第46回 小豆島オリーブマラソン大会

〜 炎天下で大惨敗 〜



2023年5月21日(日)、第46回小豆島オリーブマラソン全国大会が開催された。実に4年ぶりの開催だ。

この大会は1997年の第20回大会から参加し続けており、我々にとっては欠かすことのできない重要なマラソン大会だ。
なので、4年前の2020年も2月には早々にエントリーを済ませ、楽しみにしていた
それなのに、ああ、それなのに、なんと2020年は新型コロナウイルス騒ぎのせいで大会が中止になってしまった
そして、マラソン大会の中止騒動は全国的なものとなり、日本中のあらゆるマラソン大会が次々と中止になっていった

これらのマラソン大会中止騒ぎってのは、どう考えても、あまりにも非科学的で情緒的でヒステリックな対応だ。
素人が見たら、マラソン大会ではランナーが密集しているように見えるかもしれない。しかし、毎日乗っている満員電車に比べたら、はるかにスカスカだ。そうでないとぶつかって走れない。
しかも密室の満員電車に比べて、屋外のマラソン大会はウイルスが蔓延できる環境ではない。新型コロナウイルスは感染した人の咳やくしゃみの飛沫による飛沫感染でうつっていくが、飛沫感染は屋外で走っている時に感染なんかしない。
多くの国民が新型コロナウイルスを非常に恐ろしいもののように勘違いしていたが、決して、エボラ出血熱のように極めて致死率の高いウイルスでもなければ、風疹のような感染力の強いウイルスでもない
多くの国民がヒステリックに踊らされていたのは、視聴率さえ稼げればいい下品なマスコミがキチガイみたいに煽り立てるのと、新型コロナウイルスの新規患者数をゼロにしようなんていう狂信的な妄想に取り憑かれた医療関係者の独善のせいだ。

このようなヒステリックな動きに対抗するため、我々は
マラソン大会を自主開催する事にした。その第1号が、3年前の第43回オリーブマラソンだった。
それ以降、中止になったマラソン大会はことごとく開催を続け、オリーブマラソンも2020年の第43回大会から始まって2021年の第44回大会2022年の第45回大会
3年連続で自主開催を続けてきた。
そして3年後の今年になって、ようやくコロナのバカ騒ぎが収束し、
全国的にマラソン大会が復活し始めた
国民の多くが理解するまで3年もかかったが、ようやくコロナなんてただの風邪に過ぎないっていう理解が進んできたからだ。

そして、
この
オリーブマラソンも4年ぶりに復活となったのだ。まことに喜ばしい限りだ。めでたいめでたい。


なお、今回の大会は第46回大会と銘打たれている。コロナで中止になる前に最後に開催された2019年の大会は第42回大会だったから、正式に開催された大会としては今回は43回目の大会になる。
丸亀マラソンなんかは、中止になっていた期間はカウントせず、実際に開催された大会の回数でカウントしている。
一方、坂出天狗マラソンなんかは開催されずに中止になった年も水増ししてカウントしている。オリーブマラソンも同じで、中止になった2020年、2021年、2022年もカウントして今年を第46回としている
どちらもで別に構わないが、我々はコロナで中止になっていた期間も自主開始しており、このホームページでは自主開催年も同じようにカウントし続けてきたので、整合性は取れている。

(幹事長)「大会事務局がこのホームページを見て配慮したのかな」
(ピッグ)「絶対に違いますね」


〜 エントリー 〜


上にも書いたように、この大会には1997年の第20回大会から参加し続けている。随分、長い間、出場を続けてきたもんだと感慨深い。
昔はヨタヨタ走っていると地元の老人が「ふれあい賞」なんて札を首に掛けてくれて景品を貰えるなど、のんびりしたムードが漂った牧歌的でアットホームな大会だった。

ところが、昨今は異常なまでのマラソンブームにより様変わりしてきた。
この大会に限った事ではないが、以前は田舎のマラソン大会で定員が一杯になるなんて事はあり得なかったから、誰でも気が向いたらエントリーして参加できていた。
それが最近は、世紀末的なマラソン狂走曲のせいで、こんなローカルなマラソン大会でも申し込み受付が始まったら、あっという間に定員いっぱいになり、油断して少しでも申し込みが遅れると参加できなくなってしまう
なので、自分も忘れないようにエントリー受付開始時間を書いたメモをあちこちに貼ると同時に、他のメンバーにもしつこく何度も注意喚起のメールを送っている。

今年は4年ぶりの開催のため、どれくらいの競争になるのか状況が分からなかった
これは全国どこのマラソン大会も同じような状況で、以前は競争率が5倍ほどで参加するのが至難の業だった大阪マラソンが定員割れになるなど、参加希望者が激減している

その理由としては、
 ・コロナ禍で大会が中止になり、努力や参加費が無駄になったことへの反発
 ・コロナ対策などに伴う参加費の高騰
 ・オンライン大会が広まり、リアル大会にこだわらない層が生じた

ことなどが挙げられているが、私個人の考えでは、何と言ってもランナーの怒りが最大の理由だろうと思う。

エントリーが開始になる時期に「今年は募集を中止にしま〜す」ってのであれば許せるが、大会直前まで「開催しま〜す」なんて言っておきながら大会直前になってドタキャンされたりしたもんだから、怒りは大爆発だ。
しかも既に支払っていた高い参加費は全額は戻ってこなかった
このような理不尽な行為に対してランナーの怒りは頂点に達しており、大会が再開されたからと言って素直に参加はしたくない

また、参加費の高騰も大きな理由だろう。参加者の気持ちを全く考慮もせずに自分勝手に大会を中止にしておきながら、いざ再開が始まるとバカみたいに参加費が高騰しており、開いた口が塞がらない。
ほとんどの大会で2倍近くに値上がりしている。フルマラソン大会は1万円以上するのが当たり前になり、都市型マラソンに至っては2万円近くにまで高騰している。去年の神戸マラソンも、手数料を含めて1万7千円も取られた。
参加費高騰の理由として主催者が挙げるのが「コロナ対策で費用が増えた」って事なので、ますます腹が立つ。具体的には消毒液や検温器なんかだろうけど、コロナなんてただの風邪に過ぎないって事実が分かってきたと言うのに、いつまでそんな事に金をかけてるんだ?

それに、コロナ対策という名目で、エイドステーションでは飲み物や食べ物の手渡しは無くなり、ゴールしても何かにつけて自分でやらなければならなくなった
何もかも自分でやるって事は、それはそれで良いと思うんだけど、それなのに参加費を値上げするってのは理由になってない。便乗値上げに他ならない。
ちょっと前の感覚から言えば、マラソン大会ごときに10000円も出すなんて有り得なかった。高すぎる。ほんの少し前まで、マラソン大会の参加料はせいぜい3000円くらいだった。
こんなに参加費が高騰すると我々のような貧乏人はマラソン大会に出る事もできなくなってしまう。

(のら)「そんな事を言ってると後ろから刺されるよ」
(幹事長)「何をおっしゃいますか、お代官さま」


このような複合的な要因により、マラソン大会への参加に無関心になった人々は多いだろう。特にマラソン大会の経験が浅いランナーには、無関心になった人も多いだろう。
コロナのバカ騒ぎでマラソン大会が無くなってしまった事から、ランニングのモチベーションが低下して走ることを止めてしまった人々もいるだろう。
世紀末的なマラソンブームが起きたため、よく分からないまま周囲に流されてマラソン大会に出ていたけど、マラソン大会の中止をきっかけに、マラソン大会に出る意義を冷静に考えて、冷めたと言うか飽きた人が出てもおかしくはない
健康増進が理由なら、日々コツコツと走るだけで目的は果たせる。レース抜きでもマイペースで充実した運動ができれば、それで十分かもしれない。
最近ランニングを始めたような健康目的で走る人は、気持ち良く汗がかければお金を払って大会に出なくてもいいと考える人が増えてもおかしくはない。

