四国ペンギンズ
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汗見川マラソン2024
第35回 汗見川清流マラソン大会
2024年7月28日(日)、猛暑の高知県本山町で第35回汗見川清流マラソン大会が開催された。
このレースは、暑い暑い四国の真夏に開催される大変貴重なマラソン大会だ。
以前は、真夏の四国のレースとして、ほかにも四国カルストマラソンがあった。
真夏に開催されるというだけでなく、かつての強烈登山レース塩江山岳マラソンに匹敵するものすごい急な坂が延々と続くという異常に厳しい20kmコースだった。そのため、強烈な日射しにより地獄のような暑さで体が焦がされる中、走るのが不可能なほど急な坂をよじ登るという発狂するようなレースだった。
しかし、この殺人レースは、あまりの厳しさのため危険すぎるってことで廃止になってしまった。
他に夏場の山岳レースとしては、9月初めに開催されていた四国のてっぺん酸欠マラソンがあり、2015年以来、毎年連続でエントリーしてきた。
ただ、こちらは夏場の山岳レースとは言え、9月に入っているので、灼熱の炎天下というほどではない。ロクに日陰が無いコースだから天気が良いと炎天下にはなるが、7月末に比べたら随分マシだ。
しかも、それでも暑くて体に悪いからという理由で、2023年から開催日が10月初めに変わってしまった。
てことで、汗見川マラソン大会は真夏の四国のレースとして唯一の貴重なレースになった。
四国で真夏のレースが少ないのは、あまりにも暑くて走るのが大変だからだ。四国に限らず、全国的に真夏のレースは極端に少ない。
でも、だからと言って真夏にレースに出ないと、夏の間、ランニングをサボってしまいがちになる。
レースが無くても地道にトレーニングできる真面目な人ならいいんだけど、我々のように心が弱いと、レースが無いとどうしてもサボってしまう。
(ピッグ)「レースがあっても、こう暑いと練習はサボりがちになりますけどね」
(支部長)「こんな暑い中、練習なんかしてたら倒れてしまうよ」
なので、レースが無いと完全に休養してしまう心が弱い我々としては、少しでもモチベーションを維持するため、この時季にレースを1つ入れたいわけだ。
2020年から3年間は、新型コロナウイルスのバカ騒ぎが勃発し、独善的な医療関係者と破廉恥なマスコミによって非科学的でヒステリックなマラソン大会中止騒動が全国的に広がったため、この汗見川マラソンも3年間は中止になったが、2023年になってようやくコロナのバカ騒ぎが収束し、汗見川清流マラソンも4年ぶりに復活となった。
それに引き続き、今年も無事に開催される事になった。まことに喜ばしい限りだ。
なお、今回の大会は第35回大会と銘打たれている。
コロナで中止になる前に最後に開催された2019年の大会は第32回大会だったから、正式に開催された大会としては去年が第33回大会、今年が第34回大会になる。
しかし、公式には去年が第34回、今年が第35回と銘打たれている。おそらく、2020年の第33回大会は既に準備を進めていたので、中止にはなったものの、第33回大会と位置付けているのだろう。
どういう数え方でも別に構わないが、我々はコロナで中止になっていた期間も自主開始して、回数をカウントし続けてきたので、このホームページでは自主開催した2020年大会を第33回大会、2021年大会を第34回大会、2022年大会を第35回大会と銘打ってきた。
なので、第35回大会は2022年に自主開催した大会の名称なんだけど、今年の正式な本大会が第35回大会と銘打って開催されるので、ダブってしまうが、仕方ない。
〜 人気の大会 〜
練習もロクにできない発狂しそうなほど暑い四国の真夏に、マラソン大会に出たいって思う人がそんなにいるとは想像しにくいかもしれないが、実は汗見川マラソンの人気は高くて、申し込むのが大変だ。
(ピッグ)「定員が1000人と少ないってのも大きな理由ですけどね」
以前は、申し込み期間が過ぎてからでも、役場に電話してお願いしたら出場させてもらえていた。2007年に初参加した時や、その翌年の2008年に参加した時なんかは、ざっと見て300人くらいしか参加してなかったから、人が集まらなくて大会が消滅しないか心配していたくらいだ。
場所が四国の山の中で不便なうえ、いくら標高が高いと言っても、山の中の盆地なので真夏は発狂的に暑いし、コースが川沿いの道を延々と10kmも上り続ける厳しいコースだから、人気が無くて当たり前だったのだ。
それなのに、しばらく四国を離れていたあと、四国に戻ってきた2012年に久しぶりに出てみようと思ったら、申し込もうと思ったときには既に定員に達して受付終了になっていた。
申し込もうとした時期が遅かったのは確かだが、それでも定員オーバーだなんて、かつての汗見川マラソンを知っている者なら、信じられない現象だ。しばらく四国から離れていた間に、人気レースになっていたのだ。
近年の異常なマラソンブームの中、真夏の四国のレースとして唯一の貴重なレースになったため、人気が沸騰したのだろう。
種目も、10kmコースのほか、ハーフマラソンの部が出来たので、超マイナーな山奥の草レースが、メジャーな大会になってしまったのだ。
(ピッグ)「定員僅か1000人なんだからメジャーってのは言いすぎですけどね」
こんなに人気沸騰しているのだから、今どき定員1000人だなんて少な過ぎるような気がするが、狭い山道のコースを考えると1000人程度が限界のようにも思える。
こじんまりした和気藹々とした大会の雰囲気も好ましいので、エントリーしにくくなったとは言え、定員は増やさないほうが良いのかもしれない。
こんなに人気が出てきた汗見川マラソンなんだけど、うちのメンバーは動きが悪かった。
あれほど私が毎年、口を酸っぱくしてエントリーを促していると言うのに、多くのメンバーがエントリーに失敗していた。
メンバーの動きが悪いのは、このレースの坂と暑さに腰が引けてしまい、イマイチやる気が出ないからだ。
確かに「一体どうして、こななクソ暑い時期にマラソン大会が存在するんだろう?」という単純で素朴な疑問はある。
もう35回にもなる歴史ある大会なので、もしかしたら第1回大会が開催された36年前は、7月下旬といえども、四国山地の真ん中の山間部は涼しかったのかもしれない。夏の真っ盛りだけど高地なので気温も下界に比べたら低めだろう、って事で始まったのではないだろうか。
