第73回 丸亀マラソン大会
2019年2月3日(日)、第73回香川丸亀ハーフマラソン大会が開催された。
毎年、ペンギンズの初レースは1月の満濃公園リレーマラソンだけど、あれは動物チームで出る遊び半分て言うか遊び全部の行事であり、真剣勝負のレースとしては、この丸亀ハーフマラソンが初レースとなる。
(支部長)「満濃公園リレーマラソンは遊びやなんて言いながら、惨敗して悔しがってたやないの」
(幹事長)「あれはワザと手を抜いて走ったんやってば」
とにかく、丸亀マラソンは正真正銘の真剣勝負だ。このレースは、ほとんど坂が無い日本陸連公認の高速コースを走るってことで、良いタイムが期待できる。そのため、毎年、このレースはやる気まんまんで出場してきた。
ところが一昨年の丸亀マラソンは大変なことになった。その前年の12月4日の那覇マラソンの直前に交通事故で肋骨を3本も骨折してしまい、12月いっぱいは安静を余儀なくされた。ようやく軽くジョギングし始めたのは1月初めの満濃公園リレーマラソンの直前からで、そのため満濃公園リレーマラソンでは想像を絶する遅さで惨敗した。そのため、完走すら不安なままスタートしたが、たまたますぐ側に2時間のペースランナーがいたもんだから、何も考えずに彼らに盲目的に着いていったら、最後までペースダウンすることなくゴールできた。
これでなんとか復活できたかなと思ったら、その後、5月の連休中に登山で怪我してしまい、直後の小豆島オリーブマラソンや、さらに11月の瀬戸内海タートルマラソンや12月の那覇マラソンでも大惨敗を喫してしまった。
そのため去年の丸亀マラソンも大きな不安を抱えたままの出場となった。
坂が多い小豆島のレースや、12月なのに暑い沖縄のレースなら言い訳もできるが、マラソンシーズン真っ直中の2月に、坂が無くてフラットな丸亀マラソンでも復活の兆しが見えなければ、そのまま落ち目街道まっしぐらになってしまう。低迷のきっかけは交通事故や登山事故だったとしても、それをきっかけに転落する一方で回復しないとなると、これはもう疑う余地無く歳のせいだ。つまり、もういくら頑張っても二度と復活はできないって事になる。
(支部長)「もう歳なんやから、復活なんてかなわない夢を追いかけるのは諦めるべきやな。タイムなんか気にしないで気楽に走ったらええやんか」
(幹事長)「そ、そんなあ・・・」
まだまだ諦めきれない私としては、なんとか復活の兆しを見いだしたいのだ。てことで、密かに悲壮な覚悟を持って臨んだ。その結果、なんとかまあまあのタイムでゴールする事ができた。それほど良いタイムではなかったが、長期低落傾向に歯止めをかけることはできたと思う。
てことで、今年は完全復活を目論んで、やる気満々だ。
(ピッグ)「やる気満々なのは分かりましたけど、ちゃんと練習はしたんでしょうね?」
(幹事長)「1月は過去最長の月間練習距離を達成したぞ」
(ピッグ)「え?どれくらいですか?」
(幹事長)「恥ずかしいから言えない」
恥ずかしくて言えないくらいの距離しか走ってないが、私としては過去最長の練習量だった。
(支部長)「そんなに練習してた割りには満濃公園リレーマラソンでは惨敗してたやん」
(幹事長)「だから、あれはワザと負けてあげたんやってば」
〜 エントリー 〜
丸亀マラソンは、高速レースとして全国的にも名高いことで、以前から人気が高かったが、昨今の異常なまでのマラソンブームのせいで、毎年、さらに参加者が増加している。ただ、会場の丸亀陸上競技場はキャパが大きいため、定員には余裕がある。そのため、一応、定員は1万人となってて、申込者が1万人に達すると受付は終了してしまうが、それとは別枠で、大会前日に会場へ行けばエントリーが可能だ。そもそも、前日受付OKというシステムは一体どういう意味があるのか今でも分からない。申込し損ねた人のためかなとは思うけど、なぜ前日だけなのか分からない。前日だから天気予報を見ながら遠方から出掛けてくる事も可能だろうけど、なんとなく落ち着かないよね。ま、どっちにしても、前日申込みなんて、なんだか不安なので、早めに申し込むことに越したことはない。
我々一般部門のエントリーは、一昨年からBとCに分かれた。以前はエリートランナーがA部門で、一般ピープルはB部門だったが、一般ピープルが細分化され、過去3年間で男子なら1時間50分以内、女子なら2時間10分以内の記録を出したランナーがB部門で、それ以外はC部門となった。そしてB部門でエントリーするためには、自己申告だけじゃなく、証拠となる記録証のコピーを郵送しなければならない。ほとんどのマラソン大会で、エントリー時に自分の過去のベストタイムを申告し、そのタイム順にスタートの順番が割り振られているが、あくまでも自己申告なので、適当に申告する人も多く、そのため、本当は遅いのに前の方からスタートして後ろのランナーの邪魔になる人も多かった。そういうのを排除するために厳密な管理にしたのだろう。
初めて細分化された一昨年に慌てて過去の実績を調べてみたが、2013年には1時間50分を切ってたけど、それ以降は惨敗続きでB部門の参加資格をクリアできていないことが分かった。その後も、一昨年は交通事故明けでギリギリで2時間を切っただけだから、当然、駄目で、去年は長期低落傾向に歯止めはかけられたと言うものの、タイムは1時間51分台で、ギリギリでアウトだった。なので、今年もB部門でのエントリーはできなくて、C部門でのエントリーとなった。D木谷さんだけは1時間50分をクリアできているが、支部長やピッグも近年は惨敗続きで1時間50分をクリアできていない。
(幹事長)「なんとしても、再び1時間50分の壁を破ってB部門でエントリーしたいよなあ」
(支部長)「無理無理。もう歳やから、我々は1時間50分を切れない体になったんよ」
一方、ゾウさんは女子だから2時間10分をクリアしてれば良いんだけど、3年前には1時間50分をもクリアしているので、堂々とB部門でエントリーできる。
(幹事長)「いーな、いーな」
(ゾウ)「でもその後は低迷しているから、今年は自己ベストを出したいです!」
ゾウさんは一昨年、彼女としては惨敗したが、それは出産後3ヵ月足らずだったからだ。産後3ヵ月足らずで完走するなんて、それだけですごいと言うか、考えられない力だ。そして去年はだいぶ復調してきた。なので、彼女も今年に完全復活を目論んでいる。
(支部長)「こないだの満濃公園リレーマラソンのタイムを見れば、ゾウさんの方が完全に復調してるやん」
(幹事長)「満濃公園リレーマラソンの事は、もう言わないで」
て事で、今年は私のほか支部長、ピッグ、ゾウさん、國宗選手、ヤイさん、DK谷さん、ペンギン中村くんがエントリーした。さらに登山部女子部員ののらちゃんもエントリーした。彼女は今年で4回目の出場で、これまでは別チームで出ていたが、去年のオリーブマラソン、タートルマラソン、先月の満濃公園リレーマラソンとペンギンズで出てくれている。
〜 駐車場 〜
レースの1ヵ月ほど前に、駐車場の券が送られてきた。一昨年は私が、そして去年はゾウさんが丸亀競技場の駐車券をゲットしたが、今年は遠く離れた三菱電機の臨時駐車場の券だった。
(幹事長)「みんな、どうだった?」
(支部長)「私も三菱電機やった」
(ピッグ)「私も三菱電機でした」
(ヤイ)「残念ながら私も三菱電機でした」
(國宗)「私も三菱電機ですね」
(D木谷)「私も三菱電機でした」
(ゾウ)「わたし、三菱電機もハズれました」
(幹事長)「え?三菱電機が外れるなんてこと、あるの?」
福引きの残念賞と同じで、三菱電機の臨時駐車場は丸亀競技場の駐車場が当たらなかった人のための残念賞だと思っていたら、ゾウさんは珍しく外れたらしい。
(幹事長)「三菱電機がハズるなんて、すごい確率やで!」
