第23回 北山林道駆け足大会(自主開催)

〜 予想外の猛暑の過酷なレース 〜



2021年6月13日(日)高知県津野町において第23回北山林道駆け足大会が開催されるはずだった。

津野町と言われてもピンとこないが、旧葉山村だ。
この北山林道駆け足大会は2016年に高知のおんちゃんから誘われて初めて参加し、それ以来、一昨年まで4年連続で出場していた大会だ。
おんちゃんに教えてもらうまで聞いたこともなかった超マイナーなレースだが、本当にめちゃ楽しいレースなので、もう出ない訳にはいかないのだ。

名前からして「北山林道駆け足大会」だなんて聞いただけでもそそられる。「林道」で「駆け足大会」とくれば、もう、怪しさ爆発だ。しかも定員500人てことは、完全なる草レースだ
ランネットでエントリーできないのはもちろん、ネットで調べても、情報はほとんど出てこないような超マイナーな草レースだ。怪しいマラソン大会には目がない我々としては、見過ごすわけにはいかないレースなのだ。

なので、去年もウズウズしながら待ってたんだけど、それなのに、ああ、それなのに、なんと去年は新型コロナウイルス騒ぎのせいで大会が中止になってしまった

事の発端は去年3月1日の東京マラソンの一般ランナー参加中止だ。これに続き、3月8日の第9回名古屋ウィメンズマラソンも一般市民ランナーの参加が中止になった。
ただ、これらの大会は東京オリンピックのマラソン代表選考会を兼ねていたため、
エリートランナーの部は開催された
しかし、その後、状況はますます悪くなり、遂に去年3月22日の徳島マラソンは全面的に中止になってしまった。あまりの事に呆然とした。
そして、その後も、全国的にマラソン大会が次々と中止になっていった

これらのマラソン大会中止騒ぎってのは、どう考えても、あまりにも非科学的で情緒的でヒステリックな対応だ。

(ピッグ)「この説明、いつまで続くんですかね」
(幹事長)「ほんとにいつまで続くんだろうね。早くマラソン大会が再開して、こんな説明が要らなくなって欲しいよ」

素人が見たら、マラソン大会ではランナーが密集しているように見えるかもしれない。しかし、毎日乗っている満員電車に比べたら、はるかにスカスカだ。そうでないとぶつかって走れない。
しかも密室の満員電車に比べて、屋外のマラソン大会はウイルスが蔓延できる環境ではない。新型コロナウイルスは感染した人の咳やくしゃみの飛沫による飛沫感染でうつっていくが、飛沫感染は屋外で走っている時に感染なんかしない。
多くの国民が新型コロナウイルスを非常に恐ろしいもののように勘違いしているが、決して、エボラ出血熱のように極めて致死率の高いウイルスでもなければ、風疹のような感染力の強いウイルスでもない

多くの国民がヒステリックに踊らされているのは、視聴率さえ稼げればいい下品なマスコミがキチガイみたいに煽り立てるのと、新型コロナウイルスの新規患者数をゼロにしようなんていう狂信的な妄想に取り憑かれた医療関係者の独善のせいだ。
さらに、それに付け込んで何でもかんでも政府を批判する無能な民主党が調子に乗ってギャアギャア騒ぐからだ。
いい加減に、このようなヒステリックな対応は止めて欲しいのだが、新型コロナウイルスの蔓延よりも、このようなヒステリックな対応の蔓延の方が遙かに早い。

もちろん、大会主催者側は苦渋の決断というか、断腸の思いだろう。なぜなら、大会の成功を一番願っているのは大会主催者なんだから。だから、私も大会主催者を責める気は、さらさらない。
悪いのは、こういう状況に大会主催者を追い込んだ世間のプレッシャーというか、コロナ自警団に代表される、社会を覆い尽くすバカ騒ぎだ。

そして、恐れていた通り、その後も5月のオリーブマラソン、6月の北山林道駆け足大会、7月の汗見川マラソンと、続々とマラソン大会の中止が発表になり、このままではマラソン大会もサイクリングイベントも全滅になりそうな雲行きになってきた。もうお先真っ暗だ。


〜 マラソン大会を自主開催 〜


って嘆き悲しんでいた時、ピッグが突然ナイスなアイデアを提示した。

(ピッグ)「この話も、いつまで続くんですかね。もうウンザリですね」
(幹事長)「書く方もウンザリやわ。もう書きたくないんだけど仕方ないよね」

去年5月のオリーブマラソン6月の北山林道駆け足大会7月の汗見川マラソン8月の酸欠マラソン9月の脱藩マラソン11月の庵治マラソン12月のタートルマラソン今年2月の丸亀マラソン2月の善通寺五岳山空海トレイル3月の香東川マラソン
5月のツールド1035月の小豆島オリーブマラソンの記事にも書いてきたエピソードだが、これを外す訳にはいかないので、しつこくピッグに提案してもらう。

(幹事長)「お待たせしました!はい、どうぞ!」
(ピッグ)「中止になった大会を
ペンギンズで自主開催しましょうよ」
(幹事長)「え!?」


あまりのナイスなアイデアに一瞬、言葉が出なかったが、これは画期的なアイデアだ。そうなのだ、大会が中止になったのなら、
我々で独自に勝手に自主開催すればいいのだ。

(幹事長)「なんて素晴らしいアイデアだ!君がこんな素晴らしいアイデアを出したのは実に23年ぶりやぞ」
(ピッグ)「ハイハイ、分かりましたってば」


1997年に我々がペンギンズを立ち上げた時
クラブの名前を何にしようか相談したんだが、幹事長の私の意見を差し置いて、ピッグが「ペンギンズにしましょう」なんて言い出し、押し切られてしまったのだ。
しかし、よくよく考えてみれば、むやみにスピードを追求するのではなくマイペースでゆっくり走る我々のスタンスは、まさに「ペンギンズ」の名前がピッタリであり、
素晴らしいネーミングだったと思う。
ピッグがナイスなアイデアを出したのは、その時以来、実に23年ぶりのことだった。

と感心していたのだが、5月にオリーブマラソンを自主開催して走っていた時、同じように一人で走っている女子がいて、支部長が聞いたところ、彼女も自主開催していた事が分かった。
また7月に汗見川マラソンを自主開催して走っていた時も、同じように走っているカップルがいて、支部長が聞いたところ、彼らもやはり自主開催していた事が分かった。
さらに今年5月のオリーブマラソンに至っては、胸に大きく「勝手に小豆島オリーブマラソン」なんて書いたTシャツを着て自主開催しているグループがいた。
つまり、
マラソン大会の自主開催ってのは、誰でも思いつくような平凡なアイデアだったことが分かったので、ピッグに対する賞賛は雲散霧消した。

(ピッグ)「ハイハイ、分かりましたってば

てなわけで、その後は中止になったイベントは、できる限り自主開催することとなった
その第1弾が去年5月17日に開催した
サイクリングイベント第7回ツールド103であり、これが思いのほか楽しくて大成功だった。
続いてマラソン大会として5月のオリーブマラソン6月の北山林道駆け足大会7月の汗見川マラソン8月の酸欠マラソン9月の脱藩マラソン11月の庵治マラソン12月のタートルマラソンを自主開催してきた。

これらも例外なく、とても楽しくて大成功だったが、そうは言っても正式な大会ほどのやる気と達成感は得られないため、願わくは、コロナのバカ騒ぎは去年で収束して、今年はマラソン大会が復活して欲しかった。
ところが、
今年になってもコロナのバカ騒ぎが終わらず、マラソン大会の中止が続いているため、2月の丸亀マラソンを自主開催し、続いてトレラン大会である2月の善通寺五岳山空海トレイルも自主開催した。

この善通寺五岳山空海トレイルは、去年はギリギリでなんとか本大会が開催され、コロナのバカ騒ぎでマラソン大会が軒並み中止になる前の最後の大会だった。
それから
まる一年が経って一周したので、そろそろバカ騒ぎを止めてマラソン大会を再開して欲しかったところだが、去年、最初に中止になった徳島マラソンは、なんと2年連続で今年も中止になってしまった
コロナのバカ騒ぎによるマラソン大会中止が2年目に突入したのだ。そのため、徳島マラソンの代替大会として3月の香東川マラソンを自主開催した。
そして、その後も2年連続のマラソン大会中止が続いているため、5月の小豆島オリーブマラソンを自主開催し、今回の北山林道駆け足大会2年目自主開催となったわけだ。

