第34回 汗見川清流マラソン大会

〜 炎天下のレースでなんとか完走 〜



2023年7月30日(日)、猛暑の高知県本山町第34回汗見川清流マラソン大会が開催された。

このレースは、暑い暑い四国の真夏に開催される大変貴重なマラソン大会だ。

以前は、真夏の四国のレースとして、ほかにも四国カルストマラソンがあった。
真夏に開催されるというだけでなく、かつての強烈登山レース塩江山岳マラソンに匹敵するものすごい急な坂が延々と続くという異常に厳しい20kmコースだった。そのため、強烈な日射しにより地獄のような暑さで体が焦がされる中、走るのが不可能なほど急な坂をよじ登るという発狂するようなレースだった。
しかし、この殺人レースは、あまりの厳しさのため危険すぎるってことで廃止になってしまった。
(ちなみに、その後継レースとして出来た龍馬脱藩マラソンは、季節は10月で走りやすい時季になったが、フルマラソンの部は最大標高差560m、累積の標高差は860mという、四国カルストマラソンを遙かに上回る発狂しそうな超厳しいコース設定となっている)

他に夏場の山岳レースとしては、9月初めに開催される四国のてっぺん酸欠マラソンがあり、2015年以来、毎年連続でエントリーしている。
ただし、こちらは夏場の山岳レースとは言え、9月に入っているので、灼熱の炎天下というほどではない。ロクに日陰が無いコースだから天気が良いと炎天下にはなるが、7月末に比べたら随分マシだ。
一方で、標高が高いため、悪天候に見舞われやすくて中止が多く、2015年以来、開催されたのは僅か2回という幻のマラソン大会だ。

てことで、汗見川清流マラソン大会は真夏の四国のレースとして唯一の貴重なレースになった。四国で真夏のレースが少ないのは、あまりにも暑くて走るのが大変だからだ。
でも、だからと言って真夏にレースに出ないと、夏の間、ランニングをサボってしまいがちになる
レースが無くても地道にトレーニングできる真面目な人ならいいんだけど、我々のように心が弱いと、レースが無いとどうしてもサボってしまう。

(ピッグ)「レースがあっても、こう暑いと練習はサボりがちになりますけどね」

レースが無いと完全に休養してしまう心が弱い我々としては、少しでもモチベーションを維持するため、この時季にレースを1つ入れたいわけだ。
なので、2020年もとてもとても楽しみにしていた

それなのに、ああ、それなのに、なんと2020年は新型コロナウイルス騒ぎのせいで大会が中止になってしまった
このマラソン大会の中止騒動は全国的なもので、日本中のあらゆるマラソン大会が次々と中止になっていった

これらのマラソン大会中止騒ぎってのは、どう考えても、あまりにも非科学的で情緒的でヒステリックな対応だ。
素人が見たら、マラソン大会ではランナーが密集しているように見えるかもしれない。しかし、毎日乗っている満員電車に比べたら、はるかにスカスカだ。そうでないとぶつかって走れない。
しかも密室の満員電車に比べて、屋外のマラソン大会はウイルスが蔓延できる環境ではない。新型コロナウイルスは感染した人の咳やくしゃみの飛沫による飛沫感染でうつっていくが、飛沫感染は屋外で走っている時に感染なんかしない。
多くの国民が新型コロナウイルスを非常に恐ろしいもののように勘違いしていたが、決して、エボラ出血熱のように極めて致死率の高いウイルスでもなければ、風疹のような感染力の強いウイルスでもない
多くの国民がヒステリックに踊らされていたのは、視聴率さえ稼げればいい下品なマスコミがキチガイみたいに煽り立てるのと、新型コロナウイルスの新規患者数をゼロにしようなんていう狂信的な妄想に取り憑かれた医療関係者の独善のせいだ。

このようなヒステリックな動きに対抗するため、我々はマラソン大会を自主開催する事にした。その第1号が、2020年の第43回オリーブマラソンだった。
それ以降、中止になったマラソン大会はことごとく開催を続け、汗見川マラソンも2020年の第33回大会から始まって2021年の第34回大会2022年の第35回大会3年連続で自主開催を続けてきた。
そして4年目の今年になって、ようやくコロナのバカ騒ぎが収束し、全国的にマラソン大会が復活し始めた
国民の多くが理解するまで3年もかかったが、ようやくコロナなんてただの風邪に過ぎないっていう理解が進んできたからだ。
そして、
この
汗見川マラソンも4年ぶりに復活となったのだ。まことに喜ばしい限りだ。めでたいめでたい。


なお、今回の大会は第34回大会と銘打たれている。これには、ちょっと説明が必要だ。
コロナで中止になる前に最後に開催された2019年の大会は第32回大会だったから、正式に開催された大会としては今回は33回目の大会になる。
丸亀マラソンなんかは、中止になっていた期間はカウントせず、実際に開催された大会の回数をカウントしている。これが当たり前と言うか、最も正当な数え方と言えよう。
一方、オリーブマラソンなんかは開催されずに中止になった年も全てカウントしている。これは内部的に準備を進めていたが中止になったものもカウントしているのだろう。それはそれで理解できなくはない。
多くのマラソン大会は、このどちらかの数え方をしている。
ところが汗見川マラソンは、3年間の中止に対して、水増ししているのは1回分だけだ。たぶん、2020年の第33回大会は準備も進めていたのでカウントしたが、2021年と2022年は最初からやる気が無くて何も手を付けてなかったからノーカウントにしたのだろう。
どういう数え方でも別に構わないが、我々はコロナで中止になっていた期間も自主開始しており、回数をカウントし続けてきたので、このホームページでは自主開催した2020年大会を第33回大会2021年大会を第34回大会2022年大会を第35回大会と銘打ってきた。
それから数えると今回は第36回大会になるはずだったが、正式な本大会が第34回大会と銘打って開催されるので、このホームページでも第34回大会とする。

(幹事長)「第34回大会が2つできてしまったので、ややこしいな」
(ピッグ)「だーれも気にしてないと言うか気付いてないですよ」


〜 人気の大会 〜


練習もロクにできない発狂しそうなほど暑い四国の真夏に、マラソン大会に出たいって思う人がそんなにいるとは想像しにくいかもしれないが、実は汗見川マラソンの人気は高くて、申し込むのが大変だ。

(ピッグ)「定員が1000人と少ないってのも大きな理由ですけどね」

以前は、申し込み期間が過ぎてからでも、役場に電話してお願いしたら出場させてもらえていた2007年に初参加した時や、その翌年の2008年に参加した時なんかは、ざっと見て300人くらいしか参加してなかったから、人が集まらなくて大会が消滅しないか心配していたくらいだ
場所が四国の山の中で不便なうえ、いくら標高が高いと言っても、山の中の盆地なので真夏はクソ暑いし、コースが川沿いの道を延々と10kmも上り続ける厳しいコースだから、人気が無くて当たり前だったのだ。

