第39回 瀬戸内海タートルマラソン大会
2018年11月25日(日)、小豆島において第39回瀬戸内海タートルマラソン全国大会が開催された。
(ピッグ)「1ヵ月前のサイクリングしまなみ2018の記事は呆れるほど遅かったけど、今回は掲載が早いですね」
(幹事長)「例年のことだけど、1週間後には那覇マラソンが迫ってるからな」
サイクリングしまなみ2018は久しぶりの自転車部の活動だったので、早く書こうと焦ってはいたんだけど、登山に行ったり旅行に行ったりウッドデッキの補修工事をしていたもんだから、大幅に掲載が遅れてしまった。しかし、今回は1週間後に迫ってきている那覇マラソンに備えるために、タートルマラソンごときの記事はさっさと済ませなければならない。
(ピッグ)「力が入ってませんね」
(幹事長)「そんな事はないぞ」
私の中では一番由緒のある瀬戸内海タートルマラソンだ。手を抜く訳がない。瀬戸内海タートルマラソン大会は私にとっては初めて参加したマラソン大会であり、私のマラソン大会の原点と言える、一番愛着がある大会だ。初めて参加したのは、23年も前になる1995年の第16回大会だ。
(ピッグ)「その記事は、もう永遠に書かないんですか」
(幹事長)「ここまで認知症が進んでしまった今、23年前の記憶は、ほぼゼロだわな」
レースの事はほとんど覚えてないが、初めて参加したマラソン大会なので、エントリーの経緯はよく覚えている。
その頃、一人でジョギングなんかしてたんだけど、ふと、何かマラソン大会ってものに出てみたいなあなんて思い立った。でも、当時はマラソンブームが起きるはるか以前の事で、ジョギングする人だって滅多にいなかったから、全国的にもマラソン大会は数が少なく、たまにあっても出場するのはマニアックな人ばかりという状況だった。
ところが、ある日、テレビを見ていたら、このタートルマラソン大会のCMが流れていて、「ゆっくり走るタートルマラソンだから誰でも出られるよ」なんて言ってるので、ついフラフラと軽はずみな気持ちで申し込んでしまったのが最初だ。申し込もうと思い立ったとき、実は既に申し込み受付期間は過ぎてたんだけど、主催者の瀬戸内海放送まで訪ねて行ったら、簡単に申し込むことができた。今みたいに、申し込み受付スタートと同時にパソコンのキーを叩いて1秒を争ってネットで申し込みしないとエントリーすらできないという末期的な状況からは考えられない古き良き時代だ。
当時、私のような素人が誰かから誘われた訳でもなく一人でマラソン大会に出るなんて事は、珍しかったと思うので、初心者大歓迎だったのだろう。ちなみに、当時はタートルマラソンってことで年齢制限があり、35歳以上でないと出場できなかった。だから30歳代後半で出た私なんかは若手の部類だった。
初参加したレースの結果は、30歳代だったにもかかわらず2時間すら切れない大惨敗だった。順位を見ても、かなり後ろの方だった。「ゆっくり走るタートルマラソンだから誰でも出られるよ」なんて甘い言葉で誘惑していたが、マラソンブームなんて起こるはるか以前の事だから、実際に出場していた人の大半は経験豊かな速いランナーで、ド素人の私なんか蹴散らされていたのだ。
でも、タイムは悪いし順位も後ろの方だったけど、初めて出場したマラソン大会は感動的なものだった。誰でも参加できる市民マラソン大会を走っているだけなのに、沿道の住民からは熱い応援があり、まるでオリンピックを走る一流選手になったような気分になれたからだ。
今思えば、人口が少ない地域の小さな大会だから、もっと大きな大会に比べたら、沿道で声援を送ってくれる人も数も少なかったんだろうけど、他人から声援を受けて走るなんて事は、義務教育を終えてからは初めてだったので、とても快感だった。初めてだったから、ペース配分も何も分からずに走ったため、ゴールしたら足が動かなくなって座り込んだけど、今思えば、あの疲労感も心地よかった。
初めて出たマラソン大会がすごく楽しかったというのは、自分でもラッキーだと思う。ときどき、初めて出たマラソン大会が辛かったから一回きりでマラソンを止めてしまったという人の話も聞くが、とても気の毒だ。私は、初マラソンでマラソン大会に出る楽しさを知ってしまったから、それ以来、病みつきになった。
そういう意味で、単に初めて出場したマラソン大会というだけでなく、私の人生に大きな転機をもたらした瀬戸内海タートルマラソンは、私にとって極めて重要なマラソン大会なのだ。
〜 エントリー 〜
瀬戸内海タートルマラソンは私にとっては最も愛着あるマラソン大会なので、この23年間は、ほぼ毎年欠かさず出ているが、ペンギンズの他のメンバーには、このような思い入れが無いため、以前は参加者が少なかった。しかし近年は丸亀マラソンやオリーブマラソンと同列の四電ペンギンズ公式レースとして出場するのが基本となった。
それなのに、なんと今年はピッグが出場しないと言う。
(幹事長)「ええ根性しとるな」
(ピッグ)「大阪マラソンに当選しましたので、そちらに出ます」
大阪マラソンは東京マラソンの次くらいに人気が高いマラソン大会で、競争率は毎年5倍を上回る。
(ピッグ)「大阪マラソンに当選したら、当然、そっちを優先するでしょ?」
(幹事長)「そんな事はない!実は今年は私も当選したが、タートルマラソンを優先するんだぞ!」
(ピッグ)「ななな、なんでですかっ!?」
大阪マラソンは競争率が5倍を上回っているので、平均して5年に1回くらい当選すれば良いって感じだ。私は第1回から毎年、申込を続けており、2013年に一度、当選して出場した。今年で8回目の開催となるので、そろそろもう一度当選してもいい頃かなあなんて思っていたら、うまいこと今年、2回目の当選を果たしたのだ。