一方、我々のように、世紀末的なマラソンブームが起きるずっと以前からマラソン大会に出ているマラソン大会中毒者にとっては、マラソン大会への参加を見合わせるなんて事はあり得ないので、参加希望者が激減した事はとても喜ばしい事態だ
抽選制の大会は毎年応募していてもなかなか当選しないし、先着順の大会ではエントリー開始前からパソコンの前でスタンバイして、エントリー開始になると同時に必死でパソコンのキーボードを叩いていた。
このようなストレスフルな状況が改善されて、昔の牧歌的な時代に戻るのであれば、少しくらい参加費が高騰しても許せる
応募者の激減は、我々のように、いくら怒りと反発を抱えていても何だかんだ言いながらとにかくマラソン大会に出たいという中毒者にとっては喜ばしい状況なのだ。
このまま永遠にマラソン大会の人気低迷が続いてくれたら良いんだけど。

このように一般的にはマラソン大会のエントリーは楽になったんだけど、今年のオリーブマラソンは定員が通常の5000人から3000人に減らされた
島内での受入体制等の現状を考慮した結果」という理由らしいので、まだコロナ感染を恐れている人が多くてボランティアが集まらないのかもしれない。
定員が減らされたとなると、参加希望者が減少しても競争率は高いままかもしれない。

て事で、今年がどうなるのか状況は読めなかったが、とりあえず今回もメンバーにしつこく周知して、素早くエントリーを進めた結果私、支部長、ピッグ、D木谷さん、ゾウさん、のらちゃん、ライオン4世、長谷選手、倉石選手の9人が無事エントリーを済ませた。
その後、恐れていた通り、申込期限を迎える事なく早々に募集人数に達して受付を終了したから、定員割れなんて事態にはならなかったようだ。

エントリーしたメンバーのうちゾウさんライオン4世10kmの部で、残りの7人はハーフマラソンの部だ。
ゾウさんは最近はいつも10kmの部に出ている。彼女は高速スーパー女子ランナーなので、ハーフマラソンを走れないという事では決してない。彼女は長距離も得意で、今年も3月に名古屋ウィメンズを走っているが、その一方で距離の短いガチンコレースも楽しんでいるのだ。
距離が短いと楽そうに思えるが、それは素人の考えであり、距離が短いとペースが速くなるから、はるかにしんどい。
距離が長ければペース配分とか考えて無茶に飛ばしたりはしないが、距離が短いとペース配分なんて考える余地は無く、最初から最後まで全力でぶっ飛ばさなければならない。なので、非常にしんどい。
ゾウさんは何でも限界に挑戦するのが好きなので、スピードの限界に挑戦したくて、最近は距離が短い部門に出ているのだ。

一方、ライオン4世は、コロナのバカ騒ぎで中止になる前の2019年の大会がオリーブマラソンの初参加で、その時は5kmの部に出た。
10kmよりさらに短い5kmともなると超高速レースになるが、ライオン4世ゾウさんと違ってスピードレースが好きな訳ではない。
彼女はその年の1月の満濃公園リレーマラソンでマラソンデビューしたんだけど、彼女にとって生まれてこのかた2km以上走ったのはそれが初めてという正真正銘の超初心者だった。
そのため、オリーブマラソンでは最も距離が短い5kmの部に出たのだ。

ところが、元々この大会にはハーフマラソン、10kmの部、5kmの部があったんだけど、今年はなぜか5kmの部が廃止になった。そのため、ライオン4世は10kmの部に出ざるを得なくなったのだ。

(幹事長)「遂に10kmレースにデビューやな」
(ライオン4世)「10kmなんて絶対に無理っす!」


〜 ドタキャン 〜


レースの2週間前にゾウさんから連絡が入る。

(ゾウ)「あのう、朝っぱらから済みません」
(幹事長)「ええよ。支部長と同じで、最近は高齢化が進んで早起きになったからな」
(ゾウ)「実は、今度のオリーブマラソンなんですけど・・・」
(幹事長)「どしたん?今さらハーフマラソンに出たいって言っても遅いよ」
(ゾウ)「いえ、違うんです・・・」
(幹事長)「じゃあ、何?」
(ゾウ)「実は当日、岡山で開催されるテニス大会への出場が決まって」
(幹事長)「そりゃ残念やな。せっかくのテニス大会やのに出られないんか」
(ゾウ)「違いますがな。テニス大会が優先なのでオリーブマラソンには出られなくなりました」
(幹事長)「なんとかーっ!マラソン大会とテニス大会とどっちが大事なんや!」
(ゾウ)「だからテニス大会ですがな!」

て事で、残念ながらゾウさんオリーブマラソンに出られなくなってしまった
テニス大会は、予選を勝ち抜いての出場なので喜ばしい事ではあるが、我々にとっては悲しい出来事だ。


〜 奴隷船に乗船 〜


オリーブマラソンは、近年、エントリーの競争も激しくなってきたが、なんと言っても交通の便の悪さが大きなネックだ。
小豆島は、四国と本州と、どちらからでも船で1〜2時間で行けるため、関西地方からの参加者も多く、そういう意味では立地の良い大会と言える。
しかし、レース会場である小豆島坂手地区には、港はあるけど船の定期航路がほとんど無い。なので、主催者が出している高松発の臨時船に乗るか、他の港へ定期便で行くか、どちらかの選択となる。
2007年は臨時船のチケットが入手できなかったため、定員8名の私の車に9人で乗り合わせて池田港に上陸して行ったが、移動に時間がかかるうえ、駐車場を探すのも一苦労で、会場へ着くのがギリギリになったので、その後は必死で臨時船のチケットを入手するよう努力している。

ただ、臨時船は古いフェリーボートを借り切ったものであるため、座席が少くて、早く行かないと通路の片隅に体を丸めてしゃがみ込むか、広い車両甲板に寝転がるしかない。
車両甲板は固い鉄板で、おまけに朝は冷え込み、冷たい波しぶきが飛んでくるし、帰りは逆に太陽熱で焼けて熱くなった鉄板の上で焼かれるお好み焼き状態になり、とても人間扱いされているとは思えない状況だ。
そのため、我々は、この臨時船を奴隷船と呼び、恐れおののいていた。
それなのに、最近の異常なマラソンブームにより、この奴隷船にすら早めに申し込まないと定員オーバーで乗船券を入手できなくなってきた
奴隷船は満杯というか定員の3倍くらい詰め込まれるので、もはや家畜船と呼ぶのが相応しい阿鼻叫喚の世界だが、奴隷船だろうが家畜船だろうが、この乗船券ですら最近は入手が困難な状況だ。
マラソン大会への参加自体はランネットで申し込めるから簡単なんだけど、奴隷船のチケットは参加申込みとは連動しておらず、別途、郵便振込みで申し込まなければならないから、マラソン大会にはエントリーできても、奴隷船が定員一杯で交通手段に困る人が続出するのだ
なので、今年も私が全員の分をまとめて素早く郵便振り込みで申し込み、無事に全員分の奴隷船チケットを入手できた
しばらくしてから確認したら、奴隷船も申込期限を迎える事なく早々に定員に達して受付を終了していた。

さらに、当日の朝は早起きをしなければならない。いくらプラチナチケットの奴隷船乗船券を持っていても、遅く行ったら奴隷か家畜のように車両甲板に転がされてしまう
奴隷船に人間の尊厳を維持したまま乗るには、かなり早く港に行かなければならない
以前は奴隷船が出港するのは6時50分で、1時間前の5時50分頃には乗船開始となっていた。もちろん、乗船開始時間に行ったのでは既に座る場所は無くなっているので、それより早く行く必要がある。
長年の経験から、乗船開始の40分くらい前に行けば楽勝で座席を確保できるという法則が分かった。