ただメンバーの都合で、日程は7月にずれ込んだ。本来の大会は6月13日の予定だったが、2021年7月3(土)の開催となった。


〜 山の中を駆け巡る超激坂コース 〜


この大会に最初に誘ってくれた高知のおんちゃんは実力者で、四万十ウルトラマラソンの100kmの部にも出ており、どちらかと言えば、坂のある厳しいコースが好きなM系ランナーだ。
そういうハードコア系ランナーから誘われたレースなので、最初は恐る恐るの参加だったが、誘ってくれて本当に良かったと思える楽しいレースだ。

何が楽しいかと言えば、コースが超面白いのだ。このレースは名前も怪しいが、そのコースはトンでもないものだ
距離は12.8kmしかないから、マラソン大会としては短いと言える。
しかし、最初3kmほど平坦な道を走って林道に入ると、いきなり極端な急登となる。パンフレットの図面には、上り勾配は10%と書いてあり、それだけでも厳しいが、これは平均の勾配であり、当然ながらもっと急な部分もある
実際のところ、何度あるのかは分からないが、とても厳しい坂だ。
急登が終われば山の中腹の道を走るが、そこも決して平坦ではなく、かなりアップダウンがある
そして中腹の道が終われば下りになる。下り勾配は19%なんて書いてあり、これだけでもトンでもなく急な下りだが、もちろんこれも平均の勾配であり、当然ながらもっと急な部分がある
まさに転がり落ちるように走って下るようになる。

激坂の下りが終われば最後は少しだけ平坦な道が残っているが、基本的には急な坂道を上がったり下ったりするのがメインのマニアックなコースだ。
道は全て舗装されているからトレイルレースとは異なるが、アップダウンの激しさで言えば、まるでトレイルレースのようなコースであり、普通のマラソン大会ではない。

こう書くと、とても厳しいレースで、楽しめるようなレースではないと思うかもしれないが、これが実に楽しい
2016年に初めて参加した時は、恐る恐るの出場だったが、予想をはるかに上回る楽しいレースだった。上り坂はあまりに激し過ぎるから、辛いと言うより笑ってしまい、むしろ楽しく感じられる
それに、厳しいと言っても、所詮、激しい上り坂の区間は3kmほどしかなくて、それが分かっているからペース配分なんか考える必要が無く、とにかくがむしゃらに子供みたいに走ればいい
終盤は下り坂が続いて、思いっきり駆け下りるのも楽しかった。

コース全体でも距離は13km足らずだから、ペース配分なんて考える必要がなく、最初から最後まで全力で走ればいいので、本当に楽しい。
こんなに面白くて楽しいレースは久しぶりだった。あまりに楽しいから、ゴールする時は顔がニコニコしてしまう
当時は上り坂が苦手だった支部長でさえ、上り坂の急勾配区間では歩いたものの、下り坂は他のランナーをごぼう抜きして、嬉しそうにゴールした。

考えてみれば、我々はもともと山岳マラソンには慣れている2005年に高松市に合併吸収されるまで塩江町で毎年開催されてい た塩江マラソンは距離はハーフマラソンで、最大標高差350m、累積の獲得標高550mの山岳マラソンだった。
今はなき四国カルストマラソンもハーフマラソンで、標高1000mを超える高原を走る山岳マラソンだった。マラソンブームなんて来る以前は、マラソン大会なんて平地ではなかなか開催できなかったから、山間部での開催が多かったのだ。
それに比べれば北山林道駆け足大会は最大標高差は300m程度なので未知の世界ではない。
それに、塩江マラソンは急勾配の坂を下りてからも延々とフラットなコースが続いて足が棒のようになって撃沈するのが常だったが、このレースは距離が短く、急勾配の坂を下り終えて少し走るとゴールとなるので、走りやすく楽しい気持ちのままゴールすることができる
また最近は、四国のてっぺん酸欠マラソンだとか龍馬脱藩マラソンのように、もっと極端に激坂が続くレースにも出ているので、この北山林道駆け足大会は苦しさではなくて楽しさしか感じないイベントとなっている。

激坂だけでなく、コースレイアウト自体も魅力的だ。マラソン大会のコースと言えば、折り返し点で折り返して往復するコースが一般的だが、この大会のコースは山の中をグルッと回って一周するという周回コースなのだ。山の中をグルッと一周するってのが探検的で面白いし、山の上は見晴らしが良いし、なんとなく遠足しているような気分になれる。

さらにオマケだが、この大会はレース後の抽選会が楽しい。このお楽しみ抽選会は、主催者の葉山ランニングクラブの中山さんが村内きっての有力者で、町内のあらゆる商店から寄付をかき集めてくるため、景品がめちゃめちゃ多くて多彩だ。ランニングシューズから始まり、扇風機やピクニックチェアなど、普通の抽選会では出てこないような大きな景品が色々と出てくる。
そして景品の数が多いから、当然ながら当選確率が異常に高い。おんちゃんチームが6年前に6人中5人もが当選したって聞いていて楽しみにしていたら、実際に2016年に初参加したときは我々も5人中4人が当選するという高確率だった。景品も、私とピッグはミカンだったが、ヤイさんと小松原選手はビール24本入りケースという豪華景品だった。続いて2017年も3人中2人が当選したから、やはり、かなり高い確率での当選だった。
2018年は参加した3人とも何も当たらなかったので、そんな事もあるのかなあ、なんて落胆したけど、2019年は再び支部長にパンの詰め合わせセットが当たり、また加藤選手がビール1ケースをゲットし、4人中2人の当選となった。やはり平均すれば高い確率で当選するのは間違いない
てな事で、とても楽しみな抽選会だが、今年は昨年に引き続き自主開催なので、当然ながら実施されない。

このように、とても楽しいマラソン大会だが、それに加えて、開催時期も貴重だ。
一般的にマラソン大会は秋から冬、せいぜい初春までに開催される。気温が低い季節の方が走りやすいからだ。
5月末のオリーブマラソンは、既に時季外れの大会であり、天気が良いと炎天下のレースになる。
ただし、去年や今年は自主開催のため、スタート時刻を通常より2時間ほど早めることができて、通常のスタート時刻の10時には終了することができた。暑くなる前に終わったので、だいぶマシだった。

(支部長)「暑くなる前で本当に良かったわい」
(ピッグ)「自主開催の良いところですね」


一般的には6月から9月にかけてはマラソン大会の閑散期になり、出場できるレースが少なくて困ってしまう。なので6月に開催される北山林道駆け足大会は、とても貴重な大会だ

なぜか四国においては、高知にだけ夏場のマラソン大会がたくさんある。この6月の北山林道駆け足大会のほか、7月には汗見川マラソンが、9月始めには四国のてっぺん酸欠マラソンが、10月始めには龍馬脱藩マラソンが開催される。
これらが開催される5ヵ月もの間、他の県ではほとんどマラソン大会は無い。暑いからだ。
なぜ他ではマラソン大会が無いような暑い時期に高知でだけマラソン大会が頻繁に開催されるかと言えば、高知の山の中は標高も高いし、夏場でも涼しいと思われがちだからだろう。
もちろん、これは完全なる事実誤認であり、実際にはいくら高知の山の中と言っても、夏は暑い。とっても暑い。
2007年の汗見川マラソンなんて、開催された日の気温は、レースが開催された高知県本山町が全国で一番暑かったという、トンでもない状況だった。四国の山の中は暑いのだ。

それでも、6月に開催される貴重なレースだし、コースもとっても面白そうなので、4年前におんちゃんからお誘いがあったとき、即答で飛びついた。
ところが、いざ申し込もうとして困った。いくら探しても申込先が全然分からないのだ。超マイナーな草レースだからネットで申し込めないのは当然だろうけど、津野町のホームページにも情報が無い。
いったいどういうことだろうと思っておんちゃんに問い合わせてみると、「葉山ランニングクラブの中山さんか津野町教育委員会に電話してみて」との返事だった。
葉山ランニングクラブがどういう団体なのか分からないが、電話しようとしても高知の山奥だから電波が通じない。
それで津野町教育委員会に電話したら優しそうなお姉さんが出てくれて、すぐに話が通じて申込書を送ってもらった。一度参加すると、翌年からは申込書が送られてくるようになった。

