第22回 北山林道駆け足大会
2023年6月4日(日)、高知県津野町において第22回北山林道駆け足大会が開催された。
津野町と言われてもピンとこないが、旧葉山村だ。
この北山林道駆け足大会は2016年に高知のおんちゃんから誘われて初めて参加し、それ以来、2019年まで4年連続で出場していた大会だ。
おんちゃんに教えてもらうまで聞いたこともなかった超マイナーなレースだが、本当にめちゃ楽しいレースなので、もう出ない訳にはいかない。
名前からして「北山林道駆け足大会」だなんて聞いただけでもそそられる。「林道」で「駆け足大会」とくれば、もう、怪しさ爆発だ。
しかも定員500人てことは、完全なる草レースだ。ランネットでエントリーできないのはもちろん、ネットで調べても、情報はほとんど出てこないような超マイナーな草レースだ。
怪しいマラソン大会には目がない我々としては、見過ごすわけにはいかないレースと言える。
〜 山の中を駆け巡る超激坂コース 〜
この大会に最初に誘ってくれた高知のおんちゃんは実力者で、四万十ウルトラマラソンの100kmの部にも出ており、どちらかと言えば、坂のある厳しいコースが好きなM系ランナーだ。
そういうハードコア系ランナーから誘われたレースなので、最初は恐る恐るの参加だったが、誘ってくれて本当に良かったと思える楽しいレースだ。
何が楽しいかと言えば、コースが超面白いのだ。このレースは名前も怪しいが、そのコースはトンでもないものだ。
距離は12.8kmしかないから、マラソン大会としては短いと言える。しかし、最初3kmほど平坦な道を走って林道に入ると、いきなり極端な急登となる。
パンフレットの図面には、上り勾配は10%と書いてあり、それだけでも厳しいが、これは平均の勾配であり、当然ながらもっと急な部分もある。実際のところ、何度あるのかは分からないが、とても厳しい坂だ。
急登が終われば山の中腹の道を走るが、そこも決して平坦ではなく、かなりアップダウンがある。
そして中腹の道が終われば下りになる。下り勾配は19%なんて書いてあり、これだけでもトンでもなく急な下りだが、もちろんこれも平均の勾配であり、当然ながらもっと急な部分がある。
まさに転がり落ちるように走って下るようになる。
激坂の下りが終われば最後は少しだけ平坦な道が残っているが、基本的には急な坂道を上がったり下ったりするのがメインのマニアックなコースだ。
道は全て舗装されているからトレイルランとは異なるが、アップダウンで言えば、まるでトレイルランのようなコースであり、普通のマラソン大会ではない。
こう書くと、とても厳しいレースで、楽しめるようなレースではないと思うかもしれないが、これが実に楽しい。2016年に初めて参加した時は、恐る恐るの出場だったが、予想をはるかに上回る楽しいレースだった。
上り坂はあまりに激し過ぎるから、辛いと言うより笑ってしまい、むしろ楽しく感じられる。それに、厳しいと言っても、所詮、激しい上り坂の区間は3kmほどしかなくて、それが分かっているからペース配分なんか考える必要が無く、とにかくがむしゃらに子供みたいに走ればいい。
終盤は下り坂が続いて、思いっきり駆け下りるのも楽しかった。
コース全体でも距離は13km足らずだから、ペース配分なんて考える必要がなく、最初から最後まで全力で走ればいいので、本当に楽しい。
こんなに面白くて楽しいレースは久しぶりだった。あまりに楽しいから、ゴールする時は顔がニコニコしてしまう。
当時は上り坂が苦手だった支部長でさえ、上り坂の急勾配区間では歩いたものの、下り坂は他のランナーをごぼう抜きして、嬉しそうにゴールした。
考えてみれば、我々はもともと山岳マラソンには慣れている。2005年に高松市に合併吸収されるまで塩江町で毎年開催されてい た塩江マラソンは距離はハーフマラソンで、最大標高差350m、累積の獲得標高550mの山岳マラソンだった。
今はなき四国カルストマラソンもハーフマラソンで、標高1000mを超える高原を走る山岳マラソンだった。マラソンブームなんて来る以前は、マラソン大会なんて平地ではなかなか開催できなかったから、山間部での開催が多かったのだ。
それに比べれば北山林道駆け足大会は最大標高差は300m程度なので未知の世界ではない。
それに、塩江マラソンは急勾配の坂を下りてからも延々とフラットなコースが続いて足が棒のようになって撃沈するのが常だったが、このレースは距離が短く、急勾配の坂を下り終えて少し走るとゴールとなるので、走りやすく楽しい気持ちのままゴールすることができる。
また最近は、四国のてっぺん酸欠マラソンだとか龍馬脱藩マラソンのように、もっと極端に激坂が続くレースにも出ているので、この北山林道駆け足大会は苦しさではなくて楽しさしか感じないイベントとなっている。
激坂だけでなく、コースレイアウト自体も魅力的だ。マラソン大会のコースと言えば、折り返し点で折り返して往復するコースが一般的だが、この大会のコースは山の中をグルッと回って一周するという周回コースだ。
山の中をグルッと一周するってのが探検的で面白いし、山の上は見晴らしが良いし、なんとなく遠足しているような気分になれる。
さらに、この大会はレース後の抽選会が楽しい。
このお楽しみ抽選会は、大会主催者の葉山ランニングクラブの中山さんが村内きっての有力者で、町内のあらゆる商店から寄付をかき集めてくるため、景品がめちゃめちゃ多くて多彩だ。
ランニングシューズから始まり、扇風機やピクニックチェアなど、普通の抽選会では出てこないような大きな景品が色々と出てくる。釣りたての鮎なんかもいっぱい出てくる。
そして景品の数が多いから当選確率が異常に高い。
おんちゃんから聞いて楽しみにしてたんだけど、2016年に初参加したときは参加メンバー5人中4人が当選するという高確率だった。景品も、私とピッグはミカンだったが、ヤイさんと小松原選手はビール24本入りケースという豪華景品だった。
続いて2017年も3人中2人が当選し、2018年は参加した3人とも何も当たらなかったが、2019年は4人中2人が当選したから、やはりかなり高い確率で当たるのは間違いない。
〜 6月の貴重なレース 〜
このように、とても楽しいマラソン大会だが、それに加えて、開催時期も貴重だ。
一般的にマラソン大会は秋から冬、せいぜい初春までに開催される。気温が低い季節の方が走りやすいからだ。
5月末のオリーブマラソンは、既に時季外れの大会であり、今年のように天気が良いと炎天下の厳しいレースになる。
そのため、一般的には6月から9月にかけてはマラソン大会の閑散期になり、出場できるレースが少なくて困ってしまう。なので6月に開催される北山林道駆け足大会は、とても貴重な大会だ。
なぜか四国においては、高知には夏場のマラソン大会がある。この6月の北山林道駆け足大会のほか、7月には汗見川マラソンが、9月始めには四国のてっぺん酸欠マラソンが、10月始めには龍馬脱藩マラソンが開催される。
これらが開催される5ヵ月もの間、他の県ではほとんどマラソン大会は無い。暑いからだ。
なぜ他ではマラソン大会が無いような暑い時期に高知でだけマラソン大会が頻繁に開催されるかと言えば、高知の山の中は標高も高いし、夏場でも涼しいと思われがちだからだろう。
もちろん、これは完全なる事実誤認であり、実際にはいくら高知の山の中と言っても、夏は暑い。とっても暑い。2007年の汗見川マラソンなんて、開催された日の日本の気温は、レースが開催された高知県本山町が全国で一番暑かったという、トンでもない状況だった。四国の山の中は暑いのだ。
でも、暑いとは分かっているが、6月に開催される貴重なレースだし、コースもとっても面白そうなので、おんちゃんからお誘いがあった時は即答で飛びついた。
ところが、いざ申し込もうとして困った。いくら探しても申込先が全然分からないのだ。超マイナーな草レースだからネットで申し込めないのは当然だろうけど、津野町のホームページにも情報が無い。
いったいどういうことだろうと思っておんちゃんに問い合わせてみると、「葉山ランニングクラブの中山さんか津野町教育委員会に電話してみて」との返事だった。
葉山ランニングクラブがどういう団体なのか分からないが、電話しようとしても高知の山奥だからか電波が通じない。
それで津野町教育委員会に電話したら優しそうなお姉さんが出てくれて、すぐに話が通じて申込書を送ってもらった。一度参加すると、翌年からは申込書が送られてくるようになった。
ネットでエントリーできないってのは、今どき不便だが、逆に、それだからこそ我々に取っては参加しやすい大会だ。
