四国ペンギンズ
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汗見川マラソン2025
第36回 汗見川清流マラソン大会
2025年7月27日(日)、猛暑の高知県本山町で第36回汗見川清流マラソン大会が開催された。
このレースは、暑い暑い四国の真夏に開催される大変貴重なマラソン大会だ。
以前は、真夏の四国のレースとして、ほかにも四国カルストマラソンがあった。
真夏に開催されるというだけでなく、かつての強烈登山レース塩江山岳マラソンに匹敵するものすごい急な坂が延々と続くという異常に厳しい20kmコースだった。
そのため、強烈な日射しにより地獄のような暑さで体が焦がされる中、走るのが不可能なほど急な坂をよじ登るという発狂するようなレースだった。
しかし、この殺人レースは、あまりの厳しさのため危険すぎるってことで廃止になってしまった。
他に夏場の山岳レースとしては、9月初めに開催されていた四国のてっぺん酸欠マラソンがあり、2015年以来、毎年連続でエントリーしてきた。
ただ、こちらは夏場の山岳レースとは言え、9月に入っているので、灼熱の炎天下というほどではない。ロクに日陰が無いコースだから天気が良いと炎天下にはなるが、7月末に比べたら随分マシだ。
しかし、それでも暑くて体に悪いからという理由で、2023年から開催日が10月初めに変わってしまった。
てことで、汗見川マラソン大会は真夏の四国のレースとして唯一の貴重なレースになった。
四国で真夏のレースが少ないのは、あまりにも暑くて走るのが大変だからだ。四国に限らず、全国的に真夏のレースは極端に少ない。
でも、だからと言って真夏にレースに出ないと、夏の間、ランニングをサボってしまいがちになる。
レースが無くても地道にトレーニングできる真面目な人ならいいんだけど、我々のように心が弱いと、レースが無いとどうしてもサボってしまう。
(ピッグ)「レースがあっても、こう暑いと練習はサボりがちになりますから、もうレースには出ません」
(幹事長)「なんとかーっ!」
レースが無いと完全に休養してしまう心が弱い私としては、少しでもモチベーションを維持するため、この時季にレースを1つは入れたい。
2020年から3年間は、新型コロナウイルスのバカ騒ぎが勃発し、独善的な医療関係者と破廉恥なマスコミによって非科学的でヒステリックなマラソン大会中止騒動が全国的に広がったため、この汗見川マラソンも3年間は中止になったが、2023年になってようやくコロナのバカ騒ぎが収束し、汗見川清流マラソンも4年ぶりに復活となった。
引き続き、2024も無事に開催され、そして今年も無事に開催される事になった。まことに喜ばしい限りだ。
〜 人気の大会 〜
練習もロクにできない発狂しそうなほど暑い四国の真夏に、マラソン大会に出たいって思う人がそんなにいるとは想像しにくいかもしれないが、実は汗見川マラソンの人気は高くて、申し込むのが大変だ。
(ピッグ)「定員が800人と少ないってのも大きな理由ですけどね」
以前は、申し込み期間が過ぎてからでも、役場に電話してお願いしたら出場させてもらえていた。2007年に初参加した時や、その翌年の2008年に参加した時なんかは、ざっと見て300人くらいしか参加してなかったから、人が集まらなくて大会が消滅しないか心配していたくらいだ。
場所が四国の山の中で不便なうえ、いくら標高が高いと言っても、山の中の盆地なので真夏は発狂的に暑いし、コースが川沿いの道を延々と10kmも上り続ける厳しいコースだから、人気が無くて当たり前だったのだ。
それなのに、しばらく四国を離れていたあと、四国に戻ってきた2012年に久しぶりに出てみようと思ったら、申し込もうと思ったときには既に定員に達して受付終了になっていた。
申し込もうとした時期が遅かったのは確かだが、それでも定員オーバーだなんて、かつての汗見川マラソンを知っている者なら、信じられない現象だ。しばらく四国から離れていた間に、人気レースになっていたのだ。
近年の異常なマラソンブームの中、真夏の四国のレースとして唯一の貴重なレースになったため、人気が沸騰したのだろう。
種目も、10kmコースのほか、ハーフマラソンの部が出来たので、超マイナーな山奥の草レースが、メジャーな大会になってしまったのだ。
(ピッグ)「定員僅か800人なんだからメジャーってのは言いすぎですけどね」
こんなに人気沸騰しているのだから、今どき定員800人だなんて少な過ぎるような気がするが、狭い山道のコースを考えると800人程度が限界のようにも思える。
こじんまりした和気藹々とした大会の雰囲気も好ましいので、エントリーしにくくなったとは言え、定員は増やさないほうが良いのかもしれない。
こんなに人気が出てきた汗見川マラソンなんだけど、うちのメンバーは動きが悪かった。
あれほど私が毎年、口を酸っぱくしてエントリーを促していると言うのに、多くのメンバーがエントリーに失敗していた。
メンバーの動きが悪いのは、このレースの坂と暑さに腰が引けてしまい、イマイチやる気が出ないからだ。
確かに「一体どうして、こななクソ暑い時期にマラソン大会が存在するんだろう?」という単純で素朴な疑問はある。
もう36回にもなる歴史ある大会なので、もしかしたら第1回大会が開催された頃は、7月下旬といえども、四国山地の真ん中の山間部は涼しかったのかもしれない。夏の真っ盛りだけど高地なので気温も下界に比べたら低めだろう、って事で始まったのではないだろうか。
しかし、こなな山の中でも高温化は確実に進んでいて、2007年に初参加した時は、この世のものとは思えないようなあり得ない暑さだった。
「四国山地の真ん中の高原で、こんなに暑いんだったら、下界は地獄のような暑さだろうなあ」なんて思っていたら、なんと、その日は、汗見川マラソンが開催された高知県本山町が全国で一番暑かったという、トンでもない状況だった。
昔は涼しかったのだろうけど、少なくとも今は、山の中だからと言って涼しさを期待してはいけない事だけは確かだ。
て事で、今年もメンバーの動きはイマイチ悪く、参加者は私、支部長、D木谷さん、のらちゃん、ザビエルの5人だ。
去年は出場したピッグ、加藤選手、O野選手は欠場だ。
〜 ザビエルの野望 〜
いまいち動きが悪いメンバーの中にあって、今年は新人ザビエルが初参加する。
ザビエルはマラソンに関してはほぼ完璧なまでのど素人だ。