(ゾウ)「嬉しくも何ともないですね」
昔は会場である丸亀競技場の駐車場に先着順で停めていたが、参加者が増加するにつれ、遅く行って停められなかった車が会場周辺に溢れかえって大混乱するようになったため、事前に駐車場を申込んでいた人にだけ先着順で駐車券が送られてくるようになった。その後、丸亀競技場の駐車場だけでは対応できなくなって、遠く離れた土器川河川敷の臨時駐車場なども使われるようになり、申込みが遅れると遠方の駐車場しか配給されなくなった。
それがいつの間にか先着順じゃなく抽選になった。それでも当初は、どこも当たらないって事はなく、たいていは遠方の駐車場券が送られてくるようになった。遠方の駐車場はキャパがでかいので、オーバーするってことはなかったからだ。ところが最近は、それでも足りなくなったようで、ゾウさんのどこの駐車場も当たらないっていう人が出てきたのだ。そうは言っても、メンバーのうち誰かが駐車券をゲットすれば乗り合わせて行けるので、全員が外れるなんていう末期的な事が無い限り問題は無い。
(ゾウ)「遠くの臨時駐車場だと時間がかかりますね」
三菱電機の臨時駐車場は海岸の工業地帯に設けられており、会場まではシャトルバスで送迎してくれるんだけど、マラソン大会開催のために交通規制が敷かれているため、渋滞で時間がかかって仕方ない。
(幹事長)「本当に迷惑な交通規制やな」
(支部長)「あんたが出るマラソン大会のせいやがな!」
〜 ジョギング教室 〜
レースの受付は前日と当日があり、どっちでもいいが、私は丸亀に実家があり、しょっちゅう丸亀に行ってるので、前日の土曜日に済ませた。自分だけ前日に受付したって、どうせ他のメンバーは当日に受付するので、あんまり意味は無いんだけど、なんとなく安心できる。のらちゃんも丸亀在住なので、一緒に前日受付をした。
受付ではゼッケンとパンフレットと記念品をもらう。記念品はたまにバスタオルの年もあるが、たいていはTシャツで、今年もTシャツだった。多くのマラソン大会の記念品がTシャツなので、同じようなTシャツが毎年、積み上がっていくから、個人的にはバスタオルの方が良い。今年のTシャツは珍しく黄色だった。去年も珍しく緑色だった。さすがに、ありきたりな白とか青は避けるようになってきたのかもしれない。
パンフレットには第73回と描いてあるが、もちろん、これは嘘だ。よく「幹事長は何回くらい出てるんですか?」って聞かれて「第1回から出てるよ」って答えると、みんな私を仙人でも見るかのように見て驚くが、もちろん私は73歳にはなっていないし、赤ちゃんの分際でハーフマラソンに出るような体力も無い。本当の第1回大会は72年前ではなくて22年前の1997年に丸亀城築城400年記念大会として開催された。当時はまだこのホームページを開設してなかったため記事は残っていないが、翌年の1998年の第2回大会からは毎年記事を掲載している。そのまま第4回までは正直な回数だったのに、2001年の第5回大会のとき、突然50回も上げ底されて第55回になった。1997年の第1回大会の前年には第50回香川ロードレースが開催されていたので、いきなりそれを足したのだ。
香川ロードレースというのは、専門の陸上競技関係者しか出ない地味な大会であり、今の丸亀マラソンとは似ても似つかない全く別のレースだった。長距離レースではあったものの、距離だってフルマラソンの時もあれば35kmレースなんて中途半端な時もあったし、レースの性格が全く異なっていた。水増しの事情については、第56回(本当は第6回)の記事に詳しく書いているが、理由はもちろん、回数が多い方が伝統がある由緒正しいレースのように聞こえるからだ。もちろん、私は回数の水増しを非難するつもりは毛頭無い。私の故郷である丸亀のマラソン大会であり、回数が多い由緒正しいレースのように聞こえた方が、知らない人に対しては格好良いから、それでいい。第1回と言うか第51回の頃は、毎年、コースがコロコロ変わり、私の実家のすぐ裏の農道に毛が生えたような道を走ったりしていた草レースだったのが、今や陸連公認の高速コースになって全国的にも有名になり、定員1万人があっという間に一杯になってしまうなんて、地元の私としては嬉しい限りだ。
受付が終わって競技場を見ると、3kmレースをやっていた。以前は3kmレースも同じ日にやっていたが、最近は前日にやっている。ハーフマラソンは参加者が増えて肥大化してきたから、3kmレースも同じ日に開催すると大混乱するのだろう。出場しているのは大半が中高生で、社会人は少ない。男子のトップの高校生は9分を切っていたから、1km3分を切るペースだ。つまり100m当たり18秒を切るペースだから、私らでは100mも無理だろう。中学生でもトップは9分ちょっとだ。また女子でも高校生、中学生ともにトップは10分ちょっとだから、似たようなものだ。
レースが終わると、今年も金さんのジョギング教室がある。金さんと一緒に高橋尚子さまが来るのなら万難を排してでも参加するところだが、今年の相棒は有森裕子だったので、ちょっと迷った。でも一緒に行ったのらちゃんがジョギング教室に出たことないってので、一緒に参加することにした。
ジョギング教室の金さん(左)と有森裕子(右)
のらちゃんは初めての参加だから、ちょっと緊張気味だ。
(のら)「なんか参考になる事あるかな?」
(幹事長)「明日のレースに役立つような事は期待したらあかんよ」
このジョギング教室は、何か参考になるような事を期待してはいけない。単に、金さんや実績ある女子選手(有森裕子とか高橋尚子さまとか千葉ちゃんとか)と一緒に楽しく過ごすイベントだ。
今回の内容は、延々と続くストレッチと、自分の目標ペースト同じペースランナーと一緒に走るペース走と、質疑応答だ。今さらの内容であり、明日のレースに役立つことは一切無い。でも、誰もそんな事は期待してなくて、単に楽しいイベントと割り切って参加しているので、和気藹々と楽しい時間が流れていく。
ペースランナーには今年も四国電力の陸上部OBを中心に構成されているが、元締めは矢野選手だ。彼は陸上部OBではなく、ペンギンズOBだが、今ではこのペースランナー部隊を完全に掌握する元締めとして大活躍している。
(支部長)「私らには声がかからなくなったけどな」
(幹事長)「もう、お呼びじゃない、と」
私たちも10年前の第63回大会と9年前の第64回大会ではペースランナーを務めたが、その後はお呼びがかからなくなった。丸亀マラソンのペースランナーは10年前に初めて導入された。その時、大会のプロデューサーを務める金さんから新城プロに人選の依頼があり、我々に声がかかったのだ。翌年の9年前も同様だ。しかし、その後はペースランナー体制を強化するために、我々のようなド素人ではなく、陸上部OBなどのプロに変えたのだ。少し寂しい気もするが、ペースランナーを務めている限り、この高速レースに出場して好タイムを出すことができないので、どうせならペースランナーより選手として参加したい。
今年は矢野選手が2時間ちょうどのペースランナーを務めているので、彼と一緒に軽く走ることにした。400mトラックを5周だから2kmのペース走だ。ゆったりしたペースでの僅か2kmのペース走なので、もちろん何の意味も無い。
ストレッチは色んな部位について延々とやった。これはこれで何となくためになった。ただ、色々ありすぎてほとんど忘れてしまった。どうせなら、大会当日の集合時にやって欲しいぞ。もっとマイナーなマラソン大会なら開会式の時に簡単なストレッチをやるけど、1万人規模の大きな大会なので、物理的に無理だろうけど。
その後、質疑応答なんかをやって解散となり、さらに有森裕子と一緒に記念撮影したりして終わった。
