけど、全体の距離は12.8kmなので、上り区間の距離は汗見川マラソンより短い。なんとなく楽しそうな感じだ。
(矢野)「それと、結構、抽選に当たりやすく、景品がもらえますね」
そう言えば、おんちゃんのメールにも「去年は6人で行って5人が抽選に当たりました」って書いてあった。本来はクジ運が悪い私だが、去年の汗見川マラソンでは高級米が当たったくらいなので、何か当たる可能性が高いかも。
矢野プロは新しい職場でも相変わらず元気だったので安心したし、やはり楽しそうな大会らしいので、安心して申し込んだ。國宗選手とD木谷さんは仕事の都合で出られないとのことで、5人で繰り出すことになった。
〜 津野町へ出発 〜
今回はドタキャンの常習犯の國宗選手はエントリーしてなかったので油断していたら、直前になってヤイさんがレースには出られないと言う。3週間前のオリーブマラソンで終盤に無理をして肉離れを起こしてしまい、まともに走れるような状態ではないらしいのだ。普通のレースならまだしも、この大会は超厳しい急坂を登るレースなので無理しないとのことなのだ。
(幹事長)「肉離れって、どこの部位ですか」
(ヤイ)「脹ら脛ですね」
(幹事長)「坂を登るのに脹ら脛は関係ないでしょ」
(ヤイ)「そんな事ありません!ええ加減な事を言わないでください!」
それでもヤイさんは応援には来てくれるとのことで、心強いかぎりだ。
天気は、四国地方はレースの1週間前から梅雨入りし、当日の天気予報も「曇りのち雨」とのことだった。香川県なら「曇りのち雨」と言うのは「今にも雨が降りそうに見えるけど、結局は全然降らないよ」って言う意味だが、高知で「曇りのち雨」と言うと「いきなり土砂降りになるから流されないように気をつけてね」と言う意味だ。なので雨が降るのは間違いない。
だが、しかし、今の我々は雨を恐れていた昔の我々ではない。
昔の我々なら、雨のマラソン大会なんて走る気が起きなかった。朝から雨が降っていると、空を見上げながら連絡を取り合って、結局、みんな揃って欠場って事も多かった。しかし、6年前のオリーブマラソンで考えが変わった。その日は朝からものすごい土砂降りの雨だったので、みんなで欠場の相談をしていたら、我がペンギンズのエース城武選手から「雨がどうしたんですかっ!何を考えてるんですかっ!」と一喝され、渋々参加した。ところが、土砂降りの雨は、走りにくいどころか、気温が低くなって走りやすくて、後半の大きな坂も全然、苦にならず、最後までペースダウンすることなく、というか、坂が多い後半の方がペースアップしてタイムが良くなるという考えられないレース展開でゴールし、2時間を大幅に切る大会自己ベストとなった。私だけでなく、最後までデッドヒートを演じたピッグも快走だったし、支部長も例年なら絶対に歩く最後の大きな坂も歩かずに2時間を切る大会自己ベストを出した。もちろん、エース城武選手が優勝したのは言うまでもない。それ以来、暑い季節には、むしろ雨を好むようになったのだ。
さらに4年前の徳島マラソンは、雨に加えて風が強く、台風並みの暴風雨になり、私は風に飛ばされて途中リタイアという悲惨な目にあったが、支部長は最後まで力走し、それ以来、雨や風は何の障害でもなくなった。
て事で、当日は高松も今にも雨が降りそうな天気だったが、みんな平気というか、暑くなりそうにないので、喜ばしい限りだ。
今日は支部長が車を出してくれて、私んちが最後で、6時過ぎには出発できた。葉山村は高知の山の中とは言え、須崎市までは高速で行けるので、2時間半もかからない。5時半には港に並んで奴隷船に乗り込まなければならないオリーブマラソンより、よっぽど便利だ。
