第21回 四国のてっぺん酸欠マラソン大会(自主開催)

〜 子持権現山登山とセットの過酷なレース 〜



2021年9月上旬高知県伊野町において第21回四国のてっぺん酸欠マラソン大会が開催される予定だった。

このレースは、暑い暑い四国の真夏に開催される大変貴重なマラソン大会だ。
しかもコースは四国の道路としては最も標高が高い瓶ヶ森林道を走る。トヨタ自動車のテレビCMにも使われたりしている絶景コースだ。
こんな貴重で楽しい夏場の山岳レースには何があっても出たくなるが、2015年に初めてエントリーしてから5年連続でエントリーしてきたのに、その2015年を始めとして、なんと、そのうち3回も悪天候で中止になったという幻のマラソン大会なのだ。
特に2018年2019年は連続して悪天候で中止になったため、去年こそは久しぶりに走りたいと思ってウズウズしながら待ってたんだけど、それなのに、ああ、それなのに、なんと去年は新型コロナウイルス騒ぎのせいで大会が中止になってしまった

事の発端は去年3月1日の東京マラソンの一般ランナー参加中止だ。これに続き、3月8日の第9回名古屋ウィメンズマラソンも一般市民ランナーの参加が中止になった。
ただ、これらの大会は東京オリンピックのマラソン代表選考会を兼ねていたため、
エリートランナーの部は開催された
しかし、その後、状況はますます悪くなり、遂に去年3月22日の徳島マラソンは全面的に中止になってしまった。あまりの事に呆然とした。
そして、その後も、全国的にマラソン大会が次々と中止になっていった

これらのマラソン大会中止騒ぎってのは、どう考えても、あまりにも非科学的で情緒的でヒステリックな対応だ。

(ピッグ)「この説明、いつまで続くんですかね。もう一字一句同じ文章が続いてますが」
(幹事長)「今年いっぱいで終わる事を期待してるんだけどなあ」

今年、残されているレースは、
庵治マラソンタートルマラソンの2つだ。これらは既に中止または延期が決まっている。
しかし、来年2月の
丸亀マラソンは今のところ開催予定なので、うまくいけばマラソン大会の中止騒ぎは今年でおしまいになるかもしれない

ともかく、
素人が見たら、マラソン大会ではランナーが密集しているように見えるかもしれない。しかし、毎日乗っている満員電車に比べたら、はるかにスカスカだ。そうでないとぶつかって走れない。
しかも密室の満員電車に比べて、屋外のマラソン大会はウイルスが蔓延できる環境ではない。新型コロナウイルスは感染した人の咳やくしゃみの飛沫による飛沫感染でうつっていくが、飛沫感染は屋外で走っている時に感染なんかしない。
多くの国民が新型コロナウイルスを非常に恐ろしいもののように勘違いしているが、決して、エボラ出血熱のように極めて致死率の高いウイルスでもなければ、風疹のような感染力の強いウイルスでもない

多くの国民がヒステリックに踊らされているのは、視聴率さえ稼げればいい下品なマスコミがキチガイみたいに煽り立てるのと、新型コロナウイルスの新規患者数をゼロにしようなんていう狂信的な妄想に取り憑かれた医療関係者の独善のせいだ。
さらに、それに付け込んで何でもかんでも政府を批判する無能な民主党が調子に乗ってギャアギャア騒ぐからだ。
いい加減に、このようなヒステリックな対応は止めて欲しいのだが、新型コロナウイルスの蔓延よりも、このようなヒステリックな対応の蔓延の方が遙かに早い。

もちろん、大会主催者側は苦渋の決断というか、断腸の思いだろう。なぜなら、大会の成功を一番願っているのは大会主催者なんだから。だから、私も大会主催者を責める気は、さらさらない。
悪いのは、こういう状況に大会主催者を追い込んだ世間のプレッシャーというか、コロナ自警団に代表される、社会を覆い尽くすバカ騒ぎだ。

そして、恐れていた通り、その後も5月のオリーブマラソン、6月の北山林道駆け足大会、7月の汗見川マラソンと、続々とマラソン大会の中止が発表になり、このままではマラソン大会もサイクリングイベントも全滅になりそうな雲行きになってきた。もうお先真っ暗だ。


〜 マラソン大会を自主開催 〜


って嘆き悲しんでいた時、ピッグが突然ナイスなアイデアを提示した。

(ピッグ)「この話も、いつまで続くんですかね。もうウンザリですね」
(幹事長)「せやから今年いっぱいは我慢してねって言ってるだろが


去年5月のオリーブマラソン以来、自主開催してきたマラソン大会の記事にはしつこく書いてきたエピソードだが、これを外す訳にはいかないので、しつこくピッグに提案してもらう。

(幹事長)「お待たせしました!はい、どうぞ!」
(ピッグ)「中止になった大会を
ペンギンズで自主開催しましょうよ」
(幹事長)「え!?」


あまりのナイスなアイデアに一瞬、言葉が出なかったが、これは画期的なアイデアだ。そうなのだ、大会が中止になったのなら、
我々で独自に勝手に自主開催すればいいのだ。

(幹事長)「なんて素晴らしいアイデアだ!君がこんな素晴らしいアイデアを出したのは実に23年ぶりやぞ」
(ピッグ)「ハイハイ、分かりましたってば」


1997年に我々がペンギンズを立ち上げた時
クラブの名前を何にしようか相談したんだが、幹事長の私の意見を差し置いて、ピッグが「ペンギンズにしましょう」なんて言い出し、押し切られてしまったのだ。
しかし、よくよく考えてみれば、むやみにスピードを追求するのではなくマイペースでゆっくり走る我々のスタンスは、まさに「ペンギンズ」の名前がピッタリであり、
素晴らしいネーミングだったと思う。
ピッグがナイスなアイデアを出したのは、その時以来、実に23年ぶりのことだった。

と感心していたのだが、去年5月にオリーブマラソンを自主開催して走っていた時、同じように一人で走っている女子がいて、支部長が聞いたところ、彼女も自主開催していた事が分かった。
また去年7月に汗見川マラソンを自主開催して走っていた時も、同じように走っているカップルがいて、支部長が聞いたところ、彼らもやはり自主開催していた事が分かった。
さらに今年5月のオリーブマラソンに至っては、胸に大きく「勝手に小豆島オリーブマラソン」なんて書いたTシャツを着て自主開催しているグループがいた。
つまり、
マラソン大会の自主開催ってのは、誰でも思いつくような平凡なアイデアだったことが分かったので、ピッグに対する賞賛は雲散霧消した。

(ピッグ)「ハイハイ、分かりましたってば

てなわけで、その後は中止になったイベントは、できる限り自主開催することとなった
その第1弾が去年5月17日に開催した
サイクリングイベント第7回ツールド103であり、これが思いのほか楽しくて大成功だった。
続いてマラソン大会として5月のオリーブマラソン6月の北山林道駆け足大会7月の汗見川マラソン8月の酸欠マラソン9月の脱藩マラソン11月の庵治マラソン12月のタートルマラソンを自主開催してきた。

これらも例外なく、とても楽しくて大成功だったが、そうは言っても正式な大会ほどのやる気と達成感は得られないため、願わくは、コロナのバカ騒ぎは去年で収束して、今年はマラソン大会が復活して欲しかった。
ところが、
今年になってもコロナのバカ騒ぎが終わらず、マラソン大会の中止が続いているため、2月の丸亀マラソンを自主開催し、続いてトレラン大会である2月の善通寺五岳山空海トレイルも自主開催した。

この善通寺五岳山空海トレイルは、去年はギリギリでなんとか本大会が開催され、コロナのバカ騒ぎでマラソン大会が軒並み中止になる前の最後の大会だった。
それから
まる一年が経って一周したので、そろそろバカ騒ぎを止めてマラソン大会を再開して欲しかったところだが、去年、最初に中止になった徳島マラソンは、なんと2年連続で今年も中止になってしまった
コロナのバカ騒ぎによるマラソン大会中止が2年目に突入したのだ。そのため、徳島マラソンの代替大会として3月の香東川マラソンを自主開催した。
そして、その後も2年連続のマラソン大会中止が続いているため、5月の小豆島オリーブマラソン7月の北山林道駆け足大会7月の汗見川清流マラソンを2年連続で自主開催してきた。
さらに、マラソン大会や自転車イベントに続く
初めてのトライアスロン大会として9月のサンポート高松トライアスロンを自主開催し、それに続いて10月の龍馬脱藩マラソンを自主開始した。