5年前に出場した大阪マラソンは、本当に楽しかった。一度だけ当選して出場した東京マラソンも、とっても楽しかったが、それに匹敵するくらい楽しいマラソン大会だった。私の中で楽しかったマラソン大会ベスト3は東京マラソンと大阪マラソンと秋吉台カルストトレイルランだ。
そんなに楽しい大阪マラソンに当選したのだから、万難を排して参加するのが当たり前なんだけど、なんと今年は開催日がタートルマラソンと同じ日になってしまった。以前は10月末に開催されていたのに、いつの間にか11月末に変わっていたのだ。
(ピッグ)「そんなに楽しい大阪マラソンよりタートルマラソンを優先するなんて、よっぽどタートルマラソンには思い入れがあるんですね」
(幹事長)「そなな思い入れは全くない!」
瀬戸内海タートルマラソンは、私の人生に大きな転機をもたらした極めて重要なマラソン大会だが、はっきり言って飽きてる。
(ピッグ)「飽きてるんですかっ!」
(幹事長)「あなな海と山しか無いマラソン大会なんて飽きるだろ?」
大阪マラソンや東京マラソンの何が楽しいかと言えば、変化に満ちた大都市の風景が次々に現れてくるのが楽しいのだ。それに比べて走っても走っても海と山しか見えない小豆島のレースは退屈だ。ついでに言えば、延々と吉野川の堤防だけが続く徳島マラソンも退屈の極致だ。
(ピッグ)「それなのに、なぜ大阪マラソンよりタートルマラソンを優先するんですか?」
(幹事長)「ちょっと事情があって」
実は今年、山岳部の女子部員2人を誘ったのだ。この2人は5月のオリーブマラソンにも誘って初参加してもらったんだけど、それが楽しかったため、タートルマラソンにも出ることになったのだ。もちろん初参加だから右も左も分からない状況だ。その2人をほったらかして自分だけが大阪マラソンに出るってことは許されない。と思う。
(ピッグ)「大人なんだから、初参加でも何とかなるでしょ?」
(幹事長)「それはそうなんだけど」
私が23年前に初参加した時も、もちろん右も左も全く分からなかったが、別に困ったことは無かった。大人なんだから、それくらいは何とでもなるだろう。
しかし、これが男だったら「すまんのう」の一言を残してサッサと大阪へ旅立つ私だが、誘っておきながら自分はトンズラするなんて、貴重な女子部員が相手なので安直な行動は取れない。大阪マラソンへの出場という目の前の快楽を選んだがために、女子部員との人間関係悪化という長期的なダメージが残ってしまえば大きな打撃だ。
なので、やむなく大阪マラソンを蹴ってタートルマラソンに参加するって訳だ。
(幹事長)「わしも大人になったのう」
(ピッグ)「単に女子から嫌われたくないだけですよね」
てことで、今年はピッグが出ないので、参加メンバーは私と支部長、國宗選手、D木谷さんプラス女子部員2人となった。
ゾウさんは他の用事と重なって出られなくなり、ヤイさんは数年間から抱えている肉離れ爆弾を恐れて出場レースを厳選している。
(幹事長)「どれを取捨選択してるんですか?」
(ヤイ)「出場するのは丸亀マラソン、徳島マラソン、那覇マラソンの3レースに絞ります」
(幹事長)「3つのうちフルマラソンが2つも入ってますよ!」
ヤイさんの基準は分からないが、タートルマラソンに思い入れが無いのは確かだ。
さらに、高速ランナーの小松原選手は、去年のタートルマラソンの後、腰痛がひどくなり、それ以来、レースには出られない状態が続いている。
タートルマラソンにはフルマラソンの部とハーフマラソンの部がある。なので、エントリーに当たってはフルマラソンの部にするかハーフマラソンの部にするか、迷わなければならない。香川県内で唯一のフルマラソンである瀬戸内海タートルマラソンのフルマラソンは、かつて、徳島マラソンができるまでは近場の貴重なフルマラソンだったので、ときどきフルマラソンの部にも出ていた。
ただ、タートルマラソンは坂が多くて厳しいコースなので、フルマラソンに出ると、終盤の上り坂は例外なく歩くという非常に辛いレースになるため、坂が無いフラットな徳島マラソンができてからは、タートルマラソンではフルマラソンの部にはあんまり出ていない。6年前の第33回では、ついフラフラと久しぶりにフルマラソンに出たら、空前絶後の惨敗を喫して大会自己ワースト記録をたたき出してしまった。
あれに懲りて、基本的にはタートルマラソンのフルマラソンには出ないことにしている。
(支部長)「て言うか、1週間後に那覇マラソンがあるんやから2週間連続でフルマラソンはあり得ないやろ」
そうなのだ。一昨年、昨年に引き続いて、今年も3年連続でタートルマラソンの僅か1週間後には沖縄の那覇マラソンのフルマラソンに出場するから、タートルマラソンはハーフマラソンで十分だ。十分と言うか、1週間前にハーフマラソンに出るってのは、フルマラソンに備えたトレーニングとして絶好の位置付けだ。
小松原選手の話では、本当はフルマラソンの前週のトレーニングとしてなら10kmの部の方が良いらしい。ハーフマラソンだと疲れが残るからだ。小松原選手は7年前に初フルマラソンとして那覇マラソンに参加し、すっかりその魅力の虜になってしまい、それ以来、毎年欠かさずに出ているのだが、その直前の調整として、那覇マラソンの1週間前に開催されるタートルマラソンの10kmの部に出てきたのだ。
確かにハーフマラソンは疲れが残るから、10kmの部の方が良いのかも知れない。でも、私のマラソン大会の原点である瀬戸内海タートルマラソンで10kmの部なんかに出るのは情けないので、せめてハーフマラソンの部は死守したい。
(幹事長)「それに、新人女子部員にハーフマラソンの部を勧誘しておいて自分が10kmの部に出る訳にはいかんわな」
(ピッグ)「やっぱり何事も女子部員優先ですね」
他のメンバーも大半はハーフマラソンの部に出るが、トライアスロンからウルトラマラソンまで参加し、自分の限界を追い求めているD木谷さんだけはフルマラソンの部に出る。タートルマラソンのフルマラソンの部は、はっきり言って苦行だから、精神力が強くないと出られない。