参加者が少なくて大会の存続すら危ぶんでいた汗見川マラソンは、ランネットでエントリーできるようになったら、あっというまに人気の大会となってしまい、エントリーするのが至難の業になっている。
定員1300人の汗見川マラソンですらそうなのだから、定員僅か500人の北山林道駆け足大会がネットで申し込めるようになったら、1分くらいで定員いっぱいになるだろう。そうなると、なかなか簡単にはエントリーできなくなってしまう。
現状のように、ネットでは情報すらほとんど得ることができないマイナーな状態だからこそ、知ってる人だけが参加できる居心地の良い大会になっているのだ。
なぜいつまで経ってもネットでエントリーできないマイナーな状態が続いているのかと言うと、なんとこの大会は実質的に個人がやっているのだ。
名目としては主催者は葉山ランニングクラブとなっているが、どう見ても、この葉山ランニングクラブは会長の中山さんが一人で切り盛りしているような感じだ。津野町の教育委員会も全面的に手伝っているものの、基本的に行政は主体ではない。
行政が主体でない民間のマラソン大会なんて存在は極めて珍しい。そして、それが今年で22回も続いているなんて驚きだ。
運営は完全にボランティアだろうと思うけど、小さい村でこんなに大勢のボランティアを動員できるって、すごい。本当に地域に根付いたイベントになっている。
また、小学校の体育館を会場に使っているし、行政と一線を画しているとは言え、小さな山村のことなので、住民が一体となって開催しているのだろう。
すべては中山さんの力だろうと思うけど、中山さん自身は、ランニングできるような体型ではない。昔はやっていたのかも知れないが。
て事で、2020年もとてもとても楽しみにしていた。
それなのに、ああ、それなのに、なんと2020年は新型コロナウイルス騒ぎのせいで大会が中止になってしまった。
このマラソン大会の中止騒動は全国的なもので、日本中のあらゆるマラソン大会が次々と中止になっていった。
これらのマラソン大会中止騒ぎってのは、どう考えても、あまりにも非科学的で情緒的でヒステリックな対応だ。
素人が見たら、マラソン大会ではランナーが密集しているように見えるかもしれない。しかし、毎日乗っている満員電車に比べたら、はるかにスカスカだ。そうでないとぶつかって走れない。
しかも密室の満員電車に比べて、屋外のマラソン大会はウイルスが蔓延できる環境ではない。新型コロナウイルスは感染した人の咳やくしゃみの飛沫による飛沫感染でうつっていくが、飛沫感染は屋外で走っている時に感染なんかしない。
多くの国民が新型コロナウイルスを非常に恐ろしいもののように勘違いしていたが、決して、エボラ出血熱のように極めて致死率の高いウイルスでもなければ、風疹のような感染力の強いウイルスでもない。
多くの国民がヒステリックに踊らされていたのは、視聴率さえ稼げればいい下品なマスコミがキチガイみたいに煽り立てるのと、新型コロナウイルスの新規患者数をゼロにしようなんていう狂信的な妄想に取り憑かれた医療関係者の独善のせいだ。
このようなヒステリックな動きに対抗するため、我々はマラソン大会を自主開催する事にした。その第1号が、3年前の第43回オリーブマラソンだった。
それ以降、中止になったマラソン大会はことごとく開催を続け、北山林道駆け足大会も2020年の第22回大会から始まって2021年の第23回大会、2022年の第24回大会と3年連続で自主開催を続けてきた。
そして4年目の今年になって、ようやくコロナのバカ騒ぎが収束し、全国的にマラソン大会が復活し始めた。
国民の多くが理解するまで3年もかかったが、ようやくコロナなんてただの風邪に過ぎないっていう理解が進んできたからだ。
そして、この北山林道駆け足大会も4年ぶりに復活となったのだ。まことに喜ばしい限りだ。めでたいめでたい。
なお、今回の大会は第22回大会と銘打たれている。これは間違いではない。最後に開催された2019年の大会は第21回大会だったからだ。
しかし本来なら、中止になった2020年の大会が第22回大会のはずだった。なので、自主開催した2020年大会をこのホームページでは第22回大会と銘打ち、その後も自主開催した2021年の大会を第23回大会、2022年の大会を第24回大会と銘打ってきた。
それから数えると今回は第25回大会になるはずだったが、正式な本大会が第22回大会と銘打って開催されるので、このホームページでも第22回大会とする。
(幹事長)「第22回大会が2つできてしまったので、ややこしいが仕方ない」
(ピッグ)「だーれも気にしてないと言うか気付いてないですよ」
「今年は久しぶりに開催しますよ」っていう案内は、毎年参加してきた私たちには送られてきたが、それを待っていたら定員500人は埋まってしまう可能性があるので、ホームページに情報が掲載されたら、すぐに郵便局から参加費を振り込んで、参加者全員分をまとめてエントリーした。
今年の参加者は私のほか支部長、ピッグ、D木谷さん、のらちゃんのほか、新鋭のO野選手だ。
私と支部長とピッグは2016年から2019年まで本番に4年連続で出場している。一方、D木谷さんは自主開催に参加し続けているのでベテランのような気がするが、実は正式な大会には出た事が無い。
(D木谷)「3年連続で走りましたが、実は本番は今年が初めてなんですよね」
またのらちゃんも2年連続で自主開催には参加しているが、本番の正式な大会は初参加だ。
(のら)「初めてだからドキドキするよう」
(支部長)「怖いもの無しの女王様が何をおっしゃいますか」
O野選手は自主開催も含めて全くの初参加だ。それどころか、彼は最近までランニングなんて全くやった事が無かった。
それが4月の笑って走れば福来たる駅伝に参加する事になったため慌ててトレーニングを始めたらしい。笑って走れば福来たる駅伝なんてお遊び100%のユルユル大会なので、本来は何のトレーニングも不要だ。
(幹事長)「そうだよな?」
(ライオン4世)「仰せの通りでございまする」
ライオン4世なんて1月の満濃公園リレーマラソン以来、一歩も走った事がないまま出場したくらいだ。
それなのに、真面目なO野選手は何か勘違いしていたようで、とても真面目に取り組み、当日もとても真剣に走っていた。そして、なんと、それがきっかけで彼はランニングに目覚めてしまったのだ。
それで、その後、エントリー受付が開始となったこの北山林道駆け足大会や7月末の汗見川マラソンや11月の下関海響マラソンなど、我々が参加するマラソン大会にことごとくエントリーしているのだ。
てな事で、まともなマラソン大会としては、この北山林道駆け足大会が彼のデビュー戦となる。
(支部長)「これって、まともなマラソン大会と言える?」
(幹事長)「あんまりまともではないな」
(O野)「え?どうゆう事ですか?」
(幹事長)「走れば分かる」
〜 ルールの変更 〜
送られてきた案内には、今年はいくつかの変更点があるとの事だ。
1.開催日:これまでは第2日曜日だったが、今年は第1日曜日に開催する。
2.会場:これまでは葉山小学校だったが、今年は葉山運動公園総合センター体育館で行う。
3.スタート地点はこれまでと同じ三島様前だが、ゴール地点はこれまで葉山小学校横だったのを、スタート地点と同じ三島様前にする。
このため距離が12.2kmに短縮される。
4.開会式は行わない。
5.閉会式は上位3位までのランナーだけで行う。
6.抽選会は従来のようにみんな集まって行うのではなく、ゴール後に選手が各自くじを引いて、当たれば景品と交換する。
7.昼食は無しにする。
といった所で、かなり変更点が多い。
その理由として「コロナ対策で変更した」と説明がある。
ただ、
・コロナ対策でなぜ第2日曜日から第1日曜日に変更されたのかは理由が不明だ。謎だ。ま、これはどっちでも良い事なので別に構わない。
・会場が変更になった理由もよく分からない。コロナ感染を防ぐという意味では、葉山小学校の体育館でやろうが葉山運動公園総合センターの体育館でやろうが別に変わりはないと思う。ま、これもどっちでも良い事なので別に構わない。
・ゴール地点が変更になったのは、これまでは葉山小学校の体育館が会場だったから、その横をゴール地点にしてたんだけど、今回は会場が葉山運動公園総合センター体育館に変わったので、そちらに近いようにゴール地点を変更したのだろう。
これまでは、スタート地点まで戻ってきてから、さらにゴール地点まで500mくらい余計に走らされていたが、これがなかなかしんどかったので、無くなったのは悪い事ではない。
・開会式を行わないのや、閉会式を表彰対象者だけに限るってのは、密を避けてコロナ感染を防ぐためなんだろう。