しかし、こなな山の中でも高温化は確実に進んでいて、2007年に初参加した時は、この世のものとは思えないようなあり得ない暑さだった。
「四国山地の真ん中の高原で、こんなに暑いんだったら、下界は地獄のような暑さだろうなあ」なんて思っていたら、なんと、その日は、汗見川マラソンが開催された高知県本山町が全国で一番暑かったという、トンでもない状況だった。
昔は涼しかったのだろうけど、少なくとも今は、山の中だからと言って涼しさを期待してはいけない事だけは確かだ。
それでも、最近はようやくみんな心を入れ替えて参加するようになってきた。
今年の参加者は私、支部長、ピッグ、D木谷さん、のらちゃん、加藤選手、O野選手だ。
もちろん、みんなハーフマラソンの部だ。
(加藤)「いえいえ、私は10kmの部ですよ」
(支部長)「え?こっそり自分だけ楽ちんするんかいな?」
(加藤)「去年も同じ事を言われましたね」
以前、10kmの部しかなかった頃の10kmコースは、延々と上り坂を10km上り続ける厳しい片道コースだった。スタート地点とゴール地点が異なっていたのだ。今のハーフマラソンのコースは、それと同じコースを、さらに500m上って、10.5km地点で折り返して帰ってくるコースだ。
ところが、ハーフマラソンの部ができてからの10kmコースは、昔のような片道コースじゃなくて、5km上って5km下ってくるコースになった。ハーフマラソンができてからはゴール地点がスタート地点と同じになったため、10kmコースも5km走ったら戻ってくるのだ。
なので、10kmコースはかつてのようなひたすら10km登り続ける過酷なコースではなくなった。
しかも、ハーフマラソンのコースは、前半はずっと上りっぱなしとは言え、そのうちの前半の5km地点までは大した傾斜ではない。緩やかに上っているだけだ。5km地点から折り返し点までがきつい上り坂となる。
なので、5km地点で折り返してくる10kmコースは、前半は上り坂だと言っても、たいした傾斜ではない。
つまり、10kmコースはハーフマラソンに比べて距離が短いだけでなく、坂の傾斜も緩やかな楽勝コースなのだ。
(加藤)「支部長も2019年大会は10kmの部だったじゃないですか」
(支部長)「え!?そうやったかいな?」
2019年大会はコース変更でハーフマラソンの部も11kmしか走らなかった事もあり、支部長は混乱して忘れてしまっていたが、実は2019年は支部長は10kmの部に出ていた。
(支部長)「しもた!そうやったか。それなら今年も10kmの部にしたらよかった」
(幹事長)「去年も同じ事を言ってたよ」
〜 会場へ出発 〜
当日は、高知の山奥まで日帰りするので、当然ながら早めに出発しなければならない。
しかも、かつては10時スタートだったので、6時に出発したら楽勝だったんだけど、なぜかスタート時刻が少しずつ早まり、最近はスタート時刻が8時40分になってしまった。
大会案内を見ると「安全対策のためスタート時間を早めています」なんて書いてるので、暑くなる前に終わらそうと言う魂胆なんだろう。
実は2016年の大会では、衝撃的なアンケートが手渡された。
「このマラソン大会は夏の真っ盛りに開催してきたけど、近年、地球温暖化のせいで非常に暑くなっており、事故の危険性も出てきてるので、開催時期の変更を検討しています。どう思いますか?」
なんていうトンでもない内容だったのだ。
もちろん我々は、
「何を言うてるんや!他のマラソン大会が開催しないような、このクソ暑い時季に開催するからこそ存在価値があるんやないか。開催時期を変えるんやったら参加せんぞ!」
と怒りの声をぶつけた。
おそらく、大半の参加者は同じような意見だったと思う。こんなマイナーな大会が人気を集めているのは、他にマラソン大会が皆無の酷暑の時期に開催されるからだ。
そういう参加者の圧倒的多数の声を聞いて、開催時期の変更を断念した事務局が、仕方なくスタート時間を早めたって事だろう。
だが、しかし、スタート時刻を8時40分にしたところで、暑さが劇的に緩和される訳ではない。
ハーフマラソンの制限時間は3時間だから、最終ゴールは11時40分だ。12時近い訳だから、どうあがいても、もう完全に炎天下だ。
(支部長)「いやいや、スタート時点で既に炎天下やで」
(幹事長)「おっしゃる通り!」
スタート時刻が早くなったせいで、遠方から繰り出す我々は大変だ。
便利の良い町中で開催されるマラソン大会ならイザ知らず、ただでさえ不便な山奥で開催されるから、従来のスタート時間でも早起きしなければならなかったのに、さらに1時間も早起きしなければならないなんて、もう大変だ。
今年もピッグ様が車を出してくれる事になり、D木谷さん、支部長、加藤選手、O野選手を順番に拾ったあと、我が家には5時前に迎えに来てもらい、その後、のらちゃんをピックアップし、6時前に高速道路に乗った。
早朝のため道路は空いていて、高速道路も順調に進んだ。
スタート時刻を考えると、そろそろ車の中で朝食を食べなければならない。
私の場合、朝食を食べてしばらくするとトイレで大が出るようになるので、できれば朝早く起きて、早目に食べて出発する前にトイレを済ませるのが理想だ。マラソン大会の会場のトイレは、どこも激混みになるからだ。
しかし、老化の進行によって早起きが苦痛でなくなったとは言え、5時に家を出るとなると、4時には食べないといけなくなる。さすがにそこまで早い時間に朝食を食べると調子が狂いそうなので、家では食べず車に乗ってから食べる事にした。
もちろん、朝食はおにぎりだ。
以前はレース中にお腹を壊すことが多かったので、用心して朝食と一緒に下痢止めの薬も飲んでいたが、2015年の徳島マラソンから朝食を菓子パンからおにぎりに変えてからは改善された。
パンに含まれるフルクタンという糖類は消化に悪く、下痢になりやすいが、お米に含まれている糖類は消化が良いので、おにぎりを食べ始めてからは下痢する頻度はかなり低くなった。
なーんて、すっかり油断してたら、なんと2020年の高知龍馬マラソンで5年ぶりにレース中にお腹を壊して20分もトイレに籠ってしまった。
その後も2022年の神戸マラソンや2023年の那覇マラソンや今年の富士五湖ウルトラマラソンでもお腹を壊し、トイレに籠ってしまった。
いずれの場合も、朝食の量は控えめだったし、パンも避けていた。それなのにお腹を壊した。
(のら)「フルマラソンが良くないみたいだね」
かつて菓子パンを食べていた頃は、ハーフマラソンでもよくお腹を壊していたが、最近お腹を壊したのは、どれもフルマラソン以上の長い距離のレースだ。