とは言え、このタートルマラソンはハーフマラソンと言っても決して楽なコースではない。坂が多くて厳しいコースなのだ。そもそも四国なんて山がちだから、丸亀マラソンや徳島マラソンを例外として、大抵のマラソン大会は坂が厳しい。
ただ、坂が厳しいとは言っても、6月上旬の北山林道駆け足大会、7月末の汗見川マラソン、9月上旬の酸欠マラソン、10月初めの龍馬脱藩マラソンの山岳マラソン4連戦のコースに比べたら、まだマシだ。あんなに過激な坂が延々と続く訳ではない。
それにタートルマラソンは、夏場の山岳マラソンと違って季節が良いせいか、タイムは悪くない。一般的にマラソン大会は秋から春にかけて開催され、特にシリアスなマラソン大会は冬場がメインとなるが、寒いのが苦手な私としては、冬のマラソン大会は嫌いで、今の時期がベストだ。
〜 ドタキャン! 〜
大阪マラソンを蹴ってまでタートルマラソンに参加するのは女子部員との人間関係悪化を避けるためだ。それなのに、ああ、それなのに、参加予定新人女子部員2人のうち、忍ちゃんから出場できないという連絡が入る。
(忍)「ごめんね」
(幹事長)「ごめんね、で済むかーっ!わしは大阪マラソンを犠牲にしてまで参加するんやでっ!」
なんて怒ったりはしない。大人だからだ。て言うか、彼女の事情はやむを得ないものだったので、怒るわけにはいかない。
さらにD木谷さんも出られないという。理由はゴルフだ。
(幹事長)「それは、ちょっと問題ですな」
(D木谷)「すみません。仕事がらみなんですよ」
ゴルフというのはひっかかるが、仕事がらみだったら仕方ないか。
こうなると懸念されるのは國宗選手の動向だ。心配していると、案の定、前日になって國宗選手から連絡が入る。もちろん、レースの直前に入る連絡は悪い知らせと相場が決まっている。特に國宗選手からはドタキャンの連絡に決まっている。分かり切っている。2月の丸亀マラソンも2年連続でドタキャンしてるし。ただ、彼もマラソンと縁を切った訳ではなく、3月の徳島マラソンは、なんと5年ぶりに出場したのだ。なので、できることなら今回も参加して欲しかったな。
(國宗)「あのう、済みません」
(幹事長)「ああ、はいはい」
(國宗)「明日のタートルマラソンですけど・・・」
(幹事長)「ああ、はいはい」
(國宗)「あの、実は、・・・」
(幹事長)「ああ、残念やな」
(國宗)「えーと・・・」
(幹事長)「いやいや、決して見捨ててはいないからな」
(國宗)「って、何の話ですかっ!」
(幹事長)「どうせ急な仕事が入ったとかでドタキャンするんやろ?」
(國宗)「違いますがな!出ますがな。去年も出ましたがな。
ただ始発電車に乗っても集合時間には間に合わないことを連絡しようと思って」
(幹事長)「なんや、そんな事か。わしらが席を取っとくから、船が出るまでに来てくれたらええよ」
てことで、かろうじて4人のメンバーが確保された。
〜 臨時船 〜
レースが開催される小豆島土庄町へは、高松から船に乗っていくんだけど、狂気のようなマラソンブームが到来する前は、楽勝だった。スタート時間の9時30分の直前ギリギリに土庄へ到着する8時20分発の高速船で行けば、全然、待たずにスタートできていた。
(石材店)「着替えるのもやっとで、ウォーミングアップする時間も無かったですけどね」
(幹事長)「知らんやろけど、最近はウォーミングアップどころかストレッチすらやらない事にしてるんぞ」
我々のように体力の無いランナーにとってウォーミングアップが百害あって一利無しってのは常識であり、従来から一切やってこなかったが、最近は、ウォーミングアップに加えてストレッチすら無用という説を信じて実践している。つまり、朝、起きたままの体で、何もせずに自然体で走るのだ。
(ピッグ)「それって本当なんですかねえ?」
(幹事長)「信じる者は救われるぞ」
ウォーミングアップもストレッチもしないから、港にギリギリに到着する船でも問題は無かった。
ところが昨今の異常なまでのマラソンブームのせいで、高速船に乗るためには、かなり早くから並ばなければならなくなった。8時20分発の前には7時40分発の高速船てのもあるが、いずれにしても高速船に乗るためには乗船の1時間前には並ばなければならなくなった。
そんなに早くから並ぶくらいだったら、早めに出発するフェリーに乗るのと変わらない。おまけに、定員を無視してなんぼでも積み込んでくれるフェリーと違い、高速船は定員を厳守するため、長い間、並んだあげく、満席で乗れないなんて事態になれば悲惨だ。
てことで、7時20分発のフェリーを利用するようになったんだけど、発狂的なまで盛り上がった異常なマラソンブームのため、定期便のフェリーに乗るのでさえ困難をきたし始め、積み残しが出る事態になった。そのため、4年前から臨時便が出るようになった。
臨時便と聞くと奴隷船を思い起こすランナーも多いだろう。奴隷船とは春の小豆島オリーブマラソンに霧の中から怪しく登場する船だ。オリーブマラソンは坂手港が会場で、高松から坂手港に行く定期便が無いため、臨時船が出るのだ。この臨時船は古いフェリーボートを借り切ったものであるため、座席が少くて、早く行かないと通路の片隅に体を丸めてしゃがみ込むか、車両甲板に寝転がるしかない。車両甲板は固い鉄板で、おまけに朝は冷え込み、逆に帰りは太陽熱で焼けて熱くなり、とても人間扱いされているとは思えない状況だ。
そのため、我々は、この臨時船を奴隷船と呼び、恐れおののいているのだ。おまけに、昨今の異常なマラソンブームにより、奴隷船には定員の3倍くらい詰め込まれるという状況になり、ますます厳しい環境で、もはや奴隷船と言うより家畜船になっている。