それなのに、しばらく四国を離れていたあと、四国に戻ってきた2012年久しぶりに出てみようと思ったら、申し込もうと思ったときには既に定員に達して受付終了になっていた
申し込もうとした時期が遅かったのは確かだが、それでも定員オーバーだなんて、かつての汗見川マラソンを知っている者なら、信じられない現象だ。しばらく四国から離れていた間に、人気レースになっていたのだ。
近年の異常なマラソンブームの中、真夏の四国のレースとして唯一の貴重なレースになったため、人気が沸騰したのだろう
種目も、10kmコースのほか、ハーフマラソンの部や6kmコースも出来たので、超マイナーな山奥の草レースが、メジャーな大会になりつつあるのだ。

(ピッグ)「定員僅か1000人なんだからメジャーってのは言いすぎですけどね」

こんなに人気沸騰しているのだから、今どき定員1000人だなんて少な過ぎるような気がするが、狭い山道のコースを考えると1000人程度が限界のようにも思える。
こじんまりした和気藹々とした大会の雰囲気も好ましいので、エントリーしにくくなったとは言え、定員は増やさないほうが良いのかもしれない。

てなことで、2013年はエントリー受付がいつ始まるのか、毎日、注視し、受付開始の情報を聞くや否や、慌ててすぐさま申し込み、なんとかエントリーできた。
ところが2014年は再びエントリーに失敗。
続く2015年2016年は出場できたが、2017年富士登山競走のエントリーに成功したため、そちらに出場した。

そして2018年は富士登山競走のエントリーに失敗したため、再び汗見川マラソンのエントリーに挑み、なんとか無事にエントリーすることに成功した。ところが、なんと大会は中止になってしまった
その理由が信じられないことに、なんと「3週間も前の豪雨」だった。3週間も前の豪雨により、マラソンコースの道路に崩落の危険箇所があるから、という理由なのだ。
豪雨により道路が崩落して通れなくなった、と言うのなら理解できる
が、豪雨は3週間も前の事であり、その豪雨によって崩れてはいないのだ。一体、何を恐れているのだろうか?

なーんて怒り狂ったのだが、それでも貴重な夏場のマラソン大会なので、気を取り直して2019年もエントリーした。大好きな大会への3年ぶりの出場だったから、ウキウキのワクワクだったが、エントリーできたのは私が一緒にエントリーしたのらちゃんのほかは支部長だけだった。
あれほど私が毎年、口を酸っぱくしてエントリーを促していると言うのに、相変わらず他のメンバーはやる気が乏しく、多くのメンバーがエントリーに失敗したのだ。
私がこれだけ必死になってエントリーしているのに、他のメンバーの動きが悪いのは、このレースの坂と暑さに腰が引けてしまい、イマイチやる気が出ないからだ。

確かに「一体どうして、こななクソ暑い時期にマラソン大会が存在するんだろう?」という単純で素朴な疑問はある。
もう34回にもなる歴史ある大会なので、もしかしたら第1回大会が開催された35年前は、7月下旬といえども、四国山地の真ん中の山間部は涼しかったのかもしれない。夏の真っ盛りだけど高地なので気温も下界に比べたら低めだろう、って事で始まったのではないだろうか
しかし、こなな山の中でも高温化は確実に進んでいて、2007年に初参加した時は、この世のものとは思えないようなあり得ない暑さだった。
それで「四国山地の真ん中の高原で、こんなに暑いんだったら、下界は地獄のような暑さだろうなあ」なんて思っていたら、なんと、その日は、汗見川マラソンが開催された高知県本山町が全国で一番暑かったという、トンでもない状況だった。
昔は涼しかったのだろうけど、少なくとも今は、山の中だからと言って涼しさを期待してはいけない事だけは確かだ。

てことで3年ぶりに参加した2019年の大会だったが、なんと直前に降った大雨による土砂崩れで道が途中で通行止めになってしまい、ハーフマラソンのコースがとれなくなったとのことで、急遽、コース変更になってしまった
土砂崩れになった場所は10kmコースの折り返し点、すなわち5km地点のすぐ向こうだったので、10kmコースは予定通り行われた。
それならハーフマラソンの部もみんな10kmコースに振り替えれば良いような気もするが、なぜか土砂崩れ地点のギリギリまで走ることになり、そのため11kmだなんて中途半端な距離になった。
しかし、ハーフマラソンを走るつもりで来ていたのに、急に11kmレースになると言われても、心の準備ができていない。
ハーフマラソンならペース配分が重要になる。しかし11kmレースになると、ペース配分なんかは気にせず、最初から最後までがむしゃらに走るしかない
これは非常に苦しい。距離が短い方が楽だろうと思うのは素人で、距離が短い方が最初から最後まで全力疾走になってペースが速いから、むしろきつい。
それに11kmレースのタイムなんて、なんの実績にも参考にもならないから、イマイチやる気が出ないまま走り、結局、平凡なタイムに終わった。

そのため、2020年は4年ぶりのハーフマラソンの部で気合を入れて走ろうと思っていたが、コロナのバカ騒ぎで中止になってしまった。
それで仕方なく2020年から3年間は自主開催を続けたが、ようやく今年、4年ぶりに本大会が復活した。
そして、私が強引なまでにエントリーを促した結果、私、支部長、ピッグ、D木谷さん、のらちゃん、加藤選手のほか、新鋭のO野選手も初参加する事となった。
もちろん、みんなハーフマラソンの部だ。

(加藤)「いえいえ、私は10kmの部ですよ」
(D木谷)「え!?」


以前、10kmの部しかなかった頃の10kmコースは、延々と上り坂を10km上り続ける厳しい片道コースだった。スタート地点とゴール地点が異なっていたのだ。今のハーフマラソンのコースは、それと同じコースを、さらに500m上って、10.5km地点で折り返して帰ってくるコースだ。
ところが、ハーフマラソンの部ができてからの10kmコースは、昔のような片道コースじゃなくて、5km上って5km下ってくるコースになった。ハーフマラソンができてからはゴール地点がスタート地点と同じになったため、10kmコースも5km走ったら戻ってくるのだ。
なので、10kmコースはかつてのようなひたすら10km登り続ける過酷なコースではなくなった。
しかも、ハーフマラソンのコースは、前半はずっと上りっぱなしとは言え、そのうちの前半の5km地点までは大した傾斜ではない。緩やかに上っているだけだ。5km地点から折り返し点までがきつい上り坂となる。
なので、5km地点で折り返してくる10kmコースは、前半は上り坂だと言っても、たいした傾斜ではない
つまり、10kmコースはハーフマラソンに比べて距離が短いだけでなく、坂の傾斜も緩やかな楽勝コースなのだ。

(加藤)「支部長も2019年大会は10kmの部だったじゃないですか」
(支部長)「え!?そうやったかいな?」


2019年大会はコース変更でハーフマラソンの部も11kmしか走らなかった事もあり、支部長は混乱して忘れてしまっていたが、実は2019年は支部長は10kmの部に出ていた。

