第14回 高松ファミリー&クォーターマラソン in 庵治

〜 着実にしのびよる老化 〜



2019年10月27日(日)高松市庵治町において第14回高松ファミリー&クォーターマラソン in 庵治が開催された。

私たちにとって2016年の第11回大会に出場して以来、3年ぶりの出場だ。この大会には13年前の第1回大会から7年前の第7回大会まで毎年参加していたのだが、その後はあまり参加できていない。
6年前は同じ日に開催された大阪マラソンに出場した。大阪マラソンは競争率5倍以上の狭き門なので、当選したら当然ながら最優先だ。
翌年の5年前は、同じ日に開催されたサイクリングしまなみ2014に参加した。今治と尾道を結ぶ瀬戸内しまなみ海道の高速道路を自動車通行止めにして自転車で走れる大イベントだったので、こんな貴重な機会を逃すわけにはいかないと最優先で参加した。
そして4年前に3年ぶりに出場しようと思っていたら、気が付いた時には既に定員いっぱいでエントリー受付が終了になっていた。いつもなら大会事務局からパフレットが送られてきて、それから申込みをしてたんだけど、パンフレットは前年に出場した人だけに送られてきて、前年に参加してなかった我々には送られてこなかったため、エントリーが始まっていたのを知らなかったのだ。

ただ、そうだったとしても、以前なら庵治マラソンごときなら、気付いてから、やおら申し込んでも十分間に合った。庵治マラソンごときが定員一杯になってエントリー受付を打ち切るなんて事は考えられなかったのだ。
かつては庵治マラソンみたいなマイナーな草レースは、むしろ参加者が少なくて大会の存続を危ぶんでいたくらいだ。だから、完全に油断していた。それが、いつの間にか、エントリー受付開始と同時に申し込まなければエントリーできないという世紀末的な状況になっていたのだ。
東京マラソンや大阪マラソンのような超メジャーな大会は抽選になっているが、それに次ぐような奈良マラソンや那覇マラソンのような大会は先着順になっていて、以前から熾烈な先着順争いが繰り広げられてきたが、庵治マラソンのようなマイナーな草レースは慌てる必要なんて無かった。それが、最近は、汗見川マラソンのような山の中の超マイナーな草レースだってエントリー受付開始と同時に瞬間蒸発するようになったので、庵治マラソンが定員一杯になって受付終了になっても不思議ではない。

そのような教訓を胸に、3年前の第11回大会には忘れずにエントリーする事ができ、4年ぶりに出場したのだ。
その後、2年前にも連続でエントリーしてたんだけど、台風で中止になってしまった。本当に最近は台風や大雨で中止になるマラソン大会が多くて嫌になる。少しくらい雨が降ったり風が吹いたりしても、自己責任で走るので構わないから、気にせずに開催して欲しい。
そして去年は再びサイクリングしまなみ2018と開催日がカブってしまい、参加できなかった。

てことで、今年は3年ぶりの出場となった。参加するのはのほか、支部長、國宗選手、のらちゃん、加藤選手と妹さんが12kmコースに出場し、さらに親子で走る3kmファミリーの部に中村選手と息子さんが参加する。
このうち、のらちゃんと加藤兄妹は初参加だ。

これで私は10月はこんぴら石段マラソン龍馬脱藩マラソン秋吉台カルストトレイルランに続く4連戦だ。10月は全ての日曜日にレースが入ったのだ。これは、きつい。きつ過ぎる。こんぴら石段マラソンはお遊びマラソンなので、どうってことないが、年間のマラソン大会で最も厳しい龍馬脱藩マラソンの僅か1週間後に過酷なトレイルランである秋吉台カルストトレイルランがあり、それらの傷が癒えない間に庵治マラソンがあるので、庵治マラソンに好タイムを期待することはできない。せめて2週間おきくらいにバラけてくれたら嬉しいのに。関係者は調整してくれないかなあ。
支部長だって、こんぴら石段マラソンには出なかったものの、龍馬脱藩マラソンと秋吉台カルストトレイルランには出たので、3連戦だ。私が龍馬脱藩マラソンがフルマラソンで、秋吉台カルストトレイルランもロングコースだったのに対し、支部長は龍馬脱藩マラソンがハーフマラソンで、秋吉台カルストトレイルランもショートコースだったので、傷は浅いが。
また、のらちゃんは龍馬脱藩マラソンには出てないが、こんぴら石段マラソンと秋吉台カルストトレイルランには出ているので、10月は3戦目だ。秋吉台カルストトレイルランは私と一緒にロングコースを走っているから、傷は浅くない。
みんな、よくやるなあ、と我ながら感心する。