ただ、この奴隷船は定期便が無い坂手航路にマラソン大会の主催者が運行しているものなのでロヒンギャ難民収容キャンプのように非人道的だが、瀬戸内海タートルマラソンの臨時便は定期便を運航している四国フェリーさんがマラソン大会のために増発する普通のまともなフェリーであり、奴隷船や家畜船のようなものではないので、今年も利用する事にした。
臨時便の出港は朝7時だが、去年の記事を読むと、6時半には乗船開始となっているので、座席に座りたければ、それより早く集合する必要がある。てことで、支部長と私は6時過ぎには港に行って乗船客の列に並び、場所取りする事にした。6時過ぎに港に行くためには、5時には起きなければならないが、老人化が進んできた今日この頃、不可能ではない起床時間だ。
(支部長)「龍馬脱藩マラソンは5時に高松を出発してるから、それに比べたらマシやな」
今年の夏は台風の襲来が相次ぐなど、週末になると天候が悪く、高松トライアスロンや汗見川マラソンや酸欠マラソンが軒並み中止になった。これらの勇み足とも思える早々の中止決定には憤りを覚えるのだが、その後は不思議と週末になると天候に恵まれ、龍馬脱藩マラソンも秋吉台カルストトレイルランもサイクリングしまなみ2018も好天に恵まれた。そして今回も天気予報では良い天気との予報だった。
実際、大会当日の早朝に起きると、気温も低くないし、風も無い。
これまでもタートルマラソンは、割と天候に恵まれていて、滅多に雨は降らず、この季節にしては暖かい日が多い。雨が降ったのは12年前の第27回大会と2年前の第37回大会くらいだ。8年前の第33回小豆島オリーブマラソン大会で大雨の中を快走してからは、我々は雨そのものに対する抵抗感は払拭されているが、それは気温が高い5月末の話であり、雨が降ると寒くなる11月末は天気が良い方が望ましい。
なので、今日は楽しめそうだ。
予定通り6時過ぎに港に到着すると、去年と同じように既に支部長が来ていた。
港には既に大勢の参加者が来ていたが、その大半は1つ前の6時25分発の定期便に乗り込んでいるので、まだまだ焦る必要はない。しばらく待っていると、そのうち臨時便の乗船口にも列ができはじめたので、二人で並びに行く。まだ6時25分発の定期便に乗れる時間だが、既に臨時便に並んでいる人たちは、我々と同じように仲間のために席を確保しようとしているのか、それとも確実に座るために臨時便に乗ろうとしているのかもしれない。
我々の前には既に10人くらいの参加者が並んでいたが、なんとその中に山下さんがいた。彼女とは以前、仕事の関係で知り合ったのだが、仕事ではもう長らく会ってない。ところが、今年5月のオリーブマラソンで偶然出会ってビックリした。彼女もマラソンをしてるのは知ってたけど、よくもまあ、あんな所でバッタリ出会うもんだとお互いに驚いたが、それに続いてサイクリングしまなみ2018の前日受付の場で、再びばったり出会ってさらに驚いたのだ。お互いにマラソンをしているのは知っていたが、自転車に乗っているのはお互いに知らなかったし、そんなところでバッタリ出会うなんて、本当に奇跡のような偶然だと思った。こうなると「次のタートルマラソンでも会うかもしれないね」なーんて話していたんだけど、なんと、臨時船の列で会おうとは思わなかった。ここまで偶然が続くと、もう奇跡的というより運命的な出会いだ。
(幹事長)「これが若い時だったら心躍るロマンスに発展したかも知れませんね」
(山下)「あら、いやですわ、うふふ」
なんて会話はしない。そういう歳ではない。
去年と同様、6時半になったら乗船が始まり、行列の前の方に並んでいた我々は余裕をもって広いボックス席を確保できた。しばらくすると女子部員ののらちゃんから電話が入る。JR高松駅に着いたとのことなので、乗船口まで降りていって待つ。乗船券を買う窓口が混雑していたら出港に間に合わないので、彼女の乗船券も一緒に買ってあるのだ。のらちゃんを待っていると、先に國宗選手が到着し、続いてのらちゃんも到着したので、みんなでボックス席に行く。
私らは広いボックス席でゆったり座っているが、周囲には床に座っている人達も多い。ただ、定期便や高速船も多いので、オリーブマラソンの奴隷船のような激混み状態ではない。
船が動き出すと、朝食を食べる。マラソンの前の食事の時間は、ゴール時間から逆算して5時間前が理想だ。今日のハーフマラソンのスタート時間は9時40分なので、11時半頃にゴールするとして、もう食べ始めなければならない。おにぎりは3個持ってきたが、朝っぱらから食欲はイマイチなので2個しか食べる気が起きなかった。
船の中ではW部選手にも会う。高速ランナーの渡B選手はもちろんフルマラソンの部に出る。元気やなあ。
〜 小豆島へ到着 〜
1時間ほどで8時頃には土庄港に着いた。
(のらちゃん)「会場まではどうやって行くの?」
(幹事長)「バスもあるけど、いつもは歩いていくよ」
港から会場までは1kmちょっとで、送迎バスもあるが、送迎バスに乗るには行列に並ばなければならず、それも面倒だし、歩いても15分くらいで適度なウォーミングアップになるので、いつも歩いていた。ところが2年前は雨が激しく降っていたので、歩いていく気が起きず、初めてバスに乗ってみた。そしたら、思った以上にバスは快適だった。それに味をしめて去年もバスに乗ったが、今日みたいに天気が良いと、歩いていく方が気持ちも高揚して良い感じ。
(幹事長)「こんな短い距離をバスに乗るなんてランナーの風上にも置けないしな」
(支部長)「毎年、言う事がころころ変わるなあ」
会場に着くと受付をしなければならない。ただし、受付と言ってもゼッケンやチップは事前に送られてきているので、今日は単にプログラムや参加記念のTシャツやおまけの醤油をもらうだけだ。