ところが、今年はスケジュールも場所も変わってしまった。
時間はなぜか少し遅くなって、奴隷船が出港するのは7時25分となった。なので、その1時間前の6時25分頃には乗船開始となるだろう。そうすると、その40分前の5時45分頃に行けばなんとかなりそうだ。
とは言っても、今年の状況は分からない。奴隷船の乗車券は早々に売り切れていたので、乗り込む人数は変わらないだろう。
一方、出港時間が35分遅くなったからと言って、乗船客がやってくるのも35分遅くなるとは限らない。いつもと同じように早めに来るかもしれない。そうなると5時45分に行ったのでは遅いかも。

て事で、少し不安だったので5時30分頃を目途に行くことにした。そのためには自宅を5時過ぎには出なければならない。そのためには遅くとも4時半には起きなければならない。4時半に起きるなんて、若い頃なら想像を絶する世界だったが、高齢化が進んだ今は、何の問題も無くなった。
予定どおり5時頃に家を出て5時20分頃に港に着いた
港には既にフェリーが停泊していたら、それが奴隷船なのかどうか分からない。交通整理していたおじさんに聞いてみたら、停泊しているのは土庄行きの6時25分発の定期便で、奴隷船はその後に入ってくるらしい。
ただ、なんとなく曖昧な感じだったので、チケット売り場のおばちゃんにも聞いてみた。そしたら「全然わからんなあ」なんて言われる。奴隷船については周知されていないようだ。
明らかにランナーと思われる人たちがチラホラ待っていたので、その人たちに聞いてみたら、みんな土庄行きの定期便に乗ると言う。
どうすれば良いのか分からないので、とりあえずそこで待っていたら、5時半になり、土庄行きの6時25分発の定期便が乗船開始となり、待っていたランナー達は乗り込んでいった。

一人だけ残されてぽつんと待っていると、5時50分頃になって支部長から電話が入る。建物の外にいるらしい。そっちへ行ってみると、D木谷さん長谷選手も一緒だ。
支部長が係の人に聞いたところ、その辺りで待つように言われたらしい。どうやら定期便とは別の場所で待つようだ。なので、私も荷物を持ってきて一緒に並んだ。まだ他には客はいない。
しばらくすると、係の人が「臨時船乗り場」の看板を持ってきて立てかけた。
て事で、少なくとも今年は6時前くらいに来れば十分だったような感じだ。船の出航時間が遅くなり、出港場所も変わり、定員も減った事から、以前に比べたらだいぶ状況は楽なったと言える。
ただし、それはあくまでも今年の話であり、来年も同じかどうかは分からない。

そのうち他にも乗船客が少しずつ並ぶようになってきた。うちのメンバーも倉石選手がやってきた。始発の電車に乗ってきたとの事だ。さらにしばらくするとライオン4世もやってきた。
すると、6時25分発のフェリーが出て行ったので、次に奴隷船が現れるものと思って待っていた。ところが次に入ってきたのは6時50分発の池田港行きフェリーだった。
以前ならどんなに早く行っても、奴隷船は既に停泊して待っていたが、今日はなかなか入ってこない。
その後、ようやくピッグが現れて、ほぼ同時にJRに乗ってきたのらちゃんが小走りでやってきた。

(幹事長)「意外に早かったやん」
(のら)「早足で来たからね、ぜいぜい」


年によっては、朝っぱらから並んでいるとかなり冷え込むが、今年は風も無いし全然寒くない。この調子だと、レース中は暑くなりそうだ。
6時50分になり、池田港行きのフェリーが出た後、ようやく奴隷船が突然出現した。いつ、どこから現れたのかよく分からない不気味な現れ方だ。
結局、乗船が開始になったのは7時過ぎだったから、だいぶ遅かった。
もちろん、その頃には行列はとんでもなく長くなっていたから、のんびり7時頃に来たのでは話にならない。やはり6時頃には来ないといけないだろう。

船に乗り込むと、作戦通り、みんなで散らばって座席の確保を急ぐ。みんなで散らばるのは、船の中でどこに良い場所があるか分からないからだ。
船の甲板から客室に上がる階段は4つもあり、どこから上がれば良い席を確保しやすいか分からないので、手分けしてあちこちの階段から一気に攻め上がるのだ。
乗船すると、2階部分の前方に大きなボックス席があったので、そこに陣取る。かろうじて8人が座れる大きさだ。
3階部分にも上がって確認したが、吹きさらしの座席ばかりで、ボックス席は無かった。


〜 出港 〜


7時25分になって船が動き始めたので、朝食だ。さすがに早起きしたからお腹が空いてきた。
できれば家を出る前に朝食を食べてトイレも済ませたいところだが、いくら早起きが苦痛でなくなったとは言え、普段よりだいぶ早い時間に朝食を食べるとお腹を壊す可能性が高いので、家では食べず、船に乗ってから食べるのだ。
朝食はおにぎりだ。以前はレース中にお腹を壊すことが多かったので、用心して朝食と一緒に下痢止めの薬も飲んでいたが、2015年の徳島マラソンから朝食を菓子パンからおにぎりに変えてみたらその後はお腹を壊さなくなった
パンに含まれるフルクタンという糖類は消化に悪く、下痢になりやすいが、お米に含まれている糖類は消化が良いので、おにぎりを食べれば、もう下痢を心配する必要は無いのだ。
なーんて、すっかり油断してたら、なんと2020年の高知龍馬マラソンでは5年ぶりにレース中にお腹を壊して20分もトイレにこもってしまった。さらに2022年の神戸マラソンでも、29km地点でトイレに駆け込み、大幅にタイムをロスしてしまった。
原因は分からない。でも、少なくともおにぎり路線が悪い訳ではないだろう。おにぎりの他に、バナナやゼリーも食べたりしていたから、それらを控えるべきかもしれない。また、レース中に調子に乗ってエイドで色々食べ過ぎるのも良くないかもしれない。
今日も一応、ゼリーも持ってきたが、これはスタート前に必要に応じて食べることにする。

すっかり日が昇ってきて、外を見ると青空が広がっている
今日の天気は、だいぶ前の天気予報では当日は雨模様との事だったが、雨が少し早まったため、当日は晴れに変わった。
今年は満濃公園リレーマラソンと言い丸亀マラソンと言い坂出天狗マラソンと言い善通寺五岳山空海トレイルと言い徳島マラソンと言い笑って走れば福来たる駅伝と言い富士五湖ウルトラマラソンと言い、私が出たマラソン大会はことごとく良い天気に恵まれている。

(幹事長)「ここまで続くと超常現象としか言いようがない。どう考えても私の人徳のおかげじゃ」
(支部長)「いやいや、今の時期になると、晴天は決して望ましいものではないぞ」

晴れると炎天下のレースになる可能性が高まるので、支部長はそれを恐れているのだ。

(のらちゃん)「暑くなるかなあ?嫌だなあ」
(幹事長)「めちゃめちゃ暑くなるよ。暑さを楽しもう!」


オリーブマラソンは毎年5月末に開催されるが、この季節は天気が良いときは本当に気持ちが良い。まだ湿度があんまり高くないから、木陰でボケッとしてるぶんには暑くなく、大変気持ちが良い季節だ。
ただ、マラソン大会となると事情は異なる。木陰は気持ち良くても、炎天下を走るとなると非常に暑い。個人的には寒いのは嫌いで、暑い方が好きだから、真夏の炎天下で汗だくになって走るのは楽しくて好きなんだけど、しかし、いくら好きでも暑いとタイムは悪くなる。