そして、これらに続くマラソン大会として、今回の
四国のてっぺん酸欠マラソン大会2年連続自主開催となったわけだ。

酸欠マラソンの開催日は、2019年まで9月初旬だった。ところが、2020年は早々に中止になったのでよく分からないが、事務局の発表では「10月11日開催予定だった」としている。
これまでずっと9月初旬だったのに、なぜ10月になっているのかは分からない。9月は暑いので10月に変更しようとしていたのか、あるいはコロナ騒ぎがあったから、特別に遅らそうとしたのかは不明だ。
いずれにしても自主開催なので我々の都合で勝手に開催日は設定できるため、去年2020年は8月末に開催し、今年2021年は当初は10月17日の開催を予定していた。
ところが、天気予報が雨模様となったため、急遽、翌週に予定していた脱藩マラソンと開催日を入れ替え脱藩マラソンを10月17日に繰り上げ、この酸欠マラソンは10月24日(日)の開催とした。

普通のマラソン大会なら、多少雨が降っても平気で決行するが、酸欠マラソンが開催される瓶ヶ森林道は標高が高く、風を遮るものも無いため、天気が悪いとすぐ暴風雨になる
そのため、上にも書いたように、2015年から5年連続でエントリーしたにも関わらず、そのうち3回も悪天候で中止になった。なので、できるだけ天気の良い日に開催しないと危険になるのだ。
一方、脱藩マラソンが開催される梼原町も標高は高いが、そこまで悪天候にはならないので、日程を入れ替えたものだ。

(ピッグ)「そもそも去年は8月末に開催しましたよね。なんで2ヶ月も遅くなったんですか?」
(幹事長)「色々と事情があってなあ」


去年は8月末に私の手術という大イベントがあったため、その直前に開催したが、今年は私の登山遠征という小イベントがあったため、かなり延び延びになって10月下旬になったものだ。

(ピッグ)「今年の事情には納得できかねますね」


〜 7年間で5回も中止になった幻のマラソン大会 〜


本来なら9月初めに開催される酸欠マラソンは、7月末の汗見川マラソンと並ぶ四国の夏場の貴重なマラソン大会だ。
四国で夏場にマラソン大会が非常に少ないのは、あまりにも暑くて走るのが大変だからだ。なので、かつては、夏場にはマラソン大会にほとんど参加せず、5月のオリーブマラソンが終わった後は、秋までマラソン大会には出てなかった。
でも、真夏にレースに出ないと、夏の間、ランニングをサボってしまいがちになる。レースが無くても地道にトレーニングできる真面目な人ならいいんだけど、我々のように心が弱いと、レースが無いとどうしてもサボってしまう。

(ピッグ)「レースがあっても、暑いと練習はサボりがちになりますけどね」

レースが無いと完全に休養してしまう心が弱い我々としては、少しでもモチベーションを維持するため、暑い中でもレースに出たい訳だ。

酸欠マラソンと並ぶ貴重な真夏のレースである汗見川マラソンは7月末なので、天気が良いと間違いなく炎天下の灼熱地獄となる。おまけに天気が悪いと豪雨になり、土砂崩れが発生して、すぐ中止になる。つまり炎天下の灼熱地獄か土砂崩れによる中止かという極端な二者択一になる。
それに比べれば、酸欠マラソンは9月初旬だし、標高が非常に高いので、炎天下でも気温は少しマシだ。ただ、標高が高いため直射日光は強烈で、肌がじりじりと焦げていく。

でも、私は夏の猛暑の炎天下に走るのは嫌いじゃない。寒い中を走るよりは暑い中を走る方がよっぽど楽しい。なので、暑くても割りと平気だ。

(支部長)「タイムは悪いけどな」

もちろん炎天下のレースはタイムは悪くなる。タイムの事を言えば、やはり寒い冬場のレースの方が良いタイムが出る
厳冬期に開催される丸亀マラソンなんか、雪が降ることもあるが、風さえ無ければ寒ければ寒い方がタイムは良い。季節的には11月から3月くらいまでのマラソン大会が良いタイムを期待できる。
なので、「暑くても平気」ってのは「嫌いじゃない」という意味であって、タイムは寒ければ寒いほど良い。夏場なら雨が降って肌寒いくらいが良い。
でも、それじゃあ本当は楽しくない。夏場のマラソン大会なら、やはり猛暑の炎天下のレースが楽しい。タイムは悪くても楽しい。

(支部長)「タイムが悪くても言い訳できるしな」

夏場のマラソン大会なら、タイムが悪くても暑さのせいにできるのも嬉しい。もし、それほど悪くなければ、「こんなに暑いのに、よく頑張ったな」なんて自己満足に浸ることもできる。

てな訳で、個人的には夏場の暑いマラソンは大好きなんだけど、実はこの酸欠マラソンは暑さよりも、むしろ悪天候の方が強敵だ。

酸欠マラソンに我々が初めてエントリーしたのは6年前の2015年だ。初めての参加だったので、緊張しつつもワクワクしながら麓の西条から延々と瓶ヶ森林道を上って行った。
瓶ヶ森林道は気持ちの良い絶景コースだが、麓から上がっていくのが一苦労で、曲がりくねった狭い坂道を延々と1時間も上り続けてようやく瓶ヶ森駐車場に着くため、レース前からグッタリしてしまう。
瓶ヶ森林道は標高が高いので、天気が悪くなる事は覚悟はしていたが、上に着いたらやはりガスの中で、小雨もパラついていた。それでも大した雨ではないし、大した風でもない。ガスで景色は見えないし、風の中を走るのは辛いが、それでも我々は走る気まんまんだった。
ところが、スタートを待っていたら、なんと、突然、中止になってしまった。これには呆然とした。かつてマラソン大会は、どんなに暴風雨が荒れ狂っても、天気のせいで中止にはならなかった
2012年の徳島マラソンは台風顔負けの暴風雨の中でも決行された。あの時に比べたら、雨が降っていると言っても、大したことはないし、風も弱い。
そもそもマラソン関係者の間では、雨や風の影響で大会を中止にするなんて発想は皆無だったはずだ。 それが、いつから変わってしまったのだろうか。おそらくは、事故でも起きたらアホなマスコミや民主党が一斉に声高に非難するからだろう
参加しているランナー達は、天候の事は自己責任で出場しているのだから、天候のせいで事故が起きても文句言うような幼稚な人はいないはずだ。そもそも、夏場のマラソン大会なら、天気が良くて炎天下を汗だくになって走るより、むしろ雨の方が望ましいくらいだ

怒り狂いながら下山したが、どうしても参加したくて、翌年の2016年に再チャレンジしたら、打って変わって快晴となり、気持ち良く走ることができた
ただし、酸欠マラソンのコースは1400〜1700m前後で、四国の道路としては最も標高が高いから、快晴でも下界よりはだいぶ涼しいだろうと期待してたら、甘かった。
標高が100m違えば気温は0.6℃違うから、下界より10℃くらい低いはずだが、下界がめちゃ暑い日だったら、山の上もそこそこ暑い。
しかも、高原なので曇っていると夏でも肌寒いくらいで、空気も澄んで気持ち良いが、ひとたび太陽が顔を出すと空気の薄い高原のギラギラした直射日光が強烈に当たり、肌が焼けていくような灼熱地獄になるのだ。
おまけに強烈な激坂にぶちかまされて、ハーフマラソンとしては歴史的な敗北を喫するタイムとなった。

その翌年の2017年は、時々雲に陽が隠れる天気だったので、前年ほど暑くはなく、そのおかげで少しはタイムがマシだった。とは言っても、ほんの少しマシだった程度で、他の大会のタイムに比べたら歴史的敗北に変わりは無い。