(支部長)「長い距離を走ってると胃腸が弱るからな」
老化の進展により、年々ますます胃腸が弱くなっているのだろう。
少なくともご飯路線が悪い訳ではないだろうが、レース前に食べすぎるのは禁物だ。
高速道路を降りる直前の立川パーキングエリアでトイレに行った。トイレで大をした方が良いタイミングだが、出そうになかったので諦めて小だけ済ませた。
普段はほとんど客がいないパーキングエリアなのに、早朝からレースに参加するランナー達で大賑わいだった。
(のら)「見て見て、あの女性、すごい足してるよ!」
見ると、足の筋肉がムキムキになった女性ランナーがいた。もの凄く力強そうだ。
やはり汗見川マラソンなんかに出るランナーは強者ばっかりだ。
〜 炎天下の予感 〜
去年は、年初から私が出たマラソン大会はことごとく良い天気に恵まれていた。間違いなく私の人徳のおかげだった。
ところが今年は、打って変わって年初から満濃公園リレーマラソンと言い丸亀マラソンと言い坂出天狗マラソンと言い善通寺五岳山空海トレイルと言い、晴天とはほど遠い天気が続いてきた。
いずれも雨の直後とか雨の直前と言った具合で、かろうじて雨の直撃は避けられてきたが、気持の良い快晴の下でのマラソン大会とはならなかった。
それに続く琵琶湖マラソンは時折雪が降る極寒のレースとなったし、四万十川桜マラソンはモロに大雨に直撃された。さらに北山林道駆け足大会もモロに大雨に直撃された。
(幹事長)「わしの人徳が通用しなくなったのかなあ」
(支部長)「あんたの人徳が悪いからやがな」
しかしながら、汗見川マラソンは久しぶりに晴天の天気予報となった。そして、朝、空を見上げると、天気予報通り晴天だ。
(幹事長)「ようやくわしの人徳が復活したぞ」
(支部長)「今の時季は雨の方が良いんやってば!」
普通の季節なら、マラソン大会の天気は晴天が好ましいのが当たり前だ。誰だって雨の中は走りたくない。できれば晴れ上がった空のもと走りたい。
しかし、厳しい日射しが照りつける酷暑の時期のマラソン大会では、晴れるより雨の方が望ましい。
しかも、このレースは、前半は延々と坂を登る厳しいコースなので、できれば雨が降ってくれる方が望ましい。
だが、しかし、今日も強烈な暑さになりそうだ。
地球温暖化が着実に進行するなか、毎年、猛暑が厳しくなっているが、今年は特に暑さがすさまじく、7月に入ってから連日36〜7度を越えるような猛暑日が続いている。
(のら)「それって、去年も同じ事を言ってたよ」
(幹事長)「去年はせいぜい35度くらいやったぞ」
昔は35度を超えたりしたら、全国ニュースになって大騒ぎになったが、今年は全国津々浦々連日35度を超えているので、何の話題にもならない。40度近くになったら、ようやくニュースになるご時世だ。
以前は雨中のレースを嫌がっていたのらちゃんですら、今は雨を待ち望んでいる。
だがしかし、今日も一日中酷暑が続くっていう天気予報だ。予想最高気温は、なんと38度だ。
汗見川マラソンでは、10kmの部しかなかった2007年、2008年や、ハーフマラソンができた2015年、2016年は炎天下で地獄の暑さに苦しんだが、2013年はスタート直前に土砂降りの雨が降ったため、一気に気温が下がり、なかなか快調に走れた。
快調に走れたと言っても、なんとか2時間を切った程度なので、普通のハーフマラソンの基準からすれば惨敗なんだけど、坂の厳しいレースなので、2時間を切れれば万々歳だ。
ただし、日本一雨が少ない香川県地方では、梅雨どきであっても大した雨は降らないが、日本一雨が多い高知県では極端な豪雨が降る。
2018年は3週間前に降った豪雨により土砂崩れの危険個所があるからと中止になったし、2019年は直前に降った豪雨により土砂崩れが発生してコースが変更となった。
高知では大雨になると土砂崩れが発生する可能性が高くなるのだ。
整理すると、過去、参加した年は、2007年、2008年、2015年、2016年、2023年が灼熱の炎天下で、2013年、2018年、2019年は直前に豪雨が降った。
豪雨のため2018年は中止になり、2019年はコース変更となったから、雨の恩恵にあずかれたのは2013年だけだ。
(幹事長)「炎天下か豪雨なんて、極端だよなあ」
(支部長)「豪雨でも良いから雨は降って欲しいぞ」
(ピッグ)「幹事長は炎天下のレースが好きなんですよね?」
(幹事長)「大雨も好きやけど、炎天下も大好きやね。ワイルドなのが良いねえ」
(ピッグ)「まともなレースだと勝ち目が無いから、サバイバルレースを狙ってますね」
とは言え、ここんとこ体調は良くない。数日前に北アルプスの超過激な登山に行ってたからだ。
今回行ったのは、日本の山の縦走路で最難関と言われている西穂高岳〜奥穂高岳の縦走路だ。
日本で最難関と言われてはいるものの、それほど大した事はないだろうと少し甘く見ていたが、これまで長らく登山してきた中で、ダントツで危険で怖い縦走路であり、精神的にも体力的にもすごく大変だった。
ちょっとでも足を踏み外したら谷底へ何百mも転落するようなギリギリの岩場の上り下りを延々と繰り返し、全身が筋肉痛になった。
さすがに少しは走っておかないと体が動かなくなると思い、帰ってきた直後のレース前々日に少し走ってみたが、1kmくらい走っただけで足が動かなくなってボーゼンとしてしまった。
これまでも登山直後にマラソン大会に出た事は何度もある。
去年3月も八ヶ岳に雪山登山した後、山から下りてきてそのまま夜通し車を運転し、家に戻ってきた翌日に徳島マラソンに出た。疲れと睡眠不足でフラフラのまま早起きして徳島まで行って走ったが、なんと9年ぶりに徳島マラソンの大会自己ベストを更新する事ができた。
なので、今回もその再現を狙いたいところだが、今回は完走すら危ぶまれる状況だ。
(のら)「3月の徳島マラソンと7月末の汗見川マラソンでは暑さが極端に違うからだよ」
(幹事長)「そうだよねえ」
〜 会場到着 〜
車はその後も順調に進み、大豊インターで高速道路を降り、予定通り大会会場のクライミングセンターには7時前に到着した。
車はすぐ近くの早明浦ダム直下の広い河川敷駐車場に停める。この駐車場が一杯になると、遠く離れた第二駐車場に停めてバスで移動することになるので、それは避けたいから早めに来たのだ。
到着すると、まだまだ車は少なく、好きな所に停められる状況だ。去年も同じような時間に着いたが、既にかなり埋まっていて驚いた。今年は出足が悪いようだ。