車の中で朝食のおにぎりを食べる。以前はマラソン大会の朝食と言えば、決まって菓子パンをたくさん食べていたが、ここ数年、2008年の徳島マラソンや2009年の走れメロスマラソンや3年前のオリーブマラソンのように、マラソン大会で走っている最中にお腹を壊してトイレに駆け込むことが増えてきた。その原因を考えてみたら、菓子パンが原因ではないのかって思えてきた。て事で、去年の徳島マラソンから菓子パンじゃなくて、おにぎりを食べるように変えた。そのせいかどうかは分からないが、それ以降はマラソン大会でお腹を壊していない。これは単なる気のせいではなくて、その後、NHKの「ためしてガッテン」で、パンに含まれるフルクタンという糖類は消化に悪く下痢しやすいが、お米に含まれている糖類は消化が良いと言っていた。さらに最近見たNHKのラン&スマで、おにぎりは大き目なのを2個食べた方が良いって言ってたから、コンビニの小さ目のおにぎりなので3個に増やしている。さらにスタート直前にバナナを食べると良いとも言ってたので、3週間前のオリーブマラソンからバナナも持ってきている。さらに、お腹の調子が悪くなくても、用心には用心を重ねて、予め下痢止めの薬も飲む。
(ピッグ)「相変わらず着るものと、お腹を壊すことには心配性ですけど、着るものは今日もメッシュのシャツですか?」
(幹事長)「ちょっと迷ってて」
炎天下のレースになるのなら、迷わずメッシュのシャツを着る。メッシュのシャツは、3週間前のオリーブマラソンで惨敗してしまい、その神通力は消え失せたものの、暑さ対策には抜群だ。しかし今日は雨なのでメッシュのシャツでは雨がモロに当たって冷たいような気がする。なので、今日はメッシュのシャツと目が詰まった薄手のシャツを持ってきた。
交通量の少ない早朝の高速道路を走って高知県内に入ると、ポツポツと雨が降り出した。須崎で高速道路を降り、国道197号線を通って津野町に入ると雨は少し強くなる。
(支部長)「あ、いかん。ソックス忘れた」
支部長は素足にサンダル履きで、ソックスを持ってくるのを忘れたのだそうだ。私も今日は雨なので移動はサンダル履きだが、いつものようにマメ防止のため足の裏にテーピングして既にソックスをはいている。
(ヤイ)「素足で走ったらええやないですか」
(幹事長)「ソックス代わりにテープでグルグル巻いたら?」
(支部長)「みんな好き勝手言わんといて!」
(ピッグ)「コンビニで売ってるんじゃないですか?」
(幹事長)「この山の中にコンビニがあると思うか?」
だがコンビニはあった。今どき、どんなとこにもコンビニってあるんやなあ。コンビニにはソックスもあり、無事、ソックスを履いて走れることになった。
(支部長)「もし今日、快走できたら、このソックスのおかげやな」
(幹事長)「さすがにソックスで走りは変わらんと思うが」
〜 会場へ到着 〜
今日のレースは10時スタートで、受付は9時までとなっている。もちろん、こういう草レースの場合、受付時間を過ぎてもギリギリまで許してくれるだろうと油断していたが、ちゃんと8時半過ぎには現地に着いた。それでも遅かったと見えて、会場から少し離れた場所に駐車させられた。雨の中、トボトボと歩いて会場である葉山小学校体育館に着く。
受付では最初から無記名の完走証が配られたので、タイムは計測してくれないようだ。各自で勝手にゴールしてくれと言うシステムだろう。
館内は既に満員状態だったが、なんとかスペースを見つけて陣取る。携帯電話を見ると、おんちゃんからメールが入っていた事に気付き、混雑する館内で久しぶりに再開することができた。
(おんちゃん)「参加者名簿を見たらペンギンズから5人も大挙して来てるやんか」
(幹事長)「一人は故障で参加できなくなったけどね。坂がどれくらい厳しいか不安やなあ」
(おんちゃん)「坂は厳しいけど、距離が長くないから大丈夫やって」
パンフレットを見ると登り勾配10%、下り勾配19%となっている。勾配が10%とか19%とかなんて、それだけで非常に厳しい急勾配だが、それらは平均勾配だろうと思うので、上り区間にはもっともっと厳しい勾配があるだろう。下りだって、19%もあれば、まともには走れそうにない。特に今日は雨で路面が濡れているからスリップを防止するためにブレーキをかけながら慎重に降りないと危ない。なので、実力者のおんちゃんが言う「大丈夫」ってのは我々に当てはまるかどうか分からない。
ただ、そもそも我々は、もともと山岳マラソンには慣れている。2005年に高松市に合併吸収されるまで塩江町で毎年開催されていた塩江マラソンは最大標高差350m、獲得標高550mの山岳マラソンだったし、今はなき四国カルストマラソンは標高1000mを超える高原を走る山岳マラソンだった。それに比べれば今大会は最大標高差は300m程度なので未知の世界ではない。問題は傾斜だ。どれくらいの急勾配なのかが問題だ。