生まれてこの方、長距離を走ったのは、先月に実施したオリーブマラソンの自主開催が初めてだ。その時に走った距離は14kmだった。
(幹事長)「いきなり14kmも走れるんかいな?大丈夫なん?」
(ザビエル)「大丈夫かどうかも分かりません」
という心もとない状況だったので、どこか途中で野垂れ死にするものとばかり思ってたんだけど、途中で買い食いしたソフトクリームのおかげで力が蘇り、最後までしっかりした足取りで完走した。
(幹事長)「もしかして秘めた体力があるの?」
(ザビエル)「それも分かりません」
なぜど素人のザビエルが急にマラソン大会に出ようとしているのかと言うと、イスタンブールマラソンに出るためだ。
幹事長と支部長、のらちゃんの自由人トリオは、昨年12月に初の海外遠征としてホノルルマラソンに出た。
これがめちゃくちゃ楽しかったので、これからは毎年、世界のどこかのマラソン大会に海外遠征すると言う方針を打ち出し、今年はトルコのイスタンブールマラソンに出る事にしたのだ。
そしたら海外旅行好きなザビエルが食いついてきて、一緒に行きたいと駄々をこねる。
(ザビエル)「私も出たい!一緒に行きたい!」
マラソンなんて走った事が無いザビエルが、なぜイスタンブールマラソンに出たいと言い出したかと言うと、単にトルコ旅行に行きたいからだ。
(幹事長)「それやったら普通にトルコ旅行に行ったらええやんか」
(ザビエル)「ボスポラス海峡を走って渡りたいの」
イスタンブールマラソンはアジアからボスポラス海峡の橋を走ってヨーロッパに渡ると言う、世界でも珍しいマラソン大会だ。2つの大陸を結ぶマラソン大会は世界でも唯一との事だ。
普通にトルコ旅行に行ったのでは経験できない貴重な体験ができるのだ。
(幹事長)「でも長距離を走った事も無いのに、いきなりフルマラソンなんて走れるかなあ」
(ザビエル)「走れる!何とかなる!一緒に行きたい!」
(支部長)「ホノルルマラソンも制限時間が無かったから、なんとかなるんと違う?」
ところが調べてみたらイスタンブールマラソンは制限時間があった。ただし、6時間20分というかなり緩い制限時間だ。
(ザビエル)「それなら走れる!一緒に行きたい!」
(幹事長)「それくらいやったら、練習したら走れるかも」
(支部長)「制限時間オーバーになっでも、ヤイさんみたいに最後まで勝手に走って完走したらええがな」
ヤイさんは那覇マラソンで足を痛めて制限時間内でのゴールが不可能になった後も最後まで歩き続けてゴールした。完走証も完走メダルも貰えなかったが、42kmを走り切ったという達成感は得られる。
(幹事長)「いかーん!イスタンブールマラソンに出るには実績が求められてる!」
(ザビエル)「やだやだ、それでも出たい!一緒に行きたい!何とかしてよ!」
(D木谷)「どんな実績ですか?」
(幹事長)「制限時間と同じ実績」
そうなのだ。イスタンブールマラソンに出るには実績が必要なのだ。
過去2年間でフルマラソンなら6時間20分、ハーフマラソンなら3時間25分という実績を残していないとエントリーできないのだ。
フルマラソンの6時間20分にしても、ハーフマラソンの3時間25分にしても、めちゃめちゃ緩い基準であり、ほとんど意味をなさないような気もする。
要するに過去にフルマラソンかハーフマラソンの大会に出たことがあれば誰でも参加できるっていうレベルの基準だ。
ところが、過去にマラソン大会なんて出た事が無いザビエルとしては、全く実績が無い。なので、エントリーが締め切られる10月14日までに実績を残さなければならない。
(D木谷)「今から10月14日までに開催されるマラソン大会って、何がありましたっけ?」
(幹事長)「汗見川マラソンと酸欠マラソンと脱藩マラソンくらいですかね」
(ザビエル)「どれが一番優しいんですか?」
(支部長)「どれも激坂の連続やから、簡単ではないなあ」
その中で敢えて言えば、坂が最も緩やかと言うかマシなのが汗見川マラソンだ。
酸欠マラソンや脱藩マラソンはザビエルには絶対に完走は不可能だが、汗見川マラソンなら奇蹟が起きれば完走も夢ではないかもしれない。
て事で、何としてもイスタンブールマラソンに出たいザビエルは、参加資格をゲットするために汗見川マラソンに出場することにし、その練習のために自主開催のオリーブマラソンに出たのだ。
そして、絶対に途中で野垂れ死にするだろうという幹事長の予想を見事に裏切って、最後までしっかりした足取り完走した。
なので、もしかして、ひょっとしたら、汗見川マラソンも完走して、完走証をゲットして、イスタンブールマラソンにエントリーできるかもしれない状況となった。
ただ、自主開催のオリーブマラソンは、単に14kmを完走したというだけであり、タイムは遅かった。
遅かったというより、途中でソフトクリームを買い食いしている。汗見川マラソンの本番でそなな事をしていたらタイムアウトだ。
(ザビエル)「途中でソフトクリームは売ってるんですか?」
(支部長)「トルコアイスがあるやろ」
(幹事長)「そななもん、汗見川マラソンにある訳ないやろ!」
(D木谷)「ゴールしたらシソアイスを貰えるよ」
(ザビエル)「ほんとですか?やったー!それを目標に頑張ります!」
こんな状態なので、幹事長としては、ザビエルが汗見川マラソンを完走できるかどうか半信半疑だ。て言うか、ゼロ信全疑だ。まず無理だろう。
(ザビエル)「それじゃあイスタンブールマラソンに出られないじゃないですか!」
(幹事長)「汗見川マラソンでは無理だろうけど、次の酸欠マラソンに賭けよう」
(支部長)「汗見川マラソンで無理だったら、酸欠マラソンでは絶対に不可能やろ」
(幹事長)「やっぱり?」
(支部長)「幹事長やって去年は制限時間ギリギリやったやんか」
そうだった。私も去年は制限時間2時間40分のところを2時間39分17秒で、危うくアウトになるところだった。
(幹事長)「それじゃあ、もう汗見川マラソンの一発勝負に賭けるしかないなあ」
(ザビエル)「頑張ります、軍曹!」
〜 会場へ出発 〜
当日は、高知の山奥まで日帰りするので、当然ながら早めに出発しなければならない。
しかも、かつては10時スタートだったので、6時に出発したら楽勝だったんだけど、スタート時刻が少しずつ早まり、今年はなんとスタート時刻が8時になってしまった。
大会案内を見ると「安全対策のためスタート時間を早めています」なんて書いてるので、暑くなる前に終わらそうと言う魂胆なんだろう。それは理解できる。
実は2016年の大会では、衝撃的なアンケートが手渡された。