(支部長)「しもた!そうやったか。それなら今年も10kmの部にしたらよかった」
(幹事長)「いやいや、10km部はきついよ」


フルマラソンとハーフマラソンなら明らかにハーフマラソンが絶対的に楽だ。しかし、ハーフマラソンより短い距離のレースになると、距離が短い方がむしろきつい最初から最後まで全力疾走になるからだ
10kmも全力疾走するのは大変だ。

(加藤)「いやいや、私は10kmをのんびり走りますから」


〜 会場へ出発 〜


当日は、高知の山奥まで日帰りするので、当然ながら早めに出発しなければならない。
しかも、かつては10時スタートだったので、6時に出発したら楽勝だったんだけど、なぜかスタート時刻が少しずつ早まり、最近はスタート時刻が8時40分になってしまった。
大会案内を見ると「安全対策のためスタート時間を早めています」なんて書いてるので、暑くなる前に終わらそうと言う魂胆なんだろう。

実は2016年の大会では、衝撃的なアンケートが手渡された
このマラソン大会は夏の真っ盛りに開催してきたけど、近年、地球温暖化のせいで非常に暑くなっており、事故の危険性も出てきてるので、開催時期の変更を検討しています。どう思いますか?
なんていうトンでもない内容だったのだ。
もちろん我々は、
何を言うてるんや!他のマラソン大会が開催しないような、このクソ暑い時季に開催するからこそ存在価値があるんやないか。開催時期を変えるんやったら参加せんぞ!
と怒りの声をぶつけた。
おそらく、大半の参加者は同じような意見だったと思う。こんなマイナーな大会が人気を集めているのは、他にマラソン大会が皆無の酷暑の時期に開催されるからだ
そういう参加者の圧倒的多数の声を聞いて、開催時期の変更を断念した事務局が、仕方なくスタート時間を早めたって事だろう。

しかし、便利の良い町中で開催されるマラソン大会ならイザ知らず、ただでさえ不便な山奥で開催されるから、従来のスタート時間でも早起きしなければならなかったのに、さらに1時間も早起きしなければならないなんて、もう大変だ。
て事で、ピッグ4時30分に我が家へ迎えに来てもらい、その後、O野選手、加藤選手、支部長、D木谷さん、のらちゃんをピックアップし、6時前に高速道路に乗った。

朝の高速道路は空いていて、順調に進んだ。空を見上げると、朝から天気予報通り晴天だ。今日も強烈な暑さになりそうだ。
地球温暖化が着実に進行するなか、毎年、猛暑が厳しくなっているが、今年は特に暑さがすさまじく、7月に入ってから連日35度を越えるような猛暑日が続いている。今日も一日中酷暑が続くっていう天気予報だ。
ただ、はるか南方で発生した台風の影響で、四国山地の南側にある高知地方は曇りっていう天気予報に変わった。曇り予報になっても予想最高気温は低くなっていないが、直射日光が無くなると暑さはだいぶマシになる。

もちろん、普通ならマラソン大会の日の天気は晴天が好ましいのが当たり前だ。誰だって雨の中は走りたくない。できれば晴れ上がった空のもと走りたい。
しかし、厳しい日射しが照りつける酷暑の時期のマラソン大会では晴れるより雨の方が望ましい。しかも、このレースは、前半は延々と坂を登る厳しいコースなので、できれば雨が降ってくれる方が望ましい

(のら)「私は雨は嫌だなあ」
(幹事長)「まだ言ってるの?早く雨に慣れてよ」


のらちゃんは夏場の炎天下のレースに出た事がないから雨を嫌がっているが、一度、体験すると、夏場は雨を好むようになる。
特に、極端に汗っかきで暑さに弱い支部長は石清尾八幡さんで雨乞いをしているくらいだ。

(支部長)「雨が降らないんやったら夏場のレースは参加せんよ」

汗見川マラソンでは、10kmの部しかなかった2007年2008年や、ハーフマラソンができた2015年2016年は炎天下で地獄の暑さに苦しんだが、2013年はスタート直前に土砂降りの雨が降ったため、一気に気温が下がり、なかなか快調に走れた
快調に走れたと言っても、なんとか2時間を切った程度なので、普通のハーフマラソンの基準からすれば惨敗なんだけど、坂の厳しいレースなので、2時間を切れれば万々歳だ。

ただし、日本一雨が少ない香川県地方では、梅雨どきであっても大した雨は降らないが、日本一雨が多い高知県では極端な豪雨が降る。
2018年は3週間前に降った豪雨により土砂崩れの危険個所があるからと中止になったし、2019年は直前に降った豪雨により土砂崩れが発生してコースが変更となった
高知では大雨になると土砂崩れが発生する可能性が高くなるのだ。

整理すると、過去、参加した年は、2007年、2008年、2015年、2016年が灼熱の炎天下で、2013年、2018年、2019年は直前に豪雨が降った
豪雨のため2018年は中止になり、2019年はコース変更となったから、雨の恩恵にあずかれたのは2013年だけだ。

(幹事長)「炎天下か豪雨なんて、極端だよなあ」
(支部長)「豪雨でも良いから雨は降って欲しいぞ」
(幹事長)「今日は雨は期待できないけど、炎天下は避けられるかも」
(ピッグ)「幹事長は炎天下のレースが好きなんでしょ?」
(幹事長)「大雨も好きやけど、炎天下も大好きやね。ワイルドなのが良いねえ」
(ピッグ)「まともなレースだと勝ち目が無いから、色物を狙ってますね」


とは言え、ここんとこ体調は最悪だ。6月の終わりから7月の半ば過ぎまで北海道へ登山遠征に行っていた。そのため3週間以上、全くランニングしない日が続いた
全く走らないとは言っても、家の中でゴロゴロしていた訳ではなく、日本百名山一日一山の旅で毎日毎日超ハードな登山を繰り返していたのだから、体力的に弱っているわけではない。
平らな所を走るのか、山を登り下りするのかの違いがあるとは言え、足は毎日使っていた。なので、長い間、走ってなかったとは言え、そんなに弱ってはいないだろうと楽観視していた。

ところが、登山遠征から帰ってきて久しぶりにランニングして驚愕した。もう、ぜーんぜん走れないのだ。想像を絶するくらい走力が落ちていて、3〜4km走っただけで足が重くなって動かなくなるのだ。
登山とランニングでは足の筋肉の使い方が全く異なる。なので登山はランニングのトレーニングにはならない。それは分かっている。だとしもて、ここまで走力が落ちるなんて衝撃だ
これでは完走すらできないと思って焦りまくってトレーニングしたが、1週間前に10km走した時も、頑張って走っているのに7分/kmという超スローペースが限界だった。

(幹事長)「毎日、激しい登山を続けていたのに、ここまで走力が落ちるとは思わなかった!」
(支部長)「それは登山の連続で疲れが溜まってるんや」
(幹事長)「もう疲れは取れてると思うぞ」
(支部長)「歳とると疲れはなかなか取れんぞ」