ただ、距離は12.8kmと長くない。塩江マラソンはハーフマラソンで距離が長かったため、急勾配の坂を下りてからも延々とフラットなコースが続いて足が棒のようになって撃沈するのが常だったが、この大会は距離が短く、急勾配の坂を下り終えたらゴールなので、その点も走りやすそうだ。
また、おんちゃんのアドバイスによると、この大会は行政が関わっていない草レースなので、交通規制は一切ない。スタートやゴールは葉山小学校前の狭い道なのでいいけど、しばらく行って国道197号線に出ると、車道は走れず、歩道を走らなければならない。国道自体がそんなに広い道じゃないから、歩道も狭くて、走りにくい。なので、基本的に歩道を走る区間は追い越しは禁止らしい。完全に禁止はできないだろうけど、歩道から転げ落ちるリスクもあるので、自重した方が良いらしい。そのため、スタートしてから国道に出るまでの1kmちょっとの間に、自分が走る適切なポジションを確保しておかなければならない。自分の本来のペースより後ろの方になると、もっと前へ出たいのに出られないフラストレーションが溜まる。逆に前の方に行き過ぎると後ろからランナーがぶつかってくる。なので適切なポジション取りが必要になってくる。う〜む。ちょっと難しそうだ。
(おんちゃん)「ま、どっちにしても完走できたら良いって言うレースやから。それとレース後の抽選会が楽しみや」
抽選会では、おんちゃんのグループは、去年は6人中5人が景品をもらったって言うし、おんちゃん自身も4年連続で何がもらっているらしい。確かにステージを見ると、ズラーっと景品の山が並んでいる。ビールのケースだけで30箱はありそうだし、ランニングウェアとかシューズとか、扇風機の箱まで並んでいる。一体、どこから出てくるんだろう。
しばらくすると開会式が始まった。登場したのは葉山ランニングクラブの中山さんだ。彼がこの大会の主催者だ。行政の手を借りない民間のマラソン大会なんて存在自体が珍しいが、それが今年で18回も続いているなんて驚きだ。
中山さんってどういう人なんだろうって思っていたが、体型を見る限り、本人はあんまりランニングとは無さそうな感じだ。違っていたらごめんなさい。
私のゼッケンには、スポンサー名の欄に「中山石油店」って書いてあるので、石油店の主人なのかもしれない。中山石油店は単に石油を売ってるだけじゃなくて、パンフレットに記載された広告によると、車の修理やタイヤ交換までやるらしいから、かなり手広く商売をしているのかもしれない。
中山さんの話によると、景品の山は色んなところからの寄付らしい。行政からの援助が無いだけに、民間の寄付が頼りとのことだけど、こんなに寄付が集まるって、すごい。しかも、運営も完全にボランティアだろうと思うけど、小さい村であれだけのボランティアを動員できるって、これまたすごい。本当に地域に根付いたイベントになっている。また、小学校の体育館を会場に使っているし、行政と一線を画しているとは言え、小さな山村のことなので、住民も行政も一体となって開催してるんだろうなあ。
開会式で中山さんは「雨が降って絶好のマラソン日和になりました」って言ってたけど、確かに、この時季は雨でも降らないとマラソンには暑すぎると思う。ただ、雨がだんだん強くなってきたので、今日はメッシュのシャツではなく、少しでも雨避けになるかと思って、繊維の目が詰まった薄手のシャツを着る。下は顔を拭くタオルを入れられるようにポケットが付いた少し長目のランニングパンツを履く。雨よけのために普段は被らない帽子も被る。
トイレはどうしようかなあと迷っていたが、トイレがすごく空いていたので大の方に入って用を足す。マイナーな大会は、こういう所が便利だ。
最後にバナナを食べて準備万端だ。
雨が降ってるので体育館内で記念撮影
(左からヤイさん、ピッグ、支部長、幹事長、小松原選手)