・抽選会も、コロナ感染を防ぐために、これまでのようにみんなが集まって行うのを止めたのだろう。
でも、開会式はさほど重要ではないが、お楽しみ抽選会まで無くなったのは、とてもとても寂しい。
このマラソン大会の楽しみの半分は、お楽しみ抽選会であり、みんなものすごく盛り上がっていたのに、それが無くなるのは寂しい限りだ。
・昼食はこれまで地元のおばちゃん達が作ってくれていたんだけど、これもコロナ感染を防ぐために無くなったんだろう。とてもとても寂しい限りだ。
世の中では、ようやくコロナなんてただの風邪に過ぎないっていう理解が進んできたんだけど、まだまだ恐れている人も多いのだろう。
ただ、この大会は葉山ランニングクラブの中山さんがボランティアと一緒に一生懸命手作りで開催している大会なので、文句を言ってはいけない。
開催してくれるだけで感謝しなければならないのだ。
(幹事長)「感謝の気持ちを忘れたらいかんよな」
(支部長)「いつも文句ばっかり言ってる幹事長にしては珍しいな」
〜 津野町へ出発 〜
今年はピッグが車を出してくれて、我が家には5時頃に迎えに来てくれた。
こんな早朝に出るとなると、4時には起きないといけないが、高齢化してきたので、それくらいの早起きは許容範囲だ。
その後、みんなを拾いながら最終的に6時頃に丸亀を出発した。
葉山村は高知の山の中とは言え、須崎市までは高速で行けるので、2時間ほどで着くから、6時に出れば8時頃には着いてしまう。スタートは10時だから随分、早い到着になる。
しかし、遠方のレースの場合は、途中で何かトラブルでもあると遅刻するので、早めに出なければならない。
事実、2018年は、途中まで順調に進んだが、途中で交通事故のため高速道路が通行止めになっていて、一般道路を迂回させられたため、予定より1時間ほど遅れてしまった。また、2019年2月の海部川マラソンでも、工事している区間があって、トンでもない渋滞となり、やはり予定より1時間ほど遅れてしまった。そういう事があるので、用心して早めに出るのだ。
レース当日の事前の天気予報はかなり微妙だった。超大型の台風2号がやってきたからだ。台風が北寄りに進むと高知は直撃される。いくら台風慣れしている高知と言えども、超大型台風の直撃となると中止に追い込まれる可能性が高い。
そもそも、このレースは開催時期が梅雨どきであり、開催場所が雨の多い高知なので、初参加の時から3年連続で、毎年、雨が降っていた。
2016年は、かなり激しい雨が降っていて、屋外に出るのが躊躇われるくらいの雨だったし、2017年もかなりの雨が降っていたし、2018年も小雨が降っていた。
2019年は初めて雨が降らなかったが、この時期に高知で開催されるマラソン大会は基本的に雨の中のレースになる事を覚悟しなければならない。雨が前提だ。
ただし、今の我々は雨を恐れていた昔の我々ではない。昔の我々なら、雨のマラソン大会なんて走る気が起きなかった。朝から雨が降っていると、空を見上げながら連絡を取り合って、結局、みんな揃って欠場って事も多かった。
しかし、2010年のオリーブマラソンで考えが変わった。その日は朝からものすごい土砂降りの雨だったので、みんなで欠場の相談をしていたら、我がペンギンズのエース城武選手から「雨がどうしたんですかっ!何を考えてるんですかっ!」と一喝され、渋々参加した。
ところが、土砂降りの雨は、走りにくいどころか、気温が低くなって走りやすくて、後半の大きな坂も全然、苦にならず、最後までペースダウンすることなく、というか、坂が多い後半の方がペースアップしてタイムが良くなるという考えられないレース展開でゴールし、2時間を大幅に切る大会自己ベストとなった。
私だけでなく、ピッグも支部長も快走した。それ以来、暑い季節には、むしろ雨を好むようになったのだ。
この北山林道駆け足大会においても、初参加の2016年には、主催者の中山さんが「雨が降って絶好のマラソン日和になりました」って言ってたけど、この時季は雨でも降らないとマラソンには暑すぎて、討ち死に間違いなしになるので、雨の方が大歓迎だ。
特に、極端に汗っかきで暑さに弱い支部長は隠れて雨乞いをしているくらいだ。
だが結局、台風2号は南寄りの進路をとり、また速度も速まった。そのため、木曜日や金曜日は激しい雨が降ったものの、前日の土曜日から晴天に変わった。今日も引き続き朝から晴天だ。
今年は満濃公園リレーマラソンと言い丸亀マラソンと言い坂出天狗マラソンと言い善通寺五岳山空海トレイルと言い徳島マラソンと言い笑って走れば福来たる駅伝と言い富士五湖ウルトラマラソンと言い小豆島オリーブマラソンと言い、私が出たマラソン大会はことごとく良い天気に恵まれていた。
(幹事長)「ここまで続くと超常現象としか言いようがない。どう考えても私の人徳のおかげじゃろ?」
(支部長)「いやいや、今の時期になると、晴天は決して望ましいものではないぞ」
確かに、この時期になると晴天だと炎天下で暑くなるので必ずしも望ましいとは言えない。そういう支部長の希望を反映して、先週の秋吉台カルストトレイルランでは曇り空にした。
(のらちゃん)「幹事長が天気を変えてるの?神様?」
(幹事長)「知らんかったのか?」
(支部長)「ほな、今日も曇りか雨にしてよ!」
かつては苦手だった上り坂を克服した支部長に勝つには、炎天下のレースになって支部長が自滅するのを待つしか無い。なので、今日は炎天下になるのが望ましい。
(支部長)「自分やって炎天下になるとヘロヘロになってるやんか」
(幹事長)「炎天下にヘロヘロになって走るのが大好きなんよねえ」
(D木谷)「変わってますねえ」
もちろん、暑くなるとタイムは悪くなる。肌寒い時の方がタイムは絶対に良い。
でも、好き嫌いで言うと、寒いのは嫌いで暑いのは大好きだ。なので炎天下のレースは大歓迎だ。
高知へ行くには高速道路を飛ばして四国山地を越えて行くんだけど、毎年、いくら瀬戸内海側が快晴でも、高知の山の中に入っていくと、だんだん天気が怪しくなってきて、空には雲が立ちこめ、そして遂には雨が降り始める。
今日も、あれだけ瀬戸内海側は晴れていたのに、四国山地のど真ん中に入ると空は霧が立ちこめていた。
でも、四国山地を抜けて太平洋側に出たら、やっぱり晴天だ。期待した通り炎天下のレースになりそうだ。
スタート時刻を考えると、そろそろ車の中で朝食を食べなければならない。
トイレの事を考えると、家を出る前に朝食を食べてトイレを済ませたいところだが、いくら早起きが苦痛でなくなったとは言え、普段よりだいぶ早い時間に朝食を食べるとお腹を壊す可能性が高いので、家では食べず、車の中で食べるのだ。
朝食はおにぎりだ。以前はレース中にお腹を壊すことが多かったので、用心して朝食と一緒に下痢止めの薬も飲んでいたが、2015年の徳島マラソンから朝食を菓子パンからおにぎりに変えてみたら、その後はお腹を壊さなくなった。
パンに含まれるフルクタンという糖類は消化に悪く、下痢になりやすいが、お米に含まれている糖類は消化が良いので、おにぎりを食べれば、もう下痢を心配する必要は無いのだ。
なーんて、すっかり油断してたら、なんと2020年の高知龍馬マラソンでは5年ぶりにレース中にお腹を壊して20分もトイレにこもってしまった。さらに2022年の神戸マラソンでも、29km地点でトイレに駆け込み、大幅にタイムをロスしてしまった。
原因は分からない。でも、少なくともおにぎり路線が悪い訳ではないだろう。おにぎりの他に、バナナやゼリーも食べたりしていたから、それらを控えるべきかもしれない。また、レース中に調子に乗ってエイドで色々食べ過ぎるのも良くないかもしれない。
今日も一応、ゼリーも持ってきたが、これはスタート前に必要に応じて食べることにする。
〜 会場に到着 〜
その後も順調に高速道路を走って須崎西インターで下り、道の駅かわうその里すさきでトイレ休憩を取り、予定通り現地には8時過ぎに到着した。
これまで会場は葉山小学校の体育館だったが、今年は葉山運動公園総合センター体育館に変わったので、そちらに行く。
場所は葉山小学校からさらに少し西に行ったところにあった。
車から降りて外に出ると、まだ8時だがかなり強い日差しで暑い。空を見上げると、少し雲も出てはいるが、基本的に晴れており、どんどん暑くなりそうだ。
(幹事長)「今日は間違いなく炎天下のレースになるぞ。ワクワク。楽しみ楽しみ」
(支部長)「もう帰ろうかなあ」
体育館に入って受付すると、パンフレットや参加賞やゼッケンなんかが配られた。
ゼッケンにはタイム計測用チップが付けられていた。一般的なタイム計測チップとは形状が異なり、柔らかな発泡スチロールのような物が2つ貼り付けられている。どういう性能なんだろう?