最近のマラソン大会は、大規模なマラソン大会では当日の受付が無く、受付は前日に済ませなければならない大会が多くなってきた。東京マラソンや大阪マラソン、神戸マラソン、京都マラソン、奈良マラソンなんかがそうだった。参加者が多くて当日の朝では大混乱になるからだろうけど、遠方から参加する人は前日から会場に入る必要があるから負担感が大きいので、参加者の利便性を考えて、なんとしても当日の受付をやってもらいたい。
一方、逆に、現地での受付自体を廃止して、ゼッケンやタイム計測チップを事前に送ってくるようなマラソン大会も増えてきた。今日のタートルマラソンもそうだ。とても素晴らしい便利なシステムなので、全てのマラソン大会で採用してもらいたいシステムだ。
受付を済ませて、更衣室になっている中央公民館の会議室に入る。ここで大問題に向き合わなくてはならない。
(國宗)「いよいよ恒例のお悩みの時間ですよね」
大問題とは何を着るかだ。朝、起きたときから、頭の中はこの大問題でいっぱいだ。
真夏の炎天下のレースなら薄いメッシュのシャツ1枚だし、そこまで暑くない季節の晴天時には半袖Tシャツ1枚で悩まずに済むが、今日のように少し寒くなり始めた季節は困る。この季節でも晴天で気温が高めの日なら半袖Tシャツ1枚でもいいが、曇ってて肌寒い日は長袖でないと腕が寒くなる。その場合、長袖シャツ1枚にするのか、長袖シャツと半袖Tシャツを重ね着するのかも課題となる。どっちにしようか迷ってしまうと、ゼッケンを付けたり外したりで、ギリギリまで大忙しになる。長袖シャツの上にゼッケンを付けた半袖Tシャツを着れば、走っていて暑くなったら下の長袖シャツを脱げばいいので、あんまり面倒ではないが、この場合、長袖シャツ1枚になるのは不可能だ。
どれにしようか悩んだが、晴天になるという天気予報にもかかわらず、ずっと曇ったままで、なんとなく肌寒そうなので、長袖シャツの上にゼッケンを付けた半袖Tシャツを重ね着することにした。走っていて暑くなったら長袖シャツを脱げばいい。
(のらちゃん)「脱いだものはどうするの?」
(幹事長)「腰に巻いて走ればいいんだよ」
走りながら脱いだりするのは慣れてきて手際も良くなったので、不安は無い。
(國宗)「いや、今日は絶対に暑くなりますよ。天気予報で言ってたでしょ?」
(幹事長)「でも、ずうっと曇ってるよ」
(のらちゃん)「いや、天気良くなるよ」
そんなに言われると不安になる。本当に着るものには困ってしまう。
(國宗)「アームウォーマーだと簡単に取れますよ」
國宗選手とのらちゃんはアームウォーマーを着けている。これだと暑くなっても脱ぐのは簡単だし、脱いだ後もポケットに入れておける。やはりアームウォーマーを導入すべきかも。
さらに問題はタイツだ。ランニングタイツは、最近は履いてるランナーの方が圧倒的に多いくらい普及しているが、私はランニングタイツのサポート機能を全く信じてないので、普段は履かない。履くのは防寒の時だけなので、今日は微妙だ。
(幹事長)「タイツ履いたら暑くなるかなあ」
(國宗)「タイツは暑さ寒さには関係ないですよ。履いた方が良いと思いますよ」
他のメンバーも全員タイツは履いているので、私も取りあえずタイツを履いた。
(幹事長)「手袋までは要らないよなあ」
(支部長)「手袋は必要不可欠やんか」
支部長は汗を拭くためにどんな時でも必ず軍手を履くけど、私はハンドタオルを持って走るので、手袋は履かないことにした。
(のらちゃん)「帽子はどうしよう?」
(幹事長)「帽子も要らないんじゃない?」
ランニングキャップも鬱陶しいから被らないことにする。
ランニングパンツのポケットにハンドタオルとティッシュペーパーと弁当券を入れたら準備万端だ。
(のらちゃん)「もうお弁当もらうの?」
(幹事長)「ゴールしてからお弁当券を取りに戻るのは大変だから持って走るんよ」
とりあえず、試しにその格好で外に出てみた。そしたら、まだ曇っているのに全然寒くない。明らかに気温が高い。おまけに、雲がどんどん流れていって、もう少ししたら晴れてきそうだ。
(幹事長)「こりゃ絶対に暑くなるな」
(國宗)「だから言ってるでしょ」
て事で、慌てて引き返して長袖シャツを脱ぎ、半袖Tシャツ1枚になる。ちょっと涼しいけど、その方が気合いが入って気持ちが引き締まる。
タイツは少し迷ったが、面倒なので脱ぐのは止めた。
(國宗)「去年は長袖シャツにタイツ無しでしたよね。悩んでる割りにはバラバラですね」
珍しく気合いがみなぎるメンバー
会場へ歩いていくと、D木谷さんの部下のT村さんに会う。5月のオリーブマラソンでも一緒に走ったが、田Mさんは今日はフルマラソンの部だと言う。W部選手と言いT村さんと言い、実力者はフルマラソンの部に出るのに躊躇いが無いなあ。
また、元同僚のK口選手にも会う。彼とは最近はマラソン大会で会うくらいだ。彼は経験年数は私らに比べれば短いんだけど、もうめちゃめちゃ速くなってしまってて、フルマラソンを3時間半くらいで走る。ただ、この大会はいつもハーフマラソンに出ている。
(のらちゃん)「今頃お弁当食べてる人がいるよ」
(幹事長)「毎年いるのよねえ」
スタート前にお弁当をもらって食べてる人がいるのだ。さすがにお弁当を食べてる人は少ないが、ソーメンに至っては、食べてる人がたくさんいる。レースの直前にお弁当やソーメンなんか食べたら、私なら確実に吐くと思う。
スタート地点に着いたら、再び山下さんに会う。大勢の参加者でごった返しているのに、よくもまあ、こんなに偶然に会うものだ。彼女達は10kmの部に出るので、お互いに写真を撮りっこした後、分かれる。
しばらくしたら、9時半にフルマラソンの部がスタートした。フルマラソンの部の参加者がいなくなった後にハーフマラソンの部の参加者が整列する。
空はすっかり晴れて暖かくなってきた。全然、寒くないどころか、絶対に暑くなりそうだ。好タイムを出すには、もう少し気温が低い方が良いんだろうけど、個人的には寒いより少し暑いくらいの方が好きなので、私としては絶好のコンディションだ。ぜひ好記録を狙いたいところだ。