〜 コース 〜


庵治マラソンのコースは12kmだ。なぜクォーターマラソンっていう名前が付いてるのに1/4の10.5kmじゃなくて12kmかと言うと、実は、かつて庵治町が存在していた時は庵治マラソンのコースは10kmだった。これならクォーターマラソンと言える。一方、その頃、高松市は屋島の周りを一周する12kmコースの屋島一周クォーターマラソンてのを開催していた。庵治町が高松市に吸収合併された時に、この2つのレースが合体したのだが、場所は庵治マラソンの場所で開催し、距離は屋島一周クォーターマラソンの12kmを引き継いだのだ。その結果、以前の庵治マラソンのコースに比べ、折り返し点まで1km、往復で2kmの延長となったのだ。

(のら)「あれ?おかしいよ。場所は庵治マラソンの場所で開催し、距離は屋島一周と同じ12kmにして、名前は両方の合体って事は分かるけど、
       そもそも屋島一周の頃から、12kmなのに、なんでクォーターマラソンって名前だったの?」
(幹事長)「それが分からないんよ」


なんで12kmなのにクォーターマラソンて名前だったのかは、今となっては不明だ。たぶん、フルマラソンの1/4に毛が生えた程度の距離だからって事で、適当に着けたんだろう。合体した後にクォーターマラソンて名前を受け継ぐんだったら、距離は以前の庵治マラソンのままで良かったと思うのに、わざわざ12kmに延ばしたってのも意味不明だが、合併に伴う役所同士の魑魅魍魎としたバトルがあったのかもしれない。

3年ぶりの出場となる庵治マラソンだが、上にも書いたように、この大会には13年前の第1回大会から毎年参加していた。毎年タイムは着実に向上し第4回大会では1時間0分台のタイムを出し1時間切りも目前と思っていた。ところが、その後、毎年着実にタイムが悪くなっていき、1時間の壁はどんどん遠ざかっていった。
同じ距離だった屋島一周クォーターマラソンの頃は、調子が良ければ1時間を切った事もあるので、1時間切りというのは非現実的な目標ではなかったのだが、屋島一周のコースは坂がなだらかだったのに対し、庵治マラソンは坂がとっても厳しいので、容易ではない。特に大きい坂は5km地点を過ぎて出現する巨大な坂だ。かつて庵治マラソンが10kmコースだった時は、5km地点で折り返していたため、この最後の巨大な坂を走らずに済んでたんだけど、屋島一周と合体してコースが片道1km延長になったため、この巨大な坂を1kmも延々と走らなければならなくなったのだ。

ただし、坂がきついと言ったって、山岳マラソン4連戦のコースに比べたら大したことはない。5km地点から1km続く坂は最大斜度20%、平均斜度10%もある急坂だが、平均斜度10%程度の坂が何kmも続く北山林道駆け足大会四国のてっぺん酸欠マラソン龍馬脱藩マラソンに比べたら坂の距離は短いからだ。それに、坂はあるけど全体の距離が12kmと短いため、フルマラソンやハーフマラソンのようにレース展開に頭を悩ます必要がない点では楽だ。距離が短いから、序盤は抑えて走るとか、ペース配分を考えるとか、悩む必要が無いのだ。