ネットでエントリーできないってのは、今どき不便だが、逆に、それだからこそ我々にとっては参加しやすい大会だ
かつて汗見川マラソンもネットではエントリーできなかった。そのため一時は大会の存続すら危ぶんでいたが、ランネットでエントリーできるようになったら、あっというまに人気の大会となってしまい、定員が少ないこともあり、エントリーするのが大変な大会になってしまった。
定員1300人の汗見川マラソンですらそうなのだから、定員僅か500人の北山林道駆け足大会がネットで申し込めるようになったら、1分くらいで定員いっぱいになるかもしれない。そうなると、なかなか容易にエントリーできなくなってしまう。
現状のように、ネットでは情報すらほとんど得ることができないマイナーな状態だからこそ、知ってる人だけが参加できる居心地の良い大会になっているのだ。

なぜいつまで経ってもネットでエントリーできないマイナーな状態が続いているのかと言うと、なんとこの大会は実質的に個人がやっているのだ。
名目としては主催者は葉山ランニングクラブとなっているが、どう見ても、この葉山ランニングクラブは会長の中山さんが一人で切り盛りしているような感じだ。津野町の教育委員会も全面的に手伝っているものの、基本的に行政は主体ではない。
行政が主体でない民間のマラソン大会なんて存在は極めて珍しい。そして、それが一昨年まで21回も続いているなんて驚きだ。
運営は完全にボランティアだろうと思うけど、小さい村でこんなに大勢のボランティアを動員できるって、すごい。本当に地域に根付いたイベントになっている。
また、行政と一線を画しているとは言え、小学校の体育館を会場に使っているし、小さな山村のことなので、住民が一体となって開催しているのだろう。
すべては中山さんの力だろうと思うけど、中山さん自身は、ランニングできるような体型ではない。昔はやっていたのかも知れないが。

このような超マイナーなアットホームな大会なので、他の大規模なマラソン大会が中止になっても、この大会だけは開催してくれるかなあと微かな期待を抱いていたが、残念ながら去年は中止になってしまったし、今年も中止になってしまった。本当に残念だ。

そのため去年に引き続き自主開催となった今年の大会だが、参加メンバーは私、支部長、ピッグ、D木谷さん、のらちゃんだ。
私と支部長、ピッグは一昨年まで本番に4年連続で出場していた。D木谷さんは本番には出たことが無かったが、去年、始めて参加した。

(幹事長)「楽しかったでしょう?」
(D木谷)「いやあ、本当に面白いコースですねえ」


また去年は怪我で走れなかったのらちゃんも今年は初参加する。


〜 自主開催が当たり前に 〜


こんなに1年以上もマラソン大会の中止が続くと、自主開催がノーマルになってきた

(幹事長)「なんだか自主開催が当たり前になってきたなあ」
(ピッグ)「これはこれで良いんですけどね」


確かに、
自主開催レースには色んなメリットがある
列挙すると、
  ・みんなの都合に良い日に開催できる
  ・天気が悪い時は延期できる
  ・勝手にスタート時間を決められるから早朝に家を出発しなくてもいい
  ・混んでないから駐車場に困らない
  ・混んでないからトイレに困らない
  ・終わってからも混んでないからスムースに帰れる
  ・参加費がかからない


今回の北山林道駆け足大会で言うと、本来の正式な大会は6月上旬の開催だから、遅くても6月中には開催したかったところだが、参加メンバーの都合で7月の開催になった。
また、通常は天気予報を睨みながら雨を避けて開催してきたが、7月になると天気が良いと暑くて大変になるので、今回はあえて雨予報の日に決行した。

(支部長)「炎天下でなくて良かったわい」
(幹事長)「私は炎天下のランニングも好きやけどな」
(ピッグ)「好きなのとタイムが良いのとは別問題ですけどね」


このように自由に日程を調整できるほか、基本的に参加者は我々だけなので、
正式なマラソン大会のように参加者が溢れて混雑するって事がない
そのため、駐車場にも困らないし、トイレの前で長蛇の列に我慢して並ぶ必要も無い。もちろん、レースが終了してからもスムースに帰れる。

それに、何と言っても
参加費がかからないってのも大きなメリットだ。
最近はマラソン大会の参加料が高騰していて、今年の神戸マラソンの参加費は、なんと19700円もする!

(ピッグ)「にまんえんは高すぎますよねえ」
(支部長)「もう私らのような貧乏人はマラソン大会にも出られないご時世になったんよ」
(幹事長)「万国の労働者よ、団結せよ!」
(ピッグ)「幹事長は労働者ではないですけど」


我々はだいたい毎月1回くらいのペースでマラソン大会に出ているから、参加費だけでも年間で10万円はかかっている。それがタダになるのだから、自主開催も悪くない。

(ピッグ)「良い事づくしですよね」
(幹事長)「いまいち気合が入らないのは問題やけどな」


自主開催レースの唯一のデメリット
  ・正式な大会ほどは気合が入らないから良いタイムは出ない
ってことだ。
唯一のデメリットだが、このデメリットは大きい。

ただし、これは人による。
私なんかは、本番でないと気合が入らない。本番なら参加者が大勢いて、たくさんのスタッフがサポートしてくれて、沿道の声援も多いから、やる気がみなぎる。
私がマラソン大会に出たのは、1995年の瀬戸内海タートルマラソンが初めてだ
当時はマラソンブームが起きるはるか以前の事で、ジョギングする人だって滅多にいなかったから、全国的にもマラソン大会は数が少なく、たまにあっても出場するのはマニアックな人ばかりという状況だった。
なので、一般人にはマラソン大会に出るなんて発想は無かったんだけど、タートルマラソン大会のCMがテレビで流れていて、「ゆっくり走るタートルマラソンだから誰でも出られるよ」なんて甘い言葉で誘われて、ついフラフラと軽はずみな気持ちで申し込んでしまったのが最初だ。
もちろん、右も左も分からないど素人が一人で初参加したので、とんでもない大惨敗だったが、初めて出場したマラソン大会は感動的なものだった
誰でも参加できる市民マラソン大会を走っているだけなのに、
沿道の住民からは熱い声援があり、まるでオリンピックを走る一流選手になったような気分になれたからだ。
今思えば、人口が少ない地域の小さな大会だから、もっと大きな都市部の大会に比べたら、沿道で声援を送ってくれる人の数は少なかったんだろうけど、他人から声援を受けて走るなんて事は、義務教育を終えてからは初めてだったので、とても快感だった。
この初参加が、あまりにも楽しかったため、それから色んなマラソン大会にどんどん出るようになった。
なので、私はマラソン大会が大好きだ。
本番になると、気合が高まり、普段以上の力が出る
逆を言えば、
本番でないと、どうしても気合が入らない。いくら頑張ってるつもりで、からっきし駄目だ。

ただ、これは私の個人的な問題であり、
女子部員のゾウさんやのらちゃんは、普段の練習でも本番と同じようなペースで走っている。練習の質がとても高い。
このように練習の時ですら本番と同じようなスピードで走れるゾウさんやのらちゃんなら、自主開催レースでも正式な大会と同じようなタイムを出すことも可能だ。
でも、私なんて、どんなに頑張ってみても、本番のようなペースを練習で出すのは不可能だ。
自主開催レースなら、永遠のライバルである支部長やピッグと一緒に走るから、独りで練習している時よりはマシだが、それでも
大したスピードは出ない

また、常に大勢の参加者が周りにいるため緊張感が持続する本大会と違って、参加者が少ない自主開催レースだと、
他のメンバーから少し遅れてしまうと、すぐに一人旅となり、その時点で緊張感もやる気も無くなり、トボトボと足を引きずりながら撃沈する。

(幹事長)「やる気なくなるよな?」
(ピッグ)「完全になくなりますね」


私もピッグも、調子が良い時は自主開催レースでも優勝することがあるが、
みんなからちょっと遅れると、一気にやる気を無くして、ダントツの最下位に転落してしまう

(幹事長)「その点、支部長は最近、妙に粘り強いよなあ」
(支部長)「勝負を諦めんからな」


以前は、
あんなに撃沈していた支部長が、最近は最後まで粘り強く走るのが理解できない。

(幹事長)「何があったん?」
(支部長)「単に練習のたまものや。練習量は嘘つかんぞ」
(幹事長)「相変わらず月間走行距離200kmを維持してるん?」
(支部長)「当たり前やんか」