てな訳で2年連続で順調に出場したのだが、2018年は再び雨で中止になってしまった
この年は酸欠マラソンだけでなく、マラソン大会の中止が相次いだ。まず最初は7月初旬の高松トライアスロンで、続いて7月末の汗見川マラソンも中止になり、そして最後に酸欠マラソンまでもが中止になったのだ
確かに天気予報は悪かったが、台風でも何でもない、ただの雨だ。2012年の徳島マラソンの時のような台風並みの暴風雨ではなくて、単なる雨だ本当に中止にする必要があったとは思えない

そして、2019年もまた中止になってしまった前々日に事務局から電話があり天気が悪そうなので中止になりました」と告げられた。確かに天気予報は雨だったが、大雨の予報ではなく降ったり止んだり程度の雨の予報だ。
しかも前々日だから、まだ本当に降るかどうかも分からないそんな曖昧な天気予報で中止決定するなんて、早まり過ぎだ
そして、結果論だが、当日はほとんど雨も降らず、風も弱かった。どう考えても開催できた天気だ

そして、去年2020年も3年連続で中止となり、さらに今年2021年も4年連続で中止となってしまったのだ。
去年と今年の中止の理由は、悪天候ではなくてコロナのバカ騒ぎだから別問題ではあるが、エントリーし始めてから7年間で5回目の中止だ。
開催されたのは7年間で僅か2回だ。
ここまで中止が続くと、まさに幻の大会であり、本当に存在するのかどうか誰にも分からなくなってしまうぞ。


〜 超厳しい山岳マラソン 〜


酸欠マラソンは夏場の貴重なマラソン大会というだけでなく、非常に厳しいコースも魅力だ。
四国の夏場のマラソン大会と言えば、標高の高い場所で開催される山岳マラソンばかりだ。
我々も、ここんとこ毎年、夏場は高知の山岳マラソン4連戦が恒例となっている。6月上旬の北山林道駆け足大会7月下旬の汗見川マラソン、9月上旬の酸欠マラソン、そして10月上旬の龍馬脱藩マラソンだ。

なぜ山岳マラソンが夏場に集中しているのかと言えば、夏は暑いから、少しでも気温の低い山岳地帯でマラソン大会を開催しようという発想からだ。特に四国の夏はアホみたいに暑く、平地でマラソン大会なんか開催したら死屍累々の大惨事になる。
そのため山岳地帯で開催するんだけど、じゃあ山の上なら涼しいのかと言えば、これはトンでもない勘違いで、四国では山の上でも暑いのは同じだ
暑いのに変わりがないうえに、山岳マラソンなのでコースは非常に厳しいから、暑さとコースの厳しさとダブルパンチで、トータルとすれば極めて過酷なマラソン大会となる。

酸欠マラソンは今年で21回目にもなるが、2014年までは参加したことはなかった。存在すら知らなかった。
存在を知ったのは2014年だ。その年は、汗見川マラソンの申込みに油断して失敗してしまい、その代わりになる夏場のマラソン大会を探していて、酸欠マラソンを見つけたのだ。ただその時は、酸欠マラソンも油断して申し込みし損ねたので、参加できなかった。
それを教訓に、最近は、新年早々、年間スケジュール表を作成して、常にそれを確認して申し込みを忘れないようにしており、そのおかげで2015年以降は汗見川マラソンも酸欠マラソンも龍馬脱藩マラソンもエントリーに成功している。

酸欠マラソンが開催されるのは高知県伊野町だが、伊野町と言っても、元々の伊野町のイメージではない。元々の伊野町は、高知市のすぐ西側にある和紙の産地で、山深い町ではない。
一方、酸欠マラソンが開催されるのは、合併で伊野町に吸収される前は本川村だったところだ。しかも本川村の中でも北の端で、私らのイメージでは高知県と言うより愛媛県だ。
なぜなら、コースは瓶ヶ森林道だからだ。瓶ヶ森林道は、ほぼ高知県と愛媛県の県境に沿って走る道で、正確に言えば大半は高知県側を走ってるんだけど、この道を通るのは石鎚山や瓶ヶ森などの石鎚山系の山々へ登山に行く時だから、イメージとしては愛媛県の道だ。
よく地図を見ると、そもそも石鎚山系の山々も県境にあり、愛媛県の山とも高知県の山とも言えるのだけど、愛媛県側から登るのが一般的なので、なんとなく愛媛県の山というイメージがある。高知県の人だって、石鎚山系が高知県の山と言う認識は乏しいんじゃないだろうか。
そのため瓶ヶ森林道も愛媛県のイメージなので、伊野町ってのは違和感があった。

瓶ヶ森林道はUFOラインとも呼ばれ、標高1300m〜1700mの尾根沿いを縫うように走るルートは、天空へと続く絶景のドライブコースとして人気があり、トヨタ自動車のテレビCMにも使われたりしている絶景コースだ。
尾根の上の道を走るから、天気が良いと見晴らしが良くて気持ち良い。少なくとも車で走ると、それほどアップダウンがあるような感じはなく、快適な尾根の道だ。
だが、しかし、それは車で走ってるから勘違いしているだけであり、自分の足で走ると、かなり強烈にアップダウンがある

酸欠マラソンのコースはスタート地点から最高地点までの高低差が285mだ。しかもスタート直後の序盤で、3kmちょっとの間に250mも登るから、勾配は8%以上となる。8%もの勾配を3kmも登るなんて、これは強烈以外の何物でもない。
最高地点はスタート地点から4kmほど走った瓶ヶ森登山口の少し先で、そこを超えると今度は下りが6km半続いて折り返し点に至る
折り返した後は、当たり前だが、6km半の坂を登り返し、最後に4kmの急坂を下ってゴールとなる。終盤の4kmが下りになるのは嬉しいような気がするが、レース終盤で足がヘタってきた頃の急な下り坂は決して楽なものではない
つまり、最初から最後まで厳しいコースだ。

他のマラソン大会と比較すると、ハーフマラソンでは、地獄の山岳マラソン大会だった塩江温泉アドベンチャーマラソンが最大標高差が約350mなのに対して酸欠マラソンは300m弱なので、少し低い。
しかし、累積の獲得標高で見ると、塩江温泉アドベンチャーマラソンが550mちょっとだったのに対して酸欠マラソンは560mちょっとなので、ほぼ同じだ。
また、上り坂の距離は少しだけ塩江温泉アドベンチャーマラソンの方が長かったので、上りの平均斜度は酸欠マラソンの方が少しだけきつい
また四国カルストマラソンや龍馬脱藩マラソンのハーフマラソンや汗見川マラソンと比べると、最大標高差、獲得標高、平均斜度のいずれをとっても酸欠マラソンの方が厳しい。
つまり、塩江温泉アドベンチャーマラソンが無くなった今となっては、酸欠マラソンは四国内の山岳マラソンのハーフマラソンで文句なしに一番厳しいコースと断言できる。

実は去年はコースが変更となった。会場の山荘しらさが工事中で使えなくなったため、会場が瓶ヶ森駐車場になったからだ。しかし、結局、去年は大会が中止になったため、コース変更は幻となった。
去年は自主開催だったから、あえて馴染みの無い新しいコースを試す必要はないので、従来のコースを走ったのだ

その後、山荘しらさの工事は終わり、今は通常営業を行っているので、もし今年、開催されていたら、コースは従来のコースに戻っていた可能性が高い。
いずれにしても、今年も自主開催なので、今回も従来のコースを走ることにした

参加するのはのほか、支部長、ピッグ、D木谷さん、のらちゃんの5人だ。
去年圧勝したT村選手は遠方に転勤になってしまったため今年は参加できず、代わりにスーパー女子部員のらちゃんが初参加する。


〜 会場へ出発 〜


今年は支部長様が車を出してくださり、D木谷さんをピックアップしたあと、私を迎えに来てくれ、その後、ピッグとのらちゃんをピックアップして6時半頃に出発した
例年の正式大会は、スタート時刻が10時で、受付は9時半までOKなんだけど、途中の新寒風山トンネル出口にある関所を通れるのは8時までなので、余裕をもって5時半には出発していた。
今年は自主開催のため関門が無いので、もっと遅くても大丈夫だが、実は今年はレース前子持権現山に登るという一大イベントを計画しているため、ちょっと早目に出発したのだ。