「このマラソン大会は夏の真っ盛りに開催してきたけど、近年、地球温暖化のせいで非常に暑くなっており、事故の危険性も出てきてるので、開催時期の変更を検討しています。どう思いますか?」
なんていうトンでもない内容だったのだ。
もちろん我々は、
「何を言うてるんや!他のマラソン大会が開催しないような、このクソ暑い時季に開催するからこそ存在価値があるんやないか。開催時期を変えるんやったら参加せんぞ!」
と怒りの声をぶつけた。
おそらく、大半の参加者は同じような意見だったと思う。こんなマイナーな大会が人気を集めているのは、他にマラソン大会が皆無の酷暑の時期に開催されるからだ。
そういう参加者の圧倒的多数の声を聞いて、開催時期の変更を断念した事務局が、やむを得ずスタート時間を早めたって事だろう。
ただスタート時刻が早くなったせいで、遠方から繰り出す我々はますます大変になった。
便利の良い町中で開催されるマラソン大会ならイザ知らず、ただでさえ不便な山奥で開催されるから、従来のスタート時間でも早起きしなければならなかったのに、8時スタートになったら家を4時に出なければならなくなった。もう早朝というか、夜中だ。
今年は支部長様が車を出してくれる事になり、D木谷さん、ザビエルを拾ったあと、我が家には4時半に迎えに来てもらい、その後、のらちゃんをピックアップし、5時半に高速道路に乗った。
早朝のため道路は空いていて、高速道路も順調に進んだ。
スタート時刻を考えると、そろそろ車の中で朝食を食べなければならない。さすがに早起きしたからお腹が空いてきた。
私の場合、朝食を食べてしばらくするとトイレで大が出るようになるので、できれば朝早く起きて、早目に食べて出発する前にトイレを済ませるのが理想だ。マラソン大会の会場のトイレは、どこも激混みになるからだ。
しかし、老化の進行によって早起きが苦痛でなくなったとは言え、4時半に家を出るとなると、4時前には食べないといけなくなる。さすがにそこまで早い時間に朝食を食べると調子が狂いそうなので、家では食べず車に乗ってから食べる事にした。
もちろん、朝食はおにぎりだ。
以前はレース中にお腹を壊すことが多かったので、用心して朝食と一緒に下痢止めの薬も飲んでいたが、2015年の徳島マラソンから朝食を菓子パンからおにぎりに変えてからは改善された。
パンに含まれるフルクタンという糖類は消化に悪く、下痢になりやすいが、お米に含まれている糖類は消化が良いので、おにぎりを食べ始めてからは下痢する頻度はかなり低くなった。
なーんて、すっかり油断してたら、なんと2020年の高知龍馬マラソンで5年ぶりにレース中にお腹を壊して20分もトイレに籠ってしまった。
その後も2022年の神戸マラソンや2023年の那覇マラソンや2024年の富士五湖ウルトラマラソンでもお腹を壊し、トイレに籠ってしまった。
さらに、今年2025年のえびす・だいこく100kmマラソンでは近くにトイレが無かったもんだから、田んぼの中の茂みに隠れて久しぶりに野グソをする羽目になった。
いずれの場合も、朝食の量は控えめだったし、パンも避けていた。それなのにお腹を壊した。年々ますます胃腸が弱くなっているようだ。
ただ、最近、お腹を壊したのは、いずれもフルマラソンやウルトラマラソンの長距離レースだ。今日はハーフマラソンなので、それほど神経質になる必要は無いだろう。
〜 炎天下の予感 〜
天気予報では今日は晴れとの予報だった。そして、朝、空を見上げると、天気予報通り晴天だ。
普通の季節なら、マラソン大会の天気は晴天が好ましいのが当たり前だ。誰だって雨の中は走りたくない。できれば晴れ上がった空のもと走りたい。
しかし、厳しい日射しが照りつける酷暑の時期のマラソン大会では、晴れるより雨の方が望ましい。
特にこのレースは、前半は延々と坂を登る厳しいコースなので、できれば雨が降って欲しい。
だが、しかし、今日も良い天気で強烈な暑さになりそうだ。
地球温暖化が着実に進行するなか、毎年、猛暑が厳しくなっているが、今年は特に暑さがすさまじく、7月に入ってから連日、耐え難い猛暑日が続いている。
(のら)「それって、去年も同じ事を言ってたよ」
(幹事長)「一昨年も言ってたかも」
ここ3年間は年々ますます気温が上昇し、とどまる所を知らない状況となっている。
昔は35度を超えたりしたら全国ニュースになって大騒ぎになっていたが、今年は全国いたるところで40度を超える常軌を逸した高温を記録している。もう40度を超えてもニュースにならなくなったくらいだ。
以前は雨中のレースを嫌がっていたのらちゃんですら、今は雨を待ち望んでいる。
汗見川マラソンでは、10kmの部しかなかった2007年、2008年や、ハーフマラソンができた2015年、2016年は炎天下で地獄の暑さに苦しんだが、2013年はスタート直前に土砂降りの雨が降ったため、一気に気温が下がり、なかなか快調に走れた。
快調に走れたと言っても、なんとか2時間を切った程度なので、普通のハーフマラソンの基準からすれば惨敗なんだけど、坂の厳しいレースなので、2時間を切れれば万々歳だ。
ただし、日本一雨が少ない香川県地方では、梅雨どきであっても大した雨は降らないが、日本一雨が多い高知県では極端な豪雨が降る。
2018年は3週間前に降った豪雨により土砂崩れの危険個所があるからと中止になったし、2019年は直前に降った豪雨により土砂崩れが発生してコースが変更となった。
高知では大雨になると土砂崩れが発生する可能性が高くなるのだ。
整理すると、過去、参加した年は、2007年、2008年、2015年、2016年、2023年、2024年が灼熱の炎天下で、2013年、2018年、2019年は直前に豪雨が降った。
豪雨のため2018年は中止になり、2019年はコース変更となったから、雨の恩恵にあずかれたのは2013年だけだ。
(幹事長)「炎天下か豪雨なんて、極端だよなあ」
(支部長)「豪雨でも良いから雨は降って欲しいぞ」
(幹事長)「炎天下も好きなんやけど、足は動かなくなるわな」
〜 会場到着 〜
車はその後も順調に進み、大豊インターで高速道路を降り、予定通り大会会場の吉野クライミングセンターには6時半前に到着した。
車はすぐ近くの早明浦ダム直下の広い河川敷駐車場に停める。この駐車場が一杯になると、遠く離れた第二駐車場に停めてバスで移動することになるので、それは避けたいから早めに来たのだ。
到着すると、まだまだ車は少なく、好きな所に停められる状況だ。
車を停めたら、すぐ近くのクライミングセンターへ移動する。