車を停めたら、すぐ近くのクライミングセンターへ移動する。空には意外にたくさんの雲が流れている。
(支部長)「これくらい曇ってたら暑さもマシやな」
(ピッグ)「このまま曇ってくれたら良いですね」
(幹事長)「甘いっ!甘すぎるっ!高知の夏を舐めたらあかんぜよ!陽が昇ってきたら雲なんか蒸発して無くなり、間違いなく炎天下になるぞ!」
クライミングセンターに設けられた大会会場に到着したら、まずは受付だ。受付と言ってもゼッケンや計測チップは事前に送られてきているので、参加賞を受け取るくらいだ。
参加賞は今年もタオルだった。マラソン大会の参加賞はTシャツが一般的だが、マラソン大会のTシャツはタンスから溢れているのでタオルの方が大歓迎だ。ただし、汗見川マラソンのタオルはあんまり大きくないので、バスタオルとして使うには少し小さい。
この大会はクライミングセンターの周辺が待機場所になっている。クライミングセンターの前や裏のグランドの芝生の上に大きなテントが張られてブルーシートが敷かれており、他のマラソン大会ではあり得ないような快適な待機場所になっている。
去年は、クライミングセンターの裏にある芝生のグラウンドの大きなテントの中には、ブルーシートが敷かれているだけだったが、今年は以前のように、テーブルとイスが並べられていた。
大豊インターから会場に向かっている時におんちゃんから「場所取りしてるよ」と言うメールが入っていたので、探したら、良い所に場所を取っていてくれた。いつもいつもありがたい事です。
おんちゃんは高知県内のマラソン大会にはことごとく出ており、6月初めの北山林道駆け足大会でも会ったばかりだ。
(幹事長)「調子はどうですか?」
(おんちゃん)「風邪を引いたみたいで、喉がガラガラなんよ」
声がかすれて、話をするのも辛そうだ。でも、最近は驚愕するほど豊富な練習量をこなしているので、風邪くらいは平気だろう。
場所が落ち着いたら着替えしなければならない。
(支部長)「で、今日も着るもので悩むわけ?」
(幹事長)「夏場のレースは着るもので悩む余地は少ないな」
ウェアの選択は、どんな季節のマラソン大会であっても最も重大な問題だ。
さっきまで流れていた雲は予想通り完全に無くなり、天気予報どおりの快晴になったので、炎天下のレースになるのは間違いない。
こうなると裸で走りたいくらいだが、裸で走ったら日焼けでボロボロになるだろうから、上は今年のオリーブマラソンでも着た薄手の袖無しのシャツにした。
できれば、以前オリーブマラソンで着ていた秘密兵器のメッシュシャツを着たいところだが、古くなってボロボロになってきてるから、最近は温存している。
とは言え、この袖無しシャツも、秘密兵器のメッシュシャツほどではないが、背中側が少しメッシュになっているし、袖も無いから、普通のTシャツに比べるとかなり涼しい。
下は普段の練習でも履いているランニングパンツを履いた。
露出の多いウェアなので、日焼け防止のため日焼け止めクリームを塗りたくる。どんどん汗が噴き出てくるので、いくら塗っても流れ落ちていくが、それでも効果はある。
筋肉の疲労防止のために、寒い時期ならタイツを履くところだが、今の時期にタイツを履くと暑すぎるので、脹脛サポーターを履いた。
(幹事長)「ピッグは脹脛サポーターを履かないんかな?」
(ピッグ)「このレースでは、レース後に脱ぐ時に足が攣りますから」
(幹事長)「鋭い!」
確かに毎年、レース後にきつい脹脛サポーターを脱ごうとすると、足が攣りまくって大変になる。忘れてた。
他のメンバーは半袖Tシャツに短パンが多いが、のらちゃんとおんちゃんは薄い長袖シャツを着た上に半袖Tシャツを着て、下はタイツも履いている。
(幹事長)「それは暑いやろ?」
(おんちゃん)「いやいや、直射日光が照り付ける剥き出しより暑くないんよ」
加藤選手に至っては、タイツじゃなく長ズボンを履いている。見てるだけで暑い!
みんなは炎天下だから帽子も被っている。日射しを避けるためには帽子を被った方が良いとは思うんだけど、帽子を被っても、いつも途中で頭が蒸れて暑くなり、結局、脱いで手に持って走るようになる。
なので迷うところだが、さすがに今日の日差しと暑さは尋常じゃないので、とりあえず帽子を被る事にした。
サングラスは汗を拭く時に邪魔になるからどうしようか迷ったが、日差しの強さが尋常じゃないので、かけていく事にした。
サングラスをかけると眩しさが大いに軽減され、目がとっても楽だ。また、歳とってくると紫外線による目への悪影響が強まって白内障の危険性が出てくるので、サングラスはかけた方が良い。
準備が終われば使用前の写真撮影だ。
スタート前に気合を入れる参加メンバー
(左から支部長、加藤選手、のらちゃん、O野選手、おんちゃん、ピッグ、D木谷さん、幹事長)
会場では開会式をやっていたので、そのスキにトイレの様子を窺うと、列が短かったので、並んで大を済ませる事ができた。これで一安心だ。
開会式が終わると、トイレの列は一気に長くなっていた。
スタート時刻が近づいてきたので、最後の水分を補給して、そろそろとスタート地点に移動する。
〜 スタート前 〜
コースはとてもシンプルで分かりやすい。
スタート地点は会場のクライミングセンターの前だ。そこをスタートして、すぐ県道264号線を北に入っていく。
その後は吉野川の支流である汗見川に沿って川の東岸の県道264号線を延々と北上し、5.5km走ったところにある1つ目の橋を渡って川の西岸に渡り、9.5km走ったところにある2つ目の橋を渡って再び東岸に渡る。
そして、10.5km上った冬の瀬というところで折り返して帰ってくる。
前半の10.5kmはひたすらずっと上り坂、後半は全て下り坂の往復21kmだ。
ただ、汗見川は急流という訳でもないし、川に沿った坂はそんなに激しいアップダウンではない。北山林道駆け足大会は、絶壁のような急坂をよじ登り、よじ降りてくるという過酷なコースだが、それに比べたら大した勾配ではない。
特に、前半はずうっと上り坂とは言え、そのうちの前半の前半である5.5km地点までは大した傾斜ではない。緩やかに上っているだけだ。5.5km地点から折り返し点までがきつい上り坂となっている。
折り返してからは、後半の前半はきつい傾斜の下り坂なので、調子に乗って飛ばして下ってこられるが、後半の後半は緩やかに下っているだけだから、体感的にはほとんどフラットで、かなりきつい区間だ。
(支部長)「いや、あそこはむしろ上っているように感じるぞ」