ただ、いずれにしても、この超マイナーな草レースでタイムをチップで計測する必要性は無いと思う。距離は12.2kmという他に例を見ない中途半端な距離だし、コースは斜度が19度もある過激な山道だし、こんなレースのタイムなんて何の参考にもならないので、タイムなんて適当で構わない。
なので、以前のようにゴール地点でスタッフが横目で時計を睨みながらタイムを計測してくれるので十分だし、あるいは各自が自分の時計で計測する自己申告制度でもいいくらいだ。
しかも、計測チップと一緒に、以前と同じように無記名の完走証が最初から配られている。自分で適当に名前を書き込む完走証だ。
タイムはチップで正確に計測しながら、完走証は自分で適当に書くってのは、どういう趣旨なんだろう?
参加賞は、以前と同じように、今年もバスタオルだ。これまでに4枚もらったとものと全く同じバスタオルだ。たぶん大量に発注しているのだろう。
このバスタオルはフカフカで、なかなか使い心地が良いので重宝している。
パンフレットを見ると、定員は例年通り500人だったが、参加者は女子62人、男子264人の計326人だった。コロナ騒ぎの影響で、まだ参加者数が少ないのかもしれない。
受付ではさらに5年連続完走記念という事で木製のうちわを頂いた。今年はまだ走る前だが、完走が前提のようだ。素晴らしい。
一緒に5年連続で出ている支部長ももらった。ところが、一緒に5年連続で出ているピッグはもらえなかった。
(幹事長)「なんで?」
(ピッグ)「住所が変わったからでしょうか」
そんな事ってあるだろうか。手作りの小さな大会だから、あるかもしれない。名前と住所で管理しているのだろう。
体育館の中程に陣取ったが、かなり空いている。以前は、同じような時間に到着しても、ほぼ満員状態だったが、今日は空き空きだ。
体育館が以前の葉山小学校の体育館に比べて少し広くなった事もあるだろうけど、それにしても空き空きだ。参加者が少し減ったせいだろうか。
腰を据えたら、すぐにおんちゃんから連絡が入る。我々も早めに着いたと思っていたが、おんちゃんはさらに早々に来ていたそうだ。
(幹事長)「調子はどうですか?」
(おんちゃん)「十分に練習したから今日は調子良いかな」
(幹事長)「どれくらい練習したんですか?」
(おんちゃん)「この1ヶ月で450km走ったよ」
(幹事長)「450km!?」
(支部長)「450km!?」
(ピッグ)「450km!?」
(のら)「合わせて1350km!?」
私や支部長は、一番熱心に練習した時でも300kmが限界だった。毎日10km走っても1ヶ月で300kmだ。毎日走る場合、10km以上は走れない。しかも雨や登山やらで毎日は走れない。なので、300kmが限界だ。
450kmも走るとなると、毎日欠かさずに15km走らなければならない。絶対に無理だ。
〜 準備 〜
落ち着いたところでウェアの選択に入る。「何を着るか」は、どんな季節のマラソン大会であっても最も重大な課題だ。
寒いのは大嫌いだけど、暑くなるとバテてしまうから避けなければならない。今日は炎天下になりそうなので暑さ対策が重要だ。
て事で、今日はオリーブマラソンでも着た袖無しのランニングシャツを選択した。
時々オリーブマラソンで着ている秘密兵器のメッシュシャツほどではないが、このシャツも背中側は少しメッシュになっているし、袖も無いから、普通のTシャツに比べるとかなり涼しい。
下は、青森勤務時代に作った陸上部のユニフォームのランニングパンツだ。短くて軽いので、これを着ると非常に走りやすく、これを着たときは、たいてい好タイムを記録している。
ただ、あまりにも短いので、ちょっと恥ずかしい。
(D木谷)「そのランパンはセクシーですねえ」
(のら)「かなり際どいよ」
自分でも、ほとんど何も履いてないような感覚だ。ちょっと恥ずかしいが、久しぶりに履いてみる事にした。
筋肉の疲労防止のために、寒い時期ならタイツを履き、暑い時期には脹脛サポーターを履くのが常だが、このランパンには脹脛サポーターは似合わないような気がしたので、今日は履かない事にした。
(のら)「そういう問題なの?」
(幹事長)「今日は距離も短いから要らないかなと思って」
(支部長)「舐めとんか」
一方、あれだけ暑さに弱い支部長はタイツを履いている。
(幹事長)「それ暑いやろ?」
(支部長)「どっちにしても暑いから同じや」
さらに支部長は、あれだけ暑さに弱いというのに、汗を拭くために手袋も履いている。
私は汗を拭くためのハンドタオルと、お腹を壊した時の緊急事態に備えてポケットティッシュをポケットに入れようとした。
(幹事長)「いかん!このランニングパンツはポケットが無い!!」
(支部長)「パンツの中に入れるしかないな」
(幹事長)「ひえ〜」
仕方なくティッシュペーパーとハンドタオルをパンツの中に入れる。D木谷さんも、履いているタイツ生地の短パンにはポケットが無いそうで、スマホをパンツの中に入れている。
炎天下だけど、木陰も多いので、嫌いなランニングキャップは被らない。他のメンバーは全員、キャップを被っているが、私は嫌いなので、よほどの炎天下でない限り被らない。
(支部長)「今日は、よほどの炎天下やろ」
今日みたいに晴れている時はサングラスも重要だ。眩しいからと言うより、歳とってくると紫外線による目への悪影響が強まって白内障の危険性が出てくるので、サングラスをかけるようにしている。
と思ったんだけど、サングラスをかけると汗が拭きにくくなるし、木陰も多いコースなので、散々迷った結果、今日はサングラスはしない事にした。
最後に日焼け止めクリームを顔から肩から腕から足にかけて塗りたくる。4月の富士五湖ウルトラマラソンで、炎天下で9時間以上も走ったら、腕の皮が日焼けしてボロボロ剥けてしまったからだ。
そして、シューズはオリーブマラソンでデビューした秘密兵器の新しいシューズマジックスピードだ。
レース用のシューズとして一昨年の暮れにアシックスのハイパースピードを買った。これは足にとてもフィットして走りやすく、良い感じだと思っていた。だけど、この頃、タイムは悪くなる一方だ。
(支部長)「それはシューズのせいではなく老化が原因やな」
(幹事長)「やっぱり?」
とは言え、同年代の支部長はここのところタイムは全く落ちていない。
その支部長が最近、ナイキのフライ5とどちらにしようか迷ったあげくアシックスのマジックスピードを買った。また、同時期にD木谷さんもマジックスピードを買った。
そして二人とも口を揃えて「足が勝手に前に前に進む」なんて言う。まさにマジックなスピードが出ると言うのだ。
ところが、同じように新しいシューズを求めていたのらちゃんはマジックスピードではなくアシックスのノヴァブラストを買った。そして「クッション性が良くて足が疲れない」なんて言う。
アシックスの説明を読むと、ハイパースピードやマジックスピードはサブ3.5ランナー向けだが、ノヴァブラストはサブ5を目指す初心者ランナー用みたいな位置づけだ。
そのため、のらちゃんが強く勧めても半信半疑というか、ほとんどゼロ信全疑だったんだけど、一緒に30km走なんかをやっていると、私が終盤に足が疲れてペースダウンする横で、彼女は一気にペースアップしたりするのだ。
もしかして、これは本当に疲れを軽減するシューズかもしれないと思い、のらちゃんに騙されたと思って同じノヴァブラストを買った。
そして、そのノヴァブラストを履いて徳島マラソンを走ったら、八ヶ岳への雪山登山から下山して、そのまま夜通し車を運転して前日に帰ってくると言う超強行スケジュールのため、疲労と睡眠不足でボロボロ状態だったにもかかわらず、最後まで足があまり疲れず9年ぶりに大会自己ベストを更新するという予想外の健闘を見せた。
ノヴァブラストはマジックスピードのようにスピードが速くなるシューズでは決してないが、足が疲れないため、いつものような終盤のペースダウンが避けられたのだ。