(のら)「作戦は考えなくていいの?」
(幹事長)「距離が短いから、最初から最後まで全力疾走やな」
(のら)「ひえ〜!」


作戦を考える必要が無いというのは、つまり自分自身の中でプレッシャーが無いということだ。何も考えず、ただひたすらに全力疾走すればいいだけだ。
もちろん、本当に全力疾走しているのか、と言われれば、それはあくまでも主観的なものであり、他人が見たらチンタラ走っている程度だ。「こんなに無理したら後になって足が動かなくなるんじゃないか」なんて心配せずに、何も考えずに、その瞬間その瞬間における全力を出して走ればいい、という意味での全力疾走だ。


〜 ドタキャン 〜


レースの数日前に当日の配車の連絡を発信したが、ドタキャンの常習犯である國宗選手から反応が無い。まさか、またまたドタキャンかと思い、こっちから連絡すると、ちゃんと出場するという。
良かった良かった、なーんて思っていたら、レースの前日になって中村選手から連絡が入る

(幹事長)「どうしたの?」
(中村)「子供が出られなくなったので、私も出られなくなりました」


中村選手は親子でファミリー部門に出る予定だったので、子供さんが出られなくなると、必然的に親も出られなくなるのだ。
中村選手の子供さんと言えば、今を遡ること12年前の第2回大会で、スーパー女性ランナーである中村選手の奥さんが産後僅か4ヵ月で出場して女子部門で入賞したときに抱きかかえていた生後4ヵ月の赤ちゃんだった子だ。懐かしい思い出なので、今回、出られなくなったのは寂しい限りだ。


〜 会場へ出発 〜


最近のレースは高知県内の山の中で行われた山岳マラソンが続いたので、どれも朝の5時といった早朝に出発して眠かったが、今回は庵治なので高松市内から30分もかからないし、受付は9時20分までOKなので、ゆっくり出ればいい
てことで、のらちゃんに8時に迎えに来てもらい、その後、支部長と國宗選手をピックアップして現地に向かう。
加藤選手は別行動で、妹さんを迎えに行って現地集合だ。

天気予報どおり、朝から良い天気だが、気温はそんなに高くはない。今年の夏は猛暑がいつまでも続き、また大雨も頻発し、本当にマラソン大会泣かせで、かつ登山泣かせの夏だったが、ここへきて週末はうまく雨の合間のタイミングが続く。2週間前の龍馬脱藩マラソンといい、1週間前の秋吉台カルストトレイルランといい、晴天が続いたが、今日も気持ちの良い秋晴れだ。

車は順調に進んだが、国道11号線から八栗方面に向かう県道155号線へ入る交差点で大渋滞が発生しており、車が国道11号線に溢れたまま進まなくなっている。慌てて大きく遠回りして、牟礼の交差点から逆方向に県道155号線に入ったら、道路は妙に空いていた。さっきの大渋滞は庵治マラソンの参加者が溢れかえっているのかと思ったら、そうではなかったのだろうか。

そのまま順調に会場に近い庵治中学校のグランドに着いたが、すでに満車で、隣の庵治小学校のグランドの駐車場に着いた。こちらは、まだまだ車は少なかった。来年からも朝、8時に出れば楽勝だ。

加藤選手も相前後して到着し、無事、合流することができた。
さらに、今日は出場しないピッグがわざわざ応援に駆け付けてくれた。彼は1週間前に四万十ウルトラマラソン100kmの部を走ったため、まだ疲労が抜けないとのことで、今日は不参加なんだけど、自転車を漕いで駆け付けてくれたのだ。


〜 会場到着 〜


受付をすると、参加の記念品をくれるが、これがくせ者だ。この大会の前身だった屋島一周クォーターマラソンの頃は、参加費が僅か1000円だったにもかかわらず、素晴らしく立派なスポーツバッグをくれたりしていた。もちろん、何かの残り物だったのは間違いないが、参加者が少ない草レースで数が少なくよかったから、結構、良い品をもらえていたのだ。
ところが、庵治マラソンになってからは、参加費が2500円にアップしたにもかかわらず記念品は逆にとてもセコくなってきた。以前と同じように何かの残り物なんだけど、参加者が多くなって記念品の数も多くなったため、爪切りだったりコカコーラの粗品の小さなタオルだったり、ガッカリするものが多かった。
でも、今年はちゃんとしたTシャツだった。