準備はできたが、雨脚が強くなっているので外へは出たくない。ギリギリまで屋内に居たい。でも「スタート地点に移動してください」なんて館内放送されたので、仕方なく外に出る。ただ、外に出る時は鬱陶しいが、いったん外に出て雨に濡れてしまうと、割りとあっさりと平気になる。ただ、雨そのものは平気になっても、シャツやパンツが濡れると、少し肌寒くなってきた。天気が良ければ暑いだろうけど、さすがに雨に打たれると肌寒いのだ。支部長は雨ガッパ代わりのビニール袋を被るが、私はビニール袋を持ってこなかった。そんなものが必要になるほど気温は低くないと思っていたのだ。取りあえず、何でも持ってくるべきだなあ。
パンフレットではスタート地点は「三嶋様前」って書いてあったので、てっきり三嶋さんという人の家の前から出発するのかと思っていたら、三嶋様っていうのは三嶋神社という神社のことで、小学校から数百m西にあった。スタート地点は以前より50mほど東に移動したとのことで、それまで12.85kmだった距離が12.8kmになっているらしい。もとから中途半端な距離なので、その意味合いは分からないが。
スタート地点へ移動する間に体は完全にビショビショだ。ただ、スタート地点で群衆の中で待っていると、風も無く、全然寒くなくなってきた。これなら走り始めたらちょうど良いくらいかも。
今日の参加者は定員が500人で、パンフレットには497名の名前が載っている。男女別では女性が116人、男性が381人だ。こんな厳しいコースの大会に女性が130人も出るってのに感心する。女性は持久力があるからマラソンには向いていて、フラットなコースの大会だと、終盤で力尽きて足を引きずってノロノロと走っていると、一定のペースを確実にキープしたおばちゃんやおばあちゃん達に次々と追い越されてガックリするが、今日のような厳しいコースにも女性が大勢出るって、すごいなあ。
(ピッグ)「今日の目標タイムはどうします?」
(幹事長)「こんな坂が厳しい初めてのレースやから、まるで見当がつかんなあ」
(支部長)「1時間半くらいかなあ」
(幹事長)「1時間半って言うと1km7分かあ。せめて目標だけは1km6分程度にしたいなあ。分かりやすく1時間15分を目安にしようか」
(ピッグ)「結構、ハードルの高い目標ですね」
(幹事長)「じゃ1時間20分?」
(おんちゃん)「大丈夫大丈夫。絶対に1時間20分では帰ってこれますよ」
て事で、取りあえず目指すべき目安は1時間15分に設定した。
〜 スタート 〜
初参加のレースなのでワクワクしながら待っていると、ピストルが鳴らされて一斉にスタートする。
最近のマラソン大会は、たいていは足に付けたチップでタイムを計測してくれるが、こんな山奥の草レースなので、当然ながらチップで計測するなんてことはしてくれない。て言うか、ゴール付近に時計も無いし、そもそもタイムを計測してくれそうな気配は無い。上位選手は表彰するからタイムも計測するんだろうけど、それ以外のランナーは自分の時計で計測しないといけないようだ。徳島航空基地マラソンもそうだった。
我々がスタンバイした場所は、ちょうど真ん中付近だったけど、参加者が500人と少ないので、それほどタイムロスすることなく、割りとすぐにスタート地点まで達し、またそんなに混雑することもなく走り始めることができた。
普通のマラソン大会なら、スタート地点を越えても、しばらくは混雑でまともに走れないが、人数が少ないうえに、こんな厳しいレースに出ようっていうランナーはレベルが高いと言うか、あんまり遅い素人ランナーは少ないため、スタートしてすぐに結構、速いペースとなる。
事前のアドバイス通り、国道に出るまでに適切なポジション取りをしなければならない。どれくらいが適切なのか分からないが、とりあえず割りと速めなペースで走る。ふと見ると、ピッグが少し前方に離れつつあったので、ここは多少、無理してでも他のランナーを追い抜いて着いていく。あんまり遅いランナーは少ないとは言え、道幅がとても狭いので、自分より遅いランナーを追い抜くのは簡単ではない。普通のマラソン大会なら、序盤に無理して右へ左へ移動しながら他のランナーを追い抜くのは体力を消耗する割りには成果に乏しいが、今日は国道に出てしまうと抜けなくなるので、多少無理してでも今のうちに遅いランナーは追い抜いておかなければならない。