例年なら9月初めの開催なので、早朝でも生暖かいくらいだが、今年は既に10月下旬になっているから、早朝は肌寒い
去年は8月末に開催したから、かなり暑くなり、暑さに極端に弱い支部長に圧勝できたが、こんなに冷えてくると支部長に勝つのは至難の業となる。

天候は心配ない。天気予報では今日は快晴だ。瓶ヶ森林道は山の上なので天気は悪くなりがちだが、それでも雨の心配は無いだろう
夏場のマラソン大会なら、雨そのものは決して嫌いではない。
2010年の第33回小豆島オリーブマラソン大会で大雨の中を快走してからは、雨に対する抵抗感は払拭されたし、2013年の汗見川マラソンでも、直前に雨が降って気温が下がったため快走できたので、もう雨は恐れていない
ただし、今はもう10月下旬で、しかも瓶ヶ森林道は四国で最も標高が高い林道であり、風が北から南へ吹き抜ける稜線なので、天気が悪くなると暴風雨になり、寒くて走れなくなる恐れがある。

高速道路を走り、西条インターで高速道路を降りて国道11号線を西へ進む。
車の中で朝食を食べる。もちろん、朝食はおにぎりだ。以前はレース中にお腹を壊すことが多かったので、用心して朝食と一緒に下痢止めの薬も飲んでいたが、2015年の徳島マラソンから朝食を菓子パンからおにぎりに変えてみたらその後は一度もお腹を壊さなくなった
パンに含まれるフルクタンという糖類は消化に悪く、下痢になりやすいが、お米に含まれている糖類は消化が良いので、おにぎりを食べれば、もう下痢を心配する必要は無いのだ。
なーんて、すっかり油断してたら、なんと2020年2月の高知龍馬マラソンで5年ぶりにレース中にお腹を壊して20分もトイレにこもってしまった。原因は分からない。でも、少なくともおにぎり路線が悪い訳ではないだろう。
エネルギーをいっぱい摂取しようと思って、おにぎりの他に、バナナやゼリーも食べたりしていたが、それらを控えるべきかもしれない。あんまり無理してレース前に食べすぎるのは禁物だ。

国道11号線から国道194号線に入って南に進み、新寒風山トンネルを抜けたら山道に入り、クネクネした急勾配の道を上がっていく。
かなり標高が上がったところで旧寒風山トンネルの出口に着く。ここから瓶ヶ森林道が始まる。
国道194号線からの上り口が標高700mで、ここの標高は1100m程度だから、まだ400mしか上がってきていない。瓶ヶ森林道の最高点は1700m程度だから、まだまだ上がらなければならない。
正式な大会が開催される時は、ここから先は車は通行禁止になり、関所には番兵がいるが、今年は自主開催のためフリーパスだ。
ここには駐車場があるんだけど、紅葉シーズンの日曜日とあって、見たこともないような大勢の観光客が来ている。駐車場は既に満車で、狭い林道の路肩に駐車している車も多い。

傾斜は緩やかになったが、道幅の狭いクネクネの林道は延々と続く。
いくつかある小さなトンネルは完全に1車線分しかないから、すれ違うのは不可能だが、トンネル以外でも道は狭くて対向車とすれ違うのは難儀する
普段なら対向車は滅多にいないが、今日は車が多く、すれ違う時に脱輪でもしたら谷底まで転落しそうだ。
瓶ヶ森林道には寒風山、伊予富士、東黒森、瓶ヶ森などへの登山口が並び、あちこちに駐車場がある。
だが、どの駐車場も満車で、林道の路肩に駐車している車も多い。ただでさえ狭い道がますます狭くて通りにくくなっている。

しばらく進むと、東黒森山の近くに小さなトンネルが2つ並んでいる。このトンネルのすぐ東のカーブミラー折り返し点とする。スタート地点からここまで走ってきて折り返して帰って行くのだ。
狭いトンネルは暗いため、車が通ると危険だということで、去年はトンネルの手前(西側)を折り返し点としたが、それほど危険な感じもしなかったので、今年は正式レースに合わせてトンネルを抜けた東側を折り返し点とする。

つまり、ここからがマラソン大会のコースとなる。のらちゃんは初めての出場なので、コースを一生懸命チェックしている。
折り返し点からはずっと上り坂が続く

(のら)「結構きつそうなコースやねえ」
(幹事長)「いやいや、この辺りはフラットな方だよ」
(のら)「どう見ても結構きつそうだよ」
(幹事長)「でも序盤の4kmに比べたら傾斜は緩いんよね」
(ピッグ)「それは序盤の4kmに比べたらマシっていうだけで、やっぱり厳しいのは間違いないですよ」
(支部長)「しかも疲れた足にはきつく感じるんよね」
(のら)「思ってた以上に大変なコースやんか!」


このコースで最も坂が厳しい区間はスタートから4km地点辺りにある瓶ヶ森登山口までで、そこを過ぎた後は緩やかな下り坂が6km半ほどダラダラ続く
その後、折り返し点で折り返したら、その道を戻っていくので、今走っているのは折り返した後の緩い上り坂だ。
でも、緩い上り坂とは言え、それはスタート直後の激坂との比較であって、実際に走ってみると、結構、厳しい坂だ
ただ、走るのは厳しい上り坂ではあるが、見晴しの良い区間だ。
前方には自念子ノ頭と呼ばれる小さな山が見えてくる。この辺りが一番気持ちが良い区間だ。

自念子ノ頭が見える見晴しの良い区間


(幹事長)「良い景色やろ?車で走ってると気持ち良いよなあ」
(のら)「ほんと、すごい景色やね!」
(幹事長)「ただし、足で走ってる時は景色を楽しむ余裕は無いんよねえ」


自念子ノ頭の辺りは、ほぼフラットな感じになるが、そこを過ぎると再びトンネルがある。このトンネルを抜けると景色が一変する
前面に瓶ヶ森の山腹が現れ、それを横切る林道がはるか上に見えるのだ。あんな所まで上っていくのかと思うと気が遠くなる。

(ピッグ)「さっきの所がピークかと思いましたが、まだまだあんなに上っていくんですね」
(幹事長)「ここからの上りがきついんよね」


さらに遠方には、スタートとゴール地点である山荘しらさがだいぶ下の方に見える。つまり瓶ヶ森の登山口まで上った後は、一気に急勾配を下っていくのだ。

(のら)「めちゃめちゃ過激なコースやんか!」
(幹事長)「終盤が下りっていうのが救いやけどね」


かなりきつい上り坂を上り終えると、ややフラットに近くなり、吉野川源流の碑がある。
この辺りがピークのように見えるが、実はまだまだ上りが続く。

(D木谷)「あれえ?さっきの所がピークかと思いましたが、まだまだ上り坂が続くんですねえ」
(幹事長)「いつまで経ってもピークにならないんですよ」


ようやくピークになったかなと思ってカーブを曲がると、もっと高いピークが見えてくるっていう事が何度も繰り返される。かなり精神的に辛い区間だ。
それでもようやくピークに達し、そこからしばらく進むと瓶ヶ森登山口の駐車場だ。

瓶ヶ森の登山口を過ぎてしばらくすると、ようやく子持権現山が迫ってきた。迫力ある岩山だ。
子持権現山はの瓶ヶ森のすぐ南にある。標高は1677mもあるが、一般的な登山口は瓶ヶ森からの稜線に沿って走る瓶ヶ森林道にあるので、登山口から山頂までの標高差は100mにも満たない小さな山だ。
山と言うより、大きな岩の塊と言った方が相応しい。

この山の存在はだいぶ前から知ってて、「剱岳のカニのタテバイより怖い」と言った話を聞いていたので、とても興味があった。
でも、100mにも満たない山に登るのに、わざわざ遠路はるばる出かけていくのは面倒なので、延び延びになっていた。
どうせなら近くの瓶ヶ森とか石鎚山に行った際に、ついでに登ろうなんて思ってはいたが、なかなか都合がつかなかったのだ。