フルマラソンでも十分に威力を感じたので、フルマラソン以上の距離を走るウルトラマラソンには打ってつけシューズだと期待して富士五湖ウルトラマラソンでも履いたら、やはり最後まで足が疲れずに楽しく完走できた。
て事で、フルマラソン以上の長距離を走る時にはクッション性が良くて足が痛くならないノヴァブラストが最適だと思う。
ただ、ノヴァブラストはイマイチ、スピードが出ないような気がしたので、ハーフマラソンまでの短い距離を走る時のためにマジックスピードも買ったのだ。
ところが、そのマジックスピードのデビュー戦となったオリーブマラソンでは久しぶりの大惨敗を喫してしまい、せっかくのマジックスピードは何の威力も発揮しなかった。全くマジックなスピードは出なかった。
(長谷)「そういうシューズは、ちゃんと足腰を鍛えてないと効果は出ないですよ」
(幹事長)「それは知ってたんだけど、もしかしてマジックが起きるかなあと思って」
オリーブマラソンの大惨敗は、明らかに練習不足が原因だ。それから僅か2週間しか経っておらず、しかもその間に秋吉台カルストトレイルランがあったため、普通のロードの練習は全くやっていない。
なので、今回もマジックなスピードは出ないと思うものの、せっかく買ったシューズなので、もう一度試してみようと思う。
(支部長)「私は今日はマジックスピードは履かないよ」
(幹事長)「え!?なんで?」
(支部長)「今日は激坂が多い特別なコースやから練習用のシューズで十分かなと思って」
(のら)「私も今日はいつも本番で履いているナイキは履かないよ」
(幹事長)「え!?なんで?」
(のら)「今日は普通のコースじゃないから練習用のシューズで良いかなと思って」
二人とも本番用のシューズはもったいないからと言って練習用のシューズを履くと言う。
(幹事長)「舐めとんか!」
(支部長)「てへぺろ」
(のら)「てへぺろ」
準備が終わったら、恒例のスタート前の記念撮影を行う。シェーのポーズに慣れていないおんちゃんはよろけ気味だ。
おんちゃんと一緒に記念撮影
(左から支部長、ピッグ、D木谷さん、O野選手、幹事長、のらちゃん、おんちゃん)
スタート地点まで600mほど離れているから、そろそろスタート地点へ移動してくださいという案内があったので、トイレに行く。参加者が少ないマイナーな大会なので、トイレは混雑してなかった。
最後に持ってきてたゼリーをチビチビ飲んで立ち上がる。
外に出ると薄い雲がチラホラ浮かんでいて、晴れたり薄雲ったり、って感じだ。なので、暑いのは間違いないが、強烈に暑いって感じでもない。
〜 スタンバイ 〜
スタートが近づいてきたので、コースを確認する。コースはそれほど複雑ではない。
スタート地点は三島様という三島神社の前だ。ゴール地点は前回までは葉山小学校の横だったが、今回はゴールも同じ三島神社の前だ。
スタートしたら東に向かって走り、葉山小学校の横を通り過ぎて、そのまま狭い道を1kmちょっと走る。そこで狭い道から国道197号線に出る。
国道197号線を1kmちょっと走ったら国道から離れて左折し、北側にある山に向かって狭い道へ入っていく。
しばらく走って3km地点あたりからが上り坂となる。特に4km地点くらいからが強烈な急こう配になる。
6km地点過ぎで急こう配が終わり、山の中腹のやや緩やかな上り坂の林道を走る。これを2kmほど走ると、8km地点過ぎで最高点に達する。
そこから1kmほど緩やかな下り坂を走ると、9km地点過ぎで今度は下界に向かって一気に降りる強烈な急こう配の下り坂になる。
急な下りを3kmほど走ると一瞬だけ国道197号線に出るが、すぐさま左折して狭い道に入り、スタート地点に戻ってくる。
最初から最後まで信号機は無いし、交通量も非常に少ないので、交通安全上は安全なコースだ。
これまではゴール地点は葉山小学校の横だったが、今年はその手前の三島様の前になった。スタート地点と同じだ。
そのため、これまでは総距離12.8kmだったのが12.2kmになったと書いてある。つまり距離が600m短くなったとの事だ。
ところが、三島様の前から葉山小学校の横までは実際の距離は350mくらいしかない。一体、どういう事なんだろう。何かが間違っているのだろうか。
参加者が300人ちょっとの小さな大会なんだけど、スタート地点の道はとても狭いため、かなり混雑して熱気が溢れているうえ、空はますます晴れて日差しが照りつけるから、どんどん暑くなる。
少しでも日差しを除けるため、勝手に近くの家の軒先の日陰に身を寄せる。
いよいよスタート時間が近付いてくると、仕方なく暑いけど日差しの下に出て、スタンバイしているランナーの中に入っていく。
参加者300人ちょっとのマイナーな大会なので、普通ならスタート地点での位置取りなんか気にする必要は無い。最後尾からスタートしてもタイムのロスは少ない。
しかし、この大会は特有の事情がある。この大会は行政が関わっていない草レースなので、交通規制は一切ない。
スタートやゴールは葉山小学校前の狭い道なので車もほとんど通らないけど、しばらく行って国道197号線に出ると、車道は走れず、歩道を走らなければならない。国道自体がそんなに広い道じゃないから、歩道も非常に狭くて走りにくい。
なので、基本的に歩道を走る区間は追い越しはできない。完全に禁止ではないんだけど、歩道から転げ落ちるリスクもあるので、みんな自重して行儀良く走る。
そのため、スタートしてから国道に出るまでの1kmちょっとの間に、自分が走る適切なポジションを確保しておかなければならない。自分の本来のペースより後ろの方になると、もっと前へ出たいのに出られないフラストレーションが溜まる。
逆に前の方に行き過ぎると後ろからランナーがぶつかってくる。なので適切なポジション取りが必要になってくる。そのためには、スタートの時点である程度の位置取りを考えておかなければならない。
て事で、真ん中より少し前の方に位置取りする。
周囲を見回すと、今年も結構、女性の姿が目につく。女性の参加者は2割程度だが、それより多そうに見える。
丸亀マラソンのような大衆化したマラソン大会なら、ちょっと勘違いしたような素人のおばちゃん達が大挙して参加したりするが、こんな厳しいコースの大会に参加するような女性は、ことごとく強者なので、決して油断はできない。
て言うか、たいていは自分より速いと心得ておかなければならない。侮っていると痛い目に合う。
とは言え、すぐ近くに、明らかに素人っぽい中年女性がいる。腰にはウェストバッグを付け、見るからに素人っぽい。
(幹事長)「あの人は遅そうだよね」
(のら)「分からないよ。ああいう人に限って速いかも」
(幹事長)「速くはないって。でも持久力があって終盤に追いつかれるかもしれないね」
女性は持久力があるからマラソンには向いていて、フラットなコースの大会だと、終盤で力尽きて足を引きずってノロノロと走っていると、一定のペースを確実にキープしたおばちゃん達に次々と追い越されてガックリする。
スタートする前には本日の目標を定めなければならない。もちろん、どんな時でも、どんなレースでも、常に大会自己ベストの更新を狙うのが良い子のランナーとしてあるべき姿だ。
マラソンはコースや季節によってタイムが大きく変わってくるため、違うレースのタイムを比較するのは不適当なので、どんなレースに出ても、とりあえず大会自己ベストを狙うのが良い子の正しい道だ。
特に、このレースは距離も中途半端だし、坂も異常に厳しいから、他のレースとは比較のしようがない。
なので、目安はあくまでも過去のタイムだ。この大会の自己ベストは2019年の1時間13分だ。なので、それが目標となる。
しかし、5月末のオリーブマラソンでの大惨敗が示すように、ここんとこ圧倒的に練習不足だ。