レース序盤に無理すると、終盤になって一気にツケが回ってきて失速するのが常なんだけど、今日のレースは事情が異なる。序盤に速めなペースで走ったとしても、どうせすぐに急な上り坂になってペースは落ちるので、最初の3km程度は行けるとこまで行ってみようと思う。また終盤は急勾配の下り坂が続くので、失速するってことはないだろう。おんちゃんもさらに前方に離れつつあるが、あんまり無理するのは控えて、取りあえずピッグの背後に着いていく。
しばらく走ると1km地点の表示がある。時計を見ると5分ちょっとだ。スタート直後の混雑は少なかったとは言え、多少はタイムロスがあったことを考えると、良いペースだ。
そこから300mほど走ると、いよいよ国道に出る。事前に忠告された通り、歩道は狭い。とても狭い。無理したら追い抜けないこともないが、追い抜くには車道側を走らなければならないので、歩道から落ちてしまうリスクがある。最初から車道を走れば落ちる心配は無いが、それは危ないので禁止だ。どこかに遅いランナーがいたら、そこで詰まってしまうので、全体的にペースは落ちてしまうが、仕方ない。何も考えずに、ピッグの後ろを着いていく。
狭い歩道を走っていると2km地点の表示がある。この1kmは5分を少し切っている。歩道は狭くて走りにくいとは言え、ペースは悪くない。この調子で走れれば文句は無い。
そこから500mほど走ると国道から離れ、いよいよ山の方に向いて上がっていく。狭い道だが、国道と違って車道と歩道の区別が無いので、ランナーとしては走りやすい。車が来れば避けなければならないが、交通量は少ない。て言うか、結局、最後まで車は1台も来なかった。山道に入ったとは言え最初のうちは傾斜はとても緩やかで、3km地点で見たタイムは1km5分ちょっとくらいだった。まだまだ良い感じだ。
ただ、3km地点を過ぎると、少しずつ傾斜が強まってくる。まだまだ大したことはないが、確実にペースは落ちてくる。でも、ちょっと落ちすぎ。ずっとピッグに着いてきたんだけど、他のランナーに比べてペースの落ちが大きい。去年の瀬戸内海タートルマラソンと同じ展開だ。あの時も前半の上り坂でピッグのペースの落ち方が大きかったので追い抜いたら、終盤に力尽きたところで、ゴール直前に逆転されてしまった。今日も似たようなレース展開が予想されるが、取りあえずここは頑張って先行する。
雨は相変わらず似たような強さで降り続いているが、上り坂になると運動量が激しくなり、だんだん暑くなってきた。もしビニール袋を被っていたら、暑くて我慢できなくなっていただろう。
このレースは距離は短いけど、給水所は3箇所設置されている。こんな雨の中のレースでも暑くて喉は渇くので、最初の給水所からちゃんと水分を補給していく。上り坂なのでペースは遅くなってるんだけど、それでも立ち止まらず無駄の無い動きで給水できたので、タイムロスは無い。
(ピッグ)「この状態なら、立ち止まって飲んでもタイムはほとんど変わりませんって」
(幹事長)「分かってるけど、鮮やかに給水できると嬉しいやんか」
ペースは落ちたとは言え、ピッグを追い抜いたし、まだまだ頑張っていたと思ったんだけど、4km地点で見たタイムは、一気に1km6分近くにまで落ちていた。こんなに落ちているとは思わなかった。ただ、周囲のランナーも似たようなペースなので、僕だけが早々に脱落しかかっている訳ではなさそうだ。
4km地点を過ぎたら、本格的な急勾配の上り坂になった。この辺りから傾斜は10%を超えたようだ。さすがに厳しくて超スローペースになる。でも、まだまだ序盤なので歩きたいっていう気持ちは沸いてこない。闘志まんまんで、「来るなら来いっ!」って感じだ。
道ばたでメガホンを持ったおじさんが「あんた○○番」って叫んでくれている。僕は137番って言われた。上位1/3には入ってるようだ。この厳しいレースで1/3なら悪くはないが、これをどこまで維持できるかが問題だ。