今日は天気も良く、風も無く、ポカポカした気持ちの良い空のもと、楽しいイベントだった。来年も参加したいぞ。
〜 会場へ出発 〜
天気予報ではレース当日は雨だって1週間も前から言っていた。以前なら、1週間も前の天気予報なんて、絶対に外れると楽観視していたが、最近は1週間も前の天気予報が信じられないほど良く当たる。なんで1週間も先の天気予報が当たるのか、一体どういう仕組みになっているのか理解できないが、本当に良く当たる。もしかして、天気予報に合わせて中国が雲を発生させているのではないかと疑うくらいだ。
なので、とっても心配していたが、前日の天気予報では、雨は降るものの、雨になるのは午後からで、午前中はもつらしい。
もちろん、雨が絶対的に嫌だと思っている訳ではない。以前はどんな季節であろうと、雨は絶対に嫌だったが、9年前の第33回小豆島オリーブマラソン大会で大雨の中を快走してからは、我々は雨そのものに対する抵抗感は払拭されている。大会が中止になるほどの雨でなければ気にしない。ただし、それは気温が高いシーズンの話であり、今は一年で一番寒い時期なので、冷たい雨の中を走るのは嫌だ。もう古い話になってしまったが、19年前の第4回大会は、冷たい雨の中、体中の筋肉がこわばってしまい、空前絶後の惨敗を喫したのを今でもはっきりと覚えている。
(幹事長)「老化で認知症が進んで記憶力が衰弱しているのに、あの悲惨な戦いは鮮明に覚えているぞ」
(支部長)「認知症が進んでも古い話は覚えてるんやってば」
レース当日の朝、起きると、期待通り、空は晴れていた。なんとか今日は雨が降り出すまでにゴールできそうだ。去年は強烈な寒波が押し寄せてきて、丸亀競技場に着くとグランド一面が雪で真っ白になっててびっくりしたが、今日はそういう事もないだろう。
また毎年、この時期は風が強くて、走りにくい。西から強い風が吹いてくるから、前半は追い風で良いんだけど、折り返してからの後半が強い向かい風となり、ただでさえペースが落ちる後半にますます厳しい戦いを強いられるのだ。しかし、今のところ風も弱い。
丸亀までの行程は、一番遠方のヤイさんが途中で國宗選手を拾ってからミニクーパーで我が家へ来て、うちでミニバンに乗り換えて出発する。それからピッグと支部長を拾い、さらに坂出でゾウさんを拾って港湾地帯にある三菱電機の臨時駐車場へ行く。そこから丸亀競技場まではシャトルバスでの往復だ。D木谷さんやペンギン中村くんやのらちゃんは別行動で現地集合となった。
レースのスタート時間は、エリートランナーは10時35分、一般ピープルB部門は10時50分、我々C部門は11時だ。当日の受付は、その1時間前の10時までだ。臨時駐車場から丸亀競技場まではシャトルバスで2〜30分だろうから、9時半ごろに臨時駐車場に着けばギリギリ間に合うとも思ったが、渋滞で時間がかかるかもしれないとのことで、7時にヤイさんに家へ来てもらい、みんなを拾いつつ8時半には臨時駐車場へ着くという行程にした。
まずは予定通り7時にヤイさんが國宗選手を載せて我が家に到着した。ところがヤイさんは完全なる普段着で、荷物もほとんど持っていない。靴も普段ばきの靴だ。
(幹事長)「舐めとんですか?」
(ヤイ)「いや、今年も走りません。みなさんの応援に行きます」
ヤイさんは、もう随分前から肉離れで足を痛めていて、なかなか完治しない。少しマシになったかなと思ってレースに出ると悪化する、という悪循環を繰り返している。去年12月の那覇マラソンは出走したものの、途中で諦めてリタイアしたが、今日は最初から出走しないと言う。
(幹事長)「那覇マラソンはハーフマラソンと同じ距離の中間地点まで行ったんだから、今日も行けるでしょ?」
(ヤイ)「那覇マラソンは中間地点まで行かないとリタイアバスが無いから無理して行ったけど、大変だったんですよ。もう嫌ですよ」
て事で、去年に引き続き、今年もヤイさんは応援のためだけに来てくれることになった。
その後、順調にメンバーを拾い、8時過ぎには臨時駐車場に着いた。シャトルバスもどんどん出ていて、そんなに待たずに乗れたし、道も渋滞は無く、9時だいぶ前には丸亀競技場に着いた。
〜 会場到着 〜
会場に着いて他のメンバーの受付を済ませたら、陣取りをしなければならない。
例年なら、空いている上にお日様が当たって気持ち良いバックスタンドの端っこの客席に陣取るんだけど、午後は雨が降る予報だから、雨が降っていた一昨年、雪が降っていた去年に続き、今年も雨を避けるために屋根があるメインスタンドに陣取ることにする。メインスタンドの中でも、一番上の3階部分の、さらに一番高い壁際の場所だ。ヤイさんが去年見つけた穴場で、そこなら壁に遮られて風が来ないのだ。ほとんどの人は2階部分しか目に入らないので、3階まで来ている人はあんまりいない。
今のところ気温は高くはないが、風が無いからあまり寒くはない。このままなら絶好のコンディションだ。
場所が落ち着いたら、まず朝食を食べなければならない。本当は家を出る前に朝食を食べてトイレも済ませたいところだが、家を出たのが7時だから、家で食べて出るには早すぎる。いくら早起きが苦痛でなくなったとは言え、普段より早い時間に朝食を食べるとお腹を壊す可能性が高い。来る途中で食べるのが時間的にはちょうどいいが、運転していたので食べられなかった。なので、少し遅いが慌てて食べる。
朝食はおにぎり2個だ。本当は菓子パンが大好きで、以前はいつも菓子パンを食べていたんだけど、パンに含まれるフルクタンという糖類は消化に悪いので、レース中にお腹を壊すことが多かった。お米に含まれている糖類は消化が良いので、おにぎりに変えてからは一度もお腹を壊したことがない。
ちなみに、12月に登山に行ったときは、登山口で肉まんを食べたら、山頂でお腹を壊して緊急事態となった。菓子パンだけでなく、肉まんも消化に悪いようだ。こうなったら、もうおにぎりしか無い。
しばらくしたらのらちゃんが合流する。さらにペンギン中村君も合流する。ところがペンギン君は今日は走らないという。なんとインフルエンザにかかったんだそうだ。今から11年前の第62回大会では私がインフルエンザにかかって欠場した。もうしんどくてしんどくて、大げさじゃなく生きてるのが辛いと思うくらいしんどくて、それ以来、毎年インフルエンザの予防接種は欠かしたことがない。なのでペンギン君には同情する。
(幹事長)「で、今日は私たちの応援?」
(ペンギン)「いえ、妻の応援です」
言わずと知れたペンギン君の奥さんは、陸連推薦枠で東京マラソンに出場しているほどの高速ランナーで、12年前の庵治マラソンでは出産後わずか4ヵ月後のレースだったにもかかわらず上位入賞したという強者だ。強者と言っても、見た目はとても華奢な小柄で可憐な女性で、一体どこにそんなパワーが秘められているのか不思議な方だ。
(幹事長)「老化で認知症が進んで記憶力が衰弱しているのに、あの驚異の走りは鮮明に覚えているぞ」
(支部長)「だから認知症が進んでも古い話は覚えてるんやってば!」
集合時間の締め切りまでは、まだ、だいぶ時間があるが、取りあえず着替えることにする。
(國宗)「今日も何を着るか悩みそうですね?」
(幹事長)「ちょっとだけ、ね」
何を着るかはマラソン大会において最も重要な要素だ。寒いのは大嫌いだけど、暑くなるとバテてしまうから避けなければならない。
去年は迷う余地は無かった。強烈な風雪の中を走るため、防寒に徹しなければならなかったからだ。迷うことなく、3年前に買った防寒用長袖ランニングシャツを着て、その上にTシャツを着た。でも、その防寒用長袖ランニングシャツを買って初めて着た3年前は、気温は低いものの、珍しく風が全く無かったもんだから、走っているとどんどん暑くなってしまった。