それが、なぜ今回、登るのかと言うと、酸欠マラソンのコース沿いにあるからだ。
酸欠マラソンは子持権現山の登山口がある瓶ヶ森林道で開催される。なので、これまでだって、マラソン大会のついでに登ろうと思えば登れたようにも思える。
だが、しかし、本番のレースの日は瓶ヶ森林道は全面的に車両通行止めになるので、レースの前後に登山口まで行くのは困難だ
て事で、これまでは酸欠マラソンの際に子持権現山に立ち寄る事はできなかった

ところが、去年はコロナウイルスのバカ騒ぎが勃発して大会が中止に追い込まれたため、我々で酸欠マラソンを自主開催したんだけど、そのとき、ふと子持権現山の話題が出た

(幹事長)「前々から登りたかったのよねえ。いつか一緒に登らない?」
(D木谷)「じゃあ、来年は酸欠マラソンとセットで子持権現山の登山をしましょうよ」
(幹事長)「お!それはええですねえ。是非やりましょう!」
(ピッグ)「そ、そ、そ、それって怖くないんですか?」
(支部長)「いや、絶対に怖いはずや!怖いんは絶対に嫌やで!」


て事で、満場一致で今年の酸欠マラソンの際に子持権現山の登山もやろうと言うことになった。自主開催なので何の制約も無いのだ。

(支部長)「いやだ!私は酸欠マラソンには参加するけど、そなな危険な岩登りには参加せんぞ!」
(幹事長)「ぜーんぜん大丈夫やってば」
(ピッグ)「だ、だ、だ、大丈夫ですかねえ?」
(支部長)「幹事長の言う事は信用できん!」


て事で、全会一致で酸欠マラソンに参加するメンバーは全員岩登りにも強制参加する事が民主的に決定した。
最初の計画では、あくまでもマラソンがメインなのでマラソンが終わってから岩登りをする事にしていたが、1週間前に自主開催した脱藩マラソンで、レース後に足が痙攣したり攣ったりしたので、そんな状態で超危険な岩登りをするのは無謀すぎると思い、マラソンの前に岩登りをすることにしたのだ。

子持権現山登山の記事は「登山部の活動」のコーナーに掲載している。
雨で濡れた岩がとても滑りやすくて、思いのほか登りにくかったにもかかわらず、誰も怪我なく無事に登山する事ができて、本当に良かった。

(幹事長)「まさか誰も滑落しないとは思ってなかったわい。奇跡やな」
(支部長)「部員をそんな危険な目に合わせないで!」


でも、とても面白くて楽しかった

(幹事長)「来年は酸欠マラソンのコースに組み込もうか」

どうせ、この側の林道を走るんだから、その途中で寄り道しようという素晴らしい提案だ。

(ピッグ)「来年は本大会が復活するんじゃないですか?」
(幹事長)「それじゃあ仕方ないからレース後に登るとするか」
(支部長)「嫌だ。もう二度と登りたくない!」


岩登りが終われば、メインイベントの酸欠マラソンの会場に急がねばならない。
瓶ヶ森登山口の駐車場から山荘しらさまでの4kmが最も傾斜が急な厳しい坂だ

(のら)「むちゃくちゃ急な坂やないの!前に転びそうやわ」
(幹事長)「登るのも下るのも過激すぎる坂やね」


坂のきつさは車で走ってると分かりにくいものだが、この坂は車に乗っていても明らかに厳しい坂だと分かる。クネクネの急坂だから支部長も慎重に運転しているが、それでも乗っていて怖いほどだ。

(ピッグ)「道路に数字が書いてありますねえ」
(支部長)「これって距離表示かもしれないな」
(D木谷)「去年、同じような会話をしたような気がしますね」


言われてみると、なんとなく思い出した。
以前は書かれてなかった数字で、何を表しているのかよく分からないが、もし1kmごとの距離表示を書いているのなら、大いに助かるぞ。

急こう配の下り坂をしばらく落ちていくと、ようやく山荘しらさに到着した。


〜 会場到着 〜


ここ何年か山荘しらさは工事中で使用禁止だったが、ようやく工事が終わり、新装開店したようだ。
外観はどう見ても古い建物を塗り直しただけのようだが、中は全く新しい建物に生まれ変わっていた
とてもきれいでお洒落な造りに改装されている。宿泊施設だけでなく、レストランも併設されている。

会場に着いたら、いよいよ着替えだ。ウェアの選択は、どんな季節のマラソン大会であっても最も重大な問題だ

(支部長)「今日はどういう悩み方をするつもり?」
(幹事長)「天気は良いけど気温が低いから半袖Tシャツは寒すぎるな」

子持権現山に登った時はよく晴れていて汗をかいたが、なんとなく薄曇りっぽくなってきた。元々気温が低い上に太陽が隠れると、ちょっと冷える
て事で、登山用の吸湿性と速乾性に優れた濡れてもベチョベチョしない長袖のインナーウェアを着た。

(支部長)「要するに、さっきの子持権現山登山の時のままやな」

下は練習の時にいつも履いている短パンを履いた。
また、筋肉の疲労防止のためにタイツを履いた。暑ければ脹脛サポーターにするところだが、今日は冷えそうなので防寒も兼ねてタイツにした。他のメンバーも全員タイツを履いている。
日差しが弱いから嫌いなランニングキャップは不要だし、サングラスや日焼け止めクリームも不要だろう。

自主開催なので給水所が無いため、水分の補給は自己責任で何とかしなければならない。

(幹事長)「今日は冷えそうだから飲料は要らないかなあ」
(支部長)「いくら冷えても汗はかくよ。水分を補給しないと脱水になるよ」


支部長はトレランリュックに飲料ボトルを入れて背負っているし、D木谷さんとのらちゃんは飲料ボトル用ホルダーを腰に巻いている。
私もリュックとホルダーは準備してきたが、悩んだ末、今日は飲料無しで身軽に走ることにした。

(幹事長)「そんなに暑くはなりそうにないから、なんとか我慢できるやろ」
(ピッグ)「私も持たないで走ります」


準備が終わって記念撮影しようとしたら、少し風が吹いてきた。風が吹くとかなり寒くなる。ここでこんなに寒くなるんなら、もっと上の方に出るとかなり寒くなるんじゃないかと不安になってきた。
それで慌ててウィンドブレーカーを着て走ることにした。

(支部長)「ウィンドブレーカー着てマラソン大会で走ってる人なんて見たことないよ」
(幹事長)「自主開催やから許して」
(ピッグ)「私も許して」


ピッグも私と同じような色のウィンドブレーカーを着込んだ。
手も寒そうなので、手袋を履いた。

準備が整ったところで、団旗を持って記念撮影だ。

登山の疲れを感じさせない参加メンバー
(左から支部長、ピッグ、のらちゃん、D木谷さん、幹事長)


準備が終わったところで、初参加者がいるのでコースを再確認する。コースは今、車で走ってきた一本道なので、とてもシンプルだ
スタート地点は会場の山荘しらさの前で、4km地点辺りにある瓶ヶ森登山口まで激坂が続き、そこから少し進んだ最高点からは緩やかな下り坂が6kmほどダラダラ続く
2つ並んだトンネルを抜けてすぐ折り返すと、帰りは逆に緩やかな上り坂を6kmほど走り、最後は激坂を4km転げ落ちるというコースだ。

(のら)「道に迷いそうな場所は無いよね?」
(幹事長)「子持権現山に寄り道したらいかんよ」
(D木谷)「余裕があったら吉野川の源流に寄り道してこようかな」


体力が有り余っているD木谷さんが余裕の発言をしていた。


〜 スタート前 〜


思いのほか子持権現山登山に時間を使ったため、時刻は11時半近くになってきた。慌ててスタート時間を11時半とした。
スタート前に本日の目標を立てなければならない。
もちろん、どんな時でも、どんなレースでも、常に大会自己ベストを狙うのが良い子のランナーとしてあるべき姿だ
マラソンはコースや季節によってタイムが大きく変わってくるため、違うレースのタイムを比較するのは不適当なので、どんなレースに出ても、とりあえず大会自己ベストを狙うのが良い子の正しい道だ。
特に、このレースは坂が厳しいから、他のレースとの比較は意味が無い。

なので、目安はあくまでも過去のタイムだ
この大会は、正式な大会には過去5回エントリーしたが、実際に開催されたのは2回だ。その2回ともがトンでもない大惨敗タイムで、2016年が2時間15分台で、2017年が2時間13分台だ。
去年の自主開催では、これより少しだけマシな2時間12分台が出たので、一応、この2時間12分を本日の目標とする