これまでも登山直後にマラソン大会に出た事は何度もある。
今年3月も八ヶ岳に雪山登山した後、山から下りてきてそのまま夜通し車を運転し、家に戻ってきた翌日に徳島マラソンに出た。疲れと睡眠不足でフラフラのまま早起きして徳島まで行って走ったが、なんと9年ぶりに徳島マラソンの大会自己ベストを更新する事ができた。
なので、今回もその再現を狙いたがったが、それどころか
今回は完走すら危ぶまれる状況だ

早朝のため道路は空いていて、高速道路も順調に進んだ。
車の中で朝食を食べる。朝食はおにぎりだ。
以前はレース中にお腹を壊すことが多かったので、用心して朝食と一緒に下痢止めの薬も飲んでいたが、2015年の徳島マラソンから朝食を菓子パンからおにぎりに変えてみたらその後はお腹を壊さなくなった
パンに含まれるフルクタンという糖類は消化に悪く、下痢になりやすいが、お米に含まれている糖類は消化が良いので、おにぎりを食べれば、もう下痢を心配する必要は無いのだ。
なーんて、すっかり油断してたら、なんと2020年の高知龍馬マラソンでは5年ぶりにレース中にお腹を壊して20分もトイレにこもってしまった。さらに2022年の神戸マラソンでも、29km地点でトイレに駆け込み、大幅にタイムをロスしてしまった。
原因は分からない。でも、少なくともおにぎり路線が悪い訳ではないだろう。おにぎりの他に、バナナやゼリーも食べたりしていたから、それらを控えるべきかもしれない。また、レース中に調子に乗ってエイドで色々食べ過ぎるのも良くないかもしれない。
今日も一応、ゼリーも持ってきたが、これはスタート前に必要に応じて食べることにする。

高速道路を降りる直前の立川パーキングエリアでトイレに行ったが、普段はほとんど客がいないサービスエリアなのに、早朝からレースに参加するランナー達で大賑わいだった。
トイレで大をした方が良いタイミングだが、出そうになかったので小だけ済ませた。


〜 会場到着 〜


車はその後も順調に進んだと思ったけど、レース会場クライミングセンターに着いたのは、予定より少し遅い7時過ぎになった。
車はすぐ近くの早明浦ダム直下の広い河川敷駐車場に停める。この駐車場が一杯になると、遠く離れた第二駐車場に停めてバスで移動することになるので、それは避けたいから早めに来たつもりだった。
ところが、なんと既にかなり駐車場が埋まっている。こんな事は初めてだ。みんな久しぶりの本大会と言うことで、やる気満々なんだろうか。

なんとか車を停める事ができたので、すぐ近くのクライミングセンターへ移動する。高さ15m、幅4mの人工のクライミングウォールが2面ある西日本で有数の屋根付き競技場だ。
まずは受付だ。受付と言ってもゼッケンや計測チップは事前に送られてきているので、参加賞を受け取るくらいだ。
参加賞は今年もタオルだった。マラソン大会の参加賞はTシャツが一般的だが、マラソン大会のTシャツはタンスから溢れているのでタオルの方が大歓迎だ。ただし、汗見川マラソンのタオルはあんまり大きくないので、バスタオルとして使うには少し小さい。

この大会はクライミングセンターの周辺が待機場所になっている。クライミングセンターの前や裏のグランドの芝生の上に大きなテントが張られてブルーシートが敷かれており、他のマラソン大会ではあり得ないような快適な待機場所になっている。
他のマラソン大会だと、オリーブマラソンのように自分達でなんとかスペースを見つけて、炎天下で強引にシートを敷くというのが基本だ。
ただ、これまではクライミングセンターの裏にあるグラウンドの芝生の上の大きなテントの中には、テーブルとイスが並べられていたが、今年はテーブルやイスは無くなっていた。
ま、テントがあるから日よけになるし、ブルーシートの上で着替えができるから、この方が良いかもしれない。

テントに入ると、おんちゃんが手を振っている。だいぶ前に着いたようで、我々のために場所を確保してくれていた。いつもいつもありがたい事です。
おんちゃんは高知県内のマラソン大会にはことごとく出ているので、6月初めの北山林道駆け足大会でも会ったばかりだ。

(幹事長)「調子はどうですか?」
(おんちゃん)「今月は500km走ったよ」
(幹事長)「ごひゃっきろ!?」
(支部長)「ごひゃっきろ!?」
(ピッグ)「ごひゃっきろ!?」
(幹事長)「合わせて1500km!?」
(のら)「北山林道駆け足大会の時と同じ会話やね」


私や支部長は、一番熱心に練習していた2〜3年前の冬でも月に300kmが限界だった。雨とかで走れない日もあるから、月に500kmと言うと、走れる日は平均20kmくらい走らなければならない。
毎日20kmだなんて有り得ない、考えられない。疲れが残って走れなくなっていく。もう超人の域に達しているぞ。

場所が落ち着いたら着替えしなければならない。

(支部長)「で、今日も着るもので悩むわけ?」
(幹事長)「夏場のレースは着るもので悩む余地は少ないな」


ウェアの選択は、どんな季節のマラソン大会であっても最も重大な問題だ
今日は天気予報では高知県内は曇り予報だったが、実際には雲はあまり無く、どうやら炎天下のレースになりそうだ。
こうなると、本当は裸で走りたいくらいだが、裸で走ったら日焼けでボロボロになるだろうから、上は北山林道駆け足大会でも着た薄手の袖無しのシャツにした。

(D木谷)「郷ひろみスタイルじゃないんですね?」
(幹事長)「あれは貴重なコスチュームなので」


彼が言う郷ひろみスタイルと言うのは、以前オリーブマラソンで着ていた秘密兵器のメッシュシャツだ。

(幹事長)「あれはまるで何も着ていないような感じで、炎天下のレースには最適なんですけどね」
(D木谷)「いや、実際に、何も着ていないに等しいですよ」

まるで裸で走っているようなとても快適な秘密兵器のメッシュシャツなんだけど、古くなってボロボロになってきてるから、今日は温存することにした。なぜなら今日は完走すら危うい状況だからだ。こんな状態の日に秘密兵器を出しても役に立たないから、もったいない。
ただ、この袖無しシャツも、秘密兵器のメッシュシャツほどではないが、背中側が少しメッシュになっているし、袖も無いから、普通のTシャツに比べるとかなり涼しい

北山林道駆け足大会では下は青森勤務時代の職場の陸上部で作った超薄手の短いランニングパンツを履いた。これは涼しいだけでなく、超短いため、足を開くときの抵抗感が全く無くて、とても走りやすい。
でも、この超短いランニングパンツも今日は温存した。そんなものを履いているのに途中でリタイヤなんかしたら恥ずかしいからだ。
なので、下は普段の練習でも履いているランニングパンツを履いた。