クライミングセンターに設けられた大会会場に到着したら、すぐにおんちゃんに声を掛けられた。
いつもならクライミングセンターの裏のグランドに陣取りしていたのに、今年は正面の狭い所に陣取っている。
(おんちゃん)「今年は裏にブルーシートも無いしイスやテーブルも無いんよ」
(幹事長)「ええっ?それは厳しい!」
この大会はクライミングセンターの周辺が待機場所になっていて、クライミングセンターの裏のグランドの芝生の上に大きなテントが張られてブルーシートが敷かれ、さらにテーブルやイスが並べられ、他のマラソン大会ではあり得ないような快適な待機場所になっていた。
それが今年はなぜかブルーシートもイスやテーブルも設置されていない。
そのため、みんな正面の狭い所になんとか陣取っているのだ。
とりあえず狭い所に陣取ったら、まずは受付だ。受付と言ってもゼッケンや計測チップは事前に送られてきているので、参加賞を受け取るくらいだ。
参加賞は今年もタオルだった。マラソン大会の参加賞はTシャツが一般的だが、マラソン大会のTシャツはタンスから溢れているのでタオルの方が大歓迎だ。ただし、汗見川マラソンのタオルはあんまり大きくないので、バスタオルとして使うには少し小さい。
場所が落ち着いたら着替えしなければならない。
(支部長)「で、今日も着るもので悩むわけ?」
(幹事長)「夏場のレースは着るもので悩む余地は少ないな」
ウェアの選択は、どんな季節のマラソン大会であっても最も重大な問題だ。
今日は天気予報どおりの快晴になったので、炎天下のレースになるのは間違いない。
こうなると裸で走りたいくらいだが、裸で走ったら日焼けでボロボロになるだろうから、上は炎天下のレースでいつも着ている薄手の袖無しのシャツにした。
できれば、以前オリーブマラソンで着ていた秘密兵器のメッシュシャツを着たいところだが、古くなってボロボロになってきてるから、最近は温存している。
とは言え、この袖無しシャツも、秘密兵器のメッシュシャツほどではないが、背中側が少しメッシュになっているし、袖も無いから、普通のTシャツに比べるとかなり涼しい。
露出の多いウェアなので、日焼け防止のため日焼け止めクリームを塗りたくる。どんどん汗が噴き出てくるので、いくら塗っても流れ落ちていくが、それでも効果はある。
筋肉の疲労防止のために脹脛サポーターを履こうか迷ったが、暑そうなので履くのはやめた。
他のメンバーは半袖Tシャツに短パンが多いが、おんちゃんとのらちゃんとザビエルは半袖Tシャツの下に薄い長袖シャツを着たりアームカバーを着けており、下はタイツも履いている。
のらちゃんとザビエルは日焼け防止のためだが、おんちゃんは日焼けを気にするとも思えないのに、いつも重装備だ。
(幹事長)「それって暑くないんですか?」
(おんちゃん)「慣れやな、慣れ。直射日光が照り付ける剥き出しより暑くないんよ」
でも、Tシャツの上に着たビブスまでは必要は無いと思うんだけど。
炎天下だから帽子を被るかどうか迷うところだ。日射しを避けるためには帽子を被った方が良いとは思うんだけど、帽子を被っても、いつも途中で頭が蒸れて暑くなり、結局、脱いで手に持って走るようになる。
でも、さすがに今日の日差しと暑さは尋常じゃないので、とりあえず帽子を被る事にした。
またサングラスも汗を拭く時に邪魔になるからどうしようか迷ったが、日差しの強さが尋常じゃないので、かけていく事にした。
サングラスをかけると眩しさが大いに軽減され、目がとっても楽だ。また、歳とってくると紫外線による目への悪影響が強まって白内障の危険性が出てくるので、サングラスはかけた方が良い。
汗を拭くためのハンドタオルや、お腹を壊した時に備えたポケットティッシュをポケットに入れたら、準備完了だ。
準備が終われば使用前の写真撮影をする。

スタート前に気合を入れる参加メンバー
(支部長は落とし物をしたため泣いている)
支部長が泣いているのは、落し物のせいだ。
来る途中の高速道路のSAのトイレにウェストポーチを忘れてきたのだ。中には財布やら免許証やらマイナンバーカードまで、支部長の人生の全てが入っており、犯罪者の手に渡れば死活問題となる一大事だ。
とりあえず高速道路会社に連絡を入れ、捜索を依頼しているが、どうなることか分からず、不安爆発なのだ。
(支部長)「ただでさえ完走できるかどうか不安爆発なのに」
(幹事長)「背筋が凍って暑さも気にならなくなったやろ」
写真撮影の後、ずらっと並んだ仮設トイレの様子を窺うと、意外に列が短かったので、並んで大を済ませる事ができた。これで一安心だ。
スタート時刻が近づいてきたので、最後の水分を補給して、そろそろとスタート地点に移動する。
〜 スタート前 〜
コースはとてもシンプルで分かりやすい。
スタート地点は会場のクライミングセンターの前だ。そこをスタートして、すぐ県道264号線を北に入っていく。
その後は吉野川の支流である汗見川に沿って川の東岸の県道264号線を延々と北上し、5.5km走ったところにある1つ目の橋を渡って川の西岸に渡り、9.5km走ったところにある2つ目の橋を渡って再び東岸に渡る。
そして、10.5km上った冬の瀬というところで折り返して帰ってくる。
前半の10.5kmはひたすらずっと上り坂、後半は全て下り坂の往復21kmだ。
ただ、汗見川は急流という訳でもないし、川に沿った坂はそんなに激しいアップダウンではない。北山林道駆け足大会は、絶壁のような急坂をよじ登り、よじ降りてくるという過酷なコースだが、それに比べたら大した勾配ではない。
特に、前半はずうっと上り坂とは言え、そのうちの前半の前半である5.5km地点までは大した傾斜ではない。緩やかに上っているだけだ。5.5km地点から折り返し点までがきつい上り坂となっている。
折り返してからは、後半の前半はきつい傾斜の下り坂なので、調子に乗って飛ばして下ってこられるが、後半の後半は緩やかに下っているだけだから、体感的にはほとんどフラットで、かなりきつい区間だ。
(支部長)「いや、あそこはむしろ上っているように感じるぞ」
確かに、微かには下っているはずなんだけど、走っているとフラットどころか、逆に上り坂に感じられる。
(支部長)「私は今年も適当な所で折り返してくるよ」
支部長は一昨年の汗見川マラソンではハーフマラソンの部に出場しておきながら、途中で勝手に10kmの部に切り替えて、5km地点で折り返して帰ってきた。
また去年は、先頭で折り返して帰ってきたメンバーに出会ったら、そこで折り返してくるとの方針で走り、先頭で折り返してきたD木谷さんと一緒に帰ってきた。