私は最近、登山にばっかりうつつを抜かしているため、月間走行距離はギリギリで100kmを越える程度だ。
今日も支部長に惨敗するかも。


〜 津野町へ出発 〜


今年はD木谷さんが車を出してくれて、我が家には5時40分頃に迎えに来てくれた。
こんな早朝に出るとなると、5時には起きないといけないが、高齢化してきたので、それくらいの早起きは許容範囲だ。早いと言っても、5時過ぎには港に並んで奴隷船に乗り込まなければならないオリーブマラソンより、よっぽどマシだ。
その後、みんなを拾いながら最終的に7時前には丸亀を出発した

(ピッグ)「最近、幹事長は県外遠征の時は絶対に車を出しませんね」
(幹事長)「年寄りになってくると、車を運転するのがしんどくてのう」
(ピッグ)「その割には、こないだも登山で九州を一周してましたよね」


「今週はずっと天気が悪いよ」っていう天気予報だったが、朝、起きると、雲ってはいるが、すぐに雨が降り出しそうな気配でもない。
このレースは開催時期が梅雨どきなので、初参加の時から3年連続で、毎年、雨が降っていた2016年は、かなり激しい雨が降っていて、屋外に出るのが躊躇われるくらいの雨だったし、2017年もかなりの雨が降っていたし、2018年も小雨が降っていた
2019年は初めて雨が降らず、2020年の自主開催でも曇りだったが、この時期に高知で開催されるマラソン大会は基本的に雨の中のレースになる事を覚悟しなければならない。雨が前提だ。

今日の天気予報は、香川県も高知県も「雨が降ったり曇ったり」てな感じだった。
これは香川県の方言では「雨が降りそうに見えるかもしれないけど、結局は全然降らないのよね〜」って言う意味だ。
だが、同じ天気予報でも、土佐弁では「いきなり土砂降りになるから流されないように気をつけてね〜」と言う意味になる。雨が降るかどうかではなく、雨の程度の問題だ。
いくら梅雨どきと言っても、日本一雨が少ない香川県地方ならカラ梅雨ってこともあるが、日本一雨が多い高知県では絶対に毎日雨が降り続いている時期なので、高知の天気予報で「雨かも」になってると、雨が降るのは間違いない

ただし、今の我々は雨を恐れていた昔の我々ではない。昔の我々なら、雨のマラソン大会なんて走る気が起きなかった。朝から雨が降っていると、空を見上げながら連絡を取り合って、結局、みんな揃って欠場って事も多かった。
しかし、2010年のオリーブマラソンで考えが変わった。その日は朝からものすごい土砂降りの雨だったので、みんなで欠場の相談をしていたら、我がペンギンズのエース城武選手から「雨がどうしたんですかっ!何を考えてるんですかっ!」と一喝され、渋々参加した。
ところが、土砂降りの雨は、走りにくいどころか、気温が低くなって走りやすくて、後半の大きな坂も全然、苦にならず、最後までペースダウンすることなく、というか、坂が多い後半の方がペースアップしてタイムが良くなるという考えられないレース展開でゴールし、2時間を大幅に切る大会自己ベストとなった。
私だけでなく、ピッグも支部長も快走した。それ以来、暑い季節には、むしろ雨を好むようになったのだ
この北山林道駆け足大会においても、初参加の2016年には、主催者の中山さんが「雨が降って絶好のマラソン日和になりました」って言ってたけど、この時季は雨でも降らないとマラソンには暑すぎて、討ち死に間違いなしになるので、雨の方が大歓迎だ

(のら)「私は雨は嫌だなあ」
(幹事長)「炎天下のレースに出た事がないからだよ」


のらちゃんは夏場の炎天下のレースに出た事がないから雨を嫌がっているが、一度、体験すると、夏場は雨を好むようになる。
特に、極端に汗っかきで暑さに弱い支部長は隠れて雨乞いをしているくらいだ。

高知へ行くには高速道路を飛ばして四国山地を越えて行くんだけど、毎年、いくら瀬戸内海側が快晴でも、高知の山の中に入っていくと、だんだん天気が怪しくなってきて、空には雲が立ちこめ、そして遂には雨が降り始める
今年もそうなるだろうと期待していたら、一向に雨の気配が無い。それどころか、なんと所々に晴れ間が見えてきた。一体、どうなってるの?

スタート時刻を考えると、そろそろ車の中で朝食を食べなければならない。
去年はなぜが非常に体調が悪かった。原因は不明で、全く心当たりが無かったんだけど、前夜、寝るときから頭痛があって、朝起きるのも大変だったし、起きてからもフラフラしていた。
そのため、車の中で朝食を食べたら吐きそうになり、無茶苦茶気分が悪くなった。
しかし、今年は体調は悪くないので、朝食を食べることにした。

朝食はおにぎりだ。以前はレース中にお腹を壊すことが多かったので、用心して朝食と一緒に下痢止めの薬も飲んでいたが、2015年の徳島マラソンから朝食を菓子パンからおにぎりに変えてみたらその後は一度もお腹を壊さなくなった
パンに含まれるフルクタンという糖類は消化に悪く、下痢になりやすいが、お米に含まれている糖類は消化が良いので、おにぎりを食べれば、もう下痢を心配する必要は無いのだ。
なーんて、すっかり油断してたら、なんと2020年2月の高知龍馬マラソンで5年ぶりにレース中にお腹を壊して20分もトイレにこもってしまった。原因は分からない。でも、少なくともおにぎり路線が悪い訳ではないだろう。
これまでは、おにぎりの他に、バナナやゼリーも食べたりしていたが、それらを控えることにした。レースに備えようと思ってレース直前に食べすぎるのは禁物だ
て事で、今日は少し控えめに、おにぎりを2個食べて終了した。


〜 会場へ到着 〜


葉山村は高知の山の中とは言え、須崎市までは高速で行けるので、順調に行けば2時間ちょっとで着く。今日も9時前に会場の葉山小学校に到着した。
車から降りて外に出ると、空気がもわっとして、息苦しいような蒸し暑さだ。もう雨は期待できないかもしれない。そうであれば、本格的に暑くなる前に、少しでも早めにスタートしたい。

て事で、さっそく準備を始める。
まずはウェアの選択だ。「何を着るか」は、どんな季節のマラソン大会であっても最も重大な課題だ

(D木谷)「夏だから秘密兵器のメッシュのシャツを着るんでしょ?」
(ピッグ)「それとも、青森勤務時代に会社を騙して作らせた陸上部のユニフォームですか?」
(のら)「あのメッシュのシャツは、いつの時のユニフォームなの?」
(幹事長)「あななシャツはユニフォームではない!」


あんなメッシュのシャツを着て走る陸上部なんて、有り得ない。あれは海で遊ぶとき用のシャツだ。

秘密兵器のメッシュのシャツは今日は着ない


みんな、よっぽど秘密兵器のメッシュのシャツの印象が強烈だったと見えて、私は夏のレースでは必ず着用するものと勘違いしているが、そういう訳ではない。
もちろん、炎天下のレースなら、この時期は秘密兵器のメッシュシャツが素晴らしい効果を発揮する
2014年2015年のオリーブマラソンで炎天下にもかかわらず好タイムを出せたのは、メッシュのシャツのおかげだと思う。
それまで炎天下のレースでは惨敗続きだったのが、急に快走できるようになった理由は他には見当たらない。間違いない。
しかし、その後は2016年のオリーブマラソンのように秘密兵器のメッシュのシャツを着ても惨敗したこともあった。なので、メッシュシャツを着たからと言って必ずしも快走できる訳ではないってことが分かった

それに、そもそも今年は正式な大会でないため、ロクなタイムが出ないことは分かりきっている
ゾウさんやのらちゃんなんかは精神力が強いから、練習の時でも本番同様のスピードで走ることができる。彼女たちなら、自主開催であっても、正式な大会と同レベルのタイムを出せるだろう。
しかし私なんかは練習になると、どんなに気合を入れてみても、本番とはほど遠いペースに落ちぶれてしまう。なので、自主開催の今日は正式な本番とは比べ物にならないスローペースになるのが目に見えている
こんな状態なので、秘密兵器のメッシュシャツを出してくるのは止めておいた。なぜなら、秘密兵器のメッシュシャツはいつ買ったのか忘れてしまったが、もう古くてボロボロになっていて、いまにも破れそうなのだ。
だからここぞと言う時のために大切に保管しておかなければならない。どんなにあがいてもロクなタイムが出そうにない今日なんかに着るのはもったいないのだ。