なので、今日も慎重に考えなければならない。今のところ気温は低いが、風が無く、お日様に当たると暖かい。じっとしてるのに暖かく感じられるような時は走りだすと暑くなるに決まっている。しかし、天気は下り坂なので、お日様は隠れるだろう。また、もしかしたら雨が降り始める時間が早まり、走ってる途中で雨に打たれるかもしれない。雨に打たれると、上にも書いたように19年前の第4回大会で冷たい雨に打たれて空前絶後の惨敗を喫したのが生々しく記憶に蘇る。それだけは絶対に避けなければならない。
て事で、仮に雨が降っても濡れてもベチョベチョしないように、登山用に愛用している吸湿性と速乾性に優れた長袖のインナーウェアを着て、その上に去年のタートルマラソンでもらったTシャツを着た。このTシャツは、薄い水色でなかなか良い感じだ。
(のら)「でも、これ首筋のところに『かどや製油』って書いてあるのね」
(幹事長)「気にしない気にしない」
のらちゃんはタートルマラソンに初めて出たから抵抗感があるのかもしれないけど、タートルマラソンのTシャツには毎年、スポンサーである『かどや製油』のロゴが首の後ろに入っていて、慣れればそれも可愛く思えてくる。てことで、のらちゃんも一緒にタートルマラソンのTシャツを着る。
雨が降ってれば被ろうと思って穴の開いたビニール袋も持ってきたが、今の状況なら不要だろう。
(のら)「一応、持って走った方がいいかな?」
(幹事長)「走りだしたら少しの雨は気にならないよ」
雨がいっぱい降ってたら体が冷えるのでビニール袋が必要だが、今日は降っても小雨程度らしいので、走り出せば気にならなくなるだろう。
もちろん冬なので、迷うことなくランニングタイツも履いた。ランニングタイツは、本来は足のサポートのために履くものだ。何をサポートするのか良く分からないが、テーピングテープと同じ働きをするらしい。と言っても、そもそもテーピングテープの働き自体が分からないので、ランニングタイツの効用は分からない。最近は多くのランナーがタイツを履いているが、プロ級の選手は決して履いていないので、どこまで意味があるのか大いに疑問だ。個人的には、サポートになると言うより、足が突っ張ってむしろ走りにくい。大リーグボール養成ギブスのように足に負荷がかかって、かえって疲れるんじゃないかっていう疑惑がある。でも、冬場の気温が低い日には防寒のために履くべきだろう。
と思ったら、なんとゾウさんはタイツを履いていない。
(ゾウ)「タイツ履かない方が足が良く動くんですよ」
3年前に圧倒的なタイムを叩き出して僕らを蹴散らした時、彼女はタイツを履いてなかったのだ。それで好タイムを狙う時はタイツを履かないことにしたらしい。さすがに去年は雪の中だったので防寒用に履いていたが、今年は不要との判断だ。タイツは履いてない方が走りやすいってのは僕も同感なので、彼女の選択には心を動かされる。
(幹事長)「どうしよう。僕もタイツは脱ごうか?」
(支部長)「何を言うてるん。今どきタイツ履いてないと貧乏人やと思われるで」
雨が降り出せば、嫌いなランニングキャップも被らないといけないけど、たぶんゴールまで降らなそうなので、被らないことにした。
支部長とピッグは、一昨年、関係会社のSTNetから着用を依頼されたインターネットサービスPikaraの宣伝Tシャツを着ている。ゾウさんと國宗選手は、それぞれ職場のTシャツを着ている。
(のら)「ペンギンズって、お揃いのウェアが無いんだね?」
(幹事長)「作りたいんだけどね」
お揃いのユニフォームは、もう何十年も前から作ろう作ろうと話してるんだけど、みんな他人任せで、誰も主体的に行動しないから、いつまで経っても作られない。
絶好の天候でやる気まんまんの精鋭メンバー
(左から幹事長、のらちゃん、ゾウさん、支部長、ピッグ、國宗選手)
(撮影:ヤイさん)
着替えが終わると、持ってきたバナナを1本食べる。本当は直前にゼリーを食べたかったところだが、ゼリーを持ってくるのを忘れたので、これが最初の食事だ。
トイレの大は、普段は朝に行くが、マラソン大会の会場のトイレは激混みなので、それを避けるため、数日前から夜行くようにしてて、昨晩も遅くなってから行ったから、今のところ、大は催していない。たぶん、このまま大丈夫だろう。小の方なら、いつでもトイレは空いている。
スタンドの上から競技場の周りを見ると、せっせとウォーミングアップしているランナーも多い。寒い時期なので、最初から全力で飛ばすシリアスなランナーにはウォーミングアップが不可欠だろう。しかし、我々のような一般ピープルにはウォーミングアップは百害あって一利無しだ。どうせ序盤は大混雑でまともに走れないので、その時がウォーミングアップだ。
10時10分となり、ようやく集合開始となったが、10時40分までに集合すればいいので、そんなに早く寒いグランドに降りていく必要は無い。ギリギリまで風の無い場所で待てばいいのだ。ところがいつものようにゾウさんがソワソワし始める。ゾウさんはスタートが10分早いB部門だから、集合時間も我々C部門より10分早く、10時30分までなのだ。
(幹事長)「それでもまだ20分もある!」
(ゾウ)「ギリギリは嫌ですっ!」
どうせ集合場所は別々なので、ゾウさんだけ早めに降りて行った。
さらに、のらちゃんもそわそわし始めたので、仕方なくみんなで降りていくことにした。
〜 集合 〜
集合場所はB部門もC部門も同じグランドで、ゼッケンに書かれたアルファベット順にA列から整列していく。アルファベットは事前に申請した目標タイムに基づいて速い順になってるんだと思うが、あんまり覚えていない。ゾウさんはE列で、ピッグはJ列、私らはK列というようになっている。そのうちA列からF列までがB部門で、G列以降がC部門だ。
て事で、私と支部長、國宗選手、のらちゃんの4人が固まって集合する。
スタートしてからの混雑を避けるためには、自分と同じようなペースの集団の位置でスタートした方が良い。タイムはゼッケンに着けたチップでネット計測してくれるから、後ろの方からスタートしても構わないんだけど、後ろの方からスタートしたら、仲間同士でおしゃべりしながらゆっくり走るおばちゃん軍団なんかにブロックされて走りにくい。昔は参加者が少なかったから、邪魔なランナーがいても、そのうちバラけてきて空いてきたが、1万人も参加するようになってからは、最後まで混雑は緩和されず、最後までおばちゃん軍団に前をブロックされたままになるので、それは避けなければならない。自分と同じ速さのランナー達と一緒に走れば、邪魔なランナーを追い抜く必要も無ければ、後ろから抜かれる事も無いので、秩序良く走ることができる。
ところが、どのマラソン大会でもそうなんだけど、みんな速めのタイムを申告しがちで、遅いのに前の方からスタートするランナーも多い。そうなると邪魔なランナーが多くて本当に走りにくい。なんとか適正な場所でスタートさせることはできないのだろうか。
(支部長)「そのためのブロック分けやろけどな」
(幹事長)「そうなんやけどな」
厳密な記録証に基づいてB部門とC部門に分けたのは、虚偽申告するランナーを排除するためだろう。なので、B部門には遅いランナーは紛れ込んでいないはずだ。でも、それはB部門だけの話であり、C部門には相変わらず遅いランナーが不適正な申告で前の方のブロックに陣取っている。C部門で参加する人も含めて全員に過去の記録証を提出させればいいと思うんだけど、そこまでしてくれそうにないので、なんとしても今年こそは1時間50分の制限時間をクリアして来年はB部門からスタートしたいぞ。
(幹事長)「あれ?でも、ピッグは去年、1時間50分をクリアしてなかった?」
(ピッグ)「エントリーが遅れまして」