それでも、昔の私達は、マラソン大会では晴れを望んでいた。雨のマラソン大会なんて走る気が起きなかった。朝から雨が降っていると、空を見上げながら連絡を取り合って、結局、みんな揃って欠場って事も多かった。
しかし、2010年の第33回オリーブマラソンで考えが変わった。その日は朝からものすごい土砂降りの雨だったので、みんなで欠場の相談をしていたら、我がペンギンズのエース城武選手から「雨がどうしたんですかっ!何を考えてるんですかっ!」と一喝され、渋々参加した。
そしたら、土砂降りの雨は、走りにくいどころか、気温が低くなって走りやすくて、後半の大きな坂も全然、苦にならず、最後までペースダウンすることなく、むしろ坂が多い後半の方がペースアップしてタイムが良くなるという考えられないレース展開でゴールし、2時間を大幅に切る大会自己ベストとなった
私だけでなく、最後までデッドヒートを演じたピッグも快走だったし、支部長も例年なら絶対に歩く最後の大きな坂も歩かずに2時間を切る大会自己ベストを出した。
それ以来、暑い季節には、むしろ雨を好むようになった

この大会には1997年から出続けているが、昔からずうっとタイムが悪く、長らく2時間を切ったことがなかった。私に限らず、ピッグ支部長だって、他のレースに比べたらタイムは悪かった。
でも、それが暑さのせいだとは誰も思わなかった。いくら暑いと言ったってまだ5月なんだから、7月下旬の炎天下の汗見川マラソンや四国カルストマラソンのような地獄の暑さではないからだ。
なので、このレースのタイムが悪い理由は坂が多いからだと信じていた

オリーブマラソンのコースは、スタート直後の大きな坂の後は、前半は草壁の町の中心地まで行って折り返してくるという坂が無いフラットな区間だが、後半に入ると、二十四の瞳の映画村まで行って折り返してくる曲がりくねった狭い海岸線のコースとなる。
この海岸線の道路は、曲がりくねっているだけでなく何度も何度も丘を越えてアップダウンが繰り返される。まだ元気な前半に坂があるのなら耐えられるけど、疲れ始めた後半に次から次へと坂が襲ってくるので、後半は厳しい戦いとなるのだ。
同じ小豆島だけど、反対側の北西部で行われる11月の瀬戸内海タートルマラソンも同じように坂が多いが、なぜかそちらの方はタイムが良い。
タートルマラソンはコース全般に満遍なく坂が配置されてるけど、オリーブマラソンは疲れが出る後半に坂が集中するのが良くないのだと思っていた。
なので、オリーブマラソンでは2時間を切るなんて絶対不可能だと信じていた

マラソンは極めてメンタルなスポーツなので、走る前から「このコースでは2時間を切るなんて絶対不可能だ」なんて決めつけていたら、現実にも2時間を切ることは難しい。
途中で苦しくなったら、「どうせ良いタイムは出ないコースだから頑張ってもしょうがない」と、すぐに諦めるからだ。
以前は、最後の大きな坂では、ほぼ必ず歩いていた。無理して走っても、どうせ良いタイムは出ないと信じていたからだ。

ところが、2010年に土砂降りの中、みんな揃って快走したもんだから、メンバー全員、衝撃を受けた。オリーブマラソンのタイムが悪かったのは、坂が多いからというだけではなくて、暑さのせいが大きかったのだ
そのため、それまではみんな雨を嫌がっていたんだけど、一転して、暑い季節のマラソンは雨乞いをするようになった
そして、その翌年の2011年も、序盤に激しい雨が降ったため、前年と同じように後半にペースを上げることができて、大会自己ベスト2位を出した
これでオリーブマラソンも雨さえ降れば良いタイムが出るという事が分かり、それまで大の苦手だったこのレースに対して、なんとなく自信がついた

また、雨さえ降れば良いタイムが出るということが分かると、一気にオリーブマラソンに対する苦手意識が払拭され、雨が降らなくても暑さ対策を施せば、炎天下のレースになっても良いタイムを出すことが可能になってきた
暑さ対策とは、適切なウェアの選択だ。ウェアの選択がうまくいくと、炎天下でも良いタイムを出す事が可能になったのだ。
マラソンは極めてメンタルなスポーツなので、「雨が降らなくても良いタイムを出す事はできる」と思える事は重要だ。雨が降らなくても、暑さを楽しむことができる。もう怖いものは無いのだ。


〜 島に上陸 〜


1時間半の船旅が終わって小豆島の坂手港に着くと、例年は島の小学生達の鼓笛隊が演奏で迎えてくれていた。本当に心温まる歓迎だったが、年々、隊員の数が減ってきていて、最近は驚くほど人数が少なくなっていた。
そして遂に今年は鼓笛隊がいなくなっていた

(幹事長)「恐れていたけど、遂に消滅したか」
(支部長)「そして誰も居なくなったって事やな」


本土以上に少子高齢化が急速に押し寄せる島嶼部なので、小学生の数が激減し、鼓笛隊が維持できなくなったのだろう。

船から下りたら、まずは場所取りをしなければならない。以前は大会会場近くの公園の芝生に陣取っていたが、最近は帰りの船に乗るのが便利っていう理由で、船を降りてすぐの狭い芝生のところに陣取っている
ただ、船の一番奥まったところに乗っていたため、下船するのが最後になったので、既に日陰の場所は無くなっていた。仕方なく、かろうじて残っていた炎天下の芝生に荷物を置く。

場所を陣取ったら、次は受付へ向かう。数年前から事前にゼッケンやチップが送られてくるようになったので、受付と言っても、参加賞やプログラムをもらうためだけの受付だ。
参加賞は今年もタオルだ。マラソン大会の参加賞はTシャツが一般的だが、マラソン大会のTシャツはタンスから溢れているのでタオルの方が大歓迎であり、オリーブマラソンのタオルは大きいのでバスタオルにもってこいだ。
そのほか、例年通り小豆島名産の醤油とかソーメンとかオリーブ茶とか佃煮とかも頂く。
ドタキャンになってしまったゾウさんの参加賞も受け取り、陣地に戻って走る準備に取り掛かる。

空を見上げると、空は雲一つ無い快晴となり、どんどん暑くなりそうだ
て事で、ウェアの選択に入る。「何を着るか」は、どんな季節のマラソン大会であっても最も重大な課題だ
特に、このオリーブマラソンでは、上にも書いたように、今日のような炎天下のレースでは適切なウェアの選択が極めて重要になる。

(D木谷)「郷ひろみスタイルですね」
(幹事長)「いや、あれは今日は止めておきます」


D木谷さんが郷ひろみスタイルと呼ぶのは、2014年のオリーブマラソン2015年のオリーブマラソンで着た秘密兵器のメッシュシャツだ。
今日のような炎天下のレースでは、あのメッシュシャツが驚異的な威力を発揮する。

(幹事長)「あのメッシュシャツは、まるで何も着ていないような感覚なんですよ」
(D木谷)「実際に何も着てないに等しいですよ」

秘密兵器のメッシュシャツ


でも、秘密兵器のメッシュシャツはいつ買ったのか忘れてしまったが、もう古くてボロボロになっていて、いまにも破れそうなのだ。
なので、今日は一昨年の自主開催レースと同じく袖無しの白のシャツを用意してきた。秘密兵器のメッシュシャツほどではないが、このシャツも背中側は少しメッシュになっているし、袖も無いから、普通のTシャツに比べるとかなり涼しい。

下は練習の時にいつも履いているランニングパンツを履いた。これは汗で濡れてもベチョベチョしないから走りやすい。
寒い時は防寒用としてランニングパンツの下にランニングタイツを履くが、今日は炎天下で暑いのでタイツは持ってきてない。代わりに足の筋肉の疲労防止のために脹脛サポーターを履く。ピッグ長谷選手倉石選手も脹脛サポーターを履いている。
一方、あれだけ暑さに弱い支部長タイツを履いている。