林道はますます山深くなり、道の上を木々が覆い被さり、薄暗くなってくる。レース前にピッグが「山の中になると道の上を気が覆って雨が当たらなくなりますよ」って言ってたけど、確かに、雨は直接は当たらないけど、木からしたたり落ちる大きな雨粒がバシバシ降り注いでくるので、むしろ鬱陶しいくらいだ。
しばらく登ると5km地点の表示があり、この1kmは一気に7分半もかかっていた。ものすごいペースの落ちようだ。こんな急な上りなら当たり前だけど。
その後、フラットな区間が現れ、「おや?もしかして、早くも上り坂はおしまい?」ってぬか喜びしたら、その直後には傾斜20%を超える激坂がしばらく続いた。どうやら、この辺りからの道が北山林道らしい。激坂は厳しいと言えば厳しいが、余りにも傾斜が急だから、走っていると言うより、なんだか山で遊んでいるような気がして楽しく感じられる。この激坂がどこまで続くのかは分からないが、行けるとこまで楽しく登っていこうと言う気持ちが沸いてくる。たまに追い抜いていくランナーはいるけど、僕が追い抜くランナーはいない。なので、少しずつ順位が落ちていくのが不安だ。
激坂が続く中、6km地点の表示があり、なんとこの1kmは8分をオーバーしていた。いくらなんでも8分は遅い。遅すぎる。4月の徳島マラソンでは終盤に1km8分オーバーになったが、それに匹敵する遅さだ。でも、この激坂なら仕方ないか。ただ、こんなにペースが落ちてしまうと、取りあえずの目標である1時間15分は厳しいかもしれない。
ただ、6km地点からしばらく進むと、ようやく激坂区間が終わり、フラットな区間になる。まだコースの半分程度だから、まだまだ上りは続くんじゃないかって思っていたら、案の定、しばらくすると再び上り坂になったが、斜度はもう大したことはない。たまに急傾斜の坂もあるけど、すぐに終わり、基本的には緩やかな坂が続く。先ほどの激坂を走った後なので、緩やかな坂だと、まるでフラットに感じられてしまう。この調子なら最後まで力尽きることなく快調に走れそうだ。
給水所はパスせず、ちゃんと水分を補給する。雨の中でも喉は渇いていくが、それでも炎天下のレースに比べれば大した事はない。上り坂になって暑くなっていたが、山深くなって薄暗くなってくると暑さも和らぎ、ちょうど良い感じだ。ただ雨でシャツもパンツも体にピッタリへばりつき、気持ち悪いと言うか走りにくい。下は、これじゃなくて、青森勤務時代に作った陸上部の短いランニングパンツにすれば良かった。あれなら足にまとわりつくことも無かっただろう。あれを履かなかったのはポケットが無いからだけど、今日の雨じゃあハンドタオルもティッシュも濡れてしまったので、持ってくる必要は無かった。
7km地点で時計を見ると、この1kmは6分半を切っていて、だいぶマシになった。とは言え、1時間15分を切るにはもっとペースアップしないといけない。まだ上り坂は続いているが、だいぶフラットになっているので、もっと上げられそうな気がする。
て事で頑張ってみたが、8km地点で見た次の1kmも、まだまだ6分を大きくオーバーしている。ここまでトータルで50分近くかかっている。のこり5kmは1km平均5分で走らなければならない。かなり厳しい戦いだ。
参加者が少ない大会なので、周りを走るランナーは少ない。少し前を行くランナー達は似たようなペースで、なかなか追いつけないが、後ろから追いついてくるランナーも少ない。たまに追い抜いていくランナーがいるので、着実に順位は落ちていくが、そんなに多くは無い。なんとか上位1/3程度はキープしたい。
8km地点を過ぎてしばらく進むと、ようやく下り坂が出現する。ピークの標高は335mで、下の国道からの標高差は300mほどだ。遂に上り坂は終わり、後は下るだけか。ホッとして一気に全開で大股でガンガン駆け下りる。とは言え、思ったほど急な傾斜ではない。走るには滑る心配が無くてちょうど良いんだけど、本格的な下り区間に入った訳ではなさそうだ。
大股で気持ち良く駆け下りていくと、9km地点が現れる。この区間は1km5分半ほどだった。思ったよりペースアップしていない。もうちょっと上げないと1時間15分は切れない。そう思ったとたんに、なぜか再び上り坂が出現する。そんなアホな。まだ上り坂は終わってなかったのか?