ピッグは去年、1時間50分をクリアしてるんだけど、エントリーが遅れてC部門になったようだ。C部門のエントリー期間は2ヵ月以上あるが、B部門のエントリー期間は3週間足らずと短い。記録証のチェックに時間がかかったりするからだろう。B部門でエントリーできる記録を持っている人でも、エントリーが遅れるとC部門になるのだ。ピッグだけでなく、D木谷さんも1時間50分をクリアしているのに今年もC部門だ。
天気予報通り、晴れていた天気は曇ってしまい、日差しは無くなったが、風はほとんど無い状態が続いてるので、そんなに寒くはない。ウェアとしては、ちょうど良い具合だ。それに、集合場所は大勢のランナーが集まって人口密度が高いので、実は寒くはない。
C部門の集合時間は10時40分までだが、その前に10時35分になると、招待選手を始めとするトップランナー達がスタートした。昔はプロ級のランナーも我々一般ピープルと一緒にスタートしてたんだけど、最初だけでも目立とうとしてトップランナーの中に混じって調和を乱す素人ランナーを排除するために、トップランナー達がスタートした15分後に一般ピープルB部門のスタートとなる。そしてさらに10分後に我々C部門がスタートする。なので、いったん集合しても、前の組がスタートするたびに少しずつ移動していく。競技場の大きなモニタースクリーンにはテレビ中継の映像が映し出されている。
スタート時間が迫ってきたので、本日の目標を設定せねばならない。もちろん、どんな時でも、どんなレースでも、大会自己ベストの更新を狙うのが良い子の有るべき姿だ。しかも、この丸亀マラソンは坂の無い高速コースなので、良いタイムを狙いたいのが常だ。
しかしながら、今年の最優先タイムは、自己ベストではなく1時間50分だ。何度も上に書いているように、1時間50分を切れば来年は前のB部門からスタートできるのだ。
一昨年は交通事故明けで2時間を切るのがやっとだったから仕方ないにしても、去年はあと一歩のところで1時間50分に届かず、非常に悔しい思いをしたから、なんとしても今年こそは1時間50分をクリアしたいのだ。
何も、見栄や体裁でB部門からスタートしたい訳ではない。上にも書いたように、C部門には実力以上に速いタイムを申告した虚偽申告ランナーが前の方に紛れ込んでいて、邪魔なランナーが多くて走りにくい。でも厳密な記録証チェックが行われるB部門なら、そういう遅いランナーはいないはずだから、最初からスムースに走れるはずなのだ。
D木谷さんとピッグは、来年は忘れずに早めにエントリーすればB部門からスタートできる。
ゾウさんは女子だから2時間10分をクリアしてれば良いんだけど、3年前には1時間50分をもクリアしているので、堂々とB部門でエントリーできる。のらちゃんも今年は楽勝で2時間を切るはずだから、来年はゾウさんと同じくB部門からスタートできるだろう。
(のら)「2時間切れるかなあ?」
(幹事長)「100%切れるやろ」
のらちゃんとは1週間前に丸亀競技場で一緒に21kmの試走をしたが、400mトラックを53周する間に、私は4周追い抜かれた。
(支部長)「それは幹事長が異常に遅かっただけじゃない?」
このままではC部門からのスタート組の方が少数派に転落するのだ。そんな寂しい事態は何としても回避しなければならない。
(支部長)「もう無理と違う?もう歳やから、我々は1時間50分を切れない体になったんよ」
そうなのだ。実は私も支部長と同じ考えが頭をよぎる。丸亀マラソンに限らず、オリーブマラソンだってタートルマラソンだって、長期的な傾向を見ると、歳と共にだんだん遅くなっている。当然と言えば当然すぎる。当たり前だ。誰が考えたって、もうピークはとっくに過ぎている。なので、1時間50分を切るなんて、もう不可能なのかも知れない。
数年前、タイムが伸び悩んでいたとき「もう歳のせいかなあ」なんて相談したら、「お前のレベルでは歳のせいじゃなくて、単なる練習不足や」なんて厳しくも嬉しいアドバイスをくれた同い年の亀ちゃんでさえ、最近は「もう自己ベストなんて無理かなあ」なんて弱音を吐いているくらいだ。
なので、心の片隅には、もう無理かも知れないっていう弱気を消すことができない。歳はどんどん取っていくから、今年駄目なら、もう永遠に駄目かもしれないという悲壮感さえある。
しかし、取りあえず目標としては1時間50分を是非ともクリアしたい。取りあえず、自己ベストだとか何とか、それ以上のタイムを狙う必要はない。ギリギリでいいから1時間50分を切りたい。
もともと丸亀マラソンのコースは、ほとんど坂が無い日本陸連公認の高速コースだし、気温が低い2月だから、良いタイムが期待できる。
それなのに、私はなぜか坂が非常に多くて厳しいコースの瀬戸内海タートルマラソンの方がタイムが良い。おそらくタートルマラソンは前半から坂が多くて厳しいコースなので、終盤の失速を恐れて序盤からペースを抑えめに走っているため、終盤に失速しない事も多く、結果的に良いタイムが出やすい。一方、丸亀マラソンはほとんど坂が無い高速コースで良いタイムが期待できるため、ついつい調子に乗って序盤からガンガン飛ばしてしまい、結局、終盤に大失速するというワンパターンを繰り返している。
割りと良いタイムを出した時でも同じだ。中盤まで非常に良いペースを維持できてたんだけど、そのペースが実はオーバーペースで、終盤にガクンとペースダウンしてしまったが、トータルではかろうじて良いタイムになった、というものだ。つまり、タイムは悪くないが、理想的な展開とは言えない結果だったのだ。理想的な走り方というのは、序盤は抑えめに走って、後半にペースアップするという展開だ。
なので、最初から無茶に飛ばして終盤に撃沈するという永遠のパターンは絶対に避けたい。
ただ、前半をあんまり抑えて走ってしまうと、いくら後半でペースアップしても、トータルで良いタイムを出すのは難しい。いくらペースアップと言っても、最初をゆっくり走っていたら、そんなに大してペースアップできるはずはない。
(支部長)「前半に飛ばしすぎたらいかん、てのは、無茶に飛ばせる若い人への教訓やで」
(幹事長)「確かに今の我々は、飛ばすと言っても大して飛ばせる訳ではないからな」
そうなのだ。前半に飛ばしすぎると良くないってのは、飛ばそうと思えば無茶に飛ばせる若いうちの話だ。しかし、我々はもうそんなに飛ばすことができなくなっている。どんな短い距離でも、そんなに飛ばすのは無理だ。筋力が弱っているからだ。そんな状態で前半に抑えたペースで走ると、全体的に遅いペースに終始してしまう恐れが強いのだ。
なので、前半は程よく抑えて走らなければならないと言いつつも、多少のリスクを冒してある程度のハイペースで入らなければならない。その加減が非常に難しい。どれくらいのペースで走り出せば良いのかは、永遠のテーマであり、とても難しい。
ただ、今日は風が無いからマシだ。例年なら強い西風が吹いているから、西に向いて走る後半はモロに向かい風になってペースダウンが避けられない。なので、追い風となる前半に風に乗って飛ばして貯金しておく必要がある。しかし今日は西風が無いから後半の失速は避けられるかもしれない。て事は、前半で無理して貯金する必要は無いかもしれない。
これはレース展開としては楽になる。序盤に多少無理して1km当たり10秒とか20秒縮めて貯金していっても、そのせいで終盤に失速して1km当たり30秒とか1分とか大きくペースダウンしてしまったら元も子もない。序盤に無理しなくても良ければ、終盤に失速する可能性も低くなる。
(支部長)「どっちにしても最後の直線区間は失速するんやってば」
支部長は最後の直線区間の直前にある17km地点の給水所の水には毒が入っているから、直線区間に入ったら失速は避けられないと頑なに信じている。そこからゴールの丸亀競技場までの直線部分では、それまでどんなに快調に走っていても、必ず失速してしまうからだ。