受付時間は9時20分までだが、その後も開会式だとか3kmファミリー部門のレースだとか行われて、我々が出る12kmレースのスタートは10時50分だ。まだ2時間もある。ゆっくりゆっくり着替えする。なーんて言っても、着替えは早い。この時期のレースは、着るものに悩む余地が無いからだ。

(國宗)「珍しく今日は着るもので悩まないんですか?」
(幹事長)「今日は半袖Tシャツ以外に選択の余地はないやろ」


さすがに今の時期なら、天気が良くてもメッシュの袖無しシャツを着るほど暑くはならないだろう。また仮に雨が降ったとしても、12kmだと寒くなる前に終わってしまうので、長袖は必要ない。今日は晴れているから半袖Tシャツで決まりだ。それに、12kmなんてすぐ終わるから、何を着ても問題無いのだ。

(支部長)「いやいや、距離に関係なく、何を着たってタイムに変わりはないんやってば」

着るのは3週間前のこんぴら石段マラソンでもらったTシャツだ。一緒に走ったのらちゃんとお揃いにした。

それから今日は秘密兵器がある。ふくらはぎサポーターだ。最近はランニングタイツを履く選手が多く、今日も私以外の支部長、國宗選手、のらちゃん、加藤兄妹の全員がタイツを履いている。しかし、私はこれまでランニングタイツのサポート機能を全く信じてなかったので、タイツはあくまでも防寒用として位置付け、寒い時以外は履かない主義だった。
ところが、2週間前の龍馬脱藩マラソンで、一緒に走った航路さんからタイツの機能を教えてもらった。彼によると、タイツを履くと筋肉の無駄な動きが抑制されて疲労が防止できるのだそうだ。テーピングも同じ効果があるとのことだが、航路さんは元陸上部なので、彼の言う事なら信用できる。て事で、これからは暑い時期でもタイツを履こうと思った。
ところが、やはり今日なんかはタイツを履いたら暑そうなので、迷っていたら、以前、ふくらはぎサポーターを買っておいた事を思い出した。

(幹事長)「これ、どこで買ったんやったかなあ?」
(ピッグ)「サイクリングしまなみで買ったんですよ。私も一緒に買いましたよ」


そうか、思い出した。去年のサイクリングしまなみの会場で買ったんだった。妙に安売りしてたからピッグと一緒に飛びついたんだけど、使う機会が無いまま放ったらかしていたのだ。
履いてみると、かなりきつくて、タイツより締め付けが強い。なんだか、すごく効果がありそうな気がする

そのほか、私以外の全員がランニングキャップを被っているが、これも個人的に嫌いなので、炎天下か雨の時しか被らないから、今日は不要だ。もちろん、こんな日に手袋も不要だ。

(支部長)「いやいや、汗を拭くためには軍手が必要なんやってば」

加藤選手の妹さんの足元は、ピンク色の新しいシューズが輝いている。今、流行りのナイキのピンクシューズだ。9月のMGCでも、男子の速い選手は、ほぼ全員がナイキのピンクシューズを履いていた。
彼らのようなプロが履いていたのは3万円もするナイキズームXヴェイパーフライネクスト%だが、一般向けには3種類が用意されており、一番高級なのが1万8千円くらいのナイキズームフライ3で、次が1万3千円くらいのナイキエアズームペガサス36で、最後が9千円ちょっとのナイキズームライバルフライだ。
このうち加藤選手の妹さんは一番高級なナイキズームフライ3を買ったんだそうだ。