そもそも、去年5月のオリーブマラソンから始まった自主開催マラソン大会の結果を見ると、正式な大会でもないのに自己ベストを出すのは不可能に近い。
ゾウさんやのらちゃんら女子部員は精神力が強いから、練習の時でも本番同様のスピードで走ることができる。しかし私なんかは練習になると、どんなに気合を入れようとしてみても、本番のような気持ちの高まりを得る事はできないため、アドレナリンの分泌が皆無になる
みんなで走る自主開催マラソン大会は単独での練習よりは多少は気合が入るが、正式な本番とは比べ物にならないスローペースになるのが当たり前だ。
そんな中で大会自己ベストを出した去年の酸欠マラソンは自分でも上出来だったと思う。

(ピッグ)「単に、過去の本大会の記録が大惨敗だったというだけですよね」

今年は9月はまあまあ練習できたんだけど、10月に入って長期の登山遠征に行き、あんまり練習ができなかった。特に、長い距離は全然走れてなくて、21kmも走れるかどうか不安だった。
でも、1週間前の脱藩マラソンでは、終盤は練習不足のため足が動かなくなって急ブレーキがかかったものの、なんとか21kmは歩かずに完走できた。今日はその1週間後なので、先週よりはマシかなという期待がある。
ところが、簡単に登れると思ってた子持権現山登山が思いのほか大変で、かなり体力を使ってしまったので、まともに走れるかどうか大きな不安が出てきた。

(幹事長)「こんな状態で、まともに走れるんやろか?」
(支部長)「わしゃ、もうヘロヘロやで」


条件はみんな同じなので、ハンディは無いけど。
こんな状態では作戦もクソも無いので、今日は自然体で走っていくことにした。

(ピッグ)「最初から気合が入ってませんね」
(幹事長)「完走だけを目標にします!」

(支部長)「私は最初から歩きまくるよ」

支部長は言葉だけでなく、この大会では恥も外聞もなく最初からスキさえあれば歩きまくる

(支部長)「有言実行の男やからな」

自慢できる事ではないが、去年も最初からすぐ歩いていた。
でも、序盤はあまりにも激坂なので、走っても歩いてもスピードはさほど変わらないから、最初から歩いて力を温存するってのは悪い戦略ではない
支部長はどんなに歩いても、再び走り出した時にトップスピードで走り出すから、全く油断できないのだ。

主催者の幹事長からありがたいお言葉が発せられ、開会式が10秒ほどで終わり、事務局の幹事長から注意事項がアナウンスされた

(幹事長)「今日は車が非常に多いので、注意してください。無理して私を追い抜いたりしないように」
(のら)「無理せず追い抜くわ」


〜 スタート 〜


いよいよ11時半になり、支部長のカウントダウンにより一斉にスタートとなった。
タイムはもちろん自己計測だ。自主開催なので当たり前だ。

普通のマラソン大会なら、スタートの合図が響くと一斉にランナーが勢いよく駆け出すが、この大会は正式な大会の時でも、参加者はそれほど勢いよくは飛び出さない。スタートから4kmは超過激な激坂が続くので、ゆっくり走り始めるのだ。
しかも、今日は参加メンバー5人の自主開催だから、取りあえずは何も考えずに自然体で走る
大勢のランナーと競いながら真剣勝負する正式大会のような緊張感は無いが、それでも、みんなと走っているので、単独で練習している時に比べたら、だいぶ気合が入り、清々しい気分でしっかり走れている。競い合う感じが心地いい。

自主開催のマラソン大会ではいつもそうだが、取り合えず序盤は私が先頭を走り、他のメンバーは私の後ろをついてくる。そのまま一気に引き離せれば気持ち良いところなんだけど、みんなの足音はピタッと付いてくる。
もっとスピードを上げたいところだが、無理すると後半に自滅するので自重しなければならない。

しばらく走ると道路に「20」と大きく数字が書いてある。やっぱり距離表示なんだろうか。
次の数字が書いてあるところまでのタイムを計ってみよう。

だいぶ冷え込んできているので、暑い時よりはかなり走りやすい。もちろん、それは自分だけじゃなく、他のメンバーの足音も後ろからしっかり聞こえてくる。
注意しなければならないのは、もちろん永遠のライバルの支部長だ。
自主開催のマラソン大会では、2〜3km走ったところで支部長が私を追い抜き、その後はどんどん差を広げられる展開が多い。
しかし、上り坂に弱く下り坂に強い支部長に上り坂でリードを許したりしたら、もう逆転できるわけがない。なので、できれば前半の激坂のうちに支部長をリードしなければならない
去年はその作戦がうまくいき、なんとか最後まで逃げ切った。

道路に「19」と数字が書いてあるところでタイムを確認すると、やはり1kmごとの距離表示のようだ。
「20」と書いてあった地点から7分ほどかかってる。序盤なのに超スローペースだけど、この激坂ならそんなもんだろう。

坂の傾斜はさらにきつくなってきて、ペースはさらに落ち始める。それでも、まだ誰も私の前に出てこようとしない。
と思ってたら、遂にD木谷さんが私を追い抜いて前に出た。最近の自主開催マラソン大会では、D木谷さんが先頭に出る事が多い。今日も好調を維持しているようだ。
他のメンバーは、と言うと、誰かの足音がすぐ後ろに迫ってきた。一人なのか複数なのか分からないけど、私を追い抜こうとしているのは間違いない。
でも、なんとか頑張って走ると、追いついてはこなかった。

道路に「18」と数字が書いてある3km地点のラップを見ると7分20秒もかかっていた。それでも、後ろから迫ってくる足音は少し遠ざかった。みんなペースダウンしているようだ。
前を行くD木谷さんに離されまいと頑張るが、坂の傾斜がますますきつくなっているのか、それとも早くも疲れが出てきたのか、少しずつペースは落ちていく。

すると、後ろからの足音がまた大きくなってきた。今度は一人のようだ。誰だろうと思って振り返って見ると、のらちゃんだった。のらちゃんが相変わらず頑張って付いてくる
一方、支部長とピッグの姿は見えない。支部長は宣言通り、序盤は無理せず歩いて力を温存して後半に爆発させる作戦なのだろう。

ようやく坂の傾斜が緩やかになって瓶ヶ森登山口の駐車場の近くにある4km地点となった。
この1kmは7分50秒もかかっている。ここまでペースダウンすると愕然とするが、のらちゃん以外は追いかけてこない。一方、前を行くD木谷さんの後姿も見えない。
ここでこれまでの激坂は終わるが、まだしばらく緩い上り坂が続く。そしてスタート地点から4.5kmほど走ったところがピークとなり、ようやく下り坂になる
そこからは基本的に下りの区間が続くので、ちょっとホッとする。

折り返し点まで6kmほど下り坂が続くが、一様な傾斜ではなく、ここからしばらく傾斜のきつい下り坂となる
かつて高知のおんちゃんから「ここで調子に乗って勢いに任せてガンガン下ると足に負担がかかり、終盤で足が動かなくなるぜよ」という忠告は受けているが、ここまでの過激な上り坂から解放された嬉しさと、ここで貯金しようという気持を抑えられず、どうしてもガンガン駆け下りてしまう

少し進んだところに5km地点があり、この1km区間は上りと下りが半々だったから、まだまだ大して速くはないが、なんとか6分ちょっとのラップになった。
この辺りから稜線沿いの道になり、見晴らしが良く、ずっと向こうの遙かかなたまで道が見える。あんな遠くまで走るのかと思うと、かなり気が遠くなるが、基本的には下り坂なので、折返し点までは気持ち良く走れる。
見通しが良くなると、先行するD木谷さんの後姿が見えた。思ったほど離されてはいないから、頑張ったら追いつけるかもしれない。
一方、後ろからはのらちゃんがきっちりと付いてくる。例によって、時々、私を抜こうと迫ってくるが、私も頑張って踏ん張ると、追い抜くことができずに諦める。そういったジリジリするような並走が続く。