(ザビエル)「そんな事しても良いんですか?」
(幹事長)「良い訳ないやろ。完走証を貰えないぞ」
ザビエルが出場する理由は、イスタンブールマラソンに向けて完走証をゲットする事だから、支部長のように勝手に折り返してくる訳にはいかない。
(D木谷)「私は二日酔いでヘロヘロなのでザビエルに伴走します」
(ザビエル)「私も二日酔いでヘロヘロなので・・・」
(幹事長)「マラソンを舐めとんかーっ!」
なんとD木谷さんとザビエルは前日、飲み会があり、深夜まで飲み続けて完全なる二日酔い状態なのだ。
D木谷さんは元々実力者なのでザビエルのサポートでゆっくり走るのなら二日酔いでも何の問題も無いが、ザビエルはただでさえ難しいと思われる完走が、もう絶望的と言えよう。
救いは、なんとしてもイスタンブールマラソンに出たいという強烈な意気込みだけだ。
スタートする前に私も本日の目標を立てなければならない。
もちろん、どんな時でも、どんなレースでも、常に大会自己ベストを狙うのが良い子のランナーとしてあるべき姿だ。
マラソンはコースや季節によってタイムが大きく変わってくるため、違うレースのタイムを比較するのは不適当なので、どんなレースに出ても、とりあえず大会自己ベストを狙うのが良い子の正しい道だ。
なので、目安はあくまでも過去のタイムだ。
この大会は、トンでもなく暑い時季の山岳マラソンなので2時間を切るのは不可能だろうと思っていたけど、2013年にはスタート直前にスコールが降り、高気温が少し和らいだおかげで、2時間を切ることができた。
これがこの大会の唯一まともなタイムなので、目標はその時のタイムになる。
と言うのは建前で、去年の汗見川マラソンでは、なんと汗見川マラソンの大会自己ワースト記録どころか、過去29年間で86回出場したハーフマラソンの自己ワースト記録を叩き出した。
それも、ダントツで遅いハーフマラソン自己ワースト記録だった。かつての強烈登山レース塩江山岳マラソンや激坂が続く酸欠マラソンよりもダントツで遅かった。
原因は、登山などで溜まりに溜まっている疲労、練習不足、極端な暑さ、忍び寄る老化など色々と考えられるが、それにしても、汗見川マラソンでハーフマラソン自己ワースト記録が出るなんて思ってもみなかった。
そして、それ以来、酸欠マラソン、脱藩マラソン、庵治マラソン、丸亀マラソン、坂出天狗マラソンと、ありとあらゆるマラソン大会で過去とは次元の違うレベルの空前の大惨敗を繰り返してきている。
何が起きたのか全く理解できないような泥沼状態だ。
何も、サボりまくっていた訳ではない。去年も今年も異常な猛暑のため、あまりにも暑くて、少し走っただけで足が動かなくなるため、あまり走れなかったのだ。
もちろん、いくら言い訳したところでタイムが良くなる訳ではない。おんちゃんや酸欠姉ちゃんなんかは、まだ涼しい真っ暗なうちから猛練習をして、素晴らしいタイムを出し続けている。要するに、やる気の問題だ。
(幹事長)「相変わらず夜中に走ってるん?」
(おんちゃん)「休みの日には、夜中の12時頃から明け方まで50〜60km走ったりしてるよ」
(幹事長)「50〜60kmとなーっ!!!」
本番ならともかく、孤独な練習で50〜60kmも走るなんて、プロでも有り得ないような気がする。
月間走行距離は500kmを超えているとのことだ。私の数倍だ。
て事で、現実的な目標としては去年よりマシなタイムを出したい。
(のら)「あれよりはマシなタイムを出さないと、マラソンを止めないといけなくなるよ」
(幹事長)「おっしゃる通り」
〜 スタート 〜
スタート10分前頃になり、集合のアナウンスもあったが、まだスタート地点には並べない。周辺で待機するだけだ。
スタート地点の道路は交通規制がかかっておらず、どんどん車が通っているからだ。地域住民のために、スタート直前にならないと通行止めにできないのだ。
スタート5分くらい前になってようやく通行止めになり、ランナーが並び始める。
シューズにタイム計測チップは付けているが、これはゴール時に計測するだけで、タイムはネットタイムではなく、グロスタイムしか計ってくれない。なので、前方からスタートしなければタイムはロスする。
とは言っても、ハーフマラソンの参加者は697人なので、後ろの方に並んだとしても、それほどタイムロスは無い。てことで、特に焦ることもなく、集団の中程に並んだ。
(のら)「そもそも数十秒を争うような状態じゃないでしょ」
(幹事長)「おっしゃる通り」
最近の驚くべき遅さを考えると、そんなタイムロスは誤差の範囲だ。
天気は相変わらずの快晴で気温は高く、汗はタラタラ、日焼け止めクリームもタラタラだ。
しばらくするとカウントダウンが始まり、いよいよスタートとなった。
取りあえずは何も考えずに自然体で走る。
このマラソン大会は猛暑の坂道をひたすら登る過酷なレースなので、ペース配分を考えて無理せずにゆっくりと走り出すランナーが多いと思われがちだが、実際は逆だ。
こんな過酷なレースに出場する選手はレベルが高くて、最近のメジャーなマラソン大会に大挙して出てくるような初心者はあまりいないから、スタートの合図と共に、みんなすごい勢いで一斉に駆け出す。
ペース配分を考えていないのではなく、ペース配分を考えても私のレベルからすれば速すぎるのだ。なので、最初から混雑は無く、順調に走り出せるから良いと言えば良いけど、周囲がみんな早くて、それにつられてオーバーペースになる危険性がある。
このレースは、前半は、汗見川という早明浦ダムの直後で吉野川に合流する小さな支流に沿った道を延々と上るから、基本的にひたすらずっと上り坂で、逆に折り返してくる後半は下り坂だ。
ただ、汗見川は急流という訳でもないし、川に沿った坂はそれほど激しいアップダウンではない。北山林道駆け足大会や酸欠マラソンは、絶壁のような急坂をよじ登り、よじ降りてくるという過酷なコースだが、それに比べたら大した勾配ではない。
特に、前半はずうっと上り坂ではあるが、前半の前半、すなわち最初の5kmくらいは大した上り坂ではない。
とは言え、相変わらずスピードは出ない。ちょっと前を走っていたおんちゃんは、あっという間に姿が見えなくなってしまった。
自然体で走っているつもりだったが、最初の1km地点のラップは6分近かった。これまで最初の1kmは5分ちょっとという事が多く、大惨敗した去年ですら5分半くらいだった。まさか去年より遅いなんて、異常事態だ。