もちろん目指すべきは大会自己ベストだ。どんなレースであれ、出場する限りは、目標は常に大会自己ベストの更新だ。マラソンはコースや季節によってタイムが大きく変わってくるので、違うレースのタイムを比較するのは不適当なので、どんなレースに出ても、その大会での自己ベストを狙うのが良い子の正しい道だ。タートルマラソンのハーフマラソンの大会自己ベストは9年前に出したものだ。この歳になって9年も経つと、著しく老化が進んでいるので、冷静に考えれば自己ベストの更新は難しようにも思えるが、まだまだ諦めてはいない。少なくとも大惨敗した一昨年や、平凡なタイムに終わった去年よりはマシなタイムを出さなければならない。
このレースに限らず、どのマラソン大会でも良いタイムが出たときは最初は抑え気味にスタートして、徐々にペースを上げていくという理想的なパターンだ。以前は、ペースは下がるものであり、上げていくなんて理想的なレース展開は現実には不可能だと思っていた。しかし最近は、タートルマラソンにしてもオリーブマラソンにしても、良いタイムが出たのは、徐々にペースを上げていくことができた時のものだ。とは言え、序盤にどれくらいペースを抑えて走ったらいいのかは難しい。最初から遅いペースで走れば、最後までペースは落ちないだろうが、適度に頑張らないと良いタイムは出ない。終盤に潰れないギリギリのペースが理想だが、なかなか難しい。
(のらちゃん)「初めてだからドキドキするよ」
(幹事長)「いいなあ、緊張感があって」
支部長なんて緊張感ゼロで、眠そうな顔をしている。
(支部長)「ほっといてくれ」
〜 スタート 〜
オリーブマラソンは、チップは付けているものの、ネットタイムの計測はしてくれない。スタート時刻は全員同じで、ピストルが鳴った瞬間からタイム計測が始まる。でも、このタートルマラソンは各人がスタートラインをまたいだ時からネットタイムを計測してくれる。なので、スタートの時に焦って前に行く必要はない。これは精神的にありがたい。
(支部長)「この程度の参加者なら、ネットタイムもグロスタイムも30秒くらいしか違わないけどな」
(幹事長)「その30秒が大きいんやで」
なーんて話してたらスタートの号砲が鳴った。スタートラインを越えてからしばらくは混雑で走りにくいが、無理してはいけない。こんなところで多少無理して右へ左へ移動しながら他のランナーを追い越したりしても、無駄な体力と精神力を浪費するばかりで、大して前に行ける訳ではない。最初の1kmくらいはウォーミングアップと割り切って、小走り状態でゆっくり走ればいい。
ただ、このタートルマラソンは距離表示が5kmおきにしか無いから、5km走るまでは、なかなかペースが分からない。まずは自然体で走ってみて、最初の1kmのタイムで、その日の調子を把握しつつ、軌道修正を図ったりしたいのに、それができないのだ。いくら調子が良いような気がしても、オーバーペースになっていると注意しなければならないし、あんまり遅すぎるとロクなタイムが出ないので多少は頑張る必要もあるから、きめ細かいペース管理が必要なんだけど、距離表示が少ないから、それができないのだ。適度な緊張感を維持しながら、なるべくペースが一定になるように気をつけながら、まずは淡々と自然体で走るしかない。
ただし、「淡々と自然体で」とは言っても、一昨年、去年と低迷しているので、打破するためにちょっとはいつもより頑張って走る。
2kmほど走ったら最初の大きな坂が現れる。このコースは、とにかく坂が多い。まず、2kmちょっと走ったところから大きな坂が始まる。この坂が終わると、今度は5km半くらい走ったところから中くらいの坂がある。さらに8kmほど走ったところからちょこちょこと小さなアップダウンがあって、9kmほど走ったところから3つ目の大きな坂がある。そして、それに続く小さな坂の途中でハーフマラソンは折り返して帰ってくる。とにかくフラットな区間が少ない非常に厳しいコースだ。
て事で、早速現れた最初の大きな坂は1kmほど上りが続く。ただ、長く大きな上り坂ではあるが、夏場によく出ている山岳マラソンに比べたら大した急勾配では無い。普通に走って上れる。
ただし、調子に乗ってストライド走法の大股でグイグイ上っていくと、後からダメージが来る。5月にトレイルランニングレースとして初めて出た奥四万十トレイルレースのセミナーで主催者の奥宮さんが言ってたけど、我々のような素人がストライド走法で走るのは無理があり、ピッチ走法で攻めるべきとのことだ。なので、序盤でまだまだ元気だけど、自重してチョコチョコと登っていく。他のランナーに追い抜かれそうになったら、歩幅を広げるのではなく、ピッチを上げるのだ。
長い上り坂とは言っても、夏の山岳マラソンに比べたら距離もそんなに長くは続かない。1kmほど走ったら上り坂が終わり、下り坂となる。そこからは遅れを取り戻すつもりでガンガン下り坂を飛ばす。奥宮さんの話によれば、上り坂だけでなく、下り坂でも勢いに任せて大股でガンガン下ると足の筋肉にダメージが溜まり終盤で足が動かなくなるので、ピッチを上げて小股で走るべきとのことだが、下り坂でピッチを上げて走るのは、足がついていかず難しいので、ここは思いっきり転げ落ちるように大股で駆け下りる。
坂を下りてしばらく走ると、最初の5km地点の距離表示がある。時計を見ると、惨敗した一昨年や去年に比べたら少しマシなラップだ。ただし、大会自己ベストを出した時と比べたら、かなり遅い。大会自己ベストを出すためには、もっと頑張らなければならない。前半のうちに頑張りすぎると、後半に撃沈する恐れはあるが、今回、撃沈したって失うものもないし、ここは頑張ってみよう。最初の5kmは、スタート直後の混雑があるため、少し時間がかかっているだけかもしれないし。