(幹事長)「スポーツデポで聞いたら、それはフルマラソンを3〜4時間で走る人用って言ってたよ」
(加藤妹)「え?そうなんですか?一番良さそうだったから買ったんですけど」


11月のタートルマラソンでマラソン大会にデビューするランニング超初心者のてっちゃんもナイキエアズームペガサス36を買ったとのことだし、みんな財力あるなあ。
ちなみに私は一番安いナイキズームライバルフライをネットで5千円で買っている。

スタート前に気合を入れるメンバー


写真を撮ったりしてると、だんだん我々のスタート時間が近付いてきた。

(のら)「なんかドキドキするよ!」

のらちゃんは初参加なので、今日も不安爆発だ

(幹事長)「1週間前の秋吉台カルストトレイルラン40kmを走ったのに比べたら楽勝だよ」
(のら)「それとこれとは別だよ。ペースが全然違うじゃん」
(幹事長)「のらちゃんは速いから、何も考えずにひたすら走ればいいんだってば」


彼女とは、よく一緒に練習してるが、僕よりスピードが速いので、心配することはない。ハーフマラソン以上の距離になったらペース配分とかがあるから、まだ彼女には負けた事は無いが、ペース配分が無用の短い距離なら、文句なく私は負けてしまう。ゾウさんと同じだ。

(支部長)「ゾウさんにはハーフマラソンやフルマラソンでも負けてるけどな」

我々が出る12kmレースの参加者は男子568人、女子168人の合計736人で、マラソン大会としては小規模だ。しかも女性で我々の年代はかなり少なそうなので、のらちゃんは女子年代別で入賞する可能性がある
彼女はトレイルレースとして初参加した今年2月の善通寺五岳山空海トレイルで女子年代別で1位になったし、5月の小豆島オリーブマラソンでは女子年代別で4位に入賞したし、1週間前の秋吉台カルストトレイルランでは女子年代別で2位に入った。我々世代の女子出場者は、もともと分母が少ないから上位入賞しやすいのだ。

(幹事長)「今日も女子年代別で上位3人に入れば賞状がもらえるから頑張るように」
(のら)「プレッシャーかけないでよ!」


一方、私としては、上にも書いたように、このレースのタイムの目標は1時間切りだ。
13年前の第1回から最初の4年間は着実にタイムが縮まっていき、第4回大会では1時間切りも目前に迫ってたんだけど、その後はV字回復の反対で、V字型に悪化し、毎年着実にタイムが悪くなって、1時間の壁はどんどん遠ざかっていった。久しぶりに出た3年前は、なんとか長期低落傾向には歯止めをかけたものの、簡単には1時間は切れそうにない状況だ。

(支部長)「老化が進んでるんやから、もう諦めたらどう?」

それに、実は昨日から風邪気味なのだ。2日前に瀬戸大橋スカイツアーってのに行ったら、抜群の眺めで感動的に素晴らしい景色を見られたんだけど、薄着をして行ったら、上空なので風もあり、ちょっと風邪気味になってしまったのだ。
そんなこともあり、たぶん、もう無理とは思うけど、わかりやすいから一応、目標は1時間だ。

12kmレースなので1時間を切るには1km5分を切るペースとなる。坂が無い区間なら可能なペースだが、坂が厳しい庵治マラソンでは、全ての区間を1km5分を切るペースで走り続けるのは難しい。なので、フラットな区間では、もっと速く走って貯金しなければならない。そのためには、序盤から速めのペースで突っ込む必要がある。しかし、序盤から無理し過ぎたら、終盤に一気にツケが回ってきてペースダウンしてしまう。序盤の飛ばし方の加減が難しい