3月の徳島マラソンで予想外の大会自己ベストを出し、翌4月の富士五湖ウルトラマラソンで長い距離を完走できたので、嬉しくなってすっかり油断して練習をサボりまくっていたのだ。
なので、今回は大会自己ベストが難しいのは分かっている。でも、他に目標が思いつかないので、取り合えずそれでいこう。
目標はあまり高くないが、作戦はシンプルだ。距離が12.2kmしか無いうえ、急激な上り坂や下り坂が続くので、ペース配分や作戦なんて考えても仕方ない。
レース序盤に無理すると、終盤になって一気にツケが回ってきて失速するのがマラソン大会の常なんだけど、このレースは事情が異なる。
序盤の3kmほどのフラットな区間が終わると、その後は急な上り坂になるので、そこまでの序盤を無理して飛ばそうが自重しようが、どっちみちペースは落ちるので、最初のフラットな区間は飛ばせるだけ飛ばしていい。
その後に続く急激な上り坂ではどんなに頑張っても大したスピードにはならないし、終盤は急勾配の下り坂が続いて転がり落ちるように全力で駆け下りるから終盤になって失速するってこともない。
なので、前半は抑えるべきだとか、最後まで一定のペースを維持するとかいった普通のマラソンでの作戦は意味をなさない。とにかく最初から最後まで全力で飛ばすしかないのだ。
(幹事長)「『炎の突撃作戦』と名付けよう」
(ピッグ)「『無謀な玉砕作戦』ですね」
〜 スタート 〜
いよいよスタート時間の10時となった。スタート1分前のアナウンスはあったが、前回はカウントダウンが無かったような気がしていたので、待ち構えていると、やはりいきなりスタートのピストルが鳴った。
心の準備ができていたので、ピストルの音と同時に腕時計のスイッチを押す。今日は左手には以前から使っているスポーツウォッチを着け、右手には新しいガーミンの時計を着けている。
左手の時計は、いつものように距離表示に合わせてラップを記録していく。一方、右手のガーミンはGPSで自動的に1kmごとのラップを記録していく。
コースの距離表示も、ガーミンの計測も、どちらも正確なら、両者は一致するはずだけど、マラソン大会の距離表示っては実は非常にいい加減で、不正確だ。またガーミンのGPSも誤差はかなりある。なので、両方を付けて走ってみる。
参加者が少ないので、それほどタイムロスすることなく、割りとすぐにスタート地点まで達し、そんなに混雑することもなく走り始めることができた。
普通のマラソン大会なら、スタート地点を越えても、しばらくは混雑でまともに走れないが、人数が少ないうえに、こんな厳しいレースに出ようっていうランナーはレベルが高いと言うか、あんまり遅い素人ランナーは少ないため、スタートしてすぐに結構、速いペースとなる。
普通のマラソン大会なら、序盤はあんまり飛ばさずにペースを抑え気味に走って、その日の自分の調子を見るってのが鉄則だ。
周囲のランナーにつられてハイペースで飛び出すと、オーバーペースになって終盤に撃沈する要因になる。しかし、この大会では序盤からのんびり走ってはいけない。
この大会は行政が関わっていない草レースなので、交通規制が一切ない。そのため、国道に出たら狭い歩道の上を行儀良く走ることになって追い越しはできないので、それまでの1kmちょっとの間に、自分が走る適切なポジションを確保しておかなければならない。
どこが適切な位置かよく分からないんだけど、とりあえず頑張って速めなペースで走る。どうせ歩道を走るようになるとペースは落ちるからだ。
てな事で、久しぶりに最初からかなり飛ばす。ガーミンでスピードを見ると、1km5分を切っている。私としては明らかに飛ばし過ぎだが、なんだか気持ち良いのでそのまま飛ばす。
しばらく走るとガーミンが1km地点のお知らせをしてくれる。距離表示もあるはずだが、見落としてしまったらしい。
ガーミンによると、最初の1kmは5分を少し切っていた。普通のマラソン大会なら飛ばし過ぎだが、このレースなら気にすることはない。良いペースだ。
ところがD木谷さんやピッグは私よりさらに前の方を走り、しかも少しずつ離れていく。さらにO野選手まで彼らと一緒に前方に走り去っていく。そこまで飛ばして良いんだろうか。
するとおんちゃんが横に並び、私と同じ感想を言う。
(おんちゃん)「ピッグさんに着いていこうと思ってたけど、いくらなんでも飛ばし過ぎやなあ」
(幹事長)「そうでしょ?あんなに飛ばしてたら、そのうち潰れますね」
て事で、ピッグやD木谷さんを追うのは止めて、そこそこのペースで飛ばしていく。
ふと前を見ると、スタート前に「あの人は遅そうだよね」なんてのらちゃんに言った女性が走ってるではないか。私ですらかなりハイペースで走っているのに、同じペースでここまで走ってきたなんて、中年女性としてはかなり速い。
なんとなく悔しいので、ちょっと頑張ってペースアップして追い抜く。
そこからしばらく走ると国道197号線に出る。ここは歩道を走るんだけど、歩道はとても狭い。無理したら追い抜けないこともないけど、追い抜くには車道側を走らなければならないので、歩道から落ちてしまうリスクがある。
なので、どこかに遅いランナーがいたら、そこで詰まってしまうので、全体的にペースは落ちてしまう。
だが、今年はそういう事態は起きていない。前の方からスタートしたため、周囲に遅いランナーはいないから、全体としてみんな調和して集団で良いペースで走っていく。前のランナーも後ろのランナーも同じくらいのペースだ。
なんだけど、おんちゃんの後姿が少しずつ前の方に離れていく。おんちゃんがペースアップしたんだろうか。それとも、早くも私がペースダウンし始めたんだろうか。
狭い歩道を走っていると2km地点の表示を見つけた。ガーミンのお知らせとピッタリ同じだった。この1kmは5分を少しオーバーしてしまった。やはり早くもペースダウンが始まったようだ。
さほど呼吸は苦しくないんだけど、足の動きが少し重くなってきた。
周りには私と同じようなランニングシャツとランニングパンツを着た中高年のランナーが何人か走っている。今どき若い人はこのようなランニングシャツやランニングパンツは着ないので、こういうのを着ているのは中高年しかいない。
こういうのを着てるって事は、おそらく若かった時はかなり速かった人たちだろう。なので、モロに私のライバルだ。簡単に負ける訳にはいかない。って事で、なんとか踏ん張って競り合って、抜きつ抜かれつ状態になる。
本番の大会は、こういう他のランナーとの競り合いが生じるので大きくペースダウンする事なく走れるのが良い。
自主開催で仲間だけで走っていると、すぐに一人旅になって緊張感が途切れてしまう。やる気は失ってなくても、ついつい気持ちが緩んでペースが落ちてしまう。やはり本番は緊張感が続いて良いなあ。
しばらく走ると国道から離れ、いよいよ山の方に向いて上がっていく。狭い道だが、国道と違って車道と歩道の区別が無いので、ランナーとしては走りやすい。車が来れば避けなければならないが、交通量は少ない。
て言うか、これまでこの林道の区間で車を見かけた事は記憶に無い。地域の人も協力して通らないようにしてくれているのだろう。
山道に入ったとは言え最初のうちは傾斜はとても緩やかだ。そんなに大変ではない。
それなのに、3km地点の距離表示はまたまた見落としてしまったが、ガーミンが知らせてくれた3km地点でのラップは1km5分半近くにまで落ちていた。一気に落ちている。
そして、なんと、さきほどかろうじて抜き去った中年女性に追い抜かれてしまった。しかも、絶対に着いていけない速いペースであっさりと追い抜かれてしまった。遅そうに見えたけど、すごく速い人だった。
3km地点を過ぎると、だんだん傾斜が強まってくる。まだまだ大したことはないが、確実にペースは落ちている。