てことで、今日は5月のオリーブマラソンでも着た袖無しのランニングシャツを選択した。去年のこの大会でも着たものだ。

(D木谷)「それも、なかなか涼しそうですよね」

秘密兵器のメッシュシャツほどではないが、このシャツも背中側は少しメッシュになっているし、袖も無いから、普通のTシャツに比べるとかなり涼しい
ただ、まるで何も着ずに裸で走っているような感覚になれる秘密兵器のメッシュシャツに比べたら、このシャツはそこまでの解放感は無い。
下は練習の時にいつも履いている短パンを履いた。
さらに脹脛サポーターを履く。筋肉の疲労防止のために、寒い時期ならタイツを履くが、今の時期にタイツを履くと暑すぎる。D木谷さんもいつものように脹脛サポーターを履いている。
ところが去年は脹脛サポーターを履いていた支部長は、今日はタイツを履いている。

(幹事長)「タイツは暑いよ」
(支部長)「どっちみち暑いから同じや」


のらちゃんはタイツのほかに、黒いアンダーシャツも着ている。

(幹事長)「それは絶対に暑いってば」
(のら)「だって日焼けしたくないし」


一方、ピッグは脹脛サポーターすら履いていない。

(幹事長)「あれ?今日は履いてないん?」
(ピッグ)「距離が短いし、不要かなと思って」
(幹事長)「舐めとんか」


脹脛サポーターは、とてもきつくて脱着が大変だから、履くのが面倒だっていう気持ちは分かるが、明らかに今日のレースを舐めている

それに対して支部長は、新しいシューズを履いて気合十分だ。つい最近、新発売になったばかりのナイキ・エアズーム・ペガサス38だ。
スポーツデポで女性店員に薦められて買ったんだけど、最後に「楽に長く歩けますよ」なんて言われて、散歩好きの爺さんと思われてた事が分かってショックを受けた記憶が生々しい。
でも、どう考えてもウォーキング用シューズではないから、店員の知識不足だろう。

そのほか、今日は雨だろうと思ってたので、雨除けのためにランニングキャップを持ってきたが、雨は降りそうにない。他のメンバーは全員、日除けのために被っているが、私はキャップは嫌いなので被らない。。
雨は降りそうにないけど、強烈な日差しって訳でもなさそうなので、日焼け止めクリームは塗らない。サングラスも不要だろう。
一方、支部長は暑くても手袋を欠かさない。汗を拭くためだ。これまでは常に軍手を履いていたが、今日は普通のランニンググローブを履いている。
私は手袋は暑いので、汗を拭くハンドタオルをポケットに入れる。お腹を壊した時のためにポケットティッシュもポケットに入れておく。

自主開催レースでは給水所が無いため、いつもはトレランリュックに飲料ボトルを入れて走る

(のら)「今日もトレランリュックに飲料ボトルを入れて走るの?」
(幹事長)「今日は距離が短いから、要らないんじゃないかな」
(D木谷)「え?飲料を持っていかないんですか?」
(支部長)「大丈夫かなあ」


みんな飲料を持たずに走るのが不安そうだが、私が持たないのを見て、みんな置いていくことにした。僅か12.8kmだから大丈夫だろう。
一方、ピッグだけは最初から何も持ってない。

(幹事長)「舐めとんか」
(ピッグ)「幹事長も舐めてますよね」


トレランリュックを持っていかないので、スマホやカメラも置いていく。

準備が整ったら、新しい団旗の前で記念撮影だ。2週間前の庵治トレラン大会で初お目見えした団旗だが、自主開催マラソン大会では今日が初掲揚だ
新しい公式ポーズの「ニャロメの逃走」を決める。

新しい団旗の前で「ニャロメの逃走」を決める参加メンバー


記念撮影が終わったら、葉山小学校の運動場のトイレを使わせてもらい、そろそろスタートする事にしてスタート地点に移動する


〜 スタート前 〜


初参加者もいるのでコースを確認する。コースはそれほど複雑ではない。
スタート地点は三嶋様という三嶋神社の前で、ゴール地点葉山小学校の横だ。三嶋神社は葉山小学校の400mほど西にある

(のら)「え?じゃあスタート地点からゴール地点まで400m走って終わり?」
(幹事長)「お決まりのボケをありがとうございます」

もちろんわざわざ高知まで400m走をやりに来た訳ではない。
スタートしたら東に向かって走り、ゴール地点を通り過ぎて、そのまま狭い道を1kmちょっと走る。そこで狭い道から国道197号線に出る。
国道197号線を1kmちょっと走ったら国道から離れて左折し、北側にある山に向かって狭い道へ入っていく
しばらく走って3km地点あたりからが上り坂となる。特に4km地点くらいからが強烈な急こう配になる。
6km地点過ぎで急こう配が終わり、山の中腹の緩やかな上り坂の林道を走る。これを2kmほど走ると、8km地点過ぎ最高点に達する。
そこから1kmほど緩やかな下り坂を走ると、9km地点過ぎで今度は下界に向かって一気に降りる強烈な急こう配の下り坂になる。
急な下りを3kmほど走ると一瞬だけ国道197号線に出るが、すぐさま左折して狭い道に入り、スタート地点に戻ってくる
スタート地点を通り越して400m走るとゴールだ。

スタート地点からゴール地点までの400mほどはコースがダブっている
もう少しスタート地点とゴール地点を離せば13kmちょうどになるし、逆にスタート地点を前にずらせば12kmちょうどにもできるんだけど、わざわざダブり区間を作って12.8kmなんていう中途半端な距離にしているのは意味不明だ。
最初から最後まで信号機は無いし、交通量も非常に少ないので、交通安全上は安全なコースだ。

(のら)「道に迷いそうな場所は無いの?」
(幹事長)「無いことはない」


ちょっと迷うような分岐がいくつかあるが、コースは基本的に反時計回りだから、基本的に分岐では左折すればいい
ただ、9km地点を過ぎて急こう配の下り坂に突入する三叉路は、左折ではあるものの、左斜め後ろに鋭角に曲がる狭い道に入っていくため、ボウッと走っているとそのまま右斜め前方に行ってしまう可能性があるので、要注意だ。
そのほか、いつもなら分岐点にはスタッフが立っていて指示してくれるから何も考えずに走っているが、自主開催では自分で道を判断しなければならないから、ボウッとしててはいけない。

(幹事長)「とにかく分岐があったら左へ行くこと」
(のら)「分かるかなあ」
(幹事長)「たぶん僕が最後尾になるから、待っててくれたら道案内するよ」
(ピッグ)「早くも敗北宣言ですか」

もちろん、これは口先だけで、本音は優勝を目標としている。去年は原因不明の極度の体調悪化で惨敗したが、今年は体調は悪くない。
しかも、前回の小豆島オリーブマラソンでは、久しぶりに支部長に勝利して、長いトンネルから抜け出す光が見えてきた。
あの時は支部長には久しぶりに勝ったが、ピッグには負けが続いているので、今日はピッグにも勝ちたいところだ。

当然ながら、本日の目標大会自己ベストだ。どんな時でも、どんなレースでも、常に大会自己ベストを狙うのが良い子のランナーとしてあるべき姿だ
マラソンはコースや季節によってタイムが大きく変わってくるため、違うレースのタイムを比較するのは不適当なので、どんなレースに出ても、とりあえず大会自己ベストを狙うのが良い子の正しい道だ。
特に、このレースは距離も中途半端だし、坂も異常に厳しいから、他のレースとは比較のしようがない。
なので、目安はあくまでも過去のタイムだ。この大会の自己ベストは2019年のものなので、それが目標となる。

ただ、正式な大会でない自主開催レースで自己ベストを出すのは難しい
上にも書いたように、ゾウさんやのらちゃんら女子部員は精神力が強いから、練習の時でも本番同様のスピードで走ることができる。しかし私なんかは練習になると、どんなに気合を入れようとしてみても、本番のような気持ちの高まりを得る事はできないため、アドレナリンの分泌が皆無になる
今日はみんなで走るので、単独での練習よりは気合も入るだろうと思うが、そうは言っても正式な本番とは比べ物にならないスローペースになるのは目に見えている。

それに練習不足だ。1月、2月はまだ月間走行距離200kmを達成していたが、ここんとこやたら登山ばかりにうつつを抜かしているので、月間100kmを超えるのが精一杯だ。
相変わらず月間走行距離200kmを維持している支部長と差がつくのは当然だ。
なので、大会自己ベストが難しいのは分かっているが、他に目標が思いつかないので、取り合えずそれでいこう。