確かに、微かには下っているはずなんだけど、走っているとフラットどころか、逆に上り坂に感じられる。
なお、加藤選手が出る10kmの部は、1つ目の橋の手前にある5km地点で折り返して帰ってくる。
(支部長)「私も5km地点で折り返して帰ってこようかなあ」
(幹事長)「え?今年も?」
支部長は去年から足の調子が悪くて、レースに出ても途中リタイアが多い。
去年の汗見川マラソンも、ハーフマラソンに出場しておきながら、途中で勝手に10kmの部に切り替えて、5km地点で折り返して帰ってきた。
(支部長)「今年はちょっとマシやから、折り返して先頭で帰ってきたメンバーとすれ違ったら、その時点で一緒に折り返して帰ってくるよ」
(幹事長)「私でない事だけは確かやな。たぶんD木谷さんかな?」
スタートする前に本日の目標を立てなければならない。
もちろん、どんな時でも、どんなレースでも、常に大会自己ベストを狙うのが良い子のランナーとしてあるべき姿だ。
マラソンはコースや季節によってタイムが大きく変わってくるため、違うレースのタイムを比較するのは不適当なので、どんなレースに出ても、とりあえず大会自己ベストを狙うのが良い子の正しい道だ。
なので、目安はあくまでも過去のタイムだ。
この大会は、トンでもなく暑い時季の山岳マラソンなので2時間を切るのは不可能だろうと思っていたけど、2013年にはスタート直前にスコールが降り、高気温が少し和らいだおかげで、2時間を切ることができた。
これがこの大会の唯一まともなタイムなので、目標はその時のタイムになる。
汗見川マラソンとしてはまともなタイムではあるが、なんとか2時間を切った程度なので、他のマラソン大会のタイムに比べたら惨敗レベルのタイムだ。なので、ハードルは高くないように思える。
だが、しかし、今日のような炎天下のレースになれば、このコースで2時間を切るのが限りなく不可能なのは認識している。
なので、せめて大会自己ワーストの更新は避けたい。
汗見川マラソンの大会自己ワースト記録は去年の2時間4分だ。これをオーバーしなければ良しとしよう。
とは言え、ただでさえ登山で疲れてまともに走れそうにないうえに、この凄まじい炎天下だ。そもそも完走すら不安な状態だ。
なので、なんとか最後まで歩かずに戻ってこられれば良しとしたいくらいだ。
(のら)「どんどん目標が下がっているよ」
(幹事長)「無理して頑張ったら体に悪そうやろ?」
レース本番になると興奮状態になって前半に飛ばしたりする事が多いが、決して前半に飛ばしてはならない。
そんな事をしたら絶対に後半に力尽きるだろう。終盤に足が動かなくなるのは目に見えている。
どうせ良いタイムは望めない状態なんだから、気楽に走っていこう。
(のら)「飛ばしたくても絶対に飛ばせないよ」
(幹事長)「そやな」
去年の目標は歩かずに完走する事だった。その結果が大会自己ワーストの2時間4分だった。
今年も同じように歩かずに完走する事を目指しつつ、去年の大会自己ワーストを更新しないようにしよう。
〜 スタート 〜
スタート10分前頃になり、集合のアナウンスもあったが、まだスタート地点には並べない。周辺で待機するだけだ。
スタート地点の道路は交通規制がかかっておらず、どんどん車が通っているからだ。地域住民のために、スタート直前にならないと通行止めにできないのだ。
スタート3分くらい前になってようやく通行止めになり、ランナーが並び始める。シューズにタイム計測チップは付けているが、これはゴール時に計測するだけで、タイムはネットタイムではなく、グロスタイムしか計ってくれない。なので、前方からスタートしなければタイムはロスする。
とは言っても、ハーフマラソンの参加者は811人なので、後ろの方に並んだとしても、それほどタイムロスは無い。てことで、特に焦ることもなく、集団の中程に並んだ。
天気は相変わらずの快晴で気温は高く、汗はタラタラ、日焼け止めクリームもタラタラだ。
しばらくするとカウントダウンが始まり、いよいよスタートとなった。
取りあえずは何も考えずに自然体で走る。
このマラソン大会は猛暑の坂道をひたすら登る過酷なレースなので、ペース配分を考えて無理せずにゆっくりと走り出すランナーが多いと思われがちだが、実際は逆だ。
こんな過酷なレースに出場する選手はレベルが高くて、最近のメジャーなマラソン大会に大挙して出てくるような初心者はあまりいないから、スタートの合図と共に、みんなすごい勢いで一斉に駆け出す。
ペース配分を考えていないのではなく、ペース配分を考えても私のレベルからすれば速すぎるのだ。なので、最初から混雑は無く、順調に走り出せるから良いと言えば良いけど、周囲がみんな早くて、それにつられてオーバーペースになる危険性がある。
このレースは、前半は、汗見川という早明浦ダムの直後で吉野川に合流する小さな支流に沿った道を延々と上るから、基本的にひたすらずっと上り坂で、逆に折り返してくる後半は下り坂だ。
ただ、汗見川は急流という訳でもないし、川に沿った坂はそれほど激しいアップダウンではない。6月の北山林道駆け足大会は、絶壁のような急坂をよじ登り、よじ降りてくるという過酷なコースだったが、それに比べたら大した勾配ではない。
特に、前半はずうっと上り坂ではあるが、前半の前半、すなわち最初の5kmくらいは大した上り坂ではない。
なので、例年なら、時々ちょっとした上りを感じるけど、体力がある序盤では、あんまり気にならない。
しかし、今日はあまりの暑さに最初から息が苦しくて、明らかにペースが遅い。ちょっと前を走っていたおんちゃんは、あっという間に姿が見えなくなってしまった。
最初の1km地点のタイムは5分半だった。やはりちょっと遅めの入りだ。
するとD木谷さんが後ろから追いついてきて、そのまま抜き去っていく。
D木谷さんは連日の飲み会のため、今日は体調不良との事なので、いつもみたいな勢いではないが、それでも着実に背中が遠ざかっていく。
しばらく走っていると、来るときに立川パーキングエリアで見かけた足の筋肉がムキムキの女性ランナーが追い抜いていったので、一緒に走っていたのらちゃんに声を掛ける。
(幹事長)「例の筋肉ムキムキの女性が走ってるよ。頑張って着いて行ってよ」
(のら)「今日は無理だよ」
私は最初からペースが遅いが、のらちゃんも今日は勢いがイマイチだ。
それでも、のらちゃんの背中が少しずつ前の方に離れていく。だが、その背中を追う気力すら沸かない。
まだ序盤なので、頑張って追いついていこうと思えばしばらくは一緒に行けそうだが、こんな所で頑張ってたら、後半にバテるのは目に見えている。