(支部長)「ペース配分なんか考えずに全力疾走するって言ってた割りにはゴチャゴチャ悩んでるなあ。考えたってしょうがないって」

スタート時間が近づいてきたのでスタートラインに集合し、割と前方にポジション取りする

(支部長)「いつもより前の方やな」
(幹事長)「のらちゃんに女子年代別で上位入賞ささないといけないからな」
(のら)「ひえ〜!」


参加者が少ない小規模な大会なので、前にいようが後ろにいようが大した違いは無いんだけど、我々世代と思われる速そうな女性ランナーが一人、最前列に陣取っているのだ。セミプロランナーのようなランニングシャツとランニングパンツをはいた明らかに速そうなランナーだ。彼女には絶対に勝てそうにないが、スタート時点で最初から離れていてはいけない。

(のら)「ちょちょちょ、ちょっと、後ろの人、素足だよ!」

後ろを見ると、なんと3年前のレースで勝手にライバル視して競り合っていた女ターザンがいるじゃないか!

(幹事長)「うわ、お久しぶり!今日はターザンスタイルじゃないんですか?」
(女ターザン)「今日は普通のウェアなのよ」


なーんて言いながら、足はやはり素足だ

(のら)「足は痛くならないんですか?」
(女ターザン)「ぜんぜん平気よ」


足の裏はシューズの底のように分厚くて頑丈になっているのかと思われがちだが、彼女の足の裏は動物の肉球と同じようにきれいで柔らかいのだ。
彼女も明らかに同世代なので、のらちゃんはプレッシャー爆発だ。そして女ターザンの情報によると、最前列に陣取っている速そうな女性ランナーは、去年、女子年代別部門で1位をとった人とのことだ。

(幹事長)「これで強敵が2人いることが分かったな。じゃ3位を目指そう」
(のら)「あと1人くらい絶対にいるよ!」

天気はずっと晴れて、じっとしててもだんだん暑くなってきた。これなら夏用のメッシュシャツの方が良かったかもしれない。

(支部長)「まだゴチャゴチャ悩んどんかいな」


〜 スタート 〜


いよいよスタートとなり、ピストルの音と同時に一斉に飛び出すが、参加者が少ないからスタート時の混雑はあんまり無かったし、スタートしてからも周囲は同じようなペースで、邪魔になるランナーは少ない。とりあえず全力疾走ってほどではないが、頑張って走ってみる。
最初の1km地点でのラップは、5分を少し切るペースだ。まあ、これくらいが良い感じかな。これ以上飛ばすと持たなくなりそうなので、このスピードを維持して行こう。
ここまではフラットな区間だが、ここから先は坂が次々と現れる。中小合わせて4つの坂があり、最後に5つ目の巨大な坂がある。巨大な坂を上りきったところに折り返し点があり、後半は巨大な坂を下った後に再び4つの坂を越えてくることになる。

1km地点を過ぎると、まずは最初の坂が現れる。以前は負担感のあった坂だが、山岳マラソンを数多くこなしてきた今となっては、これくらいの坂は全くへっちゃらだ。最初の坂を下りるとしばらくフラットな区間が続き、次の坂の手前で2km地点になる。ここで見たラップは、1km5分を少しオーバーしていた。いくら坂があったと言っても、早くもペースダウンするなんて、少し意外だ。

2km地点を過ぎると、小刻みなアップダウンが続き、その途中に3km地点があり、1km5分を大幅に超えている。いくらアップダウンがあったからと言っても、このペースダウンはひどすぎる。早くも力尽きかけているんだろうか。まずい。でも、だんだん疲れてきて、ペースアップは無理だ。

3kmを過ぎると、アップダウンは続くものの、全体的に下り基調となり4km地点で見たラップは1km5分ちょっとに戻した。とは言っても、この先に大きな坂が控えてることを考えると、1時間を切るためにはこんなペースでは全然だめだ。

4km地点を過ぎてしばらくはフラットな海岸線が続くが、その途中で、すぐ横にのらちゃんが追いついてきた。スタート直後は出遅れてたんだけど、私がペースダウンしたから追いついてきたようだ。