のらちゃんもいつもの勢いはなく、私と同じようなペースだ。
支部長とD木谷さん、ザビエルの3人は姿が見えないので、さらに後ろにいるのだろう。
次の2km地点でのラップは、さらに少し落ちて6分ジャストだ。
この1kmは多少、上り坂があるため仕方ないかとも思ったが、次の1kmはフラットに近かったのに、3km地点でのラップも6分近かった。
まだ序盤なのに、まるでレース終盤のようなひどいペースだ。
ただ、これが炎天下のせいかと言うと、実はまだそれほど暑くはない。スタート時刻が早まったせいか、去年に比べたら暑さはマシな気がする。
気温の上昇がマシというより、まだ太陽が上がり切っていないので木陰が多いのだ。
コースは山の中の川沿いであり、日なたの炎天下と木陰のところが半分づつくらい繰り返される。炎天下のところは当然ながらアホみたいに暑いが、木陰のところはそれほど暑くない。
今日はまだ木陰の区間が多いような気がするので、大いに助かる。
しばらくすると、ここまで同じようなペースで走ってきたのらちゃんの背中が少しずつ遠ざかっていく。こんな序盤で早くも引き離されるのは避けたいところだが、無理して追いかけると後半にバテるのが目に見えているので早々に諦めた。
帽子を被っていると、やはり頭がモワっと暑くなるので、木陰の時には脱いで手に持つ。でも炎天下になると頭が焼けそうになるので、すぐにまた被る。
このレースは、マイナーな草レースではあるけれど、真夏のレースということで給水所は多い。片道に5箇所、往復で10箇所もある。
最初の給水所は1kmちょっと走ったら早くも出てくるし、次の給水所も3km地点より前にある。
いつもなら、まだまだそんなに喉が乾いてはいないので、序盤の給水所はパスするところだが、今日は炎天下のレースなので最初からこまめに水を補給する。
どの給水所にもスポーツドリンクだけでなく、冷たい水を含んだスポンジも用意されている。これで顔を拭くとリフレッシュするんだけど、せっかく顔にも日焼け止めクリームを塗りたくっているので、顔を拭くのはやめておいた。
その後、だんだん坂の傾斜がきつくなってきたからか、4km地点のラップは再び6分ジャストだった。過去のレースでは、この辺りまでは5分台の前半だったはずだ。
そして、次の5km地点のラップは遂に6分半にまで落ちてしまった。
過去のレースでは、前半の前半である5km地点までは、遅い時でも1km6分をオーバーするなんて事は無かったから、今年も去年と同様、尋常ではない遅さだ。
5km地点を少し過ぎると、10kmの部の折り返し点である大きな赤い三角コーンがある。
10kmの部の折り返し点なんだから5km地点にあるべきのような気がするが、なぜか少し先にある。
パンフレットを見ると、10kmの部と言いながら距離は10.3kmと少し長いのだ。理由は分からない。
10kmの部の折り返し点を過ぎて少し行くと、橋があり、それを渡って川の西岸に移る。
ここまでの道もさほど広い道ではないが、橋を渡ると道は一層狭くなる。ここまではちらほら田んぼもある風景だったのが、山深くなってきて人家もほとんど無くなり、山の中を走っているような感じになる。
そして、だんだん坂が厳しくなっていく。全体的に傾斜がきつくなると言うより、所々に急な坂が出てくるようになる。パンフレットの地図では傾斜10%のところもある。
ただ、そういう急坂の区間はそんなに長くはなく、庵治マラソンの折り返し点にある巨大な坂とか、オリーブマラソンの最後の激坂のような大きな坂は無い。
そのためか、上り坂が増えてきても、それほど厳しいとは感じない。あんまり暑くないせいか、坂もあんまりしんどくないのだ。
なーんて思いながら次の6km地点や7km地点のラップは6分半くらいだったが、8km地点では遂に7分近くにまで一気に落ちていた。
坂が厳しくなっても「意外にそれほどきつくないなあ」なんて感じていたのは、単にペースが遅いからだった。どんなに厳しい坂でもゆっくり走ればそれほどきつくはない。当たり前すぎる事だ。
ただ、だからと言ってペースを上げようと言う気にはならない。ペースを上げるのがしんどいと言うより、こんな状態の日に、頑張ってペースを上げたりしたら、絶対に後半に潰れてしまうだろう。
多少頑張ってペースを上げても、終盤に一気に撃沈したらトータルでは惨憺たるタイムになってしまう。
前半の後半は坂が厳しいとは言え、8km地点を過ぎると、もうそんなにすごい坂は現れないない。何度も走っているからコースは分かっている。ただし、だからと言ってペースが上がる訳ではない。
こんなに厳しいレースの割りには、歩いているランナーはほとんどいない。序盤から飛ばしすぎて早々に足が止まって歩いている、なんてランナーは、他のレースにはいっぱいいるけど、このレースでは、ほとんどいない。やはりレベルが高いレースだ。
次の9km地点のラップも6分台後半で、同じ様なペースが続く。
ただ、去年よりは少しだけマシだ。去年はこの辺りでは7分をオーバーしていたし、他のランナーにも次々と追い抜かれていった。今年は周りのランナーはみんな似たようなペースで走って行く。
すると、なんと、ここで早くもおんちゃんが折り返してきた。速い。速すぎる。アホみたいに速い。もうめちゃくちゃ速すぎる。
軽快と言うより、ものすごく力強い走りだ。この汗見川マラソンであんなに速いスピードで走れるなんて、さすがに尋常ではない練習量の賜物だろう。
しばらく走ると2つ目の橋があり、それを渡って川の東岸に移る。
すると、ようやく10km地点が現れる。ここでのラップも7分近いままだ。
前半を通して、過去のレースと比べて、平均して1km当たり30秒くらい遅い感じだ。1km30秒も遅いなんて、トンでもない遅さだが、実は去年は過去のレースと比べて、平均して1km当たり1分くらい遅かった。
なので、今年は去年よりは1km当たり30秒くらい速い。歴史的な大惨敗だった去年よりは少しマシだが、大惨敗に変わりはない。
折り返し点が近づいてきた頃、なんとのらちゃんの後姿が見えるようになってきた。2km地点を過ぎた辺りで後姿が見えなくなってしまったから、もうかなり先を走っていると思ってたのに、なんと追い着いてきたのだ。
明らかにペースが落ちていて、どんどん近づいてくる。
10km地点から500mほど行くと、折り返し点がある。冬の瀬だ。
折り返し点の三角コーンをグルっと回りながらのらちゃんに追い着く。
(幹事長)「どうしたん?どこか痛いの?」
(のら)「うん、足から腰にかけて痛みが出てるよ」