確かに、私もこれまで、終盤に失速しなかった事は皆無だ。一度も無い。私は17km地点の給水所では水分を取らないので、毒入り説には否定的だが、失速するのは同じだ。何か秘密が隠されているのは間違いないないだろう。
これがタートルマラソンやオリーブマラソンなら、好タイムを出した時は、たいてい後半の方がペースが速くなっている。オリーブマラソンなんて、前半はフラットで後半に坂が続くから、後半の方が遅くて当たり前なんだけど、好タイムを出した時は必ず後半の方がペースアップしている。だが、丸亀マラソンに限って言えば、後半にペースアップできたことは一度も無い。
なので、総合的に結論を言えば、最初から最後までできるだけ一定のペースで走る、という作戦だ。
(ピッグ)「当たり前すぎて“作戦”とは呼べないですね」
(幹事長)「当たり前な事ほど難しいのよね」
1時間50分を21.0975kmで割ると1km5分13秒くらいだ。でもスタート直後の混雑によるスローペースや給水のタイムロスを考えると、1km5分10秒くらいでは走らなければならない。
て事で、本日の目標は自己ベストなんてどうでもいいから、とにかくトータルで1時間50分、1km当たりのペースで5分10秒を死守することにしよう!
〜 スタート 〜
B部門の選手もスタートし、ゆっくり移動していくと、ようやく競技場の南側の国道に出た。ここからだとスタート地点の表示が見える。以前は、我々の前にスタート地点までにものすごい数のランナーがいたが、既にB部門の人達がスタートしてしまっているので、我々の前のランナーは少なくなっている。混雑が減るという意味では、C部門であってもブロック別のスタートは走りやすい。
風もピタリと止んで、寒くない。こうなると絶好のマラソン日和になってきた。
スタート地点では、昨日のジョギング教室にも来ていた有森裕子がゲストで来ていて、大きな声で声援を送ってくれている。
いよいよC部門のスタートの号砲が鳴り、スタート地点までダラダラと動き始める。
もちろん、今日もウォーミングアップどころか、ストレッチさえ全くやっていない。忘れていた訳ではなくて、我々のように体力の無いランナーにとってウォーミングアップが百害あって一利無しってのは常識であり、さらに最近はストレッチすら無用という説を聞いたので実践しているのだ。なので、この移動はウォーミングアップになる。
みんな一斉にスタートしていた時はスタート地点を越えるまで10分くらいかかったりしてたけど、ブロック別スタートの今日は2分半ほどでスタート地点を越えた。そしてスタートラインを越えたら、割りとすぐに小走りが可能となった。以前はスタート地点を越えてもしばらくは歩くようなスピードだったが、だいぶマシになった。
とは言え、当分は小走り状態だ。ここはウォーミングアップと割り切らなければならない。あちこち身体をぶつけながら他人をかき分けて走っていく迷惑な人もいるが、そんな事をしてはいけない。マナー違反で他のランナーの迷惑になるし、自分だって無駄な体力と精神力の浪費になる。最初の1kmくらいはウォーミングアップと割り切って、ゆっくり走ればいい。
なーんて思いながら走っていると最初の1km地点の表示が見えてきた。時計を見ると5分30秒ほどかかっている。混雑によるタイムロスのせいとは言え、ちょっと時間かかりすぎだ。さすがに、ちょっと焦る。ウォーミングアップ代わりのスローペースとは言え、前の人にぶつからないようにして走らなければならず、思わずブレーキをかけたりしているので、自然に走るより、むしろ筋肉を使っている。これは無駄な体力の消耗だ。
なので、仕方なく作戦を変更して、邪魔なランナーを追い抜いて行くことにした。右へ左へ他人をかき分けながら追い越して走るのは体力と精神力を無駄遣いする割には大してペースアップできないってのは重々承知しているけど、走りにくくて仕方ないから、止むを得ずこまめに他のランナーを追い抜いて少しでもペースアップを図っていく。
次の2km地点で時計を見ると、さっきよりは多少はマシになったけど、まだまだ遅い。せっかく気合いを入れて意気込んでスタートしたのに、出鼻をくじかれている。どんどん借金が貯まっていく。「なんで、こんな遅いランナー達が前の方にいるんだ」って腹を立てながら苦労して追い抜いていく。ますます来年はB部門でスタートしなくてはいけない、って思うのだが、こんなペースで走っていたら基準をクリアできない。
支部長も同じように、我慢できずに遅いランナーをちょこちょこと追い抜きながら、ほぼ同じペースで走ってくる。一方、國宗選手やのらちゃんは賢明にも自重して、周りのペースに合わせて走っているようで、姿を見失った。
次の1kmは丸亀城に向かう直線区間で、混雑も多少マシになってきたため、3km地点で見たラップはようやく5分ちょっとにまで上がってきた。以前は最初の数kmは1km5分を切るペースで走っていたけど、今日はそこまで突っ込んで終盤に撃沈したら元も子もないので、このペースをできるだけ維持して走り続けよう。走っていて快適なペースだ。
なーんて思いながら次の4km地点で時計を見たら、なんと再びラップが悪くなっている。1km5分12秒だったので、1時間50分ギリギリのペースだ。スタート直後のタイムロスあるので、このペースでは借金が返せない。もう少しペースアップしなければならない。て言うか、まだまだ序盤なのに、もっと速く走らなければ話にならない。
慌てて気合いを入れ直して走ったけど、次の5km地点でのラップも同じく5分12秒だ。早くも目標達成に暗雲が垂れ込めてきた。遅いランナーもまだいっぱいいて、本当に邪魔になる。彼らをかき分けながら少しでも前に進む。支部長もほぼ同じペースで、すぐ後を走ってくる。
天候は相変わらず曇りで、走っていると寒くも暑くもなく、風も無いから、絶好のコンディションだ。ここで頑張らなければ未来は無いぞ。
5km地点には最初の給水所がある。混雑しているし、まだレースは始まったばかりで喉は渇いていないので、給水はパスしたいところだ。もともと私の場合、あんまり喉が渇かない体質なので、ハーフマラソンなら給水無しでも全然平気だ。しかも冬場はあんまり汗もかいていないし。しかしながら、最近、気にしているのが足の攣りだ。攣りを防止するためには水分の補給は欠かせない。そもそも「給水は喉が渇いてからでは遅く、早め早めに給水しろ」ってのが鉄則だ。てなことで、今日は最初の給水所から真面目に水分を補給していく。混雑しているので少しタイムをロスするのが痛いところだが、仕方ない。
水分補給してリフレッシュして気持ちを入れ替えて走ると、次の6km地点でのラップはほんの少しだけマシになっていた。とは言え、誤差の範囲だ。でも、次の7km地点でのラップも、また少しだけペースアップしていた。あんまり調子に乗って飛ばしすぎると終盤の失速につながるので気を付けなければならないが、そこまで無理をしている実感は無い。
と思ったら、次の8km地点では再び少し悪くなっている。多少のペースの変動に一喜一憂するつもりはないが、平均して期待したほどのペースにはなってない。このままでは1時間50分は切れない。
次の9km地点の手前には2つ目の給水所があり、まだ喉は渇いてないけど、ちゃんと水分補給する。この水分補給で手間取ったのかどうか分からないけど、9km地点のラップはトンでもなく大幅に悪化していた。スタート直後の混乱期のペースに近い。一体どうしたことだろう。
なんとか頑張ってペースアップしたつもりだけど、それでも次の10km地点のラップは5分12秒だった。もう、やっぱり1時間50分は無理かも。結構、頑張っているつもりなのに、前半で借金まみれだ。絶望的じゃない?