他のメンバーは半袖Tシャツが多いが、支部長のらちゃん加藤選手はアームカバーを付けている。

(幹事長)「それは暑いやろ?」
(のら)「だって日焼けしたくないんだも〜ん」
(加藤)「日焼け防止のためですね」
(支部長)「これは汗が垂れるのを防ぐためや」

みんなは炎天下だから帽子も被っている。
日射しを避けるためには帽子を被った方が良いとは思うんだけど、帽子を被っても、いつも途中で頭が蒸れて暑くなり、結局、脱いで手に持って走るようになるので、今日は最初から被らないことにした。
サングラスもどうしようか迷ったが、汗を拭く時に邪魔になるので止めておいた。
露出の多いウェアなので、日焼け防止のため日焼け止めクリームを塗りたくる。どんどん汗が噴き出てくるので、いくら塗っても流れ落ちていくが、それでも効果はある。
筋肉の疲労防止のために、寒い時期ならタイツを履くところだが、今の時期にタイツを履くと暑すぎるので、脹脛サポーターを履いた。

(幹事長)「最近、ピッグは脹脛サポーターを履いてないな」
(ピッグ)「なんとなく効果に疑問を感じて」


支部長のらちゃん加藤選手はタイツも履いている。この3人は真冬のマラソン大会と同じ格好だ。

(幹事長)「どう見ても全身が暑そうやなあ」
(のら)「だから日焼けしたくないんだってば!」
(加藤)「だから日焼け防止のためですがな!」
(支部長)「だから汗が垂れるのを防ぐためやってば。着ても着なくても、どっちみち暑いんよ」

さらにのらちゃんは首に何か巻いている。

(幹事長)「何それ?」
(のら)「だから日焼け防止だってば!!」
(幹事長)「絶対暑いやろ?」
(のら)「暑いに決まってるやんか!それでも日焼けするよりマシだよ!」
(幹事長)「全身あせもが出来るよ」


一方、加藤選手は首筋までカバーする布が付いた帽子を被っている。どうしても日焼けを防止したいらしい。

(支部長)「旧陸軍兵士みたいやな」
(加藤)「恥ずかしながら」


会場の方では開会式をやっているが、わざわざ行く気は起きない。
準備が終われば使用前の写真撮影だ。

スタート前に気合を入れる参加メンバー


初参加のメンバーもいるので、スタート前にコースを確認する。コースはとてもシンプルで分かりやすい
スタート地点は会場のクライミングセンターの前だ。そこをスタートして、すぐ県道264号線を北に入っていく。
その後は吉野川の支流である汗見川に沿って川の東岸の県道264号線を延々と北上し、5.5km走ったところにある1つ目の橋を渡って川の西岸に渡り、9.5km走ったところにある2つ目の橋を渡って再び東岸に渡る
そして、10.5km上った冬の瀬というところで折り返して帰ってくる。

前半の10.5kmはひたすらずっと上り坂、後半は全て下り坂往復21kmだ。
ただ、汗見川は急流という訳でもないし、川に沿った坂はそんなに激しいアップダウンではない。北山林道駆け足大会は、絶壁のような急坂をよじ登り、よじ降りてくるという過酷なコースだが、それに比べたら大した勾配ではない
特に、前半はずうっと上り坂とは言え、そのうちの前半の前半である5.5km地点までは大した傾斜ではない。緩やかに上っているだけだ。5.5km地点から折り返し点までがきつい上り坂となっている
折り返してからは、後半の前半はきつい傾斜の下り坂なので、調子に乗って飛ばして下ってこられるが、後半の後半は緩やかに下っているだけだから、体感的にはほとんどフラットで、かなりきつい区間だ。

(支部長)「いや、あそこは上っているように感じるぞ」

確かに、微かには下っているはずなんだけど、走っていると上り坂に感じられる。
なお、10kmの部は、1つ目の橋の手前にある5km地点で折り返して帰ってくる。

(支部長)「私も5km地点で折り返して帰ってくるよ」
(幹事長)「何をたわごとを」


支部長は春頃から調子が悪く、徳島マラソンでは途中リタイアしたし、その後のオリーブマラソン秋吉台カルストトレイルラン北山林道駆け足大会では完走はしたが、かなりしんどうそうだった。
そして、その後、さらに体調は悪くなり、今回は完走が難しそうだったら途中で勝手に10kmの部に乗り換え、5km地点で折り返して帰ってくると言う。


〜 スタート前 〜


スタート時刻が近付いてきたので、トイレの様子を窺うと、それほど長蛇の列でもないので、並んで小を済ませた。
持ってきたゼリーを吸いながらスタート地点に移動する。

スタートする前に本日の目標を立てなければならない。
もちろん、通常ならどんな時でも、どんなレースでも、常に大会自己ベストを狙うのが良い子のランナーとしてあるべき姿だ
マラソンはコースや季節によってタイムが大きく変わってくるため、違うレースのタイムを比較するのは不適当なので、どんなレースに出ても、とりあえず大会自己ベストを狙うのが良い子の正しい道だ。

なので、目安はあくまでも過去のタイムだ
この大会は、トンでもなく暑い時季の山岳マラソンなので2時間を切るのは不可能だろうと思っていたけど、2013年にはスタート直前にスコールが降り、高気温が少し和らいだおかげで、2時間を切ることができた
これがこの大会の唯一まともなタイムなので、目標はその時のタイムだ。
汗見川マラソンとしてはまともなタイムではあるが、なんとか2時間を切った程度なので、他のマラソン大会のタイムに比べたら惨敗レベルのタイムだ。
なので、ハードルは高くないように思えるが、今日のような炎天下のレースになれば、このコースで2時間を切るのが限りなく不可能なのは認識している。

それに、そもそも今日は完走すら不安な状態だ。なので、なんとか最後まで歩かずに戻ってこられれば良しとしよう。
こんなに完走すら危ぶまれた事態は記憶に無い。

(支部長)「いやいや、かつて塩江マラソンに出ていた頃は歩くのが当たり前やったで」
(幹事長)「あ、そやったな。忘れてた」


25年前の第4回塩江マラソンでは激坂に耐えられずに歩きまくり、ビリから数えて10数番目だった。
でも、最近は歩いた事はないので、できれば最後まで歩かずに完走したい。

(支部長)「いやいや、脱藩マラソンでも歩てるやんか」
(幹事長)「あ、そやったな。忘れてた」


確かに、フルマラソンでは歩くのも珍しくはない。4年前の龍馬脱藩マラソンでも前半のうちから徹底的に歩きまくった。
でもフルマラソン以外では最近は歩いた事はあまり無いような気がするので、できれば最後まで歩かずに完走したいぞ。

完走すら危ぶまれる状況なので、今日の戦略自然体で思うままに走っていくことだ。

(ピッグ)「もう戦略でも何でもないですね」

レース本番になると興奮状態になって前半に飛ばしたりする事が多いが、決して前半に飛ばしてはならない。そんな事をしたら絶対に後半に力尽きるだろう。終盤に足が動かなくなるのは目に見えている。
どうせ良いタイムは望めない状態なんだから、気楽に走っていこう。