(幹事長)「無理したらいかんよ」
と声を掛けて追い抜いていく。
折り返し点でのタイムは1時間7分ほどだった。一昨年は折り返し点で1時間を少しだけオーバーしていて、後半を頑張れば2時間を切れるかも、って思って頑張ったが、結局駄目だった。
後半は下り坂なので速く走れそうな気がするが、実際には疲れが出るから大してスピードは上がらないのだ。今年はそれより遥かに遅いから、2時間なんてあり得ない。
ただ、去年よりは少しだけマシだ。それだけが心の支えだ。
でも、まだ油断はできない。いついきなりドカンとペースダウンするか分からない。一気にペースダウンしたら、再び自己ワースト記録になってしまう。
ただ、11km地点や12km地点でのラップは、傾斜のきつい下り坂なので、さすがに1km6分ほどに上がっていた。恐れていたペースダウンはまだきていない。
すると、支部長がやってきた。かなり遅れているが、その割には元気そうに走って行く。これまでの展開が分からないが、ザビエルに付き合っていたのかもしれない。
そして、しばらくすると、今度はザビエルがD木谷さんに伴走されながらやってきた。遅い。ものすごく遅い。トンでもなく遅い。スピードも遅すぎるし、タイミングも遅すぎる。
スピードは歩いているとしか思えないペースだが、ようく見ると走っているようにも見えなくもない。
それよりタイミングが遅すぎる。私もかなり遅いが、その私より3〜4kmも遅い。
これじゃあ仮に最後まで走ったとしても、制限時間には間に合わないだろう。つまり完走証はゲットできないだろう。
でも、ここで「もっと頑張らないと完走できないよ!」なんて言っても仕方ない。D木谷さんが伴走しているのでタイムの事は分かっているだろう。
なので、とりあえず適当な事を言って励ます。
(幹事長)「良いよ!その調子、その調子!最後まで諦めずに頑張れ!」
(ザビエル)「は〜い」
根っから楽観的なのか、顔には笑みが浮かんでいるが、どう考えても状況は絶望的だ。
私自身も、まだまだ油断はできないので、頑張って走って行く。
下り坂は傾斜が急になっていったため、次の13km地点ではそこそこペースアップできて6分を切っていた。
ただ、調子が良い時は5分を切るようなペースで走れた区間なので、あんまり喜べない。
すると、ここで、なんとのらちゃんがいきなり追い着いてきた。
(幹事長)「あれ?痛みは大丈夫?」
(のら)「うん、下り坂になったら痛くなくなったよ」
なんて言いながら涼しい顔をして一気に追い越していった。
あまりにもペースが速いため、着いていく事はできず、あっという間に後姿が見えなくなってしまった。凄まじい底力だ。
後半になると、給水所にはコップだけでなく、ボトルに入った水をくれるようになった。
天気は相変わらず晴天で、風もあまり吹かないから、暑さが続いており、ボトルの水を頭から浴びたら気持ち良いんだろうけど、日焼け止めクリームが流れるのを避けるため、それはやめておいた。
その後も下り坂は続くんだけど、傾斜が緩やかになったせいか、14km地点、15km地点、16km地点ではなかなかペースが上がらない。
そして、橋を渡って10kmの部の折り返し点を過ぎると、いよいよ後半の後半で、残りは5kmとなる。
ここからがこのコースのくせものだ。
ここからも下り坂なんだけど、体感としてはフラットだ。下り坂の恩恵は全く感じられない。て言うか、ときどき上り坂ではないかと思える区間もある。
そしてペースは一気に落ちる。まるで上り坂のようなペースになる。前半の前半、つまり折り返し点の前の辺りと似たようなペースにまで落ちるのだ。
スタート時刻が早まったせいか、それほどめちゃくちゃ暑くは感じてないので、それほどバテバテって感じではない。だが、足が動かなくなってペースダウンしていく。
17km地点では6分半ほどに、18km地点では7分近くにまで一気にペースダウンしてしまった。
私の前には女子ランナーもかなり走ってるんだけど、なかなか追い着けない。
ハーフマラソンの部は女性の割合は2割程度だが、こんな過酷なレースに出ている選手は女子ランナーも手ごわい。いくらマラソンブームだと言っても、こんな過酷なレースに出ようとわざわざ山奥まで来る選手は、マニアックな強者揃いだ。
なので、女子ランナーにも簡単には追いつけず、頑張って追い抜いても、すぐまた追い抜かれたりする。
その後も、いくら頑張って走っているつもりになっても、全くスピードは上がらず、19km地点や20m地点も1km6分台後半で推移した。
ただ、終盤はフルマラソンの終盤のようなペースにまで落ちた去年よりは少しマシで、なんとか走り続ける。
〜 ゴール 〜
最後のコーナーをクネクネ曲がって、ようやく会場のクライミングセンターに戻ってきたらゴールだ。
ゴール横ではのらちゃんが出迎えてくれた。
結局、タイムは去年よりは10分以上マシだったが、それ以前の自己ワースト記録だった一昨年よりは10分近く悪かった。
あり得ないような大惨敗だった去年よりはマシだが、それを除くと圧倒的な自己ワースト記録だったのだ。
(幹事長)「喜べないよなあ」
(のら)「大撃沈に歯止めがかかったんだから喜んだらいいんじゃない?」
のらちゃんも同じ様なもので、最悪だった去年よりはマシだったが、一昨年よりは悪かった。
みんな、去年は異常な暑さのために大撃沈だったが、今年は暑さが少しマシだったので、タイムも少しマシだったようだ。
なので、私も去年よりは少しマシだったが、それは長期低迷に歯止めがかかったと言うより、単に去年より暑さが少しマシだったからに過ぎないようだ。
(幹事長)「大撃沈に歯止めがかかった訳じゃなさそうだから、やっぱり喜べないよ」
さらに、おんちゃんのタイムを聞いてビックリ!なんと1時間43分という驚異的なタイムだった。
(幹事長)「このコースでそんなタイムって、存在するんですか」
(おんちゃん)「練習量は嘘をつかんな」
やっぱり練習量は大事なんだろうなあ。でも暑くてそんなに練習できないのよね。おんちゃんみたいに夜中に走れば良いのかもしれないけど、そこまでやる気力は湧かないし。
残りの3人はいつまで経っても姿が見えない。
すれ違った時の状況からすると、ザビエルはD木谷さんの伴走があっても、制限時間内の完走は難しいだろう。でも、支部長は元気そうに走っていたから、そのうち帰ってくると思っていた。
ところが支部長の姿もいつになっても見えない。
時刻は10時50分を回り、制限時間まで10分を切ってしまった。もう絶望だ。