作戦はシンプルだ。このレースは距離が12.8kmしか無いうえ、急激な上り坂や下り坂が続くので、作戦なんて考えても仕方ない
レース序盤に無理すると、終盤になって一気にツケが回ってきて失速するのがマラソン大会の常なんだけど、このレースは事情が異なる。
序盤の3kmほどのフラットな区間が終わると、その後は急な上り坂になるので、そこまでの序盤を無理して飛ばそうが自重しようが、どっちみちペースは落ちるので、最初のフラットな区間は飛ばせるだけ飛ばしていい
その後に続く急激な上り坂ではどんなに頑張っても大したスピードにはならないし、終盤は急勾配の下り坂が続いて転がり落ちるように全力で駆け下りるから終盤になって失速するってこともない。
なので、前半は抑えるべきだとか、最後まで一定のペースを維持するとかいった普通のマラソンでの作戦は意味をなさない。とにかく最初から最後まで全力で飛ばすしかないのだ。

(幹事長)「『姑息な作戦は考えない骨太作戦』と名付けよう」
(ピッグ)「『何も考えずに突っ走る無鉄砲作戦』ですね」

タイムの計測は、もちろん自己計測だ。自主開催なので当たり前だ。
そもそも、この大会は超マイナーな草レースなので、以前はスタッフがゴール地点で時計を睨みながらタイムを計測してくれていた。それがなぜか突然、2017年にチップ計測になった
この超マイナーな草レースでチップでタイムを計測する必要性なんて無い。距離は12.8kmという他に類を見ない中途半端な距離だし、コースは斜度が19度もある過激な山道だ。
こんなレースのタイムなんて何の参考にもならないので、タイムなんて適当で構わない。
なので、今年は自己計測だが、何の問題も無い。


〜 スタート 〜


スタート時間が近づいてきたので、主催者の幹事長からありがたいお言葉が発せられ、開会式が10秒ほどで終わり、事務局の幹事長から注意事項がアナウンスされた

(幹事長)「雨の後で路面は濡れているから、急勾配の下り坂は滑りやすいので気を付けましょう」
(のら)「うわ、それって怖そう」


路面は濡れているが、天気はますます良くなり、かなり暑くなってきた

(支部長)「完全に炎天下のレースになったなあ。堪らんなあ」
(幹事長)「炎天下は厳しいけど、支部長に勝てるチャンスが出てきたぞ」


圧倒的に豊富な練習量に支えられて驚異的な実力アップを成し遂げた支部長には、去年の秋以降、負けが続いており、普通に戦っては勝ち目が無いが、支部長は極端に暑さに弱いため、暑くなると私に勝機が出てくる
前回の小豆島オリーブマラソン自主開催レースでも、支部長は暑さでバテてしまい、久しぶりに勝利することができた。今日もチャンスだ。

9時半になり、支部長のカウントダウンにより一斉にスタートとなった。

普通のマラソン大会なら、序盤はあんまり飛ばさずにペースを抑え気味に走って、その日の自分の調子を見るってのが鉄則だ。周囲のランナーにつられてハイペースで飛び出すと、オーバーペースになって終盤に撃沈する要因になる。
しかし、この大会は特有の事情がある。この大会は行政が関わっていない草レースなので、交通規制が一切ない
スタートやゴールは葉山小学校前の狭い道なので車もほとんど通らないけど、しばらく行って国道197号線に出ると、車道は走れず、歩道を走らなければならない
国道自体がそんなに広い道じゃないから、歩道も非常に狭くて走りにくい。なので、基本的に歩道を走る区間は追い越しはできない。完全に禁止ではないんだけど、歩道から転げ落ちるリスクもあるので、みんな自重して行儀良く走る。
そのため、スタートしてから国道に出るまでの1kmちょっとの間に、自分が走る適切なポジションを確保しておかなければならない
自分の本来のペースより後ろの方になると、もっと前へ出たいのに出られないフラストレーションが溜まる。なので、国道に出るまでは、みんな全力疾走となるのだ。

もちろん、今日は自主開催なので、そこまでシビアに走る必要はない。なので、去年は序盤はみんな揃ってチンタラ走った。
だが、自主開催とは言え、わざわざ高知の山奥まで来て走っているんだから、チンタラ走ったのでは意味が無い。頭の中では本番を想定して真剣に走るべきだと思うので、今年はかなり真剣に走る。

自主開催レースでは、常に序盤は私が先頭を走っている。序盤はコースが分かりにくい事が多くて、道に迷う人が出るといけないので、分かりやすい道になるまではコースを把握している私が先導しているのだ。
自主開催レースが始まって以来、常に同じパターンだ。あわよくば、そのまま最後まで先頭で逃げ切りたいところだが、逃げ切れたのは酸欠マラソンくらいで、たいていは序盤のうちに支部長に追い越されていく。
このレースは去年も自主開催したので、みんなもうコースは分かっているとは思うが、前回の小豆島オリーブマラソンではトップを走る支部長が折り返し点を間違ったりしたので、要注意だ。

天気はますます良くなり、かなり日差しは暑くなってきたが、それでも気合を入れて走ると暑さの事は気にならず、やる気は満ちている。
大勢のランナーと競いながら真剣勝負する正式大会ほどマジで走れる訳ではないが、それでもみんなと走っているので、単独で練習している時に比べたら、だいぶ気合が入り、清々しい気分でしっかり走れている。競い合う感じが心地いい。
とは言え、後ろからみんなの足音がついてきているので、そんなに速いスピードで走れる訳ではないようだ。できれば少しはみんなを引き離したいところだが、なかなか難しい。

そのまま国道に出て、狭い歩道に入っていくと、ピッグが横に並んで追い越そうとする。こんな序盤でトップを譲る訳にはいかないので、ここは頑張ってペースを上げて追い越しを阻止する。
そんな消耗戦を何度か繰り返したら、国道から離れ、いよいよ山の方に向いて上がっていく
狭い道だが、国道と違って車道と歩道の区別が無いので、ランナーとしては走りやすい。車が来れば避けなければならないが、交通量はとても少ない

しばらく走って、少し上り坂になってきたところで、再び足音が迫ってくる。またピッグかと思ったら、今度は支部長だった
自主開催シリーズが始まって以来、お馴染みの展開であり、慣れているので焦らない。多くの場合は、そのまま最後まで逃げ切られてしまうが、途中でへばって歩き出したところを抜き返せる事もある。
取り合えず、そのまま泳がせることにした。
すると、支部長に着いてD木谷さんも抜いていく。ちょっと焦るが、まだ序盤なので、ここでムキになって無理したら先がもたない。なので、自重して着いていく。

しばらく走っていると、前を走るD木谷さんが突然、立ち止まる。

(D木谷)「ちょっと道がおかしくないですか?」
(支部長)「え?そうかな?」


すると後を走っていたのらちゃんも声を上げる。

(のら)「道はこっちじゃないの?」

初参加で、唯一、道を知らないのらちゃんの発言なので半信半疑で戻って行くと、確かに彼女が言う方の道が正解だ。

(のら)「分岐があったら左へ行けって言ってたじゃん」
(幹事長)「分岐があったことすら気付かなかった」


戻ってから見てみると、普通に走っていれば迷い込むような道ではないのに、なぜか支部長は躊躇なく変な脇道に入って行ってたようだ。D木谷さんは「ちょっとおかしいな」とは思いつつも、あまりにも支部長が何の迷いも見せずに力強く曲がって行ったので、着いていったそうだ。
私は、要注意個所はいくつか頭に入れていたが、こんな所に道を迷うような場所は無かったはずなので、盲目的に支部長に着いていった。

(幹事長)「なんで、こんな所で道を間違えたんや!?」
(支部長)「よう分からん。おかしいなあ」


支部長を責めてはみたものの、自分も情けない。普通に真っすぐに進めばいいのに、なんでわざわざ変な道に入っていったのだろう。

この混乱により、いきなりトップが入れ替わって、のらちゃんが先頭を走り始める
慌てて着いていくが、一度、停まって、悩んだりしたもんだから、ペースが崩れてしまった。せっかく、それまで先行する2人に着いて、なんとか頑張って走っていたのに、ガタガタになってしまった
そしたら、のらちゃんと一緒に走ってきてたピッグものらちゃんの後を追うし、支部長とD木谷さんも抜き返そうと頑張って走り出し、気が付くと、あっという間に最後尾になってしまった