てなわけで、目標として歩かずに完走する事を目指すことにした。


〜 スタート 〜


スタート10分前頃になり、集合のアナウンスもあったので、ようやくスタート場所に移動する。もちろん、スタート10分前だと言うのに、まだスタート地点には並べない。周辺で待機するだけだ。
なぜなら、スタート地点の道路は交通規制がかかっておらず、どんどん車が通っているからだ。地域住民のために、スタート直前にならないと通行止めにできないのだ。

スタート3分くらい前になってようやく通行止めになり、ランナーが並び始める。シューズにタイム計測チップは付けているが、これはゴール時に計測するだけで、タイムはネットタイムではなく、グロスタイムしか計ってくれない。なので、前方からスタートしなければタイムはロスする。
とは言っても、ハーフマラソンの参加者は816人なので、後ろの方に並んだとしても、それほどタイムロスは無い。てことで、特に焦ることもなく、集団の中程に並んだ。
天気は相変わらずの晴天で気温は高く、汗はタラタラ、日焼け止めクリームもタラタラだ。

しばらくするとカウントダウンが始まり、いよいよスタートとなった。スタートラインを越えるまでのタイムロスは5秒ほどだった。
取りあえずは何も考えずに自然体で走る

このマラソン大会は猛暑の坂道をひたすら登る過酷なレースなので、ペース配分を考えて無理せずにゆっくりと走り出すランナーが多いと思われがちだが、実際は逆だ。
こんな過酷なレースに出場する選手はレベルが高くて、最近のメジャーなマラソン大会に大挙して出てくるような初心者はあまりいないから、スタートの合図と共に、みんなすごい勢いで一斉に駆け出す
ペース配分を考えていないのではなく、ペース配分を考えても私のレベルからすれば速すぎるのだ。なので、最初から混雑は無く、順調に走り出せるから良いと言えば良いけど、周囲がみんな早くて、それにつられてオーバーペースになる危険性がある

このレースは、前半の10.5kmは、汗見川という、早明浦ダムの直後で吉野川に合流する小さな支流に沿った道を延々と上るから、基本的にひたすらずっと上り坂で、逆に折り返してくる後半は下り坂だ。
ただ、汗見川は急流という訳でもないし、川に沿った坂はそれほど激しいアップダウンではない。6月の北山林道駆け足大会は、絶壁のような急坂をよじ登り、よじ降りてくるという過酷なコースだったが、それに比べたら大した勾配ではない
特に、前半はずうっと上り坂ではあるが、前半の前半、すなわち最初の5kmくらいは大した上り坂ではない。なので、スタート直後の元気なうちは、あんまり苦にならない程度の上りだ。
時々、ちょっとした上りを感じるけど、大半は緩やかに上っていくだけなので、体力がある序盤では、あんまり気にならない。

まず最初の1km地点のタイムは5分ちょっとだった。炎天下の坂道マラソンにしては悪くはない。
ただ、最近、練習で絶不調だったとは言っても、練習でも最初はそんなに悪くはない。それが、ほんの数km走っただけで足が動かなくなっているので、今日も同じ可能性がある。調子に乗ってはいけない。
すると、早くもピッグD木谷さんが前に出てきて、少しずつ離れていく。早くも自分はペースダウンしているのだろうか?もちろん、ここで頑張って着いて行ったりしたら後半でバテると思うので、自重する。
さらにおんちゃんもジワジワと前の方に動いていく。

恐れていた通り、2km地点でのラップは一気に落ちた。この1kmは多少、上り坂があるため仕方ないかとも思ったが、次の1kmはフラットに近かったのに、3km地点でのラップも落ちたままだ。
明らかに私を追い抜いていくランナーが多い。逆に私が追い抜いていくランナーはほとんどいない。やはり練習の時と同じように、早くも大きくスピードダウンしているようだ
それでも絶不調のなか、また猛暑の炎天下の割りには、なんとか走れている感じだ。

と思ったんだけど、ここでのらちゃんが追いついてきた。彼女も体調はイマイチで、それほど勢いは無く、なんとか横に並んだだけで、そのまましばらく並走する。
でも、そのうちジワジワと前の方に出てきて、さらに少しずつ差が広がっていく。着いていこうと思えば着いていけなくもないスピードだけど、無理したら後半で足が動かなくなると困るので自重する。
コースは山の中の川沿いで、日陰と日なたは半分づつくらいだ。日陰でホッとしたかと思うと、またすぐ日なたになる。

このレースは、マイナーな草レースではあるけれど、真夏のレースということで給水所多い。片道に5箇所、往復で10箇所もある。
必ずしも喉は乾いていないが、喉が渇いてからでは遅いので、炎天下のレースなので最初からこまめに水を補給する
しかも、どの給水所にもスポーツドリンクだけでなく、冷たい水を含んだスポンジも用意されている。これで顔を拭くとリフレッシュする。大変ありがたい。

その後、だんだん坂の傾斜がきつくなってきたとは言え、4km地点のラップを見てビックリ。一気に1分も落ちて6分半くらいになっている。いくらなんでも、そんな事ってあるだろうか?
そして、次の5km地点のラップは、なんと7分をオーバーしてしまった。いくらなんでも、これはおかしい。
確かに着実に坂の傾斜は増してきたとは思うが、そうだとしても、まだまだ大した坂とは思えない。これは距離表示が間違ってるんじゃないのか?

なんて思いながら次の6km地点のラップを見ると、やはり4分台前半になっている。4分台の前半なんて北山林道駆け足大会の急激な下り坂でくらいしか出した事が無いハイペースだ。緩いとは言え上り坂で出るようなペースではない。
やはり明らかに距離表示が間違っている。3〜5km地点の距離が長くて5〜6km地点の距離が短いのだろう。
大都市の巨大マラソン大会である神戸マラソンですら距離表示が明らかにおかしかったくらいだから、この田舎の草レースの距離表示がおかしくても不思議でも何でもない。
ただ、前回まではこんなおかしな事は無かった。久しぶりの大会なので、距離表示板を立てる位置を間違ったのだろう。コース全体の距離は折り返し点が同じであれば同じなので、さほど問題は無い。

前半の後半に入ると、それまではちらほら田んぼもある風景だったのが、山深くなってきて、だんだん坂が厳しくなっていく。全体的に傾斜がきつくなると言うより、所々に急な坂が出てくるようになる。
パンフレットの地図では傾斜10%のところもある。ただ、そういう急坂の区間はそんなに長くはなく、庵治マラソンの折り返し点にある巨大な坂とか、オリーブマラソンの最後の激坂のようなきつさはないので、なんとか踏ん張って上っていく。
相変わらず、明らかに他のランナーが次々と抜いていく。みんなが揃ってペースアップするなんて事はあり得ないので、自分のペースが落ちてるんだろう