そこから500mちょっと進むと中間点がある。ここでのタイムは55分20秒くらいだった。疲れた頭で必死に計算する。1時間50分まで、あと54分40秒か。それを10.55kmで割ると、1km5分10秒か。ん?なんだ、まだ当初予定どおりか。
って思ったけど、いやいや、この5kmの平均ラップはもっと遅かったから、今よりはペースアップしなければならないんだ。ここまでも頑張ってきたつもりなのに、さらにペースアップなんてできるだろうか。
中間点から少し行くと、折り返し点がある。ここで、すれ違うランナーの中からメンバーの顔を必死で探す。
折り返し点のだいぶ前から、先行しているゾウさんを見つけようと必死で見ていたけど、結局、見つからなかった。たぶん前を走っているはずのD木谷さんも見つからなかった。同じく前を走っているだろうと思われるピッグも見つからなかった。
折り返し点を過ぎて確認すると、支部長がすぐ後を走ってくるのが分かった。まだほとんど差はない。その後の國宗選手は見つけられなかったが、少し遅れてのらちゃんは発見した。と言うか、のらちゃんの方から見つけてくれて声をかけながら手を振ってくれた。僕より3分くらい後だから、このまま失速しない限り2時間を切るのは間違いない。て言うか、とても元気そうなので、ここから僕が失速したら追いつかれるかもしれないくらいだ。
すれ違って後続のランナーを見ると、後から後から、はるか遠く地平線のかなたまで、夥しい数のランナーが走ってくる。かつて制限時間が2時間5分だった頃は、僕らのような劣等生ランナーの後ろには、もうほとんどランナーはいなかったのだが、最近は制限時間が3時間にまで延びたため、色んな人が参加するようになり、僕らのような低レベルのランナーが上位になってしまっている。まるで自分たちが速くなったような気分になれて、大変気持ち良いのだが、参加者が激増したため、知った顔を探すのは困難になってしまった。
例年だと、後半は西向きになり、正面からモロに西風を受けてしまうから、風よけになってくれるランナーを見つけなければならない。同じようなペースで走る大柄なランナーでないと風よけにならないから、なかなかうまく見つからずに苦労する。
でも今日は、風がほとんど無いから、後半の西向きになっても風よけを探す必要はない。なので自分のペースだけを考えて走る事ができる。風が無いから後半に入っても寒さは全然感じない。もちろん暑くもない。コンディションとしては全く悪くなっていない。
折り返してから11km地点と12km地点でのラップはいずれも5分10秒だったので、なんとかギリギリで持ちこたえている。全く貯金は無いが、このまま行ければギリギリで1時間50分ジャストだ。
13km地点の手前には3つ目の給水所があり、ここでもこまめに水分を補給しながら頑張ったつもりなんだけど、13km地点、14km地点、15km地点と再びペースは悪化して、5分20秒近くになっている。やはり後半のペースダウンは避けられないみたいだ。さすがに、もう駄目か。力尽きてしまったか。今年も1時間50分の壁を越えられないのか。もうガッカリだ。
しかし、諦めかけたものの、もう一度、疲れた頭で必死に計算する。15km地点で1時間18分30秒くらいだから、1時間50分まであと31分半くらいだ。これを残り6.1kmで割ると1km平均5分10秒弱だ。結局、あんまり変わっていない。て事は、頑張れば、計算上はまだ目標クリアは不可能ではない。
問題は、既にずるずるとペースダウンしてきているのに、ここから再び一気にペースアップできるのか、という事だ。確か去年も、この時点で、残りを1km5分で走れば1時間50分が切れるという状況だったが、やはり逆にペースダウンしてしまってアウトになった。
でも、今年は去年よりは疲れが溜まっていない。まだ不可能とまでは言えないところで踏みとどまっている。コンディションも最高だ。年齢を考えると、このチャンスを逃したら、もう二度とチャンスは無いかもしれない。こうなったら、もうヤケクソになっても残り6.1kmを必死で走るのみだ。
てことで、気持ちを必死で切り替え、ラストスパートに切り替える。もちろん6kmもスパートが持つはずはないが、行けるところまで行ってみよう。必死で頑張ったおかげで16km地点でのラップは5分ちょっとにまでペースアップできた。こうなると俄然やる気が増してきて、次の17km地点でのラップは5分ジャストにまでペースアップできた。今日、一番速いラップだ。
17km過ぎには最後の4つ目の給水所がある。支部長が毒が入っているという給水所だ。もちろん、こんな終盤になったら給水は必要ない。迷わずパスして走り続ける。
ここからゴールの丸亀競技場までの直線部分は、必ず失速してしまう区間だ。それも少しずつペースダウンするんじゃなくて、毎年、いきなりガクンと大失速する。それまでどんなに快調にペースを維持していても、この最後の直線部分でいきなり大幅にペースダウンするのだ。
この最後の部分は、なかなか自覚できない程度なんだけど、ゆる〜い上り坂になっているが、坂と言っても、たかが4kmで15mほど上がるだけだ。もっと激しい坂があるタートルマラソンに比べてもペースダウンが激しいから、坂が原因とも思えない。とても不思議だが、私だけでなく他のメンバーも一様に最後の直線区間ではガクンとペースダウンしているから、何か秘密が隠されているのは間違い無い。
しかし、今年は気合も違うし疲れ度合いも違う。魔の区間に差し掛かったけど、気にすることなくガンガン走る。
と思いながら走ってたんだけど、気持ちではガンガン走っているつもりなのに、18km地点でラップを確認すると、う〜む、少し落ちている。でも、落ちていると言っても、まだ5分10秒までは落ちてないので、望みは消えていない。
後はもう残り3kmだ。気持ちはますます完全にラストスパートモードだ。
例年なら、気持ちだけはラストスパートモードになっても、実際に時計を見ると大幅にペースダウンしてて愕然とするんだけど、19km地点でのラップは、再び5分ちょっとにまでペースアップできている。例年なら、この辺りまでくると大きくペースダウンして他のランナーにどんどん抜かれていくが、今年は逆に他のランナーをどんどんゴボウ抜きできている。例年なら、自分ではペースアップしているつもりでも、他のランナーが次々と追い越していくので、自分はペースダウンしているってのを痛感させられる区間だが、今日は明らかに余力が残っている。他のランナーがペースダウンしていく中で、なんとか頑張れているので、どんどん追い越せるのだ。このままペースを維持できれば1時間50分をクリアできる。