天気は相変わらず晴れで、日差しが当たると暑いので、木陰を探して右へ左へ移動しながら走る。
しばらく走ると最初の給水所が現れた。今日は既に少し喉が渇いているので、すぐさまコップを取ったが、水はあんまり冷えてなくて、一口しか飲めなかった。
坂の傾斜はどんどん厳しくなってきて、次の4km地点で見たタイムは、一気に1km6分にまで落ちていた。ここでも距離表示は見落としてしまい、ガーミンだけが頼りだ。
後ろを走っているはずの支部長とのらちゃんの動向が気になる。昔は支部長は上り坂に弱かったから、こういう区間になると安心して走れたが、最近は上り坂を克服し、平気で追い越されるようになったので、いつ後ろから追い抜いていかれるかヒヤヒヤする。
またのらちゃんは最初は私のすぐ後ろに付いて走ってくるんだけど、私がペースダウンしたらあっという間に追い抜いていくので、彼女の存在も不気味だ。
でも、後ろを見るのが怖くて、今日は一切、後ろを振り返っていない。なので支部長ものらちゃんも、どこを走っているのか全く分からない。
4km地点を過ぎたら、本格的に急勾配の上り坂になる。この辺りから傾斜は10%を超えたようだ。さすがに厳しくて超スローペースになる。
早くも歩いている人が時々いるけど、歩きたいなんていう気持ちは沸いてこない。それより、ついついダラダラとペースダウンしそうになるのを、なんとか緊張感を維持して食い止めなくてはいけない。
この辺りで、例年通り、道ばたでメガホンを持ったおじさんが「あんた○○番」って叫んでくれている。私は105番って言われた。
以前は、そこから自分を追い抜いていくランナーと自分が追い抜くランナーの数を差し引きして、常に自分が何番目か計算していたけど、そんな事をしていると走りに集中できなくなるので、今回は止めた。
林道はますます山深くなり、道の上を木々が覆い被さり、薄暗くなってくる。でも、まだまだモワっと暑い。
しばらく登ると5km地点の距離表示があり、この1kmは一気に8分近くかかっていた。ものすごいペースの落ちようだ。
ガーミンの表示と少しズレが生じてきて、ガーミンではさらにペースダウンしている。そこまでペースダウンしているような気もしないんだけど。
その後、少しだけフラットな区間が現れて一息つけるが、その直後には傾斜20%を超える激坂が待っている。以前はガッカリしたこともあるが、5回目の出場でコースが分かっているので、心づもりはできている。
このレースは、もう上り坂は終わりと見せかけて、何度も裏切られ続けるのだ。
さらに激坂が続くなか、6km地点の表示があり、この1kmは8分半もかかった。ただ、この辺りは毎年、大きくペースダウンしてきた区間なので、さほど驚きは無い。
6km地点からしばらく進むと、ようやく激坂区間が終わる。とは言え、道がフラットになる訳ではなく、まだまだ何度も上り坂が現れる。
ただ、斜度はもう大したことはない。たまに急傾斜の坂もあるけど、それほど長くは続かない。とにかく、激坂区間が終わったと思うと、ホッと一安心だ。
この辺りにくると、木々に囲まれた山の中なので、暑さは和らぎ、なんとなく涼しくなってきた。
しばらく走ると2つ目の給水所がある。このレースは距離は短いけど、給水所は3箇所も設置されている。暑い激坂レースなので、給水は嬉しい。
なんだけど、この給水所の水もあんまり冷えてなくて、しかも水しか無いので、あんまり喉は通らない。
7km地点ではギリギリ1km7分を切り、次の8km地点では6分半くらいになった。坂が緩やかになったからペースが上がって当然なんだけど、上がり方はイマイチだ。1km6分を超えているようでは、ロクなタイムにはならない。
しばらく進むと、ようやく下り坂が出現する。ここからは上り坂も出現するが、基本的には下り基調の区間になる。ピークの標高は335mで、下の国道からの標高差300mほどを駆け下りることができる。
ホッとして一気に大股で全開でガンガン駆け下りる。とは言え、最初は思ったほど急な傾斜ではない。駆け下りても滑ったり転んだりする心配が無くてちょうど良い傾斜なんだけど、本格的な下り区間に入った訳ではない。
大股で気持ち良く駆け下りていくと、9km地点の距離表示を見つけた。この1kmはなんとか5分半を切っていた。それでも期待したほどのペースではない。下り坂なんだから、もっとペースアップしてるのかと期待していたのに。
その後、再び上り坂が出現する。まだ上り坂は終わってないのだ。以前は、てっきりもう上り坂は終わったものと思っていたのでかなりショックを受けていたが、もう慣れているので平気だ。
この辺りに3つ目の給水所がある。ここで始めてスポーツドリンクがあり、また水も冷えていた。生き返った気分だ。嬉しい。
上り坂はすぐ終わり、その後、左へ鋭角に曲がると、遂に本格的な急勾配の下り坂区間が始まる。ものすごく、きつい!きつ過ぎる!傾斜20%を超える下り坂が続く。
もともと交通量の少ない林道なので、路面は苔むしていて、雨模様の時は濡れた苔が滑りやすいので危険だ。今年も一昨日は豪雨だったので、まだ路面が湿っているのではないかと危惧していた。
でも、昨日の暑さで路面はすっかり渇いていて、滑る心配は無かった。落ち葉や落石も少なかったから、きれいに掃除してくれたのだろう。感謝感謝。
滑る心配が無いので、大股でガンガン走って降りる。今日のランパンは短くて本当に走りやすい。足がよく前に出る。それに、もしかしてマジックスピードのおかげもあるのかもしれない。
もちろん、若い頃、中山選手と一緒に走っていた重力走法のように、重力に任せて転がり落ちるように走るのは無理だ。足がそんなに早く回転しないから、前につんのめって転びそうになる。そのため、適度にブレーキを掛けないといけない状態だ。
それでも、この大会で走った中では、今日は一番速く駆け下りていけている。とは言え、10km地点でのラップも5分半近くかかっていた。おかしいなあ。
すると、前方にO野選手らしき後姿が見えた。こんな所でどうしたんだろう。見る限りでは、故障している様子はないから、前半に飛ばし過ぎた無理がたたって、せっかくの下り坂でペースダウンしてしまったのだろうか。
声を掛けて追い抜くと、しばらくは後ろを付いてきていたが、そのうち足音が離れていった。
10km地点を越えると傾斜が少し和らぎ、まだまだ急勾配とはいえ、ブレーキをかけずに思いっきり駆け下りられる程度になる。足の回転と体の落ち込み方が同じくらいになるので、これくらいが一番速く走れる。ガンガン駆け下りるから膝を痛めそうだが、あと2kmくらいだから何も考えずに駆け下りる。
すると、なんとここで前半の坂で追い抜かれた中年女性の姿が見えた。彼女も力尽きた訳ではなく、まだガンガン走っている。でも、私とは身長差が大き過ぎた。足の長さ、すなわちストライドで言うと、私の方が1.5倍くらいあるだろう。
そのため、同じようなピッチでガンガン駆け下りているけど、明らかに私の方が速い。みるみるうちに追いついて、あっという間に抜き去る事ができた。
スタート前に見た時は、一定のペースで走り続けて終盤に追い抜いていくタイプかなと思っていたが、予想外の展開となった。本番の大会は、こういう戦いが色々あって面白い。
中年女性にもう再び逆転されたくはないので、さらに思い切って駆け下り続けると、11km地点でのラップは4分ちょっとにペースアップできていた。この3kmの下り坂区間は、これまで走った中で最も速い。とても気持ち良い。やはり短いランパンとマジックスピードのおかげだろう。
そして、なんとおんちゃんの後姿が見えてきた。おんちゃんがペースダウンしたのか、それとも自分が速く走れているのか、どちらかは分からない。いずれにしても、これなら追いつけそうなので、頑張って走っていく。
その後、下り坂の傾斜は徐々に緩やかになっていくが、下り坂が終わるわけではない。傾斜が緩やかになるにつれペースも落ちていくが、下っている限り、足の疲れは感じない。