なんとかみんなに着いていこうとするが、だんだん上り坂の傾斜が強まってきて、徐々にペースが落ちていく。ただし、みんなもペースダウンしているようで、それほど差は広がらない。
去年は体調が最悪だったので、この辺りでみんなに離され始め、一気に差が開いて、あっという間に後姿が見えなくなってしまったが、今日はみんなの背中が見える。
すると、早くも支部長が突然歩き出す。こんなに早々にチャンスが来るとは思ってなかったが、ここで追い抜いておかなければ、また復活するだろうから、慌ててスピードを上げて一気に追い越す

とは言え、坂の傾斜はますますきつくなったので、そんなに速くは走れない。すると、しばらくして支部長が再び走り始め、一気に追いついてきた
支部長は、よく歩くが、少し休んで再び走り出すと、一気にトップスピードに戻り、何事もなかったかのように走り出す。普通の人は、一度、歩いたりすると、もう速くは走れなくなるんだけど、不思議な能力だ。
あっという間に追い抜かれたが、再び歩き出すのを待って、しぶとく後を着いていくと、しばらくすると思った通り再び歩き出した
もちろん、再び一気に追い抜き、そのままスピードを緩めずにできるだけ差を着けておく
道はつづら折れに曲がりくねった山道になってきたので、少し差がついて離れると、先行ランナーの後姿が見えなくなる。
支部長も、私の姿が見えなくなれば目標が無くなり、再び走り出そうという気力が失せるだろうと期待して、頑張って差を広げる。

一方、前方には、すぐ前にピッグが走り、その前をのらちゃんが走り、さらにその前にD木谷さんが走っている。
D木谷さんとのらちゃんとピッグと私の差は等間隔で、さほど変化は無いので、取り合えずピッグの後を着いていけば、そのうち何とかなるだろう。
相変わらず日差しが照り付けてくるが、山深くなってきたので、日陰も増えてきて、死ぬほどの暑さではない。全身汗でびしょ濡れになってきたが、それほど喉の渇きは感じないので、まだまだ頑張れそうだ。

坂の傾斜はどんどん厳しくなってきて、ますますスローペースになってきたが、前を行くピッグやのらちゃんやD木谷さんも同じようにスローペースになってきて、差は開かない。
自分の足を見ると、まるで歩いているのと変わらないスピードだが前の3人も同じように歩いているのと変わらないスピードだ。
て言うか、よく見ると、3人とも時々歩いている。私は歩かないので、追いつくチャンスなんだけど、所詮は歩いてるのと同じようなスピードなので、追いつくこともできない。
一方、後の支部長も気になるが、姿は見えないままだ。

なんとか走り続けていると、ようやく激坂区間が終わり、傾斜が少しなだらかになる。まだまだ上り坂は続くけど、斜度はもう大したことはない。たまに急傾斜の坂もあるけど、すぐに終わり、基本的には緩やかな上り坂だ
激坂区間が終わったと思うと、ホッと一安心だ。しかも、思ったほど体は消耗していない。まだまだ、ここから頑張れそうだ。
取り合えずピッグに着いていこう。

なーんて思って前をよく見ると、いつの間にか、のらちゃんの背中が遠くなっている。なんと、のらちゃんとピッグの差がどんどん開いているのだ。D木谷さんの後姿なんて、すっかり見えなくなっている。
油断してピッグだけを追っていたが、このままではのらちゃんに離されてしまう。
慌ててスピードを上げる。まだまだそれほど疲れていないし、道も緩やかになってきているので、一気にスピードを上げてピッグを追い越す
ピッグはもう疲れ果てているようで、着いてくる気配はない。

この辺りにくると、木々に囲まれた山の中なので、例年は涼しくて走りやすいんだけど、今日は日陰でもかなり暑い。また、今年は落石が多い。注意して走らないと危険を感じるくらいだ。
それでも頑張って走って行くうちに、のらちゃんとの差は徐々に縮まり、すぐ目の前に近づいてきた。ただ、彼女もこちらの気配に気づいたようで、頑張って走っているため、なかなか追いつけない。
それでも、こちらはまだまだ消耗しておらず、余力が残っているので、道がフラットになったところで、一気に追いつき、追い抜いていく
かなりスピードを上げたので、彼女は着いてこられない。勢いに乗ってガンガン走り、一気に差を着ける作戦だ。

だいぶ走ってきたが、なかなか最高点にならず、緩やかながらも上り坂が続く
ただ、去年、走ってみて、なかなか最高点が来ないのは分かっているので、我慢して走って行く。むしろ、上り坂が続いた方が、バテてきているのらちゃんやピッグが追い付いてこないだろうと思う。
また、下り坂になると、とたんに息を吹き返す支部長との差は、できるだけ付けておかなければならない。

上り坂と言っても、傾斜は緩やかなので、スピードを緩めることなく走って行くと、ようやく下り坂が出現する。やっと最高点を過ぎたようだ。
快調に走っているつもりだが、思った以上に時間がかかっている。決して速いペースではないようだ。
下り坂が現れてからも、安心してはいけない。去年は、なかなか左斜め後ろに鋭角に曲がる9km地点過ぎの三叉路が現れないから、もしかして三叉路を見落としてしまったのだろうかと思い、ものすごく不安になったが、今年は分かっているから慌てない。

この後、再び上り坂が現れるが、道を間違えている訳ではないから安心していい。道は、基本的には下り基調の区間なので、短い上り坂が終わると、再び下り坂になるが、そんなに急こう配ではない
緩やかな下り坂を走って行くと、なんと再び上り坂が現れる。上り坂が2つもあったのは覚えていないので、さすがに少し不安になってきた。でも、どう考えても三叉路を見落としたはずはない。
なので、少し不安になりつつも、スピードを緩めることなく、突っ走る。

その後も、緩やかな道が意外なほど長く続くので、不安はますます高まっていくが、気を緩めると誰かに追いつかれそうなので、ひたすら走り続けると、ようやく三叉路が現れた。道は間違ってなかった。
それにしても、思いのほか時間がかかっている。支部長を抜き、ピッグを抜き、のらちゃんまで抜いてきたので、てっきり絶好調で走っているような気がしたが、全然速くない
単に、他のメンバーがバテて自滅して遅くなっているだけだ。

急角度の三叉路を曲がって狭い道に入ったら、ようやく本格的な急勾配の下り坂区間が始まるものすごく、きつい!きつ過ぎる!傾斜20%の下り坂が続く。
標高300m以上の所から下の国道まで標高差300mほどを一気に駆け下りるのだ。

もともと交通量の少ない林道なので、路面は苔むしている。そして、今日は雨の後なので、濡れた苔が非常に滑りやすくなっている
また枯葉もたくさん落ちていて、それもまた滑りやすくなっている。て言うか、苔も枯葉もない路面でも、なんだかヌメッと滑りやすくなっているので、非常に危険だ。
そうは言っても、あんまりゆっくり走っていると、すぐに誰かに追いつかれるだろうから、慎重に路面をチェックしながらも、できるだけスピードを出したまま駆け下りていく。

とは言え、あまりに急な下り坂のため、体に足が着いて行かない。体は重力で転がり落ちるように前に前に倒れこむが、足がそんなに早く回転しないから、前につんのめって転びそうになる。
そのため、適度にブレーキを掛けないといけない。そうなると、ますます滑りそうで怖い。
若い頃はもっと足が回っていて、下り坂になると、中山選手(元ダイエー、前ジュビロ)と一緒に重力走法と称して、重力に任せて転がり落ちるようにガンガン駆け下りていたのに、今は足が思ったように回転しないから、せっかくの重力を十分に活用できず、スピードが上がらないのがじれったくてもどかしい。

転がるような急斜面の区間を過ぎると、傾斜が少し和らぎ、まだまだ急勾配とはいえ、ブレーキをかけずに思いっきり駆け下りられる程度になる。足の回転と体の落ち込み方が同じくらいになるので、これくらいが一番速く走れる。
また、この辺りまでくると木陰から抜け出し、日差しが当たるようになってくる。木陰から抜け出すと炎天下になって暑いけど、路面は渇いているので、滑る心配は少なくなる
この辺りは急勾配のつづら折りの道になっているので、前方のランナーが見える場所だ。しかし、いくら遠くまで見てもD木谷さんの姿は見えない。手が届かないくらい離されているようだ。

逆に、しばらく降りてから上を振り向くと、ちょっと上にのらちゃんが駆け下りてくるのが見えた。手を振ると、彼女も気付いたようで、手を振り返してくる。
さっきまで後ろを振り返っても姿は全然見えなかったが、そんなに思ったほど差は開いていないようだ。ただ、誰もが思い切り駆け下りる事ができる急勾配の下り坂では、なかなか差は縮まらないだろう。