7km地点でのラップは再び6分半近くにまで落ちたが、これは距離表示のせいではなく、本当に足が動かなくなってペースダウンしたような気がする。
それ以降の8km地点9km地点10km地点でのラップも6分半前後で推移した。今日はこれが限界か。
とは言え、後半に足が動かなくなると極端にペースダウンするので、それを避けるため、決して無理はしない。なので、ペースは落ちているが、それほどしんどくはない。しんどくなるほど頑張っていないからだ。今日は完走が目標なので、それでも良い。
ただ、両足の付け根付近に痛みが出てきた。大した痛みではなく、走りに影響があるほどではないが、この先、痛みがひどくなると嫌だなという不安はある。

前半の後半は坂が厳しくなるとは言え、8km地点を過ぎると、もうそんなすごい坂が現れるっていう感じはない。何度も走っているから分かっている。ただし、だからと言ってペースが上がる訳ではない。
こんなに厳しいレースの割りには、歩いているランナーはほとんどいない。後ろの方にはいるのかもしれないが、序盤から飛ばしすぎて早々に足が止まって歩いている、なんてランナーは、他のレースにはいっぱいいるけど、このレースでは、まだまだいない。やはりレベルが高いレースだ。

それと、このレースは女子選手が少ない。最近はメジャーなマラソン大会になると女子がとても多いが、このレースは女子が少ない。10kmの部は4割近くが女子だが、ハーフマラソンの部は2割を下回る。
いくらマラソンブームでも、こんな過激なレースに出る女子は少ないのだろう。男子選手だって、こんな過酷なレースに出ようと、わざわざ山奥まで来る選手は、マニアックな好き者揃いなんだろう

山深く入れば木陰が多くなり、厳しい日射しから逃れられる区間が多くなるが、風は無風に近く、空気は熱く息苦しい
10km地点を過ぎた辺りで、早くもD木谷さんが折り返してきた。この炎天下で速いなあ。
その後、しばらく行くとピッグも折り返してきた。そして、折り返し点が近づいてきた時、のらちゃんも折り返してきた。私より1分くらい前にいる。これくらいなら、後半に失速しなければ追いつけるかもしれない。

10km地点から500mほど行くと、折り返し点がある。冬の瀬だ。
折り返し点でのタイムは1時間4分だった。て事は、後半の10.5kmを56分で走れば2時間を切れる。1km5分20秒のペースだ。
前半で1時間4分もかかったのに後半を56分で走れるのか、と言うと、上り坂だった前半と違って後半は下り坂なので不可能ではない。
1km5分20秒のペースは丸亀マラソンなら普通のペースだ。フラットな丸亀マラソンで出せるのなら下り坂の汗見川マラソンの後半なら十分に出せる。
スタート前は完走すら危ぶまれる状況だったと言うのに、なんとか前半を乗り切ったら、急に欲が出てきた。でも、かと言って頑張りすぎて無理をすると終盤に足が動かなくなるので、まだ無理はしないでおこう。

折り返し点で折り返して下りに入り、自分より遅いランナーとすれ違いながら、折り返す前にすれ違った私より速いランナーとどっちが多いか見てたが、なんとなく同じようなものか。今年も全体の半分程度の位置ということだ。
最近のメジャーなマラソン大会では、異常なまでのマラソンブームのせいで、軽い気持ちで参加する初心者ランナーが多く、相対的な順位を見ると、以前より断然、上位に入るようになってきた。
マラソン大会に出始めた20年ほど前は、下から数えた方が早かったが、最近は上位1/3くらいには入るようになってきた。私が速くなったのではなく、遅い人が大量に参加するようになって相対的順位が上がったからだ。
しかし、このレースはレベルが高いため、せいぜい半分くらいの位置だ。しかも、最後尾に近いランナーでも、トボトボと歩いているランナーは少ない。さすがに、そんな人は参加していないのだろう。

折り返してからの後半は、基本的に下り坂となる。上りできつかった所は、逆に速く走れる。当たり前だが、問題はそのペースだ。折返し点を含む区間、すなわち10km地点から11km地点の区間は上りと下りが半分づつだから、6分ほどだったが、次の12km地点でのラップに期待した。
ところが、12km地点で時計を見ると、ほとんどペースアップできてなかった。ガッカリと言うか、一体どうしたんだ?
その後、下り坂は傾斜が急になっていったため、次の13km地点ではそこそこペースアップできたが、調子が良い時は5分を切るようなペースで走れたのに、今日は5分半程度だ。
まあ、今日は完走できれば良いくらいの状態だったから、贅沢を言ってはいけない。

このレースは山の中を走るため、沿道には誰もいないような区間が大半だが、それでも数少ない人家の前では住民の方が応援してくれるので、こちらも手を振って笑顔でお礼を言う。
天気は相変わらず晴天で、風も相変わらず全く吹かないから、暑さは続く。全身汗でぐっしょりだ。
次の14km地点では、坂が少し緩くなったせいか、再び6分近い大幅なペースダウンとなったが、15km地点では下り坂がきつくなったおかげで5分ちょっとにペースアップできた。

そして、次は問題の15〜16km地点の区間だ。さきほど明らかに距離が短かった5〜6km地点の区間だ。さっきは上りなのに4分台前半なんて異常なタイムだったから、今度はどうかなと思っていたら、なんと3分台のタイムが出た。
いくら下り坂だと言っても、こんなタイムはどんなレースでも出した事はない。下り坂と言っても、北山林道駆け足大会や酸欠マラソンのような激坂ではなく、普通の坂だ。
やはり明らかに距離表示が間違っている

この時点でタイムは1時間33分台だ。残り5kmを26分で走れば2時間を切れる。前回の2019年大会では最後の5kmを25分くらいで走ったから不可能ではない。完走すら危ぶまれる状況だったのに、こんな良いペースでここまで来られるなんて驚きだ。
なーんて思ったんだけど、17km地点18km地点では一気に6分半くらいにまで落ちてしまった。この区間は距離表示疑惑で距離が長い区間だ。
そのため、残り3kmの地点で時間は1時間47分近くになってしまった。2時間切りまでは、もう13分しかない。3kmで13分は無理だ。この状態では絶対に不可能だ。
て事で、この時点で目標を見失う。そもそも今日は完走さえできれば良いって思ってたので、これ以上頑張ろうっていう気持は出てこない

それでも、決して足が動かなくなるような気配は無い。相変わらず両足の付け根辺りは少し痛みがあるが、走りに影響しそうなほどの痛みではないし、どんどん悪化しそうな感じでもない。
やはり前半であんまり無理しなかったのが良かったのだろう。最後まで足は痛くならず、ちゃんと動いている。前半を抑えて走ったから全体のタイムは良くないが、最後まで足が動くのは気持ちいい。

19km地点20km地点のラップは、大した事はないにしても、まずまずペースアップできていた。
調子が悪くなった時は、この終盤の緩い下り坂が上り坂に思えて苦労するけど、今日は気持ちよく走って行ける。
周囲のランナーも、追い抜かれるよりは追い抜く方が多くなってきた。多くのランナーが力尽きてペースダウンしているからだ。