次の2km地点でのラップは、さらに一気に落ちて6分を大きくオーバーしてしまった。
この1kmは多少、上り坂があるため仕方ないかとも思ったが、次の1kmはフラットに近かったのに、3km地点でのラップも6分近かった。
まだ序盤なのに、まるでレース終盤のようなひどいペースだ。炎天下のレースは好きだったはずだが、ここまで暑いと足が動かなくなったようだ。
遅いのは暑さのせいだと思いたいが、それにしては私を追い抜いていくランナーが多い。逆に私が追い抜いていくランナーは皆無だ。やはり私だけが特別に遅いようだ。
コースは山の中の川沿いで、炎天下の日なたと木陰のところが半分づつくらいで繰り返される。炎天下のところは当然ながらアホみたいに暑いが、木陰のところはそれほど暑くない。
帽子を被っていると、やはり頭がモワっと暑くなるので、木陰の時には脱いで手に持つ。でも炎天下になると頭が焼けそうになるので、すぐにまた被る。
このレースは、マイナーな草レースではあるけれど、真夏のレースということで給水所は多い。片道に5箇所、往復で10箇所もある。
最初の給水所は1kmちょっと走ったら早くも出てくるし、次の給水所も3km地点より前にある。
いつもなら、まだまだそんなに喉が乾いてはいないので、序盤の給水所はパスするところだが、今日は炎天下のレースなので最初からこまめに水を補給する。
どの給水所にもスポーツドリンクだけでなく、冷たい水を含んだスポンジも用意されている。これで顔を拭くとリフレッシュする。大変ありがたい。
その後、だんだん坂の傾斜がきつくなってきたとは言え、4km地点のラップは再び6分を少しオーバーし、さらに次の5km地点のラップは6分を大きくオーバーしていた。
過去のレースでは、前半の前半である5km地点までは、遅い時でも1km6分をオーバーするなんて事は無かったから、今回は尋常ではない遅さだ。
10kmの部は5km地点まで走ったら折り返すのかと思ったら、さらに少しだけ進んだところに折り返し点の大きな赤い三角コーンがあった。
大会要項の種目の説明として10キロの部(10.3km)なんて書いてあったが、10kmの部と言いながら10kmより300m長いのだ。なんでそんな事になってるんだろう?
10kmの部の折り返し点を過ぎて少し行くと、橋があり、それを渡って川の西岸に移る。
ここまでの道もさほど広い道ではないが、橋を渡ると道は一層狭くなる。ここまではちらほら田んぼもある風景だったのが、山深くなってきて人家もほとんど無くなり、山の中を走っているような感じになる。
そして、だんだん坂が厳しくなっていく。全体的に傾斜がきつくなると言うより、所々に急な坂が出てくるようになる。パンフレットの地図では傾斜10%のところもある。
ただ、そういう急坂の区間はそんなに長くはなく、庵治マラソンの折り返し点にある巨大な坂とか、オリーブマラソンの最後の激坂のようなきつさはない。
て言うか、もっと厳しかったような気がするのに、意外にそれほどきつくはない。今日は最初からしんどくて、なんとか走るのがやっとという感じだったが、その割りには急坂になってもそれほときつくは感じない。
なーんて思いながら次の6km地点のラップを見ると、7分近くにまで落ちていて、さらに次の7km地点では遂に7分にまで落ちていた。
いくら坂が厳しい汗見川マラソンと言えども、過去のレースでは、1km6分半をオーバーするような事は皆無だ。
それなのに、こんなにペースダウンするなんて、距離表示がおかしいのではないかと思ったが、次の8km地点では7分半にまで落ちたし、その次の9km地点でも7分だったから、距離表示がおかしい訳ではなさそうだ。
坂が厳しくなっても「意外にそれほどきつくないなあ」なんて感じていたのは、単にペースが遅いからだった。どんなに厳しい坂でもゆっくり走ればそれほどきつくはない。当たり前すぎる事だ。
ただ、だからと言ってペースを上げようと言う気にはならない。ペースを上げるのがしんどいと言うより、こんな状態の日に、頑張ってペースを上げたりしたら、絶対に後半に潰れてしまうだろう。
多少頑張ってペースを上げても、終盤に一気に撃沈したらトータルでは惨憺たるタイムになってしまう。今はまだ力を温存しておくべきだ。
前半の後半は坂が厳しいとは言え、8km地点を過ぎると、もうそんなにすごい坂は現れないない。何度も走っているからコースは分かっている。ただし、だからと言ってペースが上がる訳ではない。
こんなに厳しいレースの割りには、歩いているランナーはほとんどいない。序盤から飛ばしすぎて早々に足が止まって歩いている、なんてランナーは、他のレースにはいっぱいいるけど、このレースでは、ほとんどいない。やはりレベルが高いレースだ。
相変わらず、いつまで経っても他のランナーが次々と抜いていく。みんなが揃ってペースアップするなんて事はあり得ないので、自分のペースが落ちてるのは確かだろう。
ハーフマラソンの部は女性の割合は2割程度だが、こんな過酷なレースに出ている選手は女子選手も手ごわい。いくらマラソンブームだと言っても、こんな過酷なレースに出ようとわざわざ山奥まで来る選手は、マニアックな強者揃いだ。
なので、女子選手にもどんどん追い抜かれていく。
すると、なんとここでピッグが後ろからやってきた。支部長以外のメンバーは全員、ずっと前を走っていると思っていたので、ちょっとビックリだ。
(幹事長)「あれえ?こんな所で、どうしたん?」
(ピッグ)「今日は前半で飛ばすと後半にバテるのが確実なので、抑えて走ってます」
どうやら私と同じで、前半は抑えて後半に備える作戦のようだ。
ピッグは2018年の脱藩マラソンのフルマラソンで、前半を徹底的に歩きまくり、折り返し点で私より数kmも遅れていたのに、終盤に足を攣って行き倒れていた私の横をすごいスピードで追い抜いていった鮮烈な記憶がある。
彼はこういう作戦が得意なのだ。
それでも私よりは少しだけペースが速くて、少しずつ背中が遠ざかっていった。
しばらく走ると2つ目の橋があり、それを渡って川の東岸に移る。
次の10km地点でのラップも7分を大きくオーバーしていた。それほど遅いっていう感覚は無いのに、過去のレースと比べて、平均して1km当たり1分くらい遅い。1km1分も遅いなんて、もう有り得ない遅さだ。
折り返し点が近づいてきたので、メンバーの顔を探したが、誰も見つからない。どうしたんだろう?みんなどこへ雲隠れしてしまったんだろう?