(幹事長)「それ暑いやろ?」
(支部長)「どっちにしても暑いから同じや」


さらに支部長は、あれだけ暑さに弱いというのに、タイツだけでなく、汗を拭くために手袋も履いている。
おまけに、トレランリュックまで背負っている。

(幹事長)「何を運んでるん?」
(支部長)「もちろん水分や」
(幹事長)「給水エイドがあるやんか」
(支部長)「いつ水分が必要になるか分からんからな」


このレースは給水エイドが多く、1〜2kmおきくらいにあるから、わざわざ自分で水分を持って走る必要は無いと思うんだけど、極端に暑さに弱い支部長は、エイドだけでは不十分のようだ。
またのらちゃんライオン4世はアームウォーマーを付けている。

(幹事長)「それ暑いやろ」
(のら)「アームウォーマーじゃなくて日よけのアームカバーだよ」


私は汗を拭くためのハンドタオルと、お腹を壊した時の緊急事態に備えてポケットティッシュをポケットに入れた。
そのほか、炎天下だけどランニングキャップは嫌いなので被らない。大半のランナーはキャップを被っているが、私はキャップを被った方が頭がもわっと暑くなるので嫌いだ。
晴れている時はサングラスも必携だ。眩しいからと言うより、歳とってくると紫外線による目への悪影響が強まって白内障の危険性が出てくるので、サングラスをかけるようにしている。サングラスをかけると、目がとっても楽だ。

そして、今回は秘密兵器がある。新しいシューズだ。
レース用のシューズとして一昨年の暮れにアシックスのハイパースピードを買った。これは足にとてもフィットして走りやすく、良い感じだと思っていた。
なんだけど、この頃、タイムは悪くなる一方だ

(支部長)「それはシューズのせいではなく老化が原因やな」
(幹事長)「やっぱり?」


とは言え、同年代の支部長はここのところタイムは全く落ちていない。
そして支部長が最近、ナイキのフライ5とどちらにしようか迷ったあげくアシックスのマジックスピードを買った。

(支部長)「足が勝手に前に前に進むんよ」
(幹事長)「ほんまか!?」


そして同時期にD木谷さんマジックスピードを買った。

(D木谷)「いやあ、本当に足が進みますね。1km20秒は速くなります」
(幹事長)「ホントに!?」


二人が揃ってそんな事を言うもんだから、心穏やかではない。私の心もマジックスピードに大きく傾いた。
ところが、同じように新しいシューズを求めていたのらちゃんはマジックスピードではなくアシックスのノヴァブラストを買った。

(幹事長)「それって初心者向けのシューズじゃないの?」
(のら)「クッション性が良くて足が疲れないんよ」

アシックスの説明を読むと、ハイパースピードやマジックスピードはサブ3.5ランナー向けだが、ノヴァブラストはサブ5を目指す初心者ランナー用みたいな位置づけだ。
値段はマジックスピードもノヴァブラストも似たようなものなので、それなら絶対にマジックスピードの方が良さそうに思える。
そのため、のらちゃんが強く勧めても半信半疑というか、ほとんどゼロ信全疑だったんだけど、一緒に30km走なんかをやっていると、私が終盤に足が疲れてペースダウンしている横で、彼女は一気にペースアップしたりするのだ。
もしかして、これは本当に疲れを軽減するシューズかもしれないと思い、のらちゃん騙されたと思って同じノヴァブラストを買い、徳島マラソンを走った。
すると、八ヶ岳への雪山登山から下山して、そのまま夜通し車を運転して前日に帰ってくると言う超強行スケジュールのため、疲労と睡眠不足でボロボロ状態だったにもかかわらず、最後まで足があまり疲れず9年ぶりに大会自己ベストを更新するという予想外の健闘を見せた。
ノヴァブラストマジックスピードのようにスピードが速くなるシューズでは決してないが、足が疲れないため、いつものような終盤のペースダウンが避けられたのだ。
フルマラソンでもそれだけの威力を見せたものなので、フルマラソン以上の距離を走るウルトラマラソンには打ってつけシューズだと期待して富士五湖ウルトラマラソンでも履いたら、やはり最後まで足が疲れずに楽しく完走できた。

て事で、フルマラソン以上の長距離を走る時にはクッション性が良くて足が痛くならないノヴァブラストが最適だと思うが、ノヴァブラストはイマイチ、スピードは出ないような気がする。
なので、ハーフマラソンまでの短い距離を走る時のために、つい先日、支部長D木谷さんと同じマジックスピードも買ったのだ。

(幹事長)「どや。ええやろ?」
(支部長)「ええやろ、って、私のと同じやがな。しかも色まで同じやがな」

本当は明るいグリーンのが欲しかったんだけど、今、市場で出回っているのは支部長と同じ青か、D木谷さんと同じ赤のしか無く、散々迷った結果、青にしたのだ。

最後に日焼け止めクリームを顔から肩から腕から足にかけて塗りたくる。4月の富士五湖ウルトラマラソンで、炎天下で9時間以上も走ったら、腕の皮が日焼けしてボロボロ剥けてしまったからだ。

青空のもと、スタート地点で気合いを入れるメンバー
(左から倉石選手、のらちゃん、ライオン4世、支部長、D木谷さん、ピッグ、幹事長、長谷選手)


準備も終わったので、そろそろトイレを済ましておこうと思うが、臨時トイレはたくさん設置されているものの、男女兼用で、大も小もいっしょくたなので、ものすごい長蛇の列ができている。どうしようか迷っていたら、
すぐそばにある常設の小さな小さな煉瓦造りのトイレは大と小が別々になっていて、小の方は列が出来ていないという情報を聞いた。半信半疑で行ってみたら、小は2つしか便器が無いのに列は無く、すぐに用を足せた。大は1ボックスしかなく、2人並んでいたので、どれくらい時間がかかるかは分からない。女性用はかなり列が出来ていたので、臨時トイレとどちらが早いか分からない。

(ピッグ)「字が小さいですね」
(幹事長)「極秘情報だからな」


ちなみに、のらちゃんは仕方なく臨時トイレの長蛇の列に並んだため、スタート前5分を切ってからようやくギリギリで戻ってきた。

ゼリーをチビチビ食べているとスタートの10時が近づいてきたので、スタート地点に移動する。


〜 スタンバイ 〜


スタート地点では、例年通り予想タイム順に並ぶようになっている。
この大会はタイムをチップで計測してくれるんだけど、それはゴール地点だけで、スタートはチップでは計測してくれず、ネットタイムは出してくれない。そのため、多くのランナーはできるだけ前の方に並ぼうとして混雑する。
昔は存続すら危うんでいた小規模大会だが、マラソンブームのおかげで、今日の参加者はハーフマラソンの部だけで2000人くらいいて、後ろの方までかなり混雑している。定員削減になっても、昔よりはかなり多い。

お日様が高く上がるにつれて、気温はますます高くなる

(幹事長)「予想通り今日は炎天下のレースになるね。嬉しいなあ」
(D木谷)「えっ?嫌じゃないんですか?」
(幹事長)「暑くてヘロヘロになって走るのが大好きなんですよ」
(支部長)「感覚がおかしいんと違うか?」


もちろん、暑くなるとタイムは悪くなる。肌寒い方がタイムは絶対に良い。でも、好き嫌いで言うと、寒いのは嫌いで暑いのは大好きだ。

スタート時間が近づいてきたので、本日の目標を設定せねばならない。
もちろん、どんな時でも、どんなレースでも、常に大会自己ベストの更新を狙うのが良い子のランナーとしてあるべき姿だ
マラソンはコースや季節によってタイムが大きく変わってくるため、違うレースのタイムを比較するのは不適当なので、どんなレースに出ても、とりあえず大会自己ベストを狙うのが良い子の正しい道だ。
なので、目安はあくまでも過去のタイムだ
今日は炎天下のレースになりそうだけど、2015年は炎天下だったにもかかわらず大会自己ベストを出せたので、暑くても良いタイムが出る可能性はある。