一生懸命に走り続けたら、6km地点でのラップは5分30秒ほど、7km地点でのラップは5分20秒ほどだった。
もっとスピードが出れば良いんだけど、これが限界だ。後ろから追ってくるのらちゃんも前には出てこないから、こんなものか。

7km地点を過ぎたら、まだ下ってはいるものの傾斜は緩やかになり、もうガンガン走れるような道ではなくなる。て言うか、なんとなく上り坂になっているような気もする。
これは微妙なところで、本当に上り坂になっているのか、それとも緩い緩い下り坂なのか分かりにくい。それまで急な下り坂をガンガン走ってきた反動で体感的には登っているような気がするが、よく分からない。
それでも、8km地点でのラップは5分30秒ほどだったから、そんなに落ちてはいない。

8km地点の手前には最初のトンネルがあり、それを抜けてしばらく進むと本当の上り坂になる。ちょうど自念子ノ頭の側を通っている辺りだ。
上り坂と言ったって、序盤のような激坂ではなく緩い坂なんだけど、既に疲れ始めた足には堪える。
そのため、9km地点でのラップは一気に6分半近くに落ちていた。

ここで後ろを振り返って見てビックリした。のらちゃんが少し間を開けて付いてきているのは分かっていたが、その少し後に、なんとピッグの姿が見えた。おまけに、その少し後ろには支部長の姿さえ見える
なんという事だ。のらちゃんは付いてきてるとしても、支部長とピッグは完全に振り切ったと思っていたのに、一気に挽回して迫ってきている
やばい。やば過ぎる。恐怖で心臓が止まりそうになるくらいビックリした。

これで一気に気合が入った。
9km地点を過ぎたら再び下り坂になる。結構、急な下り坂だ。ここを必死で力任せにガンガン駆け下りる。下り坂に強い支部長が後ろから迫ってきているとなると、恐怖で死に物狂いだ。
そのおかげで10km地点でのラップは再び5分台になった。

さらにしばらく必死で走り続けると小さなトンネルが見えてきた。このトンネルの次のトンネルを抜けた所で折り返すのだ。
ここで先行するD木谷さんが戻ってきた。折返し点まで150mほどだから、300mほどの差だ。まだ決して追いつけない距離ではない。
でも、今は先行するD木谷さんより後ろから迫ってくる支部長が怖い。

トンネルを2つ抜け、カーブミラーで折り返す折返し点でのタイムは1時間6分ほどだ。それが良いのか悪いのか分からなくなってきた。
過去の実績のタイムは2016年が2時間15分台、2017年が2時間13分台、2020年が2時間12分台だったから、中間地点で1時間6分なら2020年のタイムと似たようなレベルだ。
ところが、認知症がどんどん進んでいる今日この頃、記憶が曖昧になってしまい、過去のタイムを2時間5分台、2時間3分台、2時間2分台だったと勘違いしてしまった
それらに比べると、中間地点まで1時間6分てのは、かなり遅い。終盤の激坂下り区間で取り戻せるんだろうかと不安になった。

だが、それより切羽詰まっているのは支部長とピッグとの争いだ
折り返すと、すぐ後ろからのらちゃんが来た。それは分かっている。問題は支部長とピッグだ。
さきほどは、すぐ後ろに姿が見えたピッグだが、折り返して確認すると、私と2分くらいの差が付いていた。ちょっとだけホッとする。
さらに支部長には5分ほどの差を付けていた。かなりホッとする。
でも、決して油断はできない。こちらがペースダウンしたら、あっという間に追いつかれる程度の差だ。
しかも、支部長は見るからに元気そうで、全く弱った気配が無い。やはり前半で戦略的に歩いて力を温存しているのだろう。全く油断はできない。

折り返すといきなり急な上り坂となる。さっきは急な下り坂だったんだから当たり前だ。
後ろからピッグや支部長が迫ってきていると思うと焦ってくるが、かなり足に疲れが出てきているため、どうしてもスピードダウンしてしまう。
それでも、なんとか12km地点でのラップは6分を切ることはできた。

この辺りは、このコースの中でも最も景色が良い場所で、特徴的な形の自念子ノ頭がよく見える。気持ちの良い区間だ。

(幹事長)「きれいな景色やろ?」
(のら)「うん、すごいね」


のらちゃんはランニングはもちろん、車でも来たことが無いとの事で、この素晴らしい景色に感動している。

自念子ノ頭がよく見える景色が良い区間


(のら)「でも、これくらいの景色なら北アルプスとか行けば、いくらでもあるよね」
(幹事長)「いや、そうかも知れないけど、舗装道路では無いやろ」
(のら)「いやいや、あるんと違う?」
(幹事長)「ランニングできる所では無いやろ?」


などと不毛な議論をしてしまい、無駄なエネルギーを使ってしまった。
見通しが良いので、先行するD木谷さんの後ろ姿が見える。パッと見たところ、差は広がっていない。タイムにすれば2分程度の差だ。頑張れば追いつける可能性はまだ残っている。

12km地点を過ぎると、束の間の下り坂だ。自念子ノ頭の側を通る区間で、来るときは上り坂で一気に遅くなったが、帰りは下り坂なので、できるだけ大股で駆け下りる。
そのおかげで、13km地点でのラップも6分を切っている。
見通しが良い区間なので後ろを振り返って確認すると、支部長の姿は見えないが、ちょっと後ろにピッグの姿が見える。簡単には追いついてこられないだろうが、勝利が確定したとは言えない微妙な距離だ。決して油断してはいけない。

しばらく進むとトンネルがあり、このトンネルを抜けると残りのコースの全貌が見えるようになる。はるか遠くにゴールの山荘しらさの屋根が見える。高度としては、だいぶ下にある。
一方、その途中に越えていく瓶ヶ森登山口は、はるか上に見える。あんな上まで登っていかないといけないのか、と呆然とする。
朝、来るとき、車で確認しながら呆然としたばかりだが、やっぱり再び呆然とする。

この辺りは、さきほど走った時は、上りなのか下りなのか分からなかった場所だ。下っているはずなんだけど、体感としては上っているような気がした区間だ。
しかし、こうやって走っていると、今は明らかに上りだ。つまり、さっきは上っているような気はしたが、実は下っていたのだ。下っていたのに、傾斜が緩やかになったから上っているのかと錯覚したのだ
ペースは一気に怒涛のごとく落ちていき、14km地点15km地点でのラップは7分を超えてしまった。

そこからはさらに傾斜がきつくなる。序盤の4kmよりはずっと緩やかなはずなんだけど、もういい加減足がくたびれているため、序盤より厳しく感じてしまう上り坂が続く。
そのため、16km地点のラップは遂に8分近くにまで落ちてしまった。前半の激坂区間より悪いペースだ。
ただ、のらちゃんも追い抜いていかないし、ピッグの姿も見えてこないので、私だけが撃沈している訳ではないようだ。

(幹事長)「もうちょっとでピークやな。そしたら残りは下るだけや」
(のら)「は〜い」


16km地点を過ぎても、まだしばらくは上り坂が続くが、傾斜は緩やかになり、だいぶ楽になる。
さらに進むと、ようやく最高点に達して上り坂が終わり、緩やかな下り坂になる。残りは全て下り坂だけで、苦しい区間は終わりだ
瓶ヶ森登山口17km地点でのラップはなんとか6分20秒くらいにまで戻していた。

ここからはゴールまで4kmの激坂の下りが続く

(幹事長)「ここからはゴールまで下り坂が4km続くよ」
(のら)「は〜い。じゃあお先に〜っ」


なんと、のらちゃんは一気にペースを上げて、あっという間に抜き去って行ってしまった。ここまで私を追い抜けなかったというのに、どうした事か?
理由は簡単だ。ここに来て、私の足が動かなくなったからだ。
ここまでなんとか上り坂を頑張って走ってきたが、下り坂になってもピッチは上がらない。足が回らなくなってしまって、スピードが上がらないのだ。
一方、のらちゃんは上り坂では限界だったけど、下り坂になって力が必要なくなると、軽快に足を回してどんどん下っていくのだ。