しばらく走って折り返し点が目前になった時に、ようやくピッグとすれ違ったが、結局、他のメンバーは分からなかった。
山深く入れば木陰が多くなり、厳しい日射しから逃れられる区間が多くなるが、風は無風に近く、空気は熱く息苦しい。
10km地点から500mほど行くと、折り返し点がある。冬の瀬だ。
折り返し点でのタイムは1時間10分をオーバーしていた。去年は折り返し点で1時間を少しだけオーバーしていて、後半を頑張れば2時間を切れるかも、って思って頑張ったが、結局駄目だった。
今年はそれより遥かに遅いから、大会自己ワーストは間違いない。それでも後半は下り坂なので、一気にペースを上げていきたい。
折り返し点で折り返して下りに入り、自分より遅いランナーとすれ違いながら、折り返す前にすれ違った私より速いランナーの数と比べてみたが、私より遅いランナーの方が圧倒的に少ない。つまり、今日は全体でもかなり後ろの方だ。
折り返してからの後半は、基本的に下り坂となる。上りできつかった所は、逆に速く走れる。当たり前だが、問題はそのペースだ。前半とは見違えるようなスピードで一気に飛ばしたい。
と思ってたんだけど、11km地点や12km地点で時計を見ると、ほとんどペースアップできてなかった。ガッカリと言うか、一体どうしたんだ?
その後、下り坂は傾斜が急になっていったため、次の13km地点ではそこそこペースアップできたが、調子が良い時は5分を切るようなペースで走れたのに、ここでも6分をオーバーしていた。
後半になると、給水所にはコップだけでなく、ボトルに入った水をくれるようになった。
天気は相変わらず晴天で、風も相変わらず全く吹かないから、強烈な暑さが続いているので、ボトルの水をもらい、頭から水を浴びた。
これがめちゃくちゃ気持ちいい。一気に頭が冷えてシャンとする。
シャンとしたつもりだったが、相変わらずペースは上がらず、14km地点や15km地点でも下り坂とは思えないようなスローペースだ。
そして、橋を渡って10kmの部の折り返し点を過ぎると、いよいよ後半の後半で、残りは5kmとなる。
ここからは下り坂なんだけど、体感としてはフラットだ。下り坂の恩恵は全く感じられない。て言うか、ときどき上り坂ではないかと思える区間もある。
全然、スピードが上がらない。せっかく前半を抑えて走ったのに、後半に全く生かされていない。
決して足が動かなくなるような気配は無く、そんなにペースダウンしているような感覚は無い。
いつもなら、体は平気なのに足が動かなくなってペースダウンするが、今日は足は大丈夫なんだけど体がしんどくてペースダウンしているのだろう。珍しいパターンだ。
給水所があるたびにボトルに入った水を貰って頭からかけ続ける。その時は気持ち良いが、長続きはせず、すぐに暑くなる。
残りが少なくなると、ペースはますます遅くなり、フルマラソンの終盤のようなペースにまで落ちてきた。
過去のレースと比べて、前半は1km当たり1分くらい遅いような感じだったが、終盤になると、1km当たり2分くらい遅くなった。
20km地点では、なんと遂に1km8分をオーバーしてしまった。まるで脱藩マラソンのフルマラソンのような感覚だ。
〜 ゴール 〜
最後のコーナーをクネクネ曲がって、ようやく会場のクライミングセンターに戻ってきた。
最後の最後で誰かに追い抜かれるのはみっともないので後ろを確認したが、誰もいなかったので最後まで頑張ることなく、ヘロヘロでゴールした。
ゴールゲートをくぐると、加藤選手がゴールの横でカメラを構えて写真を撮ってくれた。
(加藤)「姿が見えないから、もうてっきりゴールしてるのかと思いましたよ」
(幹事長)「大変、遅くなりました」
結局、タイムは汗見川マラソンの大会自己ワースト記録どころか、なんと過去29年間で86回出場したハーフマラソンの自己ワースト記録だった。それも、ダントツで遅いハーフマラソン自己ワースト記録だった。
かつての強烈登山レース塩江山岳マラソンや激坂が続く酸欠マラソンよりもダントツで遅かった。
さらに、何の緊張感も無くダラダラ走った自主開催大会を入れても、103回走ったハーフマラソンの自己ワースト記録だった。それも、ダントツで遅いハーフマラソン自己ワースト記録だった。
原因は、登山などで溜まりに溜まっている疲労、練習不足、極端な暑さ、忍び寄る老化など色々と考えられるが、それにしても、汗見川マラソンでハーフマラソン自己ワースト記録が出るなんて思ってもみなかった。
(幹事長)「もうマラソンなんて止めようかなあ」
(のら)「今日はみんな遅かったんだよ」
のらちゃんだけでなくピッグもD木谷さんもO野選手も、みんな去年の私のタイムよりずっと悪かった。それまで大会自己ワースト記録だった去年の私のタイムより遅かったって事は、みんなもかなり遅かったという事だ。
ピッグは作戦通り、後半になると、もの凄いスピードでみんなを抜き去って行ったが、それでも2時間を切っていた去年のタイムと比べたら、かなり悪かった。
D木谷さんなんて1時間50分を切る好タイムだった去年に比べたら、私と同じくらい惨憺たる結果だったと言えよう。
唯一、おんちゃんだけは去年とほぼ同じ好タイムだった。風邪気味だったうえに、途中でトイレに駆け込んだと言うのに、凄いなあ。やはり豊富な練習量の賜物だろう。
ヘロヘロでゴールすると、既に支部長が涼しい顔をしてくつろいでいた。
(幹事長)「どうやったん?」
(支部長)「思いのほかいっぱい走らされたよ」
支部長は、折り返して先頭で帰ってきたメンバーとすれ違ったら、その時点で一緒に折り返して帰ってくるという方針でスタートした。
先頭で折り返してきたのは、予想通りD木谷さんで、もっと早々にすれ違う予定だったが、連日の飲み会で体調不良だったため、思いのほか遅くて、すれ違ったのは9km地点だったそうだ。
そこでD木谷さんと一緒に折り返してきたため、トータルで18kmも走ったんだそうだ。
(幹事長)「そこまで走ったんなら、折り返し点まで行って完走したら良かったのに」
(支部長)「あと3kmは走れなかったと思うよ」
D木谷さんと合流してからは、二人で歩いたり走ったりしながらダラダラを帰ってきたそうだ。
そしたらゴール直前でのらちゃんに追い抜かれたので、慌てて最後は必死で走り、3人揃ってもつれながらゴールしたんだそうだ。
(のら)「もうヘロヘロなんだけど、足は全然平気なんだよ」
そう言われると、自分もそうだ。あんなにヘロヘロになってトボトボと歩くようなスピードで走ったのに、足は意外に疲れていない。体が疲れすぎて超スローペースで走ったため、足はあんまり疲れていないのだ。