レース展開としては、前半のフラットな区間で貯金して後半の坂が多い区間で貯金を吐き出す、なんてパターンではなく、前半はフラットなんだけど、敢えて抑えて後半の坂でペースアップするという理想的な走りを目指す。
以前の私のレース展開は、全て後半に失速するパターンだったが、2010年に土砂降りの中で快走した時をはじめ、2014年2015年と、良いタイムを出したときは全て、後半の坂のある区間の方がペースが上がっている
前半のフラットな区間のペースは、どの年も似たようなものだが、後半の二十四の瞳の岬の分校へ行く半島でのペースが違う。惨敗パターンは、この半島で止めどもなくペースが落ちていくのに、快走パターンではどんどんペースが上がっている
一般的に、後半でペースを上げるのは難しいが、それだけに理想的な展開とされている。なかなか難しいパターンだが、オリーブマラソンに限って言えば、好タイムを出したときのレース展開は、どれも後半にペースアップできている。
なんでそうなるのか、何が決め手になるのか、全く分からないが、目指すパターンは後半のペースアップだ
第2の折り返し点を過ぎてもペースが落ちなかったら、その後はペースアップできる可能性が大きいということであり、諦めることなく、最後まで突っ走れば良いタイムが期待できるのだ。

とは言え、最近のていたらくを考えると、そんなに良いタイムが出そうな気はしない。今年の丸亀マラソンは、気温も低くてフラットなコースだったにもかかわらず、2015年のオリーブマラソンの大会自己ベストより5分も遅かった。
今の私には大会自己ベストを出すのは限りなく難しい。なので、密かに大会自己ベストは狙いつつも、現実的な目標は2時間を切れればいいやって感じだ。
ハーフマラソンで2時間というタイムは通常は大惨敗と言える。それを目標にするなんて、甘すぎるというか情けない気もするが、今の現状を考えれば仕方ない。

一方、永遠のライバルである支部長は、ここんとこ体調不良だ。
発端は徳島マラソンの少し前にランニング途中で転倒し、膝を打撲した事だ。その具合が思いの外悪くて、徳島マラソンでは20km地点でリタイヤした。
その後、リタイヤ必至で出場した富士五湖ウルトラマラソンでは、見事に62kmを完走したんだけど、体のあちこちにガタが来ているようだ。

(幹事長)「あんなに元気に富士五湖ウルトラマラソンや小豆島最外周完全一周サイクリングを完走したのにね」
(支部長)「それが原因やがな」
(幹事長)「一緒に完走したのらちゃんは今も元気満々だけど?」
(のら)「幹事長だって元気満々じゃん」
(支部長)「あんたら二人と一緒にせんとって!」


支部長は暑さに弱いだけでなく、以前は上り坂も弱かった。なので、前半がフラットで後半に坂が次々と出てくるオリーブマラソンでは、前半にリードされても、後半に私が支部長を逆転して逃げ切るというパターンが多かった。
ところが近年は圧倒的な練習により苦手の坂を克服してしまい、炎天下でなければ上り坂でも平気で私を追い抜いていくようになった。
しかし、今日は体調不良のうえに炎天下になりそうなので、リタイヤせずに完走できれば良いというスタンスだ。

スタートはハーフマラソンが10時にスタートし、10時14分に10kmの部がスタートする。
これまでは5kmの部があり、それが10時7分にスタートしていた。今年は5kmの部が無くなったが、10kmの部は10時14分のままだ。14分も間隔を開けるのは、何か理由があるのだろうか。
10kmの部はスタートまでだいぶ時間があるので、10kmの部に出るライオン4世は余裕を見せている。なんの緊張感も感じられない。

(幹事長)「10kmも走った事は無いよな?」
(ライオン4世)「前回の5kmが人生で最長でしたね。うふうふ」
(幹事長)「ちょっとは緊張せいや!」

なぜか不敵な余裕が感じられる。前回も同様だった。それまで満濃公園リレーマラソンで2km走ったのが生まれてこのかた最長距離だったのに、いきなり5kmの部に出て、完走すら危ぶんでいたのに、なんと女子年代別部門で50人中8位という快挙を成し遂げた。
もしかして生まれ持った才能があるのだろうか?


〜 スタート 〜


スタートの時刻が近付いてきた。よく晴れているものの、涼しいシャツを着てサングラスもしているので、あんまり暑さを感じない。こうなると、何の根拠も無いけれど、なんとなく、今日は行けそうな気がする
こうなると、ついさっきまで、前半は抑えて後半にペースアップするという理想的なレース展開を考えていたが、最初から飛ばしたくなった。

(幹事長)「なんとなく今日は行けそうな気がするから、急遽、予定を変更して、最初から飛ばす作戦にする!」
(支部長)「これまで何百回と繰り返してきた勘違いやな。絶対に後半に撃沈するパターンや」

前半は抑えて後半にペースアップするというのは理想的なレース展開だ。ただし、前半を抑えると、いくら後半にペースアップすると言っても限界がある。トータルとして、ものすごく良いタイムにはならない。
でも、前半から飛ばして奇跡が起きて最後までペースを維持できれば、すごいタイムが出るかもしれない

(幹事長)「前半を抑えると、そこそこ良いレース展開にはなるかもしれないけど、すごい好タイムは出ないからな」
(支部長)「その歳になって、まだすごい好タイムを出そうなんて考えてるんか!?」
(幹事長)「まさに今日がその日じゃないのか!?」

て事で、急遽、前半から飛ばす作戦に変更した。て事で、少し前の方からスタートすることにした
すると、すぐ近くに高速ランナーの高野くんがいた。久しぶりだ。彼とはオリーブマラソンくらいでしか会わないので、4年ぶりの再会だ。

スタートまで、あと2分」というコールは聞いたが、「スタートまで、あと何秒」とかいうカウントダウンが無いまま、いきなりスタートのピストルが鳴った。
毎回、同じなんだけど、4年ぶりだったのですっかり忘れていたから、びっくりして焦ってしまった。
慌てて腕時計のスイッチを押す。今日は左手には以前から使っているスポーツウォッチを着け、右手には新しいガーミンの時計を着けている。
左手の時計は、いつものように距離表示に合わせてラップを記録していく。一方、右手のガーミンはGPSで自動的に1kmごとのラップを記録していく。
コースの距離表示も、ガーミンの計測も、どちらも正確なら、両者は一致するはずだけど、マラソン大会の距離表示っては実は非常にいい加減で、不正確だ。またガーミンのGPSも誤差はかなりある。なので、両方を付けて走ってみる。

最初から飛ばすと言っても、スタートのピストルが鳴ったからと言っていきなり走り始められる訳ではなく、しばらくしてようやく周りの集団が動き出す。しかも、スタート地点まではゆっくり歩かなければならない。
スタート地点まで歩くと、ようやく走り始めることができるが、最初は混雑しているので思ったようには走れず、しばらくはノロノロと走る
ダラダラ進む前のランナーが鬱陶しいが、前のランナーの前にも、その前にも延々とランナーがダラダラ走っているから焦るのは禁物だ。無理して追い抜いても意味は無い。最初はウォーミングアップと割り切って、ゆっくり走ればいい

とは言え、今年は前の方からスタートしたので、それほど混雑しておらず、最初から割と思うように走れる。
飛ばすと言っても、むやみにスピードを出すっていう事ではなく、単に意識的に抑えるのは止めて、自然体で気持ちよく走るという程度だ。
徳島マラソンや富士五湖ウルトラマラソンでは時計を見ながら前半から意識的にスピードを抑えて走ったけど、そういう事はせずに、自然体で普通に走るという事だ。
普通に走っているつもりで、レースの序盤ではついついオーバーペースになりがちだが、それは許容するというスタンスだ。