しかし、上り坂はすぐ終わり、その後には遂に本格的な急勾配の下り坂区間が始まった。きつい!きつ過ぎる!傾斜20%を超える下り坂が続く。雨で路面が濡れているうえ、枯葉も落ちており、滑るんじゃないかって不安があって、大股でガンガン走れなくなる。それなのに、私よりはるかに小柄な女性がガンガン走ってものすごいスピードで追い抜いていく。下り坂に強い女性なのか。呆れていると、男性だが小股のピッチ走法でビシビシ走って追い抜いていくランナーがいる。その走りを真似して小股のピッチ走法で走ると、結構、快調に走れた。
とは言え、あまりに急な下り坂でブレーキを掛けすぎたせいか、次の10km地点でも見た1kmのタイムは再び6分近くに落ちていた。下り坂なのに6分近くもかかっただなんて、もう絶望的。とも思ったが、よく考えてみれば、このレースは13kmじゃなくて12.8kmの距離なので、最後は少し短い。タイムにして1分近く短い。なので、まだまだ頑張れば1時間15分は切れるかもしれない。
てことでモチベーションを維持したまま走り続けると、10km地点を越えてからは、傾斜が少し和らぎ、まだまだ急勾配とはいえ、なんとかブレーキをかけずに思いっきり駆け下りられる程度になった。これくらいが一番速く走れる。こんな走りを長く続けていたら足を痛めそうだが、どうせあと3kmくらいだ。思い切って飛ばし続けると、11km地点が現れ、この1kmは一気に4分半を切るまでにペースアップできた。良い感じだ。このまま行けば1時間15分を切れる。
その後も下り坂の傾斜は徐々に緩やかになっていくが、見たところ、まだ坂が終わるわけではなさそうだ。傾斜が緩やかになるにつれペースも落ちていくが、もう残りは2kmも無いので、後悔しないように全力で駆け下りると、12km地点でのタイムも1km5分を切っている。
これなら1時間15分を切るのは間違いない。気分も良いし、まだ微かに下り基調なので、大股で気持ち良く走っていける。他のランナーも同じようで、みんな全力疾走だ。順位は全く入れ替わらない。距離も短いし、終盤は下り坂だから、歩いているようなランナーはいない。
遂にゴールが見え、そのまま駆け込むと、ヤイさんと、既にゴールしていた小松原選手が出迎えてくれる。
〜 ゴール 〜
(ヤイ)「えらく嬉しそうな顔でゴールしますねえ」
(幹事長)「いやあ、楽しかった。こんなに楽しかったレースは久しぶりやなあ」
(小松原)「私は結構、きつかったですよ」
(幹事長)「君は僕らとレベルが違うから」
私は1時間15分を切れただけで満足しているが、小松原選手はさすがに1時間を切ったそうだ。1km7分とか8分もかかったような上り区間があるのに1時間で走るなんて、私には絶対に不可能だ。それでも、順位はなんとか150番程度でとどまったので、上位1/3くらいには入った。この厳しいレースで1/3に入れたら、ま、満足せんといかんかな。
それにしても、ほんと、こんなに面白くて楽しいレースは久しぶりだ。上り坂があまりに激しくて辛いと言うより面白かったし、所詮、上り坂区間も数kmしかなくて、それが分かっているからペース配分なんか考える必要が無くて走れたし、終盤は下り坂が続いて思いっきり駆け下りるのも楽しかったし、本当に楽しかった。
(ヤイ)「徳島マラソンとは大違いですね」
(幹事長)「あの惨敗のトラウマを払拭できたかも」
しばらく待っているとピッグが同じようにニコニコしながらゴールした。去年のタートルマラソンではゴール直前に逆転されたけど、今日は距離が短かったから逃げ切ることができた。さらにしばらくして支部長が帰ってきた。支部長も1時間20分ほどだった。
(幹事長)「結構、速かったやん。今日は歩かんかったん?」
(支部長)「いやいや、4km地点から6km地点辺りの急勾配は歩いたで」
(幹事長)「え?歩いてそのタイム?」
あの上り坂を歩いて1時間20分なら大したものだ。
(幹事長)「さすがは下り坂に強い支部長やなあ」
(支部長)「下り坂は他のランナーをごぼう抜きしたからな」
(幹事長)「滑りそうで怖くなかった」
(支部長)「そういうのは気にしないからな」
自転車もそうだけど、支部長は下り坂にはとても強い。