レース終盤で余力が残っているなんて、珍しいと言うか、気持ちいい。ますます気持ちが充実してきて気合が入り、一段とペースアップできるような気がする。と思ったんだけど、20km地点で見たラップは、かなり落ちていた。それでも、まだ十分に1時間50分をクリアできるタイムだ。
そして、いよいよ最後にコースは道路から競技場の敷地に入っていく。もう絶対に目標を突破しなくてはならないから、短距離走のつもりで必死で走る。たぶん、実際には全然ペースは上がってないんだろうけど、それでも最後まで諦めずに頑張って走った。
〜 ゴール 〜
競技場の中に入り、最後のトラックの直線はゴールゲートを目指して必死に走りこむ。
ゴール後は女子高生が列を作ってハイタッチしてくれるのが嬉しい。
結局、なんとかタイムは1時間50分をギリギリだが切ることができた。良かったーっ!年齢からくる衰えで、もう1時間50分はクリアできないのではないかと心の片隅では諦めかけていただけに、とても嬉しい。
レース前半というか15km地点までのペースは例年通りで、結局、今年も駄目かなと思ったけど、それ以降の終盤にペースアップできたのも嬉しい。丸亀マラソンに出始めてから23年目だが、後半と言うか終盤にペースアップできたのは初めてだ。
もう後がない最大の目標である1時間50分をクリアできたのも嬉しいが、終盤にペースアップできたのも非常に嬉しい。会心のレース展開だ。
終盤に撃沈したパターンの時は、ゴールすると、もう足が動かなくなるが、今日は足は全然大丈夫で、まだまだ走れそうな余力が残っている。後から考える結果論で言えば、これならもうちょっと前半から突っ込んでたら良かったかなあなんて思うが、それはあくまでも終わってからの結果論であり、今日はあんまりリスクは取れなかったから仕方ない。て言うか、今日の目標はあくまでも1時間50分だったので、もっとタイムを上げられたかも知れないけど、そんな事はどうでもいい。
一方、折り返し点まですぐ後を走っていた支部長は、なかなか帰ってこない。いくらなんでも遅いなあと思っていたら、だいぶ遅れてフラフラになって帰ってきた。
そのすぐ後に、のらちゃんも帰ってきた。折り返し点では元気そうだったけど、疲れ果てて、ゴール後は歩くのもやっとだ。去年11月のタートルマラソンでも、折り返し点までは好調だったけど、終盤に失速してしまった。今日も同じようなパターンだが、それでも終盤に大失速したタートルマラソンに比べたら、失速度合いは小さく、タートルマラソンよりタイムを10分ほど縮めた。去年の丸亀マラソンに比べたら、なんと20分もタイムを縮めている。一気に実力アップだ。もちろん2時間を切っているから、女子の基準は楽勝でクリアしているので、来年は一緒にB部門でスタートできる。
國宗選手は、ゴールでは見つけられなかったが、支部長より少し早くゴールしていた。彼も惜しくも1時間50分はクリアできなかった。
ゴール横でみんなを待ってたら、とうとう雨が降り出した。ほんの小雨だけど、天気予報通り降り出した。
この程度の雨なら走ってても何の影響も無いだろうけど、待ってると気になるので、記録証を受け取ってスタンドに戻ると、ゾウさんが既に戻ってきてた。
(幹事長)「どうやった?」
(ゾウ)「去年よりは少し速かったですよ」
タイムを見ると、國宗選手より速かった。結局、ゾウさん>國宗選手>支部長>のらちゃんと、ちょうど1分ずつの違いだった。
ピッグは私より2分半くらい速かったし、D木谷さんはさらにそれより5分も速かった。二人とも去年よりタイムを縮めている。
(幹事長)「なんや。僕だけ良かったんじゃなくて、みんな去年より速くなってるやん」
1分ほどだけタイムを縮めたピッグから20分も縮めたのらちゃんまで程度の差はあるけど、支部長を除く全員が去年よりタイムが良くなっている。何も私だけが健闘した訳ではなく、コンディションが良かったから、みんなタイムが良くなっただけのようだ。
(幹事長)「その中で、ひときわ異彩を放っているのが支部長やな。何があったん?」
(支部長)「例によってアンデルセン状態になったわ」
今日はそんなに暖かいってほどでもなかったが、汗っかきの支部長は脱水症状になり、アンデルセン状態でフラフラになったようだ。確か一昨年も、いつまで経っても帰ってこないなあと心配してたら、風邪が悪化してフラフラでゴールした。この季節は体調管理が難しいなあ。
〜 反省会 〜
レースが終わり、またシャトルバスに乗って臨時駐車場に戻る。道路は渋滞してて、結構、時間がかかった。
(幹事長)「なんでこんなに渋滞してるんや!」
(ピッグ)「あなたも出場した丸亀マラソンの交通規制のせいでしょ」
ゾウさんは子供の面倒を見ないといけないので先に送り届け、残りのメンバーでうどん屋での反省会に繰り出す。たいていのうどん屋は2時過ぎには閉店になってしまうが、もう3時を過ぎてて、選択肢は限られるので、ボチボチのうどん屋に繰り出す。
(幹事長)「何はともあれ、久しぶりに1時間50分を切れたのが嬉しい。今日は反省する事は無いぞ」
(支部長)「いかん。敗因が見つからない。何が悪かったんやろ」
次のレースは、ゾウさんとD木谷さんは例年通り来週の坂出天狗マラソンに出場する。2週連続は大変そうなので、私はパスしたが、彼らはエネルギーが溢れているから大丈夫だろう。
また、同じ日に、ピッグは愛媛マラソンに出る。愛媛マラソンはかつてはエリートランナーしか出られなかったが、今は広く開放され、誰でも出場できる。
一方、私はその翌週の海部川風流マラソンに出る。毎年出ているD木谷さんのほか、今年は支部長と國宗選手も初出場する。海部川風流マラソンは好タイムが出やすいと評判のレースで、D木谷さんもピッグもフルマラソンの自己ベストは海部川風流マラソンで出したものだし、私も去年、初めて出て良いタイムを出せた。今日の丸亀マラソンで久しぶりに良いタイムが出たので、海部川風流マラソンでも再び良いタイムを出したいぞ。
さらに、その翌週は私とのらちゃんは山岳部を代表して善通寺五岳山で開催される五岳山空海トレイルというトレイルランニングのレースに出る。去年から始まったトレラン大会で、距離は15kmに過ぎないが、累積の標高差が1300mもあるのに制限時間が3時間20分という、なかなかハードな戦いだ。
て事で、この時期はマラソンシーズン真っ盛りなので、みんなスケジュールが立て込んでいるが、今日の勢いで頑張ろう!
(支部長)「わしゃ、いかんがな」
〜おしまい〜
![]() 戦績のメニューへ |