〜 ゴール 〜


最後のコーナーをクネクネ曲がって会場のクライミングセンターに戻ってきた。
結局、タイムは汗見川マラソンでハーフマラソンを走った4回のうちで自己ワースト記録だった。それでも、過去のタイムとそれほど大きな差は無く完走すら危ぶまれる状況だった割りには気持ちよく走れたと思う。
1週間前の練習で10km走るのがやっとだった事を考えると、不思議な気持だ。やはり本番は気合が入ってパワーが出るのかもしれない。
パッとしないタイムだったが、とても満足だ。

ゴールゲートをくぐると、支部長がゴールの横でカメラを構えて写真を撮ってくれた。

(幹事長)「速いやん」
(支部長)「予定通り10kmにしたからな」


心配した通り、支部長は5km地点に行くまでに何度か歩くなど調子が悪く、到底21kmは走れないと悟り、5km地点でレースを諦めてチップを外し、そのまま10kmの部のランナーに混じって折り返して走ってきたんだそうだ。
他のメンバーは、D木谷さんが1時間50分を切る好タイムだった。素晴らしいなあ。
おんちゃんも1時間50分は切れなかったが良いタイムだったし、ピッグO野選手も2時間を切る好タイムだった。
一方、のらちゃんは惜しくも2時間を切れなかった。とは言え、私とは折り返し点での差より大きく差が開いていた。みんな、すごいなあ。

これまで、ゴールすると、まずはお楽しみの冷たいトマトを貰って食べた。大きなバケツに冷えたトマトがいっぱい浮かんでいて、好きなだけ取り放題だった。冷たいだけでなく、完熟で収穫した地元のトマトだから甘くて美味しかった。
ところが今年はトマトが無かった。どうしてかなあ。
次なるお楽しみのゆずジュースは今年もあったので、貰って飲む。カラカラに渇いた喉にゆずジュースがとても美味しい。

前回までは記録証をくれていたが、今回は後からネットで各自ダウンロードしてくれと言うことになった。最近のマラソン大会は、ほとんどがこうなってしまった。違うのはオリーブマラソンくらいだ。
できればちゃんとした紙の記録証をその場でもらいたいので、残念だ。
後からネットで見ると、これまで男子年代別では半分より少し遅かったが、今回は半分より速かった。これは私が速くなった訳ではなく、歳とって年代別部門のクラス別が上がった事が理由だろうけど、それでも嬉しい。
丸亀マラソンなんかだと、近年は素人の人たちがわんさか出てくるので、我々のようなレベルの低いランナーでも昔に比べれば相対的な順位は良くなったが、この汗見川マラソンはレベルが高いから、そうはいかない。
こんな酷暑の季節の山岳レースという過酷なレースに出場する選手はレベルが高くて、最近のメジャーなマラソン大会に大挙して出てくるような初心者はあまりいないから、相対的な順位は良くないのだ。
その中で、年代別部門とは言え、半分より速いってのは素直に嬉しい。


〜 川遊び 〜


一休みしたところで、いよいよ、このレースの一番の楽しみである冷たい汗見川での川遊びだ。

(幹事長)「今日は暑いから、走っている時も川遊びの事ばかり考えて走ってたよ」

かつて上りの片道10kmコースしか無かった時も、ゴール後に山奥の川に飛び込んでいたが、往復のハーフマラソンになってからも、会場のすぐ近くで汗見川に飛び込むことができる。このために、みんなサンダルを履いてきている。
疲れた足を引きずって川に降りていくと、既に多くのランナーが川に入って気持ちよさそうに泳いだりしている
サンダルを履いてランニングウェアのまま川にそうっと入っていく。

(D木谷)「気持良いですね!」
(幹事長)「ひえ〜〜!冷たい!」

いつもながら川の水は冷たい
膝から下を浸けてるだけでも足が痛くなる。それでも少しづつ体を入れていくと、なんとか腰まで入る事ができた。
さらにジワジワと水に入り、我慢して少しずつ身体を沈めていくと、最初は心臓が止まりそうになるが、いったん肩まで入ってしまえば、ずっと入っていられる
今年は川の水が例年ほどめちゃくちゃ冷たくはない。最近の猛暑のせいで水温が上がっているのだろうか。熱く火照った体が冷やされていくのが気持ち良い。

D木谷さんは早くも冷たさに慣れたようで、対岸まで泳いで行ってしまった。
支部長を見ると、なんとゴーグルまで付けて、本格的に泳いでいる。
私も真似して泳ごうとしたら、足のあちこちが一気に攣ってしまい、溺れかけてしまった。

(D木谷)「橋の向こう側まで行ってみましょう」

これまでは橋のこっち側(南側)でしか泳いだ事が無かったが、橋の向こう側(北側)に行ってる人もいるので、我々も行ってみる事にした。
これまで橋の向こう側は、良い子は行ってはいけない危ない世界だと思っていたので、行った事が無かったが、行ってみると意外に浅く、溺れる心配も無く遊べる事が分かった。
水に浸かっていると体は冷え切るが、水から出ると日差しが強いのですぐに体が熱くなる。
今年はいつになく長い間遊んでいたが、足攣りが治まらないので、そろそろ出ることにした。

体も十分に冷え、落ち着いてきたので、会場に戻って弁当券を弁当に引き替える。これまでは弁当は2種類あって、普通の弁当かソーメンとばら寿司の組み合わせだったが、今年は普通の弁当だけになった。ただし、なかなか豪華な弁当だったので嬉しい。
さらに今年はアイスキャンディーの引換券も着いていて、美味しいしそのアイスキャンディーを貰った。暑い中、これがとても美味しかった。

(ピッグ)「以前はお楽しみ抽選会があって、幹事長はお米を貰った事がありましたよね」
(幹事長)「そう言えば、そういう事があったぞ」


すっかり忘れていたが、2015年大会で高級お米を貰ったのだった。良く覚えてるなあ。
でも、今年はお楽しみ抽選会は無くなってしまった

お弁当を食べた後は、今年も近くのモンベルのアウトドアヴィレッジお風呂に行く。まだ新しい施設なので、お風呂も気持ち良い。
レース後に川に飛び込んで汗を流すことができるから、お風呂には入らなくても済むんだけど、やはりお風呂できれいさっぱり洗うことができるのは嬉しい。
お風呂から出て、涼しいところでのんびりアイスクリームを食べていると、幸せな気分になる。

て事で、今日はタイムは悪かったが、完走すら危ぶまれる状況で最後まで力尽きずにちゃんと走れたので密かに嬉しい

次は10月初めの四国のてっぺん酸欠マラソンまでレースは無い。この暑さでは練習するのも命がけになるので、しばらく休んで、9月に入ってから練習再開になるかも。
8月は尾瀬や東北に登山遠征する予定だから、ちょうど良いかも。


〜おしまい〜




戦績のメニューへ