て事で、みんなレース前の予想に比べれば快調に走れて、とても満足できる結果になった。
〜 抽選会 〜
レースの制限時間は2時間15分だから、まだ1時間近くあるので、ゆっくり食事をとる。食事はソーメンとばら寿司だ。マラソン大会の後の疲れた体には、うどんとかソーメンに限る。一般的なお弁当はおかずがフライものや焼き魚なんかが多く、なかなか喉を通りにくい。
その後、表彰式があったが、男子の優勝者は、なんと50分を切っていた。あの上り坂があるコースで50分を切るなんて、一体どういう走り方をするんだろう。と思っていたら、女子の優勝者も1時間1分だった。私より12分速い。つまり1km当たり1分速いスピードだ。これまた、どういう走り方をしているのか見てみたいものだ。
その後、1時前になって、ようやくお楽しみ抽選会が始まる。おんちゃんや矢野プロに聞いたところでは、半分どころか大半の参加者に景品が当たるとのことなので、ほとんどの参加者が帰らずに待っている。
まず最初はランニング用シャツとかから始まった。1つ1つ抽選のクジを引いて当選者を発表していくので時間がかかる。予定では2時までとなっているが、それくらい時間がかかりそうだ。もちろん、誰も文句は言わない。番号を聞き漏らさないように必死で発表番号を聞いている。
シャツくらいならいいけど、シューズやパンツになってくるとサイズが違うと履けないと思うが、みんな喜んでもらっていく。景品はどんどん多彩になっていき、扇風機やら花火やら色んなものが出てくる。町内の色んな商店から寄付してもらっているから、景品も多彩になるのだろう。
ただ、かなり当選者が出てきたというのに、うちのグループは5人のうち誰も当選しない。いくらクジ運が悪い連中が揃っていると言っても、あまりにも運が悪すぎる。一体どういう事だ!と思っていたら、ようやくピッグにミカンが当たった。山北ミカンという高知のブランドミカンだ。と思ったら、すぐに続いて私も同じミカンが当たった。なかなか当たらなかったのに、当たる時は続くもんだ。
しかし、その後は再び沈黙が続き、遂には残るはビールと発泡スチロールの箱だけになった。ビールは30箱程度積まれているから、いくらなんでも1つは当たるだろうと思っていたら、なんと再び小松原選手とヤイさんが連続してビールが当たってしまった。本当に不思議なもんだ。残るは近くの川で取れた鮎が発泡スチロールに12箱。こちらは残るは支部長だけ。支部長が鮎を当てれば全員当選になるが、さすがにそれは甘くて、支部長だけ景品が無かった。残念。それでも5人中4人が当たったなんて、やはり事前情報通り、ものすごい高確率で景品がもらえる大会だ。
ところが、後から聞くと、おんちゃんのグループは誰も当たらなかったそうだ。それはそれでものすごい珍しい確率だと思うが、悲しい事にかわりはない。残念。
抽選会が終わるとみんな一斉に帰途につく。その素早さは目を見張る物があったが、後で分かったのは、渋滞を避けるためのようだ。外に出ると雨は土砂降りになっていて駐車場へ行くのも大変だったが、特に足も痛くないし、レースが楽しかったので苦痛でもなかった。
〜 次の戦い 〜
さて、今日の北山林道駆け足大会は思った以上にとっても楽しく面白いレースだったが、今後、同じように坂が厳しい山岳マラソンが続く。
次のレースは7月末の汗見川マラソンだ。過去に何度も出ているが、前半は10km以上も上りが続き、帰りは同じコースを降りてくるという精神的にも厳しいレースだ。しかも炎天下になると、とんでもなく暑い。
その次のレースは9月始めの四国のてっぺん酸欠マラソンだ。これは去年、初参加しようとしたんだけど、スタート直前になって暴風雨のため突然中止になったものだ。今年こそはなんとしても出場したい。
さらに10月始めには龍馬脱藩マラソンがある。去年、初参加したレースだが、フルマラソンの最大標高差560m、獲得標高860mというのに恐れおののいてハーフマラソンの部に出たんだけど、ちょっと物足りなかったので、今年は遂にフルマラソンに挑戦するのだ。
て事で、今年は山岳マラソン4レースが続くというハードなスケジュールになっているが、初戦の今日の大会が気持ち良く楽しく走れたので、先行きは明るい!
〜おしまい〜
![]() 戦績のメニューへ |