後から来ているであろう支部長や國宗選手の動向も気になるが、折り返し点で確認するまでは忘れておこう。
5km地点を過ぎると、今度は中くらいの大きさの2つ目の坂がある。最初の坂に比べると、そんなに高くはないが、ダラダラと続く坂だ。坂の途中に最初の給水所が現れる。まだまだ全然喉は渇いてないが、最近は足攣り予防のため、喉が渇いて無くてもこまめに水を飲むことにしているので、コップを取って水を少し口に含む。
自分も大して速く走っている訳ではないが、この辺りからやけに遅いランナーが目に付くようになってくる。なぜ私より前に遅いランナーがこんなにいるのかと言えば、彼らはフルマラソンの部のランナーだ。フルマラソンの部は私らより10分前にスタートしているが、ペースが遅いランナーも多く、この辺りで追いついてしまう。とても混雑して、追い抜くのが大変なので、フルマラソンの部とハーフマラソンの部のスタート時間の間隔をもっと開けて欲しいな。
2つ目の坂をクリアしてしばらく走ると、再び坂が現れるが、いつもこれを3つ目の大きな坂だと勘違いしてしまう。
ハーフマラソンのコースは前半に大きな坂が3つあって、その後にある小さなアップダウンを越えれば折り返し点がある。なので、3つ目の大きな坂をクリアすれば折り返し点までもうすぐ、って事になる。そして、この3つ目の坂があっさりとクリアできてしまうから、すごく嬉しくなってしまう。
しかし、実は、これは3つ目の大きな坂ではなくて、数に入らない小さなアップダウンに過ぎない。そのため、しばらく走ると、目の前に巨大な坂が出現して呆然とする。それこそが本当の3つ目の大きな坂なのだ。毎年、走ってて、毎年、同じように呆然としているのに、1年経ったら忘れてしまい、ぬか喜びと落胆を繰り返している。
この3つ目の大きな坂を上り始めた頃、トップランナーが折り返してくる。なんと、視覚障害者の人だ。ものすごいスピードで2位以下を完全に引き離している。一体どういうこと!?
その後、しばらく見ていると、かなり上位でK口選手が折り返してきた。相変わらず速いなあ。
3つ目の坂を下りた辺りに、10km地点がある。時計を見ると、割りと頑張り続けているつもりだったのに、この5kmは最初の5kmよりだいぶ遅くなっている。1km当たり10秒ほど遅い。大会自己ベストどころか、このままズルズルいったら惨敗モードになる。これは真剣にヤバいぞ。もっと気合いを入れなければ。
次の給水所が現れたので、喉は渇いていないが、こまめに水分補給しておく。小さなアップダウンを越えると、ようやく中間の折り返し点がある。折り返してから後続のメンバーをチェックすると、國宗選手が1分半遅れくらいで走ってきた。いつものように淡々と走っていて、いつでも追いつかれそうだ。そう言えば、去年も同じくらいの差で折り返した後、後半に入ってすぐ追いつかれてしまった。あのときは、彼がペースアップしたのではなくて、私がペースダウンしたらすぐに追いつかれたのだ。
國宗選手のすぐ後から、今度は支部長が2分遅れくらいでやってきた。表情は苦しそうだけど、やはり私がペースダウンしたらすぐに追いつかれそうなペースだ。
そして驚いたことに、さらにそのすぐ後からのらちゃんんが2分半くらいの遅れでやってきた。私も前半はかなり頑張れたと思っていたのに、たった2分半遅れで着いてきてたなんて、驚きを通り越して脅威だ。後半、ちょっとでもペースダウンしたら逆転されてしまう。過去、丸亀マラソンを3回、オリーブマラソンを1回走っただけで今日がハーフマラソン5回目の初心者女子部員に負けたりしたら、もう目も当てられない。私はさておき、支部長なんて今にも追い越されそうだ。
(支部長)「いやいや、私はオリーブマラソンで負けてるから平気だよ」
そうだった。支部長は既にオリーブマラソンでのらちゃんに負けてるんだった。しかし、私としては絶対に負ける訳にはいかない。ここで負けたら面目丸つぶれだ。後半は一段と気合いを入れ直して頑張らなければならない。
後半に入っても、特に足が重くなったような感じはなく、まだまだ戦えそうだ。天気は相変わらずの晴天で、暑いと言えば暑いが、半袖Tシャツ1枚なので、ちょうどいいくらいで快適だ。風も無く走りやすいコンディションが続いているので、頑張れるだけ頑張らないといけない。
そうは言っても、今日は前に目標にするライバルランナーがいないため、なかなか頑張りが続かない。そのため、追い抜いていくランナーの後を追って頑張ってみる。所詮、残りは10kmなので、ペース配分なんかを気にする必要は無い。途中で力尽きたら諦めるしかない。目標が無いと、ついつい、すぐ緊張感が緩んでペースダウンしてチンタラ走ってしまうので、継続的に気合いを入れなおさなければならない。
少しでもペースを上げようと、かなり頑張って走っているつもりだが、足はまだまだ大丈夫で、疲れは出ていない。体感的にはまだまだ戦えそうだ。
後半の2つ目の坂を登り切った辺りに15km地点があり、タイムを確認すると、さっきの5kmとほとんど同じラップだ。頑張っているつもりでも、全然ペースアップはできていない。がーん。もう大会自己ベストは完全に不可能だ。でも、一方で、ペースダウンはしていないから、まだなんとか他のメンバーに追いつかれる恐れは少ない。このまま残り6kmを逃げ切れるかもしれない。
下り坂になったら、またガンガン走って降りる。ガンガン走って降りると気持ちいい。たぶん、足への負担が溜まっていると思うが、残りの距離を考えると、躊躇はできない。
しばらく走ると最後の給水所がある。ここでも走るのを止めずに給水を受けてペースを維持する。
そこからしばらく進むと最後の大きな坂に差し掛かる。上り坂でもまだまだ頑張って走れる。そうは言っても、少しずつペースダウンしているようで、時々追い越していくランナーがいる。でも今日は、まだまだ戦う気力が残っているので、追い越していくランナーを追ってムキになって再逆転したりしつつ上っていく。