もう残りは1kmくらいだし、下り坂が終わってからのフラットな500mが無いので、心置きなく安心して駆け下りていける。
遂に、前方に国道197号線が見えてきた。あそこの角を曲がったら三島様があり、そこがゴールだ。もうすぐだ。
なーんて思っていたら、なんと、そのだいぶ前に、いきなりゴール地点が現れた。え?どゆこと?まだ三島様まで何百メートルかあるぞ。
おんちゃんに追いつけないまま終わってしまうぞ。
〜 ゴール 〜
突然出現したゴール地点には、既にゴールしていたD木谷さんとピッグとおんちゃんが待っていてくれた。
(幹事長)「ここがゴールなん?」
(D木谷)「そうみたいなんですよ」
そうか。それで謎が解けた。ここから三島様までは、まだ250mくらいある。なので、ここから以前のゴール地点までは600mほどある。なので、今年のコースは例年のコースより600m短いって事なのか。
謎が解けてスッキリはしたが心の準備ができてないまま突然ゴールが現れたので、ちょっと戸惑った。それなら少し前からスパートすれば良かった。
なーんて思うけど、ま、タイムにそれほど影響は無いだろう。
で、タイム計測はどうなってるんだろうって思ってゴール横のスタッフを見てびっくり。
ゼッケンにチップが付いているからランナーがゴール地点を通過したら機械がピッって鳴ってタイムを記録しているようだが、そのタイムとゼッケンは紐づけされていない。つまり、タイムは計測しているが、それが誰のタイムかは記録されていない。
そしてスタッフが目視でゼッケンを見て表に書き込んでいる。
つまり、半自動で半手動だ。以前は、スタッフが時計を見ながらゼッケンとタイムを書き込んでいたが、そのうちのタイム計測だけ機械化し、ゼッケンを見るのは従来通り人間だったのだ。
これなら、もう自己計測で良いような気もするぞ。
て事で、最終的なタイムは1時間12分くらいだった。ゴールして時計を止めるまで少し時間があったので、正確なタイムは分からない。大会事務局から正式なタイムが発表されれば分かるけど、そういう事をしてくれるかどうかも分からない。
1時間12分だとすると、前回出した大会自己ベストの1時間13分より速いが、距離が600mも短くなっているので、大会自己ベストではない。600mもあれば3分近くかかりそうだから、それを足すと1時間15分くらいの平凡なタイムになってしまう。
とは言え、最近、スピードが衰えて悩んでいたので、なんとかギリギリ許容範囲だ。特に終盤の下り坂でのスピードは、過去の大会自己ベストとも言えるので、そこは満足だ。
それに、序盤のフラットな区間をハイペースで走っている時もあまり苦しくなかったし、激坂を登ってる時も歩きたいなんて思わず、淡々と登っていけたから満足だ。
また、私の好きな炎天下のレースで、とても快感だった。夏場のレースは炎天下に限る。
欲を言えば、5〜7kmの区間でペースダウンしすぎた点だ。もっと緊張感があれば、そこまでペースダウンしなかっただろう。
また、ゴールがあんなに手前にあるのなら、もっと早目にスパートすれば良かった。そしたらおんちゃんにも追いつけたかもしれない。
ゴールしてしばらくするとO野選手が帰ってきた。やはり終盤は下り坂なのにペースダウンしてしまい、かなりのランナーに抜かれたらしい。
(O野)「初めてのコースなのでペース配分を間違えました」
(幹事長)「コースどころか、初めてのマラソン大会なんやから仕方ないよ」
その後、しばらくするとのらちゃんが帰ってきた。オリーブマラソンの後、足の筋肉に痛みが出ていたため、今日はペースを上げられなかったが、それでも最後までガンガン駆け下りてきた。
さらに、支部長もハイスピードで駆け下りてきた。
(幹事長)「ゴールが遅かった割りには最後は異常なハイスピードやったな」
(支部長)「下りで何十人も追い抜いたよ」
体調不良の支部長は、前半の上り坂では徹底的に歩いたが、下り坂では強さを発揮して、ものすごいスピードで降りてきたようだ。
のらちゃんも支部長も体調は悪かったが、特に故障が悪化する事も無く、楽しく完走できたので良かった良かった。
とは言え、二人があまりスピードが上がらなかったのは、シューズのせいではないだろうか。
私は今日はマジックスピードの威力が少し出たような気がする。それに対して、二人は普段の練習用のシューズで走ったため、イマイチ、スピードが出なかったのではないだろうか。
(幹事長)「練習用のシューズではいかんよ」
(支部長)「へへいっ!」
(のら)「ははーっ!」
〜 抽選会 〜
これまでは、走り終わったら近くの施設のお風呂に入り、それから体育館に戻って昼食を頂き、その後、楽しいお楽しみ抽選会があった。でも、今年は昼食の提供が無くなり、抽選会も無くなってしまった。
ただし、抽選会は無くなったが、抽選はある。走り終わったら各自がくじを引き、当たったら商品を貰えるというシステムだ。
みんなでワクワクしながらくじを引くと、なんと全員が何かしらの景品が当たった。以前から当選確率は5割以上の異常な高率だったが、全員が当選なんて事は無かった。
今年は主催者の中山さんが例年通り景品をかき集めてきたが、参加者が少なかったため全員に当たるようになったのだろう。
私はキャンプ用の小さな折り畳みチェアが当たった。とても嬉しい。他のメンバーもおもちゃセットとか、色々当たった。支部長はビールロング缶6缶が当たったので、みんなで1本ずつ山分けした。
おんちゃんに至っては、念願のビール24缶入り1ケースが当たった。素晴らし過ぎる!
受付でもらったチラシには、終了後はすぐ近くにある葉山の郷という施設のお風呂に入れると書いてあったので、さっそく繰り出した。これまでもレース後には、このお風呂に入らせてもらっていた。
ところが、葉山の郷に行ってみると、スタッフは「聞いていない」との事だ。え?どゆこと?これまでも大会がある時はお風呂のサービスを提供してくれていたのに。しかもチラシには今年も例年のようにお風呂に入れると書いてあるのに。
明らかにアルバイトか何かの慣れていないスタッフだったから、なにか行き違いがあったのだろうか。
仕方ないので、自主開催していた時に入っていた須崎市のそうだ山温泉という温泉に入りに行く。漢字で書くと桑田山温泉だ。
山の中にある、こじんまりとした温泉で、自然の中の露天風呂がとっても心地いい。
さっぱりした後は、私の個人的な強い要望により、高岡の豚太郎に行く。香川県内では豚太郎は絶滅危惧種に指定されているが、高知県にはたくさん健在なので、行ける時には行っておきたいのだ。
おんちゃんが別れ際にくれたキュウリの浅漬けと一緒に味噌ラーメンを美味しく頂いた。
さて、多くのランナーは、せいぜい5月末のオリーブマラソンがマラソンシーズンの終わりだが、我々はこの6月の北山林道駆け足大会だけでなく、これからも夏場の厳しい山岳レースが毎月、続く。
7月末には汗見川マラソンがあり、9月始めには四国のてっぺん酸欠マラソンがあり、そして10月始めには龍馬脱藩マラソンがある。
今回も含めて全て高知の山の中で行われる夏場の高知山岳マラソンシリーズ4連戦だ。
その第2戦の7月末の汗見川マラソンは、早明浦ダムの周辺の山の中で開催されるが、いくら山の中と言っても、実は決して涼しくはない。
2007年に出たときは、その日の全国一番の高温を記録したような場所だ。いくら標高が高くても、四国の山の中は暑いのだ。
しかも、仮に下界よりは多少は気温が低かったとしても、山の上は直射日光がギラギラ照りつけてきて、体感温度はむしろ高い。でも、個人的にはその暑さが好きだから楽しみでワクワクする。頑張るぞ!
〜おしまい〜
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