(幹事長)「最初からペースは落ちてないの?」
(のら)「うん、なんとか維持してる」
(幹事長)「もうすぐ大きな坂があるけど、頑張ってね」


のらちゃんは力強く前へ進んでいった。
いよいよ最後の大きな坂が現れ、それを上り始めたところに5km地点がある。ここで時計を見ると、再び大きくペースダウンしている。やっぱり今日は、もう駄目だ。

最後の巨大な坂は、以前は目の前が真っ暗になるほどの絶壁に感じられたが、山岳マラソン4連戦をこなしてきた我々にとっては、以前ほどは絶望的でない。でも、ペースは明らかに遅い。
ところが、急登をヒィヒィ上っていると、例の同年代の高速女性ランナーが目の前を走っている。ここまでは先行されていたはずだが、明らかにペースが落ちてきてて、簡単に追い抜けた。て事は、のらちゃんも彼女を抜いたことになる。さらに女ターザンは我々のすぐ後ろからスタートしたが、まだ抜かれていないはずだ。て事は、のらちゃんは強敵2人をリードしていることになる。のらちゃんは気付いてるんだろうか。

巨大な坂の傾斜度が緩やかになったら、間もなく折り返し点になる。ここで前方を走っていたのらちゃんのペースが明らかに落ちてきて、どんどん近付いてきた。これはマズイ。慌ててスピードを上げて追い付き、声を掛ける

(幹事長)「去年の1位の人を抜いているよ。このまま追い付かれないように頑張れ!」
(のら)「う、うん」


のらちゃんはなんとか頑張って着いてくる。
折り返し点は6km地点なんだけど、この1kmは6分を少しオーバーしてしまったが、ここは仕方ない。後半が勝負だ

折り返して他のメンバーを確認すると、2分ほど後ろを國宗選手と支部長が走ってきた。表情は明るい。さらに6分遅れで加藤選手も走ってきた。彼も余裕の表情だ。

折り返して下りに入ったら、一気にガンガン下る。後ろからのらちゃんのライバルが迫ってきているかと思うと、恐怖を覚える。のらちゃんは大丈夫かなと思ったけど、息を吹き返したようで、すぐ後ろを着いてくる。
大きな坂の終盤7km地点があるが、気持ちではガンガン飛ばしたつもりだったけど、そんなに大してスピードアップはできておらず、1km5分を少し切った程度だった。

大きな坂が終わると、しばらくはフラットな区間が続き、そこでペースダウンすると、のらちゃんが横に並んだ。

(幹事長)「元気に回復したんなら頑張って先に行ってよ」
(のら)「うん、頑張るよ」


息を吹き返したのらちゃんは力強く前に進んでいった
その後、再び上り坂に入ったところ8km地点となる。タイムは再び5分をオーバーしている。

このレースは距離は短いが、給水所は何ヵ所か設置されている。いつもなら、たかが12kmレースなので、飲んだ水が身体に回るまでにはゴールしてしまうので、少しでもタイムを稼ぐため全てパスする。でも今日は暑くて喉が渇いたので、最初の給水所からすべて水分補給をしてきた。ただ、参加者が少なくて空いているので、タイムロスはほとんど無いと思う。

その後はアップダウンが繰り返される区間になり、9km地点で見たラップは、一気に悪くなって、1km6分近くにまでペースダウンし、もう1時間切りは不可能な水準となった。
少しは風が吹いているが、かなり暑い。でも、そんな事を言ってられる状況ではないから、できるだけ頑張って走る。

次の区間もアップダウンが続きはするが、基調的には下りが多いので、一生懸命走ったおかげで、10km地点で見たラップは5分ちょっとにまでペースアップできた。

残りは2kmなんだから、もうラストスパートだと思ってペースアップしたつもりなんだけど、最後の坂を越えて11km地点で見たラップは、再び大きくペースダウンしていた。全然スパートできていない