このコースはスタートした直後にいきなり大きな坂があるから、そんなにスピードは出ない。それでも、最初は元気なので、頑張って駆け上がる。周囲のランナーも同じようなペースだ。
大きな坂のピークを過ぎると、今度は下り坂になるので、集団のペースも一気に上がる。もちろん、私もペースを上げる
ここでガーミンでスピードを見てみる。そしてビックリ。すごいスピードで駆け下りているつもりだったのに、大してスピードは出ていない。ほんまかいな。
ガーミンが知らせる1km地点のラップも大した事はなかった。かなりガッカリだ。
ガーミンの計測が狂ってるんじゃないかって思ったりもするが、このレースは距離表示が5km地点まで無いため、ガーミンが合ってるのかどうかは5km地点まで分からない。

その後は草壁港の近くにある第1折り返し地点まで平坦な道が続く。前の方からスタートしたため、後ろから追い抜いていくランナーもかなりいる。でも、周囲のランナーは大半は似たようなペースだ。
炎天下だが、メッシュシャツとサングラスのおかげで暑さは感じない
まだまだ序盤だが、さっそく最初の給水所が現れた。以前は、どんなマラソン大会でも、前半の給水所は時間の節約のためパスする事が多かった。
でも最近は、足攣り防止のため最初から必ずこまめに水分補給することにしているので、まだまだレース序盤で喉はそんなに乾いてないが、最初の給水所でスポーツドリンクをもらう。

ガーミンで見た1kmごとのラップは、1km地点2km地点では、思ったほどスピードは出てないと思ったが、それでもまあまあのペースだった。ところが3km地点4km地点とどんどん落ちていき、早くも5分半ペースにまで落ちてしまった。
しかも、スタート直後から一緒に走っていたのらちゃんが途中で私を置き去りにして前の方に行ってしまった。やはり自分が遅いのか?

自分では割と気分が乗ったまま第1折り返し点まで走ってきたんだけど、折り返し点のだいぶ手前で長谷選手倉石選手、さらにD木谷さんにすれ違った。ものすごく差が付いているから、やはり私はあんまりスピードが出ていないようだ。さらにピッグともかなりの差が付いていた。
のらちゃんとはそれほど差は付いてなかったが、過去の経験からすれば、もう逆転する事はできないだろう。
折り返して少し行くと、支部長とすれ違った。意外にしっかりした足取りで走ってきたので、そんなに調子が悪い訳ではなさそうだ。とは言え、フラットな前半で私より遅いって事は最近では珍しいので、好調とまでは言い難い。

第1折り返し点で折り返した後、しばらくすると最初の5km地点の距離表示がある。そこを通った瞬間にガーミンも5kmが来たと知らせてきたので、今のところピッタリ同じだ。精度に問題は無い。
って事は、ここまでパッとしないペースが続いてきたのは間違ってはおらず、本当のようだ。この1kmも5分半を少しオーバーしている。今日は調子が良さそうだから最初から飛ばしていこうなんて思ってたのに、さっぱりじゃん!

しばらく進むと、10kmの部のランナーとすれ違うようになった。10kmの部は14分遅れでスタートしているから、早いランナーとはすれ違うのだ。
ライオン4世の調子はどうかなと思って見ていると、しばらくして元気そうな笑顔で走ってきた。全然、余裕がありそうだ。

ここでふと前を見ると、なんとのらちゃんの後ろ姿が見える。どんどん離されていくと思ってたのに、全然離れていかない。そして、給水所があると、慣れた私はスピードを落とすことなく手早く給水するけど、まだ不慣れな彼女は少し時間がかかるため、少しずつ差が縮まっていく。
私がペースアップしているはずはないので、彼女がペースダウンしているようだ。どうしたんやろ。調子が悪いのかなあ。

なんとか踏ん張って走り続けると、二十四の瞳の分教場がある岬へ向かう分岐点があり、10kmの部はそのまま真っ直ぐに会場に帰るんだけど、ハーフマラソンは往路から別れて、岬の分教場へ行く道に入っていく。
坂が多い海岸線のクネクネした道で、ここからが勝負だ。
前半のフラットな区間が終わったので、気分的には、ここまでで半分終わったって感じなんだけど、実はまだ8kmも走ってなくて、ここからの方が長い。なので、調子が悪いときは「ええっ?まだ半分も来てないのか?」って精神的にしんどくなるんだけど、今日はまだまだ平気だ。

少し行くと、2つ目の距離表示の8km地点がある。5km地点では距離表示とガーミンはピッタリ同じだったけど、ここではだいぶズレが生じていた。どちらが正確なのかは分からない。
ガーミンの表示でも6km地点、7km地点、8km地点と、どんどんペースダウンしていたが、距離表示の8km地点で見たラップの方はさらに時間がかかっており、最後は1km6分を超えていた。
まだ半分も来てないのに、早くも1km6分オーバーだなんて、早々に惨敗ペースだ。

ここで高速ランナーの高野くんが後ろから追い抜いていく。

(高野)「ふふ。ようやく追いつきましたね」
(幹事長)「ぎょぎょぎょっ!」


こんな所まで彼をリードしていたって事は、やはりオーバーペースだったのか。やはり前半は自重すべきだったのか。いずれにしても、明らかにペースダウンしてるのだろう。

8km地点の距離表示の後は1kmごとに表示があるので、ガーミンのラップは無視して、距離表示を頼りにペースを見ていく。ただ、瞬間のスピードはガーミンで見ることができるので、重要だ。
スピードを見ながら踏ん張って走っていくと、なんとかペースは持ちこたえ、9km地点、10km地点、11km地点と6分は切るようになった。とは言え、普通の調子の時なら、せいぜい5分半以内では走っていたので、大惨敗ペースに違いはない。
それなのに、少しずつ近づいてきたのらちゃんは、すぐ目前にまで迫ってきた。明らかにペースダウンしている。
ここで給水所が現れたが、なぜかのらちゃんはパスする。水分をとる元気も無いのだろうか。なので、私がスポーツドリンクをもらって半分だけ飲み、残りをのらちゃんに手渡す。表情を見ると、かなり疲れているようだ。

次の12km地点ではペースは再び落ちたが、ここは厳しい上り坂があり、例年、大きくペースダウンする区間なので許容範囲だ。
続く区間は少し長い下り坂なので、一生懸命駆け下りたら、13km地点では5分半を切るペースにアップできていた。とは言え、ここも普通の調子の時なら5分を切れていたので、やはり大惨敗ペースに違いはない。

もうすぐ第2の折り返し点だが、かなり手前で長谷選手が折り返してきた。やはり、だいぶ速い。
と思ったら、そのすぐ後ろから倉石選手が快調に走ってきた。

(幹事長)「すぐ前に長谷選手がおるよ」
(倉石)「バッチリ捉えてますよ」


長谷選手は険しい顔をしていたが、倉石選手は余裕綽々の表情だ。追いつくかもしれない。
しばらくするとD木谷さんもやってきた。彼もかなり速い。

しばらく行くと、二十四の瞳の映画村の前にある第2折り返し点が見えてきた。折り返し点は愛のボラーロというムーミンがクタッとなったような奇妙な形のモニュメントの前だ。
折り返すと、すぐ後ろからのらちゃんがやってきた。そんなには離れていないから、まだ力尽きた訳ではないようだ。

第2折り返し点を折り返した後もしばらくはフラットな区間が続くんだけど、14km地点ではかなりペースダウンしていた。
さらに、しばらく走ると再び上り坂の区間に入るが、15km地点では6分近くにまでペースダウンしていた。
これは良くない兆候だ。調子が良いときと悪い時の差は、この辺りからはっきりと現れてくる
調子が悪い惨敗パターンのときは、この14〜15km地点辺りからみるみるうちに奈落のようにペースが落ちていくが、調子が良い快走パターンのときは、逆にペースを上げることができる。
今日はあわよくばここからペースアップを図りたかった。それが無理でも、少なくともこのままペースを維持して、なんとか快走パターンに持ち込みたかった。
しかし、本格的な坂が現れる前から早くもペースダウンしている。非常にまずい。