1週間前の脱藩マラソンと全く同じ展開だ。最後の激坂の下りまで私がリードしていたのに、のらちゃんは激坂の下りで一気にペースアップして、軽々と私を追い抜いて行った。
私も昔は下り坂では重力走法でガンガン下っていたのに、最近は足が回らずにスピードが出ない。ペースが遅い上り坂の方が得意になってきた。

それでも、後ろからピッグや支部長が迫ってきているかと思うと、諦める訳にはいかない。
ここで油断なんかしたら、あっという間に追い抜かれてしまう。て言うか、よっぽど頑張らなければ、あっという間に追い抜かれてしまう

タイムを確認すると、18km地点19km地点20km地点でのラップは5分15秒〜30秒くらいだ。
こんなに激坂の下りなのに、どうしても5分を切れない。それどころか、少しずつラップは悪くなっていく
やはり足が動かないのが原因だろう。どんなに焦っても、足が回らないのだ。

だが、それより19km地点で既に2時間をオーバーしてしまったのが衝撃だった。去年のタイムを2時間2分台だったと勘違いしていたので、絶望的になったのだ。
残りの2kmを10分で走ったとしても、去年より10分も遅いタイムになってしまうと勘違いしたのだ。
終盤では足が動かなくなったとは言え、前半ではそこまで遅かった感じはしない。去年より10分も遅いって事は、全体で1km平均30秒も遅かったって事になるが、そこまで遅かっただなんて考えられない。
私だけでなく、支部長やピッグも私より遅いって事は、みんな揃って遅いって事だ。いったい何があったと言うのだ!?
たぶん、子持権現山登山のせいだ。あれで疲れ切ってしまったため、みんなものすごく遅くなったのだろう。
なーんて絶望的になりながら走った。

20km地点でのタイムは2時間7分台で、過去最悪のタイムより、さらにだいぶ遅いと勘違いした。あと1kmで終わると言うのに、その喜びより絶望感が勝って、もうやる気が出ない。
せめてピッグや支部長には負けたくないので、それだけが心の支えでなんとか走り続ける。
ようやくゴールが見えてきて、後ろから迫ってくる気配も無いので、ここで力を抜いてゆっくりゴールする


〜 ゴール 〜


ゴールすると、トップでゴールしたD木谷さんと、私を抜き去っていったのらちゃんが出迎えてくれた。
タイムを見ると、最後の1kmも5分ちょっとかかっているので、トータルで2時間12分台だ。去年より10分も遅い大惨敗だと思った。

(幹事長)「去年より10分も遅かったよ。なんでだろう?信じられないよ」
(D木谷)「え?そうなんですか?」


なーんて絶望しながら、よくよく確認してみたら、去年のタイムは2時間12分台だった事が分かった。勘違いしていたのだ。
正確に言うと、去年は2時間12分58秒だった。そして、今年のタイムもピッタリ同じの2時間12分58秒だった

(幹事長)「げげげげげーっ!勘違いやった!去年のタイムと秒までピッタリ同じやった!」

そうだと分かっていれば、終盤も力を抜くことなく走って自己ベストを更新していたのに
ゴールした後で「あと1秒速かったら自己ベストだったのに」なんて後悔する事もあるので、ゴールするまで力を抜かない事を常日頃から心掛けてるんだけど、今日は10分も遅いと思ったので、やる気を無くして力を抜いてしまった。

(D木谷)「私もギリギリで2時間を切れませんでしたよ」
(幹事長)「え?私と10分も差が付いたのか」


自念子ノ頭の辺りで2分ほどの差だったのに、いつの間にそんなに差が開いたんだろう?
しかも、D木谷さんは吉野川の源流に寄り道したと言う。

(幹事長)「めちゃめちゃ余裕ですねえ。寄り道してなかったら2時間は切れてましたね」
(D木谷)「できれば吉野川の源流に寄り道しながら2時間を切りたいですね」


のらちゃんは私より1分ほど速かったようだ。終盤の急激な下り坂で差が付いてしまった。
しばらく待っていたら、ピッグがゴールしてきた。前半の終盤に私のすぐ後ろまで迫ってきていた時の勢いは消え失せ、すっかりやる気を無くしてダラダラ走ってきたようだ。

さらに、最後の支部長を待っていたが、いつまで経っても帰ってこない。空は完全に曇りになり、汗が冷えてどんどん寒くなってきた。
寒さに耐えられなくなって山荘しらさに入って待っていると、ようやく支部長が帰ってきた。だいぶ遅かったから、もうヘロヘロなのかと思ったら、妙に元気そうでハツラツとして駆け込んできた。

(幹事長)「相変わらず下り坂は軽快やなあ」
(支部長)「その代わり、上り坂はほとんど歩いたけどな」


序盤の激坂の上り坂だけでなく、折り返した後の長いダラダラした上り坂もかなり歩いたようだ。
でも、序盤の激坂でも、なんとか走り続けるピッグと、早足で歩く支部長とはデッドヒートだったらしい。
しかも、歩いて貯めておいたエネルギーを爆発させて、前半の終盤に私のすぐ後ろまで迫ってきたのだ。
ただ、折り返してからの上り坂でも再び歩いたのが敗因だったようだ。

今日のレースは、先週の脱藩マラソンに続いてD木谷さんの圧勝と言えよう。ここんとこD木谷さんの圧勝が続いている。
のらちゃんとの対戦では、先週の脱藩マラソンに続いて最後の激坂の下りで負けてしまった。急激な下り坂をもっと速く走らなければ、なかなか勝てそうにない。
一方で、永遠のライバルである支部長とピッグに勝利したのは嬉しい。中でも支部長には先週の脱藩マラソンに続いて2連勝したので、すごく嬉しい。


〜 反省会 〜


レース後は去年と同じく、麓の木の香温泉に行く。
去年は山荘しらさから南に下り、よさこい峠経由で行った。距離は少し長くなるが、道が良ければ走りやすいと思ったからだ。
でも、そっちの道も狭くて走りにくかったので、今年は来た道を素直に引き返して行った。

木の香温泉道の駅に併設された温泉で、今日も大繁盛で駐車場はほぼ満車だった。
屋外の露天風呂は、ちょっとぬるめのちょうど良い湯加減なので、いつまでも浸かっていられる。厳しいマラソン大会で疲れた体を癒すには絶好の温泉だ。
先日、登山の後に入った温泉で「登山の喜びの半分は下山後の温泉ではないかと思うくらい下山後の温泉は気持ち良い」なんて思ったが、同じように「マラソンの喜びの半分はレース後の温泉ではないかと思うくらいレース後の温泉は気持ち良い」なんて思う。

のんびりお湯に浸かりながら考えると、やはりタイムを勘違いして力を抜いたために自己ベストを更新できなかったのが悔しい。
でも、今年は去年より折返し点を先にズラして距離を少し長くしたのに同タイムだったってことは、実質的には自己ベストを更新できたと言える。なんとか、まずまずの結果だったと言えよう。
しかも、レース前にはかなり過酷な子持権現山の岩登りをして、かなり疲労した。それにも関わらず、去年と同じタイムってのは、満足していいのではないだろうか。
また、今日は炎天下ではなかったにもかかわらず支部長に勝利したのも嬉しい。

(幹事長)「支部長は酸欠マラソンが苦手やねえ」
(支部長)「最初の激坂の上りでくじけてしまうよ」


私にとっては、激坂が繰り返されるこのコースは面白くて楽しい
北山林道駆け足大会と同じ楽しさだが、距離が13kmしかないから楽しいだけで終わる北山林道駆け足大会に比べたら、酸欠マラソンは距離が長いので苦しさも大きい。
それでも、普通のマラソン大会に比べたら変化があって面白いのは間違いない。

次のレースは11月の庵治マラソン瀬戸内海タートルマラソンだ。

(ピッグ)「自主開催はいつまで続くんでしょうね」
(支部長)「来年の丸亀マラソンは開催されそうやで」


来年2月6日に開催予定の丸亀マラソンは10月12日に受付が始まった。取り合えずみんなエントリーしたが、いよいよ再開されそうな気配になってきた。
自主開催のマラソン大会は楽しい。それは間違いない。
でも、やはり正式な大会の方が楽しいし、タイムも良くなる。期待が高まるぞ。


〜おしまい〜




戦績のメニューへ