終盤になると、距離表示が細かくなり、15km地点の次は最後の大きな坂を登り切った頃に「あと3km」の表示がある。つまり18kmちょっとの地点だが、大きな坂があったこともあり、当然のように大きくペースダウンしている。大会自己ベストを出した時なんかは、ここで逆にペースアップできていたが、今となっては考えられない事だ。
次は「あと2km」地点の距離表示がある。この1kmは最後の大きな坂を下る区間なので、さすがに大幅にペースアップできていた。本日の最速区間だった。
でも、その次の1kmが例年、大幅にペースダウンする区間だ。下り坂でガンガン走った反動が出るからで、それは仕方ないとしても、ペースダウンの幅をできるだけ抑えなければならない。次から次へと勝手に目標の選手を定め、できるだけ追い着こうと頑張る。
「あと1km」地点で見たタイムは、やはりだいぶペースダウンしていたが、なんとか許容範囲だ。
そして最後の1kmは、かなり頑張れて、かなりペースアップすることができた。
〜 ゴール 〜
そのまま最後まで力尽きずに、気持ち良くゴールできた。
タイムは、大会自己ベストどころか、超平凡なタイムだったが、一昨年、去年の惨敗傾向にはなんとか歯止めがかかったと言える。それに終盤に力尽きることなく最後まで頑張ってペースアップできたので嬉しい。ちょっと気持ちの良い展開だった。
とは言え、ゴールしても足が平気というか、疲れを感じない。一見、良い事のように思えるが、実は全力を出し切れていない証拠だ。全力を出し切った時は、ゴールしたら最後、もう足が動かなくなる。なので、今日のように余力を残してゴールしてしまった時は、もっと頑張るべきだったという事だ。もちろん、最初から頑張りすぎて、ゴールする前に全力を出し切って足が動かなくなるのは最悪だが、ちょうどゴールと同時に全力を使い果たすくらいのペースがベストだ。なかなか難しいけど。
しばらく待っていると、國宗選手が5分遅れくらいで帰ってきた。前半の差がそのまま2倍に開いたって感じだから、彼も前半と後半を同じようなペースで走ったようだ。
さらに少し後から支部長が帰ってきた。彼も前半と後半と同じようなペースで走ったようだ。たいていは後半に力尽きて坂では歩くのに、今日は最後まで力走した。
(幹事長)「最後まで力尽きずに快走したやないか」
(支部長)「いかん!あと、もうちょっとで2時間切れたのに!」
なんと支部長は惜しくも39秒差で2時間を切れなかったのだ。
一方、前半を快調に飛ばしていたのらちゃんは、だいぶ差が開いて帰ってきた。それでも去年の丸亀マラソンで出したハーフマラソンの自己ベストを大幅に更新したから立派なものだ。
(幹事長)「めちゃ良いペースやん」
(のらちゃん)「だめ!15kmまでは2時間切れるペースだったのに!」
15kmまでは僕らの背中を見ながら快調に走ってたんだけど、その後、足が動かなくなって失速したんだそうだ。前半を飛ばしすぎたのかも知れない。それでも、来年の丸亀マラソンでは一段と飛躍するの間違いないぞ。
記録証をもらうと、さすがに今年は飛び賞は当たってなかった。一昨年、去年と2年連続でもらっていたものだ。もしかして、惨敗した時は、それを慰めてくれる意味で飛び賞が当たるのだろうか。
(國宗)「私、今年、当たりました!」
(幹事長)「それは惨敗したという意味だな」
(支部長)「私も一昨年、去年と2年連続で当たったけど、今年は当たらなかったな」
(幹事長)「支部長としては今年は健闘したという意味やな」
景品をもらい、お弁当ももらってから、このマラソン大会の一番の楽しみであるソーメンをもらいにいく。レースの終盤は、早くゴールしてソーメンを食べる事を心の支えにして走る、と言われるほど、ソーメンはこのマラソンの重要な楽しみだ。周辺に飲食店がほとんど無いため、このマラソン大会ではお弁当が支給されるが、長距離を走り終わってバテている時にお弁当は喉を通らない。でも、暖かいソーメンは喉に優しい。今日も2杯おかわりをもらった。
〜 帰りの船へ 〜
ソーメンを堪能して落ち着いたところで更衣室に戻り、濡れた身体を拭いて着替えを済ませる。
(幹事長)「帰りの船の便って何時やったっけ?」
(國宗)「去年乗った12時20分のはギリギリですねえ」
(幹事長)「次のにしようか」
次の船は1時間半後の13時53分だ。だいぶ待たないといけないが、今からダッシュするのも大変なので、次の便にする。
支部長様と國宗様が先に港に行って席を確保してくれると言うので、そのお言葉に甘えて私とのらちゃんはゆっくり準備してから港へ向かう。港では先に到着していた支部長が、例によってソフトクリームを買い食いしていた。
朝の船は混雑するが、帰りは分散するので、朝ほどは混んでいない。それでも、かなりの人が床に座っている。
船の中でゆっくりお弁当を食べながら、反省する。反省と言っても、今日はパッとしないタイムだったとは言え、一昨年や去年のような惨敗レベルではなかったので、激しく反省する必要は無い。でも、パッとしないタイムだった原因は分析しておく必要がある。最後まで足の疲労感も無く、力尽きなかったのに、タイムがイマイチだったってことは、最初からペースがイマイチだったってことだ。割りと頑張って走ったつもりだったが、最初からもっとペースを上げて走らなければならなかったのだ。
(のらちゃん)「でも私は最初からペースが速すぎて力尽きたよ」
(幹事長)「そうなんよねえ。その辺のさじ加減が難しいのよねえ」
序盤から飛ばしすぎると終盤で力尽きるし、序盤から抑えすぎるとパッとしたタイムは出ない。永遠の課題だなあ。
こんな事で来週の那覇マラソンは乗り切れるかなあ。
〜おしまい〜
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