もうモチベーションが無くなってダラけていたら、なんと例の同年代の高速女性ランナーが横にいるではないか。いつの間にか彼女は追いついてきたのか。こら、あかんがな。もし、のらちゃんが力尽きかけて油断していたら、追い抜かれてしまう。すぐ知らせないといけない。
のらちゃんは少し前を走っているので、頑張って追いついて知らせてあげようとペースアップするが、のらちゃんもなんとかスピードを落とさず走り続け、なかなか追いつけない。でも、のらちゃんに追いつけなくても、僕が同年代の高速女性ランナーに追い抜かれない限り、のらちゃんも逃げ切れるわけなので、それでいい。

てことで、最後の1kmは、その女性ランナーとの死闘となった。彼女は有名なランナーのようで、沿道から声援がひっきりなしに飛んでくるので、すぐ後ろに迫っているのが分かる。
でも、あまり若くない女性ランナーは、一般的に言って、スピードを最後まで維持する力はすごいが、短い距離で一気にスパートする力は衰えているはずなので、ここで全力を出し切ってラストスパートしたら追い抜かれることはないだろうと思い、全力でスパートする。そしたら、思った通り、彼女の足音はどんどん後ろに遠ざかっていった。


〜 ゴール 〜


後ろから迫ってくる恐怖と戦いながら、最後は短距離走のようなスピードに上げてゴールした。最後だけスピードアップしてもあんまり意味は無く、良いタイムは出なかったが、彼女から逃げ切れたので一安心だ。
結局、3年前のタイムより少し遅かったので、老化による長期的かつ着実なタイムの悪化は食い止められなかった

一足先にゴールしたのらちゃんは疲れ果てて座りこんでいる。

(幹事長)「逃げ切れたやんか。良かったね!」
(のら)「ぜいぜい」
(幹事長)「もしかしたら年代別で1位かも」
(のら)「ぜいぜいぜい」


結果発表を見に行くと、やはりのらちゃんは女子年代別で堂々の1位だった

(幹事長)「やったーっ!すごいよ!!」
(のら)「ぜいぜいぜいぜい」


個人的にはパッとしないタイムに終わったけど、常日頃一緒に鍛えているのらちゃんが1位になったので、とても嬉しい。
上位入賞者には、表彰式でゲストの土佐礼子さんから賞状が授与された。さらに、これまでのレースでは、上位入賞しても賞状だけだったが、今回はメダルも授与された。しかも、このメダルは、なんと、名産の庵治石で出来ている。これは珍しい。

賞状を頂いた土佐礼子さんと一緒に記念撮影


我々がゴールしてしばらくすると、國宗選手や支部長も元気にゴールしてきた。さらに加藤選手や妹さんも無事にゴールする事ができた。まずはめでたしめでたし。


〜 反省会 〜


参加の記念品と一緒に、近くの温泉のタダ券をくれたので、レース後はみんなで温泉に繰り出して反省会をする。2週間前の龍馬脱藩マラソンや1週間前の秋吉台カルストトレイルランの時もそうだったけど、レース後に近くの温泉に入れるのは嬉しい。身体もさっぱりするし足の疲れも和らぐ。

(幹事長)「私は老化の進展を食い止める事ができなかったけど、支部長はどうやったん?」
(支部長)「少なくとも、坂でも一回も歩かなかったんは収穫やな」


元々極端なまでに坂に弱い支部長だが、最近は坂でも歩かないことが多くなった。老化に打ち勝っている。

(支部長)「それで、ふくらはぎサポーターの効果はあったんかいな?」
(幹事長)「よう分からん」


こういうものは効果があったのかどうか分かりにくい。でも、少なくとも邪魔になる訳ではないから、暑い時期にはタイツの代わりに履くことにしよう。

今年もタイムはパッとしなかったが、風邪気味だったこともあり、こんなもんだろう。以前と比べて、そんなに極端に落ちている訳でもないから、そんなに落ち込む必要はない。

これで10月の4週連続レースが終わって、一息つける。岡山マラソンや神戸マラソンに落選したこともあり、次のレースは11月末のタートルマラソンだ。個人的には割と良いタイムが出やすい大会だから、今年は真面目に練習しよう!


〜おしまい〜




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