恐れていたとおり、本格的な坂が出てきた次の16km地点のタイムは大きくペースダウンし、6分半もかかってしまった。坂が多くて例年ペースダウンする区間とは言え、快走パターンの時は6分をオーバーするような事はない。
次の17km地点18km地点でも同じようなペースが続く。
周りを見ても、私を追い抜いていくランナーが多い。みんなが一斉にペースアップしたとは思えないので、明らかに私が大きくペースダウンしているのだろう。
私が追い抜くのはトボトボと歩いているランナーだけだ。

しかも、なんと、ここでのらちゃんが追いついてきた。そして、そのまま私を抜き去って前に行ってしまう。ここでのらちゃんが蘇ったとも思えないので、私が大きく撃沈しているのだろう。
なんとかのらちゃんについて行こうと頑張ってはみるものの、もう足が前に動かない
次の19km地点では、下り坂だったため少しはペースアップしたけど、それでも1km6分超のスローペースだ。

ここでようやく後半の半島の区間が終わり、メインの道路に戻る
て事は、つまり、いよいよ最後の大きな坂が始まる。この大きな坂ではペースが落ちるのは仕方ないが、それでも落ち方を最小限に食い止めたい。厳しい坂とは言っても、調子が良いときは5分半くらいで登れる坂だ。
しかし、今年は、もう足が動かず、歩いていないのに歩いているようなペースだ。歩きたいとは全然思わないんだけど、スピードが出ない。結局、20km地点では7分を超える超々スローペースだった。


〜 ゴール 〜


なんとか坂を上り終えたら、もうあとは下るだけだ。全力で走り下りる。つもりなんだけど、足がもう動かないから、下りでもペースが上がらない。ストライドも延びないし、ピッチも上がらない
ここまで大撃沈ペースになると、モチベーションは皆無になり、早くゴールして楽になりたいという気持ちだけで走り続ける。
いつもならゴールが見えてきたら最後の頑張りができるんだけど、今日はゴール間近になっても足は重くてペースは上がらず、足をひきずりながらのゴールとなった。

タイムは大会自己ベストどころか、2時間も大幅に超過する大惨敗だった。前回の2019年大会のタイムと比べても10分も遅かった。
史上まれに見る大惨敗だ。って言うのは実は勘違いで、土砂降りの中を快走して初めて2時間を切った2010年大会以降では大惨敗の部類に入るが、それ以前は、だいたいこれくらいのタイムだった。

一足先にゴールしたのらちゃんも、前回に比べたら大幅に悪かった。前回も今回も最後まで競り合い、前回は私が逃げ切ったが今回はのらちゃんが逃げ切った。そして、二人とも大惨敗だった。
それでも、のらちゃん女子年代別部門で9位に入賞した。前回の4位に比べたら大きく順位を落としたが、それでも大したものだ。

他のメンバーは、倉石選手長谷選手を逆転して好タイムでゴールしていた。長谷選手は1時間半切りを狙って最初からハイペースで飛ばしたのがたたり、終盤、撃沈したらしい。
好タイムを狙っての挑戦だったから、それはそれで素晴らしい戦いだ。
彼らに続いてD木谷さんピッグも好タイムでゴールしていた。
一方、体調不良で途中リタイヤ必至かと思っていた支部長は、少し遅れたが、見事に完走できた。かなり歩いたらしいが、それでもゴールしたのは立派だ。

そして、唯一10kmの部に出たライオン4世は、なんと、10kmの女子年代別部門で4位だった

(幹事長)「嘘やろっ!?」
(ライオン4世)「ほんとで〜す!」
(幹事長)「5人中の4位とか?」
(ライオン4世)「違います!74人中の4位で〜す!」


全く信じられない。生まれてこの方、5km以上走った事がなかったのに、いきなり74人中4位だなんてあり得ない快挙だ。
前回も初めて走った5kmの部で50人中8位だったが、それをはるかに上回る快挙だ。
もしかして、彼女ものらちゃんゾウさんと同じように生まれ持った才能があったのだろうか?

トンでもない快挙で有頂天になるライオン4世


それにしても、せっかく秘密兵器のマジックスピードを履いたのに、何の効果も無かった

(長谷)「そういうシューズは、ちゃんと足腰を鍛えてないと効果は出ないですよ」
(幹事長)「実はそれは知ってたのだが、もしかしてと思って」


前回より10分も遅かったってのは、どう考えてもシューズでなんとかなるレベルの惨敗ではない。明らかに練習不足だ。

(幹事長)「明らかに練習不足だ」
(のら)「え〜ん、え〜ん、やっぱり練習不足なんかあ」


〜 帰りの船 〜


帰りの奴隷船は出港時間が2時なので、まだまだ時間はあるが、朝と同じで、早く行かなければ座る場所を確保できない
いち早く支部長が列の先頭近くに並んでくれたので、助かった。
行列が出来る場所は建物の日陰になっていたから、我々が陣取っていた炎天下の芝生よりはるかに涼しい。なので、来年からは早々にみんなで列に並んだ方が快適だ
列に座り込んでお弁当を食べていると、乗船開始となったので、素早く乗り込み、朝と同じ前方のボックス席を確保できた。

今日は大惨敗タイムだったが、それにしても予想を超える悪さだった。
根本原因練習不足だろう。超過密スケジュールでヘロヘロだった徳島マラソンを予想外の好タイムで乗り切り、初めてのウルトラマラソンだった富士五湖ウルトラマラソンも楽しく完走できた事から、すっかり安心して油断してしまい、練習が極端に減っていた。
長い距離は走れても、今日のようなハーフマラソンになるとスピードが上がるので、足がついていかなかった

(D木谷)「練習にはスピード走が必要ですね」
(幹事長)「距離だけ走って自己満足してましたね」


ここ数年間、練習の走行距離だけ増やして自己満足していたが、やはりスピードを上げる練習が必要だ
最近、いつも同じ反省をしているけど、なかなかスピード練習はできない。しんどいからだ。安易に流れすぎているなあ。
また、練習不足なのに、それを自覚せず、スタート前に「今日はいけそうな気がする」なんて勘違いして序盤を自制しなかったのも敗因だろう。序盤を抑えていれば終盤で大撃沈する事はなかっただろう
こういう勘違いはもう何百回目だろう?
ただ、今日のペースでは、序盤を抑えて走ったとしても、せいぜい2時間を切るのが精一杯だっただろう。

(幹事長)「それではつまんないよねえ」
(ピッグ)「つまんないなんて言う前に練習してくださいね」


支部長は万全の給水態勢をとってトレランリュックを背負って走ったんだけど、なんと水分を持って走るのを忘れていたらしい。
最初は大好きなカルピスソーダをボトルに入れてたんだけど、走ると泡が出て爆発しそうになったので、それを全部出して、その代わりに水を入れようとしたんだけど、それを忘れてしまっていたらしい。

(幹事長)「カラのボトルを背負って走ったと言うこと?」
(支部長)「暑いだけやった」


そんな時、オリーブマラソンをドタキャンして岡山のテニス大会に出たゾウさんから連絡が入る。なんと、テニス大会で優勝したとの事だ。

(幹事長)「ひえ〜!凄い、凄すぎる!」

オリーブマラソンで上位入賞したライオン4世のらちゃんと言い、テニス大会で優勝したゾウさんと言い、本当に女子部員の活躍は感動的だ。

(幹事長)「なんで男子部員がていたらく状態なのに、女子部員はみんな凄いんやろ」
(倉石)「ていたらくなのは幹事長と支部長だけですがな」

(支部長)「私は体調不良のせいですから」

次は早くも1週間後に秋吉台カルストトレイルランがあり、さらにその翌週には北山林道駆け足大会がある。
超過密スケジュールはまだまだ続いていくのだ。


〜おしまい〜




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