こんな事は珍しい。やはり敗因は暑さだったのか。
以前は、ゴールすると、まずはお楽しみの冷たいトマトを貰って食べた。大きなバケツに冷えたトマトがいっぱい浮かんでいて、好きなだけ取り放題だった。冷たいだけでなく、完熟で収穫した地元のトマトだから甘くて美味しかった。
ところが去年に続き、今年もトマトは無かった。トマトは不作なんだろうか。
次なるお楽しみのゆずジュースは今年もあったので、貰って飲む。カラカラに渇いた喉にゆずジュースがとても美味しい。
テントに戻り、弁当引換券で弁当を貰う。でも、食べるのは後回しだ。
去年に引き続き、今年もアイスキャンディー引換券がついていたのでしそアイスをもらった。トンでもなく暑いレースの後だからか、このしそアイスが本当に美味しい。
記録証は、以前はゴールするとその場でくれていたが、去年からネットで各自ダウンロードしてくれと言うことになった。できればちゃんとした紙の記録証をその場でもらいたいので、残念だ。
最近のマラソン大会は、ほとんどがこうなってしまった。違うのはオリーブマラソンくらいだ。
ま、しかし、少なくとも今回は、目も当てられない大惨敗なので、記録証は欲しくもない。
〜 川遊び 〜
一休みしたところで、いよいよ、このレースの一番の楽しみである冷たい汗見川での川遊びだ。
(のら)「ようやくお楽しみタイムだね」
(幹事長)「今日は暑いから、走っている時も川遊びの事ばかり考えて走ってたよ」
かつて上りの片道10kmコースしか無かった時も、ゴール後に山奥の川に飛び込んでいたが、往復のハーフマラソンになってからは、会場のすぐ近くで汗見川に飛び込むことができる。
このために、ちゃんとサンダルを履いてきている。
疲れた足を引きずって川に降りていくと、既に多くのランナーが川に入って気持ちよさそうに泳いだりしている。
サンダルを履いてランニングウェアのまま川にそうっと入っていく。一足先に支部長とD木谷さんが水の中に入り、いきなりバシャバシャ泳いでいる。
(D木谷)「気持良いですね!」
(幹事長)「ひえ〜〜!冷たい!」
いつも以上に川の水は冷たい。
(のら)「なんでこんなに冷たいんやろ?」
(幹事長)「気温がバカみたいに暑いから、冷たく感じるんかな」
膝から下を浸けてるだけでも足が痛くなる。それでも少しづつ体を入れていくと、なんとか腰まで入る事ができた。
さらにジワジワと水に入り、我慢して少しずつ身体を沈めていくと、最初は心臓が止まりそうになるが、いったん肩まで入ってしまえば、ずっと入っていられる。
支部長を見ると、なんとゴーグルや耳栓まで付けて、本格的に泳いでいる。マラソンは最初から途中リタイアするつもりだったくせに、レース後の川遊びは真剣そのものだ。
私も真似して泳ごうとしたら、足のあちこちが一気に攣ってしまい、溺れかけてしまった。
(D木谷)「川上り駅伝に備えて少し走ってみましょうか」
実は1週間後には、愛媛県鬼北町で川上り駅伝なんていう奇怪なイベントが開催され、我がペンギンズも初めて参加する。
でも、川の中を走った事が無いので、どれくらい大変なものなのか想像がつかないのだ。
(D木谷)「思った以上に走りにくいですね」
(幹事長)「疲れ切ってるから、試しに走る元気も湧きませんがな」
体も十分に冷え、落ち着いてきたので、会場に戻ると、ちょうどお楽しみ抽選会が始まるところだった。去年は抽選会は無かったが、今年からようやく復活したのだ。
北山林道駆け足大会ほど大量の賞品が出るものではなく、当たる確率はとても低いので、あんまり期待はしてないが、2015年大会で高級お米が当たったので、無視する訳にはいかない。
テントに戻って弁当を持ってきて、会場のクライミングセンターの屋根の下に座って弁当を食べながら抽選会を見つめる。
賞品は、今年もお米を始めとする地域の特産品で、全部で30人くらいが当たったが、我々は誰も当たらなかった。
続いて、来年の無料参加券が5人に当たった。この大会の参加料は7500円なので、毎年参加する我々にとっては、地域の特産品よりもはるかに価値がある商品だが、こちらも誰も当たらなかった。
最後に主催者から挨拶があり、「本日、マラソン大会が開催されているのは北海道と汗見川マラソンだけです」との事だった。
夏休み期間中の日曜日だと言うのに、北海道以外ではマラソン大会が開催されていないなんて、ちょっと驚きだ。
(支部長)「いやいや、こんなに暑いのに、汗見川ではマラソン大会が開催されている事が驚きだよ」
主催者は「北海道以外では日本中どこもマラソン大会が開催されていないような酷暑の季節なので、開催時期を考えたい」なんて事を言っていた。
上にも書いたように、2016年の大会では衝撃的なアンケートが手渡された。
「このマラソン大会は夏の真っ盛りに開催してきたけど、近年、地球温暖化のせいで非常に暑くなっており、事故の危険性も出てきてるので、開催時期の変更を検討しています。どう思いますか?」
なんていうトンでもない内容だった。
もちろん我々は、
「何を言うてるんや!他のマラソン大会が開催しないような、このクソ暑い時季に開催するからこそ存在価値があるんやないか。開催時期を変えるんやったら参加せんぞ!」
と怒りの声をぶつけた。
おそらく、大半の参加者は同じような意見だったと思うので、その後も開催時期は変わることなく7月末の開催が続いているが、主催者は諦めず、開催時期を変えたがっているのが見え見えだ。
でも、日本全国でマラソン大会が開催されていない酷暑の時期だからこそ、こんなマイナーな大会が人気を集めているのだから、今後も何があっても7月末の開催を続けてもらいたいぞ。
閉会式が終わり、お弁当を食べ終えたら、今年も近くのモンベルのアウトドアヴィレッジのお風呂に行く。まだ新しい施設なので、お風呂も気持ち良い。
お風呂から出て、涼しいところでのんびりアイスキャンディーを食べていると、幸せな気分になる。
さて次は、1週間後に愛媛県鬼北町で川上り駅伝なんていう奇怪なイベントが開催される。
去年、初めてその存在を知ったんだけど、駅伝チームは最低5人以上のメンバーが必要なのに、私とD木谷さんと加藤選手しか手を上げなかったので、出場を断念したものだ。
今年はなんとか5人の参加メンバーを確保できたので、ようやく参加できる事になった。
どんなレースなのか想像できないが、初物なので楽しみだ。
〜おしまい〜
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