なーんて思っていたら、なんと遠くに支部長らしき姿が見えた。まさかと思って良く見ると、ザビエルとD木谷さんの姿も見える。なんと3人揃って帰ってきたのだ。
(のら)「頑張ってーっ!間に合うよーっ!」
そのまま3人揃ってなんとかゴールに駆け込んだ。
(幹事長)「まさか制限時間内に帰って来られるとは思ってなかったよ」
(ザビエル)「最後まで一歩も歩かずに完走しましたからね」
(幹事長)「え?すれ違った時は歩いてたじゃん」
(ザビエル)「いえいえ、歩いてませんよ」
私も大撃沈している時は、自分では走っているつもりでも、はたから見たら歩いているようにしか見えないだろうなあっていう事がよくある。
ザビエルも、はたから見たら歩いているとしか思えない様子だったが、自分では走っている意識だったのだろう。
実はこれは重要なポイントだ。一見、歩いているのと同じ様なペースに見えても、意識として走っていると、歩くのよりは速い。完全に歩いていると、どうしてもピッチが少なくなるからだ。
走っている意識を持ち続けると、足は上がってなくても、ピッチは維持できるので、少しは速くなる。
(のら)「幹事長はそれで数々の難関を乗り切ってきたもんね」
去年の酸欠マラソンでは残り43秒、去年の脱藩マラソンでは残り6秒というギリギリのタイムで制限時間をクリアしたのは、いずれも最後まで歩かなかったからだ。
(のら)「最初からもっとちゃんと走れば良いんだけどね」
何にしても、絶対に無理だろうと思っていたザビエルが制限時間内で完走できたのは素晴らしい。素晴らし過ぎる。
これもひとえに、なんとしてもイスタンブールマラソンに出たいという強烈な意気込みの賜物だろう。
(幹事長)「これで完走証をゲットできたから、イスタンブールマラソンに出られるじゃん!」
(ザビエル)「やったーっ!イスタンブールマラソンへ行くぞーっ!」
ただ、記録証は以前はゴールするとその場でくれていたが、一昨年からネットで各自ダウンロードしてくれと言うことになった。
できればちゃんとした紙の記録証をその場でもらいたいので、残念だ。最近のマラソン大会は、ほとんどがこうなってしまった。
(幹事長)「支部長もザビエルの伴走をしてたとは知らなかった」
(支部長)「いや、そうではないんよ」
支部長は5km走った時点で疲れてしまってザビエルとD木谷さんを待ち、彼らが追いついてきたら再び走って折り返し点で待ち、彼らが追いついてきたら再び走って15km地点で待つという事を繰り返してたんだけど、そこで遂に力尽きてしまい、その後は二人が先行するのをなんとか必死で追いかけて、結果的に一緒にゴールになったそうだ。
(幹事長)「て事は、ザビエルに負けてるじゃん」
(支部長)「もうヘロヘロですわ」
ゴールすると、以前はお楽しみの冷たいトマトを貰って食べた。大きなバケツに冷えたトマトがいっぱい浮かんでいて、好きなだけ取り放題だった。冷たいだけでなく、完熟で収穫した地元のトマトだから甘くて美味しかった。
ところが一昨年、去年に続き、今年もトマトは無かった。
ゆずジュースは今年もあったので嬉しい。カラカラに渇いた喉にゆずジュースがとても美味しい。
(支部長)「もう無いって言われたよ。誰か2本もらった奴がいるんじゃないか?」
(幹事長)「どきっ!」
(のら)「どきっ!」
さらに、今年もしそアイスはもらうことができた。
(ザビエル)「わーい、わーい、アイスだ、アイスだ!」
(D木谷)「アイスが頭に沁みますねえ」
裏のグランドには、朝は設置されてなかったテントやテーブルが設置されており、そこで落ち着いてお弁当を食べる。
〜 川遊び 〜
一休みしたところで、いよいよ、このレースの一番の楽しみである冷たい汗見川での川遊びだ。
(のら)「ようやくお楽しみタイムだね」
(幹事長)「今日は暑いから、走っている時も川遊びの事ばかり考えて走ってたよ」
かつて上りの片道10kmコースしか無かった時も、ゴール後に山奥の川に飛び込んでいたが、往復のハーフマラソンになってからは、会場のすぐ近くで汗見川に飛び込むことができる。
このために、ちゃんとサンダルを履いてきている。
疲れた足を引きずって川に降りていくと、既に多くのランナーが川に入って気持ちよさそうに泳いだりしている。
サンダルを履いてランニングウェアのまま川にそうっと入っていく。一足先に支部長とD木谷さんとザビエルが水の中に入り、いきなりバシャバシャ泳いでいる。
(D木谷)「気持良いですね!」
(幹事長)「ひえ〜〜!冷たい!」
いつも以上に川の水は冷たい。私とのらちゃんはなかなか中に入れない。
(のら)「なんでこんなに冷たいんやろ?」
(幹事長)「気温がバカみたいに暑いから、冷たく感じるんかな」
膝から下を浸けてるだけでも足が痛くなる。
それでも少しづつ体を入れていくと、なんとか腰まで入る事ができたが、それ以上はなかなか難しい。
さらにジワジワと水に入り、なんとか我慢して体を沈めていったが、一瞬だけ肩まで浸かったら心臓が止まりそうになったので、すぐに出た。
支部長を見ると、なんとゴーグルや耳栓まで付けて、本格的に泳いでいる。マラソンではヘロヘロになっていたが、レース後の川遊びは真剣そのものだ。
D木谷さんとザビエルは川下の方まで行って子供のように遊んでいる。元気なことだ。
体も十分に冷え、落ち着いてきたので、会場に戻る。
去年は、久しぶりにお楽しみ抽選会が復活したんだけど、今年はまた無くなって、事務局が抽選した結果だけを張り出していた。
北山林道駆け足大会ほど大量の賞品が出るものではなく、当たる確率はとても低いのであんまり期待はしてないが、2015年大会で高級お米が当たったので、無視する訳にはいかない。
だが、目を皿のようにしてチェックしたが、全員が外れていた。
マラソンと川遊びの疲れがどっと出て、足を引きずりながら駐車場に戻り、今年も近くのモンベルのアウトドアヴィレッジのお風呂に行く。
お風呂から出て、涼しいところでのんびりアイスキャンディーを食べていると、幸せな気分になる。
支部長のウェストポーチも無事に発見され、帰る途中で受け取る事ができた。良かった良かった。
さて次は、1週間後に愛媛県鬼北町で川上り駅伝なんていう奇怪なイベントが開催される。
去年、初めて出場したんだけど、圧倒的な差で大惨敗した。でも、あまりにも楽しかったので、今年も出場するのだ。
今年は去年のリベンジを果たし、賞金をゲットするぞ!
〜おしまい〜
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