とは言え、絶好調の時はもっと速く駆け下りることができたはずだが、今日はそれほどでもない。さすがに足が少し疲れてきているようで、イメージ通りには足が回らず、前に出ない
でも、後からみんなが追って来ているので、なんとか頑張って逃げ切らなくてはならない。モチベーションが皆無だった去年に比べてれば、やる気は失せていない。

その後、下り坂の傾斜は徐々に緩やかになっていき、どうしてもスピードは遅くなっていく。それでも下り坂が終わった訳ではないので、なんとか駆け下りていく。
ようやくほとんどフラットになってきて、ここが踏ん張りどころかなと思ったところで国道197号線に出て、すぐさま左折して狭い道に入っていくと、すぐスタート地点だ。


〜 ゴール 〜


スタート地点の三嶋神社の前を通り過ぎるとゴールの葉山小学校が見えてくる。目を凝らすと、先にゴールしたD木谷さんが待ってくれている。カメラを構えていくれているので、最後まで頑張って笑顔でゴールした。

タイムを確認すると、原因不明の体調悪化で苦しんだ去年よりはマシだが、なんと山で滑落して右足の靭帯を損傷した直後のためロクに走れなかった2017年のタイムと、ほぼ同じだった。
これには愕然だ。永遠のライバル支部長には前回の小豆島オリーブマラソンに続いて連勝したし、同じく永遠のライバルであるピッグには昨秋の脱藩マラソン以来の勝利となり、まずまずの成績だったと思っていたのに、怪我の直後と同じだったなんて、信じられない気分だ
ただ、トップのD木谷さんとは2分くらいの差で、思ったほど離れてはいなかったようだ。要するに、全員、バテてスローペースだったという事だ。

(幹事長)「今日は前半のうちに前に出ましたねえ」
(D木谷)「あのままのペースじゃ遅すぎると思って」


確かに道迷いの混乱でペースが乱れていたから、立て直す必要を感じたんだろう。

しばらく待っているとのらちゃんが帰ってきた。下り坂の途中で手を振った時に比べて随分離れている。もうヨタヨタだ。だいぶ疲れているみたいだ。

(幹事長)「えらく遅れたなあ」
(のら)「下り坂で歩いたんよ」


下り坂で歩くなんて、よっぽどバテたんだろう。そこまで弱っているとは思わなかった。最後に見た時が限界だったのかな。

(幹事長)「そんなアンダーシャツ着てるから暑くなるんよ」
(のら)「だって日焼けしたくないんだもん。シクシクシク」


それでも僕とのタイム差は2分くらいだったから、そんなにすごい差ではない。

次は誰が現れるかなと思って見ていると、支部長が帰ってきた。まるで優勝した時のような素晴らしい快調な足取りでゴールした。やはり、上り坂では歩いても、下り坂になると異様なほどのスピードで駆け下りてきたようだ。

(幹事長)「意外に速かったなあ」
(支部長)「下り坂区間では1km4分半くらいやったからな」


僕は最後の下り坂区間でもせいぜい1km5分くらいしか出なかったから、やはり支部長は下り坂に強い。新しい厚底のナイキシューズの威力かもしれない。
タイムはのらちゃんと2分くらいの差だった。急勾配の下り坂になる手前でピッグに追いつき、その後は圧倒的なスピードで差をつけたらしい。
上にも書いたように、最近、支部長は、途中で撃沈して最下位に沈んでも、決して勝負を諦めず、最後に驚異的な粘り強さを見せて盛り返してくる。すごい精神力だ。

(支部長)「今日の敗因は余計に200m走ったことやな」

支部長は道を間違えて200m余計に走った。距離はたかだか200mだが、せっかくトップで快調に走っていたのに、あの道迷いでガタガタになったのは否定できない。

(幹事長)「2戦連続で道迷いで撃沈したなあ」
(支部長)「おっかしいなあ」


支部長は前回の小豆島オリーブマラソンでも折り返し点を通り過ぎて余計に200m走ったのが原因で撃沈してしまった。
暑さと道迷いが支部長攻略のキーポイントだ。

(支部長)「それに喉が渇いたよ」
(のら)「そうそう、飲み物を持って行かなかったのが敗因だよ」
(D木谷)「そうですね。今日は飲み物が必要でしたね」


みんな、飲み物を持っていかない判断をした私を非難する。

(幹事長)「そうかなあ。そんなに喉が渇いたような気はしないよ」
(のら)「なんて言いながら、さっきからものすごく大量の飲み物を飲んでるよ」


そして、最後にピッグがようやく帰ってきた。顔は笑っているが、嬉しくて笑ってるのではなく、疲れ果てて何も考えられない薄笑いだろう。

(幹事長)「今日は撃沈したなあ」
(ピッグ)「もうボロボロ」


上にも書いたように、ピッグは私と同様、他のメンバーから少し遅れて一人旅になると、その時点で緊張感もやる気も完全に無くなり、トボトボと足を引きずりながら撃沈し、二度と再び盛り返すことはできなくなり、ダントツの最下位に転落してしまう。

(幹事長)「敗因は脹脛サポーターやな」
(ピッグ)「そうですかねえ?」


脹脛サポーターを履かなかったからではなく、それくらいレースを舐めていた事が敗因だろう
そうは言っても、支部長との差は2分半くらいだったので、D木谷さん〜私〜のらちゃん〜支部長〜ピッグと、ほぼ似たような差で続いてゴールしたことになる。
2分差と言うと短いような気もするが、スタート地点からゴール地点までの距離くらいなので、簡単には追いつけない距離だ。


〜 反省会 〜


レースの後は温泉に入るに限る。毎年、このレースの後は近くにある葉山の郷という施設の温泉に入らせてもらえる。しかし、これは、農村体験実習館施設のお風呂を貸してもらっているものであり、普段は入れない。
なので、今日は去年に引き続き、須崎市のそうだ山温泉という温泉に入りに行く。漢字を見ると「桑田山温泉」と書いていた。
山の中にある、こじんまりとした温泉で、自然の中の露天風呂がとっても心地よかった

温泉に浸かりながら反省する。
順位としては悪くない結果だったが、タイムがとても悪かった。体調が最悪だった去年よりはマシだったが、怪我の直後でロクに練習ができなかった2017年と同じようなタイムだなんて、遅すぎる。
トップのD木谷さんですら、私と2分しか違わなかったということは、かなり遅いタイムだ。

(幹事長)「今日はみんなタイムが悪かったなあ。なんでかなあ」
(支部長)「暑かったからやで。例年より1ヵ月遅いからなあ」


あ、そうか。確かに、いつも6月上旬に開催されているけど、今年は7月になってしまった。この1ヵ月の気温差は大きいので、これくらいタイムが悪くなっても不思議はないかも
それで、ちょっと安心した。

このレースは年間のレースでも一番面白くて楽しいレースという印象が強い。前半は厳しい上り坂だが、終盤が下り坂なので、どんなに疲れている時でもハイスピードで駆け下りてくることができるので、ついつい顔がほころんでニコニコしながらゴールする。これは私だけでなく、他のみんなも一様にニコニコしながらゴールする。
ところが今年は下り坂の終盤で少し苦しくなったし、最後のゴール前では相当にバテていた。他のメンバーも支部長を除いては、かなり苦しそうにゴールしていた。
やはり暑さが厳しかったからだろう。

逆に言えば、この暑くて厳しいコンディションの中で、最後までそんなにペースダウンすることなく、割と元気にゴールできたので良かった。
今年に入ってから、丸亀マラソン、香東川マラソンと最下位が続き、低迷していたが、前回の小豆島オリーブマラソンで復活の兆しが見え、今日もさらに調子を戻してきた。
次のレースが楽しみになってきた。

次のレースは汗見川マラソンだ。みんなの都合と天候を見ながらの開催になるが、早ければ2週間後の開催となる。

(ピッグ)「え?にしゅうかんご?早くないですか?」
(幹事長)「今日のレースが遅れたのと、私の登山計画のしわ寄せで、そういうタイトなスケジュールになりまする」


今日は、雨が降るという天気予報が外れて想定外の炎天下のレースになったおかげで支部長やピッグに勝てたと思う。
なので、次回の汗見川マラソンも炎天下のレースになれば連勝の可能性が出てくる。神頼みだが頑張るぞ。


〜おしまい〜




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